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特許7598467二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/42 20210101AFI20241204BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241204BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241204BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241204BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241204BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241204BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241204BHJP
【FI】
H01M50/42
H01M50/449
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/446
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023531892
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2022025239
(87)【国際公開番号】W WO2023276867
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021108376
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】李 維
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
(72)【発明者】
【氏名】香川 靖之
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173717(WO,A1)
【文献】特開2019-192339(JP,A)
【文献】特開2013-161784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SP値13.0(cal/cm1/2以上の水溶性ポリマーと、
SP値13.0(cal/cm1/2未満の非水溶性ポリマーとの複合ポリマーを含み、
前記水溶性ポリマーは、第1反応性官能基を含み、
前記非水溶性ポリマーは、前記第1反応性官能基に化学結合可能な第2反応性官能基を含み、
前記複合ポリマーにおいて、
前記第1反応性官能基の少なくとも一部と、
前記第2反応性官能基の少なくとも一部とが化学結合している、二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーの前記第1反応性官能基が、カルボキシ基を含み、
前記非水溶性ポリマーの前記第2反応性官能基が、グリシジル基を含む、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーは、
(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位と、
カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有し、
前記非水溶性ポリマーは、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位と、
グリシジル基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有する請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項4】
前記水溶性ポリマーおよび前記非水溶性ポリマーの総量100質量部に対して、
前記水溶性ポリマーが、50質量部以上99質量部以下であり、
前記非水溶性ポリマーが、1質量部以上50質量部以下である、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項5】
前記水溶性ポリマーの重量平均分子量が、1万以上20万以下である、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーのガラス転移温度が、150℃以上240℃以下である、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項7】
前記非水溶性ポリマーのガラス転移温度が、-40℃以上50℃以下である、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項8】
請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含むことを特徴とする、二次電池セパレータ用コート材。
【請求項9】
さらに、無機充填剤と分散剤とを含む
ことを特徴とする、請求項8に記載の二次電池セパレータ用コート材。
【請求項10】
多孔膜と、
前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項8に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜と
を備えることを特徴とする、二次電池セパレータ。
【請求項11】
多孔膜を準備する工程、および、
前記多孔膜の少なくとも片面に、請求項8に記載の二次電池セパレータ用コート材を塗布する工程を備える
ことを特徴とする、二次電池セパレータの製造方法。
【請求項12】
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される請求項10に記載される二次電池セパレータとを備えることを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池内には、正極と負極とを隔離し、電解液中のイオンを通過させるためのセパレータが備えられている。
【0003】
このようなセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン多孔膜が知られており、また、セパレータの表面に、種々の機能層を設けることが知られている。
【0004】
セパレータに形成される機能層としては、例えば、アルミナおよび樹脂を含む機能層用組成物を、ポリエチレン製セパレータ基材に塗布および乾燥させて得られる機能層が知られている。機能層用組成物として、アクリルアミド、メタクリル酸およびジメチルアクリルアミドを重合させて得られる水溶性重合体と、n-ブチルアクリレート、メタクリル酸、アクリロニトリル、N-メチロールアクリルアミドおよびアリルグリシジルエーテルを重合させて得られる粒子状重合体と、アルミナと、分散剤と、界面活性剤との混合物が、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2017/026095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、セパレータの形状が、熱による収縮で変化すると、正極と負極との間でショートする可能性がある。そのため、機能層には、耐熱性が要求される。しかし、上記の機能層は、耐熱性が十分ではないという不具合がある。
【0007】
また、二次電池のセパレータは、発電のためにイオンを通過させる必要がある。そのため、機能層には、透気性が要求される。しかし、上記した機能層は、セパレータの透気性を低下させるという不具合がある。
【0008】
さらに、機能層には、セパレータに対する密着性の向上が要求されている。しかし、上記した機能層は、セパレータに対する密着性が十分ではないという不具合がある。
【0009】
加えて、機能層用組成物には、機能層の生産性の観点から、貯蔵安定性、均一分散性および低粘性が要求されている。
【0010】
本発明は、優れた耐熱性、透気性および密着性を兼ね備える二次電池セパレータを得ることができ、さらに、貯蔵安定性、均一分散性および低粘性にも優れる二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、その二次電池セパレータの製造方法、および、その二次電池セパレータを備える二次電池である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、SP値13.0(cal/cm1/2以上の水溶性ポリマーと、SP値13.0(cal/cm1/2未満の非水溶性ポリマーとの複合ポリマーを含み、前記水溶性ポリマーは、第1反応性官能基を含み、前記非水溶性ポリマーは、前記第1反応性官能基に化学結合可能な第2反応性官能基を含み、前記複合ポリマーにおいて、前記第1反応性官能基の少なくとも一部と、前記第2反応性官能基の少なくとも一部とが化学結合している、二次電池セパレータ用コート材原料を、含んでいる。
【0012】
本発明[2]は、前記水溶性ポリマーの前記第1反応性官能基が、カルボキシ基を含み、前記非水溶性ポリマーの前記第2反応性官能基が、グリシジル基を含む、上記[1]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を、含んでいる。
【0013】
本発明[3]は、前記水溶性ポリマーは、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位と、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有し、前記非水溶性ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位と、グリシジル基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位とを有する、上記[1]または[2]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を、含んでいる。
【0014】
本発明[4]は、前記水溶性ポリマーおよび前記非水溶性ポリマーの総量100質量部に対して、前記水溶性ポリマーが、50質量部以上99質量部以下であり、前記非水溶性ポリマーが、1質量部以上50質量部以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を、含んでいる。
【0015】
本発明[5]は、前記水溶性ポリマーの重量平均分子量が、1万以上20万以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を、含んでいる。
【0016】
本発明[6]は、前記水溶性ポリマーのガラス転移温度が、150℃以上240℃以下である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を、含んでいる。
【0017】
本発明[7]は、前記非水溶性ポリマーのガラス転移温度が、-40℃以上50℃以下である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を、含んでいる。
【0018】
本発明[8]は、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含む、二次電池セパレータ用コート材を、含んでいる。
【0019】
本発明[9]は、さらに、無機充填剤と分散剤とを含む、上記[8]に記載の二次電池セパレータ用コート材を、含んでいる。
【0020】
本発明[10]は、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも片面に配置される上記[8]または[9]に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備える、二次電池セパレータを、含んでいる。
【0021】
本発明[11]は、多孔膜を準備する工程、および、前記多孔膜の少なくとも片面に、上記[8]または[9]に記載の二次電池セパレータ用コート材を塗布する工程を備える、二次電池セパレータの製造方法を、含んでいる。
【0022】
本発明[12]は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される上記[10]に記載される二次電池セパレータとを備える、二次電池を、含んでいる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの複合ポリマーを含み、水溶性ポリマーは、第1反応性官能基を含み、非水溶性ポリマーは、第1反応性官能基に化学結合可能な第2反応性官能基を含み、複合ポリマーにおいて、第1反応性官能基の少なくとも一部と、第2反応性官能基の少なくとも一部とが化学結合している。
【0024】
そのため、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、貯蔵安定性、均一分散性および低粘性に優れる。さらに、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料によれば、耐熱性、透気性および密着性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0025】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含むため、二次電池セパレータの生産性の向上を図ることができる。さらに、本発明の二次電池セパレータ用コート材は、耐熱性、透気性および密着性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0026】
本発明の二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えるため、生産性、耐熱性、透気性および密着性に優れる。
【0027】
本発明の二次電池セパレータの製造方法によれば、耐熱性、透気性および密着性に優れる二次電池セパレータを、効率よく製造できる。
【0028】
本発明の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、生産性、耐熱性、透気性および密着性に優れる。その結果、本発明の二次電池は、生産性、耐熱性、透気性および密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの複合ポリマーを含んでいる。複合ポリマーは、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとを含み、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとは化学結合している。すなわち、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとが化学結合することによって、複合ポリマーが形成されている。
【0030】
水溶性ポリマーは、二次電池セパレータ用コート材原料の水に対する溶解性を向上させるポリマーである。水溶性ポリマーは、比較的親水性であり、水溶性ポリマーのSP値(溶解度パラメータ)は、13.0(cal/cm1/2以上である。
【0031】
なお、SP値は、Million Zillion Software社の計算ソフトCHEOPS(version4.0)にて算出できる。また、該計算ソフトで用いられる計算手法は、Computational Materials Science of Polymers(A.A.Askadskii、 Cambridge Intl Science Pub (2005/12/30))Chapter XIIに記載されている(以下同様)。
【0032】
水溶性ポリマーのSP値(溶解度パラメータ)は、より具体的には、13.0(cal/cm1/2以上、好ましくは、13.2(cal/cm1/2以上、より好ましくは、13.4(cal/cm1/2以上である。また、水溶性ポリマーのSP値(溶解度パラメータ)は、例えば、20.0(cal/cm1/2以下、好ましくは、18.0(cal/cm1/2以下、より好ましくは、16.0(cal/cm1/2以下である。
【0033】
水溶性ポリマーは、第1反応性官能基を含んでいる。第1反応性官能基は、非水溶性ポリマー(後述)の第2反応性官能基(後述)に化学結合するための官能基である。第1反応性官能基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基およびリン酸基が挙げられる。複合ポリマーの生産容易性の観点から、第1反応性官能基として、好ましくは、カルボキシ基が挙げられる。
【0034】
水溶性ポリマーは、水溶性ポリマー原料(モノマー組成物)を、公知の方法で重合することにより得られる。水溶性ポリマー原料は、水溶性ポリマーのSP値が上記範囲となり、かつ、上記の第1反応性官能基が水溶性ポリマーに含まれるように、適宜選択される。
【0035】
より具体的には、水溶性ポリマー原料は、例えば、(メタ)アクリルアミドと、第1反応性官能基含有モノマーとを含有する。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを示す(以下同様)。
【0036】
水溶性ポリマー原料が、(メタ)アクリルアミドを含んでいれば、水溶性ポリマーは、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位を有するため、水溶性(SP値)を良好に調整できる。
【0037】
(メタ)アクリルアミドとしては、アクリルアミドおよびメタクリルアミドが挙げられ、好ましくは、メタクリルアミドが挙げられる。
【0038】
第1反応性官能基含有モノマーは、上記した第1反応性官能基と、エチレン性二重結合とを含有するモノマーである。第1反応性官能基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、イソシアネート基含有ビニルモノマーおよびリン酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0039】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびこれらの塩が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸および無水フマル酸が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0040】
水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、および、アリルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0042】
イソシアネート基含有ビニルモノマーとしては、例えば、イソシアナトメチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、および、4-イソシアナトブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0043】
リン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アシッドホスフォオキシエチル(メタ)アクリレート、および、モノ(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)ホスフェートが挙げられる。
【0044】
これら第1反応性官能基含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用できる。なお、第1反応性官能基含有モノマーが2種類以上併用される場合、第1反応性官能基含有モノマーの種類は、第1反応性官能基同士で結合しないように適宜選択される。
【0045】
第1反応性官能基含有モノマーとして、好ましくは、カルボキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。水溶性ポリマー原料が、カルボキシ基含有ビニルモノマーを含んでいれば、水溶性ポリマーは、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位を有するため、優れた水溶性を得ることができる。
【0046】
また、水溶性ポリマー原料は、任意成分として、共重合性モノマー(以下、第1共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。第1共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミドおよび/または第1反応性官能基含有モノマーと共重合可能なモノマーが挙げられる。
【0047】
第1共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1~20のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。そのようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、および、オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0048】
また、第1共重合性モノマーとしては、例えば、3級アミノ基含有ビニルモノマー、4級アンモニウム基含有ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマー、および、アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0049】
3級アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、および、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、および、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、および、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0050】
4級アンモニウム基含有ビニルモノマーとしては、例えば、上記3級アミノ基含有モノマーに4級化剤を作用させた4級化物が挙げられる。4級化剤としては、例えば、エピハロヒドリン、ハロゲン化ベンジルおよびハロゲン化アルキルが挙げられる。
【0051】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0052】
スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、および、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸が挙げられる。また、スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、塩も挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩が挙げられる。スルホン酸基含有モノマーの塩として、より具体的には、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、および、メタリルスルホン酸アンモニウムが挙げられる。
【0053】
アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルが挙げられる。
【0054】
さらに、第1共重合性モノマーとしては、例えば、ビニルエステル類、芳香族ビニルモノマー、不飽和カルボン酸アミド((メタ)アクリルアミドを除く。)、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、α-オレフィン類、ジエン類、および、架橋性ビニルモノマーも挙げられる。ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、αメチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエンおよびクロロスチレンが挙げられる。不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。複素環式ビニル化合物としては、例えば、ビニルピロリドンが挙げられる。ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデンが挙げられる。α-オレフィン類としては、例えば、エチレンおよびプロピレンが挙げられる。ジエン類としては、例えば、ブタジエンが挙げられる。架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレートおよびペンタエリストールテトラアクリレートが挙げられる。
【0055】
これら第1共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。第1共重合性モノマーとして、耐熱性および透気性の観点から、好ましくは、3級アミノ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0056】
また、第1反応性官能基と第2反応性官能基との組み合わせによって、後述する第2反応性官能基と反応できない(または、反応可能であるが、反応速度などの観点からほとんど反応しない)種類の第1反応性官能基を含有する第1反応性官能基含有モノマーは、第1共重合性モノマーに分類される。水溶性の度合い(SP値)を調整する観点から、第1共重合性モノマーとして、好ましくは、第1反応性基含有モノマーとして上記した水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0057】
また、好ましくは、第1共重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有しない。すなわち、水溶性ポリマー原料は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有しない。より具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有していないモノマー組成物は、好ましくは、水溶性ポリマー原料であり、後述する非水溶性ポリマー原料とは区別される。
【0058】
水溶性ポリマー原料において、各モノマーの割合は、水溶性ポリマーのSP値が上記範囲となり、かつ、水溶性ポリマーが上記の第1反応性官能基を含むように、適宜選択される。
【0059】
例えば、水溶性ポリマー原料は、(メタ)アクリルアミドおよび第1反応性官能基含有モノマーからなるか、または、(メタ)アクリルアミド、第1反応性官能基含有モノマーおよび第1共重合性モノマーからなる。
【0060】
水溶性ポリマー原料は、好ましくは、(メタ)アクリルアミドおよびカルボキシ基含有ビニルモノマーからなるか、または、(メタ)アクリルアミド、カルボキシ基含有ビニルモノマーおよび第1共重合性モノマーからなる。
【0061】
(メタ)アクリルアミドの含有割合は、優れた耐熱性を得る観点から、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、60質量部以上、さらに好ましくは、70質量部以上である。また、(メタ)アクリルアミドの含有割合は、優れた耐熱性を得る観点から、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、97質量部以下、好ましくは、96質量部以下、より好ましくは、95質量部以下である。
【0062】
また、第1反応性官能基含有モノマーの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、8質量部以上、より好ましくは、10質量部以上である。また、第1反応性官能基含有モノマーの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、60質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下である。
【0063】
また、水溶性ポリマー原料において、第1共重合性モノマーの含有割合は、水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、40質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下であり、例えば、0質量部以上である。
【0064】
そして、水溶性ポリマーは、上記した水溶性ポリマー原料を、後述する方法で重合することにより得られる。水溶性ポリマーにおける各モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、水溶性ポリマー原料中の各モノマーの含有率と、同一である。
【0065】
すなわち、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率は、優れた耐熱性を得る観点から、水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、70質量%以上である。また、(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位の含有率は、優れた耐熱性を得る観点から、水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、97質量%以下、好ましくは、96質量%以下、より好ましくは、95質量%以下である。
【0066】
また、第1反応性官能基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、3質量%以上、好ましくは、8質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。また、第1反応性官能基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
【0067】
また、第1共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率が、水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下であり、例えば、0質量%以上である。
【0068】
水溶性ポリマーの重量平均分子量(GPC法による標準ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算重量平均分子量)は、耐熱性および透気性の観点から、例えば、5千以上、好ましくは、1万以上、より好ましくは、3万以上、さらに好ましくは、5万以上である。また、水溶性ポリマーの重量平均分子量(GPC法による標準ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算重量平均分子量)は、低粘性の観点から、例えば、50万以下、好ましくは、20万以下、より好ましくは、15万以下、さらに好ましくは、10万以下、とりわけ好ましくは、8万以下である。
【0069】
水溶性ポリマーの重量平均分子量が上記範囲であれば、とりわけ貯蔵安定性、均一分散性および低粘性の向上を図ることができる。なお、重量平均分子量の測定方法は、後述する実施例に準拠する。
【0070】
また、水溶性ポリマーのガラス転移温度は、耐熱性および透気性の観点から、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上、より好ましくは、200℃以上、さらに好ましくは、210℃以上である。また、水溶性ポリマーのガラス転移温度は、二次電池セパレータ用コート材を塗工した塗工層の柔軟性の観点から、例えば、300℃以下、好ましくは、240℃以下、より好ましくは、230℃以下、さらに好ましくは、220℃以下である。
【0071】
水溶性ポリマーのガラス転移温度が上記範囲であれば、とりわけ耐熱性、透気性および密着性を兼ね備える二次電池セパレータを得ることができ、さらに、貯蔵安定性、均一分散性および低粘性の向上を図ることができる。なお、ガラス転移温度は、FOXの式により算出される(以下同様)。
【0072】
水溶性ポリマーの比重は、例えば、1.02以上、好ましくは、1.05以上である。また、水溶性ポリマーの比重は、例えば、1.20以下、好ましくは、1.15以下である。
【0073】
非水溶性ポリマーは、二次電池セパレータ用コート材原料の密着性を向上させるポリマーである。非水溶性ポリマーは、比較的疎水性であり、非水溶性ポリマーのSP値(溶解度パラメータ)は、13.0(cal/cm1/2未満である。
【0074】
非水溶性ポリマーのSP値(溶解度パラメータ)は、より具体的には、13.0(cal/cm1/2未満、好ましくは、12.5(cal/cm1/2以下、より好ましくは、12.0(cal/cm1/2以下、さらに好ましくは、11.0(cal/cm1/2以下である。また、非水溶性ポリマーのSP値(溶解度パラメータ)は、例えば、7.0(cal/cm1/2以上、好ましくは、8.0(cal/cm1/2以上、より好ましくは、9.0(cal/cm1/2以上である。
【0075】
非水溶性ポリマーは、第2反応性官能基を含んでいる。第2反応性官能基は、上記の水溶性ポリマーの第1反応性官能基に化学結合するための官能基である。第2反応性官能基としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基およびリン酸基が挙げられる。第2反応性官能基は、第1反応性官能基の種類に応じて適宜選択される。
【0076】
より具体的には、例えば、第1反応性官能基がカルボキシ基を含む場合、第2反応性官能基としては、例えば、カルボキシル基に対して結合可能なグリシジル基が選択される。
また、例えば、第1反応性官能基が水酸基を含む場合、第2反応性官能基としては、例えば、水酸基に対して結合可能なイソシアネート基が選択される。また、例えば、第1反応性官能基がグリシジル基を含む場合、第2反応性官能基としては、グリシジル基に対して結合可能なカルボキシル基および/またはリン酸基が選択される。また、例えば、第1反応性官能基がイソシアネート基を含む場合、第2反応性官能基としては、イソシアネート基に対して結合可能な水酸基が選択される。また、例えば、第1反応性官能基がリン酸基を含む場合、第2反応性官能基としては、リン酸基に対して結合可能なグリシジル基が選択される。複合ポリマーの生産容易性の観点から、第2反応性官能基として、好ましくは、グリシジル基が挙げられる。
【0077】
非水溶性ポリマーは、非水溶性ポリマー原料(モノマー組成物)を、公知の方法で重合することにより得られる。水溶性ポリマー原料は、非水溶性ポリマーのSP値が上記範囲となり、かつ、上記の第2反応性官能基が非水溶性ポリマーに含まれるように、適宜選択される。
【0078】
より具体的には、非水溶性ポリマー原料(モノマー組成物)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、第2反応性官能基含有モノマーとを含有する。
【0079】
非水溶性ポリマー原料が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでいれば、非水溶性ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位を有するため、非水溶性(SP値)を良好に調整できる。
【0080】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、より具体的には、炭素数1~20のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、炭素数1~4のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、n-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0081】
第2反応性官能基含有モノマーは、上記した第2反応性官能基と、エチレン性二重結合とを含有するモノマーである。第2反応性官能基含有モノマーとしては、例えば、上記したカルボキシ基含有ビニルモノマー、上記した水酸基含有ビニルモノマー、上記したグリシジル基含有ビニルモノマー、上記したイソシアネート基含有ビニルモノマーおよび上記したリン酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0082】
これら第2反応性官能基含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用できる。なお、第2反応性官能基含有モノマーが2種類以上併用される場合、第2反応性官能基含有モノマーの種類は、第2反応性官能基同士で結合しないように適宜選択される。
【0083】
第2反応性官能基含有モノマーは、第1反応性官能基含有モノマーの種類に応じて、適宜選択される。すなわち、第1反応性官能基および第2反応性官能基が、上記した組み合わせとなるように、適宜選択される。
【0084】
より具体的には、例えば、第1反応性官能基含有モノマーがカルボキシ基含有ビニルモノマーを含む場合、第2反応性官能基としては、例えば、グリシジル基含有ビニルモノマーが選択される。また、例えば、第1反応性官能基含有モノマーが水酸基含有ビニルモノマーを含む場合、第2反応性官能基含有モノマーとしては、例えば、イソシアネート基含有ビニルモノマーが選択される。また、例えば、第1反応性官能基含有モノマーがグリシジル基含有ビニルモノマーを含む場合、第2反応性官能基含有モノマーとしては、カルボキシル基含有ビニルモノマーおよび/またはリン酸基含有ビニルモノマーが選択される。
また、例えば、第1反応性官能基含有モノマーがイソシアネート基含有ビニルモノマーを含む場合、第2反応性官能基含有モノマーとしては、水酸基含有ビニルモノマーが選択される。また、例えば、第1反応性官能基含有モノマーがリン酸基含有ビニルモノマーを含む場合、第2反応性官能基含有モノマーとしては、グリシジル基含有ビニルモノマーが選択される。
【0085】
第2反応性官能基含有モノマーとして、好ましくは、グリシジル基含有ビニルモノマーが挙げられる。非水溶性ポリマー原料が、グリシジル基含有ビニルモノマーを含んでいれば、非水溶性ポリマーは、グリシジル基含有ビニルモノマーに由来する繰り返し単位を有するため、生産よく複合ポリマーが得られる。
【0086】
また、非水溶性ポリマー原料は、任意成分として、共重合性モノマー(以下、第2共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。第2共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび/または第2反応性官能基含有モノマーと共重合可能なモノマーが挙げられる。
【0087】
第2共重合性モノマーとしては、例えば、上記した3級アミノ基含有ビニルモノマー、上記した4級アンモニウム基含有ビニルモノマー、上記したシアノ基含有ビニルモノマー、上記したスルホン酸基含有ビニルモノマー、上記したアセトアセトキシ基含有ビニルモノマー、上記したビニルエステル類、上記した芳香族ビニルモノマー、上記した不飽和カルボン酸アミド((メタ)アクリルアミドを含む)、上記した複素環式ビニル化合物、上記したハロゲン化ビニリデン化合物、上記したα-オレフィン類、上記したジエン類、および、上記した架橋性ビニルモノマーが挙げられる。
【0088】
これら第2共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。第2共重合性モノマーとして、密着性の観点から、好ましくは、芳香族ビニルモノマーが挙げられる。
【0089】
なお、第1反応性官能基と第2反応性官能基との組み合わせによって、上記した第1反性官能基と反応できない(または、反応可能であるが、反応速度などの観点からほとんど反応しない)種類の第2反応性官能基を含有する第2反応性官能基含有モノマーは、第2共重合性モノマーに分類される。非水溶性の度合い(SP値)を調整する観点から、第2共重合性モノマーとして、好ましくは、第2反応性基含有モノマーとして上記したカルボキシ基含有ビニルモノマーおよび水酸基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0090】
また、非水溶性ポリマー原料は、好ましくは、実質的に、シアノ基含有ビニルモノマー(具体的には、(メタ)アクリロニトリル)を含まない。実質的に、シアノ基含有ビニルモノマーを含まないとは、非水溶性ポリマー原料に対して、シアノ基含有ビニルモノマーが、例えば、2.0質量%以下、好ましくは、1.0質量%以下であることを意味する。
シアノ基含有ビニルモノマーを配合すると、二次電池セパレータ用コート材(後述)の耐電解液性が低下する場合がある。そのため、非水溶性ポリマー原料は、好ましくは、シアノ基含有ビニルモノマーを含まない。
【0091】
非水溶性ポリマー原料において、各モノマーの割合は、非水溶性ポリマーのSP値が上記範囲となり、かつ、非水溶性ポリマーが上記の第2反応性官能基を含むように、適宜選択される。
【0092】
例えば、非水溶性ポリマー原料は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび第2反応性官能基含有モノマーからなるか、または、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、第2反応性官能基含有モノマーおよび第2共重合性モノマーからなる。
【0093】
非水溶性ポリマー原料は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびグリシジル基含有ビニルモノマーからなるか、または、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル基含有ビニルモノマーおよび第2共重合性モノマーからなる。
【0094】
例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、優れた密着性を得る観点から、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上である。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、優れた密着性を得る観点から、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、99質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、80質量部以下、さらに好ましくは、70質量部以下である。
【0095】
また、第2反応性官能基含有モノマーの含有割合(総量)は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、さらに好ましくは、4質量部以上である。また、第2反応性官能基含有モノマーの含有割合(総量)は、非水溶性ポリマー原料100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0096】
また、非水溶性ポリマー原料において、第2共重合性モノマーの含有割合は、非水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、0質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、30質量部以上である。また、非水溶性ポリマー原料において、第2共重合性モノマーの含有割合は、非水溶性ポリマー原料の総量100質量部に対して、例えば、80質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0097】
そして、非水溶性ポリマーは、上記した非水溶性ポリマー原料を、後述する方法で重合することにより得られる。非水溶性ポリマーにおける各モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマー原料中の各モノマーの含有率と、同一である。
【0098】
すなわち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマーの総量に対して、優れた密着性を得る観点から、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上である。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下である。
【0099】
また、第2反応性官能基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、3質量%以上、さらに好ましくは、4質量%以上である。また、第2反応性官能基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0100】
また、第1共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、例えば、70質量%以下である。
【0101】
また、第2共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上である。また、第2共重合性モノマーに由来する繰り返し単位の含有率は、非水溶性ポリマーの総量に対して、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0102】
非水溶性ポリマーのガラス転移温度は、透気性および密着性の観点から、例えば、-60℃以上、好ましくは、-40℃以上、より好ましくは、-20℃以上、さらに好ましくは、0℃以上である。また、非水溶性ポリマーのガラス転移温度は、低粘性および密着性の観点から、例えば、70℃以下、好ましくは、50℃以下、より好ましくは、30℃以下、さらに好ましくは、10℃以下である。
【0103】
非水溶性ポリマーのガラス転移温度が上記範囲であれば、とりわけ耐熱性、透気性および密着性を兼ね備える二次電池セパレータを得ることができ、さらに、貯蔵安定性、均一分散性および低粘性の向上を図ることができる。
【0104】
非水溶性ポリマーの比重は、例えば、0.85以上、好ましくは、0.89以上である。また、非水溶性ポリマーの比重は、例えば、0.98以下、好ましくは、0.95以下である。
【0105】
水溶性ポリマーの比重と非水溶性ポリマーの比重との差は、例えば、0.04以上、好ましくは、0.10以上である。また、水溶性ポリマーの比重と非水溶性ポリマーの比重との差は、例えば、0.35以下、好ましくは、0.25以下である。
【0106】
次に、複合ポリマーおよび二次電池セパレータ用コート材原料を製造する方法について、説明する。
【0107】
具体的には、複合ポリマーおよび二次電池セパレータ用コート材原料の製造方法として、例えば、第1方法および第2方法が挙げられる。第1方法では、例えば、水溶性ポリマー原料を重合し、水溶性ポリマーを得た後に、水溶性ポリマー存在下で、非水溶性ポリマー原料を重合する。第2方法では、まず、非水溶性ポリマー原料を重合し、非水溶性ポリマーを得た後に、非水溶性ポリマー存在下で、水溶性ポリマー原料を重合する。好ましくは、第1方法が挙げられる。
【0108】
第1方法は、水溶性ポリマー原料を重合してなる水溶性ポリマーを得る工程(第1工程)と、水溶性ポリマーの存在下で、非水溶性ポリマー原料を重合してなる水溶性ポリマーを得るとともに、第1反応性官能基の少なくとも一部と第2反応性官能基の少なくとも一部とを化学結合させる工程(第2工程)とを備えている。
【0109】
より具体的には、第1工程では、まず、水溶性ポリマー原料を重合させ、水溶性ポリマーを得る。水溶性ポリマーの合成では、水に、公知の重合開始剤を配合し、水中に水溶性ポリマー原料を滴下して、水溶性ポリマー原料を重合させる。また、水溶性ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、公知の乳化剤(界面活性剤)を配合できる。
【0110】
重合条件は、水溶性ポリマー原料の種類に応じて、適宜設定される。例えば、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、重合温度が、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、重合時間が、例えば、30時間以下、好ましくは、20時間以下である。
【0111】
また、非水溶性ポリマーの重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、例えば、公知の添加剤を、適宜の割合で配合できる。添加剤としては、例えば、pH調整剤、金属イオン封止剤、分子量調節剤(連鎖移動剤)が挙げられる。
【0112】
これにより、水溶性ポリマー原料が重合され、水溶性ポリマーが得られる。水溶性ポリマーは、第1反応性官能基含有モノマーに由来する繰り返し単位を有する。すなわち、水溶性ポリマーは、分子中に、第1反応性官能基を含んでいる。
【0113】
また、水溶性ポリマーは、水に溶解された水溶液として得られる。水溶液において、水溶性ポリマーの固形分濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0114】
次いで、第2工程では、水溶性ポリマー存在下で、非水溶性ポリマー原料を重合する。より具体的には、非水溶性ポリマー原料を水中に乳化させ、その乳化液を、上記の水溶性ポリマーの水溶液に添加し、非水溶性ポリマー原料を重合させる。
【0115】
重合条件は、非水溶性ポリマー原料の種類に応じて、適宜設定される。例えば、常圧下において、重合温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、重合温度が、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上である。また、重合時間が、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0116】
これにより、非水溶性ポリマー原料が重合され、非水溶性ポリマーが得られる。非水溶性ポリマーは、第2反応性官能基含有モノマーに由来する繰り返し単位を有する。すなわち、非水溶性ポリマーは、分子中に、第2反応性官能基を含んでいる。
【0117】
そして、この方法では、非水溶性ポリマーの生成とともに、非水溶性ポリマー中の第2反応性官能基の少なくとも一部が、水溶性ポリマー中の第1反応性官能基の少なくとも一部と、化学結合する。
【0118】
より具体的には、例えば、第1反応性官能基がカルボキシ基を含む場合、そのカルボキシ基は、第2反応性官能基としてのグリシジル基と化学結合する。また、例えば、第1反応性官能基が水酸基を含む場合、その水酸基は、第2反応性官能基としてのイソシアネート基と化学結合する。また、例えば、第1反応性官能基がグリシジル基を含む場合、そのグリシジル基は、第2反応性官能基としてのカルボキシル基および/またはリン酸基と化学結合する。また、例えば、第1反応性官能基がイソシアネート基を含む場合、そのイソシアネート基は、第2反応性官能基としての水酸基と化学結合する。また、例えば、第1反応性官能基がリン酸基を含む場合、そのリン酸基は、第2反応性官能基としてのグリシジル基と化学結合する。
【0119】
なお、これらの反応条件は、第1反応性官能基の種類、および、第2反応性官能基の種類に応じて適宜設定される。第1反応性官能基および第2反応性官能基の反応は、通常、第2工程における非水溶性ポリマーの合成と同時に進行する。
【0120】
その結果、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとを化学結合させることができ、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの複合ポリマーが得られる。これにより、複合ポリマーを含む分散液(二次電池セパレータ用コート材原料)が得られる。
【0121】
この分散液において、二次電池セパレータ用コート材原料の含有量(分散液の固形分濃度)は、例えば、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下である。
【0122】
このような二次電池セパレータ用コート材原料において、非水溶性ポリマーの質量に対する、水溶性ポリマーの質量の比率は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、水溶性ポリマーおよび非水溶性ポリマーの総量100質量部に対して、水溶性ポリマーが、耐熱性の観点から、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、60質量部以上、さらに好ましくは、70質量部以上、とりわけ好ましくは、80質量部以上である。また、水溶性ポリマーおよび非水溶性ポリマーの総量100質量部に対して、水溶性ポリマーが、透気性および密着性の観点から、例えば、99.9質量部以下、好ましくは、99質量部以下、より好ましくは、97質量部以下、さらに好ましくは、95質量部以下である。
【0123】
また、水溶性ポリマーおよび非水溶性ポリマーの総量100質量部に対して、非水溶性ポリマーが、透気性および密着性の観点から、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、5質量部以上である。
また、水溶性ポリマーおよび非水溶性ポリマーの総量100質量部に対して、非水溶性ポリマーが、耐熱性の観点から、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下、とりわけ好ましくは、20質量部以下である。
【0124】
なお、非水溶性ポリマーの質量および水溶性ポリマーの質量は、非水溶性ポリマー原料および水溶性ポリマー原料の仕込みの量から算出することができる。すなわち、上記の水溶性ポリマーの質量とは、水溶性ポリマー原料の質量を意味し、上記の非水溶性ポリマーの質量とは、非水溶性ポリマー原料の質量を意味する。
【0125】
そして、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの複合ポリマーを含み、水溶性ポリマーは、第1反応性官能基を含み、非水溶性ポリマーは、第1反応性官能基に化学結合可能な第2反応性官能基を含み、複合ポリマーにおいて、第1反応性官能基の少なくとも一部と、第2反応性官能基の少なくとも一部とが化学結合している。
【0126】
そのため、上記の二次電池セパレータ用コート材原料は、貯蔵安定性、均一分散性および低粘性に優れる。さらに、上記の二次電池セパレータ用コート材原料によれば、耐熱性、透気性および密着性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0127】
とりわけ、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとが、複合ポリマーを形成せず、単に混合されている場合、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの比重差によって分離を生じる。また、分離を抑制するために、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとを個別に用意し、使用時にこれらを混合することも検討されるが、作業が煩雑であり、さらに、混合物は均一分散性に劣る。
【0128】
これに対して、上記の二次電池セパレータ用コート材原料では、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとが化学結合し、複合ポリマーを形成しているため、比重差による分離を抑制でき、優れた貯蔵安定性を得られる。さらに、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとが化学結合し、複合ポリマーを形成しているため、使用時における混合工程が不要であり、作業性および均一分散性に優れる。
【0129】
さらに、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとが化学結合しておらず、複合ポリマーを形成していない場合、水溶性ポリマー間の相互作用が大きいため、高粘度化を惹起する。
【0130】
これに対して、上記の二次電池セパレータ用コート材原料では、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとが化学結合し、複合ポリマーを形成しているため、水溶性ポリマーが非水溶性ポリマーに固定される。そのため、水溶性ポリマー間の相互作用が抑制され、その結果、高粘度化が抑制されて、優れた低粘性が得られる。
【0131】
そして、本発明の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料と、必要により、無機充填剤と、分散剤とを含んでいる。
【0132】
二次電池セパレータ用コート材原料の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材原料と、無機充填剤と、分散剤との総量(以下、二次電池セパレータ用コート材成分とする。
【0133】
)100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、10質量部以下(固形分)である。
【0134】
無機充填剤としては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、硫酸物、水酸化物、ケイ酸物および鉱物が挙げられる。酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛および酸化鉄が挙げられる。窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化チタンおよび窒化ホウ素が挙げられる。炭化物としては、例えば、シリコンカーバイドおよび炭酸カルシウムが挙げられる。硫酸物としては、例えば、硫酸マグネシウムおよび硫酸アルミニウムが挙げられる。水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。ケイ酸物としては、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂およびガラスが挙げられる。鉱物としては、例えば、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベストおよびゼオライトが挙げられる。無機充填剤として、好ましくは、酸化物および水酸化物が挙げられ、より好ましくは、酸化アルミニウムおよび水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。
【0135】
無機充填剤の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、50質量部以上(固形分)であり、また、例えば、99.7質量部以下(固形分)である。
【0136】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウムおよびポリカルボン酸ナトリウムが挙げられる。分散剤がポリカルボン酸アンモニウムであれば、上記の二次電池セパレータ用コート材原料および無機充填剤を均一に分散させることができ、厚みが均一な塗布膜(後述)を得ることができる。
【0137】
分散剤の配合割合は、二次電池セパレータ用コート材成分100質量部(固形分)に対して、例えば、0.1質量部以上(固形分)であり、また、例えば、5質量部以下(固形分)である。
【0138】
二次電池セパレータ用コート材を得るには、まず、水に、無機充填剤および分散剤を上記の割合で配合し、無機充填剤分散液を調製する。
【0139】
次いで、その無機充填剤分散液に、二次電池セパレータ用コート材原料(または二次電池セパレータ用コート材原料を含む分散液)を上記の割合で配合し、撹拌する。これにより、二次電池セパレータ用コート材が得られる。
【0140】
撹拌方法は、特に限定されず、公知の攪拌装置が使用される。撹拌装置としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散および撹拌羽根が挙げられる。
【0141】
二次電池セパレータ用コート材は、例えば、水に分散された分散液として得られる。また、二次電池セパレータ用コート材には、必要により、公知の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、親水性樹脂、増粘剤、湿潤剤、消泡剤およびpH調整剤が挙げられる。添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0142】
上記の二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含むため、二次電池セパレータの生産性の向上を図ることができる。さらに、上記の二次電池セパレータ用コート材は、耐熱性、透気性および密着性に優れる二次電池セパレータを得られる。
【0143】
そして、この二次電池セパレータ用コート材は、二次電池セパレータのコート材として、好適に用いることができる。
【0144】
本発明の二次電池セパレータは、公知の方法により製造することができる。
【0145】
この方法では、まず、多孔膜を準備する。多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン多孔膜および芳香族ポリアミド多孔膜が挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン多孔膜が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。多孔膜は、必要に応じて、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理が挙げられる。
【0146】
多孔膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上である。また、多孔膜の厚みは、例えば、40μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0147】
次いで、この方法では、多孔膜の少なくとも片面に、上記のセパレータ用コート材を塗布する。その後、必要により、セパレータ用コート材を乾燥させ、これにより塗布膜を得る。
【0148】
塗布方法としては、特に制限されないが、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、マイクログラビアコート法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法およびスプレー塗布法が挙げられる。
【0149】
乾燥条件として、乾燥温度は、例えば、40℃以上であり、また、例えば、80℃以下である。乾燥後の塗布膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上である。また、乾燥後の塗布膜の厚みは、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。
【0150】
これにより、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備えた二次電池セパレータが製造される。
【0151】
なお、上記した説明では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を配置したが、多孔膜の両面に、上記の塗布膜を配置することもできる。
【0152】
上記の二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備えるため、生産性、耐熱性、透気性および密着性に優れる。
【0153】
また、上記の二次電池セパレータの製造方法によれば、耐熱性、透気性および密着性に優れる二次電池セパレータを、効率よく製造できる。
【0154】
そして、この二次電池セパレータは、二次電池のセパレータとして、好適に用いることができる。
【0155】
本発明の二次電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に配置される上記の二次電池セパレータと、正極、負極および上記の二次電池セパレータに含浸される電解質とを備える。
【0156】
正極としては、例えば、正極用集電体と、正極用集電体に積層される正極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0157】
正極用集電体としては、公知の導電材料が挙げられる。導電材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子および導電性ガラスが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0158】
正極活物質としては、特に制限されないが、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩およびリチウム含有硫酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0159】
負極としては、例えば、負極用集電体と、負極用集電体に積層される負極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0160】
負極用集電体としては、例えば、銅およびニッケルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0161】
負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボンおよびハードカーボンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0162】
二次電池が、リチウムイオン電池である場合、電解質としては、例えば、リチウム塩がカーボネート化合物に溶解された溶液が挙げられる。カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)が挙げられる。
【0163】
そして、二次電池を製造するには、例えば、二次電池のセパレータを、正極と、負極との間に挟み込み、これらを電池筐体(セル)に収容して、電解質を電池筐体に注入する。
【0164】
これにより、二次電池を得ることができる。
【0165】
上記の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、生産性、耐熱性、透気性および密着性に優れる。その結果、上記の二次電池は、生産性、耐熱性、透気性および密着性に優れる。
【実施例
【0166】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0167】
1.二次電池セパレータ用コート材原料の調製
実施例1~23および比較例1~6
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水600部と、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)1部とを仕込み、70℃まで昇温させた。次いで、セパラブルフラスコに過硫酸カリウム(KPS、重合開始剤)を表1~表4の記載に従って添加した。
【0168】
表1~表4の記載に従って準備した水溶性ポリマー原料100部を、300部の蒸留水に溶解させた。次いで、その溶液を、窒素ガスで置換した上記のセパラブルフラスコに、75℃で180分かけて連続的に添加した。その後、水溶性ポリマー原料を75℃で4時間撹拌し、重合を完結させた。これにより、カルボキシ基(第1反応性官能基)を有する水溶性ポリマーの水溶液を得た。
【0169】
次いで、表1~表4の記載に従って準備した非水溶性ポリマー原料を、石鹸水で乳化させた。次いで、その乳化液を、上記の水溶性ポリマーの水溶液に一括添加した。これらの混合物を、攪拌しながら75℃で4時間撹拌し、重合を完結させた。これにより、グリシジル基(第2反応性官能基)を有する非水溶性ポリマーを得た。また、これとともに、水溶性ポリマーのカルボキシ基と非水溶性ポリマーのグリシジル基とを反応させ、水溶性ポリマーおよび非水溶性ポリマーが化学結合した複合ポリマーを得た。なお、比較例1~6の非水溶性ポリマーは、グリシジル基(第2反応性官能基)を有しておらず、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとが反応しなかった。そのため、比較例1~6では、複合ポリマーを得られず、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの混合ポリマーを得た。
【0170】
これにより、複合ポリマーの分散液または混合ポリマーの分散液(以下、ポリマー分散液)として、セパレータ用コート材原料を得た。分散液の固形分濃度は、10.0質量%であった。
【0171】
また、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーのガラス転移温度(Tg、単位:℃)を、下記のFOX式により算出した。
【0172】
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg(1)
[式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Tg(i=1、2、・・・n)は、単量体iが単独重合体を形成するときのガラス転移温度(単位:K)、W(i=1、2、・・・n)は、単量体iの全単量体中の質量分率を表す。]
【0173】
また、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーの溶解性パラメータ(SP値、単位(cal/cm1/2)を、Million Zillion Software社の計算ソフトCHEOPS(version4.0)にて算出した。計算手法は、Computational Materials Science of Polymers(A.A.Askadskii、 Cambridge Intl Science Pub (2005/12/30))Chapter XIIに記載されている方法を採用した。
【0174】
また、水溶性ポリマーの重量平均分子量を、以下の方法および条件で測定した。すなわち、水溶性ポリマーの重合が完結した時点で、水溶性ポリマーをサンプリングした。次いで、GPC装置(装置名:P KP-22、フロム社)を用いて、サンプルの重量平均分子量(Mw)を求めた。なお、測定条件を下記する。また、重量平均分子量は、標準ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算分子量である。
【0175】
・サンプル濃度:0.1(w/v)%
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:0.2M NaNO/アクリロニトリル(AN)=90/10
・流速:1.0ml/min
・測定温度:40℃
・カラム:ShodexohPAK SB-806M HQ ×2
【0176】
比較例7
国際公開WO2017/026095号の実施例1に準拠して、セパレータ用コート材原料としての分散液を得た。
【0177】
すなわち、攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、表1~表4の記載に従って、水溶性ポリマー原料を仕込み、窒素ガスで反応系内の酸素を除去した。次いで、撹拌下、重合開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液7部および5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3部をフラスコに投入した後、室温から80℃まで昇温し、3時間保温して、水溶性ポリマー原料を重合させた。その後、イオン交換水162部を加え、水溶性ポリマーの水溶液を得た。
【0178】
別途、撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.15部、および、重合開始剤としてのペルオキソ二硫酸アンモニウム0.5部を供給し、気相部を窒素ガスで置換して、60℃に昇温した。その後、表1~表4の記載に従って、反応器に、非水溶性ポリマー原料を連続的に添加し、添加中は60℃で重合させ、添加終了後は70℃で3時間撹拌してから反応を終了させた。これにより、非水溶性ポリマーの分散液を得た。
【0179】
そして、得られた水溶性ポリマーの分散液と、非水溶性ポリマーの分散液とを混合し、セパレータ用コート材原料として、混合ポリマーの分散液(ポリマー分散液)を得た。なお、混合比率は、水溶性ポリマー1質量部に対して、粒子状ポリマーが2質量部となる割合とした。
【0180】
比較例8
攪拌機、還流冷却付きのセパラブルフラスコに、蒸留水600部と、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)1部とを仕込み、70℃まで昇温させた。次いで、セパラブルフラスコに過硫酸カリウム(KPS、重合開始剤)を表5の記載に従って添加した。
【0181】
表5の記載に従って準備した高SP値ポリマー原料100部を、300部の蒸留水に入荷させた。なお、乳化剤として、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)2部を添加した。次いで、その乳化液を、窒素ガスで置換した上記のセパラブルフラスコに、75℃で180分かけて連続的に添加した。その後、乳化液を、75℃で2時間撹拌し、重合を完結させた。これにより、カルボキシ基(第1反応性官能基)を有する高SP値ポリマーの水分散液を得た。
【0182】
次いで、表5の記載に従って準備した低SP値ポリマー原料を、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)1部で乳化させた。次いで、その乳化液を、上記の高SP値ポリマーの水分散液に一括添加した。これらの混合物を、攪拌しながら75℃で4時間撹拌し、重合を完結させた。これにより、グリシジル基(第2反応性官能基)を有する低SP値ポリマーを得た。また、これとともに、高SP値ポリマーと低SP値ポリマーとがグリシジル基とカルボキシ基で結合したコアシェル水分散液を得た。
【0183】
比較例9
国際公開WO2010/134501号の実施例1に準拠して、セパレータ用コート材原料としての分散液を得た。
【0184】
すなわち、撹拌機付きのオートクレーブに、トルエン230部と、アクリル酸n-ブチル50部と、スチレンオリゴマー50部と、t-ブチルパーオキシー2-エチルヘキサネート(重合開始剤)1部とを入れ、十分に撹拌した。なお、スチレンオリゴマーは、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(東亜合成化学工業社製、商品名AS-6、SP値9.9(cal/cm1/2)であった。
【0185】
その後、オートクレーブを、90℃に加温して、上記の各成分を重合させた。これにより、重合体(以下、グラフトポリマーと称する。)の溶液を得た。グラフトポリマーの主鎖は、アクリル酸n-ブチル(電解液に対する膨潤性を示す成分)により構成されていた。また、グラフトポリマーの側鎖は、スチレン(電解液に対する膨潤性を示さない成分)により構成されていた。
【0186】
溶液の固形分濃度から重合転化率を算出した。重合添加率は、約98%であった。グラフトポリマーの重量平均分子量は約5万であった。グラフトポリマーのガラス転移温度は25℃であった。
【0187】
2.二次電池セパレータ用コート材および二次電池セパレータの製造
各実施例および各比較例の二次電池セパレータ用コート材原料を使用して、二次電池セパレータ用コート材を調製し、二次電池セパレータを得た。
【0188】
すなわち、顔料として、水酸化酸化アルミニウム(大明化学社製、ベーマイトGradeC06、粒子径:0.7μm)100質量部、分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製、SNディスパーサント5468)3.0質量部(固形分換算)を、110質量部の水に均一に分散させて顔料分散液を得た。次いで、この顔料分散液に、ポリマー分散液(二次電池セパレータ用コート材原料)を、固形分換算で5質量部となるよう添加し、更に固形分が40質量%となるよう水を加えて調整し、15分間撹拌して二次電池セパレータ用コート材を調製した。
【0189】
一方、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、コロナ処理した。より具体的には、ポリオレフィン樹脂多孔膜として、品番SW509C+(膜厚9.6μm、空隙率40.6%、透気度158g/100ml、面密度5.5g/m、常州星源新能源材料有限公司)を準備した。次いで、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、A4サイズにカットし、その後、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面を、スイッチバック自動走行式コロナ表面処理装置(ウェッジ株式会社製)により、出力0.15KW、搬送スピード3.0m/s×2回、および、コロナ放電距離9mmの条件で、コロナ処理した。
【0190】
次いで、ワイヤーバーを用いて、コロナ処理したポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に、上記の二次電池セパレータ用コート材を塗工した。塗工後、50℃で乾燥することにより、ポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に5μmの塗布膜を形成した。
【0191】
これにより、二次電池セパレータを製造した。
【0192】
3.評価
(1)耐熱性
二次電池セパレータを5cm×5cmに切り出し、これを試験片とした。この試験片を150℃×1時間オーブン内に放置した後、各辺の長さを測定し、熱収縮率を算出した。
また、耐熱性に関して次の基準で優劣を評価した。
【0193】
◎ :熱収縮率が15%未満であった。
○ :熱収縮率が15%以上25%未満であった。
△ :熱収縮率が25%以上65%未満であった。
△△:熱収縮率が65%以上80%未満であった。
× :熱収縮率が80%以上であった。
【0194】
(2)透気性
二次電池セパレータについて、旭精工社製の王研式透気度平滑度試験機により、JIS-P-8117に準じて測定した透気抵抗度を求めた。透気抵抗度が小さいほど、イオン透過性に優れると評価した。また、イオン透過性に関して次の基準で優劣を評価した。
【0195】
◎:透気抵抗度が180s/100mL未満であった。
○:透気抵抗度が180s/100mL以上220s/100mL未満であった。
△:透気抵抗度が220s/100mL以上300s/100mL未満であった。
×:透気抵抗度が300s/100mL以上であった。
【0196】
(3)密着性
二次電池セパレータを5cm×10cmに切り出し、これを試験片とした。JIS Z1522に準ずる方法で二次電池セパレータ用コート材の塗布膜に、セロハン粘着テープを貼り付け、180°ピール試験を実施した。その際、セロハン粘着テープの引っ張り速度は10mm/分とした。測定は3回実施し、その平均値を算出した。また、密着性に関して次の基準で優劣を評価した。
【0197】
◎ :接着強度の平均値が70N/m以上であった。
○ :接着強度の平均値が50N/m以上70N/m未満であった。
△ :接着強度の平均値が20N/m以上50N/m未満であった。
△△:接着強度の平均値が1/m以上20N/m未満であった。
× :接着強度の平均値が1N/m未満であった。
【0198】
(4)貯蔵安定性
二次電池セパレータ用コート材原料の貯蔵安定性を、以下の方法で評価した。すなわち、ポリマー分散液(二次電池セパレータ用コート材原料)1Lを、40℃の恒温槽に保管した。半年後に、複合ポリマーの分散液の粘度変化およびpH変化を測定した。さらに、複合ポリマーの分散液の外観変化(層分離および色相)を、目視で観察した。そして、粘度変化、pH変化および外観変化をそれぞれ1~4点で評価し、最も低い点数によって、貯蔵安定性を評価した。評価基準を下記する。
【0199】
・粘度変化
4点:0%以上5%以下
3点:5%超過10%以下
2点:10%超過30%以下
1点:30%超過
【0200】
・pH変化
4点:0以上0.5以下
3点:0.5超過1.0以下
2点:1.0超過2.0以下
1点:2.0超過
【0201】
・外観変化
4点:外観変化なし。
3点:僅かな外観変化あり。
2点:外観変化あり。
1点:顕著な外観変化あり。
【0202】
・総合評価(貯蔵安定性)
◎:粘度変化、pH変化および外観変化の評価における最低点が、4点。
○:粘度変化、pH変化および外観変化の評価における最低点が、3点。
△:粘度変化、pH変化および外観変化の評価における最低点が、2点。
×:粘度変化、pH変化および外観変化の評価における最低点が、1点。
【0203】
(5)均一分散性
二次電池セパレータ用コート材原料の均一分散性を、以下の方法で評価した。すなわち、上記二次電池セパレータ用コート材のゼータ電位を、ゼータ電位測定装置(大塚電子株式会社製ELSZ-2000)濃厚系セルにて、10回測定した。そして、下記の基準により、均一分散性を評価した。
【0204】
◎:ゼータ電位の測定10回中の最大値と最小値の差が、測定10回の平均値に対して5%未満。
○:ゼータ電位の測定10回中の最大値と最小値の差が、測定10回の平均値に対して5%以上10%未満。
△:ゼータ電位の測定10回中の最大値と最小値の差が、測定10回の平均値に対して10%以上15%未満。
×:ゼータ電位の測定10回中の最大値と最小値の差が、測定10回の平均値に対して15%以上。
【0205】
(6)低粘性
二次電池セパレータ用コート材原料の低粘性を、以下の方法で評価した。すなわち、ポリマー分散液の固形分濃度を10質量%に調整し、その分散液の25℃における粘度をBM型粘度計にて測定した。評価基準を下記する。
【0206】
◎:1000mPa・s未満
○:1000mPa・s以上2000mPa・s未満
△:2000mPa・s以上6000mPa・s未満
×:6000mPa・s以上
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
【表3】
【0210】
【表4】
【0211】
【表5】
【0212】
なお、表中の水溶性ポリマー原料の配合処方(質量部)は、水溶性ポリマー100質量部に対する原料成分(モノマー)の配合量を示す。また、非水溶性ポリマー原料の配合処方(質量部)は、非水溶性ポリマー100質量部に対する原料成分(モノマー)の配合量を示す。また、水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーとの比率は、表中の「非水溶性ポリマー/水溶性ポリマー(質量比)」に従う。
【0213】
また、表中の高SP値ポリマー原料の配合処方(質量部)は、高SP値ポリマー100質量部に対する原料成分(モノマー)の配合量を示す。また、低SP値ポリマー原料の配合処方(質量部)は、低SP値ポリマー100質量部に対する原料成分(モノマー)の配合量を示す。また、高SP値ポリマーと低SP値ポリマーとの比率は、表中の「高SP値ポリマー/低SP値ポリマー(質量比)」に従う。
【0214】
また、表中の略号の詳細を下記する。
Mam:メタクリルアミド
AM:アクリルアミド
Mac:メタクリル酸
Ac:アクリル酸
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
DMAEMA:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAM:ジメチルアクリルアミド
St:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
2EHA:2エチルヘキシルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
AN:アクリロニトリル
N-MAM:N-メチロールアクリルアミド
AGE:アリルグリシジルエーテル
KPS:過硫酸カリウム
Tg:ガラス転移温度、単位:℃
SP値:溶解度パラメータ、単位:(cal/cm1/2
【0215】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、二次電池セパレータの製造方法、および、二次電池は、二次電池分野において、好適に用いられる。