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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】周辺監視装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023563599
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2022041390
(87)【国際公開番号】W WO2023095597
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021189767
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】清水 直継
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏次
(72)【発明者】
【氏名】徳田 将則
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151185(JP,A)
【文献】特開2019-084885(JP,A)
【文献】特開2021-047758(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の物体を検出する検出装置(21,22)を備える車両に適用され、
自車両(40)が走行する道路において前記自車両の後方から接近する接近物体が前記検出装置により検出された場合に、当該接近物体について所定の実施条件の成否に応じて前記接近物体に対する衝突抑制動作を行う周辺監視装置(30)であって、
前記道路において、前記自車両から前記接近物体までの領域に、前記実施条件が不成立となる非対象車両が存在していることを判定する存在判定部と、
前記非対象車両が存在していると判定された場合に、当該非対象車両の後方に存在する前記接近物体について、前記実施条件が成立したときの前記衝突抑制動作の実施制限を行う実施制限部と、
前記接近物体が今後通行する通行領域を予測する通行領域予測部と、
を備え、
前記実施制限部は、
前記非対象車両と前記通行領域とが重なることを条件に、前記実施制限を行い、
前記接近物体が、前記自車両が走行する自車線の隣である隣車線において前記自車両の後方から接近する物体であり、前記非対象車両と前記通行領域とが重ならない場合に、前記通行領域が前記隣車線の前記自車両寄り及び反自車両寄りのいずれであるかに応じて前記実施制限を抑制する、周辺監視装置。
【請求項2】
前記実施制限部は、前記非対象車両と前記通行領域とが重ならない場合に、前記通行領域が前記隣車線の反自車両寄りであれば前記実施制限を行う、請求項1に記載の周辺監視装置。
【請求項3】
前記実施制限部は、前記非対象車両と前記通行領域とが重ならず、かつ、前記通行領域が前記隣車線の反自車両寄りである場合に、前記接近物体について前記実施条件が成立する領域のうち、前記自車両よりも後方に位置する前記非対象車両のうち先頭車両までの領域を、前記衝突抑制動作の実施の領域とする、請求項に記載の周辺監視装置。
【請求項4】
前記実施制限部は、前記接近物体が、前記自車両が走行する自車線において前記自車両の後方から接近する物体であり、前記非対象車両と前記通行領域とが重なる場合に、前記実施制限を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の周辺監視装置。
【請求項5】
車両周辺の物体を検出する検出装置(21,22)を備える車両に適用され、
自車両(40)が走行する道路において前記自車両の後方から接近する接近物体が前記検出装置により検出された場合に、当該接近物体について所定の実施条件の成否に応じて前記接近物体に対する衝突抑制動作を行う周辺監視装置(30)であって、
前記道路において、前記自車両から前記接近物体までの領域に、前記実施条件が不成立となる非対象車両が存在していることを判定する存在判定部と、
前記非対象車両が存在していると判定された場合に、当該非対象車両の後方に存在する前記接近物体について、前記実施条件が成立したときの前記衝突抑制動作の実施制限を行う実施制限部と、
前記接近物体が今後通行する通行領域を予測する通行領域予測部と、
を備え、
前記実施制限部は、前記接近物体が、前記自車両が走行する自車線において前記自車両の後方から接近する物体であり、前記非対象車両と前記通行領域とが重なる場合に、前記実施制限を行う、周辺監視装置。
【請求項6】
車両周辺の物体を検出する検出装置(21,22)を備える車両に適用され、
車両(40)が走行する道路において前記自車両の後方から接近する接近物体が前記検出装置により検出された場合に、当該接近物体について所定の実施条件の成否に応じて前記接近物体に対する衝突抑制動作を行う処理を、コンピュータ(30)に実行させるプログラムであって、
前記道路において、前記自車両から前記接近物体までの領域に、前記実施条件が不成立となる非対象車両が存在していることを判定する存在判定ステップと、
前記非対象車両が存在していると判定された場合に、当該非対象車両の後方に存在する前記接近物体について、前記実施条件が成立したと判定したときの前記衝突抑制動作の実施制限を行う実施制限ステップと、
前記接近物体が今後通行する通行領域を予測する通行領域予測ステップと、
を含む処理を前記コンピュータに実行させ、
前記実施制限ステップでは、
前記非対象車両と前記通行領域とが重なることを条件に、前記実施制限を行い、
前記接近物体が、前記自車両が走行する自車線の隣である隣車線において前記自車両の後方から接近する物体であり、前記非対象車両と前記通行領域とが重ならない場合に、前記通行領域が前記隣車線の前記自車両寄り及び反自車両寄りのいずれであるかに応じて前記実施制限を抑制する、プログラム。
【請求項7】
車両周辺の物体を検出する検出装置(21,22)を備える車両に適用され、
車両(40)が走行する道路において前記自車両の後方から接近する接近物体が前記検出装置により検出された場合に、当該接近物体について所定の実施条件の成否に応じて前記接近物体に対する衝突抑制動作を行う処理を、コンピュータ(30)に実行させるプログラムであって、
前記道路において、前記自車両から前記接近物体までの領域に、前記実施条件が不成立となる非対象車両が存在していることを判定する存在判定ステップと、
前記非対象車両が存在していると判定された場合に、当該非対象車両の後方に存在する前記接近物体について、前記実施条件が成立したと判定したときの前記衝突抑制動作の実施制限を行う実施制限ステップと、
前記接近物体が今後通行する通行領域を予測する通行領域予測ステップと、
を含む処理を前記コンピュータに実行させ、
前記実施制限ステップでは、前記接近物体が、前記自車両が走行する自車線において前記自車両の後方から接近する物体であり、前記非対象車両と前記通行領域とが重なる場合に、前記実施制限を行う、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年11月23日に出願された日本出願番号2021-189767号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、周辺監視装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
この種の周辺監視装置として、車両周辺の物体を検出する検出装置を備える車両に適用され、検出装置の検出結果により自車両に接近する接近車両の有無を判定するものが知られている。例えば特許文献1には、自車両が走行する自車線の隣である隣車線において自車両の後方から接近する接近車両が検出装置により検出された場合に、接近車両に対する衝突抑制動作として、所定の実施条件の成否に応じてドライバに対する報知を行う周辺監視装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-85567号公報
【発明の概要】
【0005】
例えば、自車両が交差点で停止しており、かつその自車両が走行する自車線の隣である隣車線に隣接車両が停止している場合において、その隣接車両の後方から他車両(接近車両)が接近してくる状況があると考えられる。この場合、接近車両について、ドライバに対する報知の実施条件が成立することにより、隣接車両と接近車両との位置関係が考慮されないでドライバへの報知が行われてしまうことがある。これにより、ドライバへの不要な報知が実施されてしまい、ドライバに対して煩わしさを感じさせる懸念がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、接近物体に対する衝突抑制動作を適正に実施することができる周辺監視装置及びプログラムを提供することである。
【0007】
本開示は、車両周辺の物体を検出する検出装置を備える車両に適用され、自車両が走行する道路において前記自車両の後方から接近する接近物体が前記検出装置により検出された場合に、当該接近物体について所定の実施条件の成否に応じて前記接近物体に対する衝突抑制動作を行う周辺監視装置であって、前記道路において、前記自車両から前記接近物体までの領域に、前記実施条件が不成立となる非対象車両が存在していることを判定する存在判定部と、前記非対象車両が存在していると判定された場合に、当該非対象車両の後方に存在する前記接近物体について、前記実施条件が成立したときの前記衝突抑制動作の実施制限を行う実施制限部と、を備える。
【0008】
自車両が走行する道路において、自車両から接近物体までの領域に非対象車両が存在している状況では、自車両付近への接近物体の接近が非対象車両により妨げられる。つまり、接近物体の前方に非対象車両が存在する位置関係では、自車両と接近物体とが衝突する可能性は低くなる。
【0009】
そこで、本開示では、非対象車両が存在していると判定された場合に、当該非対象車両の後方に存在する接近物体について、実施条件が成立したと判定したときの衝突抑制動作の実施制限を行うようにした。これにより、自車両が衝突する可能性の低い接近物体について、不要な衝突抑制動作の実施を制限することができる。その結果、接近物体に対する衝突抑制動作を適正に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
図1図1は、第1実施形態に係る周辺監視システムの全体構成図であり、
図2図2は、自車両の周囲の検出領域を示す図であり、
図3図3は、自車線領域と隣車線領域を示す図であり、
図4図4は、自車両と他車両の位置関係を示す図であり、
図5図5は、自車両と他車両の位置関係を示す図であり、
図6図6は、自車両と他車両の位置関係を示す図であり、
図7図7は、ECUが実施する制御の処理手順を示すフローチャートであり、
図8図8は、第2実施形態においてECUが実施する制御の処理手順を示すフローチャートであり、
図9図9は、他の実施形態において自車両と他車両の位置関係を示す図であり、
図10図10は、他の実施形態においてECUが実施する制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る周辺監視装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る周辺監視システム10は、自車両に搭載されており、自車両が走行する自車線の隣である隣車線において自車両に接近する接近物体を監視する。
【0012】
図1に示すように、実施形態に係る周辺監視システム10は、レーダ装置21と、撮像装置22と、車速センサ23と、操舵角センサ24と、ヨーレートセンサ25と、受信装置26と、警報装置27と、ECU30とを備えている。本実施形態では、レーダ装置21が検出装置に相当し、ECU30が周辺監視装置に相当する。
【0013】
レーダ装置21は、例えば、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする公知のミリ波レーダである。レーダ装置21は、例えば、自車両の後端部等に設けられ、所定の検出角に入る領域を物体検出可能な検出範囲とし、検出範囲内の物体の位置を検出する。具体的には、レーダ装置21は、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。レーダ装置21は、探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体との距離を算出する。また、レーダ装置21は、物体に反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、相対速度を算出する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出する。レーダ装置21は、物体との距離、相対速度及び物体の方位といった検知データをECU30へ出力する。
【0014】
図2に示すように、レーダ装置21は、自車両40の後端部に左右1箇所ずつ設置することによって、自車両40の後方及び後側方の物体を検出する。自車両40の後端部左側に設置されたレーダ装置21Lは、検出領域70Lにおいて物体を検出する。自車両40の後端部右側に設置されたレーダ装置21Rは、検出領域70Rにおいて物体を検出する。
【0015】
撮像装置22は、例えばCCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等の単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。撮像装置22は、自車両に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。撮像装置22は、例えば、車両の車幅方向中央の所定高さに取り付けられており、自車両後方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を俯瞰視点から撮像する。撮像装置22は、逐次撮像する撮像画像をECU30へ逐次出力する。
【0016】
車速センサ23は、自車両40の走行速度を検知するセンサであり、例えば、車輪の回転速度を検知可能な車輪速センサが用いられる。車速センサ23は、自車両40の走行速度に応じた走行速度信号をECU30に出力する。
【0017】
操舵角センサ24は、ステアリングホイールの操舵角を検知するセンサであり、例えば、車両のステアリングロッドに取り付けられている。操舵角センサ24は、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化に応じた操舵角信号をECU30に出力する。
【0018】
ヨーレートセンサ25は、自車両40の旋回角速度を検知するセンサであり、自車両40の旋回角速度に応じたヨーレート信号をECU30に出力する。
【0019】
受信装置26は、衛星測位システムからの測位信号の受信装置であり、例えばGPS受信装置である。受信装置26は、自車両40の現在位置に応じた測位信号を受信し、受信した測位信号をECU30に出力する。
【0020】
警報装置27は、ドライバへの報知を行うための装置であり、例えば自車両40の車室内に設置されたスピーカやブザーなどの聴覚的に報知する装置、ディスプレイや警告灯などの視覚的に報知する装置である。例えば、警報装置27は、警報音を発したり、ドアミラーに搭載されたインジケーターを点灯させたり、車両ドアのロック状態を報知したりすることにより、自車両40のドライバに対する報知を実施する。
【0021】
ECU30が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、ECU30がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、ECU30は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図7等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0022】
ECU30は、自車両40が走行する自車線の隣である隣車線において、レーダ装置21の検知データにより自車両40に接近する物体の存在を判定し、その判定結果に基づいて、物体に対する衝突抑制動作として、ドライバに対する報知を行う。本実施形態では、ECU30は、隣車線を走行する物体と自車両40との相対距離及び相対速度に基づいて、自車両40と物体とが衝突するまでの衝突予測時間であるTTC(Time to collision)を算出する。ECU30は、物体のTTCが所定の閾値を下回った場合に、報知の実施条件が成立したとし、警報装置27の作動により報知を実施する。なお、接近物体には、四輪自動車、バイク、自転車等を含む車両及び歩行者が含まれる。ECU30は、接近物体近傍の検知データに基づいて物体の特徴に準じたセグメントを生成し、生成したセグメントにより物体の存在を判定してもよい。
【0023】
本実施形態では、自車両40が走行する道路について、自車両40の走行軌跡に基づいて車線推定を行うこととしており、その車線推定の手法について以下に説明する。ここでは、図3を用いて、自車両40が走行する自車線領域71と、自車線の右隣である隣車線領域72とを推定する手法について説明する。
【0024】
図3において、まず、ECU30は、自車両40の走行時において、走行軌跡上の自車両40の位置を示す点Aiを取得するとともに、その点Ai毎に、自車両40の回転角θiに基づいて、横方向ラインLiを設定する。ECU30は、自車線の車線幅に基づいて、横方向ラインLi上に、自車線及び隣車線のそれぞれの両端となる点Bi,Ci,Diを設定する。各車線の車線幅は、撮像装置22及び受信装置26のいずれかから取得した検知データに基づいて算出したものを用いてもよいし、予め設定された所定値を用いてもよい。
【0025】
ECU30は、i=0~nの範囲で点Ai~Diを算出する。そして、点Bi,Ciを自車線の両端とみなし、点B0~Bn及び点C0~点Cnにより囲われた領域を自車両後方の自車線領域71として推定する。また、点Ci,Diを右隣の隣車線の両端とみなし、点C0~Cn及び点D0~点Dnにより囲われた領域を自車両後方の隣車線領域72として推定する。なお本実施形態では、隣車線領域72において後方からの物体の接近を判定することとしており、ECU30は、少なくとも隣車線領域72の推定を行うものであるとよい。
【0026】
ところで、自車両40の走行時又は交差点での停止時において、隣車線領域72に他車両が存在していても、その他車両について報知の実施条件が不成立となる場合には、ドライバへの報知が行われない。この他車両は、隣車線領域72に存在するものの、自車両40との衝突が生じる可能性が低い車両であり、報知実施の対象外として認識される非対象車両である。また、隣車線領域72に非対象車両が存在している場合に非対象車両の後方から接近車両が接近してくる状況では、その接近車両について報知の実施条件が成立し、不要にドライバへの報知が行われてしまうことが考えられる。
【0027】
そこで本実施形態では、ECU30は、隣車線領域72に非対象車両が存在していると判定した場合に、非対象車両の後方に存在する接近車両について、実施条件が成立したときの報知の実施制限を行う。この場合、ECU30は、接近車両が今後通行する通行領域を予測し、非対象車両と接近車両の通行領域とが重なることを条件に、接近車両について、実施条件が成立したときの報知の実施制限を行う。
【0028】
図4に、非対象車両と接近車両の通行領域とが重なる状況の一例を示す。図4では、隣車線領域72において、自車両40の側方近傍に第1,第2他車両41,42が存在するとともに、その後方に第3他車両43が存在している。なお、図4では一例として、第1,第2他車両41,42を四輪自動車、第3他車両43をバイクとしているが、それら各車両の種類は任意である。第1,第2他車両41,42は、自車両40に対する相対速度が略0となる並走車両であり、第3他車両43は、自車両40よりも高い車速で走行し、自車両40に後方から接近する接近車両である。
【0029】
この場合、ECU30は、隣車線領域72において、自車両40に対する各他車両41~43の相対位置及び相対速度に基づいて、第1,第2他車両41,42を非対象車両として認識し、第3他車両43を接近車両として認識する。また、ECU30は、隣車線領域72における第3他車両43の車線幅方向の位置から、第3他車両43の通行領域73を予測する。図4の状況では、第1,第2他車両41,42の存在領域と第3他車両43の通行領域73とが重なり、第3他車両43が、第1,第2他車両41,42を追い越す可能性が低くなっている。そのため、ECU30は、第3他車両43について報知の実施制限を行うこととし、実施条件が成立しても報知を実施しない。
【0030】
一方、ECU30は、非対象車両と接近車両の通行領域とが重ならない場合に、接近車両の通行領域が隣車線領域の自車両寄り及び反自車両寄りのいずれであるかに応じて、報知の実施制限を行う。図5は、非対象車両と接近車両の通行領域とが重ならない状況を示す図である。図5では、隣車線領域72において、非対象車両として、図4と同様に第1,第2他車両41,42が示されるとともに、接近車両として、隣車線領域72の自車両寄りを走行する第3他車両43Aと、隣車線領域72の反自車両寄りを走行する第3他車両43Bとが示されている。第3他車両43Aが今後走行すると予測される領域が通行領域73Aであり、第3他車両43Bが今後走行すると予測される領域が通行領域73Bである。なお、図5では、説明の便宜上、第3他車両43A,43Bを横並びに示すが、それらは少なくともいずれか一方が存在していればよい。
【0031】
図5では、第3他車両43Aが隣車線領域72の左側を走行しているため、隣車線領域72において、第1,第2他車両41,42の存在領域と第3他車両43Aの通行領域73Aとが重ならず、かつ、通行領域73Aが隣車線領域72の自車両寄りとなっている。この場合、第3他車両43Aは、隣車線領域72において自車両寄りの進路を通行し、第1,第2他車両41,42を追い越す可能性がある。そのため、ECU30は、第3他車両43Aについて報知を制限なく実施することとし、実施条件の成立に伴い報知を実施する。
【0032】
これに対し、第3他車両43Bは隣車線領域72の右側を走行しているため、隣車線領域72において、第1,第2他車両41,42の存在領域と第3他車両43Bの通行領域73Bとが重ならず、かつ、通行領域73Bが隣車線領域72の反自車両寄りとなっている。この場合、第3他車両43Bは、隣車線領域72において反自車両寄りの進路を通行し、第1,第2他車両41,42を追い越す可能性があるが、その第3他車両43Bの位置は、第1,第2他車両41,42を挟んで反対側となる。そのため、ECU30は、第3他車両43Bについて報知の実施制限を行うこととし、実施条件が成立しても報知を実施しない。
【0033】
また、図6に示すように、第3他車両43Bが隣車線領域72の右側を走行する場合において、第1,第2他車両41,42が自車両40よりも後方に位置し、自車両40の右側側方に空き領域74ができている状況も考えられる。この場合、第3他車両43Bが第1,第2他車両41,42を追い越した後、空き領域74において自車両40に近づいてくることが考えられる。そのため、隣車線領域72において、自車両40よりも後方に位置する非対象車両のうち先頭車両までの空き領域74(図6の第1他車両41の前方領域)については、第3他車両43Bに対する報知の実施領域とすることが望ましい。
【0034】
ECU30は、第1,第2他車両41,42の存在領域と第3他車両43Bの通行領域73Bとが重ならず、かつ、通行領域73Bが隣車線領域72の反自車両寄りである場合に、第3他車両43Bについて報知の実施条件が成立する領域のうち、自車両40よりも後方に位置する第1他車両41(非対象車両のうち先頭車両)までの空き領域74を、報知実施の領域とする。つまり、第3他車両43Bが隣車線領域72の右側を走行して第1,第2他車両41,42を追い越す場合において、第3他車両43Bが各他車両41,42を追い越すまでは第3他車両43Bについて報知制限が行われるが、第3他車両43Bが各他車両41,42を追い越した後は、第3他車両43Bについて報知制限が解除され、実施条件の成否に基づいて報知が実施される。
【0035】
図7に、ECU30が実施する制御の処理手順を示す。この処理は、ECU30により所定周期で繰り返し実施される。
【0036】
ステップS10では、自車両40と自車両周辺とに関する情報を取得する。例えば、レーダ装置21の検知データや、撮像装置22の画像データ、自車両40の速度情報、操舵角情報、ヨーレート情報、受信装置26の測位情報を適宜取得する。
【0037】
ステップS11では、隣車線領域72を推定する。本実施形態では、図3で説明したとおり自車両40の走行軌跡と回転角情報と車線幅とに基づいて隣車線領域72を推定する。このとき、複数車線道路における自車両40の走行位置に応じて、自車線の右隣となる右隣車線領域と自車線の左隣となる左隣車線領域とのうち少なくともいずれかが推定されるとよい。例えば、片側2車線道路の走行時において、自車両40が片側2車線のうち左側車線を走行していれば右隣車線領域が推定され、右側車線を走行していれば左隣車線領域が推定されるとよい。
【0038】
ステップS12では、隣車線領域72において自車両40の後方から接近する接近車両が存在しているか否かを判定する。
【0039】
ステップS13では、隣車線領域72に報知の実施条件が不成立となる非対象車両が存在するか否かを判定する。本実施形態では、隣車線領域72に他車両が検出された場合に、その他車両のTTCが閾値以上となる非対象車両が存在するか否かを判定する。ステップS13において否定判定した場合、ステップS14に進む。本実施形態において、ステップS13の処理が「存在判定部」に相当する。
【0040】
ステップS14では、通常の態様で報知制御を実施する。このとき、隣車線領域72において自車両40に対して接近する接近車両のTTCが閾値を下回ったか否かを判定する。そして、接近車両のTTCが閾値を下回ったと判定した場合、自車両40のドライバに対して報知を実施する。
【0041】
一方、ステップS13において肯定判定した場合、ステップS15に進む。ステップS15では、非対象車両の存在領域を認識する。
【0042】
ステップS16では、接近車両の通行領域73を予測する。本実施形態では、隣車線領域72における接近車両の車線幅方向の位置から、通行領域73を予測する。本実施形態において、ステップS16の処理が「通行領域予測部」に相当する。
【0043】
ステップS17では、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域73とが重なるか否かを判定する。ステップS17において肯定判定した場合、ステップS18に進む。
【0044】
ステップS18では、自車両40のドライバへの報知の実施制限を行う。本実施形態では、接近車両のTTCが閾値を下回ったとしても、自車両40のドライバに対して警報音を発しないようにする。
【0045】
一方、ステップS17において否定判定した場合、ステップS19に進む。ステップS19では、接近車両の通行領域73が自車両寄りであるか否かを判定する。ステップS19において肯定判定した場合、ステップS14に進む。ステップS14では、通常の態様で報知制御を実施する。
【0046】
一方、ステップS19において否定判定した場合、すなわち接近車両の通行領域が反自車両寄りであると判定した場合、ステップS20に進む。ステップS20では、接近車両に対する報知の実施制限を行うこととし、実施条件が成立しても報知を実施しない。また、ステップS20では、隣車線領域72において非対象車両(詳しくは非対象車両のうちの先頭車両)が自車両40よりも後方に位置している場合に、接近物体についてTTC等の実施条件が成立する領域のうち、自車両の隣接位置から非対象車両の先頭車両までの領域(図6の空き領域74)を、報知実施の領域とするとよい。この場合、接近車両が隣車線領域72の反自車両寄りの領域を通過して空き領域74に進入した際に、実施条件の成否に応じて報知が実施される。本実施形態において、ステップS17~S20の処理が「実施制限部」に相当する。
【0047】
なお、ステップS19を肯定判定し、ステップS14に進んだ場合には、隣車線領域72に非対象車両が存在する状況であっても実施条件の成否に応じて報知が実施されるが、隣車線領域72に非対象車両が存在しない状況(ステップS13がNOの場合)よりも、接近車両に対する報知が実施されにくくなっているとよい。ここで、接近車両が自車両寄りを通過する場合と、接近車両が反自車両寄りを通過する場合との比較において、接近車両が自車両寄りを通過する場合に、接近車両が反自車両寄りを通過する場合より報知制限の度合が小さくなっていればよい。
【0048】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0049】
自車両40から接近車両までの隣車線領域に非対象車両が存在している状況では、自車両40付近への接近車両の接近が非対象車両により妨げられる。つまり、接近車両の前方に非対象車両が存在する位置関係では、自車両40と接近車両とが衝突する可能性は低くなる。そこで、本実施形態では、非対象車両が存在していると判定された場合に、非対象車両の後方に存在する接近車両について、自車両40のドライバに対する報知の実施制限を行うようにした。これにより、自車両40が衝突する可能性の低い接近車両について、ドライバへの不要な報知の実施を制限することができる。その結果、ドライバへの報知を適正に実施することができる。
【0050】
自車両40から接近車両までの隣車線領域に非対象車両が存在している状況では、自車両40付近への接近車両の接近が妨げられるが、接近車両が非対象車両の側方をすり抜ける場合、すなわち接近車両が非対象車両を追い越そうとする場合には、自車両40と接近車両との衝突の可能性が高くなる。この点、接近車両が今後通行する通行領域を予測し、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重なることを条件に、報知の実施制限を行うようにとした。このとき、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重なる場合には、接近車両が非対象車両を追い越そうとしていないと判断でき、報知の実施制限を適正に行うことができる。
【0051】
隣車線領域を走行する接近車両の通行領域と、非対象車両の存在領域とが重ならない場合には、接近車両が非対象車両を追い越す可能性があり、実施条件に応じて報知を実施することが望ましい。ただし、接近車両が隣車線領域の自車両寄り又は反自車両寄りのどちらを通行して追い越すかに応じて、自車両40が接近車両に衝突する可能性が異なるため、接近車両の通行領域を考慮して報知を実施することが望ましい。そこで、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重ならない場合に、接近車両の通行領域が隣車線領域の自車両寄り又は反自車両寄りであるかに応じて、実施制限を行うようにした。これにより、接近車両の通行領域に応じて的確に報知を実施することができる。
【0052】
非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重ならず、かつ、接近車両の通行領域が隣車線領域の反自車両寄りである場合において、非対象車両が自車両よりも後方に位置していれば、接近車両が非対象車両を追い越した後に、自車両40が接近車両に衝突する可能性が生じる。そこで、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重ならず、かつ、接近車両の通行領域が隣車線領域の反自車両寄りである場合に、隣車線領域のうち、自車両40よりも後方に位置する非対象車両のうち先頭車両までの空き領域を、報知実施の領域とした。これにより、自車両40が接近車両に衝突する可能性が生じる領域では自車両40のドライバに対する報知を実施しつつ、接近車両について報知の実施制限を行うことができる。
【0053】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、報知の実施制限が行われる場合において、自車両40と非対象車両との相対位置の変化が考慮される。
【0054】
上記実施形態では、隣車線に非対象車両が存在している場合に、非対象車両の後方に存在する接近車両について報知の実施制限を行う構成としたが、自車両40に対する非対象車両の相対位置が変化する場合には、自車両40と接近車両との関係が変化することを考慮し、報知の実施制限の態様を変更するとよい。例えば、右隣車線の非対象車両が右折する場合や、隣車線の非対象車両が加速する場合、自車両40が減速する場合には、自車両40に対する非対象車両の相対位置が変化する。この場合、接近車両が自車両40に対して接近する場合の妨げがなくなるか、或いは接近車両が自車両40に対して接近しやすくなるため、自車両ドライバに対する報知を制限せずに実施した方が良いと考えられる。
【0055】
そこで本実施形態では、ECU30は、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重なると判定した場合、自車両40と非対象車両との相対位置が変化するか否かを判定する。具体的には、例えば隣車線に非対象車両として1台の他車両が存在している場合に、その他車両がウインカを出していること、他車両の加速又は自車両40の減速によりこれら両車両の相対速度が大きくなることにより、自車両40と非対象車両との相対位置の変化が生じることを判定する。ECU30は、自車両40と非対象車両との相対位置が変化すると判定した場合、接近車両について通常の報知制御を実施する。
【0056】
図8に、ECU30が実施する制御の処理手順を示す。この制御は隣車線において接近車両が検出された場合に実施される。なお、図8において、先の図7に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0057】
ステップS17において肯定判定した場合、ステップS31に進む。ステップS31では、自車両40と非対象車両との相対位置が変化するか否かを判定する。そして、自車両40と非対象車両との相対位置が変化しないと判定した場合、ステップS18に進み、報知の実施制限を行う。一方、自車両40と非対象車両との相対位置が変化すると判定した場合、ステップS14に進み、通常の態様で報知制御を実施する。本実施形態において、ステップS31の処理が「位置予測部」に相当する。
【0058】
なお、ステップS31において自車両40と非対象車両との相対位置が変化すると判定した場合に、自車両40と非対象車両との相対位置が変化しないと判定した場合に比べて、報知制限の度合を小さくするようになっていればよい。
【0059】
本実施形態によれば、非対象車両が存在していると判定された場合に、今後の非対象車両と自車両40との相対位置の変化に基づいて報知の実施制限が行われる。これにより、現時点では自車両40が接近車両に衝突する可能性が低いと判断されるものの、今後、自車両40が接近車両に衝突する可能性が低い状態から高い状態に移行しそうな場合に、ドライバへの報知を適切に実施することができる。
【0060】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0061】
・隣車線に非対象車両が存在しており、かつ非対象車両の後方に自車両40に接近する接近車両が存在している場合において、その接近車両の大きさが、隣車線において非対象車両の側方を通り抜け可能な大きさであるか否かを判定し、その判定結果に基づいて報知の実施制限を行う構成としてもよい。具体的には、ECU30は、図7のステップS17において、接近車両が、隣車線において非対象車両の側方を通り抜け不可の横幅を有するか否かを判定するとともに、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重なるか否かを判定する。接近車両の横幅は、接近車両の種類に基づいて推定してもよいし、接近車両の存在領域に基づいて推定してもよい。
【0062】
そして、接近車両が、隣車線において非対象車両の側方を通り抜け不可の横幅を有すると判定されるか、又は非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重なると判定された場合に、ステップS18に進み、自車両40のドライバへの報知の実施制限を行う。また、接近車両が、隣車線において非対象車両の側方を通り抜け可能な横幅を有し、かつ非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重ならないと判定された場合に、ステップS19に進む。なお、ステップS17において、接近車両が、隣車線において非対象車両の側方を通り抜け不可の横幅を有すると判定された場合に、非対象車両の存在領域と接近車両の通行領域とが重なるか否かの判定を行うことなく、ステップS18に進むようにすることも可能である。
【0063】
・自車線において後方から接近車両が接近してくる場合に、接近車両のドライバに対して、ハザードランプの点灯等による車外報知を行うものであってもよい。つまり、ECU30は、自車線内に物体が検出された場合に、その物体のTTCが閾値を下回ったか否かを判定し、TTCが閾値を下回っていれば、ハザードランプの点灯等による報知を行う。また、ECU30は、自車線において自車両の後方に非対象車両が存在しており、かつ非対象車両と通行領域とが重なる場合に、報知の実施制限を行う。制御の概要を図9を用いて説明する。図9では、自車線領域71において、自車両40の後方に非対象車両である他車両51が存在するとともに、その後方に接近車両52A,52Bのいずれかが存在する状況を想定している。なお、他車両51は、自車両40に対する相対速度が略0であるのに対し、接近車両52A,52Bは、自車両40よりも高い車速で走行し、自車両40に後方から接近する。例えば自車両40と他車両51とが停止しており、接近車両52A,52Bが後方から接近する状況が考えられる。
【0064】
この場合、接近車両52Aについてはその通行領域53Aと他車両51の存在領域とが重なる。そのため、ECU30は、接近車両52Aについて報知の実施制限を行うこととし、実施条件が成立しても報知を実施しない。これに対して、接近車両52Bについてはその通行領域53Bと他車両51の存在領域とが重ならない。そのため、ECU30は、接近車両52Bについて報知の実施制限を行わず、実施条件の成立に応じて報知を実施する。
【0065】
上記構成によれば、自車線において自車両40の後方を走行する接近車両52A,52Bについて、的確に報知を実施することができる。
【0066】
なお、ECU30は、衝突抑制動作として、自車線において接近車両を検出した場合に、その接近車両のTTCが閾値を下回ったか否かを判定し、TTCが閾値を下回っていれば、自車両40のドライバに対する報知を実施してもよい。この場合、例えば、ECU30は、自車両40のドライバに対する報知として、自車後方から他車両が急接近していることを示す報知や、自車両40を隣車線へと車線変更させることを促す旨の報知を行うとよい。
【0067】
図9において、自車両40に対する他車両51の相対位置が変化する場合に、自車両40と接近車両52Aとの関係が変化することを考慮し、報知の実施制限の態様を変更するとよい。例えば、他車両51が右左折する場合には、自車両40に対する他車両51の相対位置が変化し、自車両40の近傍位置まで接近車両52Aの接近が可能となる。そこで、ECU30は、他車両51の存在領域と接近車両52Aの通行領域53Aとが重なると判定した場合において、自車両40と他車両51との相対位置が変化するか否かを判定し、その相対位置が変化すると判定されれば、接近車両52Aについて通常の報知制御を実施する。
【0068】
なお、ECU30が、隣車線を走行する接近車両に関する報知制御と、自車線を走行する接近車両に関する報知制御とを実施する構成とすることも可能である。
【0069】
・周辺監視システム10は、レーダ装置21に代えて、超音波センサ、LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等の探査波を送信するセンサを備えていてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、ECU30は、警報音を発しないようにすることにより報知の実施制限を行う構成としたが、これを変更してもよい。例えば、ECU30は、警報音の音量を小さくしたり、音の種類を変更したりしてドライバに対する報知の程度を小さくしてもよい。また、例えば、ECU30は、ドアミラーに搭載されたインジケーターを点灯することにより、自車両40のドライバに対して報知を実施する場合において、インジケーターの点灯を行わないようにすることにより報知の実施制限を行ってもよい。ECU30は、インジケーターの点灯の強度を弱めたり、点灯色を淡い色に変更したりすることにより報知の実施制限を行ってもよい。
【0071】
・上記実施形態では、ECU30は、自車後方からの接近車両に対する衝突抑制動作として、自車両40のドライバ又は接近車両のドライバに対する報知を行う構成としたが、これを変更してもよい。例えば、ECU30は、衝突抑制動作として、車内からのドア開放を不可とするドアロックを行ってもよい。車両のドアロックは、ユーザが自車両40から降車する場合に、ユーザ又は自車両40と接近車両とが衝突することを抑制するための動作として実施されることを想定している。なお、車両のドアロックは、少なくとも車両の左右ドアのうち接近車両が走行する側のドアについて行われるとよい。また、車両のドアロック状態下において、車外からのドア開放を不可としかつ車内からのドア開放を可能とする構成を有する車両では、自車後方からの接近車両に対して一時的に車内からのドア開放を不可とする制御が行われるとよい。
【0072】
また、例えば、ECU30は、自車後方からの接近車両に対する衝突抑制動作として、車両の制動又は操舵を行ってもよい。車両の制動又は操舵は、自車両40が隣車線への車線変更等を行う場合に、自車両40と接近車両とが衝突することを抑制するための動作として実施されることを想定している。
【0073】
・ECU30は、隣車線又は自車線において接近車両を検出した場合に、その接近車両が、自車両40の走行を妨害する妨害運転を行っているか否かを判定してもよい。妨害運転とは、例えば、自車両と接近車両との相対距離(すなわち、車間距離)を詰めて接近する運転や、不必要なハイビームを継続して行う運転、不必要なクラクションを反復して作動させる運転、自車両40の後方で接近車両が左右にふらつく蛇行運転等であり、いわゆるあおり運転である。ECU30は、接近車両が妨害運転を行っていると判定した場合、妨害運転に対する処理を行うとよい。一方、ECU30は、接近車両が妨害運転を行っていないと判定した場合、非対象車両の存在の有無に基づいて衝突抑制動作の実施制限を行うとよい。
【0074】
具体的には、ECU30は、自車両と接近車両との相対距離が所定距離未満であると判定した場合、接近車両が妨害運転を行っていると判定するとよい。ECU30は、固定値(例えば、5m)を所定距離として設定する、又は自車両40の車速に基づいて所定距離を可変設定するとよい。例えば、ECU30は、所定距離を可変設定する際に、自車両40の車速が高い場合、自車両40の車速が低い場合に比べて所定距離を短く設定するとよい。
【0075】
ECU30は、自車両と接近車両との相対距離が所定距離未満であると判定したことに加えて、接近車両の挙動に基づいて、接近車両が妨害運転を行っていると判定してもよい。例えば、ECU30は、自車両と接近車両との相対距離が所定距離未満である接近状態において、接近車両による自車両40へのハイビームの照射や、クラクションの使用、蛇行運転が所定時間(例えば、5秒)以上継続していることを認識した場合、接近車両が妨害運転を行っていると判定してもよい。ECU30は、撮像装置22の撮像画像に基づいて、ハイビームの照射や蛇行運転を認識するとよい。周辺監視システム10は、車両周辺の音声を検出するマイクを備えており、ECU30は、マイクの検出した音声データに基づいて、接近車両によるクラクションの使用を認識するとよい。
【0076】
ECU30は、自車両と接近車両との相対距離が所定距離未満であると判定したことに加えて、自車両40の挙動に基づいて、接近車両が妨害運転を行っていると判定してもよい。例えば、接近車両との接近状態を解消しようと自車両40のドライバが繰り返し車線変更を行う場合があると考えられる。そこで、ECU30は、自車両と接近車両との相対距離が所定距離未満であると判定し、かつ自車両40が車線変更を繰り返し行っていると認識した場合に、接近車両が妨害運転を行っていると判定してもよい。また、例えば、接近車両の自車両40への過度な接近により自車両40のドライバがパニックに陥り、ドライバによる操舵操作が不安定になる場合があると考えられる。そこで、ECU30は、自車両と接近車両との相対距離が所定距離未満であると判定し、かつステアリングホイールの操舵角が所定角度幅以上で変動していると認識した場合に、接近車両が妨害運転を行っていると判定してもよい。ECU30は、操舵角センサ24の操舵角信号に基づいて、自車両40が車線変更を繰り返し行っていることや、ステアリングホイールの操舵角が所定角度幅以上で変動していることを認識するとよい。
【0077】
ECU30は、接近車両が妨害運転を行っていると判定した場合、通報処理を行うとよい。通報処理は、警察や警備会社等の被通報組織へ妨害運転を受けている旨を通報する処理である。ECU30は、通報処理において、自車両40の位置情報やドライバの連絡先の情報を被通報組織へ送信するとよい。ECU30は、周辺監視システム10に備えられている無線通信装置を用いて、被通報組織への通報を行うとよい。無線通信装置は、V2X(vehicle to X)電波による通信と、携帯電話基地局の電波を利用したモバイル回線による通信とのうち少なくとも1つを実行する。
【0078】
ECU30は、接近車両が妨害運転を行っていると判定した場合、録画処理を行うとよい。録画処理は、接近車両が撮像された撮像データを、周辺監視システム10が備える記憶部に記憶する処理である。例えば、ECU30は、録画処理において、撮像装置22の撮像画像を記憶部に記憶させるとよい。なお、周辺監視システム10が撮像装置22とは別にドライブレコーダを備えている場合では、ECU30は、録画処理において、ドライブレコーダによる録画を開始してもよい。
【0079】
ECU30は、接近車両が妨害運転を行っていると判定した場合、施錠処理を行うとよい。施錠処理は、車外からのドア開放を不可とするドアロックを行う処理である。
【0080】
図10に、ECU30が実施する制御の処理手順を示す。この処理は、ECU30により所定周期で繰り返し実施される。図10において、先の図7に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。なお、図10では、便宜上、図7のステップS13~S20までの処理について図示を省略している。
【0081】
ステップS12において、接近車両ありと判定された場合にステップS40に進む。ステップS40では、接近車両が妨害運転を行っているか否かを判定する。ステップS40において否定判定した場合、ステップS13に進む。一方、ステップS40において肯定判定した場合、ステップS41に進む。
【0082】
ステップS41では、通報処理を行う。ステップS42では、録画処理を行う。ステップS43では、施錠処理を行う。ステップS43の処理の後、本処理を終了する。なお、ステップS40において肯定判定した場合、ステップS41~S43の処理を行うことに代えて、ステップS41~S43の処理のうち1つ又は2つの処理を行うこととしてもよい。
【0083】
本実施形態によれば、接近車両が妨害運転を行っているか否かが判定される。接近車両が妨害運転を行っていないと判定された場合、非対象車両の存在の有無に基づいて衝突抑制動作の実施制限が行われ、接近車両が妨害運転を行っていると判定された場合、通報処理、録画処理及び施錠処理が行われる。この場合、自車両40の走行を妨害する意図を有する接近車両に対しては通報処理、録画処理及び施錠処理による対応を取る一方で、妨害運転を行わない接近車両に対しては非対象車両の存在の有無に基づいて衝突抑制動作を適正に実施することができる。
【0084】
・自車両40の軌跡に基づいて隣車線領域を推定する構成に代えて、例えば、撮像装置22の撮像画像に基づいて、隣車線領域を推定する構成としてもよい。
【0085】
・第1実施形態では、接近車両について報知の実施制限が行われる一例を説明したが、自車両40の後方から接近する接近物体としての歩行者等について報知の実施制限が行われてもよい。
【0086】
・本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の車両制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0087】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0088】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
車両周辺の物体を検出する検出装置(21,22)を備える車両に適用され、
自車両(40)が走行する道路において前記自車両の後方から接近する接近物体が前記検出装置により検出された場合に、当該接近物体について所定の実施条件の成否に応じて前記接近物体に対する衝突抑制動作を行う周辺監視装置(30)であって、
前記自車両から前記接近物体までの前記道路に、前記実施条件が不成立となる非対象車両が存在していることを判定する存在判定部と、
前記非対象車両が存在していると判定された場合に、当該非対象車両の後方に存在する前記接近物体について、前記実施条件が成立したときの前記衝突抑制動作の実施制限を行う実施制限部と、
を備える周辺監視装置。
[構成2]
前記接近物体が今後通行する通行領域を予測する通行領域予測部を備え、
前記実施制限部は、前記非対象車両と前記通行領域とが重なることを条件に、前記実施制限を行う、構成1に記載の周辺監視装置。
[構成3]
前記実施制限部は、前記接近物体が、前記自車両が走行する自車線の隣である隣車線において前記自車両の後方から接近する物体であり、前記非対象車両と前記通行領域とが重ならない場合に、前記通行領域が前記隣車線の前記自車両寄り及び反自車両寄りのいずれであるかに応じて前記実施制限を行う、構成2に記載の周辺監視装置。
[構成4]
前記実施制限部は、前記非対象車両と前記通行領域とが重ならず、かつ、前記通行領域が前記隣車線の反自車両寄りである場合に、前記接近物体について前記実施条件が成立する領域のうち、前記自車両よりも後方に位置する前記非対象車両のうち先頭車両までの領域を、前記衝突抑制動作の実施の領域とする、構成3に記載の周辺監視装置。
[構成5]
前記実施制限部は、前記接近物体が、前記自車両が走行する自車線において前記自車両の後方から接近する物体であり、前記非対象車両と前記通行領域とが重なる場合に、前記実施制限を行う、構成2~4のいずれか1つに記載の周辺監視装置。
[構成6]
前記非対象車両について前記自車両に対する相対位置の変化を予測する位置予測部を備え、
前記実施制限部は、前記非対象車両が存在していると判定された場合に、前記位置予測部により予測された前記相対位置の変化に基づいて前記衝突抑制動作の実施制限を行う、構成1~5のいずれか1つに記載の周辺監視装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10