(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】伝送線路
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20241204BHJP
H01P 3/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01P5/08 C
H01P3/00 101
(21)【出願番号】P 2023569048
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2022029297
(87)【国際公開番号】W WO2023119706
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2021207428
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222182(JP,A)
【文献】特開平04-336702(JP,A)
【文献】特開2002-232143(JP,A)
【文献】特開2019-021663(JP,A)
【文献】特開平09-107201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
H01P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体製の基板と、
前記基板に設けられた第1のコプレナ線路であって、前記基板の一方の主面に設けられた第1の信号線パターンと、前記第1の信号線パターンを挟み込む第1のコプレナパターンと、を備えた第1のコプレナ線路と、
前記基板に設けられた二導体線路であって、前記第1の信号線パターンと導通し、且つ、前記基板の前記一方の主面から他方の主面まで貫通する第1のスルービアと、地導体と、を備えた二導体線路と、を備えて
おり、
前記基板の前記他方の主面のうち、少なくとも前記第1の信号線パターンと重なる領域には凹部が形成されており、
前記基板の他方の主面及び前記凹部の表面に設けられ、且つ、前記第1の信号線パターンと対向する地導体パターンを更に備え、
前記凹部の表面に設けられた前記地導体パターンは、前記第1のコプレナ線路とともにグランデッドコプレナ線路を構成し、
前記地導体は、前記一方の主面から前記他方の主面まで貫通する1又は複数の第2のスルービアであって、前記第1のコプレナパターンと前記他方の主面に形成された前記地導体パターンとを短絡する1又は複数の第2のスルービアであり、
前記第1のスルービアと、前記1又は複数の第2のスルービアとの最短距離は、前記第1のスルービアと、前記凹部との最短距離よりも短い、
ことを特徴とする伝送線路。
【請求項2】
前記第1のコプレナパターンと、前記地導体パターンのうち前記凹部の底面に設けられた部分とを短絡する一対の第3のスルービアであって、前記第1の信号線パターンを挟み込むように設けられた一対の第3のスルービアを更に備えている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の伝送線路。
【請求項3】
前記一対の第3のスルービアの各々は、それぞれ、平面視において、前記第1のコプレナパターンに包含される領域のうち前記第1の信号線パターンに近接する領域に設けられている、
ことを特徴とする請求項
2に記載の伝送線路。
【請求項4】
前記凹部は、平面視において、前記基板の前記他方の主面のうち、前記第1の信号線パターン及び前記第1のコプレナパターンと重なる領域に形成されており、
前記1又は複数の第2のスルービアは、前記第1のスルービアを挟み込むように設けられた一対の第2のスルービアであり、
前記第1のスルービアと前記凹部との最短距離と、前記一対の第2のスルービアと前記凹部との最短距離とは、異なっている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の伝送線路。
【請求項5】
前記凹部は、平面視において、前記基板の前記他方の主面のうち、前記第1の信号線パターン及び前記第1のコプレナパターンと重なる領域に形成されており、
前記1又は複数の第2のスルービアは、前記第1のスルービアを挟み込むように設けられた一対の第2のスルービアであり、
前記凹部の側面であって、前記第1のスルービア及び前記一対の第2のスルービアに近接する側面は、前記第1のスルービアと近接する部分が前記一対の第2のスルービアと近接する部分よりも引っ込んでいる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の伝送線路。
【請求項6】
前記基板の前記他方の主面のうち、少なくとも前記第1の信号線パターンと重なる領域には凹部が形成されており、
前記地導体パターンが、前記凹部の表面に設けられ、
前記地導体は、前記地導体パターンのうち、前記凹部の側面であって、前記第1のスルービアに近接する側面に設けられた部分である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の伝送線路。
【請求項7】
平面視において、前記基板の前記他方の主面のうち、前記第1のスルービアを包含する領域には信号端子として機能する導体パッチであって、前記地導体パターンとは離間した導体パッチが設けられている、
ことを特徴とする請求項
1~
6の何れか1項に記載の伝送線路。
【請求項8】
前記他方の主面に設けられた第2のコプレナ線路であって、前記第1のスルービアと導通している第2の信号線パターン及び前記第2の信号線パターンを挟み込む第2のコプレナパターンを備えたコプレナ線路を更に備えている、
ことを特徴とする請求項
1~
6の何れか1項に記載の伝送線路。
【請求項9】
前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンは、前記第1のコプレナ線路の前記第1の信号線パターンと略平行であり、且つ、前記第1のコプレナ線路の前記第1の信号線パターンから遠ざかる方向に延伸されており、
前記第2のコプレナパターンは、前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンを少なくとも3方から取り囲んでおり、
前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンと前記第2のコプレナパターンとの間隔は、前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンの一方の端部であって、前記凹部側の端部において最も広い、
ことを特徴とする請求項
8に記載の伝送線路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送線路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図1~
図4には、電磁気的に結合した2つのマイクロストリップ線路を用いたフィルタ装置が開示されている。このフィルタ装置は、誘電体製の基板と、基板の一方の主面に設けられた一対の信号線(特許文献1においては、スタブ6a,6b及びパッチ8a,8bと呼ばれている)と、基板の他方の主面に設けられた地導体と(特許文献1においては、地導体層10と呼ばれている)と、一対の入出力構造(特許文献1においては、入出力タップ14a,14b及びメタライズされた孔と呼ばれている)と、を備えている。スタブ6a,6bは、帯状の導体パターンである。入出力タップ14a,14bの各々は、それぞれ、スタブ6a,6bの中途区間から突出するように設けられた導体パターンである。
【0003】
このフィルタ装置を実装基板に実装する場合、通常、このフィルタ装置の基版の他方の主面(信号線が設けられた主面と反対側の主面)を実装基板の一方の主面に対向させる。そのため、入出力タップ14a,14bの端部のうち、スタブ6a,6bに接続されている側と逆側の端部の近傍には、基板の一対の主面同士を貫通するスルービア(特許文献1においては、メタライズされた孔と呼ばれている)が設けられている。このように、入出力タップ14a,14bの各々にスルービアが接続されていることによって、フィルタ装置の基板における他方の主面側から、フィルタ装置に対して高周波を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような入出力構造においては、伝送させる高周波の周波数が高ければ高いほど反射損失が大きくなりやすいという問題がある。この入出力構造においては、伝送線路とはいえない1本のスルービアが、基板の一対の主面間における高周波の伝送を担っているためである。
【0006】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、基板の一対の主面間において高周波を伝送させる伝送線路において、特許文献1のフィルタ装置が備えている入出力構造と比較して、反射損失を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る伝送線路は、誘電体製の基板と、前記基板に設けられた第1のコプレナ線路であって、前記基板の一方の主面に設けられた第1の信号線パターンと、前記第1の信号線パターンを挟み込む第1のコプレナパターンと、を備えた第1のコプレナ線路と、前記基板に設けられた二導体線路であって、前記第1の信号線パターンと導通し、且つ、前記基板の前記一方の主面から他方の主面まで貫通する第1のスルービアと、地導体と、を備えた二導体線路と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、基板の一対の主面間において高周波を伝送させる伝送線路において、特許文献1のフィルタ装置が備えている入出力構造と比較して、反射損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る伝送線路の斜視図である。
【
図2】(a)~(c)の各々は、それぞれ、
図1に示した伝送線路の底面図、平面図、及び背面図である。
【
図3】
図1に示した伝送線路の断面図である。(a)は、
図1の(a)に示したA-A’線及びz軸に沿った断面を示し、(b)は、
図1の(a)に示したB-B’線及びz軸に沿った断面を示している。
【
図4】(a)は、
図1に示した伝送線路の第1の変形例の背面図であり、(b)は、第1の変形例の底面図である。
【
図5】
図1に示した伝送線路の第2の変形例の底面図である。
【
図6】
図1に示した伝送線路の第3の変形例の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔伝送線路〕
<概要>
本発明の一実施形態に係る伝送線路1について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、伝送線路1の斜視図である。
図2の(a)~(c)の各々は、それぞれ、
図1に示した伝送線路の底面図、平面図、及び背面図である。
図3は、伝送線路1の断面図である。
図3の(a)は、
図1の(a)に示したA-A’線及びz軸に沿った断面を示す、(b)は、
図1の(a)に示したB-B’線及びz軸に沿った断面を示している。
【0011】
伝送線路1は、特許文献1に記載のフィルタ装置や、国際出願番号PCT/JP2021/011615に記載のフィルタ装置などに代表されるフィルタ装置の入出力構造として好適に用いることができる。伝送線路1をこのようなフィルタ装置の入出力構造として用いる場合、フィルタ装置は、伝送線路1と一括して1つの基板に設けられる。
【0012】
本実施形態においては、フィルタ装置を、実装基板の一方の主面に、且つ、基板の他方の主面と、実装基板の一方の主面とが近接して対向するように、実装されることを想定している。この場合、フィルタ装置においてフィルタ機能を実現するための導体パターンは、基板の一対の主面のうち、実装基板から遠い側の主面に設けられる。伝送線路1は、基板の一対の主面のうち、実装基板に近接する側の主面からフィルタ装置に対して高周波を供給することを想定している。
【0013】
なお、本実施形態では、フィルタ装置の透過帯域の中心周波数として60GHzを採用している。ただし、フィルタ装置の透過帯域の中心周波数は、60GHzに限定されず、たとえば、30GHz以上75GHz以下の帯域内において適宜定めることができる。伝送線路1は、フィルタ装置の透過帯域の中心周波数におけるロスをできるだけ低減できるように、その構造及び各部のサイズを最適化されている。
【0014】
<構成>
伝送線路1は、
図1に示すように、基板10と、コプレナ線路20と、二導体線路30と、コプレナ線路40と、を備えている。コプレナ線路20、二導体線路30、及びコプレナ線路40は、何れも、基板10に設けられている。本願明細書において、二導体線路とは、信号線を構成する導体、及び、グランドを構成する導体、という2つの機能が異なる導体を備えている高周波伝送線路を指す。本願明細書において、二導体線路のグランドは、1つの導体により構成されていてもよいし、複数の導体により構成されていてもよい。グランデッドコプレナ線路、コプレナ線路、及び、マイクロストリップ線路は、何れも二導体線路の一例である。なお、二導体線路30は、典型的なグランデッドコプレナ線路、コプレナ線路、及び、マイクロストリップ線路の何れとも異なり、基板10の厚み方向に高周波を伝搬させる高周波伝送線路である。そのため、二導体線路30については、二導体線路と称する。
【0015】
なお、
図5を参照して後述する伝送線路1の第2の変形例のように、本発明の一態様においては、伝送線路1のコプレナ線路40が備えている信号線パターン41に代えて導体パッチ41Bを用いることもできる。すなわち、本発明の一態様においては、コプレナ線路40を省略することもできる。なお、
図1は、伝送線路1のポイントとなる構成を抜粋して示しているに過ぎない。基板10は、
図1に図示する座標系のx軸方向及びy軸方向の何れにも延伸されている。また、コプレナ線路20は、
図1に図示されている範囲に留まらない。コプレナ線路20は、二導体線路30に接続される側と逆側の端部がx軸負方向側に延伸されている。また、コプレナ線路40は、
図1に図示されている範囲に留まらず、二導体線路30に接続される側と逆側の端部がx軸正方向側に延伸されている。なお、
図1に図示されている範囲外であって、x軸負方向側の領域において、コプレナ線路20(グランデッドコプレナ線路)は、コプレナ線路に接続されていてもよい。すなわち、後述する凹部13のx軸方向に沿った長さは、後述する信号線パターン21及びコプレナパターン22,23のx軸方向に沿った長さよりも短くてもよい。また、上述したように、基板10には、フィルタ装置が設けられていてもよい。
【0016】
(基板)
基板10は、誘電体製の板状部材である。本実施形態では、基板10を構成する誘電体として石英ガラスを用いている。ただし、基板10を構成する誘電体は、石英ガラスに限定されず、適宜選択することができる。石英ガラスに代表されるガラス以外の誘電体としては、抵抗率が高い半導体や、樹脂などが挙げられる。抵抗率が高い半導体は、ガリウムヒ素(GaAs)に代表される化合物半導体であってもよいし、シリコンであってもよい。樹脂の一例としては、フッ素樹脂が挙げられる。また、基板10を構成する誘電体は、フッ素化合物であってもよい。
【0017】
本実施形態において、基板10の厚みは、400μmである。ただし、基板10の厚みは、400μmに限定されず、適宜定めることができる。
【0018】
基板10の一対の主面11,12のうち、
図1に示した状態において、上側に位置する主面を主面11と称し、下側に位置する主面を主面12と称する。
【0019】
また、
図1に図示している座標系では、主面11,12の法線方向であって、主面12から主面11へ向かう方向をz軸正方向と定め、後述するコプレナ線路20の信号線パターン21が、後述する二導体線路30に向かって延伸されている方向をx軸正方向と定め、x軸正方向及びz軸正方向とともに右手系の直交座標系を構成する方向をy軸正方向と定めている。
【0020】
基板10の主面12のうち、少なくとも後述する信号線パターン21の一部と重なる領域には凹部13が形成されている。本実施形態において、凹部13は、信号線パターン21の一部に加えて、コプレナパターン22,23の各々の一部と重なるように構成されている(
図2の(a)及び(b)参照)。
凹部13は、主面11及び主面12と平行な底面131と、底面131と垂直な側面と、により構成されている。以下において、側面のうち、後述する二導体線路30に近接する側面を側面132と称する。
【0021】
(第1のコプレナ線路)
コプレナ線路20は、
図1、
図2の(a)、及び、
図3の(a)に示すように、基板10に設けられた二導体線路である。コプレナ線路20は、信号線パターン21と、コプレナパターン22,23と、を備えている。
信号線パターン21及びコプレナパターン22,23は、基板10の主面11に設けられている。信号線パターン21は、第1の信号線パターンの一例である。コプレナパターン22,23は、第1のコプレナパターンの一例である。
【0022】
信号線パターン21は、コプレナ線路20の信号線として機能する。
【0023】
コプレナパターン22,23の各々は、信号線パターン21を挟み込むように設けられている。
地導体パターン42は、主面12の一部と、凹部13の表面(底面131および側面)とを覆うように設けられた導体パターンである(
図2の(b)及び
図3の(a)参照)。
【0024】
信号線パターン21は、基板10及びコプレナパターン22,23とともにコプレナ線路を構成する。しかも、主面12をz軸負方向側から平面視した場合に凹部13と重なる領域においては、信号線パターン21は、基板10と、コプレナパターン22,23と、地導体パターン42のうち、凹部13の底面131に設けられた部分とともにグランデッドコプレナ線路を構成する。なお、以下において「平面視」とは、主面11をz軸正方向側から平面視すること、及び、主面12をz軸負方向側から平面視すること、の何れかを指す。
信号線パターン21、及び、コプレナパターン22,23は、導体製の薄膜である。本実施形態では、信号線パターン21、及び、コプレナパターン22,23を構成する導体として銅を採用している。
【0025】
同様に、地導体パターン42、及び、後述する信号線パターン41も、導体製の薄膜である。本実施形態では、信号線パターン41、及び、地導体パターン42を構成する導体として銅を採用している。
【0026】
ただし、信号線パターン21、コプレナパターン22,23、信号線パターン41、及び、地導体パターン42を構成する導体は、銅に限定されず、適宜選択することができる。
【0027】
信号線パターン21、及び、コプレナパターン22,23は、主面11を覆う導体膜(本実施形態においては、銅製の膜)を形成したうえで、所望の形状になるようにパターニングを実施することにより得られる。また、信号線パターン41、及び、地導体パターン42は、主面12に凹部13を形成したうえで、主面12及び凹部13の表面を覆う導体膜(本実施形態においては、銅製の膜)を形成し、当該導体膜を所望の形状になるようにパターニングを実施することにより得られる。なお、信号線パターン41と地導体パターン42との間には、導体膜を除去した領域が設けられている。したがって、信号線パターン41と地導体パターン42とは、絶縁されている。
【0028】
コプレナ線路20において、コプレナパターン22と、地導体パターン42のうち凹部13の底面131に設けられた部分とは、スルービア43により短絡されており、コプレナパターン23と、地導体パターン42のうち凹部13の底面131に設けられた部分とは、スルービア44により短絡されている。スルービア43,44は、一対の第3のスルービアの一例である。
スルービア43,44は、主面11から底面131まで基板10を貫通する貫通孔の内壁に、導体膜(本実施形態においては、銅製の膜)を形成することにより得られる。したがって、スルービア43,44は、導体製の筒状部材である。
【0029】
ただし、スルービア43,44は、前記貫通孔の内部に導体を充填することによっても得られる。この場合、スルービア43,44は、導体製の柱状部材である。
【0030】
図2の(c)、
図3の(a)、及び、
図3の(b)に示すように、底面131は、略平坦(本実施形態においては平坦)である。
【0031】
図2の(b)に示すように、主面12を平面視した場合、スルービア43,44が設けられている領域は、凹部13が設けられている領域に包含されている。より詳しくは、主面12を平面視した場合、スルービア43,44の各々は、それぞれ、コプレナパターン22,23に包含されている領域のうち信号線パターン21に近接する領域(換言すれば、信号線パターン21側の領域)に設けられている。したがって、スルービア43,44は、コプレナパターン22,23と、地導体パターン42のうち凹部13の底面131に設けられた部分とを短絡する。また、スルービア43,44は、信号線パターン21を挟み込むように設けられている。
(二導体線路)
二導体線路30は、
図1に示すように、スルービア31と、スルービア32,33と、を備えている。スルービア31は、第1のスルービアの一例であり、スルービア32,33は、地導体の一例であり、且つ、1又は複数の第2のスルービアの一例である。
スルービア31、及び、スルービア32,33は、主面11から主面12まで基板10を貫通する貫通孔の内壁に、導体膜(本実施形態においては、銅製の膜)を形成することにより得られる。したがって、スルービア31、及び、スルービア32,33は、導体製の筒状部材である。
【0032】
ただし、スルービア31、及び、スルービア32,33は、前記貫通孔の内部に導体を充填することによっても得られる。この場合、スルービア31、及び、スルービア32,33は、導体製の柱状部材である。
【0033】
本実施形態においては、1又は複数の第2のスルービアの一例として2本のスルービア32,33を用いている。ただし、スルービア32,33のうち何れか1本を省略してもよいし、3本以上のスルービアを用いて第2のスルービアを構成することもできる。ただし、スルービア31と第2のスルービアとの間に生じるキャパシタンスの分布における対称性を高めるためには、第2のスルービアをできるだけ高い対称性を有するように配置することが好ましい。
【0034】
(第2のコプレナ線路)
コプレナ線路40は、
図2の(b)に示すように、主面12に設けられている。コプレナ線路40は、信号線パターン41と、地導体パターン42の一部により構成されている第2のコプレナパターンとを備えている。
信号線パターン41は、第2の信号線パターンの一例である。信号線パターン41は、一端である端部411の近傍がスルービア31と導通している。信号線パターン41は、信号線パターン21と略平行(本実施形態においては平行)であり、且つ、信号線パターン21から遠ざかる方向(
図2の(a)及び(b)においては、x軸正方向)に延伸されている。
地導体パターン42は、信号線パターン41の長辺(
図2に図示した座標系においてx軸方向に沿った辺)と、端部411と、を三方向から取り囲むように設けられている。上述したように、地導体パターン42は、主面12の一部と、凹部13の表面(底面131および側面)とを覆うように設けられた導体パターンである(
図2の(b)及び
図3の(a)参照)。地導体パターン42は、信号線パターン41を、挟み込むことに加えて3方から取り囲むようにパターニングされている。このように構成された地導体パターン42の一部分は、第2のコプレナパターンの一例である。
【0035】
伝送線路1においては、信号線パターン41と地導体パターン42との間隔D6は、端部411において最も広くなるように構成されている。すなわち、信号線パターン41の長辺における間隔D6は、端部411における間隔D6よりも狭い。なお、
図2の(b)においては、端部411における間隔D6を図示している。
【0036】
なお、信号線パターン41、及び、地導体パターン42を構成する導体膜については、コプレナ線路20の項における説明と同じなので、ここでは、その説明を省略する。
【0037】
(スルービア及び凹部の配置)
伝送線路1においては、
図2の(a)に示すように、スルービア31とスルービア32との最短距離である距離D1は、スルービア31と凹部13との最短距離である距離D2よりも短い構成を採用している。距離D2は、主面12をz軸負方向側から平面視した場合に、スルービア31と凹部13の側面132との間隔である。なお、伝送線路1は、
図2の(a)に示すA-A’線及びz軸に沿った面を対称面として、鏡映対称となるように構成されている。したがって、伝送線路1において、スルービア31とスルービア33との最短距離は、距離D1と等しく、距離D2よりも短い。
また、伝送線路1においては、
図2の(b)に示すように、スルービア32,33同士の最短距離である距離D4と、スルービア43,44同士の最短距離である距離D5とは、異なっている構成を採用している。
図2の(b)に示す伝送線路1においては、距離D4が距離D5よりもわずかに大きい。
また、
図2の(a)に示すように、主面11を平面視した場合において、伝送線路1では、スルービア31と凹部13との最短距離である距離D2と、スルービア32,33の各々と、凹部13との最短距離である距離D3とが等しい構成を採用している。ただし、距離D2と、距離D3とは、異なっていてもよい。
図2の(a)に示したC-C’線であって、x軸方向と平行なC-C’線上において、スルービア32の中心を移動させることによって、距離D1を変化させることができる。距離D1は、コプレナ線路20と二導体線路30とのインピーダンス整合を図る場合の設計パラメータの1つである。距離D1を設計パラメータとしてコプレナ線路20と二導体線路30とのインピーダンス整合を図る場合、多くの場合、距離D2と距離D3とは異なる値を取る。同様に、スルービア33においても、
図2の(a)に示すD-D’線上において中心を移動させることによって、スルービア31とスルービア33との最短距離を変化させることができる。
【0038】
〔第1の変形例〕
伝送線路1の第1の変形例である伝送線路1Aについて、
図4を参照して説明する。
図4の(a)は、伝送線路1Aの背面図であり、
図4の(b)は、伝送線路1Aの底面図である。なお、説明の便宜上、伝送線路1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0039】
図2の(b)及び(c)に示す伝送線路1では、信号線パターン21の一部と、コプレナパターン22,23の各々の一部と、重なる領域に1つの凹部13が形成されている。
【0040】
それに対して、伝送線路1Aでは、
図4の(a)及び(b)に示すように、主面12のうち少なくとも信号線パターン21と重なる領域に、3つの凹部131A,132A,133Aからなる凹部群13Aが設けられている。凹部131A,132A,133Aの各々は、それぞれ、信号線パターン21、コプレナパターン22、及び、コプレナパターン23の一部と重なる領域に設けられている。なお、本変形例においては、主面12及び凹部群13Aの表面に形成されている導体膜を地導体パターン42Aと称する。また、凹部群13Aを構成する凹部131A,132A,133Aの各々の表面に形成されている導体膜を、それぞれ、地導体パターン421,422,423と称する。
【0041】
このように、本発明の一態様において、少なくとも信号線パターン21と重なる領域に設けられた凹部は、1つの凹部13であってもよいし、3つに分割された凹部群13Aであってもよい。また、凹部群13Aを構成する凹部の数は、3つに限定されず、適宜設定することができる。例えば、凹部群13Aは、レーザ加工機を用いて、レーザ光を石英ガラスに照射することにより石英ガラスを改質(レーザ改質)し、その改質された部分の石英ガラスをウェットエッチングによりエッチングすることにより形成することができる。この場合には、レーザ加工に用いるレーザ光のスキャン経路及びウェットエッチング時のエッチング時間に応じて各凹部の幅及び数を定めればよい。
【0042】
また、伝送線路1Aにおいては、凹部131A,132A,133Aの各々の端部であって、二導体線路30側の端部は、主面12を平面視した場合に、半円状になるように構成されている。これは、レーザ改質とウェットエッチングとを用いて凹部群13Aを形成しているためである。
【0043】
また、伝送線路1Aにおいて、各凹部131A,132A,133Aの側面であって、スルービア31及びスルービア32,33に近接する側面は、スルービア31と近接する部分(具体的には、凹部131Aの端部における側面)がスルービア32,33と近接する部分(具体的には、凹部132A,133Aの端部における側面)よりも引っ込んでいる(x軸負方向側に位置する)構成が採用されている。
【0044】
なお、伝送線路1Aにおいては、伝送線路1と同様に、スルービア31の両脇に、スルービア31を挟み込むスルービア32,33を設けることによって二導体線路30を構成している。ただし、スルービア32,33を設ける代わりに、凹部群13Aを構成する各凹部のうち凹部132A,133Aの長さをx軸正方向に向かって延伸し、スルービア31と、凹部132A,133Aの側壁に設けられた地導体パターン42Aとにより二導体線路を構成することもできる。なお、この構成は、後述する伝送線路1Bにも適用することができる。
【0045】
〔第2の変形例〕
伝送線路1の第2の変形例であり、伝送線路1Aの一変形例でもある伝送線路1Bについて、
図5を参照して説明する。
図5は、伝送線路1Bの底面図である。伝送線路1Bは、
図4に示す伝送線路1Aをベースにしている。なお、説明の便宜上、伝送線路1及び伝送線路1Aにて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0046】
伝送線路1Bは、伝送線路1及び伝送線路1Aと比較して、コプレナ線路40の代わりに、入出力端子40Bを採用している。本変形例では、入出力端子40Bについて説明する。なお、伝送線路1Bが備えている基板10Bは、伝送線路1が備えている基板10と同様に、石英ガラス製の板状部材である。本変形例では、基板10の主面12に対応する主面を主面12Bと称する。
【0047】
伝送線路1Bにおいては、主面12Bを平面視した場合に、主面12のうちスルービア31を包含する領域に、信号端子として機能する導体パッチ41Bが設けられている(
図5参照)。導体パッチ41Bは、地導体パターン42とは離間している。導体パッチ41Bは、
図2の(c)あるいは
図4の(b)に図示されている信号線パターン41の長さを短く構成することによって得られる。
【0048】
このように、導体パッチ41Bがスルービア31を包含する領域にのみ設けられている場合であっても、パッドオンビアと呼ばれる技術を用いることにより、実装基板の一方の主面に設けられた入出力端子に、入出力端子40Bを接続することができる。
【0049】
〔第3の変形例〕
伝送線路1の第3の変形例である伝送線路1Cについて、
図6を参照して説明する。
図6は、伝送線路1Cの底面図である。伝送線路1Cは、
図1~
図3に示す伝送線路1をベースにしている。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0050】
伝送線路1Cは、伝送線路1と比較して、スルービア32,33を省略したうえで、スルービア31と凹部13の側面132との距離D2を狭めている。伝送線路1において、二導体線路30は、スルービア31と、スルービア32,33と、を備えている。一方、伝送線路1Cにおいて、二導体線路30Cは、スルービア31と、地導体パターン42を構成する一部の導体膜であって、凹部13の側面132に設けられた導体膜と、を備えている。凹部13の側面132に設けられた導体膜は、第2の地導体の一例である。
【0051】
以上のように、伝送線路1Cは、基板10Cと、コプレナ線路20と、二導体線路30Cと、コプレナ線路40と、を備えている。なお、伝送線路1Cが備えている基板10Cは、伝送線路1が備えている基板10と同様に、石英ガラス製の板状部材である。本変形例では、基板10の主面12に対応する主面を主面12Cと称する。
【0052】
コプレナ線路20は、基板10Cに設けられている。コプレナ線路20は、主面12Cと逆側の主面(伝送線路1における主面11に対応する主面)に設けられた信号線パターン21と、信号線パターン21を挟み込むコプレナパターン22,23(第1のコプレナパターンの一例)と、と、を備えている。
【0053】
伝送線路1Cにおいては、コプレナパターン22,23は、その長さが信号線パターン21の長さと等しくなるように構成されている。すなわち、コプレナパターン22,23の先端は、信号線パターン21と同じように、スルービア31を通り越している。ただし、伝送線路1Cにおいて、コプレナパターン22,23の長さは、信号線パターン21の長さよりも短くてもよい。この場合、コプレナパターン22,23の先端は、凹部13の側面132よりもスルービア31側に位置していることが好ましい。
【0054】
二導体線路30Cは、基板10Cに設けられている。二導体線路30Cは、信号線パターン21と導通し、且つ、主面12Cと逆側の主面から主面12Cまで貫通するスルービア31と、第2の地導体と、を備えている。
凹部13は、主面12Cを平面視した場合に、主面12Cのうち、少なくとも信号線パターン21と重なる領域に設けられている。本変形例において、凹部13は、主面12Cを平面視した場合に、コプレナパターン22,23と重なる領域にも設けられている。
【0055】
伝送線路1Cにおいて、信号線パターン21と、コプレナパターン22,23と、地導体パターン42のうち、凹部13の底面131に設けられた部分とで、グランデッドコプレナ線路を構成する。また、伝送線路1Cにおいて、地導体は、地導体パターン42のうち、凹部13の側面132に設けられた部分である。
【0056】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係る伝送線路は、誘電体製の基板と、前記基板に設けられた第1のコプレナ線路であって、前記基板の一方の主面に設けられた第1の信号線パターンと、前記第1の信号線パターンを挟み込む第1のコプレナパターンと、を備えた第1のコプレナ線路と、前記基板に設けられた二導体線路であって、前記第1の信号線パターンと導通し、且つ、前記基板の前記一方の主面から他方の主面まで貫通する第1のスルービアと、地導体と、を備えた二導体線路と、を備えている。
【0058】
上記の構成によれば、基板の一対の主面間において高周波を伝送させるために、第1のスルービアと地導体とを備えた二導体線路を用いることができる。したがって、特許文献1のフィルタ装置が備えている入出力構造と比較して、反射損失を抑制することができる。
【0059】
また、本発明の第2の態様に係る伝送線路においては、上述した第1の態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記基板の前記他方の主面のうち、少なくとも前記第1の信号線パターンと重なる領域には凹部が形成されており、前記基板の他方の主面及び前記凹部の表面に設けられ、且つ、前記第1の信号線パターンと対向する地導体パターンを更に備え、前記凹部の表面に設けられた前記地導体パターンは、前記第1のコプレナ線路とともにグランデッドコプレナ線路を構成し、前記地導体は、前記一方の主面から前記他方の主面まで貫通する1又は複数の第2のスルービアであって、前記第1のコプレナパターンと前記他方の主面に形成された前記地導体パターンとを短絡する1又は複数の第2のスルービアであり、前記第1のスルービアと、前記1又は複数の第2のスルービアとの最短距離は、前記第1のスルービアと、前記凹部との最短距離よりも短い、構成が採用されている。
【0060】
上記の構成によれば、二導体線路を設計するときに、第1のスルービアと第2のスルービアとの間に生じるキャパシタンスを主に考慮すればよい。第1のスルービアと凹部の表面に形成された地導体パターンとの間に生じ得るキャパシタンスは、第1のスルービアと第2のスルービアとの間に生じるキャパシタンスと比べて小さいためである。したがって、伝送線路を容易に設計することができる。
【0061】
また、本発明の第3の態様に係る伝送線路においては、上述した第2の態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記第1のコプレナパターンと、前記地導体パターンのうち前記凹部の底面に設けられた部分とを短絡する一対の第3のスルービアであって、前記第1の信号線パターンを挟み込むように設けられた一対の第3のスルービアを更に備えている、構成が採用されている。
【0062】
本発明の一態様に係る伝送線路においては、第1の信号線パターンと第1のコプレナパターン及び地導体パターンとが並走するグランデッドコプレナ線路と、第1のスルービアと第2のスルービアとが並走する二導体線路との間に、第1の信号線パターンと、第1のコプレナパターンとが並走するコプレナ線路が介在する。上記の構成によれば、一対の第3のスルービアが地導体パターンと第1のコプレナパターンとを短絡することができるので、グランデッドコプレナ線路における導波モードと、コプレナ線路における導波モードとをスムーズに変換することができる。したがって、反射損失を更に抑制することができる。
【0063】
また、本発明の第4の態様に係る伝送線路においては、上述した第3の態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記一対の第3のスルービアの各々は、それぞれ、平面視において、前記第1のコプレナパターンに包含される領域のうち前記第1の信号線パターンに近接する領域に設けられている、構成が採用されている。
【0064】
第1のコプレナ線路を高周波が伝搬する場合、高周波に起因する電流分布は、第1の信号線パターンと、第1のコプレナパターンとが対向し且つ近接するエッジ部分において高くなりやすい。上記の構成によれば、第1のコプレナパターンに包含される領域のうち、電流分布が高い領域である第1の信号線パターンに近接する領域において第1のコプレナパターンと地導体パターンとを短絡することができるので、第1のコプレナパターンにおける電流分布と、一対の第3のスルービアにおける電流分布とを近づけることができる。したがって、グランデッドコプレナ線路と第1のコプレナ線路との境界におけるインピーダンスの連続性を高めることができる。
【0065】
また、本発明の第5の態様に係る伝送線路においては、上述した第2の態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記凹部は、平面視において、前記基板の前記他方の主面のうち、前記第1の信号線パターン及び前記第1のコプレナパターンと重なる領域に形成されており、前記1又は複数の第2のスルービアは、前記第1のスルービアを挟み込むように設けられた一対の第2のスルービアであり、前記第1のスルービアと前記凹部との最短距離と、前記一対の第2のスルービアと前記凹部との最短距離とは、異なっている、構成が採用されている。
【0066】
グランデッドコプレナ線路のインピーダンスと、二導体線路のインピーダンスとをできるだけ整合させる場合に、第4の態様のように一対の第2のスルービア同士の最短距離を調整してもよいし、本態様のように前記一対の第2のスルービアと前記凹部との最短距離を調整してもよい。上記の構成によれば、第4の態様の場合と同様に、グランデッドコプレナ線路と二導体線路とにおけるインピーダンス整合を高めることができ、結果として反射損失を抑制することができる。
【0067】
また、本発明の第6の態様に係る伝送線路においては、上述した第2の態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記凹部は、平面視において、前記基板の前記他方の主面のうち、前記第1の信号線パターン及び前記第1のコプレナパターンと重なる領域に形成されており、前記1又は複数の第2のスルービアは、前記第1のスルービアを挟み込むように設けられた一対の第2のスルービアであり、前記凹部の側面であって、前記第1のスルービア及び前記一対の第2のスルービアに近接する側面は、前記第1のスルービアと近接する部分が前記一対の第2のスルービアと近接する部分よりも引っ込んでいる、構成が採用されている。
【0068】
上記の構成によれば、伝送線路の全長(第1の信号線パターンに沿った方向の長さ)を短くすることができる。
【0069】
また、本発明の第7の態様に係る伝送線路においては、上述した第2の態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記基板の前記他方の主面のうち、少なくとも前記第1の信号線パターンと重なる領域には凹部が形成されており、前記地導体パターンが、前記凹部の表面に設けられ、前記地導体は、前記地導体パターンのうち、前記凹部の側面であって、前記第1のスルービアに近接する側面に設けられた部分である、構成が採用されている。
【0070】
上記の構成によれば、二導体線路を設計するときに、第1のスルービアと前記凹部の側面であって、前記第1のスルービアに近接する側面に設けられた部分との間に生じるキャパシタンスを主に考慮すればよい。したがって、伝送線路を容易に設計することができる。
【0071】
また、本発明の第8の態様に係る伝送線路においては、上述した第2の態様~第7の態様の何れか一態様に係る伝送線路の構成に加えて、平面視において、前記基板の前記他方の主面のうち、前記第1のスルービアを包含する領域には信号端子として機能する導体パッチであって、前記地導体パターンとは離間した導体パッチが設けられている、構成が採用されている。
【0072】
上記の構成によれば、実装基板に伝送線路を実装する場合に、他方の主面に、信号線が第1のスルービアと導通する二導体線路(例えばコプレナ線路)を更に設けなくてよい。したがって、伝送線路を構成する基板のサイズを小型化することができる。
【0073】
また、本発明の第9の態様に係る伝送線路においては、上述した第2の態様~第7の態様の何れか一態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記他方の主面に設けられた第2のコプレナ線路であって、前記第1のスルービアと導通している第2の信号線パターン及び前記第2の信号線パターンを挟み込む第2のコプレナパターンを備えたコプレナ線路を更に備えている、構成が採用されている。
【0074】
上記の構成によれば、前記第1のスルービアと導通している第2の信号線パターンを他方の主面内において配線する場合に生じ得る反射損失を抑制することができる。
【0075】
また、本発明の第10の態様に係る伝送線路においては、上述した第9の態様に係る伝送線路の構成に加えて、前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンは、前記第1のコプレナ線路の前記第1の信号線パターンと略平行であり、且つ、前記第1のコプレナ線路の前記第1の信号線パターンから遠ざかる方向に延伸されており、前記第2のコプレナパターンは、前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンを少なくとも3方から取り囲んでおり、前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンと前記第2のコプレナパターンとの間隔は、前記第2のコプレナ線路の前記第2の信号線パターンの一方の端部であって、前記凹部側の端部において最も広い、構成が採用されている。
【0076】
上記の構成によれば、二導体線路と第2のコプレナ線路とにおけるインピーダンス整合を図りやすくなるので、反射損失を更に抑制しやすくなる。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C 伝送線路
10,10B,10C 基板
11 主面(一方の主面)
12,12B,12C 主面(他方の主面)
13 凹部
131 底面
132 側面
13A 凹部群
131A,132A,133A 凹部
20 コプレナ線路(一部がグランデッドコプレナ線路)
21 信号線パターン
22,23 コプレナパターン(第1のコプレナパターン)
30 二導体線路
31 スルービア(第1のスルービア)
32,33 スルービア(第2のスルービア、第2の地導体の一例)
40 コプレナ線路
41 信号線パターン
42 地導体パターン(第2のコプレナパターンを兼ねる)
43,44 スルービア(第3のスルービア)