(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】経口用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241204BHJP
A23F 5/02 20060101ALI20241204BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241204BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20241204BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23F5/02
A23L5/00 H
A23L27/20 D
A23L27/20 F
A23L27/20 G
(21)【出願番号】P 2024060602
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2023150686の分割
【原出願日】2023-09-19
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2022149483
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 紘太朗
(72)【発明者】
【氏名】大木 余里子
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0345652(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102599463(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103300336(CN,A)
【文献】特開2006-025706(JP,A)
【文献】特開2006-020526(JP,A)
【文献】特開2016-093206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0127719(US,A1)
【文献】特開2019-149968(JP,A)
【文献】特開2019-170374(JP,A)
【文献】特開2014-155481(JP,A)
【文献】LASEKAN O. et al.,“Characterization of the key aroma compounds in three types of bagels by means of the sensomics approach”,BMC Chemistry,2021年03月13日,Vol. 15,DOI: 10.1186/s13065-021-00743-4
【文献】LEE KG et al.,“Analysis of volatile components isolated from Hawaiian green coffee beans (Coffea arabica L.)”,Flavour and Fragrance Journal,2002年04月15日,Vol. 17, No. 5,p.349-351,DOI: 10.1002/ffj.1067
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00 - 27/40;27/60
A23L 5/00 - 5/30
A23F 3/00 - 5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/AGRICOLA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)分岐脂肪酸 0.00005~40質量ppm、及び
(B)ピラジン類 0.004~60質量ppm
を含み、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.015以上であり、
成分(A)がイソ酪酸、2-メチル酪酸及びイソ吉草酸から選択される1又は2以上であり、
成分(B)
がメトキシメチルピラジ
ンである、
経口用組成物(但し、L値が30未満の焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆を原料として用いた経口用組成物を除く)。
【請求項2】
次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)分岐脂肪酸 0.00005~40質量ppm、
(B)ピラジン類 0.004~60質量ppm、及び
(C)4-ビニルグラヤコール
を含み、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.015以上であり、
成分(A)及び成分(C)の総量と成分(B)との質量比[(B)/[(A)+(C)]]が0.01以上であり、
成分(A)がイソ酪酸、2-メチル酪酸及びイソ吉草酸から選択される1又は2以上であり、
成分(B)
がメトキシメチルピラジ
ンである、
経口用組成物(但し、L値が30未満の焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆を原料として用いた経口用組成物を除く )。
【請求項3】
成分(B)と成分(C)との質量比[(B)/(C)]が0.03~8である、請求項2記載の経口用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品の美味しさは、味と香りが一体となって感じられるため、香りは飲食品の嗜好性
を決する上で重要な要素である。そこで、従来、飲食品の風味を改善する技術が種々検討
されている。例えば、テオブロミンに対してピラジン類を一定量含有させることにより、
カカオバターを含む植物油脂にピラジン類が分散し、従来のカカオ原料に対して濃厚なカ
カオ風味を付与でき、更にイソ吉草酸をピラジン類とともに含有させることで、従来のカ
カオ原料に対して少量でも濃厚なカカオ風味を付与できることが報告されている(特許文
献1)。また、従来果実様香気物質と考えられていたワインラクトンを、コーヒー、ココ
ア、ほうじ茶、番茶、玄米茶、麦茶、焙煎玄米、ハトムギ茶、そば茶、ブラックマテ茶等
の焙煎嗜好飲料に微量で添加することで、風味の余韻を付与できるとの報告がある(特許
文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-156433号公報
【文献】特開2006-20526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、イソ吉草酸がピラジン類とともにカカオ風味の増強に寄与する成分と
して記載されている。しかし、イソ吉草酸等の分岐脂肪酸は、通常不快臭の原因物質とし
て認識されており、分岐脂肪酸を含有する経口用組成物を摂取したときや摂取後に独特な
臭いによって不快感ないし嫌悪感を伴う。
本発明の課題は、分岐脂肪酸の不快臭が抑制された経口用組成物を提供することにある
。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、分岐脂肪酸に対してピラジン
類を一定以上の量比で含有させることにより、分岐脂肪酸の不快臭を抑制できることを見
出した。更に不快臭の原因物質として知られている4-ビニルグアイアコールを含有する
場合であっても、分岐脂肪酸と4-ビニルグアイアコールとの総量に対してピラジン類を
一定以上の量比で含有させることにより、分岐脂肪酸と4-ビニルグアイアコールの不快
臭を同時に抑制できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔10〕を提供するものである。
〔1〕次の成分(A)及び(B);
(A)分岐脂肪酸 0.00005~40質量ppm、及び
(B)ピラジン類
を含み、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.015以上である、
経口用組成物。
〔2〕成分(A)が、イソ酪酸、2-メチル酪酸及びイソ吉草酸から選択される1又は2
以上である、前記〔1〕記載の経口用組成物。
〔3〕成分(B)が、ピラジン、メチルピラジン、エチルピラジン、ジメチルピラジン、
トリメチルピラジン、テトラメチルピラジン、エチルメチルピラジン、イソブチルメチル
ピラジン、エチルジメチルピラジン、ジメチルエチルピラジン、ジエチルメチルピラジン
、アセチルピラジン、メトキシメチルピラジン及びイソブチルメトキシピラジンから選択
される1又は2以上である、前記〔1〕又は〔2〕記載の経口用組成物。
〔4〕成分(B)の含有量が、0.004~60質量ppmである、前記〔1〕~〔3〕
のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔5〕更に、成分(C)として4-ビニルグラヤコールを含み、成分(A)及び成分(C
)の総量と成分(B)との質量比[(B)/{(A)+(C)}]が0.01以上である、前
記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔6〕成分(B)と成分(C)との質量比[(B)/(C)]が0.03~8である、前記
〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔7〕固体経口用組成物である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一に記載の経口用組成物
。
〔8〕液体経口用組成物である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一に記載の経口用組成物
。
〔9〕ピラジン類を有効成分とする、分岐脂肪酸又は4-ビニルグラヤコールの不快臭抑
制剤。
〔10〕(A)分岐脂肪酸に対して(B)ピラジン類を、0.015以上の質量比[(B
)/(A)]で共存させる、分岐脂肪酸の不快臭抑制方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分岐脂肪酸の不快臭が抑制された経口用組成物を提供することができ
る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔経口用組成物〕
本発明の経口用組成物は、成分(A)として分岐脂肪酸を含有する。ここで、本明細書
において「分岐脂肪酸」とは、分岐鎖を有する脂肪酸をいう。
成分(A)は、不快臭を有すれば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれでも構わないが
、本発明の効果を享受しやすい点で、短鎖分岐飽和脂肪酸が好ましい。ここで、本明細書
において「短鎖分岐飽和脂肪酸」とは、炭素数が7以下である分岐鎖状の飽和脂肪酸をい
う。短鎖分岐飽和脂肪酸の炭素数は、5以下が好ましい。
【0009】
成分(A)の具体例としては、例えば、イソ酪酸、2-メチル酪酸、イソ吉草酸を挙げ
ることができる。成分(A)は、1種又は2種以上を含有することができる。なお、イソ
酪酸、2-メチル酪酸及びイソ吉草酸は、いわゆる納豆臭の原因物質として知られており
、更にイソ吉草酸は、汗臭、足臭、加齢臭等の不快感を伴う刺激臭があり、生乾き臭や足
の裏の臭いの原因物質であることが知られている。
中でも、成分(A)としては、本発明の効果を享受しやすい点で、イソ酪酸、2-メチ
ル酪酸及びイソ吉草酸から選択される1又は2以上が好ましく、イソ吉草酸が更に好まし
い。
【0010】
成分(A)としては、市販の試薬を用いてもよいが、成分(A)を含む植物の抽出物を
使用することもできる。なお、成分(A)として植物抽出物を用いる場合、植物抽出物の
抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、植
物抽出物は、濃縮物でも、乾燥物でもよく、純度を高めた精製物でも構わない。濃縮、乾
燥及び精製の各方法は、公知の方法を採用すればよい。
植物としては、成分(A)が含まれていれば特に限定されないが、生コーヒー豆及び浅
焙煎コーヒー豆から選択される1以上が好ましく、生コーヒー豆が更に好ましい。ここで
、本明細書において「浅焙煎コーヒー豆」とは、L値が30以上60以下の焙煎コーヒー
豆をいう。このようなL値の浅焙煎コーヒー豆は、コーヒー飲料に特有の焙煎香を有しな
い。浅焙煎コーヒー豆のL値は、成分(A)の不快臭抑制、生理効果の観点から、好まし
くは32以上であり、より好ましくは34以上であり、更に好ましくは36以上であり、
より更に好ましくは38以上であり、より更に好ましくは40以上である。なお、本明細
書において「L値」とは、黒をL値0とし、白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明
度を色差計で測定したものである。コーヒー豆の豆種及び産地は、特に限定されない。
【0011】
本発明の経口用組成物中の成分(A)の含有量は、0.00005~40質量ppmで
あるが、分岐脂肪酸の不快臭抑制の効果をより享受できる観点から、0.0001質量p
pm以上が好ましく、0.004質量ppm以上がより好ましく、0.008質量ppm
以上が更に好ましく、0.3質量ppm以上がより更に好ましく、また後述の成分(B)
ピラジン類のケミカル臭抑制の観点から、25質量ppm以下が好ましく、15質量pp
m以下がより好ましく、8質量ppm以下が更に好ましく、1質量ppm以下がより更に
好ましい。そして、成分(A)の含有量は、本発明の経口用組成物中に、好ましくは0.
0001~25質量ppmであり、より好ましくは0.0004~15質量ppmであり
、更に好ましくは0.0008~8質量ppmであり、より更に好ましくは0.3~1質
量ppmである。なお、成分(A)の含有量は、通常知られている分析法のうち測定試料
の状況に適した分析法、例えば、GC/MS法又はHPLC法により分析することが可能
であり、第三者機関に分析を依頼することもできる。GC/MS法による分析は、例えば
、財団法人日本食品分析センターに、またHPLC法による分析は、例えば、(株)島津
テクノリサーチに、それぞれ依頼することができる。
【0012】
本発明の経口用組成物は、成分(B)としてピラジン類を含有する。成分(B)は成分
(A)の不快臭抑制に効果的であり、成分(A)に対して特定の質量比とすることで不快
臭を抑制することができる。ここで、本明細書において「ピラジン類」とは、分子内にピ
ラジン構造を有する化合物をいう。ピラジン類は、例えば、ナッツの香ばしい甘い香りを
構成する香気成分の一つとして知られている。
成分(B)としては、例えば、ピラジン、メチルピラジン、エチルピラジン、ジメチル
ピラジン、トリメチルピラジン、テトラメチルピラジン、エチルメチルピラジン、イソブ
チルメチルピラジン、エチルジメチルピラジン、ジメチルエチルピラジン、ジエチルメチ
ルピラジン、アセチルピラジン、メトキシメチルピラジン、イソブチルメトキシピラジン
を挙げることができる。成分(B)は、1種又は2種以上を含有することができる。
【0013】
中でも、成分(B)としては、分岐脂肪酸の不快臭抑制の観点から、ピラジン、2-メ
チルピラジン、2-エチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラ
ジン、2,6-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、2,3,5,6-
テトラメチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラ
ジン、2-エチル-6-メチルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-イソブ
チル-3-メチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2,3-ジエチル
-5-メチルピラジン、2-アセチルピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン及び
2-イソブチル-3-メトキシピラジンから選択される1又は2以上が好ましく、ピラジ
ン、2-メチルピラジン、2-エチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2-アセチ
ルピラジン及び2-メトキシ-3-メチルピラジンから選択される1又は2以上が更に好
ましく、ピラジン類のケミカル臭抑制の観点から、2-メトキシ-3-メチルピラジンが
より更に好ましい。
【0014】
また、成分(B)は、化学合成品でも、天然物由来品でも構わない。天然物由来品とし
ては、例えば、天然物から単離されたピラジン類を使用することができる。
【0015】
本発明の経口用組成物は、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.
015以上であるが、分岐脂肪酸の不快臭抑制の観点から、0.08以上が好ましく、0
.15以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましい。また、かかる質量比[(B)/
(A)]は、ピラジン類のケミカル臭抑制の観点から、20以下が好ましく、12以下が
より好ましく、6以下が更に好ましく、0.8以下がより更に好ましい。そして、かかる
質量比[(B)/(A)]は、好ましくは0.015~20であり、より好ましくは0.0
15~12であり、更に好ましくは0.08~6であり、より更に好ましくは0.15~
6であり、より更に好ましくは0.4~0.8である。
【0016】
本発明の経口用組成物中の成分(B)の含有量は、分岐脂肪酸の不快臭抑制の観点から
、0.004質量ppm以上が好ましく、0.008質量ppm以上がより好ましく、0
.08質量ppm以上が更に好ましく、0.18質量ppm以上がより更に好ましく、0
.22質量ppm以上がより更に好ましく、またピラジン類のケミカル臭抑制の観点から
、60質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましく、6質量ppm以
下が更に好ましく、4質量ppm以下がより更に好ましく、0.4質量ppm以下がより
更に好ましい。そして、成分(B)の含有量は、本発明の経口用組成物中に、好ましくは
0.004~60質量ppmであり、より好ましくは0.008~10質量ppmであり
、更に好ましくは0.08~6質量ppmであり、より更に好ましくは0.18~4質量
ppmであり、より更に好ましくは0.22~0.4質量ppmである。なお、成分(B
)の含有量は、通常知られている分析法のうち測定試料の状況に適した分析法、例えば、
GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙
げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、
装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処
理を施してもよい。
【0017】
本発明の経口用組成物は、成分(C)として4-ビニルグアヤコールを含有しても良い
。4-ビニルグアヤコールは、清酒において煙臭、薬品臭又は香辛料臭といった異臭物質
としても知られているが、本発明者らは、分岐脂肪酸とともに4-ビニルグアヤコールを
含有する場合であっても、分岐脂肪酸及び4-ビニルグアヤコールに由来する不快臭を同
時に抑制できることを見出した。
【0018】
成分(C)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。原料に由来
するものとしては、生コーヒー豆及び浅焙煎コーヒー豆から選択される1以上が好ましく
、生コーヒー豆が更に好ましい。浅焙煎コーヒー豆の具体的態様は、上記において説明し
たとおりである。
【0019】
本発明の経口用組成物は、分岐脂肪酸及び4-ビニルグアヤコールの不快臭を同時に抑
制する観点から、成分(A)及び成分(C)の総量と成分(B)との質量比[(B)/{(
A)+(C)}]が、0.01以上であることが好ましく、0.02以上がより好ましく、
0.05以上が更に好ましく、0.5以上がより更に好ましい。また、かかる質量比[(
B)/{(A)+(C)}]は、ピラジン類のケミカル臭抑制の観点から、5以下が好まし
く、4以下がより好ましく、2以下が更に好ましく、1以下がより更に好ましい。そして
、かかる質量比[(B)/{(A)+(C)}]は、好ましくは0.01~5であり、より好
ましくは0.02~4であり、更に好ましくは0.05~2であり、より更に好ましくは
0.5~1である。
【0020】
本発明の経口用組成物は、成分(B)と成分(C)との質量比[(B)/(C)]が、4
-ビニルグアヤコールの不快臭抑制の観点から、0.03以上が好ましく、0.6以上が
より好ましく、0.8以上が更に好ましい。また、かかる質量比[(B)/(C)]は、ピ
ラジン類のケミカル臭抑制の観点から、8以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以
下が更に好ましい。そして、かかる質量比[(B)/(C)]は、好ましくは0.03~8
であり、より好ましくは0.6~3であり、更に好ましくは0.8~2である。
【0021】
本発明の経口用組成物中の成分(C)の含有量は、4-ビニルグアヤコールの不快臭抑
制の観点から、0.1質量ppm以上が好ましく、0.8質量ppm以上がより好ましく
、また2質量ppm以下が好ましく、1.4質量ppm以下がより好ましい。そして、成
分(A)の含有量は、好ましくは0.1~2質量ppmであり、より好ましくは0.8~
1.4質量ppmである。なお、成分(C)の含有量は、通常知られている測定法のうち
測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法
により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。な
お、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能
に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施しても
よい。
【0022】
本発明の経口用組成物中の成分(A)と成分(C)との合計含有量[(A)+(C)]は
、本発明の効果を享受しやすいという観点から、0.5質量ppm以上が好ましく、1質
量ppm以上がより好ましい。また、かかる合計含有量[(A)+(C)]は、分岐脂肪酸
及び4-ビニルグアヤコールの不快臭を同時に抑制する観点から、50質量ppm以下が
好ましく、45質量ppm以下がより好ましい。そして、かかる合計含有量[(A)+(
C)]は、好ましくは0.5~50質量ppmであり、より好ましくは1~45質量pp
mである。
【0023】
本発明の経口用組成物は、成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が、本
発明の効果を享受しやすいという観点から、0.5以上が好ましく、1以上がより好まし
い。また、かかる質量比[(C)/(A)]は、ピラジン類のケミカル臭抑制の観点から、
4以下が好ましく、3以下がより好ましい。そして、かかる質量比[(C)/(A)]は、
好ましくは0.5~4であり、より好ましくは1~3である。
【0024】
本発明の経口用組成物は、所望により、甘味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタ
ミン、ミネラル、香料、果汁、植物エキス、エステル、色素、乳化剤、乳成分、ココアパ
ウダー、調味料、植物油脂、酸化防止剤、保存料、pH調整剤、ゲル化剤、担体等の添加
剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損な
わない範囲内で適宜設定することができる。
【0025】
本明細書において「経口用組成物」とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通
常の社会生活において専ら経口摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬
部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本発明の経口用組成物は、経口
的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,
栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する飲食品を幅広く含む
ものを意味する。
【0026】
本発明の経口用組成物は、常温(20℃±15℃)において、固体でも、液体でもよく
、適宜の形態を採り得る。本発明の経口用組成物の好適な態様としては、例えば、固体経
口用組成物、液体経口用組成物を挙げることができる。
【0027】
本発明の経口用組成物は、コーヒー飲料を除く経口用組成物に対して好ましく用いられ
る。コーヒー飲料は、焙煎コーヒー豆に特有の焙煎香を楽しむ飲料であり、当該焙煎香に
より分岐脂肪酸の不快臭がマスキングされているため、分岐脂肪酸の不快臭という課題が
生じにくいと考えられる。このようなコーヒー飲料は、通常、フルフリルメルカプタン(
以下、「成分(D)」と称する)の含有量が0.00006質量%以上であるため、本発
明の経口用組成物と物として明確に区別することもできる。即ち、本発明の経口用組成物
は、成分(D)の含有量が好ましくは0.00006質量%未満であり、より好ましくは
0.00003質量%未満であり、更に好ましくは0.00001質量%未満であり、よ
り更に好ましくは実質的に含有しない。ここで、本明細書において「実質的に含有しない
」とは、本発明の経口用組成物中に成分(D)が全く存在しないことのみならず、検出限
界未満の濃度であることも包含する概念である。なお、成分(D)の含有量は、通常知ら
れている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、
例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の
方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥
したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じ
て適宜処理を施してもよい。
【0028】
一方、コーヒー飲料は、通常、L値30未満の焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆を
原料として使用する。したがって、本発明の経口用組成物は、L値が、好ましくは30未
満、より好ましくは32未満、更に好ましくは34未満、より更により好ましくは36未
満、より更に好ましくは38未満、殊更に好ましくは40未満の焙煎コーヒー豆を含む焙
煎コーヒー豆を原料として用いた経口用組成物(例えば、コーヒー飲料)を包含しない概
念である。なお、コーヒー飲料中のコーヒー分の含有量は、内容量100g中にコーヒー
生豆換算で1g以上の焙煎コーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むものである
。ここで「生豆換算値」は、焙煎コーヒー豆1gが生コーヒー豆1.3gに相当するもの
とする(改訂新版・ソフトドリンクス、監修:全国清涼飲料工業会、発行:光琳 、平成
元年12月25日発行 421頁記載)。また、コーヒー飲料の種類は特に限定されない
が、例えば、令和元年8月19日に改正施行された「コーヒー飲料等の表示に関する公正
競争規約」の第2条で定義されるコーヒー飲料等、即ち「コーヒー」、「コーヒー飲料」
、「コーヒー入り清涼飲料」及び「コーヒー入り炭酸飲料」を挙げることができる。
【0029】
本発明の固体経口用組成物は、そのまま経口摂取可能な固形物とすることができる。そ
の形態としては、例えば、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状を挙げること
ができる。本発明の固体経口用組成物中の固形分量は、通常90質量%以上であり、好ま
しくは93質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは9
7質量%以上である。なお、かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であ
っても構わない。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料を105℃の電気恒
温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。また、本発明の固体経口
用組成物は、水分活性値(Aw)が、本発明の効果を享受する観点から、好ましくは0.
6以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0
.3以下である。なお、水分活性値(Aw)の下限値は特に限定されず、0であっても構
わない。ここで、本明細書において「水分活性値」は、20℃、60%RH(相対湿度)
にて水分活性計で測定される自由水の割合を意味する。水分活性計として、例えば、Pa
wkit(デカゴン社製)を使用することができる。
【0030】
本発明の固体経口用組成物としては、例えば、食品、医薬品、医薬部外品を挙げること
ができる。中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、固形食品が好ましく、粉末食品が
更に好ましい。
本発明の固体経口用組成物が固形食品である場合、例えば、飴、キャンディー、ガム、
チョコレート、クッキーパン等の菓子類;サプリメント等の健康・美容・栄養補助食品を
挙げることができる。
また、本発明の固体経口用組成物が医薬品、医薬部外品である場合、その剤型としては
、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤等が挙げられる。また
、錠剤とする場合には、割線を入れた分割錠とすることもできる。
中でも、固体経口用組成物としては、サプリメント、散剤、錠剤、顆粒剤が好ましい。
【0031】
本発明の固体経口用組成物は、固形形態とするために、必要に応じて許容される担体を
含有することができる。例えば、賦形剤(例えば、コーンスターチ(とうもろこし)、ば
れいしょ澱粉(じゃがいも)、かんしょ澱粉(サツマイモ)、タピオカ澱粉等のでんぷん
:デキストリン;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラ
チノース、トレハロース、パラチノース等の糖アルコール;乳糖;オリゴ糖;結晶セルロ
ース;軽質無水ケイ酸;リン酸水素カルシウム等)、結合剤(例えば、ゼラチン、アルフ
ァー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、硬化油等)
、崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリ
ウム、クロスポピドン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグ
ネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ
素等)、嬌味剤(例えば、ステビア等)、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、酸化防
止剤、保存剤、品質安定剤、希釈剤等の担体を挙げることができるが、不快臭を有しない
ものを選択して使用することが好ましい。例えば、賦形剤としては、不快臭を有しない点
で、デキストリン、マルチトール、乳糖が好適に使用される。
【0032】
また、本発明の固体経口用組成物は、インスタント飲料組成物としてもよい。ここで、
本明細書において「インスタント飲料組成物」とは、所定の用法にしたがい液体で希釈し
て還元飲料として経口摂取されるものをいう。液体は飲料に還元できれば特に限定されず
、例えば、水、炭酸水、牛乳、豆乳等が挙げられ、液体の温度は問わない。なお、希釈倍
率は、所定の用法にしたがえばよいが、通常30~800質量倍、好ましくは80~60
0質量倍である。
【0033】
本発明の固体経口用組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方
法を採り得る。例えば、成分(A)及び成分(B)、必要に応じて他の成分を、成分(A
)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が上記範囲内となるように混合して製造する
ことができる。成分(A)と成分(B)との混合順序は特に限定されず、一方を他方に添
加しても、両者を同時に添加してもよい。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法
を採用することができるが、混合装置を使用しても構わない。混合装置の混合方式は、容
器回転型でも、容器固定型でもよい。容器回転型として、例えば、水平円筒型、V型、ダ
ブルコーン型、立方体型等を採用することができる。また、容器固定型として、例えば、
リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、流動層型、フィリップスブレ
ンダ-等を採用することができる。
【0034】
また、本発明の固体経口用組成物は、公知の造粒法により造粒物としてもよい。造粒方
法としては、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒
、粉末被覆造粒等が挙げられる。なお、造粒条件は、造粒方法により適宜選択することが
できる。また、錠剤とする場合には、湿式打錠及び乾式打錠のいずれでもよく、公知の圧
縮成形機を使用することができる。
【0035】
本発明の固体経口用組成物は、包装体に充填することができる。包装体としては、例え
ば、ビン、缶、瓶、箱型容器、スティック型包装体、ピロー型包装体等を挙げることがで
きる。なお、本発明の固体経口用組成物を包装体に充填する際には、市販の充填機を使用
してもよい。本発明の固体経口用組成物は、例えば、1回摂取分を小分け包装することが
可能である。インスタント飲料組成物である場合には、例えば、瓶等に容器詰し飲用する
際にカップ1杯分をスプーン等で計量するもの、1杯分を収容したカップタイプ、カップ
1杯分毎に小分け包装したスティックタイプ等とすることができる。また、濃縮液状であ
る場合、例えば、カップ1杯分毎に小分け包装したポーションタイプの希釈飲料等とする
ことができる。
なお、容器内及び包材内は窒素ガスを充填してもよく、また包材は酸素透過性の低いも
のが品質維持の点で好ましい。
【0036】
本発明の液体経口用組成物は、常温(20℃±15℃)において流動性を有すれば、そ
の形態は特に限定されず、例えば、液体、濃縮液状、ゲル状、ゼリー状を挙げることがで
きる。
【0037】
本発明の液体経口用組成物の製品形態としては、例えば、RTD(レディ・トゥ・ドリ
ンク)型飲料組成物;ヨーグルト、加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、
マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及
び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;ドリンク剤等の健康・美容・栄養補助食品を
挙げることができる。ここで、本明細書において「RTD型飲料組成物」とは、希釈せず
にそのまま飲用可能な飲料をいう。
【0038】
中でも、液体経口用組成物としては、RTD型飲料組成物が好ましい。RTD型飲料組
成物の形態としては、例えば、液体、濃縮液状、ゲル状、ゼリー状を挙げることができる
。形態が濃縮液状、ゲル状、ゼリー状である場合、容器に備え付けられた吸い口やストロ
ーから飲料組成物を吸引できればよく、その固形分濃度は特に限定されない。
【0039】
RTD型飲料組成物のpH(20℃)は、風味の観点から、好ましくは3以上であり、
より好ましくは3.5以上であり、更に好ましくは4以上であり、また好ましくは7以下
であり、より好ましくは6.5以下であり、更に好ましくは6以下である。そして、かか
るpH(20℃)は、好ましくは3~7であり、より好ましくは3.5~6.5であり、
更に好ましくは4~6である。なお、pHは、20℃に温度調整をしてpHメータにより
測定するものとする。
【0040】
RTD型飲料組成物は、非アルコール飲料でも、アルコール飲料でもよい。ここで、本
明細書において「非アルコール飲料」とは、アルコール濃度が1v/v%未満のものをい
い、アルコールが全く含まれていない飲料、アルコール濃度が0.00v/v%である飲
料も包含される。なお、本明細書において「アルコール」とは特に明記しない限り、エタ
ノールを意味する。
非アルコール飲料としては、例えば、茶飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、乳飲料
、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、エンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、
ニアウォーター、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等を挙げることができる。
アルコール飲料としては、例えば、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー
、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等が挙げられる。
【0041】
RTD型飲料組成物は、容器詰でもよい。容器としては通常の包装容器であれば特に限
定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPE
Tボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等が挙げら
れる。
【0042】
RTD型飲料組成物が容器詰飲料組成物である場合、加熱殺菌済でもよい。加熱殺菌方
法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合
するものであれば特に限定されない。
【0043】
本発明の液体経口用組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方
法を採り得る。例えば、成分(A)及び成分(B)、必要に応じて他の成分を、成分(A
)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が上記範囲内となるように液体とともに混合
して製造することができる。成分(A)、成分(B)及び他の成分の混合順序は特に限定
されず、任意の順序で添加することができる。なお、液体としては、例えば、水、炭酸水
、牛乳、豆乳が挙げられ、液体の温度は問わない。
【0044】
また、本発明の固体経口用組成物及び液体経口用組成物から選択される1以上を、飲食
品に添加して最終製品としてもよい。飲食品への添加時期は、飲食品の製造前、製造中又
は製造後のみならず、喫食直前や喫食中でもよく、特に限定されない。
【0045】
〔分岐脂肪酸の不快臭抑制剤及び不快臭抑制方法〕
本発明の不快臭抑制剤及び不快臭抑制方法は、ピラジン類を有効成分とするものであり
、分岐脂肪酸の不快臭の抑制に専ら用いられる。なお、(A)分岐脂肪酸及び(B)ピラ
ジン類の具体的構成は、上記において説明したとおりである。
本発明の不快臭抑制剤及び不快臭抑制方法は、分岐脂肪酸とピラジン類とを共存させれ
ばよく、その場合、(A)分岐脂肪酸と(B)ピラジン類との質量比[(B)/(A)]を
上記範囲内に制御することが好ましい。
本発明の不快臭抑制剤は、4-ビニルグラヤコールの不快臭の抑制にも用いることがで
きる。この場合、4-ビニルグラヤコールとピラジン類とを共存させればよく、4-ビニ
ルグラヤコールの不快臭を効果的に抑制する観点から、(B)ピラジン類と(C)4-ビ
ニルグラヤコールとの質量比[(B)/(C)]を上記範囲内に制御することが好ましい。
【0046】
また、本発明の不快臭抑制剤は、分岐脂肪酸のみならず、分岐脂肪酸を含有する経口製
品に適用することができる。
経口製品としては、経口摂取可能なものであれば特に限定されず、液体でも、固体でも
よい。例えば、分岐脂肪酸を含有する、飲食品、医薬品又は医薬部外品等を挙げることが
できる。中でも、飲食品が好ましい。
飲食品としては、例えば、分岐脂肪酸を含有する固形食品、又は分岐脂肪酸を含有する
飲料若しくはインスタント飲料を挙げることができる。なお、飲食品は、飲食品の種類に
応じて、常法にしたがって製造することができる。
医薬品及び医薬部外品の剤型は特に限定されず、例えば、経口投与用製剤が挙げられ、
例えば、液剤、シロップ剤等の公知の剤型を採用することができる。また、製剤化の際は
、公知の添加剤を配合することができる。なお、医薬品及び医薬部外品は、常法にしたが
って製造することができる。
経口製品中の(A)分岐脂肪酸と(B)ピラジン類の各含有量、質量比[(B)/(A
)]については、上記において説明したとおりである。更に、経口製品には4-ビニルグ
ラヤコールが含まれていてもよく、(C)4-ビニルグラヤコールの含有量、質量比[(
B)/{(A)+(C)}]については、上記において説明したとおりである。
【0047】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の態様を更に開示する。
【0048】
<1>次の成分(A)及び(B);
(A)分岐脂肪酸 0.00005~40質量ppm、及び
(B)ピラジン類
を含み、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.015以上である、
固体経口用組成物。
【0049】
<2>次の成分(A)及び(B);
(A)分岐脂肪酸 0.00005~40質量ppm、及び
(B)ピラジン類
を含み、
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.015以上である、
液体経口用組成物。
【0050】
<3>成分(A)が、好ましくはイソ酪酸、2-メチル酪酸及びイソ吉草酸から選択され
る1又は2以上である、前記<1>又は<2>記載の経口用組成物。
<4>成分(A)が、好ましくはイソ吉草酸である、前記<1>又は<2>記載の経口用
組成物。
【0051】
<5>経口用組成物中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.0001質量ppm以上
、より好ましくは0.004質量ppm以上、更に好ましくは0.008質量ppm以上
、より更に好ましくは0.3質量ppm以上であり、また好ましくは25質量ppm以下
、より好ましくは15質量ppm以下、更に好ましくは8質量ppm以下、より更に好ま
しくは1質量ppm以下である、前記<1>~<4>のいずれか一に記載の経口用組成物
。
<6>経口用組成物中の成分(A)の含有量が、好ましくは0.0001~25質量pp
mであり、より好ましくは0.0004~15質量ppmであり、更に好ましくは0.0
008~8質量ppmであり、より更に好ましくは0.3~1質量ppmである、前記<
1>~<4>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0052】
<7>成分(B)が、好ましくはピラジン、メチルピラジン、エチルピラジン、ジメチル
ピラジン、トリメチルピラジン、テトラメチルピラジン、エチルメチルピラジン、イソブ
チルメチルピラジン、エチルジメチルピラジン、ジメチルエチルピラジン、ジエチルメチ
ルピラジン、アセチルピラジン、メトキシメチルピラジン及びイソブチルメトキシピラジ
ンから選択される1又は2以上である、前記<1>~<6>のいずれか一に記載の経口用
組成物。
<8>成分(B)が、好ましくはピラジン、2-メチルピラジン、2-エチルピラジン、
2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2
,3,5-トリメチルピラジン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、2-エチル-
3-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジ
ン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-イソブチル-3-メチルピラジン、2-エチ
ル-3,5-ジメチルピラジン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-アセチル
ピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン及び2-イソブチル-3-メトキシピラジ
ンから選択される1又は2以上である、前記<1>~<6>のいずれか一に記載の経口用
組成物。
<9>成分(B)が、好ましくはピラジン、2-メチルピラジン、2-エチルピラジン、
2,5-ジメチルピラジン、2-アセチルピラジン及び2-メトキシ-3-メチルピラジ
ンから選択される1又は2以上である、前記<1>~<6>のいずれか一に記載の経口用
組成物。
<10>成分(B)が、好ましく2-メトキシ-3-メチルピラジンである、前記<1>
~<6>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0053】
<11>経口用組成物中の成分(B)の含有量は、好ましくは0.004質量ppm以上
、より好ましくは0.008質量ppm以上、更に好ましくは0.08質量ppm以上、
更に好ましくは0.18質量ppm以上、より更に好ましくは0.22質量ppm以上で
あり、また好ましくは60質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、更に好
ましくは6質量ppm以下、更に好ましくは4質量ppm以下、より更に好ましくは0.
4質量ppm以下である、前記<1>~<10>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<12>経口用組成物中の成分(B)の含有量は、好ましくは0.004~60質量pp
mであり、より好ましくは0.008~10質量ppmであり、更に好ましくは0.08
~6質量ppmであり、更に好ましくは0.18~4質量ppmであり、より更に好まし
くは0.22~0.4質量ppmである、前記<1>~<10>のいずれか一に記載の経
口用組成物。
【0054】
<13>成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が、好ましくは0.08以
上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.4以上であり、また好ましくは2
0以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下、更に好ましくは0.8以下で
ある、前記<1>~<12>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<14>成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が、好ましくは0.015
~20、より好ましくは0.015~12、更に好ましくは0.08~6、より更に好ま
しくは0.15~6、より更に好ましくは0.4~0.8である、前記<1>~<12>
のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0055】
<15>成分(A)の由来が、好ましくは生コーヒー豆及び浅焙煎コーヒー豆から選択さ
れる1以上である、前記<1>~<14>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<16>成分(A)の由来が、好ましくはL値が30以上60以下の浅焙煎コーヒー豆で
ある、前記<1>~<14>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<17>浅焙煎コーヒー豆のL値が、好ましくは32以上、より好ましくは34以上、更
に好ましくは36以上、より更に好ましくは38以上、より更に好ましくは40以上であ
り、また60以下である、前記<16>記載の経口用組成物。
【0056】
<18>成分(C)として、好ましくは4-ビニルグアヤコールを含有する、前記<1>
~<17>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0057】
<19>経口用組成物中の成分(C)の含有量が、好ましくは0.1質量ppm以上、よ
り好ましくは0.8質量ppm以上であり、また好ましくは2質量ppm以下、より好ま
しく1.4質量ppm以下である、前記<18>記載の経口用組成物。
<20>経口用組成物中の成分(C)の含有量が、好ましくは0.1~2質量ppm、よ
り好ましくは0.8~1.4質量ppmである、前記<18>記載の経口用組成物。
【0058】
<21>成分(A)及び成分(C)の総量と成分(B)との質量比[(B)/{(A)+(
C)}]が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.
05以上、より更に好ましくは0.5以上であり、また好ましくは5以下、より好ましく
は4以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1以下である、前記<18>~<
20>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<22>成分(A)及び成分(C)の総量と成分(B)との質量比[(B)/{(A)+(
C)}]が、好ましくは0.01~5であり、より好ましくは0.02~4であり、更に好
ましくは0.05~2であり、より更に好ましくは0.5~1である、前記<18>~<
20>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0059】
<23>成分(B)と成分(C)との質量比[(B)/(C)]が、好ましくは0.03以
上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.8以上であり、また好ましくは8以
下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である、前記<18>~<22>のい
ずれか一に記載の経口用組成物。
<24>成分(B)と成分(C)との質量比[(B)/(C)]が、好ましくは0.03~
8であり、より好ましくは0.6~3であり、更に好ましくは0.8~2である、前記<
18>~<22>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0060】
<25>成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が、好ましくは0.5以上
、より好ましくは1以上であり、また好ましくは4以下、より好ましくは3以下である、
前記<18>~<24>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<26>成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が、好ましくは0.5~4
であり、より好ましくは1~3である、前記<18>~<24>のいずれか一に記載の経
口用組成物。
【0061】
<27>経口用組成物中の成分(A)と成分(C)との合計含有量[(A)+(C)]が、
好ましくは0.5質量ppm以上、より好ましくは1質量ppm以上であり、また好まし
くは50質量ppm以下、より好ましくは45質量ppm以下である、前記<18>~<
26>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<28>経口用組成物中の成分(A)と成分(C)との合計含有量[(A)+(C)]が、
好ましくは0.5~50質量ppmであり、より好ましくは1~45質量ppmである、
前記<18>~<26>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0062】
<29>固体経口用組成物の形態が、好ましくは粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状又は
ブロック状である、前記<1>、<3>~<28>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<30>固体経口用組成物中の固形分量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは
93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは97質量%以上で
ある、前記<1>、<3>~<29>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<31>固体経口用組成物の水分活性値(Aw)が、好ましくは0.6以下、より好まし
くは0.5以下、更に好ましくは0.4以下、より更に好ましくは0.3以下である、前
記<1>、<3>~<30>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0063】
<32>液体経口用組成物の形態が、好ましくは液体、濃縮液状、ゲル状又はゼリー状で
ある、前記<2>~<28>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0064】
<33>(B)ピラジン類を有効成分とする、(A)分岐脂肪酸又は(C)4-ビニルグ
ラヤコールの不快臭抑制剤。
<34>(A)分岐脂肪酸に対して(B)ピラジン類を、0.015以上の質量比[(B
)/(A)]で共存させる、分岐脂肪酸の不快臭抑制方法。
<35>(A)分岐脂肪酸又は(C)4-ビニルグラヤコールの不快臭を抑制するための
、(B)ピラジン類の使用。
【0065】
<36>(A)分岐脂肪酸が、好ましくはイソ酪酸、2-メチル酪酸及びイソ吉草酸から
選択される1又は2以上である、前記<33>記載の不快臭抑制剤、前記<34>記載の
不快臭抑制方法、又は前記<35>記載の使用。
<37>(A)分岐脂肪酸が、好ましくはイソ吉草酸である、前記<33>記載の不快臭
抑制剤、前記<34>記載の不快臭抑制方法、又は前記<35>記載の使用。
【0066】
<38>(B)ピラジン類が、好ましくはピラジン、メチルピラジン、エチルピラジン、
ジメチルピラジン、トリメチルピラジン、テトラメチルピラジン、エチルメチルピラジン
、イソブチルメチルピラジン、エチルジメチルピラジン、ジメチルエチルピラジン、ジエ
チルメチルピラジン、アセチルピラジン、メトキシメチルピラジン及びイソブチルメトキ
シピラジンから選択される1又は2以上である、前記<33>、<36>及び<37>の
いずれか一に記載の不快臭抑制剤、前記<34>、<36>及び<37>のいずれか一に
記載の不快臭抑制方法、又は前記<35>~<37>のいずれか一に記載の使用。
<39>(B)ピラジン類が、好ましくはピラジン、2-メチルピラジン、2-エチルピ
ラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラ
ジン、2,3,5-トリメチルピラジン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、2-
エチル-3-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、2-エチル-6-メチ
ルピラジン、2-エチル-3-メチルピラジン、2-イソブチル-3-メチルピラジン、
2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、2-
アセチルピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン及び2-イソブチル-3-メトキ
シピラジンから選択される1又は2以上である、前記<33>、<36>及び<37>の
いずれか一に記載の不快臭抑制剤、前記<34>、<36>及び<37>のいずれか一に
記載の不快臭抑制方法、又は前記<35>~<37>のいずれか一に記載の使用。
<40>(B)ピラジン類が、好ましくはピラジン、2-メチルピラジン、2-エチルピ
ラジン、2,5-ジメチルピラジン、2-アセチルピラジン及び2-メトキシ-3-メチ
ルピラジンから選択される1又は2以上である、前記<33>、<36>及び<37>の
いずれか一に記載の不快臭抑制剤、又は前記<34>、<36>及び<37>のいずれか
一に記載の不快臭抑制方法、又は前記<35>~<37>のいずれか一に記載の使用。
<41>(B)ピラジン類が、好ましくは2-メトキシ-3-メチルピラジンである、前
記<33>、<36>及び<37>のいずれか一に記載の不快臭抑制剤、又は前記<34
>、<36>及び<37>のいずれか一に記載の不快臭抑制方法、又は前記<35>~<
37>のいずれか一に記載の使用。
【0067】
<42>(A)分岐脂肪酸と(B)ピラジン類との質量比[(B)/(A)]が、好ましく
は0.08以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.4以上であり、また
好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下、更に好ましくは
0.8以下である、前記<33>、<36>~<41>のいずれか一に記載の不快臭抑制
剤、又は前記<34>、<36>~<41>のいずれか一に記載の不快臭抑制方法。
<43>(A)分岐脂肪酸と(B)ピラジン類との質量比[(B)/(A)]が、好ましく
は0.015~20、より好ましくは0.015~12、更に好ましくは0.08~6、
より更に好ましくは0.15~6、より更に好ましくは0.4~0.8である、前記<3
3>、<36>~<41>のいずれか一に記載の不快臭抑制剤、又は前記<34>、<3
6>~<41>のいずれか一に記載の不快臭抑制方法。
【0068】
<44>(B)ピラジン類と(C)4-ビニルグラヤコールとの質量比[(B)/(C)]
が、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.8以上で
あり、また好ましくは8以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である、前
記<33>、<36>~<43>のいずれか一に記載の不快臭抑制剤。
<45>(B)ピラジン類と(C)4-ビニルグラヤコールとの質量比[(B)/(C)]
が、好ましくは0.03~8であり、より好ましくは0.6~3であり、更に好ましくは
0.8~2である、前記<33>、<36>~<43>のいずれか一に記載の不快臭抑制
剤。
【0069】
<46>(A)分岐脂肪酸と(C)4-ビニルグラヤコールとの質量比[(C)/(A)]
が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上であり、また好ましくは4以下、より
好ましくは3以下である、前記<35>~<41>のいずれか一に記載の使用。
<47>(A)分岐脂肪酸と(C)4-ビニルグラヤコールとの質量比[(C)/(A)]
が、好ましくは0.5~4であり、より好ましくは1~3である、前記<35>~<41
>のいずれか一に記載の使用。
【実施例】
【0070】
本実施例で使用した試薬は、以下のとおりである。
・イソ吉草酸 :富士フィルム和光純薬(株)
・ピラジン :富士フィルム和光純薬(株)
・アセチルピラジン :東京化成(株)
・2-メチルピラジン :東京化成(株)
・2-エチルピラジン :東京化成(株)
・2-メトキシ-3-メチルピラジン:東京化成(株)
・2,5-ジメチルピラジン :東京化成(株)
・生コーヒー豆抽出物 :ルナフェノンC-200、花王(株)
・4-ビニルグアイアコール :Combi-Blocks
・デキストリン :三和澱粉工業(株)
・マルチトール :三菱商事ライフサイエンス(株)
・乳糖 :(株)自然健康社
・エタノール :トレーサブル99、日本アルコール販売(株)
【0071】
1.分岐脂肪酸の分析
第三者機関にてGC/MS法又はHPLC法により分析することが可能であり、GC/
MS法による分析は、財団法人日本食品分析センターに、またHPLC法による分析は、
(株)島津テクノリサーチに、それぞれ依頼することができる。
【0072】
2.ピラジン類、4-ビニルグアヤコール、フルフリルメルカプタンの分析
試料をバイアルにサンプリングし、SPMEファイバーによりヘッドスペースの香気成
分を吸着し、GC/MS測定に供した。
【0073】
分析条件は次の通りである。
・カラム:VF-WAX 内径0.25mm×長さ60m、膜厚0.25μm
・温度プログラム:35℃(4min)→130℃、3℃/minで昇温→240℃(1
5min)、5℃/minで昇温
・カラム流量:1.5ml/min(He)、定流量モード
・注入口温度:240℃
・注入方式:スプリットレス
・検出器:MS
・イオン源温度:240℃
・イオン化方法:EI(70eV)
・SPMEファイバー:50/30μm、DVB/CAR/PDMS(シグマアルドリッ
チ社製)
【0074】
3.水分活性値の測定
製造法の固体経口用組成物について、20℃、60%RH(相対湿度)にて水分活性計
(Pawkit、デカゴン社製)を測定した。
【0075】
4.官能評価
各実施例及び比較例で得られた固体経口用組成物を摂取したときの「イソ吉草酸の不快
臭強度」、「ピラジン類のケミカル臭強度」及び「4-ビニルグアイアコールの不快臭強
度」について、専門パネル3名が次の手順で官能試験を行った。
【0076】
(1)イソ吉草酸の不快臭強度
先ず、イソ吉草酸試薬を用いて、「イソ吉草酸の不快臭」の強さを等間隔で5段階に予
め濃度調整した「イソ吉草酸不快臭強度標準」を調製した。次いで、各専門パネルが各濃
度のイソ吉草酸不快臭強度について、表1中に示す評点とすることを合意した。次いで、
各専門パネラーが「イソ吉草酸不快臭強度標準」においてイソ吉草酸濃度の低いものから
順に摂取し、「イソ吉草酸不快臭強度」を記憶した。次いで、各専門パネルが被験固体経
口用組成物を摂取した際の「イソ吉草酸不快臭強度」の程度を評価し、「イソ吉草酸不快
臭強度標準」の中から「イソ吉草酸不快臭強度」が最も近いものを決定した。そして、各
専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により最終評点を決定した。なお、評点は、
数値が小さいほど、イソ吉草酸の不快臭強度が弱いことを意味する。
【0077】
【0078】
(2)ピラジン類のケミカル臭強度
先ず、ピラジン試薬を用いて、「ケミカル臭」の強さを等間隔で5段階に予め濃度調整
した「ケミカル臭強度標準」を調製した。次いで、各専門パネルが各濃度のケミカル臭強
度について、表2中に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネラーが「ケミ
カル臭強度標準」においてイソ吉草酸濃度の低いものから順に摂取し、「ケミカル臭強度
」を記憶した。次いで、各専門パネルが被験固体経口用組成物を摂取した際の「ケミカル
臭強度」の程度を評価し、「ケミカル臭強度標準」の中から「ケミカル臭強度」が最も近
いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により最終評
点を決定した。なお、評点は、数値が小さいほど、ピラジン類のケミカル臭強度が弱いこ
とを意味する。
【0079】
【0080】
(3)4-ビニルグアイアコールの不快臭強度
先ず、4-ビニルグアイアコール(以下、「4-VG」とも称する)試薬を用いて、「
4-VGの不快臭」の強さを等間隔で5段階に予め濃度調整した「4-VG不快臭強度標
準」を調製した。次いで、各専門パネルが各濃度の4-VG不快臭強度について、表3中
に示す評点とすることを合意した。次いで、各専門パネラーが「4-VG不快臭強度標準
1」において4-VG濃度の低いものから順に摂取し、「4-VG不快臭強度」を記憶し
た。次いで、各専門パネルが被験固体経口用組成物を摂取した際の「4-VG不快臭強度
」の程度を評価し、「4-VG不快臭強度標準」の中から「4-VG不快臭強度」が最も
近いものを決定した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により最終
評点を決定した。なお、評点は、数値が小さいほど、4-VGの不快臭強度が弱いことを
意味する。
【0081】
【0082】
実施例1~10及び比較例1、2
表4に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製した。得られた固体経口用
組成物について分析を行い、「イソ吉草酸の不快臭強度」及び「ピラジン類のケミカル臭
強度」について官能評価を行った。その結果を表4に示す。なお、製造後に固体経口用組
成物の水分活性値を測定したところ、いずれも0.4以下であった。
【0083】
【0084】
実施例11~14及び比較例3
表5に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製した。得られた固体経口用
組成物について分析を行い、「イソ吉草酸の不快臭強度」及び「ピラジン類のケミカル臭
強度」について官能評価を行った。その結果を表5に示す。なお、製造後に固体経口用組
成物の水分活性値を測定したところ、いずれも0.4以下であった。
【0085】
【0086】
実施例15~19
表6に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製した。得られた固体経口用
組成物について分析を行い、「イソ吉草酸の不快臭強度」及び「ピラジン類のケミカル臭
強度」について官能評価を行った。その結果を、実施例6及び比較例1の結果とともに表
6に示す。なお、製造後に固体経口用組成物の水分活性値を測定したところ、いずれも0
.4以下であった。
【0087】
【0088】
実施例20、21及び比較例4,5
表7に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製した。得られた固体経口用
組成物について分析を行い、「イソ吉草酸の不快臭強度」及び「ピラジン類のケミカル臭
強度」について官能評価を行った。その結果を、実施例6及び比較例1の結果とともに表
7に示す。なお、製造後に固体経口用組成物の水分活性値を測定したところ、いずれも0
.4以下であった。
【0089】
【0090】
実施例22~28及び比較例6
表8に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製した。得られた固体経口用
組成物について分析を行い、「イソ吉草酸の不快臭強度」、「ピラジン類のケミカル臭強
度」及び「4-ビニルグアイアコールの不快臭強度」について官能評価を行った。その結
果を表8に示す。なお、製造後に固体経口用組成物の水分活性値を測定したところ、いず
れも0.4以下であった。
【0091】
【0092】
実施例29及び比較例7
表9に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製した。なお、生コーヒー豆
抽出物は、マルチトールにイソ吉草酸試薬を0.01質量ppm、0.1質量ppm、0
.5質量ppm又は5質量ppmを添加したイソ吉草酸不快臭強度標準組成物を調製し、
イソ吉草酸試薬を0.5質量ppm添加したイソ吉草酸不快臭強度標準組成物と同等のイ
ソ吉草酸不快臭強度となる量を使用した。そして、得られた固体経口用組成物について分
析を行い、「イソ吉草酸の不快臭強度」、「ピラジン類のケミカル臭強度」及び「4-ビ
ニルグアイアコールの不快臭強度」について官能評価を行った。その結果を表9に示す。
なお、製造後に固体経口用組成物の水分活性値を測定したところ、いずれも0.4以下で
あった。
【0093】
【0094】
表4~9から、分岐脂肪酸に対してピラジン類を一定以上の量比で含有させることによ
り、分岐脂肪酸の不快臭を抑制できることがわかる。また、表9から、不快臭の原因物質
として知られている4-ビニルグアイアコールを更に含有する場合であっても、分岐脂肪
酸と4-ビニルグアイアコールとの総量に対してピラジン類を一定以上の量比で含有させ
ることにより、分岐脂肪酸と4-ビニルグアイアコールの不快臭を同時に抑制できること
がわかる。