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特許7598479低反りの強化結晶化ガラス、その調製方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】低反りの強化結晶化ガラス、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20241204BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20241204BHJP
   C03C 10/02 20060101ALI20241204BHJP
   C03C 10/04 20060101ALI20241204BHJP
   C03C 10/12 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03B32/02
C03C10/02
C03C10/04
C03C10/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023551135
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2022119442
(87)【国際公開番号】W WO2023041067
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】202111110119.0
(32)【優先日】2021-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521475495
【氏名又は名称】重慶▲シン▼景特種玻璃有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】談 宝権
(72)【発明者】
【氏名】胡 偉
(72)【発明者】
【氏名】張 延起
(72)【発明者】
【氏名】姜 宏
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-512835(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167850(WO,A1)
【文献】特開2020-033202(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110002743(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03B 32/02
C03C 10/00 - 10/16
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面からガラス内部まで延伸する圧縮応力層を有し、ガラス表面圧縮応力CSが550MPa未満であり、前記圧縮応力層の応力分布は、
(a)応力層の深さが0μm≦Dol<30μmである場合、応力分布曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k1|が、2.45<|k1|<5.05を満たし、
(b)応力層の深さが30μm≦Dol≦Dol_zeroである場合、応力分布曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k2|が、1≦|k2|≦1.5を満たす
ことを特徴とする強化結晶化ガラス。
【請求項2】
前記ガラス表面圧縮応力CSが350MPa未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項3】
前記|k1|が2.45<|k1|<4.35を満たし、
任意で、前記|k1|が2.60<|k1|<3.75を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項4】
前記|k2|が1.00<|k2|<1.35を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項5】
前記圧縮応力層の層深さDol_zeroが110μm~142μmであり、層深さが50μmである場合に応力CS_50が60MPa~130MPaである
ことを特徴とする請求項1に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項6】
前記結晶化ガラスの組成(wt%)は、SiOが58.1~78.8%であり、Alが5.4~24.1%であり、MgO+ZnOが0~15%であり、Bが0~3.3%であり、Pが0~1.9%であり、ZrOが0~3.5%であり、LiOが1.6~13.7%であり、NaOが1.6~4.5%であり、KOが3.1%以下であり、Yが8%以下であり、残部が不可避的不純物であり、NaO/ROが0.6以下であり、RO/Alが5.25以下であり、ROがアルカリ金属酸化物の合計である
ことを特徴とする請求項1に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項7】
前記結晶化ガラスの結晶相は、二珪酸リチウム、ペタライト、β-石英固溶体、スピネルのうちの1種または複数種を含み、結晶化度が70~98%である
ことを特徴とする請求項6に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項8】
前記結晶化ガラスの結晶化度は、80~95%である
ことを特徴とする請求項7に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項9】
前記結晶化ガラスの結晶化度は、87~95%である
ことを特徴とする請求項7に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項10】
前記強化結晶化ガラスは、反り量が180μm以下であり、任意で、前記反り量が150μm以下であり、任意で、前記反り量が120μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の強化結晶化ガラス。
【請求項11】
基礎ガラスに対して結晶化処理を施し、基礎結晶化ガラスを得るステップ1と、
結晶化処理により得た基礎結晶化ガラスに対してイオン交換を施すステップ2と、を含む
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスの調製方法。
【請求項12】
前記ステップ2におけるイオン交換は、2回のイオン交換を含み、
1回目のイオン交換:基礎結晶化ガラスを第1溶融塩浴に浸して1回目のイオン交換を施し、前記第1溶融塩浴には少なくとも75wt%のNaNOが含まれ、1回目のイオン交換の温度が430~450℃であり、1回目のイオン交換の時間が6~11hであり、
2回目のイオン交換:1回目のイオン交換がされた基礎結晶化ガラスを第2溶融塩浴に浸して2回目のイオン交換を施し、前記第2溶融塩浴には少なくともKNOおよびLiNOの2種の溶融塩が含まれ、2回目のイオン交換の温度が420℃~440℃であり、2回目のイオン交換の時間が60min以下である
ことを特徴とする請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
前記第2溶融塩浴において、KNOの含有量が90wt%以上であり、LiNOの含有量が0<LiNO≦0.15wt%である
ことを特徴とする請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
前記ステップ1における結晶化処理は、基礎ガラスを箱型結晶化炉に入れて3段熱処理を施すステップを含み、1段目において、520℃~580℃まで昇温させ、200min~300min保温し、2段目において、600℃~640℃まで昇温させ、100min~150min保温し、3段目において、645℃~740℃まで昇温させ、180min~270min保温し、そして、冷却させ、基礎結晶化ガラスを得る
ことを特徴とする請求項11に記載の調製方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の強化結晶化ガラスの、携帯電話カバー、タブレットカバー、腕時計カバー、自動車ディスプレイカバーとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結晶化ガラスの分野に属し、具体的には、低反りの強化結晶化ガラス、その調製方法および使用に関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本開示は、2021年09月18日に中国国家知的財産局に提出された、出願番号がCN202111110119.0であり、名称が「低反りの強化結晶化ガラス、その調製方法および使用」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本開示に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
スマート産業の急速な発展、特に5G時代の到来に伴い、ガラス材料の携帯型電子機器の分野における役割がますます重要になっている。5G通信ひいては次の6G通信に使用される電磁波の波長が短波長化しているため、通信機器に使用される材料への要求がますます高くなり、通信機器におけるガラスの使用範囲がますます広くなる。携帯電話で例示すると、これまでのフロントカバーでの応用から現在のフロントカバーと背面カバーの両方での応用まで、5年もかからなかった。これから5年以内、全ガラス製のケースを有する携帯電話が登場することも考えられるだろう。
【0004】
ガラスは、本来の性質として脆性材料であり、延性に劣るものであるため、携帯電話構造材料として使用する場合、寸法精度に対する要求が非常に高く、ガラスが三次元熱間曲げおよび化学強化の2つの工程による処理を経たあと、寸法には顕著な収縮および反りが発生する。現在、電子用ガラス分野で主流になっているNAS GlassおよびLAS Glassは、強化ガラスの耐衝撃性を向上させるため、表面のCSが高く、内部のDolが大きいようにする方式を採用する。その応力分布は、通常、下記の通りである。
【0005】
(1)最外層の比較的薄いK応力層は、K/Naの交換により形成され、分布区間がDol_K=0~15μmの領域であり、CS_K=850~900MPaである。外表面から厚さ方向に沿ってDol_15μm~Dol_zeroの区間において、最大圧縮応力値CS_Na maxが一般的に350MPa~550MPaであり、変曲点の箇所で急激に変化する。図1を参照すると、応力曲線分布から分かるように、該強化ガラスの表層は、内層のCSより2倍以上高い。
【0006】
(2)Na/Kのイオン交換により形成された圧縮応力曲線の傾き|k|がとても大きく、これは、該層の深さ範囲内に、隣接する単位厚みの対応する応力の応力差がとても大きい。そして、大量のガラスを同一のガラス強化炉において化学強化を施すとき、位置によっては融液の対流速度が異なり、特にバスケットのより外側の位置とより中央の位置とは、大量のガラスシートの阻隔のため、差異が顕著である。このため、同一のガラスシートの2つの対向する表面のNa/K交換層のCSに0~50MPa程度の差があり、力学的に平衡な状態になるように該応力差によりガラスに反り変形が起こる。ガラスが2.5D面または3D曲面である場合、該変形量がさらに大きくなり、製品の寸法の安定性に直接影響を与える。2.5Dガラスで例示すると、現在、CG工場で強化を経たあと、反り量が一般的に150μm~600μmであり、1200μmになった場合もあり、業界要求の200μm未満をはるかに満たしていない。
【0007】
従来技術において、一種の応力分布を改良したガラスセラミック製品が開示されており、応力分布において、特定の深さで変曲点を有し、ガラスの表層から変曲点の深さの箇所まで、圧縮応力曲線の傾き|k|がとても大きいことが開示されている。図2に示すように、その表面でK/Naの交換により形成された圧縮応力と、内部でNa/Liの交換により形成された圧縮応力との差も比較的大きかった。このため、該製品も化学強化を経たあと反り変形などが起こりやすい。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、低反りの強化結晶化ガラスを提供する。前記結晶化ガラスは、表面からガラス内部まで延伸する圧縮応力層を有し、ガラス表面圧縮応力CSが550MPa未満であり、前記圧縮応力層の応力分布は、(a)応力層の深さが0μm≦Dol<30μmである場合、応力分布曲線が略線形分布を呈し、該曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k1|が、2.45<|k1|<5.05を満たし、(b)応力層の深さが30μm≦Dol≦Dol_zeroである場合、応力分布曲線が略線形分布を呈し、該曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k2|が、1≦|k2|≦1.5を満たす。
【0009】
任意で、前記ガラス表面圧縮応力CSが350MPa未満である。
【0010】
任意で、前記|k1|が2.45<|k1|<4.35を満たす。
【0011】
任意で、前記|k1|が2.60<|k1|<3.75を満たす。
【0012】
任意で、前記|k2|が1.00<|k2|<1.35を満たす。
【0013】
任意で、前記圧縮応力層の層深さDol_zeroが110μm~142μmであり、層深さが50μmである場合に応力CS_50が60MPa~130MPaである。
【0014】
任意で、前記結晶化ガラスの組成(wt%)は、SiOが58.1~78.8%であり、Alが5.4~24.1%であり、MgO+ZnOが0~15%であり、Bが0~3.3%であり、Pが0~1.9%であり、ZrOが0~3.5%であり、LiOが1.6~13.7%であり、NaOが0.5~4.5%であり、KOが3.1%以下であり、Yが8%以下であり、残部が不可避的不純物であり、NaO/ROが0.6以下であり、RO/Alが5.25以下であり、ROがアルカリ金属酸化物の合計である。
【0015】
任意で、前記結晶化ガラスの結晶相は、二珪酸リチウム、ペタライト、β-石英固溶体、スピネルのうちの1種または複数種を含み、結晶化度が70~98%である。
【0016】
任意で、前記結晶化ガラスの結晶化度は、80~95%である。
【0017】
任意で、前記結晶化ガラスの結晶化度は、87~95%である。
【0018】
任意で、前記強化結晶化ガラスは、反り量が180μm以下である。
【0019】
任意で、前記強化結晶化ガラスの反り量が150μm以下である。
【0020】
任意で、前記強化結晶化ガラスの反り量が120μm以下である。
【0021】
本開示は、上記の強化結晶化ガラスの調製方法をさらに提供する。前記調製方法は、基礎ガラスに対して結晶化処理を施し、基礎結晶化ガラスを得るステップ1と、結晶化処理により得た基礎結晶化ガラスに対してイオン交換を施すステップ2と、を含む。
【0022】
任意で、前記ステップ2におけるイオン交換は、2回のイオン交換を含み、1回目のイオン交換:基礎結晶化ガラスを第1溶融塩浴に浸して1回目のイオン交換を施し、前記第1溶融塩浴には少なくとも75wt%のNaNOが含まれ、1回目のイオン交換の温度が430℃~450℃であり、1回目のイオン交換の時間が6h~11hであり、2回目のイオン交換:1回目のイオン交換がされた基礎結晶化ガラスを第2溶融塩浴に浸して2回目のイオン交換を施し、前記第2溶融塩浴には少なくともKNOおよびLiNOの2種の溶融塩が含まれ、2回目のイオン交換の温度が420℃~440℃であり、2回目のイオン交換の時間が60min以下である。
【0023】
任意で、前記第2溶融塩浴において、KNOの含有量が90wt%以上であり、LiNOの含有量が0<LiNO≦0.15wt%である。
【0024】
任意で、前記ステップ1における結晶化処理は、基礎ガラスを箱型結晶化炉に入れて3段熱処理を施すステップを含み、1段目において、520℃~580℃まで昇温させ、200min~300min保温し、2段目において、600℃~640℃まで昇温させ、100min~150min保温し、3段目において、645℃~740℃まで昇温させ、180min~270min保温し、そして、冷却させ、基礎結晶化ガラスを得る。
【0025】
本開示は、上記の強化結晶化ガラスの使用をさらに提供する。前記強化結晶化ガラスは、携帯電話カバー、タブレットカバー、腕時計カバー、自動車ディスプレイカバーとして使用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、従来技術および本開示の実施例に用いられる図面を簡単に説明する。説明する図面は、本開示のいくつかの実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いることなく、これらの図面に基づいて他の関連図面を得ることが可能である。
図1】従来技術による主流の応力分布曲線を示すグラフである。
図2】ある従来技術による応力分布曲線を示すグラフである。
図3】実施例1による結晶化ガラスの応力曲線を示すグラフである。
図4】実施例1により調製された結晶化ガラスのXRDパターンである。
図5】実施例7により調製された結晶化ガラスのXRDパターンである。
図6】実施例15により調製された結晶化ガラスの応力曲線を示すグラフである。
図7】比較例1による結晶化ガラスのXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭にするため、以下、本開示の実施例の技術案を明瞭かつ完全に説明する。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件またはメーカーの推奨する条件で行うことが可能である。製造メーカーが明記されていない試剤または器械について、市販の従来品を使用することが可能である。
【0028】
本開示は、強化過程において反りが起こりやすい問題を解決することを目的とする。現在、変形を解決する従来の方式はいずれも「最初に問題を残し、あとで対策を講じる」のような方式に該当し、例えば、片面研磨により変形を修復する方式が挙げられ、この場合、変形をある程度で修復できるが、強化による強度は、その一部が研磨で損なわれる。本開示は、ガラスの内部構造、組成の面から、強化後に変形が起こりやすい問題を根本的に解決できる。
【0029】
従来技術の上記の欠点を克服するため、本開示は、低反りの強化結晶化ガラス、その調製方法および使用を提供することを目的としており、調製される結晶化ガラスの表面のCSが低く、圧縮応力層が表面から内部に延伸し、圧縮応力勾配の差が小さくかつ比較的均一であり、強化後に応力勾配の差の過大に起因した反りを顕著に改善することができ、本開示に係るものは、CT積分が一般の強化ガラスに対して劣らなく、そして結晶による強度増加の効果を加えた結果、全体の落下耐性が一般の強化ガラスよりも優れる。
【0030】
以下、本開示の実施例による低反りの強化結晶化ガラス、その調製方法および使用を説明する。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態による低反りの強化結晶化ガラスは、反り量が180μm以下であり、任意で、150μm以下であり、任意で、120μm以下である。いくつかの実施形態において、前記結晶化ガラスは、表面からガラス内部まで延伸する圧縮応力層を有し、ガラス表面圧縮応力CSが550MPa未満である。任意で、圧縮応力CSは、100MPa~540MPa、130MPa~500MPa、150MPa~400MPaまたは200MPa~300MPaであり、例えば500MPa、450MPa、400MPa、350MPa、320MPa、300MPa、280MPa、250MPa、180MPaまたは140MPaなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る。任意で、ガラス表面圧縮応力CSが350MPa未満であり、任意で、CSが200MPa未満であり、前記圧縮応力層は、下記の応力分布を有する。
【0032】
(a)応力層の深さが0μm≦Dol<30μmである場合、応力分布曲線が略線形分布を呈し、該曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k1|が、2.45<|k1|<5.05を満たし、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る。任意で、|k1|が2.45<|k1|<4.35を満たし、任意で、|k1|が2.60<|k1|<3.75を満たし、任意で、|k1|が2.60<|k1|<3.2を満たす。
【0033】
(b)応力層の深さが30μm≦Dol≦Dol_zeroである場合、応力分布曲線が略線形分布を呈し、該曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k2|が、1≦|k2|≦1.5を満たし、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る。任意で、|k2|が1.00<|k2|<1.35を満たし、任意で、|k2|が1.00<|k2|≦1.33を満たす。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記圧縮応力層の層深さDol_zeroが110μm~142μmである。任意で、Dol_zeroが、115μm~140μm、120μm~135μmまたは125μm~130μmであり、例えば120μm、125μm、128μm、130μm、135μm、138μmまたは140μmなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る。いくつかの実施形態において、層深さが30μmである場合に応力CS_30が65MPa~455MPaである。任意で、CS_30が、80MPa~420MPa、100MPa~380MPa、150MPa~320MPaまたは200MPa~250MPaであり、例えば70MPa、75MPa、80MPa、85MPa、90MPa、95MPa、100MPa、105MPa、110MPa、115MPa、120MPa、125MPa、130MPa、135MPa、140MPa、150MPa、155MPa、160MPa、170MPa、180MPa、185MPa、190MPa、200MPa、220MPa、240MPa、250MPa、270MPa、300MPa、350MPa、370MPa、420MPaまたは440MPaなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る。任意で、CS_30が100MPa~300MPaである。いくつかの実施形態において、層深さが50μmである場合に応力CS_50が60MPa~130MPaである。任意で、CS_50は、70MPa~120MPa、または80MPa~110MPaまたは90MPa~100MPaであり、例えば65MPa、70MPa、75MPa、80MPa、85MPa、90MPa、95MPa、100MPa、105MPa、110MPa、115MPa、120MPaまたは125MPaなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る。任意で、CS_50が80MPa~110MPaである。
【0035】
本開示に係る強化結晶化ガラスは、表面からガラス内部まで延伸する圧縮応力層を有し、表面圧縮応力が低く、顕著な応力変曲点がなく、圧縮応力層の層深さDol_zeroが110μm~142μmであり、表面圧縮応力と、応力層の深さと、0~30μmおよび30μm~Dol_zeroの2セグメントの層深さの応力曲線の傾きとを制御することにより、表面と内部との応力差が比較的大きいことに起因するガラスの反り変形を抑えることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記結晶化ガラスの組成(wt%)は、SiOが58.1~78.8%(例えば60~75%、62~70%または64~68%であり、例えば58.4%、59%、59.5%、59.8%、60%、60.3%、60.5%、61%、61.4%、62%、62.5%、62.6%、63%、63.5%、64%、64.5%、65%、65.5%、66%、67.4%、68%、68.5%、69%、69.5%、70%、70.5%、70.8%、71%、71.5%、72%、73%、74%、75%、75.5%、76%、77%または78%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、Alが5.4~24.1%(例えば6~24%、8~20%または10~18%、例えば5.5%、5.8%、6%、6.5%、7%、8%、8.5%、9%、10%、11%、11.5%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%または23%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、MgO+ZnOが0~15%(例えば1~14%、4-12%または6~10%であり、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%または14%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、Bが0~3.3%(例えば0.1~3.0%、0.5~2.5%または1.0~2.0%であり、例えば0.5%、0.8%、1%、1.5%、1.8%、2%、2.5%、2.7%または3.1%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、Pが0~1.9%(例えば0.1~1.8%、0.4~1.5%または0.8~1.2%であり、例えば0.3%、0.5%、0.6%、0.8%、1.1%、1.2%、1.5%または1.7%などである)であり、ZrOが0~3.5%(例えば0.1~3.0%、0.5~2.5%または1.0~2.0%であり、例えば0.8%、1%、1.8%、2.0%、2.3%、2.5%、2.7%、2.9%、3.2%、または3.4%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、LiOが1.6~13.7%(例えば2~13%、4~10%または6~8%であり、例えば1.8%、2%、2.4%、2.8%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%または13%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、NaOが1.6~4.5%(例えば2.0~4.0%、2.5~3.5%または2.8~3.2%であり、例えば2%、2.5%、3%、3.5%、4%または4.4%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、KOが3.1%以下(例えば0.1~3.0%、0.4~2.8%または1.0~2.5%であり、例えば0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%または2.8%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、Yが0~8%(例えば0.5~7.5%、2.5~6.5%または3.5~5.5%であり、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%または7.5%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、残部が不可避的不純物であり、NaO/ROが0.6以下(例えば0.05~0.58、0.15~0.55または0.25~0.45であり、例えば0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5または0.55であり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、RO/Alが5.25以下(例えば0.05~5.2、0.1~5.0、0.5~4.5、1.0~4.0または2.0~3.0であり、例えば0.05、0.1、0.5、0.8、1.2、1.3、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、ROがアルカリ金属酸化物の合計である。
【0037】
理論に拘束されるものではないが、SiOは、結晶化ガラスの網目構造を構成し結晶相を形成する主成分であり、ガラスにおいてケイ素酸素四面体構造を呈し、化学的安定性、熱安定性および機械的強度が良好である。本開示において、SiOの添加量は58.1~78.8%であり、任意で、60~69%であり、任意で、61~67%である。
【0038】
理論に拘束されるものではないが、Alは、本開示に係るガラスの網目構造を構成することができ、ガラスの化学的安定性および弾性率を大幅に向上させることができ、ガラスの失透傾向を低減することができる。Alがガラス内部に[AlO]構造で存在する場合、網目構造の一部として存在し、[SiO]と合わせて網目構造として形成し、ガラスの構造をより緻密にすることができる。[AlO]のモル体積が[SiO]のモル体積よりも大きいため、イオン交換のとき、イオンがより容易にガラス内で移動することができ、イオン交換により有利である。Alがガラス内部に[AlO]構造で存在する場合、網目構造外に遊離するものであり、網目充填物の形式で網目構造を充実させ、ガラスの網目構造の密度およびビッカース硬さを高め、網目構造を強化することができる。本開示において、Alの添加量は5.4~24.1%であり、任意で、5.6~18%であり、任意で、5.6~7.8%である。
【0039】
理論に拘束されるものではないが、MgO、ZnOは、選択可能な成分として、ガラス溶融の難易度を下げガラスの熱安定性を向上させる効果を有し、分相しやすい特性を利用して結晶核剤としても使用できる。本開示においてMgO+ZnOの添加量は0~15%であり、任意で、MgOとZnOとの合計添加量が14%以下であり、MgOの添加量が任意で8.5%以下であり、ZnOの添加量が任意で10.5%以下である。
【0040】
理論に拘束されるものではないが、Bは、網目形成酸化物として、ガラスの溶融特性を改善する効果を有し、適量のBは、結晶化ガラスの強度および化学的耐久性を向上させる効果も有する。本開示においてBの添加量は、0~3.3%であり、任意で、1.5~3%である。
【0041】
理論に拘束されるものではないが、Pは本開示において結晶核剤として添加されるものであり、添加量が、1.9%以下であり、任意で、1.5%以下であり、または添加しない。
【0042】
理論に拘束されるものではないが、ZrOは、ガラスの安定性を向上させる効果を有し、結晶化時に結晶粒を微細化し結晶粒の寸法をコントロールする効果も有し、本開示において、添加量が、3.5%以下であり、任意で、2.5%以下である。
【0043】
理論に拘束されるものではないが、アルカリ金属酸化物のLiO、NaO、KOなどが網目修飾物として使用され、酸素を供給する効果を有し、ガラスの溶融温度を顕著に下げ、ガラスの粘度の温度依存性を調整することができる。LiO、NaOは、イオン交換の主成分としてその添加量が結晶化ガラス製品のイオン交換層の深さ、表面応力および圧縮応力層の応力分布を多少左右している。また、LiOは、結晶の形成を促進する効果も有し、結晶相の必須構成成分である。本開示において、LiOの添加量は1.6~13.7%であり、任意で、2.5~12.5%であり、任意で、5.8~12.0%である。NaOの添加量は0.5~4.5%であり、任意で、1.6~4.1%であり、任意で、1.7~3.0%である。KOの添加量は3.1%以下であり、任意で、1.7%以下であり、任意で、1.5%以下であり、または添加しない。
【0044】
理論に拘束されるものではないが、Yは、結晶化ガラスの網目構造強度を強化しヤング率を上げる効果を有する。所定量のYを添加することにより応力分布を均一化し、反りの発生を抑え、製品の落下強度および変形安定性を保証することもできる。本開示において、Yの添加量は0~8%であり、任意で、0.5~4%であり、任意で、2~4%である。
【0045】
NaO/ROの比、RO/Alの比を制御することにより、圧縮応力層における応力分布を効果的に均一化し、ガラスの反りを抑えることができる。本開示において、NaO/ROが0.6以下であり、任意で、0.35以下であり、任意で、0.25以下である。RO/Alが5.25以下であり、この値よりも大きい場合、一方、Alの含有量の低すぎに起因してガラス網目構造チャンネル構造が小さく、網目構造チャンネル内部でのイオンの輸送効率が大幅に下がり、他方、結晶相のタイプの制御に影響を与え、ガラスの寸法の安定性および光学性能に不利である。任意で、RO/Alが2.8以下であり、任意で、RO/Alが2以下であり、任意で、RO/Alが1.2以下であり、任意で、RO/Alが0.8以下である。
【0046】
いくつかの実施形態において、結晶化ガラスの結晶相は、二珪酸リチウム、ペタライト、β-石英固溶体、スピネルのうちの1種または複数種を含み、結晶化度が70%~98%であり、例えば85~96%、88~95%または90~93%であり、例えば70%、74%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%であり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る。理論上、結晶化度が高いほど、強化応力に起因する反り変形が起こる可能性が低くなる。その原因として、500℃未満の条件で、結晶がイオン交換に関与しなく、変形は、主に残余ガラス相が強化されたあとに2つの主表面の応力の不均衡によることであり、これによって、ガラスが面積を変えることで力のバランス(圧力P=F/S)を取らなければならなく、つまり変形する。結晶化度が高いほど、残余ガラス相が少なくなり、化学イオン交換に関与できるのが主にガラス相であるため、ガラス相が少ないほど、化学強化による高靭化効果が限定的になる。このため、強度と寸法安定性とのバランスを取らなければならなく、つまり結晶相とガラス相の割合の面でバランスを取る。ガラス相が5%~10%であることが最も好ましい。結晶化度は、任意で、80%~95%であり、任意で、90%~95%である。結晶相の選択について、結晶化の過程において、珪酸リチウム結晶相から二珪酸リチウム結晶相への転移が存在するため、完成品における残余珪酸リチウム結晶相の割合を制御し、残余珪酸リチウム結晶相の割合を5%以下にする必要があり、過剰の珪酸リチウム結晶相があれば製品の光学特性を大幅に低下させて、製品が青味を帯びるようになってしまう。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態は、強化結晶化ガラスの調製方法をさらに提供する。基礎ガラスの調製は、当分野の周知方法で融解、成形を行う。成形された基礎ガラスに対して下記のステップに従って結晶化および強化を行う。
【0048】
ステップ1:基礎ガラスに対して結晶化処理を施し、基礎結晶化ガラスを得る。
【0049】
ステップ2:結晶化処理により得た基礎結晶化ガラスに対してイオン交換を施す。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記ステップ1における結晶化処理は、下記のステップを含む。基礎ガラスを箱型結晶化炉に入れて3段熱処理を施す。1段目において、520℃~580℃(例えば530℃、540℃、550℃、560℃または570℃など)まで昇温させ、200min~300min(例えば220min~280min、230min~260minまたは240min~250minであり、例えば210min、220min、230min、240min、250min、260min、270min、280minまたは290minなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)保温する。2段目において、600~640℃(例えば605℃~635℃、610℃~630℃または615℃~625℃であり、例えば600℃、610℃、620℃、630℃、635℃、650℃または660℃などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)まで昇温させ、100min~150min(例えば105min~145min、110min~140minまたは120min~130minであり、例えば110min、115min、120min、125min、130min、135min、140minまたは145minなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)保温する。3段目において、645℃~740℃(例えば645℃、650℃、660℃、690℃、740℃などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)まで昇温させ、180min~270min(例えば190min~260min、200min~250minまたは210min~240minであり、例えば190min、200min、210min、220min、230min、240min、250minまたは260minなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)保温する。そして、冷却させ、基礎結晶化ガラスを得る。
【0051】
理論に拘束されるものではないが、本開示は、上記の3段熱処理プロセスにより、一方、ガラスの結晶化度に対する効果的な制御を実現でき、結晶化ガラスの強度を保証するとともに、強化応力に起因する反り変形を抑えることができる。他方、645℃以上の高温段の結晶化時間を180min以上にすることにより、ガラス結晶相に対する制御を効果的に実現でき、ガラス製品における残余珪酸リチウム結晶相の割合を下げ、製品の変色を防止することができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記ステップ2におけるイオン交換は、2回のイオン交換を含む。
【0053】
1回目のイオン交換:基礎結晶化ガラスを第1溶融塩浴に浸して1回目のイオン交換を施す。前記第1溶融塩浴には少なくとも75wt%(例えば75wt%~100wt%、80wt%~95wt%または85wt%~90wt%であり、例えば77wt%、80wt%、82wt%、85wt%、88wt%、90wt%、95wt%、97wt%または100wt%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)のNaNOが含まれ、1回目のイオン交換の温度が430℃~450℃(例えば434℃~448℃、438℃~445℃または440℃~442℃であり、例えば432℃、435℃、440℃、442℃、445℃または448℃などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、1回目のイオン交換の時間が6~11h(例えば6.5h~10.5h、7.5h~9.5hまたは8.0h~9.0hであり、例えば6.5h、7h、7.5h、8h、8.5h、9h、9.5h、10hまたは10.5hなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)である。
【0054】
2回目のイオン交換:1回目のイオン交換がされた基礎結晶化ガラスを第2溶融塩浴に浸して2回目のイオン交換を施す。前記第2溶融塩浴には少なくともKNOおよびLiNOの2種の溶融塩が含まれ、2回目のイオン交換の温度が420℃~440℃(例えば424℃~438℃、426℃~435℃または428℃~432℃であり、例えば424℃、426℃、428℃、430℃、432℃、435℃または438℃などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、2回目のイオン交換の時間が60min以下(例えば1~60min、5~50minまたは10~40minであり、例えば3min、5min、8min、10min、15min、20min、25min、30min、35min、40minまたは45minなどであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)である。
【0055】
いくつかの実施形態において、第2溶融塩浴において、KNOの含有量が90wt%以上(例えば90wt%~99.99wt%、92wt%~98wt%または98wt%~99.98wt%であり、例えば92wt%、93wt%、94wt%、95wt%、96wt%、97wt%、98wt%、99wt%、99.2wt%、99.5wt%、99.7wt%、99.8wt%、99.9wt%、99.92wt%、99.95wt%、99.98wt%または99.99wt%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)であり、LiNOの含有量が0<LiNO≦0.15wt%(例えば0.01wt%~0.15wt%、0.04wt%~0.12wt%または0.06wt%~0.10wt%であり、例えば0.02wt%、0.04wt%、0.05wt%、0.08wt%、0.1wt%、0.12wt%、0.13wt%または0.14wt%などであり、あるいはその範囲内の任意の値または任意の値により定義される範囲であり得る)である。
【0056】
理論に拘束されるものではないが、基礎ガラスに対して結晶化プロセスにより処理したあと、本開示は、2回のイオン交換により所要の応力分布特徴を有する強化結晶化ガラスを得た。1回目のイオン交換(IOX1)において、第1溶融塩浴には少なくとも75%のNaNOが含まれ、交換温度が430~450℃であり、交換時間が6~11hである長時間の交換を採用し、このようにして、1回目のイオン交換において最大の引張応力線密度(CT_LD、=Σ CT_CVCT/Dol_zero)を形成し、ガラス強度の最大化を実現することができる。任意で、第1溶融塩浴にカリウム塩が含まれなく、カリウム塩が含まれても、その含有量が25wt%以下である。溶融塩浴に含まれるカリウム塩に起因してIOX1においてガラスの表面にKが大量付着するようになり、Kの半径がNa、Liよりもはるかに大きいため、NaとLiとの交換を大きく妨げ、高強度を実現できない。2回目のイオン交換(IOX2)において、第2溶融塩浴には、KNOの含有量が90wt%以上であり、少量のLiNO(0<LiNO≦0.15wt%)も含まれており、Liは、半径が小さく、反応活性が高いため、ガラス表面のNaとの交換の速度がK/Na交換の速度の少なくとも3倍以上であり、このため、IOX2塩浴に存在する少量のLiにより、塩浴における、Kとガラス表面のNaとの交換反応のバランスよい進行を顕著に抑制することができ、これによってガラス表面でのKの濃化を防止し、ガラスの厚さ方向におけるKの濃度を低下させ、ガラスの内層と外層との表面圧縮応力差を小さくし、得られる応力曲線の傾き変化がより滑らかで自然であり、顕著な傾きの急激に変化する点(変曲点)が存在しない。イオン交換時間は、60min以下の短時間の交換を採用する。溶融塩および交換時間を上記のように制御することにより、強化後の結晶化ガラス表面での圧縮応力の過大、単位厚み距離範囲内の応力差の過大を効果的に防止し、それに起因するガラスの反りを抑えることができる。また、得られる強化結晶化ガラスの圧縮応力勾配の差が小さくかつ比較的均一であり、従来主流となっているNAS GlassおよびLAS Glassに比べて、本開示に係る強化結晶化ガラスは、応力層の深さが0μm≦Dol<30μmである場合、該曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k1|が、2.45<|k1|<5.05を満たし、応力層の深さが30μm≦Dol≦Dol_zeroである場合、該曲線上の20μm離れる任意の2つの点の間の応力曲線の傾きの絶対値|k2|が、1≦|k2|≦1.5を満たし、応力層の深さが0~30μmである場合、傾きが比較的小さく、応力曲線と、応力を表すY軸と、深さを表すX軸とにより形成される略「台形」の面積がより大きく、相応のCT積分が一般の強化ガラスに対して劣らなく、全体として落下耐性が一般の強化ガラスよりも優れている。
【0057】
本開示の実施形態、実施例および比較例のそれぞれによる結晶化ガラス製品の各性能指標は、下記の方法で測定された。日本有限会社折原製作所製のSLP2000型応力計(光源:518nm)を用いて測定した。結晶相のタイプおよび結晶化度は、いずれも試料を粉末にしてXRD(型番:島津 XRD-6100)により測定する。本開示における一部の用語は、下記のように解釈される。
【0058】
CS:表面圧縮応力、単位:MPa。
【0059】
CS_30:応力曲線におけるDol=30μmである点に対応するCS値。
【0060】
CS_50:応力曲線におけるDol=50μmである点に対応するCS値。
【0061】
Dol_zero:応力曲線におけるCS=0MPaである点に対応するCS値であり、通常、FSM6000LEまたはSLP2000により測定できる最大のDol値。
【0062】
傾きK:応力曲線における任意の指定される2点からなる直線の傾き。
【0063】
反り量:ガラスシートを標準大理石プラットフォーム(平面度が0.01mm未満)に水平に置き、ガラスシートにおける同一平面上の任意の点と中心点との高さ差の最大値。
【0064】
サンドペーパー落下高さB20値:いくつかのサンプルからなるサンプル組の落下試験において、20%のサンプルが失効になるときに対応の落下高さ値である。B20値は、携帯型電子機器端末メーカーが機器製品の信頼性を評価するための常用参考値である。本開示のいくつかの実施形態は、強化結晶化ガラスの使用をさらに提供する。該強化結晶化ガラスは、携帯電話カバー、タブレットカバー、腕時計カバー、自動車ディスプレイカバーとして使用されることができる。
【0065】
本開示に係る強化結晶化ガラスの表面のCSが低く、圧縮応力層が表面から一定深さまで延伸しており、圧縮応力勾配の差が小さくかつ比較的均一であり、強化後に応力勾配の差の過大に起因した反りを顕著に改善することができる。調製される結晶化ガラスの反り量が0.2mm以下である。そして、本開示に係る結晶化ガラスは、CT積分が一般の強化ガラスに対して劣らなく、そして結晶による強度増加の効果を加えた結果、全体の落下耐性が一般の強化ガラスよりも優れる。調製される結晶化ガラスのサンドペーパー落下高さB20値がB20≧1.3mを満たす。本開示に係る強化結晶化ガラスは、優れた反り耐性を有するため、3C電子製品の分野に広く応用することができる。
【0066】
実施例
【0067】
本開示の技術案をさらに明瞭に解釈、説明するため、下記の非限定的な実施例を提供する。本開示の実施例は、できる限り数値の精確性を確保したとしても、誤差や偏差が多少存在する。組成自体は、酸化物に基づいて重量%で示され、100%で計算され、各実施例における各サンプルの厚さが0.65mmである。
【0068】
下記の実施例および比較例のそれぞれによる結晶化ガラス製品の各性能指標は、上記の具体的な実施形態による方法で測定した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
注:サンドペーパー落下方式として、176gの荷重を採用し、サンドペーパーが180メッシュのSiCサンドペーパーであり、高さが40cmである位置から定方向落下試験を行い、一高さで1回落下し、高さを10cmずつ増加させ、破砕したときの高さを記録した。
【0072】
性能結果の説明
【0073】
図3は、実施例1により調製された結晶化ガラスの応力曲線を示すグラフである。図面から分かるように、該結晶化ガラスは、表面のCSが低く、圧縮応力が表面から内部まで延伸し、圧縮応力勾配の差が小さくかつ比較的均一である。図4は、実施例1により調製された結晶化ガラスのXRDパターンであり、主な結晶がスピネルである。性能結果について、調製されたガラスは、良好な反り耐性(反り量≦0.1mm)を有し、落下耐性が優れた(B20が1.5mであった)。
【0074】
図5は、実施例7により調製された結晶化ガラスのXRDパターンである。図面から分かるように、主な結晶は、β石英固溶体および二珪酸リチウムである。
【0075】
図6は、実施例15により調製された結晶化ガラスの応力曲線を示すグラフである。図面から分かるように、該結晶化ガラスは、表面のCSが低く、圧縮応力勾配の差が小さくかつ比較的均一である。性能結果について、調製されたガラスは、良好な反り耐性(反り量≦0.13mm)を有し、落下耐性が比較的良好であった(B20が1.3mであった)。
【0076】
実施例1~16と比較例1~4とを比べると分かるように、実施例1~16によるガラスは、表面のCSが低く、各応力曲線が略線形分布のものであり、0~30μmおよび30~Dol_zeroの2セグメントの層深さの応力曲線において、傾き|k1|が2.4≦|k1|≦5.05を満たし、傾き|k2|が1.0≦|k2|≦1.5を満たし、圧縮応力勾配の差が小さくかつ比較的均一であり、調製された結晶化ガラスの効果に関するデータについて、反り量が、0.2mm以下の応用ニーズを満たし、サンドペーパー落下高さB20値がB20≧1.3mを満たす。比較例1~4から分かるように、比較例1によるものの応力分布特徴は、30~Dol_zeroの層深さにおける応力曲線において、傾き|k2|が比較的大きく(1.7~3.0)、相応に、調製された結晶化ガラスの効果に関するデータについて、反り量が0.15mm以下でありこの面で性能が比較的優れたが、サンドペーパー落下高さB20値の面で、性能が比較的劣った。比較例2によるものの応力分布特徴は、0~30μmの層深さにおける応力曲線において、傾き|k1|がとても大きく(12.8~19.0)、相応に、調製された結晶化ガラスの効果に関するデータについて、反り量が0.18~0.45mmであり、サンドペーパー落下高さB20が0.93mであり、性能がかなり劣った。比較例3によるものの応力分布特徴は、応力層の深さDol_zeroが157μmの応力曲線において、傾き|k1|が比較的大きく(5.2~6.8)、|k2|が比較的小さく(0.6~1.1)、相応に、調製された結晶化ガラスの効果に関するデータについて、落下耐性が比較的劣り(B20が0.92mであった)、反り耐性が比較的劣った(反り量が0.3~0.6mmであった)。比較例4によるものの応力分布特徴は、応力層の深さDol_zeroが比較的大きく(162μm)、相応に、調製された結晶化ガラスの効果に関するデータについて、反り耐性が比較的劣り(0.22~0.38μm)、落下耐性が比較的劣った(B20が0.88mであった)。
【0077】
また、実施例11と実施例14とを比べると分かるように、調製プロセス(結晶化プロセスとイオン交換プロセスとを含む)が同じである場合、結晶化ガラスの組成について、RO/Alの比を比較的小さくすると、低反りのガラスを得ることに有利であり、性能がより優れた(すなわち、反りがより低い)ガラスを得ることができる。
【0078】
実施例12と実施例13とを比べると分かるように、ガラス組成および結晶化プロセスが同じである場合、イオン交換プロセスにおいて、IOX1の塩浴にカリウム塩を含まない場合、高強度のガラスを得ることに有利であり、性能がより優れた(すなわち、強度がより高い)ガラスを得ることができる。
【0079】
実施例11~13、15と比較例1、3~4を比べると分かるように、ガラス組成が同じである場合、実施例11~13、15における結晶化プロセスの3段目の温度が本開示に係る温度範囲内であったため、結晶化ガラスの結晶相に珪酸リチウムが存在することを避けることができ、製品の優れた光学特性をさらに保証することができる。比較例1、3~4における結晶化プロセスの3段目の温度が低すぎであったため、結晶化ガラスの結晶相に珪酸リチウムが存在し、これによって製品の光学特性が大幅に低下した。図7は、比較例1による結晶化ガラスのXRDパターンである。図面から分かるように、結晶は、珪酸リチウムと、二珪酸リチウムと、ペタライトとを含む。
【0080】
上記は、本開示の実施形態にすぎず、本開示の範囲を限定するものはない。本開示の明細書および図面を利用して行った構造の均等置換またはプロセスの均等置換、あるいは他の関連分野への直接または間接的な使用も、本開示の保護範囲内に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7