(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】無溶媒型量子ドット組成物、その製造方法、並びにこれを含む硬化膜、カラーフィルター及びディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20241204BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20241204BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20241204BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20241204BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20241204BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241204BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 A
C09K11/08 G
C09K11/56
C09K11/70
C09K11/88
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
G09F9/30 349A
(21)【出願番号】P 2023545838
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 KR2021006940
(87)【国際公開番号】W WO2022163950
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0011711
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ユンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギルラン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,アヨン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヒュンジン
(72)【発明者】
【氏名】ギル,キョンフン
(72)【発明者】
【氏名】パク,シュルギ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ウンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,チュンレ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ソニョン
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】オ,グンチャン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョクジン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085568(JP,A)
【文献】特開2021-021929(JP,A)
【文献】特開2020-118971(JP,A)
【文献】特開2021-063981(JP,A)
【文献】特開2018-084823(JP,A)
【文献】特開2020-015895(JP,A)
【文献】特開2019-112516(JP,A)
【文献】特開2019-085537(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
C09K 11/56
C09K 11/70
C09K 11/88
G02F 1/1335
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット及び光重合性モノマーを含み、
上記量子ドットは、下記[化1]で示される第1のリガンド;及び
カルボキシル基を含む炭素数3~40の第2のリガンド;
で表面改質されたものである、無溶媒型量子ドット組成物。
【化1】
(式中、
Mは、2~4価の金属であり、
Xは、
C4~C15であり、エステル(-COO-)官能基を含む有機基であり、
nは、2~4の整数である。)
【請求項2】
上記第2のリガンドは、下記[化2]で示される、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【化2】
(式中、
Lは、単結合、又は置換もしくは非置換のC1~C20のアルキレン基、及び置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニレン基からなる群から選択され、
Aは、単結合、又はエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO
2-)、スルフィド(-S-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群から選択される官能基を1つ以上含むC1~20のアルキレン基又はアルケニレン基であり、
Rは、水素、又は置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基、及び置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニル基からなる群から選択される。)
【請求項3】
上記Mは、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Mo、Pd、Cd、In、又はSnである、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項4】
上記第2のリガンドは、チオール基を含まない、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項5】
上記[化2]中のAは、エステル(-COO-)、エーテル(-CO-)、又はこれらの組み合わせを含むC2~C15のアルキレン基又はアルケニレン基である、請求項2に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項6】
上記第1のリガンドと第2のリガンドとの混合比率は、1:0.1~20モル比である、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項7】
上記量子ドットとリガンドとの混合比率は、1:0.05~1重量比である、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項8】
上記量子ドットの含有量は、上記無溶媒型量子ドット組成物の総重量に対して、1~60重量%である、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項9】
上記光重合性モノマーは、(メタ)アクリレート系モノマーである、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項10】
光開始剤、光拡散剤、重合禁止剤、又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項11】
粘度が30cps以下である、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項12】
インクジェットプリント用として使用される、請求項1に記載の無溶媒型量子ドット組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のうちのいずれか1項に記載の無溶媒型量子ドット組成物を用いて製造される、硬化膜。
【請求項14】
光吸収率が75%以上であり、光変換率が25%以上である、請求項
13に記載の硬化膜。
【請求項15】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の無溶媒型量子ドット組成物含む、カラーフィルター。
【請求項16】
請求項
15に記載のカラーフィルターを含む、ディスプレイ装置。
【請求項17】
(a)量子ドットを下記[化3]で示される第1のリガンド、及びカルボキシ基を含む炭素数3~40の第2のリガンドで表面改質するステップ;
(b)上記ステップ(a)の結果物を遠心分離して表面改質された量子ドットを得るステップ;及び
(c)得られた表面改質された量子ドットを光重合性モノマーに分散させるステップ;
を含む、無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【化3】
(式中、
Mは、2~4価の金属であり、
Xは、
C4~C15であり、エステル(-COO-)官能基を含む有機基であり、
nは、2~4の整数である。)
【請求項18】
上記ステップ(a)は、
(a-1)上記量子ドットに第1のリガンドを投入して反応させて量子ドットの表面を改質した後、第2のリガンドを投入して反応させて量子ドットの表面を改質するステップ、又は
(a-2)上記第1のリガンド及び第2のリガンドを同時に投入して反応させて量子ドットの表面を改質するステップ
を含む、請求項
17に記載の無溶媒型量子ドット組成物の製造方法。
【請求項19】
請求項1~
12のうちのいずれか1項に記載の無溶媒型量子ドット組成物を基板上にインクジェット噴射方法で塗布してパターンを形成するステップ、及び
上記パターンを硬化するステップ、
を含む、硬化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶媒型量子ドット組成物、その製造方法、並びにこれを含む硬化膜、カラーフィルター及びディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(Quantum dot、QD)は、半導体ナノ結晶(semiconductor nanocrystals)の一種であり、物質種類の変化なしに粒子サイズ別に異なる波長の光が発生して種々の色を出すことができ、既存の発光体よりも高い色純度、高い光安定性を有するという長所があり、次世代の発光素子として注目されている。
【0003】
特に、ディスプレイ分野において新しいトレンドとして定着した量子ドットは、テレビ、LEDの他に、様々なディスプレイ、電子素子などに適用可能である。CdSe、Inpなどに代表される量子ドットは、発光効率(Quantum Yield)が急速に発展し、発光効率が100%に近い合成法が提示されている。これに基づいて、現在、量子ドットシートを適用したテレビが商用化されている。次の段階として、量子ドットを既存のLEDテレビのカラーフィルター層に含有させることで(顔料、染料を除く)、カラーフィルター層においてフィルタリング方式ではなく自発光方式の量子ドットテレビが開発されている。このような量子ドットテレビの開発の核心は、量子ドットが画素を構成する工程及び製造工程において、量子ドットの光効率をどれだけ維持できるかにある。
【0004】
なお、カラーフィルター用素材には、高感度、基板に対する付着力、耐化学性、耐熱性などが要求される。従来のディスプレイに適用するカラーフィルターは、一般的に感光性レジスト組成物を用いてフォトマスクを適用した露光工程を通じて所望のパターンを形成し、次いで現像工程を通じて非露光部を溶解させて除去するパターニング工程によって形成されている。
【0005】
近年、画素に使用される材料の高級化及びこれによるコストアップを解消するために、既存のスピンコーティングやスリットコーティングでパターニングを行うよりは、目的の部分にのみ材料を使用して材料の使用を極力抑制する方法に関心が寄せられている。代表的な方法として、インクジェット方法が挙げられるが、インクジェット法では、所望の画素にのみ材料を使用しているため、材料の無駄な消費を防止することができる。
【0006】
しかし、インクジェット法に使用される量子ドット組成物は、粘度が100cps以下、好ましくは50cps以下であることが要求されるので、低粘度を実現するために溶媒を必須成分として含んでいる。このように量子ドット組成物が溶媒を含むことにより、硬化後の厚さのばらつきが大きくなり、又は膜厚を厚くするのに限界があり、有機溶媒の使用による環境汚染の恐れがあった。
【0007】
そのため、溶媒を含まず、かつ粘度が低く、光特性に優れた量子ドット組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、粘度が低く、光特性に優れていると共に、高い保存安定性を示す、無溶媒型量子ドット組成物を提供することにある。
【0009】
本発明が解決しようとする他の課題は、上記無溶媒型量子ドット組成物を含む硬化膜、カラーフィルター、及びディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を達成するため、本発明は、量子ドット及び光重合性モノマーを含み、上記量子ドットは、下記[化1]で示される第1のリガンド、及びカルボキシル基を含む炭素数3~40の第2のリガンドで表面改質されたものである、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0011】
【0012】
(式中、
Mは、2~4価の金属であり、
Xは、炭素数3~20の有機基であり、
nは、2~4の整数である。)
【0013】
また、本発明は、上記無溶媒型量子ドット組成物を含む、硬化膜、カラーフィルター、及びディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物によれば、溶媒を含まなくても、量子ドットとモノマーとの優れた混和性が得られる。また、本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物は、光特性に優れていると共に、低い粘度を示すので、インクジェットプリント用として使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。
【0016】
本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、特に断りのない限り、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に共通して理解可能な意味として使用されている。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、別に定義しない限り、理想的に又は過度に解釈されてはならない。
【0017】
また、本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
また、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。
【0019】
また、本明細書中において、「単量体」と「モノマー」とは同一の意味である。本発明において、モノマーとは、オリゴマー及びポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、「光重合成モノマー」とは、重合反応に関与する基、例えば、(メタ)アクリレート基を指す。
【0020】
本明細書中において、「置換」とは、化合物や官能基中の水素が、C1~C30のアルキル基、C2~C30のアルケニル基、C2~C30のアルキニル基、C1~C30のアルコキシ基、C1~C30のヘテロアルキル基、C3~C30のヘテロアルキルアリール基、C3~C30のシクロアルキル基、C3~C15のシクロアルケニル基、C6~C30のシクロアルキニル基、C2~C30のヘテロシクロアルキル基、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、又は-I)、ヒドロキシ基(-OH)、ニトロ基(-NO2)、シアノ基(-CN)、エステル基(-C(=O)OR、ここで、Rは、C1~C10のアルキル基又はアルケニル基である)、エーテル基(-O-R、ここで、Rは、C1~C10のアルキル基又はアルケニル基である)、カルボニル基(-C(=O)-R、ここで、Rは、C1~C10のアルキル基又はアルケニル基である)、カルボキシル基(-COOH)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の置換基で置換されることを意味する。
【0021】
本明細書中において、「有機基」とは、C1~C30の直鎖又は分枝鎖のアルキル基、C2~C30の直鎖又は分枝鎖のアルケニル基、C2~C30の直鎖又は分枝鎖のアルキニル基を意味する。また、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、それぞれ置換又は非置換のものであってもよい。
【0022】
本明細書中において、「アルキル」とは、炭素数1~40の直鎖又は側鎖の飽和炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。その例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書中において、「アルケニル」とは、炭素-炭素二重結合を1つ以上有する炭素数2~40の直鎖又は側鎖の不飽和炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。その例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、2-ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定さない。
【0024】
<無溶媒型量子ドット組成物>
本発明の一実施例による量子ドット組成物は、無溶媒型の量子ドット組成物であって、具体的には、溶媒を含んでいなくても、低い粘度を示し、光特性に優れているため、インクジェットプリントに適用可能である。
【0025】
具体例としては、量子ドット及び光重合性モノマーを含み、上記量子ドットは、下記[化2]で示される第1のリガンド、及びカルボキシル基を含む炭素数3~40の第2のリガンドで表面改質されたものである、無溶媒型量子ドット組成物を提供する。
【0026】
【0027】
(式中、
Mは、2~4価の金属であり、
Xは、炭素数3~20の有機基であり、
nは、2~4の整数である。)
以下、上記量子ドット組成物の組成について詳説する。
【0028】
量子ドット
量子ドット(Quantum Dot、QD)は、ナノサイズの半導体物質であり、大きさ及び組成によって異なるエネルギーバンドギャップを有することができ、これにより、種々の発光波長の光を放出することができる。
【0029】
このような量子ドットは、均質な(homogeneous)単層構造、コア-シェル(core-shell)構造、グラジエント(gradient)構造などの多層構造、又はこれらの混合構造であってもよい。シェルが複数層である場合、各層は、互いに異なる成分、例えば、半金属酸化物を含有することができる。
【0030】
量子ドット(QD)は、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物、及びこれらの組み合わせから制限なく選択することができる。量子ドットがコア-シェル構造である場合、コアとシェルとは、それぞれ下記に例示する成分から選択して構成することができる。
【0031】
一例として、II-VI族化合物は、CdO、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS、及びこれらの混合物からなる群から選択される2元化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS、及びこれらの混合物からなる群から選択される3元化合物;並びに、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される4元化合物;からなる群から選択され得る。
【0032】
他の一例として、III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される2元化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される3元化合物;並びに、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される4元化合物;からなる群から選択され得る。
【0033】
他の一例として、IV-VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される2元化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される3元化合物;並びに、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される4元化合物;からなる群から選択され得る。
【0034】
他の一例として、IV族元素は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。IV族化合物は、SiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群から選択される2元化合物であり得る。
【0035】
上述した2元化合物、3元化合物、又は4元化合物は、均一な濃度で粒子内に存在するか、濃度分布が部分的に異なる状態に分けられて同一粒子内に存在する。また、一つの量子ドットが他の量子ドットを囲むコア-シェル構造を有することができる。コアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度がコアに行くほど低くなる濃度勾配(グラジエント)を有することができる。
【0036】
量子ドットの形状としては、当業界で通常使用される形態であれば、特に制限されない。一例として、球状、棒(rod)状、ピラミッド状、ディスク(disc)状、マルチ-アーム(multi-arm)状、又は立方体(cubic)状のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノ繊維、ナノ板状粒子などの形態を有するものを使用してもよい。
【0037】
また、量子ドットの大きさは、特に制限されず、当業界で公知の通常の範囲内で適宜調節することができる。一例として、量子ドットの平均粒径(D50)は、約2~10nmであり得る。このように量子ドットの粒径が約2~10nmの範囲で制御される場合、所望の色の光を放出することができる。例えば、InPを含有する量子ドットのコア-シェルの粒径が約5~6nmである場合、約520~550nmの波長の光を放出することができ、一方、InPを含有する量子ドットのコア-シェルの粒径が約7~8nmである場合、約620~640の波長の光を放出することができる。例えば、青色発光QD(Quantum Dot)としては、非カドミウム(Cd)系III-V族QD(例えば、InP、InGaP、InZnP、GaN、GaAs、GaP)を使用してもよい。
【0038】
また、上記量子ドットは、約40nm以下の発光波長スペクトルの半値幅(FWHM)を有するとができ、この範囲内で色純度や色再現性を向上させることができる。また、このような量子ドットを介して発光される光は、全方向に放出されるので、光視野角が向上することができる。
【0039】
本発明の一実施例によれば、上記量子ドットの含有量は、上記無溶媒型量子ドット組成物の総重量に対して、1~60重量%、好ましくは、20~50重量%であり得る。
【0040】
リガンド
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、リガンドは、量子ドットの表面を改質させる役割を果たす。量子ドットは、疎水性を持つ表面の特性によって、光重合性モノマーに対する分散に障壁があるが、適切なリガンドで量子ドットの表面を改質させることで、光重合性モノマーに対する量子ドットの混和性を向上させることができる。
【0041】
本発明の一実施例によれば、上記リガンドは、少なくとも2種類のリガンドを含むことができ、具体的には、下記[化3]で示される第1のリガンド、及びカルボキシル基を含む炭素数3~40の第2のリガンドを含むことができる。
【0042】
【0043】
(式中、
Mは、2~4価の金属であり、
Xは、炭素数3~20の有機基であり、
nは、2~4の整数である。)
【0044】
上記第1のリガンドは、金属塩とチオール系化合物とを反応させて形成される金属-チオール系化合物であり得る。
【0045】
上記第1のリガンドにおいて、Mは、2~4価の金属である。例えば、上記Mは、2族から14族の金属であって、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Cd、In、又はSnであり得る。上記[化3]中、nは、Mの価数によって決定され、2~4の整数である。
【0046】
また、上記[化3]において、Xは、炭素数3~20の有機基であり得る。例えば、上記Xは、エステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-OH)、スルホニル(-SO2-)、スルフィド(-S-)及びスルホキシド(-SO-)、アルコキシ基(-C(=O)-)、ヒドロキシ基(―OH)からなる群から選択される官能基を1つ以上含む炭素数3~20のアルキレン基又はアルケニレン基であり得る。具体的には、上記Xは、エステル(-COO-)官能基を含む、炭素数4~15の有機基であり得る。
【0047】
上記第1のリガンドにおいて、チオール基(Thiol group)は、量子ドット表面との親和性(affinity)に優れているので、量子ドットの光重合性モノマーに対する分散性を向上させることができる。また、上記第1のリガンドは、チオール基だけでなく、エステル、エーテル、カルボニル、カルボキシル基、アルコキシ基、シクロアルカリ、又はヒドロキシ基を含むことで、表面改質された量子ドットの疎水性を持つ極性モノマーに対する分散性が最大化され得る。また、このような量子ドットを含む量子ドット組成物は、ディスプレイ工程に有利な特性(例えば、低粘度)を有することができる。一方、炭素数が3以下であるチオール系化合物を使用する場合、量子ドットの表面改質は可能であるが、表面改質された量子ドットの高極性によって、一般的な溶媒及びモノマーへの分散が困難であるという問題があり得る。
【0048】
上記第2のリガンドは、炭素数が3~40であり、カルボキシル基を含むことができる。また、本発明の一実施例によれば、上記第2のリガンドは、チオール基を含んでいなくてもよい。
【0049】
本発明の一実施例によれば、上記第2のリガンドは、下記[化4]で示すことができる。
【0050】
【0051】
式中、
Lは、単結合、又は置換もしくは非置換のC1~C20のアルキレン基、及び置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニレンからなる群から選択され、
Aは、単結合、又はエステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、スルホニル(-SO2-)、スルフィド(-S-)及びスルホキシド(-SO-)からなる群から選択される官能基を1つ以上含むC1~C20のアルキレン基又はアルケニレン基であり、
Rは、水素、又は置換もしくは非置換のC1~C20のアルキル基、及び置換もしくは非置換のC1~C20のアルケニル基からなる群から選択される。
【0052】
好ましくは、上記第2のリガンドにおいて、Aは、エステル(-COO-)、エーテル(-CO-)、これらの組み合わせを含むことができる。また、上記Aは、C2~C15のアルキレン基又はアルケニレン基、好ましくは、C2~C10のアルキレン基又はアルケニレン基であり得る。
【0053】
一般的に、チオール系リガンドは、量子ドット表面との反応性が高いと知られている。しかし、チオール系リガンドのみを含む量子ドット組成物は、有害な臭いの発生、又は粘度の上昇による保存安定性の低下という問題が生じ、インクジェット用組成物に使用するのに適していない。本発明による量子ドット組成物は、チオール系リガンドを含む第1のリガンドと、チオール基を含まない第2のリガンドとを共に使用することで、低粘度及び優れた保存安定性を示している。また、上記第2のリガンドは、エステル(-C(=O)O-)、エーテル(-O-)、カルボニル(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-OH)などの官能基を含むことで、光重合性モノマーに対する分散性に優れている。一方、第1のリガンドの炭素数が16個以上である場合、量子ドットの表面改質がなされない、又は一般的な溶媒及びモノマーに対する分散性が損なわれるという問題があり得る。
【0054】
本発明の一実施例によれば、上記第1のリガンドと第2のリガンドとの混合比率は、1:0.1~20モル比、好ましくは、1:0.2~10モル比であり得るが、これに制限されない。
【0055】
また、本発明の一実施例によれば、上記量子ドットとリガンドとの混合比率は、1:0.05~1重量比、好ましくは、1:0.1~0.5重量比であり得る。なお、上記リガンドは、第1のリガンドと第2のリガンドとを合わせたものを意味する。
【0056】
光重合性モノマー
本発明に係る量子ドット組成物において、光重合性モノマーは、量子ドット(QD)が分散される剤形、即ち、高分子マトリックスの全架橋密度をコントロールしてマトリックスの構造及び諸物性を発現する役割を果たす。また、柔軟性(flexibility)、並びに他の素材との接着性及び付着性を改善することができる。
【0057】
上記光重合性モノマーは、(メタ)アクリレート系モノマーを含むことができる。
使用可能なモノマーとしては、当業界で通常使用されるモノマーであれば、特に制限なく使用できる。
【0058】
一例として、(メタ)アクリレート系モノマーは、(メタ)アクリル基、ビニル基、及びアリル基のうちの少なくとも一つを含むことができる。具体的には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、2-フェノキシエチルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどが挙げられる。これらは、単独で使用、又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0059】
本発明において、(メタ)アクリレート系モノマーの含有量は、上記無溶媒型量子ドット組成物の総重量に対して、25~70重量%、好ましくは、35~60重量%であり得る。
【0060】
光開始剤
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、光開始剤は、紫外線(UV)などの光源により励起されて光重合を開始する役割を行う成分であって、当業界で周知の光重合開始剤を制限なく使用することができる。一例として、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物などが挙げられる。
【0061】
使用可能な光開始剤としては、例えば、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸、Irgacure184、Irgacure369、Irgacure651,Irgacure819,Irgacure907、ベンジオンアルキルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルカタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトン、クロロアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、2-ETAQ(2-エチルアントラキノン)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、ベンゾイルぎ酸メチルなどが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用、又は2種類以上を混用することができる。
【0062】
上記光開始剤の含有量は、当業界で公知の範囲内で適宜調節することができる。一例として、当該無溶媒型量子ドット組成物の総重量に対して、0.01~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%であり得る。上記光開始剤の含有量が上述した範囲内である場合、マトリックスの物性が低下することなく光重合反応が十分に行われる。
【0063】
拡散剤
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、拡散剤は、光変換物質に吸収されていない光を反射させ、上記反射された光を光変換物質に再度吸収させる役割を果たす。即ち、拡散剤は、光変換物質に吸収される光の量を増加させ、光変換効率を向上させることができる。
【0064】
上記拡散剤としては、当業界で公知の拡散剤成分を制限なく使用することができる。このような拡散剤は、固形分であるか、又は拡散剤が分散された分散液の形態であってもよい。このような拡散剤が分散される分散液は、PGMEAなどの有機溶媒であり得る。
【0065】
使用可能な拡散剤としては、例えば、硫酸バリウム(BaSO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、二酸化チタン(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されない。また、拡散剤の平均粒径や形状は、特に制限されず、当業界で公知の構成から適宜選択することができる。一例として、平均粒径(D50)は、150nm~250nmであり、具体的には、180nm~230nmであり得る。上記拡散剤の平均粒径が上述した範囲内である場合、より優れた光拡散効果が得られ、光変換効率を向上させることができる。
【0066】
上記拡散剤の含有量は、当業界で公知の範囲内で適宜調節することができる。一例として、当該無溶媒型量子ドット組成物の総重量に対して、0.01~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%であり得る。拡散剤の含有量が上述した範囲内である場合、マトリックスの物性が低下することなく光変換効率の向上効果を示すことができる。
【0067】
重合禁止剤
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、重合禁止剤は、ラジカルと反応して重合反応を起こすことができない低反応性のラジカル又は化合物を形成する物質であって、光重合反応の速度を調節することができる。
【0068】
上記重合禁止剤は、当業界で公知の物質を制限なく使用することができる。例えば、重合禁止剤としては、キノン系化合物、フェノール又はアニリン系化合物、芳香族ニトロ及びニトロソ化合物を使用することができる。具体的には、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(THQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、及びヒドロキノンモノエチルエーテル(EEHQ)、1,4-ベンゾキノン(BQ)、2,5-ジフェニルベンゾキノン(DPBQ)、メチル-1,4-ベンゾキノン(MBQ)、フェニル-1,4-ベンゾキノン(PBQ);2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェノール、カテコール;フェノチアジン、ビス(α-メチルベンジル)フェノチアジン、3,7-ジオクチルフェノチアジン、ビス(α、α-ジメチルベンジル)フェノチアジン;ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸などが挙げられる。これらを単独で使用、又は2種以上を混用することができる。
【0069】
上記重合禁止剤の含有量は、当業界で公知の範囲内で適宜調節することができる。一例として、当該無溶媒型量子ドット組成物の総重量に対して、0.01~2重量%、好ましくは、0.05~1重量部であり得る。
【0070】
安定剤
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物において、安定剤は、量子ドットの安定性及び分散性の向上のために添加することができる。安定剤は、量子ドットのシェル表面に置換され、溶剤に対する量子ドットの分散安定性を向上させ、量子ドットを安定化させることができる。
【0071】
使用可能な安定剤としては、当業界において量子ドットの安定性及び分散性を向上させ得る物質であれば、特に制限せず、例えば、チオール系安定剤を使用することができる。上記チオール系安定剤は、光重合性モノマーに対する量子ドットの分散性を向上させることができる。また、チオール系安定剤が有するチオール基は、光重合性モノマーのアクリル基と反応して共有結合を形成することで量子ドット組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0072】
上記チオール系安定剤は、7個以上の炭素原子を有することができ、その構造によって、末端に2~10個、例えば、2~6個のチオール基(-SH)を有することができるが、これに制限されない。使用可能なチオール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、グリコールジ-3-メルカプトプロピオネート、又はこれらの混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0073】
その他の添加剤
上述した成分の他に、本発明の量子ドット組成物は、発明の効果を阻害しない範囲内で当業界で公知の添加剤を制限なく使用することができる。このとき、添加剤の含有量は、当業界で公知の範囲内で適宜調節することができる。
【0074】
使用可能な添加剤としては、例えば、シラン系化合物、シロキサン系化合物、酸化防止剤、重合抑制剤、潤滑剤、表面調整剤、界面活性剤、付着増進剤、消泡剤、スリップ剤、溶剤、湿潤剤、光安定剤、ムラ防止剤、柔軟剤、増粘剤、ポリマーなどが挙げられる。これらは、単独で使用、又は2種類以上を混用することができる。
【0075】
シラン系化合物は、マトリックスに接着性を付与する役割を果たし、シロキサン系化合物は、濡れ性を付与する役割を果たす。このようなシラン系化合物及びシロキサン系化合物は、当業界で公知の成分を制限なく使用することができる。
【0076】
酸化防止剤は、熱や光の照射による退色、及びオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものであり、本発明では、酸化防止剤を添加することにより、マトリックスの着色の防止や分解による膜厚の減少を低減させることができる。使用可能な酸化防止剤としては、例えば、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオウレア誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などが挙げられる。
【0077】
レベリング剤は、上記量子ドット組成物の被覆時に、平坦かつ滑らかにコーティングされるようにレベリングを行うことで組成物中の接着力を一層向上させるために含まれている。上記レベリング剤は、アクリル系、シリコン系などを単独で、又は2種類以上混合して含むことができる。一例として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを含むことができ、上記ポリエーテル鎖中に(メタ)アクリロイル基を付加して含むことができる。
【0078】
界面活性剤は、上記量子ドット組成物の混和及び塗布均一性のために含まれている。上記界面活性剤としては、当業界で公知の通常の陽イオン性、陰イオン性、両性イオン性、非イオン性界面活性剤を使用することができ、一例として、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、及びフッ素・シリコン系界面活性剤のうちの1種以上を使用することができる。
【0079】
光安定剤は、紫外線吸収剤としてマトリックスの耐候性を高める効果を有する。
【0080】
柔軟剤は、乾燥された高分子マトリックス中のクラック発生を緩和するためのものであり、硬化されたマトリックス中のクラック発生を緩和することで耐衝撃性及び耐屈曲性を改善することができる。
【0081】
本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物は、2種以上のリガンドで表面改質された量子ドット、及び上記リガンド置換された量子ドットとの混和性に優れた光重合成モノマーを含む。
【0082】
上記のような本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物は、光吸収率、光変化率などの光特性に優れていると共に、低粘度の具現が可能である。具体的には、常温(25℃)での粘度が30cps以下、好ましくは、28cps以下、より好ましくは、25cps以下であり得る。粘度を適切な範囲に調節することで、上記無溶媒型量子ドット組成物は、優れた作業性と工程性を有すると共に、高温での優れた保存安定性が得られる。また、本発明に係る無溶媒型量子ドット組成物は、低粘度の具現が可能であるため、インクジェットプリント用として使用可能である。
【0083】
<無溶媒型量子ドット組成物の製造方法>
本発明の一実施例では、量子ドット組成物は、(a)量子ドットを下記[化5]で示される第1のリガンド、及びカルボキシ基を含む炭素数3~40の第2のリガンドで表面改質するステップ;(b)上記ステップ(a)の結果物を遠心分離して表面改質された量子ドットを得るステップ;及び、(c)得られた表面改質された量子ドットを光重合性モノマーに分散させるステップ;を含んで製造することができる。
【0084】
【0085】
(式中、
Mは、2~4価の金属であり、
Xは、炭素数3~20の有機基であり、
nは、2~4の整数である。)
【0086】
なお、量子ドット、第1のリガンド、第2のリガンド、及び光重合性モノマーについては、上述した通りである。
【0087】
また、上記ステップ(a)は、(a-1)上記量子ドットの分散液に第1のリガンドを投入して反応させて量子ドットの表面を改質した後、第2のリガンドを投入して反応させて量子ドットの表面を改質するステップ、又は(a-2)上記第1のリガンド及び第2のリガンドを同時に投入して反応させて量子ドットの表面を改質するステップを含むことができる。
【0088】
具体的には、上記ステップ(a-1)は、上記量子ドットに上記第1のリガンドを投入し、25~170℃で30分~3時間反応させた後、反応温度を25~70℃に降温した後、第2のリガンドを投入し、30分間~3時間反応させて量子ドットの表面を改質するステップであり得る。
【0089】
上記ステップ(a-1)では、2段階に分けて量子ドットの表面改質を行うことで、第1のリガンドと第2のリガンドとの間の反応による付加生成物の形成を防止し、量子ドットのリガンド交換が最適化され得る。
【0090】
一方、上記量子ドットに上記第1のリガンドと第2のリガンドとを同時に投入する場合は、第1のリガンドのチオール基と第2のリガンドのアクリレートとの間のチオール-エン(thiol-ene)反応によって付加生成物が形成されることになる。このような付加生成物は、表面改質された量子ドットの光重合性モノマーへの分散時に量子ドット組成物の粘度を向上させる。
【0091】
また、上記ステップ(a-1)では、130~170℃の高温で量子ドットの表面を第1のリガンドで改質させることで表面改質の転換率を高めることができる。反応温度が高くなるにつれて、量子ドット表面の改質速度が速くなり、これによって、量子ドットの均一な表面改質が行われる。しかし、反応温度は、リガンド物質、反応時間、又は撹拌速度によって制限されなくてもよい。
【0092】
また、上記ステップ(a-2)は、上記量子ドットに上記第1のリガンド及び第2のリガンドを同時に投入し、25~100℃で30分間~3時間反応させて量子ドットの表面を改質するステップであり得る。
【0093】
上述した方法で量子ドットの表面を改質させた後、表面改質された量子ドットは、遠心分離によって得ることができる。また、無溶媒型量子ドット組成物は、得られた表面改質された量子ドットを重合性モノマーに分散させて製造することができる。
【0094】
<硬化膜、カラーフィルター及びディスプレイ装置>
本発明は、上記無溶媒型量子ドット組成物を含む硬化膜を提供することができる。本発明に係る硬化膜は、光特性に優れており、具体的には、光吸収率が75%以上、好ましくは、78%以上であり得る。また、上記硬化膜は、光変換率が25%以上、具体的には、29%以上であり得る。
【0095】
上記硬化膜は、上記無溶媒型量子ドット組成物を基板上にインクジェット噴射方法で塗布してパターンを形成するステップ、及び上記パターンを硬化するステップを経て製造することができる。
【0096】
本発明は、上記無溶媒型量子ドット組成物を含むカラーフィルターを提供する。カラーフィルターは、バックライト源から出る白色光から画素単位で赤、緑、青の3色を抽出し、液晶ディスプレイでのカラー表示を可能とするための薄膜フィルム状の光学部品である。
【0097】
このようなカラーフィルターは、染色法、顔料分散法、印刷法、及び電着法などの方法により製造することができる。また、量子ドット組成物を含むカラーフィルターは、インクジェット法により製造することができる。インクジェット法では、所望の画素にのみ材料を使用しているため、材料の無駄な消費を防止することができる。
【0098】
また、本発明は、上記量子ドット組成物を含むディスプレイ装置を提供する。なお、ディスプレイ装置としては、液晶表示装置(LCD)、電界発光表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述する。しかし、後述の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されない。
【0100】
[製造例1-1]第1のリガンド1-1の製造
丸フラスコに、塩化亜鉛(ZnCl2)13.6gと式(A-1)で示される化合物57.7gを、シクロヘキシルアセテート285gを入れた後、60℃で熱撹拌を行って溶解させる。次に、真空状態で2時間、HClを除去して第1のリガンド1-1を製造した。
【0101】
【0102】
[製造例1-2]第1のリガンド1-2の製造
製造例1-1における式(A-1)で示される化合物の代わりに、式(A-2)で示される化合物53.4gを使用した以外は、製造例1-1と同様にして第1のリガンド1-2を製造した。
【0103】
【0104】
[製造例1-3]第1のリガンド1-3の製造
製造例1-1における式(A-1)で示される化合物の代わりに、式(A-3)で表される化合物61.2gを使用した以外は、製造例1-1と同様にして第1のリガンド1-3を製造した。
【0105】
【0106】
[製造例1-4]第1のリガンド1-4の製造
製造例1-1における式(A-1)で示される化合物の代わりに、式(A-4)で示される化合物48.6gを使用した以外は、製造例1-1と同様にして第1のリガンド1-4を製造した。
【0107】
【0108】
[製造例1-5]第1のリガンド1ー5の製造
製造例1-1における式(A-1)で示される化合物の代わりに、式(A-5)で示される化合物44.4gを使用した以外は、製造例1-1と同様にして第1のリガンド1-5を製造した。
【0109】
【0110】
[製造例2-1]第2のリガンド2-1の製造
丸フラスコに、式(B-1)で示される化合物20gと、シクロヘキシルアセテート80gとを入れた後、常温で1時間撹拌して第2のリガンド2-1を製造した。
【0111】
【0112】
[製造例2-2]第2のリガンド2-2の製造
製造例2-1における式(B-1)で示される化合物の代わりに、式(B-2)で示される化合物を使用した以外は、製造例2-1と同様にして第2のリガンド2-2を製造した。
【0113】
【0114】
[製造例2-3]第2のリガンド2-3の製造
製造例2-1における式(B-1)で示される化合物の代わりに、式(B-3)で示される化合物を使用した以外は、製造例2-1と同様にして第2のリガンド2-3を製造した。
【0115】
【0116】
[製造例2-4]第2のリガンド2-4の製造
製造例2-1における式(B-1)で示される化合物の代わりに、式(B-4)で示される化合物を使用した以外は、製造例2-1と同様にして第2のリガンド2-4を製造した。
【0117】
【0118】
[製造例2-5]第2のリガンド2-5の製造
製造例2-1における式(B-1)で示される化合物の代わりに、式(B-5)で示される化合物を使用した以外は、製造例2-5と同様にして第2のリガンド2-5を製造した。
【0119】
【0120】
[製造例2-6]第2のリガンド2-6の製造
製造例2-1における式(B-1)で示される化合物の代わりに、式(B-6)で示される化合物を使用した以外は、製造例2-6と同様にして第2のリガンド2-6を製造した。
【0121】
【0122】
[製造例3]リガンド3の製造
丸フラスコに、式(A-1)で示される化合物57gを、シクロヘキシルアセテート228gを入れた後、撹拌し、溶解させてリガンド3を製造した。
【0123】
【0124】
<実施例1>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの表面改質
InP/ZnSe/ZnSの量子ドットの分散溶液100g(ハンソル製、SHQD-533;量子ドットの固形分20%;シクロヘキシルアセテート)を窒素雰囲気で140℃まで昇温しながら撹拌する。製造例1-1で製造されたリガンドを12g投入し、140℃で1.5時間撹拌した後、60度まで降温する。次に、製造例2-1で製造されたリガンド30gを投入し、60℃で1.5時間反応させ、表面が改質された量子ドットを製造した。反応終了後、遠心分離機を用いて化学的に沈殿させ、沈殿された量子ドットと上澄み液とを分離し、上澄み液を除去した。真空オーブンで1日間十分に乾燥し、表面改質された量子ドットを得た。
【0125】
1-2.量子ドット組成物の製造
次に、上記表面改質された量子ドットを、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートモノマーに分散させ、このとき、量子ドットの固形分の濃度が50wt%である量子ドットの分散モノマーを製造した。
【0126】
製造された量子ドットの分散モノマー(QD 50wt%)に、さらに1,6-ヘキサンジオールジアクリレートモノマー、光開始剤としてエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、拡散剤として二酸化チタン(TiO2、平均粒径200nm)、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテルを、下記表2に記載の含有量で混合し、量子ドット組成物を製造した。なお、下記表2中、各組成物の含有量は、重量%である。
【0127】
<実施例2~10>量子ドット組成物の製造
製造例1-1で製造されたリガンド及び製造例2-1で製造されたリガンドの代わりに、下記表1に記載のリガンドを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2~10の量子ドット組成物を製造した。
【0128】
<比較例1>量子ドット組成物の製造
1-1.量子ドットの表面改質
InP/ZnSe/ZnSの量子ドットの分散溶液100g(ハンソル製、SHQD-533;量子ドットの固形分20%;シクロヘキシルアセテート)を窒素雰囲気で140℃まで昇温しながら撹拌する。製造例1-1で製造されたリガンドを40g投入し、140℃で1時間反応させ、表面が改質された量子ドットを製造した。反応終了後、25度まで降温し、遠心分離機を用いて化学的に沈殿させ、沈殿された量子ドットと上澄み液とを分離し、上澄み液を除去した。真空オーブンで1日間十分に乾燥し、表面改質された量子ドットを得た。
【0129】
1-2.量子ドット組成物の製造
比較例1-1の表面改質された量子ドットを使用した以外は、実施例1-2と同様にして量子ドット組成物を製造した。
【0130】
<比較例2>量子ドット組成物の製造
2-1.量子ドットの表面改質
InP/ZnSe/ZnSの量子ドットの分散溶液100g(ハンソル製、SHQD-533;量子ドットの固形分20%;シクロヘキシルアセテート)を窒素雰囲気で60℃まで昇温しながら撹拌する。製造例2-1で製造されたリガンド30gを投入し、60℃で4時間反応させ、表面が改質された量子ドットを製造した。反応終了後、遠心分離機を用いて化学的に沈殿させ、沈殿された量子ドットと上澄み液とを分離し、上澄み液を除去した。真空オーブンで1日間十分に乾燥し、表面改質された量子ドットを得た。
【0131】
1-2.量子ドット組成物の製造
比較例2-1の表面改質された量子ドットを使用した以外は、実施例1-2と同様にして量子ドット組成物を製造した。
【0132】
<比較例3>量子ドット組成物の製造
製造例2-1で製造されたリガンドの代わりに、製造例3で製造されたリガンド40gを使用した以外は、比較例2と同様にして量子ドット組成物を製造した。
【0133】
【0134】
【0135】
<評価例1>硬化膜の光変換率及び光吸収率の評価
実施例1~10、比較例1~2による量子ドット組成物を、それぞれガラス基板上にスピンコーティング機(Mikasa社製、Opticoat MS-A150)を用いて10umの厚さに塗布し、395nmのUV露光機を用いて4000mJ(83℃、4秒)で露光して硬化膜を製造した。次に、積分球装置(QE-2100、大塚電子社製)に、2cm×2cmの単膜の試料を載せ、初期の光吸収率及び光変換率を測定した。上記で得られた塗膜を、180℃、窒素雰囲気下、乾燥炉の中で30分間乾燥(ポストベーク)した後、光吸収率及び光変換率の測定を行い、その結果を下記表3に示す。
【0136】
光変換率の測定は、大塚の積分半球フィルムタイプの測定装置を用いて行った。量子ドット組成物がコーティングされた塗膜を載せた後、450nmの青色光を塗膜に印加させ、上向き全方位方向に放出された緑色光を全て吸収して積分値として計算した。光変換率(グリーン/ブルー)の測定は、青色光吸収ピークの減少量に対する緑色に変換されたピークの増加量を用いて行った。
【0137】
【0138】
上記表3に示されるように、実施例1~10による無溶媒型量子ドット組成物を含む硬化膜は、光吸収率が80%以上であり、光変換率が29.2%以上であって、優れた光特性を示すことが確認された。一方、比較例3による量子ドット組成物は、量子ドットの光重合性モノマーへの分散がなされず、光特性の測定が不可能であった。
【0139】
<評価例2>無溶媒型量子ドット組成物の粘度及び安定性の評価
実施例1、比較例1~2で製造された無溶媒型量子ドット組成物の保存安定性を評価するため、無溶媒型量子ドットを40℃に保存した後、4週間、粘度の変化を粘度計(RheoStress MARS-40、HAAKE社製)を用いて、常温(25℃)で100rpmで2分間測定し、その結果を下記表4に示す。
【0140】
【0141】
上記表4に示されるように、比較例1及び2で製造された無溶媒型量子ドット組成物の初期粘度は、それぞれ30cps及び38cpsであった。これに対し、実施例1で得られた無溶媒型量子ドット組成物の初期粘度は、23cps、さらには、4週間保存後の粘度は、25cps未満であり、保存安定性に優れていることが確認された。
【0142】
<評価例3>インクジェット性能の評価
実施例1、比較例1~2で製造された無溶媒型量子ドット組成物を使用して、Omnijet 300(Unijet社製)装置でインクジェット性能を評価した。このとき、Dimetix DMC headの温度を40℃に維持しながらインクジェット性能を確認した。
【0143】
その結果、実施例1で得られた無溶媒型量子ドット組成物は、優れたインクジェット性能を示しているが、これに対し、比較例1~2で製造された無溶媒型量子ドットは、粘度が高すぎてインクジェット性能の評価が不可能であることが確認された。