(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ポリ(メタクリル酸)オリゴマーを含む自己修復性ゴム
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20241204BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241204BHJP
C08F 4/26 20060101ALI20241204BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20241204BHJP
C08F 8/34 20060101ALI20241204BHJP
C08F 8/44 20060101ALI20241204BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20241204BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241204BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20241204BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241204BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 Z
C08F4/26
C08F8/12
C08F8/34
C08F8/44
C08F20/06
C08K3/013
C08K3/06
C08K3/22
C08L33/02
(21)【出願番号】P 2023543236
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2022051109
(87)【国際公開番号】W WO2022157186
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-28
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ ディ ロンザ
(72)【発明者】
【氏名】森下 善広
(72)【発明者】
【氏名】アラン ウィーミス
(72)【発明者】
【氏名】ワン チャオヤン
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046391(WO,A1)
【文献】特開2002-003647(JP,A)
【文献】特開昭61-241302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
B60C 1/00
C08F 4/26
C08F 8/12
C08F 8/34
C08F 8/44
C08F 20/06
C08K 3/013
C08K 3/06
C08K 3/22
C08L 33/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)触媒連鎖移動剤としてのCo(II)錯体の存在下でメタクリル酸を重合させ、160~3200g/molの範囲の数平均分子量(M
n)およ
び4以下の分散度Dを有するポリ(メタクリル酸)オリゴマーを得るステップと、
(B)前記ポリ(メタクリル酸)オリゴマーと、酸化亜鉛、ジエン系ゴム、硫黄および加硫促進剤と、を配合してゴム組成物を調製するステップと、
を少なくとも含むゴム組成物の調製方法。
【請求項2】
ステップ(B)において、前記ポリ(メタクリル酸)オリゴマーは、前記ジエン系ゴム、硫黄および加硫促進剤との配合の前に、酸化亜鉛と混合され、前記ポリ(メタクリル酸)オリゴマーのZn塩を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(A)において、前記ポリ(メタクリル酸)オリゴマーの分子量は、メタクリル酸対Co(II)錯体の比によって制御され、特に10
6:20~10
6:180であるメタクリル酸対Co(II)錯体の比が使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記Co(II)錯体は、コバロキシムフッ化ホウ
素である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(B)において、前記ポリ(メタクリル酸)オリゴマーは、酸化亜鉛と1.0:0.2~1.0:2.0の重量比で混合される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(B)において、前記ジエンゴムは、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(B)において、前記ポリ(メタクリル酸)オリゴマーの前記Zn塩の量は、前記ジエン系ゴム100phrに対して5.0~40phrである、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(B)において、両親媒性ブロック共重合体相溶化剤がさらに使用され、前記両親媒性ブロック共重合体相溶化剤は、少なくともポリ(メタクリル酸)ブロックおよび脂肪族炭素鎖ブロックを含み、両方のブロックは、スルフィド結合を介して結合されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
両親媒性ブロック共重合体相溶化剤の量は、前記ジエン系ゴム100phrに対して0.5~7.5phrである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(B)において、充填剤がさらに使用され
、前記充填剤は、前記ジエンゴム100phrに対して5.0~80phrの量で使用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
160~3200g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリ(メタクリル酸)オリゴマーと、
酸化亜鉛と、
ジエンゴムと、
充填剤と、
硫黄と、
加硫促進剤と、
を含む、ゴム組成物。
【請求項12】
160~3200g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリ(メタクリル酸)オリゴマーのZn塩と、
ジエンゴムと、
充填剤と、
硫黄と、
加硫促進剤と、
を含む、ゴム組成物。
【請求項13】
少なくともポリ(メタクリル酸)ブロックおよび脂肪族炭素鎖ブロックを含む両親媒性ブロック共重合体相溶化剤を含み、両方のブロックは、スルフィド結合を介して結合されている、請求項11または12に記載のゴム組成物。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって調製されたゴム組成物、または請求項11から13のいずれか一項に記載のゴム組成物、を硬化することによって得られる硬化ゴム組成物。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって調製されたゴム組成物、または請求項11から13のいずれか一項に記載のゴム組成物、を使用することによって調製された自己修復性タイヤ。
【請求項16】
少なくとも160~
1600g/molの範囲の分子量を有するポリ(メタクリル酸)ブロックと
6~30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素鎖ブロックとを含み、両ブロックは、スルフィド結合を介して結合されている、両親媒性ブロック共重合体。
【請求項17】
両親媒性ブロック共重合体の調製方法であって、前記方法は、
(a)触媒連鎖移動剤としてのCo(II)錯体の存在下でtert-ブチルメタクリル酸を重合させて、284~2840g/molの範囲の数平均分子量(M
n)を有するポリ(tert-ブチルメタクリル酸)オリゴマーを得るステップと、
(b)ホスフィンの存在下で脂肪族チオールRSHを前記ポリ(tert-ブチルメタクリル酸)オリゴマーにマイケル付加して、付加生成物を得るステップであって、ここで、Rは、6~30個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、ステップと、
(c)前記付加生成物の酸加水分解によって、前記tert-ブチル基を除去し、前記両親媒性ブロック共重合体を得るステップと、
を含む、両親媒性ブロック共重合体の調製方法。
【請求項18】
ステップ(a)において、前記Co(II)錯体は、フッ化コバロキシムホウ素で
ある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)において
、12個の炭素原子を有する脂肪族チオールRSHが使用される、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復性ゴムの分野に関する。特に、本発明は、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーおよび必要に応じて両親媒性ブロック共重合体相溶化剤を含むゴム組成物、それらの調製方法、および自己修復タイヤにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自己修復性天然ゴムは、先行技術において既知である。C.Xuら、「Design of Self-Healing Supramolecular Rubbers by Introducing Ionic Cross-Links into Natural Rubber via a Controller Vulcanization」、ACS Appl. Mater. Interfaces 2016、8、17728-17737、DOI:10.1021/acsami.6b05941には、天然ゴム中でのジメタクリル酸亜鉛の重合を介してイオン架橋を生成する制御された過酸化物誘起加硫が記載されている。Ch.Xuら、「Self-Healing Natural Rubber with Tailorable Mechanical Properties based Ionic Supramolecular Hybrid Network」、ACS Appl.Mater.Interfaces 2017,9,29363-29373,DOI:10.1021/acsami.7b09997では、著者らは、天然ゴム中の過剰な酸化亜鉛(ZnO)とメタクリル酸とのその場重合反応によってジメタクリル酸亜鉛を形成することによって、自己修復性天然ゴムの特性を高めることを目的としていた。自己修復性天然ゴムはこれらの文献から既知であるが、それらの機械的強度は弱い。
【0003】
C.Atkinsら、「A simple and versatile route to amphiphilic polymethacrylates: catalytic chain transfer polymerisation (CCTP) coupled with post-polymerisation modifications」、Poly.Chem.,2019,10,646-655は、触媒連鎖移動重合によって調製されたポリ(メタクリル酸グリシジル)ポリマーから出発し、マイケルチオール付加およびエタノールアミンを使用したメタクリル酸グリシジルのエポキシド基の開環を行う両親媒性ポリメタクリレートの合成を記載している。この記事では、ポリ(メタクリル酸)ブロックを有するポリメタクリレートの合成については説明していない。
【0004】
米国特許第4720526号明細書には、ゴム、ジメタクリル酸亜鉛またはマグネシウム、および過酸化物硬化剤を含有する硬化性ゴム組成物から調製される硬化ゴム組成物が記載されている。米国特許第5310807号明細書は、マクロモノマーのアームが結合した架橋コアを有する星形ポリマーの分散液を製造するための経済的な方法に関する。マクロモノマーは、触媒性コバルト(II)含有連鎖移動剤を介して形成される。星形ポリマー分散液は、コーティング組成物に使用され得る。欧州特許出願公開第1295922号明細書は、触媒連鎖移動(CCT)剤、特にコバルト(II)錯体を使用することによって得られるマクロモノマーを含む顔料分散樹脂に関する。米国特許第9580529号明細書では、潤滑剤のベース流体として使用され得る低粘度ポリマーを調製するために、同じまたは類似のコバルト錯体が使用されている。このようなコバルト触媒は、米国特許第9090724号明細書においても、レオロジー調整剤として適した低粘度共重合体を調製するために使用される規定の分子量のマクロモノマーを調製するために使用されている。
【0005】
本発明の目的は、硬化状態において改善された自己修復特性を提供し、同時に高い機械的強度を提供し、タイヤへの使用を可能にするゴム組成物を提供することであった。
【0006】
驚くべきことに、ゴム組成物中に特定の分子量のポリ(メタクリル酸)オリゴマーを使用すると、硬化ゴムにおける自己修復効率と機械的強度との間のトレードオフが解決されることが見出された。硬化ゴムは、自己修復性があり、同時に高い機械的強度を実現するため、タイヤへの使用が可能になる。さらに、両親媒性ポリ(メタクリル酸)ブロック共重合体は、ゴム組成物中の成分の分散または分布を改善することが見出された。このより良好な分散によって、硬化ゴムの機械的強度および自己修復効率がさらに向上する。
【0007】
したがって、本発明は、
(A)触媒連鎖移動剤としてのCo(II)錯体の存在下でメタクリル酸(MAA)を重合させ、160~3200g/molの範囲の数平均分子量(Mn)および好ましくは4以下の分散度Dを有するポリ(メタクリル酸)オリゴマーを得るステップと、
(B)ポリ(メタクリル酸)オリゴマーと、酸化亜鉛、ジエン系ゴム、硫黄および加硫促進剤とを配合してゴム組成物を調製するステップと、
を少なくとも含むゴム組成物の調製方法に関する。
【0008】
本方法の好ましい実施形態では、ステップ(B)において、ジエン系ゴム、硫黄および加硫促進剤との配合の前に、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーを酸化亜鉛と混合してポリ(メタクリル酸)オリゴマーの亜鉛塩を得る。
【0009】
本方法の好ましい実施形態では、ステップ(A)において、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーの分子量は、メタクリル酸対Co(II)錯体の比によって制御され、特に106:20~106:180であるメタクリル酸対Co(II)錯体の比が使用される。好ましい実施形態では、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーは、240~2400g/mol、好ましくは320~2000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。他の好ましい実施形態では、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーは、3以下、好ましくは2以下の分散度Dを有する。
【0010】
本方法の他の好ましい実施形態では、Co(II)錯体は、コバロキシムフッ化ホウ素であり、特にCo(II)錯体は、ビス[(ジフルオロボリル)-ジメチルグリオキシマト]コバルト(II)である。
【0011】
さらに好ましい実施形態では、ステップ(B)において、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーは、酸化亜鉛と1.0:0.2~1.0:2.0の重量比で混合される。
【0012】
他の好ましい実施形態では、ステップ(B)において、ジエンゴムは、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
例示的な実施形態では、ステップ(B)において、加硫促進剤は、スルフェンアミド化合物および/またはチアゾール化合物をベースとする。
【0014】
他の好ましい実施形態では、ステップ(B)において、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーの亜鉛塩の量は、5.0~40phrである。
【0015】
本方法の特に好ましい実施形態では、ステップ(B)において、両親媒性ブロック共重合体相溶化剤がさらに配合され、両親媒性ブロック共重合体相溶化剤は、少なくともポリ(メタクリル酸)ブロックおよび脂肪族炭化水素鎖ブロックを含み、両方のブロックは、スルフィド結合を介して結合されている。好ましくは、両親媒性ブロック共重合体相溶化剤の量は、0.5~7.5phrである。
【0016】
他の好ましい実施形態では、ステップ(B)において、充填剤がさらに使用され、特に、5.0~80phrの量で使用される。
【0017】
本発明は、
160~3200g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリ(メタクリル酸)オリゴマーと、
酸化亜鉛と、
ジエンゴムと、
充填剤と、
硫黄と、
加硫促進剤と、
を含む、ゴム組成物にさらに関する。
【0018】
加えて、本発明は、
160~3200g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリ(メタクリル酸)オリゴマーのZn塩と、
酸化亜鉛と、
ジエンゴムと、
充填剤と、
硫黄と、
加硫促進剤と、
を含む、ゴム組成物にさらに関する。
【0019】
特に好ましい実施形態では、ゴム組成物は、ポリ(メタクリル酸)ブロックおよび脂肪族炭化水素鎖ブロックを含む両親媒性ブロック共重合体相溶化剤をさらに含み、両方のブロックは、スルフィド結合を介して結合されており、ポリ(メタクリル酸)ブロックは、160~1600g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。好ましくは、ゴム組成物中の両親媒性ブロック共重合体相溶化剤の量は、0.5~10.0phr、特に0.5~7.5phrである。
【0020】
別の好ましい実施形態では、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーおよび酸化亜鉛は、事前形成された塩として存在し、ポリ(メタクリル酸)オリゴマー対酸化亜鉛の重量比は、1.0:0.2~1.0:2.0の範囲内である。事前形成された塩は、他のゴム成分と配合する前に、2つの成分を水中で混合し、乾燥して粉末を得ることで形成される。別の実施形態では、ゴム組成物中のポリ(メタクリル酸)オリゴマーの事前形成された亜鉛塩の量は、5.0~40phrである。
【0021】
本発明はさらに、上記ゴム組成物を硬化して得られる硬化ゴム組成物を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、上記ゴム組成物を用いて製造された自己修復性タイヤを提供する。
【0023】
さらに、本発明は、数平均分子量160~1600g/mol(Mn)を有するポリ(メタクリル酸)ブロックと脂肪族炭化水素鎖ブロックとを少なくとも含み、両ブロックは、スルフィド結合を介して結合されている、両親媒性ブロック共重合体を提供する。両親媒性ブロック共重合体は、ゴム組成物中の相溶化剤として特に適している。
【0024】
さらに、本発明は、両親媒性ブロック共重合体の調製方法であって、
(a)触媒連鎖移動剤としてのCo(II)錯体の存在下でtert-ブチルメタクリル酸を重合させて、284~2840g/molの数平均分子量(Mn)を有するポリ(tert-ブチルメタクリル酸)オリゴマーを得るステップと、
(b)ホスフィンの存在下で脂肪族チオールRSHをポリ(tert-ブチルメタクリル酸)オリゴマーにマイケル付加して、付加生成物を得るステップであって、ここで、Rは、6~30個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、ステップと、
(c)付加生成物の酸加水分解によって、tert-ブチル基を除去し、両親媒性ブロック共重合体を得るステップと、
両親媒性ブロック共重合体の製造方法を提供する。
【0025】
好ましくは、使用されるCo(II)錯体は、フッ化コバロキシムホウ素であり、特に、ビス[(ジフルオロボリル)-ジメチルグリオキシマト]コバルト(II)である。
【0026】
本明細書における単位「phr」への言及はすべて、ゴム100重量部当たりの重量部を示す。
【0027】
本明細書で使用される数平均分子量(Mn)などの「分子量」という用語は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、好ましくはさらに1H核磁気共鳴(NMR)分光法による測定を指す。本明細書で使用する「分散度」という用語は、分子量分布Dを指し、次の方程式から求められる。
D=Mw/Mn
ここで、Mwは、重量平均分子量、Mnは、数平均分子量である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態は、下記の説明、実施例、図面、および特許請求の範囲に記載される。
【0029】
図は、下記のようである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】ポリ(メタクリル酸)オリゴマー(p(MAA)オリゴマー)を生成する、Co(II)錯体を使用したメタクリル酸の触媒連鎖移動重合(CCTP)を示す。
【
図2】ポリ(メタクリル酸)オリゴマーおよび酸化亜鉛からのZn塩の形成を示す。
【
図3】(i)触媒連鎖移動重合の3つのステップに従った両親媒性ブロック共重合体相溶化剤の合成を示す。(ii)ジメチルフェニルホスフィン(DMPP)触媒によるポリ(メタクリル酸tert-ブチル)マクロモノマーの不飽和末端基へのチオールのマイケル付加を示す。(iii)トリフルオロ酢酸(TFA)によるマクロモノマーのtert-ブチル基の加水分解を示す。
【
図4】
図4a~
図4bは、実施例の硬化ゴムの応力対ストロークひずみの図である。
【
図5】
図5aは、異なる修復条件における実施例の硬化ゴムの応力対ストロークひずみの図である。
図5bは、対応する応力対ストロークひずみ回復の図である。
図5cは、異なる修復条件における実施例の硬化ゴムの応力対ストロークひずみの図である。
図5dは、対応する応力対ストロークひずみ回復の図である。
図5eは、異なる修復条件における実施例の硬化ゴムの応力対ストロークひずみの図である。
図5fは、対応する応力対ストロークひずみ回復の図である。
【
図6a】異なる修復条件での硬化ゴムの修復を示す光学顕微鏡の画像である。
【
図6b】異なる修復条件での硬化ゴムの修復を示す光学顕微鏡の画像である。
【
図6c】異なる修復条件での硬化ゴムの修復を示す光学顕微鏡の画像である。
【
図7a】80℃で30分間修復させた後の硬化ゴムのSEM画像である。
【
図7b】80℃で30分間修復させた後の硬化ゴムのSEM画像である。
【
図8】本発明の両親媒性ブロック共重合体相溶化剤を含有するゴムを含む、実施例の硬化ゴムの応力対ストロークひずみの図である。
【
図9】
図9a~
図9cは、本発明の両親媒性ブロック共重合体相溶化剤を含有する硬化ゴムの、異なる修復条件における応力対ストロークひずみの図である。
【
図10】
図10aは、40phrのカーボンブラックを含有する硬化ゴムの応力対ストロークひずみは、直径80nmである。
図10bは、80℃で30分および2時間の自己修復後の回復を示す。
図10cは、室温で72時間の自己修復後の回復を示す。
【
図11】ゴムの自己修復効率を定量化するために使用される方法の図を示す。
【
図12】
図12aは、異なる修復条件での例を示す、硬化スチレンブタジエンゴム(SBR)の応力対ストロークひずみの図である。
図12bは、異なる修復条件での例を示す、ブタジエンゴム(BR)の応力対ストロークひずみの図である。
図12cは、対応する応力およびひずみの回復の図を示す。
図12dは、対応する応力およびひずみの回復の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の好ましい実施形態を、下記の説明、実施例、図面、および特許請求の範囲に記載する。
【0032】
本発明によるゴム組成物は、硬化性組成物であり、少なくともジエンゴム、特定の分子量のポリ(メタクリル酸)オリゴマー、酸化亜鉛(ZnO)、硫黄、加硫促進剤、および好ましくは充填剤、を含む。
【0033】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム(BR)、またはそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、またはそれらの組み合わせが使用される。適切な配合は、100重量%のゴムに対して、80~90重量%の天然ゴムおよび20~10重量%のスチレン-ブタジエンゴムである。
【0034】
本発明によれば、塩を形成する前のポリ(メタクリル酸)オリゴマーは、160~3200g/molの範囲の数平均分子量(Mn)と共に4以下の分散度(D)を有し、好ましくは240~2400g/molと共に2以下の分散度(D)を有し、より好ましくは240~1200と共に2未満の分散度(D)を有する。160~3200g/molの分子量は、2~40の重合度に相当する。
【0035】
オリゴマーは、コバルト(II)錯体を使用した触媒連鎖移動(CCT)を介してメタクリル酸(MAA)の重合によって生成される。オリゴマーの重合または分子量は、モノマー(MAA)と触媒との比によって制御される。触媒としてコバロキシムを使用してオリゴマーを製造するための例示的な実施形態を
図1に示しており、ポリマー鎖の基Rは、Hであり、コバロキシムの基Rは、使用されるモノマー/溶媒系中での溶解を可能にするように選択される基である。例えば、Rはメチルである。
【0036】
コバルト(II)錯体または触媒は、触媒連鎖移動重合(CCTP)に関して当技術分野で既知である任意のコバルト錯体であり得る。適切な触媒は、例えば欧州特許出願公開第1295922号明細書、米国特許第9090724号明細書および米国特許第9580529号明細書に記載されている。好ましくは、
図1に示すビス[(ジフルオロボリル)-ジメチルグリオキシマト]コバルト(II)が使用される。
【0037】
ZnOは、一般的にタイヤ用ゴム組成物の添加剤として使用される。本発明では、ZnOは、ポリ(メタクリル酸)オリゴマー(p(MAA)オリゴマー)と塩を形成するために使用される。
図2は、メタクリル酸の触媒連鎖移動重合(CCTP)の結果、ポリ(メタクリル酸)オリゴマー(p(MAA)オリゴマー)が生成され、酸化亜鉛を添加すると亜鉛塩を形成する様子を示す。亜鉛塩は、好ましくは、事前形成された塩としてゴム組成物に添加される。
【0038】
さらに、ZnOとp(MAA)オリゴマーとを別々にゴム組成物に添加することも可能であり、Zn塩がその場形成される。
【0039】
ポリ(メタクリル酸)オリゴマー対ZNOの重量比は、1.0:0.2~1.0:2.0、好ましくは1.0:0.5~1.0:1.5の範囲、例えば1.0:1.oである。
【0040】
p(MAA)オリゴマー/ZnOの亜鉛塩は、硬化ゴム内に可逆的(非共有結合性)イオン超分子ネットワークを生成し、ゴムに自己修復能力をもたらすと考えられる。特に、ゴムに織り込まれた亜鉛カチオンとカルボン酸ユニットとのイオン対が階層的なクラスターを形成していると考えられる。イオンクラスターはゴムの自己修復能力と機械的強度とに同時に寄与すると考えられる。
【0041】
ゴム組成物に適した充填剤には制限はなく、タイヤ製造の技術分野において既知である。例示的な充填剤は、カーボンブラック、シリカ、およびそれらの組み合わせである。カーボンブラックおよび比表面積を有するシリカはいずれも市販されており、使用され得る。充填剤は、通常5phr~80phr、好ましくは5phr~50phr、より好ましくは10phr~40phrの量で使用される。
【0042】
本発明では、加硫における架橋剤として硫黄を使用する。硫黄は、硬化ゴム組成物に共有結合架橋を提供し、硬化ゴムの機械的強度に寄与する。
【0043】
適切な加硫促進剤は、スルフェンアミド化合物および/またはチアゾール化合物をベースとする。好ましくは、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBSとして知られる)またはテトラメチルチウラムモノスルフィドが使用される。
【0044】
ゴム組成物中の成分のより良好な分散のために、相溶化剤が使用され得る。適切な相溶化剤は、当技術分野で既知である。例示的な相溶化剤は、CCTP(触媒連鎖移動重合)、RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)重合、またはATRP(原子移動ラジカル重合)を使用して製造された1つの(メタ)アクリル酸ブロックを含有するブロック共重合体である。特に好ましい相溶化剤は、数平均分子量160~1600g/mol(M
n)を有するポリ(メタクリル酸)ブロックと脂肪族炭化水素鎖ブロックとを少なくとも含む、両親媒性ブロック共重合体であり、両ブロックは、スルフィド結合を介して結合している。この相溶化剤を製造するための例示的な実施形態を
図3に示し、下記に説明する。
【0045】
ゴム組成物は、さらなる添加剤、特にタイヤ製造の技術分野で一般的に使用される添加剤を含み得る。このような添加剤には、潤滑剤、顔料、活性化剤、軟化剤、可塑剤、酸化防止剤、脂肪酸(ステアリン酸など)がある。一般的に、これらの添加剤の総量は、ゴム組成物の100重量%に対して10重量%以下、または10phr以下である。
【0046】
本発明は、本発明の硬化性ゴム組成物の硬化後に得られる硬化ゴム組成物をも提供する。硬化は当技術分野で既知であるように行われ得、制限されない。適切な硬化温度は、150~160℃の範囲である。
【0047】
本発明はさらに、本発明のゴム組成物を用いることによって製造された自己修復性タイヤを提供する。タイヤの製造に使用されるゴム組成物は、タイヤの自己修復特性の所望の程度に応じて、少なくとも部分的に本発明のゴム組成物を含む。好ましくは、本発明のゴム組成物の少なくとも90重量%、より好ましくは約100重量%が、タイヤのゴム組成物に使用される。適切な装置におけるゴム組成物からのタイヤの製造は、当技術分野で既知であるように行われる。
【0048】
ゴム組成物の硬化中に、pMAA/ZnO塩のω-ビニル末端基の一部がジエン系ゴム主鎖のビニル基に結合(グラフト)される。結合は、直接または硫黄ブリッジを介して行われる。さらに、当技術分野で既知であるように、硫黄結合による共有結合が形成される。
【0049】
本発明のゴム組成物は、タイヤに自己修復性と高い機械的強度とを付与する。
【0050】
本発明は、数平均分子量160~1600g/mol(M
n)を有するポリ(メタクリル酸)ブロックと脂肪族炭化水素鎖ブロックとを少なくとも含み、両ブロックは、スルフィド結合を介して結合されている、両親媒性ブロック共重合体をさらに提供する。この両親媒性ブロック共重合体は、当技術分野では既知ではない。この両親媒性ブロック共重合体を製造するための例示的な実施形態を
図3に示す。ここで、Co(II)はコバルト(II)錯体を示す。V-601は、重合開始剤(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))を示す。DMPPは、ジメチルフェニルホスフィンを示す。チオール化合物RSH中のRは、脂肪族炭化水素鎖を示し、好ましくは6~30個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である。nは、2~20の整数である。合成は、まず、触媒連鎖移動剤としてのCo(II)錯体の存在下、重合開始剤を使用してtert-ブチルメタクリル酸を重合させ、ポリ(tert-ブチルメタクリル酸)オリゴマーを得ることを含む。このオリゴマーはさらに、DMPPの存在下でチオール化合物RSHと反応し、マイケル付加を介して付加生成物を生成する。次に、付加生成物は、トリフルオロ酢酸(TFA)などの酸の存在下で加水分解され、エステル基からブチル基が放出される。得られた生成物は、メタクリル酸基を有する。
【0051】
相溶化剤の合成に使用されるCo(II)錯体は、ポリ(メタクリル酸)オリゴマーの合成に使用されるのと同じCo(II)錯体であり得る。
【0052】
両親媒性ブロック共重合体は、ゴム組成物に他の成分を配合する際に配合される。例示的な実施形態では、まず、ゴムが混合装置に供給され、次に相溶化剤が添加され、その後、他の成分が添加される。相溶化剤は、ゴム組成物中の成分の分散を改善し、したがって硬化ゴムの自己修復性および機械的特性を改善する。
【0053】
下記の実施例は、保護範囲を制限することなく本発明を説明するものである。
【実施例】
【0054】
(実施例1~4)
実施例1~4は、硬化後のゴムの自己修復性および機械的特性に対するpMAAオリゴマーおよびZnOの効果を示す様々なゴム組成物に関する。
【0055】
使用した配合物を以下の表1に示す。数値はphrに関する。
【0056】
【0057】
記載した成分は、下記の通りである。
NR:天然ゴム。
pMAA:350g/molのMnおよび109℃のTg(ガラス転移温度)を有するpMAAオリゴマー。オリゴマーを、106:160のMAA対コバロキシムの比でコバロキシムフッ化ホウ素を使用してメタクリル酸から生成した。
pMAA-ZnO塩:1:1のpMAA対ZnOの比で事前形成された塩。
CBS:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド。
硫黄:タイヤ製造用に市販されている硫黄。
【0058】
成分を、示されているように、Haake PolyLab二軸配合機において、40℃および40rpmでブレンドする。次いでサンプルを、Collin P200ホットプレス内で150℃の温度で18.10分間、150barの圧力で硬化させて、厚さ1mmの9×9cm2のフィルムを形成した。
【0059】
図11に示すように、まずドッグボーン形状サンプルを引張試験用のフィルムから切り出した(画1)。次に、
図11の画2に図示するように、硬化ゴムを切り出し、重ね合わせ端で再接合することによって、自己修復性試験用のサンプルを調製した。次に、重ね合わせ面積12.8mm
2のサンプルをCollin P200ホットプレスにおいて80℃で15分、30分、または120分間加熱し、自己修復条件状態をもたらした(画3)。最後に、機械的特性(破断までの応力およびひずみ)および修復能力を評価するために、引張試験を実行し(画4)、その結果を、初期状態のサンプルから得られた結果と比較した。重ね合わせ領域には、破断は観察されなかった。
【0060】
機械的特性を、島津AGS-X引張試験機を使用し、ひずみ速度100mm/minで応力(MPa)対ストロークひずみ(%)を測定することによって評価した。事前形成されたZn塩を含有する3つの配合物の結果を
図4aに示す。
図4bは、10phrの事前形成されたZn塩を含有する配合物NR SM
41の結果を、同量のpMAAオリゴマーおよびZnOを別々に含有する配合物と比較して示す。
【0061】
事前形成されたZn塩を含有する3つの配合物を、初期状態のサンプルに使用したものと同じ方法を使用して、異なる修復条件で機械的強度についてさらに試験した。結果を
図5a~5fに示す。
【0062】
さらに、NR SM
43配合物の自己修復効率を、光学顕微鏡で観察することによって、さまざまな温度および期間で試験した。0分、30分、および120分後に得られた画像を
図6a、6b、および6cに示す。
図6は、面接触直後に良好な接着が観察されることを示す。
図6bに示すように、80℃で30分後には、少量の瘢痕のみが見られる。
図6cに示すように、80℃で120分後には、表面は均一に均質になっている。
【0063】
図7aおよび7bは、80℃で30分間修復させた後のNR SM
43配合物のサンプルのSEM画像を示す。
【0064】
得られた結果は、事前形成された亜鉛塩の添加によって、pMAAとZnOとを別々に添加した場合(NR M41)に比べて、機械的強度が大幅に向上したことを示している。特に、NR SM43サンプルでは、80℃、120分間の自己修復条件で、破断までの応力およびひずみの85%超が回復した。自己修復能力は、室温と比較して80℃の温度上昇で大幅に向上した。
【0065】
(実施例5~8)
実施例5~8は、硬化後のゴムの自己修復性および機械的特性に対する両親媒性ブロック共重合体相溶化剤の効果を示す異なるゴム組成物に関する。
【0066】
使用した配合物を以下の表2に示す。数値はphrに関する。
【0067】
【0068】
記載した成分は、下記の通りである。
NR:天然ゴム(表1に従って使用されるものと同じゴム)。
pMAA-ZnO塩:350g/molのMnおよび109℃のTg(ガラス転移温度)を有するpMAAオリゴマーを用いた、1:1の比のpMAA対ZnOの事前形成された塩。
CBS:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド。
硫黄:表1に従って使用したものと同じ硫黄。
ブロックB3:両親媒性ブロック共重合体。
【0069】
両親媒性ブロック共重合体B
3は、
図3に示すように、次のように調製した。p(t-BMA)オリゴマーを、CCTPを使用して調製した。ここでは、CoBF(1.31mg、モノマーに対して8ppm)をマグネティックスターラーとともに250mLのRBF(丸底フラスコ)に添加し、1時間窒素を吹き込むことによって脱酸素した。脱酸素シリンジを使用して69mL(424.58mmol)をCoBF(コバロキシムフッ化ホウ素)に移す前に、tert-ブチルメタクリル酸(75mL)を別の250mL RBFに加え、同様に1時間脱酸素した。混合物を撹拌して、CoBFを完全に溶解した。一方、500mLの三口RBFにV-601開始剤(0.488g、2.12mmol)およびメチルエチルケトン(180mL)を加え、溶液を1時間脱酸素した。次に、三口フラスコ内の溶液を撹拌を続けながら油浴中で70℃に加熱し、シリンジポンプを使用してモノマー/CoBF溶液を60分かけて供給した。供給後、反応をさらに17時間継続した。次いで、p(t-BMA)オリゴマー生成物をロータリーエバポレーターによって乾燥させた。マイケル付加ステップでは、p(t-BMA)オリゴマー(18g、18mmol)をアセトニトリル(120mL)に溶解し、1時間脱酸素した。次いで、事前に脱酸素したドデカンチオール(4.368g、1.2当量)およびジメチルフェニルホスフィン(49.7mg、0.2当量)を順次加え、混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、反応物を空気にさらし、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した。酸ブロックを形成するために、マイケル付加の生成物をジクロロメタンに溶解し、トリフルオロ酢酸(TFA)を添加した(tert-ブチル基に対して5当量)。次いで、溶媒およびTFAをロータリーエバポレーターによって除去する前に、この混合物を室温で24時間撹拌し続けた。
【0070】
実施例1~4と同様にして、自己修復性および機械的特性を試験するためのサンプルを調製した。測定方法は実施例1~4と同じであり、得られた結果を
図8および
図9a~9cに示した。
【0071】
図8は、相溶化剤を含む場合と含まない場合との4つの配合物の応力(MPa)対ストロークひずみ(%)を示す。
【0072】
図9a~9cは、両親媒性ブロック共重合体相溶化剤B
3を含有する3つの硬化ゴムのストロークひずみ対応力の図である。NR B
31の場合、
図9aは、30分後には引張が60%、ひずみが64%回復し、2時間後には引張が88%、ひずみが73%回復したことを示す。NR B
32の場合、
図9bは、30分後には引張が57%、ひずみが66%回復し、2時間後には引張が74%、ひずみが69%回復したことを示す。NR B
33の場合、
図9cは、30分後に引張88%およびひずみ97%が回復し、2時間後に引張130%およびひずみ94%が回復したことを示している。
【0073】
上記からわかるように、ブロック共重合体を添加すると、自己修復効率が向上した。
【0074】
(実施例9~12)
実施例9~12は、硬化後のゴムの自己修復性および機械的特性に対するカーボンブラックの添加の効果を示す様々なゴム組成物に関する。
【0075】
使用した配合物を下記の表3に示す。数値はphrに関する。
【0076】
【0077】
記載した成分は、下記の通りである。
NR:天然ゴム(表1に従って使用されるものと同じゴム)。
pMAA-ZnO塩:350g/molのMnおよび109℃のTg(ガラス転移温度)を有するpMAAオリゴマーを用いた、1:1の比のpMAA対ZnOの事前形成された塩。
CBS:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド。
硫黄:表1に従って使用したものと同じ硫黄。
CB(N234):80nmの平均直径を有するカーボンブラック。
【0078】
図10aは、カーボンブラック(N234)を含む場合と含まない場合の4つの配合物の応力(MPa)対ストロークひずみ(%)を示す。
【0079】
図10bは、40phrのカーボンブラックを含有する硬化ゴムの1つを切り出し、Collin P200ホットプレスにおいて80℃で30分間および2時間再加熱した後の応力対ストロークひずみの図である。
【0080】
図10cは、40phrのカーボンブラックを含有する硬化ゴムの1つを切り出し、2kgの重量下をかけながら室温で72時間再硬化させた後の応力対ストロークひずみの図である。
【0081】
上記からわかるように80℃、2時間の自己修復後の引張強度は充填剤無添加の場合に比べて増加し、室温での自己修復後は3.5MPa(応力回復44%)の引張強度が得られている。
【0082】
(実施例13~14)
実施例13および14は、硬化後のゴムの自己修復性および機械的特性に対するジエン系ゴムベース材料の効果を示すゴム組成物に関する。
【0083】
使用した配合物を以下の表4に示す。数値はphrに関する。
【0084】
【0085】
記載した成分は、下記の通りである。
SBR:スチレンブタジエンゴム。
BR:ブタジエンゴム。
pMAA-ZnO塩:350g/molのMnおよび109℃のTg(ガラス転移温度)を有するpMAAオリゴマーを用いた、1:1の比のpMAA対ZnOの事前形成された塩。
TMTS:テトラメチルチウラムモノスルフィド。
硫黄:表1に従って使用したものと同じ硫黄。
【0086】
硬化温度を160℃、硬化時間をSBR SM
43 TMTSの場合は43.17分、BR SM
43 TMTSの場合は77.82分とした以外は実施例1~4と同様の方法で、自己修復性および機械的特性を試験するためのサンプルを調製した。測定方法は、実施例1~4と同じであり、得られた結果を
図12a~12dに示す。
【0087】
図12aおよび12bは、マクロモノマーを添加したSBRおよびBR配合物の応力(MPa)対ストロークひずみ(%)を示す。
図12cおよび12dは、応力対ひずみの回復の対応する図を示す。
【0088】
上記からわかるように、pMAA-ZnO塩の添加は、NRゴム以外のジエンゴムにおいてもまた、自己修復を促進し、80℃で2時間後にSBRとBRとでそれぞれ120%と30%の応力回復を記録した。