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特許7598464塩基性イオン交換樹脂を用いた異種の線状カーボネートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】塩基性イオン交換樹脂を用いた異種の線状カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/06 20200101AFI20241204BHJP
   C07C 69/96 20060101ALI20241204BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
C07C68/06
C07C69/96 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023531018
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2021015847
(87)【国際公開番号】W WO2022114578
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0163293
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ミ ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ワン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ウ ネ
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061678(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/034669(WO,A1)
【文献】特開平01-031737(JP,A)
【文献】特表2015-515450(JP,A)
【文献】特開2010-168365(JP,A)
【文献】特表2017-521422(JP,A)
【文献】特開2010-120011(JP,A)
【文献】特表平11-514010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 68/06
C07C 69/96
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下に、脂肪族アルコールと対称線状カーボネートをエステル交換反応させる段階を含み、
前記触媒は、交換容量が1(eq/L-wet resin)以上、1.5(eq/L-wet resin)以下の多孔型(Porous Type)塩基性イオン交換樹脂である、異種の線状カーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記塩基性イオン交換樹脂の交換基は、トリメチルアンモニウム(Trimethylammonium;TMA)またはジメチルエタノールアンモニウム(Dimethylethanolammonium;DMEA)であり、
イオン型は、塩素アニオン(Cl)またはヒドロキシ基アニオン(OH)である、請求項1に記載の異種の線状カーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記エステル交換反応段階で、
前記脂肪族アルコールと対称線状カーボネートの質量比(脂肪族アルコール:対称線状カーボネート)が1:10以上、10:1以下である、請求項1に記載の異種の線状カーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記エステル交換反応段階は、固定層反応器(Fixed Reactor)または連続撹拌槽型反応器(continuous stirred tank reactor;CSTR)で行われる、請求項1に記載の異種の線状カーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、高収率の異種の線状カーボネート、すなわち対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートを同時に有利に収得する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルメチルカーボネート(Ethylmethylcarbonate:EMC)およびジエチルカーボネート(Diethylcarbonate:DEC)などの線状カーボネートは、リチウム二次電池用溶媒(電解質)として主に用いられているが、従来の溶媒と比較してエネルギー貯蔵密度、充電容量、充放電回数、安定性などに優れているので、特にリチウム二次電池用溶媒として主に用いられている。
【0003】
エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの製造方法としては、環状カーボネート(エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート)とエタノールおよびメタノールの混合物のエステル交換反応が一般的に広く知られている。例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートと、エタノール、またはエタノールとメタノールの混合物をエステル交換反応させて、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジメチルカーボネートのうちいずれかのジアルキルカーボネートを製造する際、メチルグリコールエーテル類やエチルグリコールエーテル類が副生する。
【0004】
このような反応副生物は、目的生成物と共沸状態になりやすくて、蒸留分離が非常に困難で、これを新しい抽出分離方法を導入して精製することが一般的である。
【0005】
なお、製造原料にジメチルカーボネート(DMC)を用いたエステル交換反応によるエチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの工業的な製造方法も知られている。一例として、ナトリウムメトキシド(Sodium methoxide,SME)のような塩基性触媒をエステル交換触媒として用いて、ジメチルカーボネートとエタノールの反応蒸留法は、装置設備およびエネルギー費用が多くかかるという問題がある。また、ナトリウムメトキシドは、禁水性物質であり、危険性および有害性が高く、生成物に溶解しないので、装置設備にカラムプラッギング(column plugging)およびファウリング(fouling)を招く問題がある。
【0006】
他の例として、ゲル型(Gel Type)強塩基交換樹脂触媒をエステル交換触媒として用いて抽出蒸留を活用する方法が挙げられ、抽出蒸留は、抽出剤を生成物に分離する分離工程が追加されなければならないので、設備費およびエネルギー費用をさらに多く必要とするという問題がある。また、触媒強度が低くて発生する交換基の損失と微細粉の形成により不活性化が急速に進行され、内部圧力も上昇し、周期的に触媒を新しく投入する工程が必要であり、生産性が低くなり、生産費用が上昇するという問題がある。
【0007】
環状カーボネートやジメチルカーボネート(DMC)を製造原料としたエチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを製造する方法の多くは、化学平衡反応を用いたエステル交換反応である。そこで、この反応を効率的に進行させるために、反応副生物であるアルキレングリコールやメタノールを留去する方法が行われている。しかしながら、例えば、大気圧においてDMCは、メタノールと、70%のメタノールと30%のDMCの概略組成を有する共沸混合物を形成すること、そして、この種のエステル交換反応を実施する場合、DMCを完全に反応させることは実質的に不可能であることから、実際の反応では、メタノールとともにDMCも留去されてしまい、その結果、DMC転化率が不十分であった、或いは工業的な再現性が低かった。そのため、別途、DMCとメタノールとの共沸混合物からメタノールを分離除去する方法が必要である。
【0008】
したがって、DMC転化率が高い新しい製造方法が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本国特許公開第2010-168365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、脂肪族アルコールと対称線状カーボネートのエステル交換反応において、別途の反応蒸留なしで対称線状カーボネートを反応副生物の共沸混合物として反応系外に流出させることなく、高転化率で反応させて、高選択率で異種の線状カーボネート、すなわち対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートを同時に有利に収得する製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施態様は、触媒の存在下に、脂肪族アルコールと対称線状カーボネートをエステル交換反応させる段階を含み、前記触媒は、交換容量が1(eq/L-wet resin)以上、1.5(eq/L-wet resin)以下の多孔型(Porous Type)塩基性イオン交換樹脂である、異種の線状カーボネートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施態様による製造方法は、反応蒸留の工程なしで高収率で異種の、対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートを同時に製造することができる。
【0013】
また、本発明の一実施態様による製造方法は、多孔型(Porous Type)塩基性イオン交換樹脂を触媒として用い、相対的に表面積が広く、反応物との接触を最大化することができ、反応速度が速く、高い反応効率で異種の、対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートを製造することができる。
【0014】
また、本発明の一実施態様において用いられる触媒は、脱色性に優れていて、反応初期にイオン交換樹脂の洗浄時間および洗浄溶媒の使用量を相対的に減少させることができ、強度に優れていて、再使用時に交換基の損失と微細粉の形成が少ないため、再使用周期が長く、生産性が向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の利点と特徴、およびそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかしながら、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現することができ、単に本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるだけである。明細書全般にわたって、同一の参照符号は、同一の構成要素を指す。
【0016】
別途の定義がないと、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解することができる意味で使用できる。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、特段の定めのない限り、理想的にまたは過度に解釈しない。
【0017】
本明細書において、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施態様は、触媒の存在下に、脂肪族アルコールと対称線状カーボネートをエステル交換反応させる段階を含み、前記触媒は、交換容量が1(eq/L-wet resin)以上、1.5(eq/L-wet resin)以下の多孔型(Porous Type)塩基性イオン交換樹脂である、異種の線状カーボネートの製造方法を提供する。
【0020】
本発明の一実施態様において、前記多孔型塩基性イオン交換樹脂は、多孔性強塩基イオン交換樹脂である。多孔性強塩基イオン交換樹脂は、イオン型としてブロムアニオン(Br)、チオシアン酸塩(thiocyanate,SCN)アニオン、塩素アニオン(Cl)、アセテートアニオン(acetate,CHCOO)、ヒドロキシ基アニオン(OH)、フッ素アニオン(F)などを有していてもよい。多孔性弱塩基イオン交換樹脂は、イオン型としてクエン酸塩アニオン(citrate,CO(COO) )、サルフェート(sulfate,SO 2-)などを有していてもよい。
【0021】
本明細書において前記脂肪族アルコールは、特に制限はないが、炭素数1~10のアルコールが挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。本明細書の一実施態様において、前記脂肪族アルコールは、エタノールである。
【0022】
本発明の一実施態様において、前記エステル交換反応段階での反応物である対称線状カーボネートは、ジメチルカーボネート(Dimethylcarbonate,DMC)である。
【0023】
本発明の一実施態様において、前記エステル交換反応段階後に生成された、異種の線状カーボネートは、対称線状カーボネートおよび非対称線状カーボネートである。
【0024】
一実施態様において、前記エステル交換反応段階後に生成された、非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネート(Ethylmethylcarbonate,EMC)である。
【0025】
一実施態様において、前記エステル交換反応段階後に生成された、前記対称線状カーボネートは、ジエチルカーボネート(Diethylcarbonate,DEC)である。
【0026】
本発明の一実施態様による、エステル交換反応段階は、異種の線状カーボネート、すなわち非対称線状カーボネートおよび対称線状カーボネートを製造する。前記エステル交換反応段階での生成物の非対称線状カーボネートは、エチルメチルカーボネート(Ethylmethylcarbonate,EMC)であり、対称線状カーボネートは、ジエチルカーボネート(Diethylcarbonate,DEC)である。
【0027】
本発明の一実施態様による製造方法は、脂肪族アルコールと対称線状カーボネートのエステル交換反応において多孔型塩基性イオン交換樹脂を触媒として用いる。多孔型塩基性イオン交換樹脂は、表面に多い(約10個~1000個)マクロポア(macro pore)を有していて、ゲル型(Gel Type)強塩基イオン交換樹脂に比べて化学的に安定しており、表面積が広く、反応物との接触を最大化することができ、反応速度が速く、内部拡散速度に優れていて、高い反応効率で異種の線状カーボネートを同時に製造することができる。
【0028】
また、多孔型塩基性イオン交換樹脂の耐熱温度は、約40℃~100℃であり、ゲル型強塩基イオン交換樹脂の耐熱温度約40℃~80℃に比べて運転範囲が広いため、発熱反応などの暴走反応リスクの際に交換基の溶出で生成物のpHが増加する危険が少ない。
【0029】
また、本発明の一実施態様において用いられる多孔型塩基性イオン交換樹脂は、脱色性に優れており、反応初期にイオン交換樹脂の洗浄時間および洗浄溶媒の使用量を相対的に減少させることができ、強度に優れていて、再使用時に交換基の損失と微細粉の形成が少ないため、再使用周期が長く、生産性が向上することができる。
【0030】
本発明の一実施態様において、前記触媒は、交換容量が1(eq/L-wet resin)以上、1.5(eq/L-wet resin)以下の多孔型(Porous Type)塩基性イオン交換樹脂である。一般的に、イオン交換樹脂の架橋度が高いほど母体に交換基が多く付着しているので、交換容量が大きい傾向にあるが、母体と交換基の強い結合で反応に参加する交換基が減少するので、反応効率が減少する。前記触媒の交換容量が1.5(eq/L-wet resin)を超えると、反応速度が非常に遅く、触媒の交換容量が1(eq/L-wet resin)未満の場合に、反応速度は速いが、母体と交換基の結合が弱くなって、急激な体積変化に対する強度が低下するという短所がある。
【0031】
本明細書において前記交換容量(exchange capacity)は、イオン交換樹脂がイオンを吸着できる能力を樹脂の一定容積に吸着して得たイオンの当量で表示したものを意味し、すなわち、樹脂1Lが除去できる交換量を意味し得る。
【0032】
本明細書において前記交換容量の単位は、eq/L-wet resinであり、イオン交換樹脂1L当たりの交換容量を当量で表示した値を意味する。
【0033】
本発明の一実施態様において、前記塩基性イオン交換樹脂の交換基は、トリメチルアンモニウム(Trimethylammonium;TMA)またはジメチルエタノールアンモニウム(Dimethylethanolammonium;DMEA)であり、イオン型は、塩素アニオン(Cl)またはヒドロキシ基アニオン(OH)である。
【0034】
本明細書の一実施態様において、前記塩基性イオン交換樹脂の母体(matrix)は、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体である。
【0035】
一実施態様において、前記エステル交換反応段階は、40℃以上、100℃以下の温度で行われる。より具体的には、前記エステル交換反応段階は、40℃以上、80℃以下の温度で行われる。前記エステル交換反応段階が40℃の未満の場合、反応速度が低下する問題があり、エステル交換反応段階が100℃を超える場合、強塩基性イオン交換樹脂の交換基が分解し、活性が低下し、再使用周期が短くなり、生成物のpHが増加するという問題がある。
【0036】
本発明の一実施態様において、前記触媒の存在下に、脂肪族アルコールと対称線状カーボネートをエステル交換反応させる段階で、前記脂肪族アルコールと対称線状カーボネートの質量比(脂肪族アルコール:対称線状カーボネート)は、1:10以上、10:1以下である。具体的には、他の実施態様において、前記脂肪族アルコールと対称線状カーボネートの質量比(脂肪族アルコール:対称線状カーボネート)は、1:2以上、5:1以下であってもよい。前記エステル交換反応段階で、前記脂肪族アルコールと対称線状カーボネートの質量比が1:10未満の場合、脂肪族アルコールが少なく、対称線状カーボネートが過量に残り、触媒と十分にスウェリング(swelling)せず、触媒との接触が低下して効率が劣化し、生産性が低下するという問題があり、前記脂肪族アルコールと対称線状カーボネートの質量比が10:1を超える場合、反応後、異種の、対称線状カーボネート(DEC)および非対称線状カーボネート(EMC)と脂肪族アルコールを分離する蒸留工程のサイズが大きくなり、脂肪族アルコールと非対称線状カーボネート(EMC)は、共沸物質であり、脂肪族アルコールの量が多いほど分離効率が高い多段数のカラムが必要であり、減圧および/または加圧過程でエネルギーが多く消耗し、蒸留工程の上段に失われる非対称線状カーボネート(EMC)の量が多くなり、非生産的な工程となる。
【0037】
本発明の一実施態様において、前記エステル交換反応段階は、固定層反応器(Fixed Reactor)または連続撹拌槽型反応器(continuous stirred tank reactor;CSTR)で行われる。
【0038】
本発明の一実施態様において、前記エステル交換反応段階は、固定層反応器内で行われる。この場合、運転が簡単であり、エネルギー費用を節約することができる。
【0039】
本発明の一実施態様において、前記固定層反応器は、シリーズタイプで運転することができる。一実施態様において、前記固定層反応器は、1基以上、4基以下のシリーズで構成された反応器であってもよい。
【0040】
なお、本発明による異種の線状カーボネートの製造方法は、前述した段階の他にも、前記各段階の前または後に、当業界に公知となった通常の段階をさらに含んで行われ得る。
【実施例
【0041】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例に基づいて詳細に説明することとする。しかしながら、本発明による実施例は、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が下記で記述する実施例に限定されると解されない。本明細書の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0042】
実施例1
反応器は、固定層反応器(Fixed Reactor)をシリーズ4基で使用し、交換基としてトリメチルアンモニウム(Trimethylammonium,TMA)、イオン型として塩素アニオン(Cl)を有する多孔型(Porous Type)塩基性アニオン交換樹脂を各反応器当たり80cc(58g)充填した。交換容量(Exchange capacity、単位体積当たりの当量(Equivalent)eq/L-wet resin)は、1.3であり、サムヤン社のTRILITE AMP-18製品を活用した。DMCに対するエタノールの質量比は、0.8であり、1分当たり2ccで50℃で連続運転した。
【0043】
実施例2
前記実施例1において、反応温度を50℃の代わりに80℃で行ったことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0044】
実施例3
前記実施例1において、触媒の交換容量が1.3(eq/L-wet resin)の代わりに1.0(eq/L-wet resin)のサムヤン社のTRILITE AMP-14製品を使用し、反応温度を50℃の代わりに80℃で行ったことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0045】
実施例4
前記実施例1において、触媒の交換容量が1.3(eq/L-wet resin)の代わりに1.0(eq/L-wet resin)のサムヤン社のTRILITE AMP-14製品を使用し、エタノールとDMCの質量比は、0.8代わりに0.3であり、反応温度を50℃の代わりに70℃で行ったことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0046】
実施例5
前記実施例1において、触媒の交換容量が1.3(eq/L-wet resin)の代わりに1.0(eq/L-wet resin)のサムヤン社のTRILITE AMP-14製品を使用し、エタノールとDMCの質量比は、0.8の代わりに2であり、反応温度を50℃の代わりに70℃で行ったことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0047】
実施例6
前記実施例1において、触媒の交換容量が1.3(eq/L-wet resin)の代わりに1.0(eq/L-wet resin)のサムヤン社のTRILITE AMP-14製品を使用し、エタノールとDMCの質量比は、0.8代わりに4であり、反応温度を50℃の代わりに70℃で行ったことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0048】
実施例7
前記実施例4において、エタノールとDMCの質量比は、0.3の代わりに0.05で行ったことを除いて、実施例4と同じ方法で反応器を運転した。
【0049】
実施例8
前記実施例1において、反応温度を50℃の代わりに120℃で行ったことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0050】
比較例1
前記実施例1において、多孔型(PorousType)塩基性アニオン交換樹脂触媒の代わりに、交換基としてトリメチルアンモニウム(Trimethylammonium;TMA)、イオン型としてクロリドアニオン(Cl-)を有するゲル型(GelType)の強塩基イオン交換樹脂であるサムヤン社のTRILITESAR-10製品(交換容量が1.3(eq/L-wetresin)である)を使用したことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0051】
比較例2
前記比較例1において、反応温度を50℃の代わりに80℃で行ったことを除いて、比較例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0052】
比較例3
前記実施例1において、交換基としてトリメチルアンモニウム(Trimethylammonium,TMA)、イオン型として塩素アニオン(Cl)を有する多孔型(Porous Type)塩基性アニオン交換樹脂触媒の代わりに、交換基として第2級アミン(Secondary Amine)、イオン型としてヒドロキシ基アニオン(OH)を有する多孔型(Porous Type)塩基性アニオン交換樹脂であるサムヤン社のDIAION WA-20製品(交換容量が2.5(eq/L-wet resin)である)を使用したことを除いて、実施例1と同じ方法で反応器を運転した。
【0053】
実施例1~8、比較例1~3の反応器の運転に対する結果は、下記表1の通りである。
【0054】
【表1】
【0055】
前記表1で、TMAは、トリメチルアンモニウムであり、SEAは、第2級アミンであり、DMCは、ジメチルカーボネートであり、EMCは、エチルメチルカーボネートである。
【0056】
前記表1の結果を参照すると、本発明の一実施態様による製造方法は、触媒として多孔型塩基性イオン交換樹脂を用いることによって、高いDMC転化率を有することを確認できた。特に、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2を具体的に比較してみると、同じ条件下で多孔型塩基性イオン交換樹脂を用いた場合が、ゲル型塩基性イオン交換樹脂を用いた場合に比べて、高いDMC転化率を有することを確認できた。より具体的には、80℃で多孔型塩基性イオン交換樹脂を用いた実施例2の場合、DMC転化率が高く、ゲル型塩基性イオン交換樹脂を用いた比較例2の場合、交換基の溶出が進行され、DMC転化率が低いことを確認できた。
【0057】
また、実施例2と実施例8を比較してみると、同じ、多孔型塩基性イオン交換樹脂を用いても、耐熱温度範囲を超えた120℃で反応する場合、交換基の溶出が進行され、DMC転化率が低下することを確認できた。したがって、反応温度は、40℃以上、100℃以下の温度で行われることが適切である。
【0058】
実施例2および実施例3と比較例3を参照すると、同じ条件で、交換容量が少ない場合、母体から交換基の結合が弱く、反応に参加する交換基が増加し、DMC転化率が増加することを確認できた。
【0059】
また、実施例4~7を参照すると、脂肪族アルコールと対称線状カーボネートの質量比(脂肪族アルコール:対称線状カーボネート)、すなわちエタノールとDMCの質量比(EtOH:DMC)を調節して、生成物である異種の対称線状カーボネート(DEC)および非対称線状カーボネート(EMC)の生産量を調節して製造できることを確認できた。ただし、実施例7の場合、対称線状カーボネート(DMC)に対するエタノールの質量比が0.1未満であり、反応するエタノールが少なく、DMCが過量に残り、触媒と十分にスウェリング(swelling)せず、触媒との接触が低下し、DMC転化率が低下することを確認できた。したがって、対称線状カーボネート(DMC)に対するエタノールの質量比が0.1以上、10以下であることが好ましい。