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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】セラミックヒータ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241204BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20241204BHJP
   H05B 3/28 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/20 328
H05B3/28
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023551769
(86)(22)【出願日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2023005549
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-124055(JP,A)
【文献】特開2019-220537(JP,A)
【文献】特開2018-056332(JP,A)
【文献】登録実用新案第3233344(JP,U)
【文献】特開2017-228360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002779(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0069463(KR,A)
【文献】特開2022-065943(JP,A)
【文献】特開2005-032842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/20
H05B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハが載置されるための第一面と、前記第一面と対向する第二面とを有し、かつ、複数の加熱ゾーンを与える配置で複数のヒータ電極が埋設されたセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの第二面に取り付けられ、かつ、内部空間を備えた円筒状のセラミックシャフトと、
前記セラミックプレートの前記内部空間に面する領域に形成される、前記複数のヒータ電極の各々に接続可能に構成される複数の接続部と、
前記内部空間に配置され、前記複数の接続部に接続される多端子一体構造体と、
を備えたセラミックヒータであって、
前記多端子一体構造体が、
前記セラミックプレートの第二面に接して又はその近傍に配置され、前記第二面からの離間距離が0~50mmである固定プレートと、
前記固定プレートを厚み方向に貫通するように前記固定プレートに固定一体化され、一方の端部が前記複数の接続部にそれぞれロウ接合された複数の端子ロッドと、
前記複数の端子ロッドの他方の端部に直接又は間接的に接続される、各々が耐熱絶縁材料で被覆された複数本のケーブルと、
を含み、
前記複数の接続部の各々が、
前記セラミックプレートの第二面に形成された穴と、
前記ヒータ電極の一部又は前記ヒータ電極からのリード線の一部であって、前記穴内に露出した露出部と、から構成され、前記露出部に前記端子ロッドがロウ接合されており、
前記穴内に前記端子ロッドの端部が挿入され、前記端部の側面と前記穴の内壁との間もロウ接合されている、セラミックヒータ。
【請求項2】
前記複数の接続部の全部又は一部において前記穴の深さが互いに異なる、請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記固定プレートが前記セラミックプレートの第二面に接合されている、且つ/又は前記固定プレートの側端面が前記セラミックシャフトの内壁に接合されている、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記セラミックプレートの第二面が前記固定プレートの少なくとも一部が嵌合可能な凹部を有しており、前記凹部に前記固定プレートの上面及び/又は側端面が接合されている、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記セラミックプレートの第二面と前記固定プレートとの間に隙間が存在する、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項6】
前記固定プレートの側端面と前記セラミックシャフトの内壁との間に隙間が存在する、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項7】
前記固定プレートの側端面と前記セラミックシャフトの内壁との間に隙間が存在しない、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項8】
ヒータ電極に応じた異なる電流量を許容するように、前記ヒータ電極の一つに接続する前記端子ロッドの径が、前記ヒータ電極の他の一つに接続する前記端子ロッドの径と異なる、且つ/又は前記ヒータ電極の一つに接続する前記端子ロッドの数が、前記ヒータ電極の他の一つに接続する前記端子ロッドの数と異なる、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項9】
前記固定プレートが円板状又は円環状である、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項10】
前記固定プレートが円板状の固定プレートを分割した形状の複数の固定プレート片のセットで構成され、それにより前記多端子一体構造体が複数の多端子一体構造パーツのセットで構成されている、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項11】
前記ケーブルが湾曲して設けられる、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項12】
前記多端子一体構造体が、前記端子ロッドと前記ケーブルとの間に介在される、耐熱絶縁材料で被覆されていない剥き出しの金属線をさらに備えており、前記剥き出しの金属線が、前記金属線よりも熱伝導性が低い絶縁保護材で取り囲まれている、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項13】
前記セラミックプレートと前記固定プレートとの間及び/又は前記固定プレートの前記セラミックプレートと反対側に断熱部材をさらに備えた、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項14】
前記ケーブルが前記セラミックシャフトの下端を超えて延在している、請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックヒータに関するものであり、特に複数の加熱ゾーンを有するセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス用の成膜装置において、ウェハの温度を均一に制御するための支持ステージとして、セラミックヒータが用いられている。そのようなセラミックヒータとして、ウェハが載置されるためのセラミックプレートと、このセラミックプレートに取り付けられた円筒状のセラミックシャフトとを備えたものが広く用いられている。
【0003】
セラミックシャフトを有するセラミックヒータにおいて、セラミックシャフトの内部空間を通ってセラミックプレート内の電極に接続する多数の端子ロッドを備えたものが知られている。例えば、特許文献1(特許第6816004号公報)には、ヒータ要素及び複数の電極が埋め込まれた電気絶縁材料を含むパックと、ヒータ要素用及び電極用の複数のコネクタを含むシャフトと、複数のコネクタが通過する電気絶縁端子ブロックを含むベースとを備えたウェハチャックアセンブリが開示されている。この端子ブロックは、複数のコネクタを整列させる働きをし、それらのそれぞれの遠位端がパック内で対応するソケットと嵌合するように配置される。
【0004】
ところで、複数の加熱ゾーンを備えたセラミックヒータが提案されている。例えば、特許文献2(特開2022-122675号公報)には、セラミック基体の内周側領域に埋設された内周側抵抗発熱体と、セラミック基体の外周側領域に埋設された外周側抵抗発熱体とを備えたセラミックヒータが開示されている。セラミック基体の中央領域に外周側抵抗発熱体に給電する外周側給電端子が設けられる一方、外周側抵抗発熱体と外周側給電端子とを接続する金属メッシュ製のジャンパがセラミック基体に埋設される。ジャンパは、ジャンパ埋設面上の金属メッシュ円板を複数に分割したメッシュ電極で構成される。内周側領域はセラミック基体と同心円状の円形領域であり、外周側領域は円形領域の外側の環状領域である。外周側抵抗発熱体は、環状領域を複数に分割した分割領域のそれぞれに設けられているか、又は環状領域に1つ設けられる。ジャンパは、外周側抵抗発熱体のそれぞれに対して対をなすように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6816004号公報
【文献】特開2022-122675号公報
【発明の概要】
【0006】
特許文献2に開示されるような複数の加熱ゾーンを備えたセラミックヒータ(すなわちマルチゾーンヒータ)においては、複数のヒータ電極がセラミックプレートに埋設されている。このため、これら複数のヒータ電極の各々に対して端子ロッドを接続することが求められる。例えば、図22及び23に示されるように10個の加熱ゾーンZ1~Z10を有するセラミックヒータ110の場合、10ゾーンへの給電を可能とすべく、10対の端子ロッド124(すなわち20本の端子ロッド124)が直接又はリード線115を介してセラミックプレート112内の各加熱ゾーンに対応する10個のヒータ電極114に接続されることになる。この場合、セラミックシャフト116の内部空間Sに20本の端子ロッド124を通してヒータ電極114に接続する構成となる。このように、セラミックシャフト116内を通る多数の端子ロッド124をヒータ電極114に接続する場合、端子ロッド124を1本ずつ個別にヒータ電極114又はリード線115に接合しなければならないため、その接合作業は極めて煩雑なものとなる。特に、端子ロッド124の数を増やす場合、端子ロッド124の径を小さくして端子ロッド1本当たりのセラミックシャフト116内の占有断面積を小さくすることが求められるが、その場合、端子ロッド124の接合面積の減少により接合強度の低下を招く。かかる状況でありながらも、多数の端子ロッド124をセラミックシャフト116内に配置しながら端子ロッド124同士の絶縁を確保する必要があり、端子ロッド124同士を絶縁するための構造が複雑なものとなる。したがって、多数の端子配線(例えば端子ロッド124)をそれらの間の絶縁を容易に確保しながら(多数のヒータ電極114にそれぞれ対応する)多数の接続部118に効率良く接合できる構成が望まれる。
【0007】
本発明者らは、今般、セラミックプレートに埋設された複数のヒータ電極に対応する複数の接続部に所定の多端子一体構造体をロウ接合で接続することで、複数の端子配線をそれらの間の絶縁を容易に確保しながら複数の接続部に同時接合できることを見出した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、複数の端子配線をそれらの間の絶縁を容易に確保しながら複数の接続部に同時接合することにより効率良く製造可能な、複数の加熱ゾーンを有する信頼性の高いセラミックヒータを提供することにある。
【0009】
本発明によれば、以下の態様が提供される。
[態様1]
ウェハが載置されるための第一面と、前記第一面と対向する第二面とを有し、かつ、複数の加熱ゾーンを与える配置で複数のヒータ電極が埋設されたセラミックプレートと、
前記セラミックプレートの第二面に取り付けられ、かつ、内部空間を備えた円筒状のセラミックシャフトと、
前記セラミックプレートの前記内部空間に面する領域に形成される、前記複数のヒータ電極の各々に接続可能に構成される複数の接続部と、
前記内部空間に配置され、前記複数の接続部に接続される多端子一体構造体と、
を備えたセラミックヒータであって、
前記多端子一体構造体が、
前記セラミックプレートの第二面に接して又はその近傍に配置され、前記第二面からの離間距離が0~50mmである固定プレートと、
前記固定プレートを厚み方向に貫通するように前記固定プレートに固定一体化され、一方の端部が前記複数の接続部にそれぞれロウ接合された複数の端子ロッドと、
前記複数の端子ロッドの他方の端部に直接又は間接的に接続される、各々が耐熱絶縁材料で被覆された複数本のケーブルと、
を含む、セラミックヒータ。
[態様2]
前記複数の接続部の各々が、
前記セラミックプレートの第二面に形成された穴と、
前記ヒータ電極の一部又は前記ヒータ電極からのリード線の一部であって、前記穴内に露出した露出部と、
から構成され、前記露出部に前記端子ロッドがロウ接合される、態様1に記載のセラミックヒータ。
[態様3]
前記穴内に前記端子ロッドの端部が挿入され、前記端部の側面と前記穴の内壁との間もロウ接合されている、態様2に記載のセラミックヒータ。
[態様4]
前記複数の接続部の全部又は一部において前記穴の深さが互いに異なる、態様2又は3に記載のセラミックヒータ。
[態様5]
前記固定プレートが前記セラミックプレートの第二面に接合されている、且つ/又は前記固定プレートの側端面が前記セラミックシャフトの内壁に接合されている、態様1~4のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様6]
前記セラミックプレートの第二面が前記固定プレートの少なくとも一部が嵌合可能な凹部を有しており、前記凹部に前記固定プレートの上面及び/又は側端面が接合されている、態様1~5のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様7]
前記セラミックプレートの第二面と前記固定プレートとの間に隙間が存在する、態様1~6のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様8]
前記固定プレートの側端面と前記セラミックシャフトの内壁との間に隙間が存在する、態様1~7のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様9]
前記固定プレートの側端面と前記セラミックシャフトの内壁との間に隙間が存在しない、態様1~7のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様10]
ヒータ電極に応じた異なる電流量を許容するように、前記ヒータ電極の一つに接続する前記端子ロッドの径が、前記ヒータ電極の他の一つに接続する前記端子ロッドの径と異なる、且つ/又は前記ヒータ電極の一つに接続する前記端子ロッドの数が、前記ヒータ電極の他の一つに接続する前記端子ロッドの数と異なる、態様1~9のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様11]
前記固定プレートが円板状又は円環状である、態様1~10のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様12]
前記固定プレートが円板状の固定プレートを分割した形状の複数の固定プレート片のセットで構成され、それにより前記多端子一体構造体が複数の多端子一体構造パーツのセットで構成されている、態様1~11のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様13]
前記ケーブルが湾曲して設けられる、態様1~12のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様14]
前記多端子一体構造体が、前記端子ロッドと前記ケーブルとの間に介在される、耐熱絶縁材料で被覆されていない剥き出しの金属線をさらに備えており、前記剥き出しの金属線が、前記金属線よりも熱伝導性が低い絶縁保護材で取り囲まれている、態様1~13のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様15]
前記セラミックプレートと前記固定プレートとの間及び/又は前記固定プレートの前記セラミックプレートと反対側に断熱部材をさらに備えた、態様1~14のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
[態様16]
前記ケーブルが前記セラミックシャフトの下端を超えて延在している、態様1~15のいずれか一つに記載のセラミックヒータ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるセラミックヒータの一態様を示す模式上面図である。
図2図1に示されるセラミックヒータを示す模式断面図である。
図3】多端子一体構造体を用いたセラミックヒータの作製を説明するための模式断面図である。
図4】固定プレートの上面がセラミックプレートに接合された一態様を示す模式断面図である。
図5】固定プレートの上面がセラミックプレートに接合された他の一態様を示す模式断面図である。
図6】固定プレートの側面がセラミックシャフトに接合された配置の一態様を示す模式断面図である。
図7】固定プレートの側面がセラミックプレートに接合された配置の一態様を示す模式断面図である。
図8】固定プレートの側面がセラミックシャフトに接合された配置の他の一態様を示す模式断面図である。
図9】固定プレートの上面及び側面がそれぞれセラミックプレート及びセラミックシャフトに接合された配置の一態様を示す模式断面図である。
図10】固定プレートの上面及び側面がセラミックプレートに接合された配置の一態様を示す模式断面図である。
図11】多端子一体構造体の一態様を示す模式平面図である。
図12】多端子一体構造体の他の一態様を示す模式平面図である。
図13】直線状に分割された多端子一体構造体の一態様を示す模式平面図である。
図14】直線状に分割された多端子一体構造体の他の一態様を示す模式平面図である。
図15】直線状に分割された多端子一体構造体の他の一態様を示す模式平面図である。
図16】放射状に分割された多端子一体構造体の一態様を示す模式平面図である。
図17】放射状に分割された多端子一体構造体の他の一態様を示す模式平面図である。
図18】放射状に分割された多端子一体構造体の他の一態様を示す模式平面図である。
図19】セラミックヒータ、特に多端子一体構造体の一態様を示す模式断面図である。
図20】セラミックヒータ、特に多端子一体構造体の他の一態様を示す模式断面図である。
図21】セラミックヒータ、特に多端子一体構造体の他の一態様を示す模式断面図である。
図22】従来技術によるセラミックヒータの一態様を示す模式上面図である。
図23図22に示されるセラミックヒータを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によるセラミックヒータは、半導体製造装置内においてウェハを支持するためのセラミック製の台である。典型的には、本発明によるセラミックヒータは、半導体成膜装置用のセラミックヒータでありうる。成膜装置の典型的な例としては、CVD(化学気相成長)装置(例えば、熱CVD装置、プラズマCVD装置、光CVD装置、及びMOCVD装置)並びにPVD(物理気相成長)装置が挙げられる。
【0012】
図1及び2にセラミックヒータの一態様を示す。図1及び2に示されるセラミックヒータ10は、セラミックプレート12と、円筒状のセラミックシャフト16と、複数の接続部18と、多端子一体構造体20とを備える。セラミックプレート12は、ウェハ(図示せず)が載置されるための第一面12aと、第一面12aと対向する第二面12bとを有する。セラミックプレート12には、複数の加熱ゾーンZ1~Z10を与える配置で複数のヒータ電極14が埋設されている。セラミックプレート12の第二面12bにはセラミックシャフト16が取り付けられる。セラミックシャフト16は円筒状であり、それ故、内部空間Sを備えている。セラミックプレート12の内部空間Sに面する領域には複数の接続部18が形成され、これらの接続部18は複数のヒータ電極14の各々に接続可能に構成される。多端子一体構造体20は、内部空間Sに配置され、複数の接続部18に接続される。多端子一体構造体20は、固定プレート22と、複数の端子ロッド24と、複数本のケーブル26とを含む。固定プレート22は、セラミックプレート12の第二面12bに接して又はその近傍に配置される。固定プレート22の第二面12bからの離間距離は0~50mmである。複数の端子ロッド24は、固定プレート22を厚み方向に貫通するように固定プレート22に固定一体化されており、端子ロッド24の一方の端部24aが複数の接続部18にそれぞれ(ロウ材28を用いて)ロウ接合されている。複数の端子ロッド24の他方の端部24bには複数本のケーブル26が直接又は間接的に接続されており、これらのケーブル26の各々が耐熱絶縁材料で被覆されている。このように、セラミックプレート12に埋設された複数のヒータ電極14に対応する複数の接続部18に多端子一体構造体20をロウ接合で接続することで、複数の端子配線(例えば端子ロッド24やケーブル26)をそれらの間の絶縁を容易に確保しながら複数の接続部18に同時接合することができる。すなわち、かかる構成によれば、複数の端子配線をそれらの間の絶縁を容易に確保しながら複数の接続部18に同時接合することにより効率良く製造可能な、複数の加熱ゾーンZ1~Z10を有する信頼性の高いセラミックヒータ10を提供することができる。
【0013】
すなわち、前述したように、図22及び23に示されるような複数の加熱ゾーンZ1~Z10を備えた従来のセラミックヒータ110においては、セラミックシャフト116内を通る多数の端子ロッド124をヒータ電極114に接続する場合、端子ロッド124を1本ずつ個別にヒータ電極114又はリード線115に接合しなければならないため、その接合作業は極めて煩雑なものとなる。特に、端子ロッド124の数を増やす場合、端子ロッド124の径を小さくして端子ロッド1本当たりのセラミックシャフト116内の占有断面積を小さくすることが求められるが、その場合、端子ロッド124の接合面積の減少により接合強度の低下を招く。かかる状況でありながらも、多数の端子ロッド124をセラミックシャフト116内に配置しながら端子ロッド124同士の絶縁を確保する必要があり、端子ロッド124同士を絶縁するための構造が複雑なものとなる。一方、複数の端子ロッドを下方からばね等で付勢して接続部に押し当てる構造も考えらえるが、500℃超える使用環境下でばねの特性劣化や押し当て面の変質等により所期の性能を維持するのが困難となる。
【0014】
これに対し、本発明のセラミックヒータ10の製造においては、図3に概念的に示されるように、多端子一体構造体20をセラミックプレート12に接して又はその近傍に配置して複数の接続部18に(ロウ材28を用いて)ロウ接合で接続するという簡便な手法で、複数の端子配線(例えば端子ロッド24やケーブル26)間の絶縁を容易に確保しながら複数の接続部18に同時接合することができる。すなわち、多端子一体構造体20は、複数の端子ロッド24が固定プレート22に固定一体化された構成を有し、かつ、端子ロッド24の端部に接続されるケーブル26が耐熱絶縁材料で被覆されているため、多端子一体構造体20自体において端子配線同士の絶縁を予め十分に確保できる。このため、端子ロッド24を接続部18に接続する際の絶縁性を確保するための煩雑な作業を回避できる。また、多端子一体構造体20を用いることで、端子ロッド24を1本ずつ接続部18に個別に接続する必要がなく、複数の端子ロッド24を複数の接続部18に同時接合できる。さらに、端子ロッド24の本数増加に伴いそれらの接合面積が減ったとしても、多端子一体構造体20の全体で十分な接合強度を確保できるため、従来必要とされていたような強固なロウ接合を施す必要が無くなり、直径2.0mm以下といったような小径端子を用いることも可能となる。このように、本発明のセラミックヒータ10は端子配線間の絶縁と端子の接合強度を十分に確保しながら効率良く製造することができる構成を有しており、その結果、セラミックヒータ10を信頼性の高いマルチゾーンヒータとして提供することができる。
【0015】
セラミックプレート12は、複数の加熱ゾーンZ1~Z10を与える配置で複数のヒータ電極14が埋設されたセラミック製のプレートである。加熱ゾーンZの数は特に限定されないが、好ましくは8~150、より好ましくは10~50である。このようなセラミックプレート12は、公知のマルチゾーンヒータ(例えば特許文献2参照)で採用されるセラミックプレートと同様の構成でありうる。
【0016】
セラミックプレート12のヒータ電極14等の内部電極及びリード線15等の配線以外の主要部分(すなわちセラミック基体)は、優れた熱伝導性、高い電気絶縁性、及びシリコンに近い熱膨張特性等の観点から、窒化アルミニウムで構成されるのが好ましい。
【0017】
セラミックプレート12の好ましい形状は円板状である。もっとも、円板状のセラミックプレート12の平面視形状は、完全な円形である必要はなく、例えば、オリフラ(olientation flat)のように一部を欠いた不完全な円形であってもよい。セラミックプレート12のサイズは、使用が想定されるウェハの直径に応じて適宜決定すればよく特に限定されないが、円形の場合、直径は典型的には150~450mmであり、例えば300mm程度である。
【0018】
ヒータ電極14は、特に限定されないが、例えば導電性のコイルをセラミックプレート12の全面にわたって一筆書きの要領で配線したものでありうる。ヒータ電極14の両端には、給電のため端子ロッド24が接続されており、端子ロッド24はケーブル26(又は金属線34及びケーブル26)を経てヒータ電源(図示せず)に接続されている。ヒータ電極14は、ヒータ電源から電力が供給されると発熱して第一面12aに載置されたウェハを加熱する。ヒータ電極14は、コイルに限定されるものではなく、例えばリボン(細長い薄板)であってもよいし、メッシュであってもよい。
【0019】
セラミックプレート12には、ヒータ電極14以外の内部電極が埋設されていてもよい。そのような内部電極の例としては、ESC電極及びRF電極が挙げられる。ESC電極は、静電チャック(ESC)電極の略称であり、静電電極とも称される。ESC電極は、セラミックプレート12よりもやや小径の円形の薄層電極であるのが好ましく、例えば、細い金属線を網状に編み込んでシート状にしたメッシュ状の電極でありうる。ESC電極はプラズマ電極として利用してもよい。すなわち、ESC電極に高周波を印加することにより、ESC電極をプラズマ電極としても使用することができ、プラズマCVDプロセスによる成膜を行うこともできる。ESC電極には、給電のためESCロッドが接続されるのが好ましく、ESCロッドはセラミックシャフト16の内部空間Sを経て外部電源(図示せず)に接続されるのが好ましい。多端子一体構造体20がESCロッド用の端子ロッドをさらに備えていてもよい。ESC電極は、外部電源によって電圧が印加されると第一面12aに載置されたウェハをチャッキングする。このときのチャッキング力は、セラミックプレート12の主要部分を構成しうる窒化アルミニウムの体積抵抗率が1×10~1×1013Ωcmであるためジョンソン・ラーベック力である。
【0020】
セラミックシャフト16は、セラミックプレート12の第二面12bに取り付けられる円筒状のシャフトであり、公知のセラミックヒータで採用されるセラミックシャフトと同様の構成でありうる。セラミックシャフト16は、端子ロッド24を収容するための内部空間Sを備える。セラミックシャフト16は、セラミックプレート12と同様のセラミック材料で構成されるのが好ましい。したがって、セラミックシャフト16は窒化アルミニウムで構成されるのが好ましい。セラミックシャフト16の上端面は、セラミックプレート12の第二面12bに固相接合又は拡散接合により接合されているのが好ましい。セラミックシャフト16の外径は、特に限定されず、例えば40mm程度である。セラミックシャフト16の内径(内部空間Sの径)も、特に限定されず、例えば36mm程度である。
【0021】
複数の接続部18は、セラミックプレート12の内部空間Sに面する領域に形成され、複数のヒータ電極14の各々に接続可能に構成される。接続部18は端子ロッド24の上端がロウ接合されることでヒータ電極14への給電を可能とする構成であれば特に限定されない。好ましくは、複数の接続部18の各々が、セラミックプレート12の第二面12bに形成された穴を有し、穴内に露出したヒータ電極14の一部又はヒータ電極14からのリード線15の一部(すなわち露出部)に端子ロッド24がロウ接合される。この穴はセラミックプレート12に形成された穴のみならず当該穴から連通して形成されたヒータ電極14及び/又はリード線15の凹みも含み得る。この場合、この穴内に端子ロッド24の端部が挿入され、端部の側面と穴の内壁との間もロウ接合されているのが、側面接合で強度を向上できる点で好ましい。
【0022】
複数の接続部18の全部又は一部において穴の深さが互いに異なっていてもよい。例えば、図2に示されるようにヒータ電極14又はリード線15の高さが対応する加熱ゾーンに応じてそれぞれ異なる場合、穴の深さをそれぞれの高さに合わせて形成することで、ヒータ電極14又はリード線15を適切に穴に露出させることができ、端子ロッド24の接続部18へのロウ接合を確実に行うことができる。
【0023】
多端子一体構造体20は、内部空間Sに配置され、複数の接続部18に接続される。図2及び3に示されるように、多端子一体構造体20は、固定プレート22と、複数の端子ロッド24と、複数本のケーブル26とを含む。
【0024】
固定プレート22は、複数の端子ロッド24が互いに絶縁された状態で固定一体化されるためのプレートである。複数の端子ロッド24が固定プレート22に固定一体化されることで、固定プレート22で強度を確保できるため、端子ロッド24単独では得られない高い強度を多端子一体構造体20の全体で確保することができる。固定プレート22は、耐熱絶縁材料で構成されるのが好ましく、熱伝導性の低いものがより好ましい。そのような耐熱絶縁材料の例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱樹脂、並びにアルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、チタニア、ジルコニア等のセラミックが挙げられる。特に、セラミックプレート12と熱膨張率が同等か50%程度高い耐熱絶縁材料が好ましく、そのような材料の例としてはAlN-Alが挙げられる。
【0025】
固定プレート22は、セラミックプレート12の第二面12bに接して又はその近傍に配置される。固定プレート22の第二面12bからの離間距離は0~50mmであり、好ましくは0~30mmである。このように固定プレート22を12bに接して又はその近傍に配置することで複数の端子ロッド24の接続部18へのロウ付けによる同時接合がしやすくなる。例えば、固定プレート22から第二面12b方向に延出する端子ロッド24の延出部が短くなるため、(端子ロッド24の延出部が長い場合に起こりうる)端子ロッド24の撓み等のよる位置ズレが生じにくくなり、複数の接続部18に複数の端子ロッド24を同時接合する際の作業がしやすくなる。
【0026】
固定プレート22は、セラミックプレート12及び/又はセラミックシャフト16に対して接合されているのが好ましい。すなわち、多端子一体構造体20とセラミックプレート12との固定は端子ロッド24と接続部18とのロウ接合により実現できるが、より強固かつ確実に固定するために接着剤30(例えばセラミックボンド)等の接合手段を用いてセラミックプレート12及び/又はセラミックシャフト16と接合するのが好ましい。
【0027】
固定プレート22は、セラミックプレート12及び/又はセラミックシャフト16の様々な位置に接合されうる。図4~10に固定プレート22とセラミックプレート12及びセラミックシャフト16との様々な位置関係をその他の構成部材(端子ロッド24、ケーブル26等)を省略して概念的に示す。これらの図において接着剤30として示されている部分が接合されている部分であり、それ以外の部分は接合されていなくてもよい。図4、5、9及び10に示されるように、固定プレート22がセラミックプレート12の第二面12b(又は第二面12bに設けられた凹部32)に接合されていてもよいし、図6、8及び9に示されるように固定プレート22の側端面がセラミックシャフト16の内壁に接合されていてもよい。あるいは、図5、7及び10に示されるように、セラミックプレート12の第二面12bが固定プレート22の少なくとも一部が嵌合可能な凹部32を有していており、凹部32に固定プレート22の上面及び/又は側端面が接合されていてもよい。
【0028】
図4及び5は、固定プレート22の上面がセラミックプレート12に接着剤30等の接合手段で接合されている態様を示している。図4に示される態様は、固定プレート22がセラミックプレート12の第二面12bにのみ接着剤30で接合されている。図5に示される態様は、固定プレート22がセラミックプレート12の凹部32にのみ接着剤30で接合されている。いずれの態様においても、固定プレート22はその上面でのみセラミックプレート12に接合されていればよく、固定プレート22の側端面はセラミックプレート12及びセラミックシャフト16に接合される必要はない。
【0029】
図4及び5に示される態様においては、固定プレート22の側端面とセラミックシャフト16の内壁との間に隙間が存在しており、図5の態様では固定プレート22の側端面とセラミックプレート12の凹部32の内壁との間にも隙間が存在している。このように固定プレート22の横方向に隙間が存在することで、この隙間を横方向の応力を緩和するためのバッファ空間として機能させることができる。すなわち、熱膨張係数が異なる部材を横方向に接触させた場合、高温での装置稼働時にこれらの部材が異なる比率で膨張する結果、接合部分に横方向の圧縮応力が生じることになる。しかし、本態様によれば、固定プレート22の横方向に隙間が存在することで、熱膨張係数が異なる部材が横方向に接触するのを回避して、そのような横方向の圧縮応力を生じなくすることができる。また、膨張係数が異なる部材が横方向に接触したとしても、バッファ空間としての隙間で応力が吸収ないし緩和されるため、横方向の圧縮応力を低減することができる。
【0030】
図6~8は、固定プレート22の側端面がセラミックシャフト16又はセラミックプレート12に接着剤30等の接合手段で接合されている態様を示している。図6に示される態様は、固定プレート22がセラミックシャフト16の内壁にのみ接着剤30で接合されている。図7に示される態様は、固定プレート22の側端面がセラミックプレート12の第二面12bに設けられた凹部32にのみ接着剤30で接合されている。いずれの態様においても、固定プレート22はその側端面でのみセラミックシャフト16又はセラミックプレート12に接合されていればよく、固定プレート22の上面はセラミックプレート12及びセラミックシャフト16に接合される必要はない。したがって、図8に示される態様のように、セラミックプレート12と固定プレート22との間に隙間を設けた状態で、固定プレート22の側端面がセラミックシャフト16に接合されていてもよい。この態様においては、セラミックシャフト16に切欠部を設けて、この切欠部で固定プレート22の側端部を支持する構成としてもよい。
【0031】
図6~8に示される態様においても、固定プレート22とセラミックシャフト16との間、あるいは固定プレート22の側端面とセラミックプレート12の凹部32の内壁との間に隙間を設けることができる。すなわち、固定プレート22とセラミックシャフト16とを接着剤30で部分的にのみ接合させることで、固定プレート22とセラミックシャフト16との間の非接合箇所に隙間を設けることができる。同様に、固定プレート22の側端面と凹部32の内壁とを接着剤30で部分的にのみ接合させることで、固定プレート22の側端面と凹部32の内壁との間の非接合箇所に隙間を設けることができる。そして、このような隙間を上述したように横方向の応力を緩和するためのバッファ空間として機能させることができる。すなわち、固定プレート22とセラミックシャフト16及び/又は凹部32との間に隙間を設けることで、高温での装置稼働時に熱膨張係数が異なる部材が横方向に膨張して接触するのを回避して、そのような横方向の圧縮応力を生じなくすることができる。また、膨張係数が異なる部材が横方向に接触したとしても、バッファ空間としての隙間で応力が吸収ないし緩和されるため、横方向の圧縮応力を低減することができる。
【0032】
加えて、図8に示されるようにセラミックプレート12と固定プレート22との間に隙間を設ける場合には、この隙間を断熱空間として機能させることができ、多端子一体構造体20による断熱性を向上できる。また、断熱性の向上により、膨張係数が異なる部材の伸縮量を調整することが可能であり、横方向の応力を低減することができる。すなわち、固定プレート22の熱膨張率がセラミックプレート12の熱膨張率よりも大きい場合であっても、断熱性の向上効果により固定プレート22の温度を低くすることができ、それによって両部材の熱膨張率差による応力を低減することができる。さらに、この隙間を縦方向の応力を緩和するためのバッファ空間として機能させることもできる。すなわち、固定プレート22とセラミックプレート12との間に隙間を設けることで、高温での装置稼働時に熱膨張係数が異なる部材が縦方向に膨張して接触するのを回避して、そのような縦方向の圧縮応力を生じなくすることができる。また、膨張係数が異なる部材が縦方向に接触したとしても、バッファ空間としての隙間で応力が吸収ないし緩和されるため、縦方向の圧縮応力を低減することができる。
【0033】
図9及び10は、固定プレート22の上面及び側端面がセラミックシャフト16又はセラミックプレート12に接合されている態様を示している。図9に示される態様は、固定プレート22の上面及び側端面がそれぞれセラミックプレート12の第二面12bとセラミックシャフト16の内壁に接着剤30等の接合手段で接合されている。図10に示される態様は、固定プレート22の上面及び側端面がセラミックプレート12の凹部32に接着剤30で接合されている。固定プレート22の上面及び側端面は、それらの全てがセラミックプレート12やセラミックシャフト16に接合されている必要はなく、部分的に接合されていない箇所が存在していてもよい。図9及び10に示される態様においては、より広い面積で接合できるため接着強度を向上できる。また、それに伴い端子ロッド24の更なる細径化が可能になる。
【0034】
上述したように、セラミックプレート12の第二面12bと固定プレート22との間には隙間が存在していてもよい(図8参照)。また、固定プレート22の側端面とセラミックシャフト16の内壁との間に隙間が存在してもよいし(図4、5、7及び10参照)、固定プレート22の側端面とセラミックシャフト16の内壁との間に隙間が存在しないものであってもよい(図6、8及び9参照)。各態様における利点は上述したとおりである。
【0035】
固定プレート22ないし多端子一体構造体20は、セラミックシャフト16の内部空間Sに収容可能な形状であれば特に限定されないが、固定プレート22ないし多端子一体構造体20は、図11に示されるような円板状、又は図12に示されるような円環状であるのが好ましい。これらの形状であれば、円筒状のセラミックシャフト16に適合した形状であり、セラミックシャフト16の内部空間Sを効率良く活用して多くの端子ロッド24を固定することができる。
【0036】
本発明の別の好ましい態様において、固定プレート22は、図13~18に示されるように、円板状の固定プレート22を分割した形状の複数の固定プレート片22aのセットで構成され、それにより多端子一体構造体20が複数の多端子一体構造パーツ20aのセットで構成されていてもよい。この態様によれば、多端子一体構造体20の端子接合作業を分割された多端子一体構造パーツ20aごとに細分化して行うことができるため、端子接合作業を簡略化することができる。この場合、固定プレート22ないし多端子一体構造体20は、図13に示されるように直線状に2等分されていてもよいし、図14に示されるように(2等分に限らず)任意の位置で直線状に分割されていてもよい。また、図15に示されるように任意の位置で直線状に3つ又はそれ以上に分割されてもよい。あるいは、固定プレート22ないし多端子一体構造体20は、図16に示されるように放射状に4等分されてもよいし、図17及び18に示されるように任意の割合で放射状に分割されてもよい。固定プレート22を構成する固定プレート片22aの個数(すなわち多端子一体構造体20を構成する多端子一体構造パーツ20aの個数)は特に限定されないが、2~8が好ましく、より好ましくは2~4である。
【0037】
複数の端子ロッド24は、固定プレート22を厚み方向に貫通するように固定プレート22に固定一体化されている。複数の端子ロッド24の一方の端部が複数の接続部18にそれぞれロウ接合されている一方、複数の端子ロッド24の他方の端部には後述するケーブル26が直接又は間接的に接続され、これらのケーブル26(又は金属線34及びケーブル26)を経てヒータ電源(図示せず)に接続可能となっている。かかる構成により、ヒータ電極14への給電経路が確保される。端子ロッド24は、導電部材であれば特に限定されず、モリブデン、ニッケル等の金属で構成されうるが、熱膨張率の観点からモリブデンで構成されるのが好ましい。端子ロッド24の径は特に限定されないが、好ましくは、0.5~5mm、より好ましくは1~3mmである。これらの範囲であると、端子ロッド24の数を増やしながらも、端子ロッド24と接続部18の接合強度を十分に確保できる。端子ロッド24の本数も特に限定されないが、マルチゾーンヒータとして用いる観点から、好ましくは16~300本、より好ましくは20~100本である。
【0038】
ヒータ電極14に応じた異なる電流量を許容するように、ヒータ電極14の一つに接続する端子ロッド24の径が、ヒータ電極14の他の一つに接続する端子ロッド24の径と異なるようにしてもよい。また、ヒータ電極14に応じた異なる電流量を許容するように、ヒータ電極14の一つに接続する端子ロッド24の数が、ヒータ電極14の他の一つに接続する端子ロッド24の数と異なるようにしてもよい。本発明のセラミックヒータ10は複数の加熱ゾーンZ1~Z10を備えたものであるため、加熱ゾーンに応じてヒータ電極14に供給すべき電流量を変えることで、マルチゾーンヒータとしての望ましいヒータ機能を提供することができる。例えば、加熱ゾーンZ1~Z10に対応するヒータ電極14がメインヒータ電極とサブヒータ電極とを含み、メインヒータ電極にサブヒータ電極よりも多くの電流を供給する構成としてもよい。
【0039】
複数本のケーブル26は、上述のとおり、複数の端子ロッド24の他方の端部に直接又は(後述する金属線34等の他の部材を介して)間接的に接続される。ケーブル26の各々は耐熱絶縁材料で被覆されている。このため、端子配線同士が確実に絶縁されるため、セラミックヒータ10の組み立て(特に多端子一体構造体20の接続部18への接続)が容易となる。また、耐熱絶縁材料で被覆されたケーブル26は、高温(例えば600℃以上)に加熱されるセラミックプレート12の近傍に配置されるのに耐えうる耐熱性(例えば500℃の高温に耐えうる性能)を有する。ケーブル26の被覆に用いられる耐熱絶縁材料の例としては、シリカガラス、雲母、高耐熱樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE))が挙げられる。ケーブル26の被覆部分以外のコア部は金属線であるのが好ましい。金属線は、導電部材であれば特に限定されず、ケーブル材料として一般的に使用される金属であればよい。ケーブル26は、金属線に耐熱絶縁材料で構成される絶縁管を被せたものであってもよい。
【0040】
ところで、本発明のセラミックヒータ10は、多端子一体構造体20を備えることで、セラミックシャフト16内における放熱性及び断熱性を望ましく制御することができる。すなわち、ヒータ電極14による加熱機能を十分に発揮させる観点から固定プレート22及びそれから接続部18に向かって延出した端子ロッド24は冷やさないことが望まれるのに対し、固定プレート22よりも下に配置されるケーブル26は装置部品保護の観点から冷やすことが望まれる。このように多端子一体構造体20は、セラミックシャフト16内における放熱性及び断熱性を望ましく制御できるように構成されるのが好ましい。図19~21にはそのような放熱及び断熱に適した好ましい各種態様が示される。
【0041】
本発明の好ましい一態様によれば、図19(及び図2)に示されるように、ケーブル26が湾曲して設けられる。セラミックシャフト16内でケーブル26を湾曲させることで、ケーブル26の長さをセラミックシャフト16の長さよりも長くすることができる。その結果、セラミックシャフト16内のケーブル26の表面積が増えて、セラミックシャフト16内への放熱を促進することができる。こうして、セラミックシャフト16の下端ないし下方に位置する装置部品40への熱伝導を抑制し、装置部品40の熱劣化による破損リスクを低減することができる。
【0042】
本発明の別の好ましい態様によれば、図20に示されるように、多端子一体構造体20が、端子ロッド24とケーブル26との間に介在される、耐熱絶縁材料で被覆されていない剥き出しの金属線34をさらに備える。そして、剥き出しの金属線34が、金属線34よりも熱伝導性が低い絶縁保護材36で取り囲まれている。このように、セラミックシャフト16の内部空間S内で、剥き出しの金属線34と絶縁保護材36を設けることで、剥き出しの金属線34からセラミックシャフト16の内部空間Sへの放熱を促進することができる。すなわち、熱伝導性が高い金属線34が剥き出しになっていることで放熱性が促進される一方、金属線34が絶縁保護材36を取り囲まれることで金属線34同士の絶縁が確保される。この態様によれば、セラミックシャフト16の下端ないし下方に位置する装置部品への熱伝導を抑制し、装置部品40の熱劣化による破損リスクを低減することができる。放熱性促進の観点から、金属線34の熱伝導性は、絶縁保護材36の熱伝導性よりも高いことが好ましい。金属線34は、導電部材であれば特に限定されないが、ケーブル材料として一般的に使用される金属であればよい。絶縁保護材36は、金属線34同士を絶縁可能な材料であれば特に限定されないが、好ましい例としては、窒化アルミニウム又はアルミナが挙げられる。絶縁保護材36は、金属線34の放熱性促進の観点から、金属線34の周囲に放熱のための空間を与えるように管状に構成されるのが好ましい。
【0043】
本発明の更に別の好ましい態様によれば、図21に示されるように、セラミックプレート12と固定プレート22との間及び/又は固定プレート22のセラミックプレート12と反対側に断熱部材38をさらに設けてもよい。すなわち、図21において、断熱部材38がセラミックプレート12と固定プレート22との間に設けられているが、断熱部材38は、同図に点線で描かれるように固定プレート22のセラミックプレート12と反対側に設けられてもよく、その場合、固定プレート22から下方に延出した端子ロッド24の下端又はその近傍に(例えば端子ロッド24の下端が隠れるように)断熱部材38が設けられるのが好ましい。あるいは、固定プレート22の両側に断熱部材38がそれぞれ設けられてもよい。断熱部材38を固定プレート22の上側、下側又は両側に設けることで、固定プレート22から下方への熱伝導を抑制することができる。この態様によれば、ケーブル26への熱伝導を抑制することで、セラミックシャフト16の下端ないし下方に位置する装置部品40への熱伝導を抑制し、装置部品40の熱劣化による破損リスクを低減することができる。なお、断熱部材38は端子ロッド24と前もって結合しておいてもよく、その場合、断熱部材38及び端子ロッド24を伴った組み立てがしやすくなる。断熱部材38は、耐熱性、断熱性及び絶縁性を有する板状部材であれば特に限定されないが、好ましい例としては、ジルコニア又はアルミナが挙げられる。
【0044】
図19~21に示されるように、ケーブル26はセラミックシャフト16の下端を超えて延在しているのが好ましい。こうすることで、固定プレート22の下方に存在するケーブル26による放熱効果を更に高めることができ、装置部品40の熱劣化による破損リスクをより効果的に低減することができる。
【0045】
このように、図19~21に示されるような態様によれば、固定プレート22及びそれから接続部18に向かって延出した端子ロッド24を冷やさないようにしながら、固定プレート22よりも下に配置されるケーブル26を冷やすことができる。もっとも、更なる高温にも対応可能とするため、多端子一体構造体20ないし固定プレート22を冷やすための冷却手段をセラミックシャフト16内に設けてもよい。
【要約】
複数の端子配線をそれらの間の絶縁を容易に確保しながら複数の接続部に同時接合することにより効率良く製造可能な、複数の加熱ゾーンを有する信頼性の高いセラミックヒータが提供される。このセラミックヒータは、複数のヒータ電極が埋設されたセラミックプレートと、内部空間を備えた円筒状のセラミックシャフトと、セラミックプレートの内部空間に面する領域に形成される、複数のヒータ電極の各々に接続可能に構成される複数の接続部と、内部空間に配置され、複数の接続部に接続される多端子一体構造体とを備え、多端子一体構造体が、セラミックプレートからの離間距離が0~50mmである固定プレートと、固定プレートを厚み方向に貫通するように固定プレートに固定一体化され、一方の端部が複数の接続部にそれぞれロウ接合された複数の端子ロッドと、複数の端子ロッドの他方の端部に接続される、各々が耐熱絶縁材料で被覆された複数本のケーブルとを含む。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23