(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】無線給電システム、送電器、受電器、および無線給電システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20241204BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20241204BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241204BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20241204BHJP
H01Q 3/30 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/40
H02J50/80
H01Q21/06
H01Q3/30
(21)【出願番号】P 2023531376
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006029
(87)【国際公開番号】W WO2023276247
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2021106310
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋和
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116066(JP,A)
【文献】特開2015-082964(JP,A)
【文献】特開2018-098770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/20
H02J 50/40
H02J 50/80
H01Q 21/06
H01Q 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ送電器および前記マスタ送電器に制御されるスレーブ送電器を含む、複数の送電器と、
前記複数の送電器から送信された電波によって給電される受電器と、を備え、
前記複数の送電器のうちの第1送電器は、前記受電器、または前記複数の送電器における他の送電器それぞれから受信した信号に基づき、前記マスタ送電器となる送電器を判定する判定部を有する無線給電システム
であって、
前記複数の送電器それぞれは、前記受電器から、前記受電器に送信した電波の受信強度を示す受信強度信号をそれぞれ受信しており、
前記第1送電器は、前記他の送電器それぞれから、前記受信強度の情報を含む通知信号を受信する送電器側信号受信部を備え、
前記第1送電器は、前記送電器側信号受信部によって受信した前記通知信号に基づき、前記判定部によって、前記他の送電器のうち最も電波の受信強度が大きくなる送電器を前記マスタ送電器と判定する無線給電システム。
【請求項2】
前記マスタ送電器は、前記受電器に送信する前記電波の位相を調整する位相調整部を備える請求項
1に記載の無線給電システム。
【請求項3】
前記マスタ送電器は、前記スレーブ送電器に対して、前記受電器に送信する前記電波の位相を、前記位相調整部によって調整された電波の位相と同期させるように同期信号を送信する送電器側信号送信部を備える請求項
2に記載の無線給電システム。
【請求項4】
前記複数の送電器から送信された前記電波によって前記受電器が給電されている間、前記マスタ送電器は、前記受電器に送信する前記電波の位相の調整を繰り返す請求項
2または
3に記載の無線給電システム。
【請求項5】
マスタ送電器および前記マスタ送電器に制御されるスレーブ送電器を含む複数の送電器から送信した電波によって受電器の給電を行う無線給電システムが備える送電器であって、
前記受電器、または前記複数の送電器における他の送電器から受信した信号に基づき、前記マスタ送電器となる送電器を判定する判定部を有する、送電器であって、
前記複数の送電器それぞれは、前記受電器から、前記受電器に送信した前記電波の受信強度を示す受信強度信号をそれぞれ受信しており、
前記送電器は、前記複数の送電器における前記他の送電器それぞれから、前記受信強度の情報を含む通知信号を受信する送電器側信号受信部を備え、
前記送電器側信号受信部によって受信した前記通知信号に基づき、前記判定部によって、前記他の送電器のうち最も電波の受信強度が大きくなる送電器を前記マスタ送電器と判定す
る送電器。
【請求項6】
マスタ送電器および前記マスタ送電器に制御されるスレーブ送電器を含む、複数の送電器と、前記複数の送電器から送信された電波によって給電される受電器と、を備
え、
前記複数の送電器のうちの第1送電器は、前記受電器、または前記複数の送電器における他の送電器それぞれから受信した信号に基づき、前記マスタ送電器となる送電器を判定する無線給電システムの制御方法
であって、
前記複数の送電器それぞれは、前記受電器から、前記受電器に送信した電波の受信強度を示す受信強度信号をそれぞれ受信しており、
前記第1送電器は、前記他の送電器それぞれから、前記受信強度の情報を含む通知信号を受信し、受信した前記通知信号に基づき、前記他の送電器のうち最も電波の受信強度が大きくなる送電器を前記マスタ送電器と判定する無線給電システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電システム、送電器、受電器、および無線給電システムの制御方法に関する。本願は、2021年6月28日に日本に出願された特願2021-106310号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁波により電力をワイヤレスで受電器に送電する無線給電方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された無線給電方法では、マスタ送電部とスレーブ送電部とを含む複数の送電部を備えた無線給電システムにおいて、複数の送電部から一つの受電器に対して電力を送電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1は、マスタ送電部となる送電部が固定されているため、このマスタ送電部によって受電器を検出することができない場合は、受電器の給電を効率的に行うことができないという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、適切に受電器の給電を行うことができる無線給電システム、送電器、受電器、および無線給電システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る無線給電システムは、マスタ送電器および前記マスタ送電器に制御されるスレーブ送電器を含む、複数の送電器と、前記複数の送電器から送信された電波によって給電される受電器と、を備え、前記複数の送電器のうちの第1送電器は、前記受電器、または前記複数の送電器における他の送電器それぞれから受信した信号に基づき、前記マスタ送電器となる送電器を判定する判定部を有する。
【0008】
本開示の一態様に係る送電器は、マスタ送電器および前記マスタ送電器に制御されるスレーブ送電器を含む複数の送電器から送信した電波によって受電器の給電を行う無線給電システムが備える送電器であって、前記受電器、または前記複数の送電器における他の送電器から受信した信号に基づき、前記マスタ送電器となる送電器を判定する判定部を有する。
【0009】
本開示の一態様に係る受電器は、マスタ送電器および前記マスタ送電器に制御されるスレーブ送電器を含む複数の送電器から送信した電波によって受電器の給電を行う無線給電システムが備える受電器であって、前記複数の送電器それぞれから受信した電波のうち、最も強度が大きい電波の送信元となる送電器を前記マスタ送電器に決定する決定部と、前記決定部で決定した前記マスタ送電器の情報を含むマスタ決定信号を前記複数の送電器それぞれに送信する受電器側信号送信部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様に係る無線給電システムの制御方法は、マスタ送電器および前記マスタ送電器に制御されるスレーブ送電器を含む、複数の送電器と、前記複数の送電器から送信された電波によって給電される受電器と、を備えた無線給電システムの制御方法であって、前記複数の送電器のうちの第1送電器は、前記受電器、または前記複数の送電器における他の送電器それぞれから受信した信号に基づき、前記マスタ送電器となる送電器を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る無線給電システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る無線給電システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る無線給電システムにおける送電器の給電動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の実施形態に係るマスタ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態に係るスレーブ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係る受電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施形態の変形例に係る無線給電システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】本開示の実施形態の変形例に係る無線給電システムにおける送電器の給電動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の実施形態の変形例に係るマスタ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の実施形態の変形例に係るスレーブ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本開示の実施形態の変形例に係る受電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態及び変形例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(実施形態)
実施形態に係る無線給電システム100について、
図1、2を参照して説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る無線給電システム100の概略構成を示す斜視図である。
図2は、本開示の実施形態に係る無線給電システム100の概略構成を示すブロック図である。
図2では説明の便宜上、1つの送電器1と受電器2との関係を例に挙げて無線給電システム100の構成を示している。
【0014】
実施形態に係る無線給電システム100は、給電エリア30内において、複数の送電器1a~1fから放射されたマイクロ波(電波)により受電器2の給電を行うシステムである。無線給電システム100は、給電エリア30内に、複数、設けられた送電器1a~1fと、受電器2とを含む。複数の送電器1a~1fを特に区別して説明をする必要がない場合は、単に送電器1と称する場合がある。また、複数の送電器1a~1fでは、マスタ送電器として機能する送電器と、このマスタ送電器に制御されるスレーブ送電器として機能する送電器とを含む。なお、以下では説明の便宜上、マスタ送電器を送電器1a(第1送電器)とし、スレーブ送電器を送電器1b~1f(他の送電器)として説明する場合がある。
【0015】
給電対象となる受電器2としては、例えば、モバイル通信機器、工場内の移動ロボットなどが挙げられる。
【0016】
図1に示すように、複数の送電器1a~1fは、受電器2の移動の妨げにならないように、かつなるべく受電器2との通信が阻害されないように給電エリア30の天井などに設けられている。そして、複数の送電器1a~1fそれぞれから放射したマイクロ波により受電器2の給電を行う。
【0017】
また、複数の送電器1a~1fは互いに通信可能に接続されている。本開示の実施形態では、送電器1a~1fそれぞれの間における信号の送受信は無線によって行われているが、これに限定されるものではない。例えば、複数の送電器1a~1fは互いに通信ケーブルを介して接続されており、この通信ケーブルを介して、信号を送受信する構成であってもよい。
【0018】
複数の送電器1a~1fのうち、いずれかの送電器1で受電器2を検出すると、マイクロ波の送信先となる受電器2の情報を含む信号を、他の送電器に送信する。受電器2の情報としては、受電器2を検出したことを示す情報、および受電器2の位置を示す情報を含む。受電器2の位置は、予め送電器1a~1fの配置位置が決まっている場合は、受電器2を検出した送電器1の配置位置を示す情報であってもよい。あるいは、送電器1がGPS(Global Positioning System)などの測位システムを有する場合は、その測位システムの測定結果を利用してもよい。受電器2を検出した送電器1は、ビームフォーミングなどの技術を用いて受電器2の位置をさらに特定するように構成されていてもよい。
【0019】
ところで、
図1に示すように給電エリア30内に壁などの障害物によって送電器1から受電器2へのマイクロ波の送信が阻害される場合がある。この受電器2へのマイクロ波の送信が阻害された送電器1が、マスタ送電器である場合、スレーブ送電器を制御して効率的に受電器2に対する給電を行うことが困難となる。そこで、無線給電システム100では、複数の送電器1a~1fの中からマスタ送電器を適切に決定し受電器2の給電を行うことができるように構成されている。以下において、無線給電システム100の構成について説明する。
【0020】
(送電器の構成)
まず、送電器1の構成について説明する。
図2に示すように、送電器1は、マイクロ波発振器11、移相器12、送電アンテナ13、送電器通信アンテナ14、送電器制御部15、および送電器記憶部16を備える。
【0021】
マイクロ波発振器11は、送電器制御部15からの制御指示に基づき、受電器2に送電するマイクロ波を発生させる。移相器12は、送電器制御部15からの制御指示に基づき、マイクロ波発振器11で発生させたマイクロ波の位相を変更させる。そして、位相を変更させたマイクロ波を、送電アンテナ13を介して受電器2に送信する。
【0022】
なお、
図2では、特に図示していないが送電アンテナ13は、複数のアンテナ素子から構成され、アンテナ素子ごとに移相器12が設けられている。また、送電アンテナ13は、送電器制御部15からの制御指示に応じて、向きを変更できるように構成されている。
【0023】
送電器通信アンテナ14(送電器側信号受信部、送電器側信号送信部)は、受電器2または他の送電器との間で信号の送受信を行うためのアンテナである。より具体的には、送電器1は、受電器2と通信を確立し、信号を送受信できるように構成されている。また、送電器1(例えば、送電器1a)は、給電エリア30内に設けられた他の送電器(例えば、送電器1b~1f)と通信を確立し、信号を送受信できるようにも構成されている。
【0024】
送電器制御部15は、送電器1における各種処理を実施する演算処理装置(例えば、CPU)である。送電器制御部15は、マスタ判定部51(判定部)および位相調整部52を含む。送電器制御部15が含むこれら各部は、例えば、CPUが送電器記憶部16に格納されているプログラムを不図示のメモリに読み出し、実行することで実現できる。
【0025】
また、詳細は後述するが、送電器1が受電器2から受信する信号には、受電器2において受信したマイクロ波の受信強度を示す受信強度信号、およびマスタ送電器となる送電器の識別番号を含むマスタ決定信号等が挙げられる。
【0026】
マスタ判定部51は、受電器2から受信したマスタ決定信号に基づき、送電器1がマスタ送電器か否か判定する。すなわち、マスタ判定部51は、受電器2から受信したマスタ決定信号において、マスタ送電器となる送電器の識別番号が、送電器1において予め割り当てられている識別番号と一致するか否か確認する。そして、マスタ判定部51は、マスタ送電器となる送電器の識別番号と、送電器1において割り当てられている識別番号とが一致する場合、送電器1がマスタ送電器であると判定する。逆に、マスタ送電器となる送電器の識別番号と、送電器1において割り当てられている識別番号とが一致しない場合、マスタ判定部51は、送電器1がスレーブ送電器であると判定する。
【0027】
送電器1は、マスタ判定部51によりマスタ送電器であると判定された場合、マスタ送電器として動作する。送電器1は、マスタ判定部51によりスレーブ送電器であると判定された場合、スレーブ送電器として動作する。マスタ送電器およびスレーブ送電器の動作については後述する。
【0028】
位相調整部52は、移相器12を制御して、受電器2に送信するマイクロ波の位相の調整を行う。マスタ判定部51によってマスタ送電器であると判定された場合、位相調整部52は、受電器2から受信した受信強度信号に基づき、受電器2におけるマイクロ波の受信強度が最も高くなる、マイクロ波の位相を求める。そして、位相調整部52は、受電器2に送信するマイクロ波の位相を、求めた位相に変更させるように移相器12を制御する。また、位相調整部52は、他の送電器から送信されるマイクロ波の位相を、この求めた位相に同期させる同期信号を、送電器通信アンテナ14を介して他の送電器に送信する。これによって、送電器1から受電器2に送信するマイクロ波の位相と、他の送電器から受電器2に送信するマイクロ波の位相とを一致させることができる。
【0029】
送電器記憶部16には、受電器2にマイクロ波を送信して、受電器2の給電を行うために必要な各種情報、および他の送電器と通信を確立するために必要な各種情報が記憶されている。また、送電器1に割り当てられている識別番号も記憶されている。
【0030】
(受電器の構成)
図2に示すように、受電器2は、受電アンテナ21、受電部22、整流回路23、受電器通信アンテナ24(受電器側信号送信部)、受電器制御部25、および受電器記憶部26を備える。
【0031】
受電器2では、受電部22が受電アンテナ21を介して、送電器1から送信されたマイクロ波を受信する。なお、
図2では、特に図示していないが、受電アンテナ21は、複数のアンテナ素子から構成されている。
【0032】
整流回路23は、受電部22で受信したマイクロ波のエネルギーを直流に変換する。受電器2は、この変換された直流を、不図示の充電池に供給して、充電池の充電を行う。あるいは、受電器2は、この変換された直流を不図示の電源部に供給する構成であってもよい。
【0033】
受電器通信アンテナ24は、複数の送電器1a~1fそれぞれとの間で信号の送受信を行うためのアンテナである。受電器2は、複数の送電器1a~1fそれぞれと通信を確立し、信号を送受信できるように構成されている。
【0034】
受電器制御部25は、受電器2における各種処理を実施する演算処理装置(例えば、CPU)である。受電器制御部25は、受信レベル算出部60、電力算出部61、およびマスタ決定部62(決定部)を含む。受電器制御部25が含むこれら各部は、例えば、CPUが受電器記憶部26に格納されているプログラムを不図示のメモリに読み出し、実行することで実現できる。
【0035】
受信レベル算出部60は、送電器1から送信されたマイクロ波のエネルギーの大きさ示す受信強度を算出する。受信レベル算出部60は、受信強度を示す受信強度信号を、このマイクロ波の送信元となる送電器1に受電器通信アンテナ24を介して送信するように制御する。
【0036】
電力算出部61は、送電器1a~1fによる給電によって得られた電力量を算出する。すなわち、電力算出部61は、受電部22で受信したマイクロ波のエネルギーに基づき、送電器1a~1fそれぞれから送信されたマイクロ波を受信することで得られる電力量を算出する。電力算出部61は、算出した電力量に基づき充電池が満充電となったか否か判定する。また、電力算出部61は、充電池が満充電となったと判定した場合、その判定結果を示す満充電通知信号を、マスタ送電器となる送電器1に対して、受電器通信アンテナ24を介して送信するように制御する。
【0037】
なお、電力算出部61は、受電部で受信したマイクロ波のエネルギーに基づき電力量を算出する構成に限定されるものではない。例えば、電力算出部61は、整流回路23で変換された直流の電流値から電力量を算出する構成であってもよい。
【0038】
マスタ決定部62は、送電器1a~1fそれぞれから受信したマイクロ波の受信強度に基づき、送電器1a~1fのうちのいずれをマスタ送電器とするか決定する。マスタ決定部62は、所定期間の間で送電器1a~1fそれぞれから受信したマイクロ波のうち受信強度が最も大きいマイクロ波を送信した送電器1をマスタ送電器と決定する。
【0039】
受電器2では、マスタ決定部62によりマスタ送電器を決定すると、マスタ送電器に決定された送電器1の識別番号を含むマスタ決定信号を、複数の送電器1a~1fそれぞれに送信する。送電器1は、このマスタ決定信号を受信することでマスタ送電器であるのかスレーブ送電器であるのか判定することができる。
【0040】
また、受電器2は、上記したように受電部22で受信したマイクロ波の受信強度示す受信強度信号を送電器1に送信する構成となっている。そこで、マスタ送電器に決定された送電器1は、受電器2から受信した受信強度信号に基づき、受電器2で受信されるマイクロ波のエネルギーが最大となる、マイクロ波の位相を求めることができる。
【0041】
また、受電器2は、上記したように電力算出部61により満充電となった旨の判定結果を示す満充電通知信号をマスタ送電器となる送電器1に送信する構成となっている。そこで、マスタ送電器に決定された送電器1は、受電器2から受信した満充電通知信号に基づき、受電器2の充電池が満充電となったことを把握することができる。
【0042】
受電器記憶部26は、送電器1a~1fから受信したマイクロ波により給電するために必要な各種情報、および送電器1a~1fそれぞれと通信を確立するために必要な各種情報を記憶する。また、受電器記憶部26は、各送電器1a~1fを区別することができるように、各送電器1a~1fを特定する識別番号も記憶している。
【0043】
(給電方法)
次に
図3を参照して、実施形態に係る無線給電システム100による給電方法について説明する。
図3は、本開示の実施形態に係る無線給電システム100における送電器1の給電動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
図3に示すように、まず、給電エリア30内に設けられた送電器1a~1fそれぞれから間欠的にマイクロ波が放射される(ステップS11)。そして、送電器1a~1fのうちのいずれかの送電器1が受電器2を検出すると、マイクロ波の送信先となる受電器2の情報を含む信号を、他の送電器に送信する。これによって、送電器1a~1fそれぞれは、受電器2に向けてマイクロ波を送信することができる。
【0045】
送電器1a~1fそれぞれから送信されたマイクロ波を受電器2が受信すると、受電器2は受信したマイクロ波のうちもっとも受信強度の大きいマイクロ波の送信元の送電器1をマスタ送電器に決定する。そして、マスタ送電器に決定した送電器1の識別番号を含むマスタ決定信号を、送電器1a~1fそれぞれに送信する。
【0046】
送電器1では、送電器制御部15が送電器通信アンテナ14を通じて受電器2からマスタ決定信号を受信したか判定する(ステップS12)。
【0047】
受電器2からマスタ決定信号を受信したと判定した場合(ステップS12において「YES」)、マスタ判定部51は、受信したマスタ決定信号に基づき、送電器1がマスタ送電器か否か判定する(ステップS13)。一方、受電器2からマスタ決定信号を受信していない間(ステップS12において「NO」)、送電器1は、ステップS11に戻って間欠送電を継続する。
【0048】
マスタ判定部51がマスタ送電器であると判定した場合(ステップS13において「YES」)、送電器1は、マスタ送電器として動作する(ステップS14)。一方、ステップS13において、マスタ判定部51がマスタ送電器ではないと判定した場合(ステップS13において「NO」)、送電器1はスレーブ送電器として動作する(ステップS15)。
【0049】
(マスタ送電器の動作処理)
次に
図4を参照して、マスタ送電器の動作処理について説明する。
図4は本開示の実施形態に係るマスタ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0050】
上記したように、送電器1は、受電器2からマイクロ波の受信強度を示す受信強度信号を受信するように構成されている。
【0051】
そこで、マスタ送電器(送電器1a)は、送電器通信アンテナ14を介して受電器2から受信強度信号を受信すると(ステップS21)、受信強度が最大となるように位相調整部52が、移相器12を制御して受電器2に送信するマイクロ波の位相を調整する(ステップS22)。
【0052】
また、マスタ送電器(送電器1a)では、送電器制御部15がスレーブ送電器(送電器1b~1f)それぞれからスレーブ通知信号(通知信号)を受信したか判定する(ステップS23)。なお、スレーブ通知信号は、スレーブ送電器それぞれがマイクロ波を送信している受電器2の情報を含む。マスタ送電器は、スレーブ送電器それぞれからこのスレーブ通知信号を受信することで、受電器2にマイクロ波を送信でき、かつ通信可能なスレーブ送信器を把握することができる。
【0053】
送電器制御部15がスレーブ送電器それぞれからスレーブ通知信号を受信していると判定した場合(ステップS23において「YES」)、スレーブ送電器それぞれに対して、受電器2に送信するマイクロ波の位相を一致させるように同期信号を送信する(ステップS24)。
【0054】
次に、マスタ送電器は、調整した位相でマイクロ波を受電器2に向けて連続的に送信する。このようにして、マスタ送電器は受電器2への送電を開始する(ステップS25)。
【0055】
一方、送電器制御部15が、スレーブ送電器それぞれからスレーブ通知信号を受信していないと判定した場合(ステップS23において「NO」)、ステップS24を飛ばしてステップS25へと進む。つまり、ステップS23において「NO」の場合とは、マスタ送電器だけが受電器2にマイクロ波を送信できている状態である。このため、マスタ送電器は、ステップS24におけるスレーブ送電器への同期信号の送信を行わずステップS25に進む。
【0056】
マスタ送電器から受電器2へマイクロ波を送信している間、マスタ送電器では、送電器制御部15が受電器2との通信が遮断されたか判定する(ステップS26)。ここで、受電器2との通信が遮断される場合とは、例えば、受電器2が給電エリア30外に移動した場合などが挙げられる。送電器制御部15が受電器2との通信が遮断されたと判定した場合(ステップS26において「YES」)、マスタ送電器は受電器2への送電を停止する。さらにまた、マスタ送電器は、スレーブ送電器それぞれに対して、受電器2への送電停止を指示する信号を送信する(ステップS27)。スレーブ送電器それぞれは、マスタ送電器から受電器2への送電停止を指示する信号を受信すると、受電器2へのマイクロ波の送信を停止する。
【0057】
一方、マスタ送電器において送電器制御部15が受電器2との通信が遮断されていないと判定した場合(ステップS26において「NO」)、送電器制御部15は受電器2から満充電通知信号を受信したか判定する(ステップS28)。送電器制御部15が受電器2から満充電通知信号を受信したと判定した場合(ステップS28において「YES」)、ステップS27に進む。一方、送電器制御部15が受電器2から満充電通知信号を受信していないと判定した場合(ステップS28において「NO」)、ステップS22に戻って受電器2に送信するマイクロ波の位相の調整を行う。つまり、給電エリア30内において受電器2が移動した場合、受電器2に対して送電器1a~1fそれぞれから送信されているマイクロ波の位相を調整しなおす必要がある。そこで、マスタ送電器は、ステップS22に戻ってマイクロ波の位相の調整を行う。
【0058】
なお、ステップS28において「NO」となる場合、次に進むステップは上記したステップS22に限定されるものではない。例えば、無線給電システム100は、一度、送電器1a~1fの中からマスタ送電器を決め、マスタ送電器から受電器2に送信するマイクロ波の位相が設定されると、マスタ送電器と受電器2との通信が遮断されるまでこの設定を維持する構成の場合、ステップS28において「NO」となるときは、ステップS26に戻って、処理を実行してもよい。
【0059】
また、無線給電システム100が、受電器2の給電中において、送電器1a~1fの中から常に最適なマスタ送電器を決定する構成の場合、ステップS28において「NO」となるときは、
図3に示すステップS13に戻ってもよい。
【0060】
(スレーブ送電器の動作処理)
次に
図5を参照して、スレーブ送電器の動作処理について説明する。
図5は本開示の実施形態に係るスレーブ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、スレーブ送電器は、スレーブ送電器であることを示すスレーブ通知信号をマスタ送電器に送信する(ステップS31)。
【0062】
次に、スレーブ送電器は、受電器2への送電を開始する(ステップS32)。このとき、マスタ送電器とは異なる位相で、スレーブ送電器からマイクロ波が受電器2に送信されると受電器2における給電効率が低下する。そこで、スレーブ送電器では、送電器制御部15がマスタ送電器から同期信号を受信したか判定する(ステップS33)。ここで、スレーブ送電器において、送電器制御部15が同期信号を受信したと判定した場合(ステップS33において「YES」)、位相調整部52が、受電器2に送信するマイクロ波の位相を、受信した同期信号に基づき調整する(ステップS34)。そして、スレーブ送電器は、調整した位相でマイクロ波を受電器2に送信する。
【0063】
受電器2の給電中において、送電器制御部15が、受電器2への送電を中止するか否か判定する(ステップS35)。具体的には、マスタ送電器から、受電器2への送電停止を指示する信号を受信した場合、送電器制御部15は、受電器2への送電を中止すると判定する。
【0064】
また、ステップS33において「NO」となる場合も、スレーブ送電器とマスタ送電器との通信が遮断されているとして、ステップS35にすすみ、スレーブ送電器は、受電器2に対する送電を中止する。
【0065】
なお、ステップS35において「NO」と判定された場合、すなわち、受電器2への送電を中止しない場合、スレーブ送電器はステップS32に戻り、ステップS32以降の処理を繰り返す。
【0066】
(受電器の動作処理)
次に
図6を参照して、受電器2の動作処理について説明する。
図6は本開示の実施形態に係る受電器2の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、受電器2は給電エリア30内に移動すると、受電器制御部25が送電器1a~1fそれぞれから放射されたマイクロ波の受信を検出したか判定する(ステップS41)。受電器2は、マイクロ波の受信を検出するまでステップS41の処理を繰り返す。
【0068】
一方、受電器制御部25がマイクロ波の受信を検出したと判定した場合(ステップS41において「YES」)、受信レベル算出部60がマイクロ波の受信強度を算出する(ステップS42)。ここで、受信レベル算出部60は所定期間内で、送電器1a~1fそれぞれから受信したマイクロ波について受信強度を算出する。そして、マスタ決定部62が、最も受信強度が大きいマイクロ波の送信元となる送電器1をマスタ送電器に決定する(ステップS43)。
【0069】
そして受電器2は、送電器1a~1fそれぞれに対して、受信レベル算出部60で算出した受信強度を示す受信強度信号と、マスタ決定部62によってマスタ送電器に決定された送電器1aの識別番号を示すマスタ決定信号とを送信する(ステップS44)。その後、受電器2は、送電器1a~1fそれぞれからマイクロ波を受信する(ステップS45)。
【0070】
なお、受電器2は、送電器1a~1fそれぞれからマイクロ波を受信して給電を行う給電期間において、受信レベル算出部60が送電器1a~1fそれぞれから送信されたマイクロ波の受信強度を算出する。そして、受電器2は、この算出した受信強度を示す受信強度信号を、送電器1a~1fそれぞれに送信するように構成されている。ただしこの構成に限定されるものではない。例えば、給電期間において、受電器2は、少なくともマスタ送電器から送信されたマイクロ波の受信強度を算出し、受信強度信号をマスタ送電器だけに送信する構成であってもよい。
【0071】
次に、受電器2では、電力算出部61が送電器1a~1fそれぞれから送信されたマイクロ波を受信することで得られる電力量を算出する。そして、電力算出部61は、算出した電力量に基づき充電池が満充電となったか判定する(ステップS46)。電力算出部61が、充電池が満充電となったと判定した場合(ステップS46において「YES」)、受電器2は、満充電通知信号をマスタ送電器(送電器1a)に送信する。一方、電力算出部61が、充電池が満充電ではないと判定した場合(ステップS46において「NO」)、ステップS45に戻って受電器2は送電器1a~1fそれぞれからマイクロ波を受信し、給電を継続する。
【0072】
なお、受電器2は、給電期間においてマスタ送電器との通信が遮断された場合、あるいは、送電器1a~1fそれぞれから受信したマイクロ波から得られる電力量が所定の電力量よりも低下した場合、上記したステップS41に戻って、新たなマスタ送電器を決定する構成であってもよい。
【0073】
以上のように、実施形態に係る無線給電システム100では、受電器2がマスタ決定部62を備えるため、受電器2は、通信可能な複数の送電器1a~1fのうち、適切な送電器1をマスタ送電器に決定することができる。
【0074】
また、送電器1がマスタ判定部51を備えるため、受電器2から受信した信号に基づき送電器1はマスタ送電器であるか否か判定することができる。このため、マスタ送電器に設定されている送電器1が受電器2を検出することができず、マイクロ波を送信できない場合であっても、受電器2にマイクロ波を送信できる送電器1がマスタ送電器となるように切り替えることができる。したがって、無線給電システム100は、適切に受電器2の給電を行うことができる。
【0075】
[実施形態の変形例]
次に、
図7を参照して、本開示の実施形態の変形例に係る無線給電システム100について説明する。
図7は本開示の実施形態の変形例に係る無線給電システム100の概略構成を示すブロック図である。
図7に示すように、実施形態の変形例に係る無線給電システム100は、実施形態に係る無線給電システム100と比較して、受電器制御部25がマスタ決定部62を備えていない点で相違する。このため、実施形態の変形例に係る無線給電システム100では、受電器2の回路構成を、実施形態の無線給電システム100が備える受電器2よりも簡易なものとすることができる。
【0076】
また、送電器1においてマスタ判定部51が他の送電器の中からマスタ送電器とする送電器を判定することができる点でも相違する。
【0077】
それ以外の点は、実施形態の変形例に係る無線給電システム100は、実施形態に係る無線給電システム100と同様となる。このため、同様な部材には同じ符号を付しその説明は省略する。
【0078】
すなわち、実施形態に係る無線給電システム100では、受電器2がマスタ送電器を決定する構成であったのに対して、実施形態の変形例に係る無線給電システム100では、送電器1が、他の送電器の中からマスタ送電器となる送電器を判定する構成となっている。
【0079】
以下において、実施形態の変形例に係る無線給電システム100における給電方法について説明する。
【0080】
(給電方法)
次に
図8を参照して、実施形態の変形例に係る無線給電システム100による給電方法について説明する。
図8は、本開示の実施形態の変形例に係る無線給電システム100における送電器1の給電動作の一例を示すフローチャートである。
【0081】
まず、前提として、実施形態の変形例に係る無線給電システム100では、送電器1a~1fのうちのいずれかがマスタ送電器として予め設定されている。なお、ここでは、説明の便宜上、予め送電器1aがマスタ送電器として設定され、送電器1b~1fそれぞれはスレーブ送電器として設定されているものとする。また、スレーブ送電器は、マイクロ波の送信先となる受電器2の情報、ならびに受電器2におけるマイクロ波の受信強度を示す受信強度信号を含むスレーブ通知信号(通知信号)を、マスタ送電器に対して送信するように構成されている。
【0082】
図8に示すように、送電器1は、マスタ送電器に予め設定されているか判定する(ステップS51)。ステップS51において「YES」の場合、送電器1は、マスタ送電器の動作処理を実行する。一方、ステップS51において「NO」の場合、送電器1は、スレーブ送電器の動作処理を実施する。
【0083】
(マスタ送電器の動作処理)
次に、
図9を参照してマスタ送電器の動作処理について説明する。
図9は、本開示の実施形態の変形例に係るマスタ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0084】
図9に示すように、マスタ送電器(送電器1a)は間欠的にマイクロ波を放射する(ステップS51)。
【0085】
ここで、マスタ送電器から放射されたマイクロ波を受電器2が受信すると、受電器2は受信したマイクロ波の受信強度を示す受信強度信号を、マスタ送電器に送信する。このため、マスタ送電器は、受電器2から送信された受信強度信号を、送電器通信アンテナ14を介して受信することで、受電器2との通信が確立されたこと、ならびに受電器2におけるマイクロ波の受信強度を把握することができる。
【0086】
そこで、マスタ送電器では、マイクロ波を放射した後、送電器制御部15が受電器2から受信強度信号を受信したか判定する(ステップS62)。送電器制御部15は、受電器2から受信強度信号を受信したと判定した場合(ステップS62において「YES」)、位相調整部52がこの信号に基づき、受電器2においてマイクロ波の受信強度が最も大きくなるように、マイクロ波の位相を調整する(ステップS63)。
【0087】
次に、マスタ送電器では、送電器制御部15がスレーブ送電器(送電器1b~1f)それぞれからスレーブ通知信号を受信したか判定する(ステップS64)。
【0088】
スレーブ送電器それぞれからスレーブ通知信号を受信したと判定した場合(ステップS64において「YES」)、送電器制御部15は、マスタ送電器から受電器2に送信しているマイクロ波の位相と同期させるように、スレーブ送電器それぞれに同期信号を送信する(ステップS65)。そして、マスタ送電器は、受電器2にマイクロ波を連続的に送信して送電を開始する(ステップS66)。
【0089】
これ以降のステップS67~ステップS69の各処理は、
図4に示すステップS26~ステップS28の各処理と同様であるため説明は省略する。なお、ステップS69において、「NO」の場合、すなわち、送電器制御部15が受電器2から満充電を示す信号を受信していないと判定した場合、ステップS63に戻って、マスタ送電器は、受電器2に送信するマイクロ波の位相の調整を再度、繰り返す。このため、給電エリア30内において受電器2が移動し、各送電器1a~1fそれぞれとの距離が変化したとしても、受電器2が受信するマイクロ波の受信強度が大きくなるようにマイクロ波の位相を調整することができる。
【0090】
一方、マスタ送電器において、送電器制御部15が受電器2からマイクロ波の受信強度を示す信号を受信していないと判定した場合(ステップS62において「NO」)、マスタ送電器と受電器2との間の通信は遮断されており、受電器2にマイクロ波を送信できない状態にあると判断する。そこで、ステップS62において「NO」となる場合、送電器制御部15は、スレーブ送電器それぞれからスレーブ通知信号を受信したか判定する(ステップS70)。ここで、送電器制御部15が、スレーブ送電器それぞれからスレーブ通知信号を受信していなと判定した場合(ステップS70において「NO」)、マスタ送電器はスレーブ送電器それぞれとの通信も遮断されている状態にあると判断し、最初のステップS61に戻って処理をやり直す。
【0091】
一方、マスタ送電器(送電器1a)において、送電器制御部15が、スレーブ送電器それぞれからスレーブ通知信号を受信していると判定した場合(ステップS70において「YES」)、マスタ判定部51は、複数のスレーブ送電器(送電器1b~1f)の中からマスタ送電器となる送電器を決定する(ステップS71)。具体的には、マスタ判定部51は、スレーブ送電器それぞれから受信したスレーブ通知信号に基づき、スレーブ送電器の中から受電器2におけるマイクロ波の受信強度が最も大きくなる送電器をマスタ送電器と判定する。
【0092】
マスタ判定部51がマスタ送電器となる送電器を決定すると、マスタ送電器は、マスタ送電器への動作切替えを指示する動作モード切替信号を、このマスタ送電器に決定された送電器に送信する(ステップS72)。なお、この動作モード切替信号を受信した送電器は、マスタ送電器として上述した
図9に示すマスタ送電器の動作処理を実施する。
【0093】
次に送電器制御部15は、設定されている動作モードをマスタ送電器からスレーブ送電器に切り替える(ステップS73)。そして、スレーブ送電器の動作処理を実施する(ステップS74)。
【0094】
(スレーブ送電器の動作処理)
次に、
図10を参照して、
図8のステップS53または
図9のステップS74に示すスレーブ送電器の動作処理の詳細について説明する。
図10は、本開示の実施形態の変形例に係るスレーブ送電器の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0095】
スレーブ送電器は、間欠的にマイクロ波を放射する(ステップS81)。ここで、スレーブ送電器から放射されたマイクロ波を受電器2が受信すると、受電器2は受信したマイクロ波の受信強度を示す受信強度信号を、スレーブ送電器に送信する。このため、スレーブ送電器は、受電器2から送信された受信強度信号を受信することで、受電器2との通信が確立されたこと、ならびに受電器2におけるマイクロ波の受信強度を把握することができる。
【0096】
そこで、スレーブ送電器では、マイクロ波を放射した後、送電器制御部15が受電器2から受信強度信号を受信したか判定する(ステップS82)。送電器制御部15は、受電器2から受信強度信号を受信していると判定した場合(ステップS82において「YES」)、マスタ送電器にスレーブ送電器であることを示すスレーブ通知信号を送信する(ステップS83)。
【0097】
次に、スレーブ送電器では、送電器制御部15がマスタ送電器から動作モード切替信号を受信したか否か判定する(ステップS84)。ここで、送電器制御部15が動作モード切替信号を受信したと判定した場合(ステップS84において「YES」)、マスタ送電器であることを示す信号を、給電エリア30内に設けられた他の送電器に送信し(ステップS85)、マスタ送電器として動作処理を行う(ステップS86)。
【0098】
一方、送電器制御部15が動作モード切替信号を受信していないと判定した場合(ステップS84において「NO」)、スレーブ送電器は受電器2への送電を開始する(ステップS87)。そして、スレーブ送電器では、送電器制御部15がマスタ送電器から同期信号を受信したと判定した場合(ステップS88において「YES」)、同期信号に基づき位相調整部52が移相器12を制御して受電器2に送信するマイクロ波の位相を調整する(ステップS89)。そして、スレーブ送電器は、位相が調整されたマイクロ波を受電器2に送信する。
【0099】
一方、送電器制御部15がマスタ送電器から同期信号を受信していないと判定した場合(ステップS88において「NO」)、位相を調整することなくそのまま、受電器2へのマイクロ波の送信を継続する。
【0100】
スレーブ送電器では、送電器制御部15がマスタ送電器から送電中止を示す信号を受信したと判定した場合(ステップS90において「YES」)、受電器2への送電を停止する。一方、送電器制御部15がマスタ送電器から送電中止を示す信号を受信していないと判定している間は(ステップS90において「NO」)、ステップS87に戻って受電器2への送電を継続する。
【0101】
(受電器の動作処理)
次に
図11を参照して、受電器2の動作処理について説明する。
図11は本開示の実施形態の変形例に係る受電器2の動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0102】
まず、受電器2は給電エリア30内に移動すると、受電器制御部25が送電器1a~1fそれぞれから放射されたマイクロ波の受信を検出したか判定する(ステップS101)。受電器2は、マイクロ波の受信を検出するまでステップS101の処理を繰り返す。
【0103】
一方、受電器制御部25がマイクロ波の受信を検出したと判定した場合(ステップS101において「YES」)、受信レベル算出部60が送電器1a~1fそれぞれから受信したマイクロ波の受信強度を算出する(ステップS102)。
【0104】
そして、受電器2は、送電器1a~1fそれぞれに対して、受信レベル算出部60で算出した受信強度を示す受信強度信号を送信する(ステップS103)。これ以降のステップS104~S106の各処理は、
図6に示すステップS45~S47の各処理と同様となるため、説明は省略する。
【0105】
以上のように、実施形態の変形例に係る無線給電システム100では、送電器(送電器1a)がマスタ判定部51を備えるため、受電器2との通信を確立することができない場合、他の送電器(送電器1b~1f)から受信したスレーブ通知信号に基づき、他の送電器の中からマスタ送電器を決定することができる。このため、マスタ送電器に設定されている送電器1が受電器2を検出することができず、マイクロ波を送信できない場合であっても、受電器2にマイクロ波を送信できる送電器1がマスタ送電器となるように切り替えることができる。したがって、無線給電システム100は、適切に受電器2の給電を行うことができる。