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特許7598484カルボキシ置換グルココルチコイド受容体アゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】カルボキシ置換グルココルチコイド受容体アゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07J 71/00 20060101AFI20241204BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241204BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C07J71/00 CSP
A61K31/58
A61P13/12
A61P17/04
A61P19/02
A61P29/00 101
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023557108
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022021284
(87)【国際公開番号】W WO2022204099
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】63/164,592
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】スティテス,ライアン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ブルスト,ジャクリーン メアリー
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/089373(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/210471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化1】

[式中、
は、H、ハロゲン、C1~C3アルキル、又はC1~C3アルコキシであり、
は、H又はハロゲンであり、
Xは、O、OCH、又はCHである]。
【請求項2】
が、Fである、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
が、CHである、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
が、OCHである、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
が、Hである、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
が、Hである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
が、Fである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
Xが、CHである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
Xが、Oである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
Xが、OCHである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記化合物が、以下の式で表される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
【請求項12】
前記化合物が、以下の式で表される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項13】
前記化合物が、以下の式で表される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化4】
【請求項14】
前記化合物が、以下の式で表される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化5】
【請求項15】
前記化合物が、以下の式で表される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化6】
【請求項16】
以下の式で表される、請求項15に記載の化合物。
【化7】
【請求項17】
前記化合物が、以下の式で表される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化8】
【請求項18】
以下の式で表される、請求項17に記載の化合物。
【化9】
【請求項19】
以下からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化10】

【化11】

【化12】
【請求項20】
トピー性皮膚炎を治療するための医薬組成物であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物
【請求項21】
節リウマチを治療するための医薬組成物であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物
【請求項22】
ープス腎炎を治療するための医薬組成物であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物
【請求項23】
療法に使用するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
アトピー性皮膚炎の治療に使用するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
ループス腎炎の治療に使用するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項26】
関節リウマチの治療に使用するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項27】
アトピー性皮膚炎を治療するための医薬の製造のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項28】
ループス腎炎を治療するための医薬の製造のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項29】
関節リウマチを治療するための医薬の製造のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項30】
請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項31】
医薬組成物を調製するためのプロセスであって、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の説明】
【0001】
本開示は、グルココルチコイド受容体アゴニストであり、かつアトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、及び関節リウマチなどの自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療に有用である化合物、それらの化合物を調製するためのプロセス、それらの化合物を含む医薬組成物、並びにそれらの化合物及び組成物を使用する方法が提供される。
【0002】
アトピー性皮膚炎は、小児に頻繁に発生するが、多くの成人にも影響を及ぼす、慢性掻痒性の再発寛解型炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎の現在の治療には、光療法、コルチコステロイド若しくはカルシニューリン阻害剤を含有する局所クリーム、又はデュピルマブとして知られている皮下注射用生物製剤が含まれる。アトピー性皮膚炎の治療において成し遂げられた進歩にもかかわらず、アトピー性皮膚炎並びに他の炎症性疾患及び自己免疫疾患を治療するための新たな化合物に対する著しい必要性が依然として存在する。
【0003】
国際公開第2017/210471号は、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療に有用なある特定のグルココルチコイド受容体アゴニスト及びその免疫複合体を開示している。国際公開第2018/089373号は、新規ステロイド、そのタンパク質コンジュゲート、並びにそれらのステロイド及びコンジュゲートを投与することを含む、疾患、障害、及び状態を治療するための方法を開示している。
【0004】
本発明は、グルココルチコイド受容体アゴニストである、ある特定の新規化合物を提供する。更に、本発明は、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎などの自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療に有用な、グルココルチコイド受容体アゴニストである、ある特定の新規化合物を提供する。
【0005】
したがって、一実施形態では、本発明は、式Iの化合物であって、
【0006】
【化1】

式中、Rが、H、ハロゲン、C1~C3アルキル、又はC1~C3アルコキシであり、
が、H又はハロゲンであり、
Xが、O、OCH、又はCHである、化合物、
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0007】
一実施形態では、本発明は、式Iaの化合物、
【0008】
【化2】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、式Ibの化合物、
【0010】
【化3】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、式Icの化合物、
【0012】
【化4】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0013】
更なる実施形態では、本発明は、式Ib(i)の化合物、
【0014】
【化5】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
更なる実施形態では、本発明は、式Ic(i)の化合物、
【0016】
【化6】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0017】
更なる実施形態では、本発明は、式Ib(ii)の化合物、
【0018】
【化7】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
更なる実施形態では、本発明は、式Ic(ii)の化合物、
【0020】
【化8】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0021】
更なる実施形態では、本発明は、式Ib(iii)の化合物、
【0022】
【化9】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0023】
更なる実施形態では、本発明は、式Ic(iii)の化合物、
【0024】
【化10】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0025】
更なる実施形態では、本発明は、式Ib(iv)の化合物、
【0026】
【化11】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0027】
更なる実施形態では、本発明は、式Ic(iv)の化合物、
【0028】
【化12】
【0029】
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0030】
一実施形態では、Xは、Oである。
【0031】
一実施形態では、Xは、OCHである。
【0032】
一実施形態では、Xは、CHである。
【0033】
一実施形態では、Rは、Fである。
【0034】
一実施形態では、Rは、Hである。
【0035】
一実施形態では、Rは、CHである。
【0036】
一実施形態では、Rは、OCHである。
【0037】
一実施形態では、Rは、Hである。
【0038】
一実施形態では、Rは、Fである。
【0039】
一実施形態では、Rは、存在しない。
【0040】
一実施形態では、Xは、CHであり、Rは、Fであり、Rは、Hである。
【0041】
一実施形態では、Xは、Oであり、R及びRは、各々Hである。
【0042】
一実施形態では、Xは、OCHであり、Rは、CHであり、Rは、Fである。
【0043】
一実施形態では、Xは、OCHであり、Rは、OCHであり、Rは、Fである。
【0044】
一実施形態では、本発明は、式IIの化合物、
【0045】
【化13】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、式IIaの化合物、
【0047】
【化14】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0048】
特定の実施形態では、本発明は、式IIbの化合物、
【0049】
【化15】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0050】
特定の実施形態では、本発明は、式IIcの化合物、
【0051】
【化16】

又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0052】
一実施形態では、本発明は、炎症性疾患の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。一実施形態では、本発明は、自己免疫疾患の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。一実施形態では、本発明は、アトピー性皮膚炎の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を更に提供する。一実施形態では、本発明は、関節リウマチの治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を更に提供する。一実施形態では、本発明は、全身性エリテマトーデスの治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。一実施形態では、本発明は、ループス腎炎の治療を必要とする患者においてそれを治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。
【0053】
一実施形態では、本発明は、療法に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を更に提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性疾患の治療に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、自己免疫疾患の治療に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、アトピー性皮膚炎の治療に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、関節リウマチの治療に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患の治療に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、ループス腎炎の治療に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、全身性エリテマトーデスの治療に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0054】
一実施形態では、本発明は、炎症性疾患を治療するための医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用も提供する。一実施形態では、本発明は、自己免疫疾患を治療するための医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用も提供する。一実施形態では、本発明は、アトピー性皮膚炎を治療するための医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、関節リウマチを治療するための医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患を治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を更に提供する。一実施形態では、本発明は、ループス腎炎を治療するための医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を更に提供する。一実施形態では、本発明は、全身性エリテマトーデスを治療するための医薬の製造のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0055】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、医薬組成物を更に提供する。一実施形態では、本発明は、医薬組成物を調製するためのプロセスであって、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、プロセスを更に提供する。一実施形態では、本発明は、式Iの化合物の合成のための新規中間体及びプロセスも包含する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療」、又は「治療する」という用語は、既存の症状又は障害の進行又は重症度を抑制すること、遅延させること、阻止すること、又は改善することを含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳動物、特にヒトを指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者に単回又は複数回投与すると、診断中又は治療中の患者に所望の効果を提供する、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩の量又は投与量を指す。
【0059】
有効量は、既知の技法を使用することにより、かつ同様の状況下で得られた結果を観察することにより、当業者によって決定され得る。患者に対する有効量を決定する際に、多数の要因が担当診断医によって考慮され、これらの要因としては、患者の種、そのサイズ、年齢、及び一般的健康状態、関連する特定の疾患又は障害、疾患又は障害の程度又は関与又は重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与様式、投与される製剤の生物学的利用能特性、選択された投与レジメン、併用薬の使用、並びに他の関連する状況が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用される場合、式Iは、式Ia、Ib、Ic、Ib(i)、Ib(ii)、Ib(iii)、Ib(iv)、Ic(i)、Ic(ii)、Ic(iii)、Ic(iv)、II、IIa、IIb、及びIIcを包含することが理解され、本明細書における式Iへの全ての言及は、式Ia、Ib、Ic、Ib(i)、Ib(ii)、Ib(iii)、Ib(iv)、Ic(i)、Ic(ii)、Ic(iii)、Ic(iv)、II、IIa、IIb、及びIIcを含むと読まれるべきである。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」は、F、Cl、Br、及びIを指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「C1~C3アルキル」は、CH、CHCH、CHCHCH、及びCH(CHを指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「C1~C3アルコキシ」は、OCH、OCHCH、OCHCHCH、及びOCH(CHを指す。
【0064】
更に、本発明の化合物は、当業者によって理解される方法によって、抗体とコンジュゲートして、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を形成することができる。かかるコンジュゲーションの一例には、リンカー化合物を介した本発明の化合物の抗体への連結が挙げられるであろう。当業者に公知のリンカー化合物としては、例えば、切断可能なリンカー及び切断不可能なリンカーが挙げられる。かかるADCは、本発明の化合物を特定の標的組織又は細胞に送達することができる。したがって、式Iの化合物を含むADCも本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、リンカー、例えば、切断可能リンカー又は切断不可能リンカーを介して抗体にコンジュゲートされる。かかるADCは、注射、例えば、静脈内注射又は皮下注射によって投与することができる。
【0065】
本発明の化合物又はコンジュゲートは、局所投与又は皮下投与を含む、化合物又はコンジュゲートを生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤化することができる。ADCを含む、かかる医薬組成物は、当技術分野で公知の技術及び方法を使用して調製することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Adejare,Editor,23nd Edition,published 2020,Elsevier Science、国際公開第2017/062271号、及び同第2017/210471号を参照されたい)。
【0066】
本発明の範囲に含まれるのは、式Iの薬学的に許容される塩である。式Iの化合物などの本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、本発明の化合物の適切な遊離酸と、適切な薬学的に許容される塩基を、ジエチルエーテルなどの好適な溶媒中で、当該技術分野で周知の標準的な条件下で反応させることによって形成することができる。例えば、Berge,S.M.,et al.,”Pharmaceutical Salts,” Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977)を参照されたい。
【0067】
ある特定の略語は、以下のように定義される:「aq」は、水溶液を指し、「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを指し、「EtOAc」は、酢酸エチルを指し、「THF」は、テトラヒドロフランを指し、「DMF」は、N,N-ジメチルホルムアミドを指し、「DCM」は、塩化メチレン又はジクロロメタンを指し、「IPA」は、イソプロピルアルコールを指し、「MeOH」は、メタノール又はメチルアルコールを指し、「ACN」は、アセトニトリルを指し、「C18」は、オクタデシルシランを指し、「DMEA」は、ジメチルエチルアミンを指し、「MTBE」は、メチルtert-ブチルエーテルを指し、「LDA」は、リチウムジイソプロピルアミドを指し、「Pd(dppf)Cl」は、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II]を指し、「g」は、グラムを指し、「rt」は、室温を指し、「h」は、時間を指し、「min」は、分を指し、「mL」は、ミリリットルを指し、「mol」は、モルを指し、「mmol」は、ミリモルを指し、「nm」は、ナノメートルを指し、「SFC」は、超臨界流体クロマトグラフィーを指し、「ES/MS」は、エレクトロスプレー質量分析法を指し、「m/z」は、質量分析についての質量電荷比を指し、「NMR」は、核磁気共鳴を指し、「ROE」は、回転フレームオーバーハウザー増強を指す。
【0068】
本発明の化合物又はその塩は、当業者に公知の様々な手順によって容易に調製され得、そのうちのいくつかが、以下の調製物及び実施例で説明されている。当業者であれば、本発明の化合物、又はその塩を調製するために、記載される経路の各々に対する特定の合成ステップを、異なる様式で組み合わせるか、又は異なるスキームからのステップと併せることができることを認識している。各ステップの生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、磨砕、及び結晶化を含む、当該技術分野で周知の従来の方法によって回収することができる。全ての置換基は、別途指示のない限り、すでに定義されたとおりである。試薬及び出発物質は、当業者に容易に入手可能なものである。以下の調製物、実施例、及びアッセイは、本発明を更に説明するものであるが、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0069】
【化17】
【0070】
スキーム1において、構造1の化合物を、当業者に周知の条件下で、Rが水素又は好適なアルキル基、例えば、tert-ブチル又はメチルなどである構造2のアルデヒドと反応させて、式Iの化合物を得る。
【0071】
より具体的には、以下のスキーム1Aに示すように、構造1aの化合物を、当業者に周知の条件下で、Rが水素又は好適なアルキル基、例えば、tert-ブチル又はメチルなどである、構造2のアルデヒドと反応させて、式Ib及び式Icの化合物を得る。
【0072】
【化18】
【0073】
例えば、約1.1当量の構造1aの化合物及び約1当量の構造2の化合物であって、式中、Rが、水素又はtert-ブチル基などの好適なアルキル基である、化合物を、アセトニトリルなどの好適な有機溶媒中に懸濁させる。懸濁液を約-10℃に冷却し、次いで、約5当量の好適な酸、例えば、過塩素酸(水中70%)で処理する。次いで、反応混合物を室温に温め、約1時間撹拌する。アセトニトリル及びジメチルホルムアミドなどの追加の有機溶媒を添加してもよく、混合物を更に約2時間撹拌する。次いで、反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液などで、標準的な条件を使用してクエンチし、塩化メチレン:イソプロパノール(9:1)などの好適な有機溶媒による抽出などの当技術分野で周知の標準的な技法を使用して生成物を単離し、有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、粗生成物混合物を得る。この粗混合物を精製し、式Ib及び式Icの生成物を、クロマトグラフィー、例えば、2:1の10mMの重炭酸アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルなどの好適な溶離液を用いる逆相クロマトグラフィーなどの当技術分野で周知の技法を使用して分離することができる。
【0074】
【化19】
【0075】
調製物1
tert-ブチル4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]ベンゾエート
【0076】
【化20】
【0077】
20mLの密閉管に、(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)ボロン酸(10g、60mmol)、tert-ブチル4-(ブロモメチル)ベンゾエート(18g、66mmol)、炭酸カリウム(27g、200mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフェン)パラジウム(0)(2.1g、1.8mmol)、及びTHF(100mL):水(40mL)を加えた。反応物を95℃に加熱した。1時間後、反応物を水及びEtOAcで希釈した。相を分離し、水層をEtOAc(2回)で抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、粗残留物になるまで濃縮した。残留物を、9:1のヘキサン:エチルアセテートで溶離する順相精製(シリカゲル)によって精製して、表題化合物(18.7g、収率86%)を得た。ES/MS m/z 257.0(M-tBu-H).
表1の以下の化合物を、調製物1の手順と本質的に類似する様式で調製した。
【0078】
【表1】
【0079】
調製物3
4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]安息香酸
【0080】
【化21】

tert-ブチル4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]ベンゾエート(16g、51mmol、調製物1)をDCM(300mL)に溶解し、0℃に冷却した。トリフルオロ酢酸(150mL)を滴加し、反応物を室温に温めた。1時間後、反応液を真空下で濃縮し、オフホワイト固体をジエチルエーテル/ヘキサンで磨砕した。得られた固体を濾過により回収し、真空オーブンで乾燥させて、表題化合物(13.1g、収率96%)を得た。ES/MS m/z 257.0(M-H).
【0081】
【化22】
【0082】
調製物4
4-(4-ホルミルフェノキシ)安息香酸
【0083】
【化23】
【0084】
マイクロ波バイアルに、4-フルオロベンズアルデヒド(0.63g、5.0mmol)、メチル4-ヒドロキシベンゾエート(0.81g、5.3mmol)、DMF(15mL)、及び炭酸カリウム(0.83g、6.0mmol)を加えた。反応物を150℃で、1時間マイクロウェーブで加熱し、室温に冷却した。溶液をEtOAcと水に分配した。有機層を単離し、飽和塩化ナトリウム水溶液(2回)、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、無色油を得た。粗油にヘキサン(50mL)を加えて、白色半固体を得た。次いで、それを超音波処理し、0℃に冷却し、吸引濾過して、白色固体を単離した。白色固体をヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0085】
白色固体をメタノール(8mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(5M、2mL)を加えた。溶液を50℃に2時間加熱した。反応物を室温に冷却し、水(10mL)で希釈し、5N HCl水溶液でpH4に酸性化した。白色固体を吸引濾過によって回収し、水で洗浄し、真空下で更に乾燥させて、表題化合物(790mg、収率84%)を得た。MS m/z 241.0(M-H).
表2の以下の化合物を、調製物4に記載の手順と本質的に類似する様式で調製した。
【0086】
【表2】
【0087】
調製物6
6-ブロモ-2-フルオロ-3-メトキシ-ベンズアルデヒド
【0088】
【化24】
【0089】
2つの反応を並行して実施した。THF(1500mL)中の4-ブロモ-2-フルオロ-1-メトキシベンゼン(250g、1.2mol)の溶液に、LDA(2M、730mL)を-78℃で30分かけてゆっくり加えた。更に30分後、DMF(140mL、1.8mol)を-78℃で30分かけてゆっくり加えた。1時間後、2つの反応物を合わせ、混合物をクエン酸水溶液(2000mL)で希釈し、EtOAc(1500mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(1000mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、残留物を得た。残留物を室温で12時間かけて石油エーテル(1000mL)で磨砕して、標題化合物(382g、収率67%)を得た。ES/MS m/z 233.9(M+H).
【0090】
調製物7
2-フルオロ-3-メトキシ-6-メチル-ベンズアルデヒド
【0091】
【化25】
【0092】
3つの反応を並行して実施した。6-ブロモ-2-フルオロ-3-メトキシ-ベンズアルデヒド(120g、5.3 mol、調製物6を参照されたい)、メチルボロン酸(47g、7.9mol)、Pd(dppf)Cl(12g、0.02mol)、及びCsCO(340g、1.1mol)をジオキサン(600mL)及び水(120mL)中に加えた。混合物を120℃で一晩撹拌した。12時間後、3つの反応物を合わせ、混合物を飽和NHCl水溶液(1000mL)で希釈し、MTBE(1500mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(1000mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、残留物を得た。残留物を、40:1の石油エーテル:EtOAcで溶離する順相クロマトグラフィーによって精製して、標題化合物(180g、収率59%)を得た。ES/MS m/z 169.3(M+H).
【0093】
調製物8
2-フルオロ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ベンズアルデヒド
【0094】
【化26】
【0095】
2-フルオロ-3-メトキシ-6-メチル-ベンズアルデヒド(175g、1.0mol、調製物7を参照されたい)をDCM(1050mL)に加え、BBr(200mL、2.1mol)をこの溶液に0℃でゆっくり加えた。反応物を室温で撹拌した。1時間後、混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1000mL)でpH=7~8になるまで希釈し、次いで、MTBE(1500mL×2)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(1000mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、標題化合物(110g、収率68%)を得た。ES/MS m/z 154.9(M+H).
【0096】
【化27】
【0097】
式中、Gは、メチル又はメトキシである。
【0098】
式中、Jは、メチル又はtert-ブチルである。
【0099】
調製物9
tert-ブチル3-((2-フルオロ-3-ホルミル-4-メチルフェノキシ)メチル)ベンゾエート
【0100】
【化28】
【0101】
DMF(6mL)中の2-フルオロ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ベンズアルデヒド(300mg、1.9mmol、調製物8を参照されたい)、tert-ブチル3-(ブロモメチル)ベンゾエート(500mg、1.8mmol)、及び炭酸セシウム(1.2g、3.7mmol)の混合物を室温で一晩撹拌した。混合物をEtOAc及び水で希釈した。有機溶液を水で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、粗残留物を得た。残留物を、9:1のヘキサン:エチルアセテートで溶離する順相精製によって精製して、表題化合物(250mg、収率40%)を得た。MS m/z 362.0(M+NH ).
表3の以下の化合物を調製物9に記載の手順と本質的に類似する様式で調製した。
【0102】
【表3】
【0103】
調製物13
tert-ブチル2-フルオロ-4メトキシフェノキシジフェニルシラン
【0104】
【化29】
【0105】
DMF(350mL、0.5M)中の2-フルオロ-4-メトキシフェノール(25g、180mmol)の溶液に、イミダゾール(18g、260mmol)及びtert-ブチルクロロジフェニルシラン(55mL、200mmol)を加えた。反応物を18時間室温で撹拌した。合わせた有機層を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、粗残留物になるまで濃縮した。残留物を、5:1のヘキサン:エチルアセテートで溶離する順相精製によって精製して、表題化合物(67g、収率93%)を得た。H NMR(399.8 MHz,d-DMSO)δ 7.67-7.65(m,4H),7.51-7.44(m,6H),6.82(dd,J=2.9,12.7 Hz,1H),6.59(t,J=9.4 Hz,1H),6.47(ddd,J=9.0,3.0,1.4 Hz,1H),3.64(s,3H),1.06(s,9H).
【0106】
調製物14
2-フルオロ-3-ヒドロキシ-6-メトキシベンズアルデヒド
【0107】
【化30】
【0108】
tert-ブチル2-フロオロ-4-メトキシフェノキシジフェニルシラン(56g、150mmol、調製物13を参照されたい)を50mLのトルエンに溶解し、真空下で18時間濃縮した。乾燥した固体をTHF(500mL)に溶解し、-80℃に冷却した。n-ブチルリチウム(100mL、170mmol)を、大口径カニューレを用いて、冷却した溶液に迅速に加えた。1.5時間後、DMF(25mL、320mmol)を溶液に加え、氷浴を除去した。30分後、5N HCl水溶液(35mL)を反応物に加え、次にフッ化テトラブチルアンモニウム(THF中1M、185mL、185mmol)を加えた。2.5時間後、有機層を蒸発させ、5N HCl水溶液で酸性化し、酢酸エチルと水(500mL)に分配した。
【0109】
合わせた有機抽出物を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、粗残留物になるまで濃縮した。残留物を、1:1のヘキサン:エチルアセテートで溶離する順相精製によって精製して、表題化合物(22g、収率88%)を得た。MS m/z 170.8(M+H).
【0110】
【化31】
【0111】
式中、Gは、メチル又はメトキシである。
【0112】
調製物15
2-((2-フルオロ-3-ホルミル-4-メトキシフェノキシ)メチル)安息香酸
【0113】
【化32】
【0114】
MeOH(2mL、49mmol)及びTHF(2mL)中のメチル2-((2-フルオロ-3-ホルミル-4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゾエート(230mg、0.73mmol)の溶液に、LiOH(1.6mL、1.6mmol、水中1M)を加えた。混合物を一晩撹拌した。溶媒を蒸発させた。残留物を水で希釈し、HCl(0.32mL、1.6mmol、水中5M)でpHを6に調整した。固体を真空濾過によって回収し、水で洗浄した。固体をフィルター上に放置して、吸引下で5時間乾燥させて、表題化合物(210mg、収率94%)を得た。MS m/z 305.0(M+H).
以下の化合物を、調製物15に記載の手順と本質的に類似する様式で調製した。
【0115】
【表4】
【0116】
実施例1
4-(3-フルオロ-4-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)ベンジル)安息香酸(異性体1)
【0117】
【化33】
【0118】
過塩素酸(水中70%、1.7mL、5当量)を、アセトニトリル(20mL)中の(8S,9S,10R,11S,13S,14S,16R,17S)-11,16,17-トリヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13-ジメチル-7,8,9,11,12,14,15,16-オクタヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン(1.5g、4.1mmol、「16アルファ-ヒドロキシプレドニゾロン」とも呼ばれる)及び4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]安息香酸(1.00g、3.87mmol、調製物3)の懸濁液に-10℃で加え、室温に温めた。1時間後、追加のアセトニトリル(40mL)及びDMF(2mL)を室温で懸濁液に加えた。2時間後、反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、9:1の塩化メチレン:イソプロパノールで抽出した。有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残留物を得た。残留物を、2:1の10mMの重炭酸アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶離する逆相クロマトグラフィーによって精製して、標題化合物、異性体1、ピーク1(1.48g、収率62%)を得た。ES/MS m/z 617.5(M+H).H NMR(400.13 MHz,d-DMSO)δ 7.83(d,J=8.2 Hz,2H),7.50(t,J=7.8 Hz,1H),7.32-7.27(m,3H),7.14-7.11(m,2H),6.16(dd,J=1.8,10.1 Hz,1H),5.93(s,1H),5.60(s,1H),4.94(d,J=4.9 Hz,1H),4.89-4.72(m,1H),4.48(d,J=19.5 Hz,1H),4.30-4.24(m,1H),4.21-4.16(m,1H),4.00(s,2H),2.38-2.36(m,1H),2.08(s,3H),1.82-1.67(m,5H),1.39(s,3H),1.07-0.96(m,2H),0.86(s,3H).
【0119】
実施例2
4-(3-フルオロ-4-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10S,11aR,12aS,12bS)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)ベンジル)安息香酸(異性体2)
【0120】
【化34】
【0121】
実施例1から、残留物を、2:1の10mMの重炭酸アンモニウム水+5%メタノールで溶離する逆相クロマトグラフィーによって精製して、標題化合物、異性体2、ピーク2(122mg、収率5%)を得た。ES/MS m/z 617.4(M+H).H NMR(400.13 MHz,d-DMSO)δ 7.84(d,J=8.2 Hz,2H),7.33-7.29(m,3H),7.21(t,J=7.8 Hz,1H),7.11-7.05(m,2H),6.27(s,1H),6.19-6.16(m,1H),5.94(s,1H),5.30(d,J=6.4 Hz,1H),4.83-4.79(m,1H),4.31(s,1H),4.19(d,J=19.1 Hz,1H),4.03-3.98(m,3H),2.37-2.30(m,1H),2.08-2.02(m,3H),1.87-1.77(m,5H),1.39(s,3H),1.26-1.14(m,1H),1.08-1.02(m,1H),0.87(s,3H).
【0122】
実施例3
3-((2-フルオロ-3-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)-4-メチルフェノキシ)メチル)安息香酸
【0123】
【化35】
【0124】
-10℃のACN(7mL)中の(8S,9S,10R,11S,13S,14S,16R,17S)-11,16,17-トリヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13-ジメチル-7,8,9,11,12,14,15,16-オクタヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン(290mg、0.77mmol、「16アルファ-ヒドロキシプレドニゾロン」とも呼ばれる)及びtert-ブチル3-[(2-フルオロ-3-ホルミル-4-メチル-フェノキシ)メチル]ベンゾエート(250mg、0.7375mmol)の懸濁液に、過塩素酸(320uL、3.7mmol、水中70質量%)を滴加した。反応物を-10℃で2時間撹拌した。反応物を、飽和NaHCO水溶液を含有する急速撹拌フラスコに注いだ。混合物を5分間撹拌し、次に10%IPA/DCM(3回)で抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗残留物を得た。残留物を、10mMのNaHCO水+5%MeOH:ACNで溶離する逆相クロマトグラフィーによって精製して、ジアステレオマーの混合物を得た。混合物を、35%EtOH(0.5%DMEAを含む):65%COで溶離するChiralpak AS-Hを使用するキラルSFCクロマトグラフィーに供して、標題化合物(190mg、収率40%)を得た。MS m/z 647.2(M+H).H NMR(399.80 MHz,d-DMSO):δ 7.97(s,1H),7.88(d,J=7.7 Hz,1H),7.58(d,J=7.5 Hz,1H),7.45(t,J=7.7 Hz,1H),7.32(d,J=10.0 Hz,1H),7.17(t,J=8.5 Hz,1H),6.92(d,J=8.4 Hz,1H),6.16(dd,J=1.8,10.1 Hz,1H),5.94(s,1H),5.61(s,1H),5.21(s,2H),4.96(d,J=5.7 Hz,1H),4.81-4.81(m,1H),4.47(d,J=19.4 Hz,1H),4.31(s,1H),4.20(d,J=19.5 Hz,1H),3.47-3.41(m,1H),2.30(s,4H),2.18-2.14(m,2H),1.86-1.75(m,3H),1.64(td,J=13.2,5.8 Hz,1H),1.40(s,3H),1.26-1.16(m,2H),0.90-0.85(m,3H).
【0125】
実施例4
3-((2-フルオロ-3-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10S,11aR,12aS,12bS)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)-4-メチルフェノキシ)メチル)安息香酸
【0126】
【化36】
【0127】
実施例3に記載のキラルSFC精製によって、表題化合物を第2のジアステレオマー(61mg、収率13%)として得た。MS m/z 647.3(M+H).
【0128】
H NMR(399.80 MHz,DMSO):δ 7.97(s,1H),7.87(d,J=7.7 Hz,1H),7.59(d,J=7.7 Hz,1H),7.47(t,J=7.7 Hz,1H),7.34-7.32(m,1H),7.17-7.13(m,1H),6.90(d,J=8.4 Hz,1H),6.34(s,1H),6.18(dd,J=1.9,10.0 Hz,1H),5.95(s,1H),5.31(d,J=6.7 Hz,1H),5.22-5.15(m,2H),4.78(d,J=2.6 Hz,1H),4.32(d,J=18.9 Hz,2H),4.02(d,J=19.0 Hz,1H),3.17(s,1H),2.40-2.39(m,2H),2.22(s,3H),2.11-2.08(m,2H),1.91-1.86(m,2H),1.40(s,3H),1.31-1.19(m,3H),0.88(s,3H).
【0129】
表5に列挙される以下の化合物を、表に示される対応するアルデヒド出発物質を利用して、実施例3及び4に記載される方法と本質的に類似の様式で調製した。最終生成物の精製は、本質的に以下の方法によって行った。
【0130】
A.水中10mMのNHHCO+5%MeOH:ACNの溶離液を使用するC18カラム、
B.水中0.1%FA:ACNの溶離液を使用するC18カラム、
C.MeOH+0.5%DMEA:COで溶離するChiralcel OJ-Hを使用するキラルSFC
【0131】
【表5-1】
表5


【0132】
【表5-2】
【0133】
NMRによる構造帰属
【0134】
【化37】
【0135】
アセタール異性体の二次元スルースペースROE NMR分析は、一貫して、R配置のH22(アセタール)及びH16についてクロスピークを与えた。代替として、S配置のH22は、一貫して約1ppm大きいシフトを与えた。全ての他の化合物は、本質的に同じ方法によって帰属した。
【0136】
hGRコアクチベーター動員アッセイ
グルココルチコイド化合物の活性を、Life TechnologiesからのLanthaScreen TR-Fret GRコアクチベーターアッセイ(A15899)を使用して測定した。化合物を、200nMの最高濃度で3倍の10点連続希釈でアッセイプレートに音響的に移した。10マイクロリットルのGR-LBDの2倍溶液を化合物プレートに加え、10分間インキュベートした。次いで、10マイクロリットルの、フルオレセイン-SRC 1~4及びTb標識抗GST抗体の2倍溶液をプレートに加えた。プレートを暗所で2時間インキュベートし、次いで、340nmの励起並びに520nm(フルオレセイン)及び490nm(テルビウム)の発光で、Envisionプレートリーダーで読み取った。520/490の発光比をGenedataで分析した。活性パーセントを得るために、データをDMSOの陰性対照及び4μMのデキサメタゾンの陽性対照と比較した。
【0137】
本質的に上述される手順に従って、実施例1の化合物は、2.14nMの相対IC50を提供し、実施例2の化合物は、4.50nMの相対IC50を提供し、実施例3~9、11、12、14、及び15の化合物は、各々、200nM未満の相対IC50を提供した。実施例10及び13は、各々、200nMを超える相対IC50を提供した。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 以下の式の化合物、又はその薬学的に許容される塩:
【化38】

[式中、
は、H、ハロゲン、C1~C3アルキル、又はC1~C3アルコキシであり、
は、H又はハロゲンであり、
Xは、O、OCH 、又はCH である]。
[2] R が、Fである、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[3] R が、CH である、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[4] R が、OCH である、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[5] R が、Hである、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[6] R が、Hである、[1]~[5]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[7] R が、Fである、[1]~[5]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[8] Xが、CH である、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[9] Xが、Oである、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[10] Xが、OCH である、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[11] 前記化合物が、以下の式で表される、[1]~[10]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化39】

[12] 前記化合物が、以下の式で表される、[1]~[10]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化40】

[13] 前記化合物が、以下の式で表される、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化41】

[14] 前記化合物が、以下の式で表される、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化42】

[15] 前記化合物が、以下の式で表される、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化43】

[16] 以下の式で表される、[15]に記載の化合物。
【化44】

[17] 前記化合物が、以下の式で表される、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化45】

[18] 以下の式で表される、[17]に記載の化合物。
【化46】

[19] 以下からなる群から選択される、[1]に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【化47】

【化48】

【化49】

[20] 患者におけるアトピー性皮膚炎を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
[21] 患者における関節リウマチを治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
[22] 患者におけるループス腎炎を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
[23] 療法に使用するための、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[24] アトピー性皮膚炎の治療に使用するための、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[25] ループス腎炎の治療に使用するための、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[26] 関節リウマチの治療に使用するための、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[27] アトピー性皮膚炎を治療するための医薬の製造のための、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
[28] ループス腎炎を治療するための医薬の製造のための、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
[29] 関節リウマチを治療するための医薬の製造のための、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
[30] [1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、医薬組成物。
[31] 医薬組成物を調製するためのプロセスであって、[1]~[19]のいずれかに記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、プロセス。