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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】光学式変位計
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20241204BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2024065853
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2023139428
(32)【優先日】2023-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 佳孝
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-163346(JP,A)
【文献】特開2017-032340(JP,A)
【文献】特開2018-136340(JP,A)
【文献】特開2010-223950(JP,A)
【文献】特開平08-233518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向に延びるスリット光を照射する投光部と、前記X方向に対応するU方向と、当該U方向に直交するV方向とに二次元配列された複数の画素により、ワークで反射された反射光を受光し、受光量分布を示す受光画像を出力するイメージセンサと、前記投光部および前記イメージセンサを一体的に保持する支持部材と、を有する投受光モジュールと、
前記支持部材の回転軸を中心に、前記投受光モジュールを時計回り、及び、反時計回りの二方向を往復するように一体的に揺動させるモータと、
前記モータを制御し、前記投受光モジュールを揺動させて、前記スリット光を前記X方向と直交する方向に走査するモータ制御部と、
前記モータによる回転角度を取得する回転角度取得部と、
前記イメージセンサにより出力された前記受光量分布に基づいてUV座標を算出し、当該UV座標および前記回転角度を所定の変換条件に基づいてXYZ座標に変換する信号処理部と、
前記XYZ座標に基づいて、XY平面における前記ワークの高さを示す高さ画像を出力する高さ画像出力部と、
を備え、
前記イメージセンサは、前記モータ制御部により前記投受光モジュールが前記二方向の一方向に揺動している間に、複数の受光画像を取得し、
前記信号処理部は、前記投受光モジュールが前記一方向に揺動している間に得られた前記複数の受光画像の各受光画像に対応するUV座標および回転角度を、前記所定の変換条件に基づいて複数のXYZ座標に変換し、
前記高さ画像出力部は、前記複数のXYZ座標に基づいて、前記投受光モジュールの前記一方向の揺動に対応した前記高さ画像を出力する、光学式変位計。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式変位計において、
前記高さ画像を示す第1画面と、当該高さ画像中のX座標に対応する前記ワークのYZ断面プロファイルを示す第2画面と、を同時に、又は切り替えて表示する設定画面を生成する画面生成部を更に備える、光学式変位計。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式変位計において、
前記設定画面の前記第2画面は、前記イメージセンサによる測定可能範囲を更に示す、光学式変位計。
【請求項4】
請求項2に記載の光学式変位計において、
前記設定画面は、前記第2画面を介して、測定結果を取り込む対象となる取込範囲の設定を受け付け、
前記信号処理部は、
前記取込範囲を画定するためのYZ座標を、前記所定の変換条件に基づいてV座標および回転角度に変換し、前記回転角度に基づいて前記投受光モジュールの回転角度範囲を決定する、光学式変位計。
【請求項5】
請求項4に記載の光学式変位計において、
前記取込範囲は矩形であり、
前記信号処理部は、前記取込範囲を画定するための4点のYZ座標を前記所定の変換条件に基づいてV座標および回転角度に変換し、当該4点に対応する回転角度に基づいて前記回転角度範囲を決定する、光学式変位計。
【請求項6】
請求項4に記載の光学式変位計において、
前記イメージセンサは、
前記回転角度範囲内において各撮像タイミングに対応する回転角度ごとに、前記複数の画素のうち前記取込範囲に含まれる画素群の受光量分布のみを出力する、光学式変位計。
【請求項7】
請求項6に記載の光学式変位計において、
前記イメージセンサは、
前記回転角度範囲内において前記取込範囲のZ方向高さの変動を抑えるように、前記所定の変換条件に基づいて、各撮像タイミングに対応する回転角度ごとに、前記受光量分布を出力する画素群のV方向の画素範囲を変化させる、光学式変位計。
【請求項8】
請求項6に記載の光学式変位計において、
前記イメージセンサは、前記回転角度範囲内において前記受光量分布を出力する画素群のV方向の画素範囲が固定されており、
前記信号処理部は、
前記回転角度範囲内において前記取込範囲のZ方向高さの変動を抑えるように、前記所定の変換条件に基づいて、各撮像タイミングに対応する回転角度ごとに、前記画素群から出力された前記受光量分布のうち、マスクする行を決定する、光学式変位計。
【請求項9】
請求項7に記載の光学式変位計において、
前記設定画面は、前記第2画面を介して、前記取込範囲の平行移動の指示を受け付け、
前記信号処理部は、前記平行移動の前における前記取込範囲に含まれる画素群からの前記受光量分布の出力時間と、前記平行移動の後における前記取込範囲に含まれる画素群からの前記受光量分布の出力時間との差異を抑えるように、前記所定の変換条件に基づいて、前記平行移動の前後で前記取込範囲のZ方向高さを変化させる、光学式変位計。
【請求項10】
請求項7に記載の光学式変位計において、
前記モータ制御部は、前記取込範囲に対応する前記回転角度範囲よりも広い設定用角度範囲で、前記投受光モジュールを揺動させ、
前記投受光モジュールは、前記設定用角度範囲に対応する設定用YZ断面プロファイルを取得し、
前記画面生成部は、前記第2画面に前記設定用YZ断面プロファイルを示す画面を生成する、光学式変位計。
【請求項11】
請求項1に記載の光学式変位計において、
前記高さ画像を示す第1画面を生成する画面生成部を更に備え、
前記第1画面は、前記高さ画像内の一点の指定を受け付け、
前記信号処理部は、前記所定の変換条件に基づいて、前記一点のXYZ座標に対応する回転角度を取得し、
前記モータ制御部は、前記回転角度に対応する位置に前記投受光モジュールを移動させ、
前記投受光モジュールは、前記位置における受光画像を取得し、
前記画面生成部は、前記受光画像を示す画面を生成して表示部に表示させる、光学式変位計。
【請求項12】
請求項11に記載の光学式変位計において、
前記信号処理部は、前記所定の変換条件に基づいて、前記回転角度に対応するV方向の画素範囲を更に取得し、
前記画面生成部は、前記V方向の画素範囲に対応する受光量分布を特定した前記受光画像を生成して前記表示部に表示させる、光学式変位計。
【請求項13】
請求項11に記載の光学式変位計において、
前記モータ制御部は、前記高さ画像を生成する過程において前記受光画像を取得した回転角度に前記投受光モジュールを移動させる、光学式変位計。
【請求項14】
請求項1に記載の光学式変位計において、
前記投受光モジュールは、前記ワークで反射された反射光を集光する受光レンズを更に備え、
前記支持部材は、前記受光レンズの光軸に対して前記イメージセンサの受光面が傾斜したシャインプルーフの関係を有するように、前記投光部、前記受光レンズ及び前記イメージセンサを一体的に保持し、
前記モータ制御部は、前記モータを制御し、前記シャインプルーフの関係を維持した状態で前記投受光モジュールを揺動させて、前記スリット光をX方向と直交する方向に走査する、光学式変位計。
【請求項15】
請求項1に記載の光学式変位計において、
前記信号処理部は、XY座標に対して等間隔補正を実行することにより補正後XY座標に対応する補正後Z座標を算出し、
前記高さ画像出力部は、前記等間隔補正により得られた前記補正後XYZ座標に基づいて、前記高さ画像を出力する、光学式変位計。
【請求項16】
請求項1に記載の光学式変位計において、
前記投受光モジュールおよび前記信号処理部の少なくとも一方は、前記回転角度に応じて光量に関するパラメータを変化させる、光学式変位計。
【請求項17】
請求項16に記載の光学式変位計において、
前記光量に関するパラメータは、前記投光部により出射される前記スリット光の光量、前記イメージセンサの露光時間、前記イメージセンサのゲインおよび前記信号処理部によりピーク位置を検出するための検出感度の少なくともいずれかを含む、光学式変位計。
【請求項18】
X方向に延びるスリット光を照射する投光部と、前記X方向に対応するU方向と、当該U方向に直交するV方向とに二次元配列された複数の画素により、ワークで反射された反射光を受光し、受光量分布を示す受光画像を出力するイメージセンサと、前記投光部および前記イメージセンサを一体的に保持する支持部材と、を有する投受光モジュールと、
前記支持部材の回転軸を中心に、前記投受光モジュールを時計回り、及び、反時計回りの二方向を往復するように一体的に揺動させるモータと、
前記モータを制御し、前記投受光モジュールを揺動させて、前記スリット光をX方向と直交する方向に走査するモータ制御部と、
前記モータによる回転角度の指定を受け付ける回転角度指定部と、
前記指定の回転角度に対応する受光画像を表示部に表示させる画面生成部と、を備え、
前記回転角度の変更を受け付けると、前記モータ制御部が当該変更後の回転角度に前記投受光モジュールを移動させて、当該移動後の位置において前記イメージセンサにより撮像された受光画像を前記表示部に表示する、光学式変位計。
【請求項19】
請求項18に記載の光学式変位計において、
前記回転角度指定部は、前記投受光モジュールによる測定範囲におけるプロファイル番号が指定されることにより前記回転角度の指定を受け付ける、光学式変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光を利用してワークの変位を測定する光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
光学式変位計として、例えばワークに対してX方向に延びるスリット光を照射し、ワークの表面で反射した反射光を受光することで、XZ断面プロファイルを取得可能に構成されたものが知られている。ワークのY方向の異なる位置におけるXZ断面プロファイルを複数取得することで、ワークの三次元形状のデータを生成することが可能であるが、この場合、ワークをY方向に搬送するためのコンベアや、変位計本体をワークに対してY方向に移動させるための直動機構などの設備が必要になり、導入が難しいことがある。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1、2のようにスリット光を投光する投光系及び反射光を受光する受光系(合わせて投受光系という)を回転可能に構成しておき、スリット光がワークに対してY方向に走査されるように投受光系を揺動させる構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ヨーロッパ特許公開第3232152号
【文献】中国実用新案登録第210664364号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2には、投受光系を揺動させながら測定することにより三次元画像を取得することが可能であるが、投受光系を揺動させることによって三次元測定を実現する場合、三次元測定範囲が投受光系の揺動軸を中心とした円弧状になり、投受光系の回転角度ごとに高さ方向に変化することになるので、例えば測定結果を取り込む対象となる取込範囲を決めるためのワーク断面の指定が難しい。また、上記特許文献1、2の変位計で取得した三次元画像では、各画素を頂点としてポリゴンが形成されているので、点自体の観察に向いておらず、例えば測定できていない点(無効画素)を確認しようとしても、三次元画像ではその確認が難しい。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、投受光系を揺動させることによって変位を測定する場合に、高さ画像や受光画像を出力可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本態様に係る光学式変位計では、X方向に延びるスリット光を照射する投光部と、前記X方向に対応するU方向と、当該U方向に直交するV方向とに二次元配列された複数の画素により、ワークで反射された反射光を受光し、受光量分布を示す受光画像を出力するイメージセンサと、前記投光部および前記イメージセンサを一体的に保持する支持部材と、を有する投受光モジュールと、前記支持部材の回転軸を中心に、前記投受光モジュールを時計回り、又は、反時計回りの二方向を往復するように一体的に揺動させるモータと、前記モータを制御し、前記投受光モジュールを揺動させて、前記スリット光を前記X方向と直交する方向に走査するモータ制御部と、前記モータによる回転角度を取得する回転角度取得部と、前記イメージセンサにより出力された前記受光量分布に基づいてUV座標を算出し、当該UV座標および前記回転角度を所定の変換条件に基づいてXYZ座標に変換する信号処理部と、前記XYZ座標に基づいて、XY平面における前記ワークの高さを示す高さ画像を出力する高さ画像出力部と、を備えている。
【0008】
前記イメージセンサは、前記モータ制御部により前記投受光モジュールが前記二方向の一方向に揺動している間に、複数の受光画像を取得することができる。前記信号処理部は、前記投受光モジュールが前記一方向に揺動している間に得られた前記複数の受光画像の各受光画像に対応するUV座標および回転角度を、前記所定の変換条件に基づいて複数のXYZ座標に変換することができる。前記高さ画像出力部は、前記複数のXYZ座標に基づいて、前記高さ画像を出力することができる。
【0009】
また、光学式変位計は、回転角度の指定を受け付ける回転角度指定部と、前記指定の回転角度に対応する受光画像を表示部に表示する表示処理部と、を備えていてもよい。光学式変位計は、前記回転角度の変更を受け付けると、前記モータ制御部が当該変更後の回転角度に前記投受光モジュールを移動させて、当該移動後の位置において前記イメージセンサにより撮像された受光画像を前記表示部に表示することができる。
【0010】
この構成によれば、高さ画像の出力や、受光画像の表示が可能なので、例えば測定結果を取り込む対象となる取込範囲を決めるためのワーク断面の指定が容易になるとともに、測定できていない点(無効画素)の確認が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本開示によれば、測定時に投受光モジュールを揺動させる光学式変位計としながら、高さ画像や受光画像の出力が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る光学式変位計の運用時を説明する図である。
図2】本発明の実施形態1に係る光学式変位計を上方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る光学式変位計を下方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態1に係る光学式変位計の上側空間の内部を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る光学式変位計の投受光モジュールの平面図である。
図6】本発明の実施形態1に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。
図7図2のVII-VII線断面図である。
図8図2のVIII-VIII線断面図である。
図9】変位測定の手法を説明する図である。
図10】実施形態1の変形例1に係る図5相当図である。
図11】実施形態1の変形例2に係る図4相当図である。
図12】実施形態1の変形例2に係る光学式変位計の内部構造を下側から見た図である。
図13】実施形態2に係る図2相当図である。
図14】実施形態2に係る光学式変位計の内部構造を上側から見た図である。
図15】実施形態2に係る図7相当図である。
図16】実施形態2の変形例に係る図14相当図である。
図17】三次元測定時における測定結果の取込範囲を示す模式図である。
図18】実施形態3に係る図6相当図である。
図19】イメージセンサの取込範囲を動的に変化させる場合を説明する図17相当図である。
図20】設定画面の例を示す図である。
図21】矩形の取込範囲の例を示す図である。
図22】取込範囲のYZ座標をV座標および回転角度に変換した場合を示す図である。
図23】回転角度範囲を決定した状態を示す図である。
図24】光学系の模式図である。
図25】V方向の画素数を一定で取り込む場合の範囲を模式的に示す図である。
図26】V方向の画素数を変化させた場合を説明する図である。
図27】取込範囲を平行移動させた場合に変化する出力時間の差を説明する図である。
図28】出力時間の差が小さくなるように平行移動後の取込範囲のZ方向高さを変化させた場合を示す図である。
図29】設定用YZ断面プロファイルを表示した設定画面の例を示す図である。
図30】取込範囲設定の処理を流れの一例を示すフローチャートである。
図31】受光画像および高さ画像を示す画面の例を示す図である。
図32】受光画像の表示処理を流れの一例を示すフローチャートである。
図33】ハウジングを単純な直方体形状とした場合を示す図である。
図34】ハウジングの厚みを部分的に薄くした第1の例に係る図である。
図35】ハウジングの厚みを部分的に薄くした第2の例に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る光学式変位計1の運用時を説明する図である。光学式変位計1は、スリット光S1を利用して、Z方向に高さを有するワークW(測定対象物)の断面プロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光切断方式の光学式変位計の一例である。この実施形態では、光学式変位計1と、コントローラ2と、パーソナルコンピュータPCとによって検査システムSが構成されている例について説明するが、この構成例に限られるものではなく、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等が検査システムSに含まれていてもよい。
【0015】
検査システムSの運用前の設定時には、例えばコントローラ2及びパーソナルコンピュータPCによって各種検査設定を行うことが可能になっている。設定後の運用時には、予め規定されたタイミングで光学式変位計1がワークWの変位を測定する。測定結果を示すデータは、光学式変位計1からコントローラ2やパーソナルコンピュータPCに送信され、検査設定に基づく検査が実行される。光学式変位計1の測定結果を示すデータや検査結果等は、コントローラ2やパーソナルコンピュータPCに保存することが可能になっている。
【0016】
運用時には、コントローラ2及びパーソナルコンピュータPCを用いることなく、光学式変位計1のみで運用することも可能であり、図1に示す運用形態に限られるものではない。尚、以下の説明では、光学式変位計1を含む検査システムSとして説明しているが、光学式変位計1のみで運用する場合や、光学式変位計1とPLCとを組み合わせたシステムで運用する場合も本発明を適用可能である。
【0017】
検査システムSは、インラインでワークWの外観検査を実行するシステムである。インラインでの外観検査では、例えば複数のワークWが順次搬送されているような現場において、ワークWの外観検査を順次実行する。図1に示すようにワークWのX方向、Y方向、Z方向を定義する。ワークWの平面視でX方向とY方向とは互いに直交する方向である。Z方向は、ワークWの高さ方向であり、X方向と直交し、かつ、Y方向と直交する方向である。ワークWのX方向をワークWの奥行方向、ワークWのY方向をワークWの幅方向ということもできるが、この定義は一例であり、ワークWのX方向、Y方向、Z方向の定義は任意である。
【0018】
光学式変位計1によってワークWの高さデータを取得できるので、外観検査には、高さデータに基づく寸法検査、形状検査、欠陥検査等が含まれる。ワークWは特に限定されるものではなく、各種部品、部材、装置、器具、それらの一部等を挙げることができる。ワークWは、測定対象物と呼ぶこともできる。ワークWは、図示しない搬送装置によって光学式変位計1の測定可能領域まで搬送された後、光学式変位計1によって変位の測定が実行される。
【0019】
光学式変位計1は、例えば取付部材5に固定された状態で使用される。取付部材5は、工場等に設置された設備の一部であり、ワークWに対して相対的に移動しないように固定された状態にある。よって、光学式変位計1もワークWに対して相対的に移動しない。詳細は後述するが、光学式変位計1を取付部材5に固定していても、内部の投受光モジュール10(図4に示す)をX方向と平行な軸周りに回転可能にしておくことで、ワークWのX方向に延びるスリット光S1を投受光モジュール10からワークWのX方向と直交する方向に走査し、ワークWの表面W1におけるY方向の複数箇所で反射された反射光S2を投受光モジュール10で受光することが可能になる。このように、投受光モジュール10をX方向と平行な軸周りに回転させた場合も、ワークWまたは光学式変位計1を直動させた場合のように、スリット光S1をワークWの表面W1に走査できる。なお、光学式変位計1は、投受光モジュール10を回転させることによってスリット光S1を走査するため、スリット光S1の走査方向は、Y方向を含む、YZ平面においてX方向と直交する方向となる。なお、本明細書において「回転」は、回転軸を中心として往復する揺動運動を意味する。
【0020】
反射光S2の受光量に基づいて信号処理を実行することで、異なる回転角度におけるワークWの断面プロファイルを複数取得できる。取得した断面プロファイルに基づいて、ワークWの三次元形状のデータ(高さデータ)を生成することが可能である。なお、スリット光S1は回転するため、断面プロファイルは必ずしもXZ平面と平行にはならない。
【0021】
上述したように光学式変位計1の内部に設けられている投受光モジュール10を回転可能にしておくことで、ワークWをY方向に搬送することなく、また光学式変位計1をワークWに対してY方向に移動させることなく、異なる回転角度におけるワークWの断面プロファイルを複数取得することができる。従って、ワークWを搬送するためのコンベアや、光学式変位計1をワークWに対してY方向に移動させるための直動機構などの設備が不要になり、光学式変位計1を用いた検査工程の導入が容易になる。
【0022】
尚、ワークWを光学式変位計1に対して相対的に移動可能にしておいてもよいが、測定時にはワークWを停止させた状態で断面プロファイルを複数取得することができる。また、光学式変位計1をワークWに対して相対的に移動可能にしておいてもよいが、測定時には光学式変位計1を停止させた状態で断面プロファイルを複数取得することができる。本発明は、光学式変位計1が完全に固定されている場合に限定されるものではなく、取付部材5に対して移動可能に支持されていてもよいし、ロボットアーム等に取り付けられていて任意の測定場所まで移動可能であってもよい。
【0023】
図2は、本発明の実施形態1に係る光学式変位計1を上方から見た斜視図であり、また図3は、本発明の実施形態1に係る光学式変位計1を下方から見た斜視図である。各図に示すように、光学式変位計1の左右方向、奥行方向、上下方向を定義するが、これは説明の便宜を図るためであり、光学式変位計1の運用時の姿勢を限定するものではない。図1に示す運用形態において、光学式変位計1はワークWの上方に設置されているので、スリット光S1は下向きに照射され、反射光S2は上向きに進むことになる。この運用形態の場合、光学式変位計1の左右方向はワークWのY方向に対応し、光学式変位計1の上下方向はワークWのX方向に対応し、光学式変位計1の奥行方向はワークWのZ方向に対応している。尚、光学式変位計1からワークWに対して水平方向にスリット光S1が照射されるように、光学式変位計1を設置してもよいし、光学式変位計1からワークWに対して下方にスリット光S1が照射されるように、光学式変位計1を設置してもよく、光学式変位計1の設置時の姿勢は特に限定されるものではない。
【0024】
図4は、光学式変位計1の内部構造を示す図である。光学式変位計1は、投受光モジュール10(図5にも示す)と、投受光モジュール10を回転させるためのモータ20(図7に示す)と、モータ制御部30(図8に示す)と、ハウジング40とを備えている。投受光モジュール10、モータ20及びモータ制御部30は、ハウジング40に格納される。図6に示すように、本実施形態1では、モータ制御部30、電源部34(後述する)及び信号処理部32(後述する)によって制御部3が構成されている。尚、図6では、説明の便宜上、モータ制御部30と信号処理部32とを分けて記載しているが、モータ制御部30と信号処理部32とは統合されていてもよい。
【0025】
投受光モジュール10は、X方向に延びるスリット光S1を照射する投光部11と、ワークWで反射された反射光S2を集光する受光レンズを有する集光部12と、集光部12により集光された光を受光する撮像部13と、投光部11、集光部12及び撮像部13を一体的に保持する支持部材14を備えている。
【0026】
図6に示すように、投光部11は、レーザ光出射器(光源)11aと、光学系11bと、当該レーザ光出射器11aと光学系11bとを格納する光源用筐体と、レーザ光出射器11aを制御する投光制御部11cとを有している。レーザ光出射器11aは、投光制御部11cにより制御されて所定の光量のレーザ光を所定のタイミングで所定の時間だけ出射する。レーザ光出射器11aから出射された光は、光学系11bに入射する。光学系11bは、図示しないが例えばシリンドリカルレンズを含む複数のレンズで構成されており、入射したレーザ光を帯状に広げてスリット光S1にしてからワークWに照射する。投光部11は、スリット光S1の照射方向に長い形状となっている。
【0027】
集光部12は、受光量の向上を図るため、大口径の受光レンズを複数含んだレンズユニットとして構成され、受光レンズと、受光レンズを格納するレンズ用筐体とを有している。このような大口径のレンズを複数含んでおり、サイズも相対的に大きくなるため、集光部12の重量は、投光部11の重量よりも重くなっている。
【0028】
撮像部13は、例えばCMOS(相補型MOS)等のイメージセンサ13aと、撮像制御部13bとを有している。イメージセンサ13aは、撮像制御部13bにより制御されて所定のタイミングで撮像を実行する。イメージセンサ13aの撮像時の露光時間は、撮像制御部13bにより制御可能になっている。
【0029】
図7図8に示すように、支持部材14は、平板状の高剛性な部材、例えば金属製の板材等で構成されている。図7に示すように、支持部材14は、光学式変位計1の一部を構成している回転軸50に固定されており、当該回転軸50の軸芯である回転中心線A周りに回転自在にハウジング40に支持されている。支持部材14の延びる方向は、回転中心線Aに対して直交する方向となっている。
【0030】
支持部材14の上面には、投光部11、集光部12及び撮像部13が固定されている。具体的には、図5に示す投受光モジュール10の平面視では、投光部11が支持部材14における回転中心線Aよりも左側部分に固定され、集光部12及び撮像部13がその反対側に固定されている。これにより、投光部11と集光部12とは回転軸50の径方向(Y方向、Z方向)に互いに間隔をあけて設けられることになる。
【0031】
投光部11は、スリット光S1の照射方向がZ方向に向くように配置されている。集光部12は、支持部材14の手前側(ワークW側)部分において、反射光S2が入射する方向に光軸が沿うように配置されている。従って、投光部11及び集光部12は共にZ方向に向くことになるが、投光部11の光学系11bの光軸と集光部12の光軸(受光レンズの光軸)とは投受光モジュール10からZ方向に離れた箇所において互いに交差する関係となる。投光部11と集光部12との左右方向の距離、及び投光部11の光学系11bの光軸と集光部12の光軸との関係は、ワークWに対する光学式変位計1の設置距離や測定精度などに応じて変えることができるので、図示した例は一例に過ぎない。
【0032】
集光部12と回転軸との距離が長いほど、回転による集光部12の慣性モーメントが大きくなる。投受光モジュール10の回転方向を切り替える際には、投受光モジュール10を一旦、停止させる必要がある。このとき、慣性モーメントが大きいほど、投受光モジュール10の回転運動の減速に要するエネルギーが大きくなるため、回転運動の停止までの距離や時間の増大に繋がる。そこで、投受光モジュール10は、支持部材14に固定された受光側反射部材15を更に備えている。これにより、投受光モジュール10のサイズをコンパクトにできるだけでなく、回転による慣性モーメントも小さくすることで、計測間隔の短縮にもつながる。受光側反射部材15は、例えばミラー等で構成されており、集光部12から出射した反射光S2を投光部11側に折り返すことにより、YZ平面における撮像部13または集光部12と投受光モジュール10の回転軸50との間の距離が短くなるようにしている。折り返す方向は、例えば、ハウジング40のY方向における中心位置に向かう方向でも良い。YZ平面とは、Y方向に延びる直線とZ方向に延びる直線の両方を含む平面であり、X方向に対して直交する関係にある面である。
【0033】
具体的には、受光側反射部材15は、支持部材14における集光部12よりも奥側部分において右端部に位置付けられており、YZ平面において、撮像部13と集光部12との間の光路上に配置され、集光部12により集光された光を撮像部13へ向けて反射させる。また、投受光モジュール10の回転軸50は、YZ平面において、受光側反射部材15と投光部11との間に配置されることになる。
【0034】
撮像部13と集光部12との間の光路上に受光側反射部材15を配置することで、集光部12によって集光した後の光を反射させれば良いため、受光側反射部材15の面積を小さくできる。尚、受光側反射部材15の位置は撮像部13と集光部12との間の光路上でなくてもよく、後述する変形例1(図10に示す)のように受光側反射部材15と撮像部13との間の光路上に集光部12を配置してもよい。
【0035】
受光側反射部材15は、支持部材14の上面から上方へ突出している。また、受光側反射部材15の延びる方向は奥行方向とされている。受光側反射部材15の設置角度により、当該受光側反射部材15に入射した反射光S2の出射方向を設定することができ、反射光S2の出射方向はイメージセンサ13aの受光面に向くようになっている。
【0036】
撮像部13のイメージセンサ13aと、集光部12の光軸との位置関係は、当該集光部12の光軸に対してイメージセンサ13aの受光面が傾斜したシャインプルーフの関係を有するように設定されている。シャインプルーフの関係を満たした光学系をシャインプルーフ光学系と呼ぶことができ、この実施形態では、シャインプルーフの関係を有するように、投光部11、集光部12及び撮像部13が支持部材14に一体的に保持されることによって投受光モジュール10が構成されている。シャインプルーフの関係を有していることで、投光部11の投光軸に沿ってピントが合うため、スリット光がワークWで反射された反射光に対してピントの合ったプロファイル画像を取得することができる。よって、ワークWの三次元形状データの測定精度が向上し、ひいては、高精度なプロファイルの取得が可能になる。
【0037】
投受光モジュール10を回転中心線A周りに回転させた場合であっても、投光部11、集光部12、撮像部13及び受光側反射部材15の相対的な位置関係は変化しない。よって、投受光モジュール10の回転角度に関わらず、シャインプルーフの関係が維持される。
【0038】
撮像部13は、カバーガラス13cを有している。カバーガラス13cは、イメージセンサ13aの受光面を覆うように形成され、イメージセンサ13aに固定されている。カバーガラス13cは、受光側反射部材15から出射した反射光S2を透過する性質を持った透光性部材で構成されている。カバーガラス13cを透過した反射光S2がイメージセンサ13aの受光面で結像する。
【0039】
投受光モジュール10の回転軸50は、YZ平面において、当該投受光モジュール10の重心位置と略一致するように配置されている。すなわち、投受光モジュール10には、支持部材14をはじめとして、投光部11、集光部12、撮像部13及び受光側反射部材15が含まれており、投光部11、集光部12、撮像部13及び受光側反射部材15が支持部材14に固定された状態で、投受光モジュール10の重心位置を測定乃至計算すると、回転中心線Aと略一致する。言い換えると、投受光モジュール10の重心位置が回転中心となるように、回転軸50の支持部材14に対するY方向及びZ方向の位置が設定されている。支持部材14は、回転軸50に対して複数の締結部材(図示せず)等によって固定されており、支持部材14と回転軸50とが相対的に回転しないようになっている。
【0040】
投受光モジュール10の重心位置を回転中心線Aと略一致させることで、投受光モジュール10の回転による慣性モーメントが低減するとともに、例えば振動などによって生じるモータ20の負荷が抑制され、さらに、投受光モジュール10の回転速度の低下も抑制される。投受光モジュール10の重心位置と、回転中心線Aとが厳密に一致していなくてもよく、例えば製造公差上で許容される程度のずれ量であれば問題とはならない。また、投受光モジュール10の重心位置と、回転中心線Aとが僅かにずれていても、実質的に略一致しているとみなすこともできる。例えば、投受光モジュール10の慣性モーメントを十分に低減でき、振動などによって生じるモータ20の負荷が十分に抑制され、さらに、投受光モジュール10の回転速度の低下が抑制されればよいので、このような効果を奏することができるのであれば、投受光モジュール10の重心位置と、回転中心線Aとの僅かなずれは許容され、両者が略一致しているということができる。
【0041】
上述したように集光部12を大口径化していることで重量が嵩んでいる。そのため、場合によっては、投受光モジュール10の重心位置が集光部12に接近しすぎて、当該重心位置と回転中心線Aとを近づけるための設計が困難になることが考えられる。このような場合には、図5のみに仮想線で示すように、重り16を投受光モジュール10における投光部11側に設けることができる。これにより、投受光モジュール10の重心位置を投光部11と集光部12との中間部に位置付けることができる。重り16は、回転中心線Aを挟んで集光部12と反対側に配置される。重り16は、支持部材14に固定してもよいし、投光部11に固定してもよい。重り16の数は1つに限られるものではなく、複数であってもよい。
【0042】
投受光モジュール10の回転軸と重心位置とが近いほど回転を安定させ、回転軸50への負荷も抑えることができるが、投光部11と集光部12とで重さが違うことが想定される。この構成により、当該重さの違いに起因する投受光モジュール10の重心位置と回転軸50とのずれを抑えるように、投受光モジュール10における集光部12よりも投光部11に近い位置に重りが設けられているため、回転を安定させるとともに、回転軸50への負荷を抑えることができる。
【0043】
重り16を設けることなく、投光部11の光源用筐体の材料を、集光部12のレンズ用筐体の材料よりも密度の高い材料としてもよい。例えば、体積の大きい支持部材14やレンズ用筐体をアルミニウムなどの相対的に低密度な材料で構成し、光源用筐体を亜鉛やステンレス鋼(SUS)などの相対的に高密度な材料で構成することができる。これにより、投光部11を重くすることができるので、投受光モジュール10の重心位置を投光部11と集光部12との中間部に位置付けることができる。尚、投光部11の筐体の材料を、集光部12の筐体の材料よりも密度の高い材料とし、かつ、重り16を投受光モジュール10における投光部11側に設けてもよい。また、光源用筐体の体積がレンズ用筐体の体積よりも小さく構成されている。
【0044】
図7に示すように、ハウジング40は、投受光モジュール10、モータ20及びモータ制御部30を格納するための部材であり、2段構造となっている。すなわち、ハウジング40は、上側部分を構成している上側ハウジング構成部41と、下側部分を構成している下側ハウジング構成部42とを有している。また、2段構造を2層構造と呼ぶこともでき、この場合、上側ハウジング構成部41が第1層、下側ハウジング構成部42が第2層となる。
【0045】
上側ハウジング構成部41と下側ハウジング構成部42とは一体物であってもよいし、別部材で構成されていてもよい。この実施形態では、上側ハウジング構成部41と下側ハウジング構成部42とが別部材で構成されている場合について説明する。この場合、例えば図示しない締結部材等を用いて上側ハウジング構成部41と下側ハウジング構成部42とを結合することでハウジング40を形成できる。
【0046】
図7に示すように、上側ハウジング構成部41は、上側周壁部43と上壁部44とを有している。上壁部44はYZ平面に沿って延びている。上側周壁部43は、上壁部44の周縁部から下側ハウジング構成部42へ向けて延びている。上側ハウジング構成部41の内部に形成される空間は、上側空間R1とされている。上側空間R1は、下側ハウジング構成部42によって閉塞されており、上側空間R1が密閉されている。
【0047】
図2及び図4に示すように、上側周壁部43の手前側部分には、投光窓43aと受光窓43bとが設けられている。投光窓43a及び受光窓43bは光透過性を持つ部材で構成されている。図4に示すように、投光窓43aは、投光部11におけるスリット光S1が照射される面と対向するように配置されている。投受光モジュール10が回転しても、投受光モジュール10の回転角度が後述する所定の角度範囲内であれば、スリット光S1が投光窓43aから照射可能となるように投光窓43aの大きさ及び位置が設定されている。
【0048】
また、受光窓43bは、集光部12の光入射面と対向するように配置されている。投受光モジュール10が回転しても、投受光モジュール10の回転角度が後述する所定の角度範囲内であれば、反射光S2が受光窓43bから集光部12に入射可能となるように受光窓43bの大きさ及び位置が設定されている。
【0049】
図7に示すように、下側ハウジング構成部42は、基板部45と、基板部45から下方へ延びる下側周壁部46と、蓋部材47とを有している。基板部45は、YZ平面に沿って延びており、上側ハウジング構成部41の下側開放部を閉塞する部分である。蓋部材47は下側周壁部46の下端部に取り付けられる。下側ハウジング構成部42の内部に形成される空間は、下側空間R2とされている。下側空間R2は、蓋部材47によって密閉されている。要するに、ハウジング40は内部を密閉する構造を有している。密閉する構造とは、外部の埃やゴミがハウジング40の内部に侵入するのを抑制する構造のことであり、例えば防塵構造等と呼ぶことができる。尚、ハウジング40は完全に密閉されていなくてもよく、例えば空気が僅かに出入り可能な隙間が存在しても構わない。
【0050】
図3及び図7にも示すように、下側ハウジング構成部42の下側周壁部46には、左右両側にそれぞれ窪み46aが形成されている。投受光モジュール10の回転軸に沿って見たとき、投受光モジュールを格納する上側空間R1の幅は、モータ20を格納する下側空間R2の幅よりも大きく構成され、ハウジング40の外壁には、上側空間R1と下側空間R2との段差によって窪み46aが形成されている。窪み46aは、例えば光学式変位計1の設置時に作業者が指を入れて把持する部分として利用できる。尚、窪み46aは、必要に応じて設ければよい。この構成により、ハウジング40内にデッドスペースを作ることなく、ユーザの利便性を向上に寄与する把持部を設けることができる。
【0051】
図7に示すように、下側空間(第2空間)R2には、投受光モジュール10を一体的に回転させるためのモータ20が格納される。下側空間R2に格納されたモータ20の中心軸は回転軸50の軸芯と一致しており、上下方向に延びる姿勢となる。一方、上側空間(第1空間)R1には投受光モジュール10が格納される。上側空間R1と下側空間R2とは投受光モジュール10の回転軸(モータ20の中心軸)方向に並んでいるので、下側空間R2に格納されるモータ20に対して、上側空間R1に格納される投受光モジュール10は当該モータ20の中心軸方向に並ぶように配置されることになる。言い換えると、上段には投受光モジュール10が配置され、下段にはモータ20が配置された複数段構造の光学式変位計1となっている。
【0052】
投受光モジュール10がモータ20に対してその中心軸方向に並ぶように配置されるので、投受光モジュール10の投光部11と集光部12の位置関係を設定する際に、モータ20の影響を受けにくくなる。したがって、例えば設置距離が比較的短い場合のように、投光部11と集光部12との間の間隔を大きく開けられないことを考慮した設計も可能である。
【0053】
光学式変位計1は、投受光モジュール10の回転軸50を回転可能に支持するためのベアリング51を更に備えている。投受光モジュール10は、上述したように重量が嵩むので、例えば図1に示す姿勢で光学式変位計1を使用すると、投受光モジュール10の重量により、回転軸50にはモーメント荷重が生じる。具体的には、回転軸50におけるベアリング51によって支持される部分と、投受光モジュール10の重心位置との相違によって回転軸50には軸芯を水平面に対して傾斜させる方向のモーメント荷重が作用することになる。特に上述した2段構造の場合、上側ハウジング構成部41と下側ハウジング構成部42とが、モータ20の中心軸(投受光モジュール10の回転軸)方向に並ぶ構成となっているため、回転軸50におけるベアリング51によって支持される部分と、投受光モジュール10の重心位置との相違は相対的に大きくなりやすい。このことに対し、本実施形態のベアリング51は、回転軸50におけるベアリング51によって支持される部分と、投受光モジュール10の重心位置との相違によって生じるモーメント荷重を支持可能に構成されている。
【0054】
上記モーメント荷重を支持可能なベアリング51として、例えば円環状の外輪部材51a及び内輪部材51bの間に複数のローラ51cを配列し、周方向に隣合うローラ51cの軸線を互いに直交させるようにしたクロスローラベアリングを用いることができる。すなわち、下側ハウジング構成部42の基板部45には、外輪部材51aが嵌め込まれる段差部45aが環状に形成されている。外輪部材51aは、段差部45aにはめ込まれた状態で基板部45に固定される。一方、回転軸50の上側部分には、内輪部材51bが嵌合する嵌合部50aが形成されている。内輪部材51bは、嵌合部50aに嵌合した状態で固定されている。尚、内輪部材51bは、投受光モジュール10の支持部材14に固定してもよい。
【0055】
ベアリング51としてクロスローラベアリングを用いることで、ローラ51cが外輪部材51a及び内輪部材51bに対して線接触することになるので、ボールタイプのベアリングと比べて剛性が大幅に向上する。よって、軸線方向に薄く、コンパクトな軸受構造としながら、回転軸50の径方向の荷重(ラジアル荷重)だけでなく、軸方向の荷重(スラスト荷重)を受けることができ、上記モーメント荷重に対する剛性を向上させることができる。このため、光学式変位計1の運用時の姿勢がどのような姿勢であってもスムーズな回転を実現できる。
【0056】
ベアリング51は、モータ20に内蔵してもよい。また、ベアリング51は、クロスローラベアリング以外であってもよい。クロスローラベアリング以外を用いる場合には、例えば2つ以上のボールベアリングを回転軸50の軸方向に互いに間隔をあけて配置する。これにより、上記モーメント荷重を支持可能な軸受構造となる。2つ以上のボールベアリングを用いる場合には、一のボールベアリングを下側ハウジング構成部42の基板部45に保持し、他のボールベアリングをモータ20に内蔵することもできる。
【0057】
光学式変位計1は、回転軸50の回転角度、即ち投受光モジュール10の回転角度を検出するためのエンコーダ52を更に備えている。エンコーダ52は、光学式のエンコーダである。光学式のエンコーダは従来から周知であり、図示しないが、例えば回転軸50の下端部に固定されて当該回転軸50と共に回転する回転板と、ハウジング40に固定された固定板とを有しており、発光体から照射された光を、回転板及び固定板に等間隔に形成されたスリットを通して受光体で受光し、その受光量を電気信号に変換することでパルスを生成して出力可能に構成されている。
【0058】
エンコーダ52を光学式のエンコーダとすることで、磁気式と比較して回転角度の検出精度が向上する反面、埃等に弱くなる。このことに対して、エンコーダ52をハウジング40の内部、具体的には上述したように密閉されている下側空間R2に格納し、エンコーダ52に埃等が付着しないようにしている。例えば、投受光モジュール10が格納された上側空間R1に撮像部13の位置姿勢を調整する際などにハウジング40内にゴミや埃が侵入した場合であっても、投受光モジュール10が格納されて回転する上側空間R1から、エンコーダ52が格納されている下側空間R2へのゴミや埃の侵入を防ぐようにエンコーダ52が格納されている空間は密閉されている。よって、精度が高い一方でゴミや埃の影響を受けやすい光学式エンコーダを用いることが容易となり、高精度な測定が可能になる。
【0059】
モータ20は、投受光モジュール10を直接駆動するダイレクトドライブモータである。ダイレクトドライブとは、モータ20と、被駆動体との間に減速機構が介在していない駆動形態のことである。尚、後述するが、本発明はダイレクトドライブモータに限定されるものではない。
【0060】
モータ20は、コイルで構成されたステータ21と、永久磁石で構成されたロータ22とを備えている。ロータ22は、回転軸50の外周部に対してベアリング51とエンコーダ52との間に固定されている。ステータ21は、下側ハウジング構成部42に固定されており、ロータ22を囲むように配置されている。
【0061】
モータ制御部30は、例えばマイクロコンピュータやROM、RAM等で構成されており、所定のプログラムにしたがって動作する。具体的には、モータ制御部30は、ステータ21に流す電流を制御することで、モータ20の回転速度を所望の速度にすること、及びモータ20の回転角度を所望の角度にすることができる。モータ制御部30にはエンコーダ52が接続されている。モータ制御部30は、エンコーダ52から出力されたパルス信号に基づいて投受光モジュール10の現在の回転角度を演算することができる。
【0062】
検査設定によりスリット光S1のワークWに対する走査開始位置、走査終了位置、走査範囲などが設定されると、設定された走査開始位置、走査終了位置、走査範囲に対応する投受光モジュール10の回転開始位置、回転終了位置、回転角度等を演算することが可能である。この演算結果に基づいてモータ制御部30がモータ20を制御し、ハウジング40の内部でシャインプルーフの関係を維持した状態の投受光モジュール10を回転させて、スリット光S1をX方向と直交する方向に走査する。
【0063】
投受光モジュール10がハウジング40の上側空間R1に格納されているので、投受光モジュール10の回動角度によっては、投受光モジュール10の一部がハウジング40の内壁へ接触してしまうおそれがある。このことに対し、本実施形態では、光学式変位計1の運用時、即ち、測定時に回転する投受光モジュール10の回転角度範囲は、当該投受光モジュール10がハウジング40の内壁へ接触してしまうのを回避する所定の角度範囲に設定されている。つまり、投受光モジュール10が第1回転角度まで回転したと仮定した場合において、X方向に直交するYZ平面において、投受光モジュール10は、ハウジング40内壁に接触する寸法を有しているものの、測定時に回転する投受光モジュール10の回転角度範囲は、当該投受光モジュール10のハウジング40内壁への接触を回避するために、上記第1回転角度よりも小さい所定の角度範囲に設定されている。この構成により、投受光モジュール10の回転が必要な角度範囲に基づいてハウジング40を設計すれば良いため、ハウジング40の小型化が容易になる。
【0064】
投受光モジュール10の回転角度範囲を所定の角度範囲に設定するための方法としては、例えば、機械的に実現する方法と、ソフトウェアによって実現する方法とがある。本実施形態では、機械的に実現する方法として、図4に示すように機械部品の一例である第1ストッパ61と第2ストッパ62とをハウジング40の内部に設けている。本例では、第1ストッパ61及び第2ストッパ62が基板部45から上方へ突出するように設けられている。投受光モジュール10が回転中心線A周りに矢印B方向に回転すると、投受光モジュール10の一部がハウジング40の内壁へ接触する前に、投受光モジュール10が第1ストッパ61に当接し、それ以上、投受光モジュール10が矢印B方向に回転するのが阻止される。また、投受光モジュール10が回転中心線A周りに矢印C方向に回転すると、投受光モジュール10の一部がハウジング40の内壁へ接触する前に、投受光モジュール10が第2ストッパ62に当接し、それ以上、投受光モジュール10が矢印C方向に回転するのが阻止される。つまり、ハウジング40の内部には、測定時に投受光モジュール10が所定の角度範囲外まで回転するのを阻止する第1ストッパ61及び第2ストッパ62が設けられている。
【0065】
第1ストッパ61及び第2ストッパ62は、例えばゴムや熱可塑性エラストマーのような弾性部材で構成することもできる。また、第1ストッパ61及び第2ストッパ62を金属製とし、支持部材14における第1ストッパ61及び第2ストッパ62が当接する部分に、弾性部材を設けることもできる。これにより、投受光モジュール10が第1ストッパ61及び第2ストッパ62に当接した時に発生する音を小さくすることが可能になる。
【0066】
また、第1ストッパ61及び第2ストッパ62に対して支持部材14を当接させるのが好ましい。投光部11や集光部12等を第1ストッパ61や第2ストッパ62に当接させると、当接時の衝撃によって光軸がずれてしまうおそれがあるためである。また、第1ストッパ61及び第2ストッパ62は、上側周壁部43に設けてもよい。さらに、第1ストッパ61及び第2ストッパ62の一方のみ設けてもよい。
【0067】
次に、ソフトウェアによる方法について説明する。すなわち、モータ制御部30が接触回避制御を実行することにより、投受光モジュール10がハウジング40の内壁へ接触するのを回避することも可能である。モータ制御部30は、エンコーダ52から出力されたパルス信号を演算することで取得した回転角度に基づいて、測定時に投受光モジュール10を所定の角度範囲内で回転させるようにモータ20を制御する。この制御が接触回避制御である。この接触回避制御を実行することにより、ストッパ61、62を設けることなく、投受光モジュール10がハウジング40の内壁へ接触するのを回避できる。尚、接触回避制御を実行する場合においてもストッパ61、62を設けてもよい。
【0068】
投受光モジュール10がハウジング40の内壁へ接触しないようにするのは、測定時であればよい。例えばメンテナンス時や各種設定時のような非測定時には、投受光モジュール10がハウジング40の内壁へ接触しても構わないので、測定時にのみ接触回避制御を実行するように、モータ制御部30を構成することができる。
【0069】
図8に示すように、下側ハウジング構成部42には、基板格納空間(第3空間)R3が設けられている。図4に示す平面視で、基板格納空間R3は、ハウジング40の中央から奥側に偏位しており、従って、モータ20(図7に示す)よりも奥側に位置付けられることになる。また、基板格納空間R3は、投受光モジュール10が格納されている上側空間R1の下方に位置することになるので、上側空間R1とは異なる空間であり、また下側空間R2とも異なる空間である。基板格納空間R3は、投受光モジュール10の回転軸方向に対して、上側空間R1と異なる位置に配置されている一方で、モータ20を格納する下側空間R2と同一の位置に配置されている。投受光モジュール10の回転軸に沿って見たとき、上側空間R1および下側空間R2は、当該回転軸と重複する位置に配置されている一方で、基板格納空間R3は、当該回転軸と非重複となる位置に配置されている。例えば、投受光モジュール10のサイズの方が、モータ20のサイズよりも大きい場合、投受光モジュール10を格納する上側空間R1を1段目、モータ20を格納する下側空間R2および制御部30を格納する基板格納空間R3を2段目とする二段構造とすることで、ハウジング40の外形をよりコンパクトにすることができる。
【0070】
図8に示すように、基板格納空間R3には、モータ制御部30が実装されたモータ制御基板31と、信号処理部32が実装された信号処理基板33と、電源部34が実装された電源基板35とが格納されている。モータ制御基板31および信号処理基板33には、モータ制御部30および信号処理部32として機能するCPU(中央演算処理装置)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)やFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などのプロセッサとともに、当該プロセッサにより実行されるプログラムなどを記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリメモリ)などの記憶素子(図示せず)が搭載される。各基板31、33、35は、下側ハウジング構成部42に対して固定されている。モータ制御部30及び信号処理部32を上側空間R1とは異なる基板格納空間R3に格納しているので、特に発熱し易い投光部11と、モータ制御部30及び信号処理部32とを熱分離することができ、モータ制御部30及び信号処理部32の動作を安定させることができる。なお、制御部3の配置は上記の例に限られるものではなく、例えば、信号処理部32がハウジング40内に格納されている一方で、モータ制御部30がハウジング40の外側に配置されている構成であっても良い。
【0071】
ハウジング40の手前側から反射光S2が入射するので、ハウジング40の奥側に格納されるモータ制御部30、信号処理部32及び電源部34は、投受光モジュール10に対して、反射光S2が入射する側とは反対側に配置されることになる。これにより、モータ制御部30、信号処理部32及び電源部34が変位測定の妨げとならないようにすることができる。また、Z方向を基準とすると、モータ制御部30、信号処理部32及び電源部34は、投受光モジュール10に対して、Z方向に隣接して配置されている。また、基板格納空間R3は蓋部材47によって密閉されているので、埃等が各基板31、33、35するのが抑制される。
【0072】
信号処理基板33が最も上に位置し、信号処理基板33の下にモータ制御基板31が位置し、モータ制御基板31の下に電源基板35が位置している。最も上に位置する信号処理基板33が投受光モジュール10に最も接近することになるが、この信号処理基板33は、投受光モジュール10の支持部材14よりも下方に位置している。これにより、投受光モジュール10が所定の角度範囲で回動する際に信号処理基板33に接触することはない。つまり、モータ制御部30、信号処理部32及び電源部34の全てが、測定時に回転する投受光モジュール10との接触を回避するように配置されている。
【0073】
電源部34は、投光部11、撮像部13、モータ制御部30及び信号処理部32等に電力を供給する部分である。この実施形態では、電源部34、モータ制御部30及び信号処理部32をそれぞれ異なる基板に実装しているが、これに限らず、任意の2つ以上を統合して1つの基板に実装してもよい。
【0074】
信号処理部32は、例えばマイクロコンピュータやROM、RAM等で構成されており、所定のプログラムにしたがって動作し、撮像部13の受光量に基づいてワークWの断面プロファイルデータを生成する部分である。図4に符号70で示す配線によって各基板31、33、35と、投光部11及び撮像部13とが接続されている。この配線70は柔軟性を持っており、投受光モジュール10の回転動作に影響を与えないように構成されている。
【0075】
図9に示すように、撮像部13のイメージセンサ13aは、X方向に対応するU方向及び当該U方向に直交するV方向に二次元配列された複数の画素を有する。信号処理部32は、イメージセンサ13aが有する各画素の輝度値(受光量)を取得し、輝度値変化の近似曲線を求める。信号処理部32は、求めた近似曲線における各画素列のV方向におけるピーク位置を演算し、演算したピーク位置をワークWの変位として取得する。
【0076】
信号処理部32は、上述したピーク位置の演算を投受光モジュール10の回転動作中、複数回実行する。信号処理部32は、得られたピーク位置と、ピーク位置が得られた時の投受光モジュール10の回転角度とを関連付け、これを測定データとして記憶する。投受光モジュール10の回転角度およびUV座標と、ワークのXYZ座標とは対応しているので、測定データに基づいて、所望の回転角度におけるワークWの断面プロファイルデータを生成できる。また、異なる回転角度におけるワークWの断面プロファイルを複数取得することで、信号処理部32がワークWの三次元形状のデータを生成することが可能である。
【0077】
(実施形態1の変形例1)
図10は、実施形態1の変形例1に係る投受光モジュール10を示している。変形例1の投受光モジュール10は、投光部11、集光部12、撮像部13及び受光側反射部材15の位置が上記実施形態のものとは異なっている。具体的には、投受光モジュール10の回転軸50は、YZ平面において、集光部12と重複する位置に配置されている。すなわち、上述したように、投受光モジュール10の回転による慣性モーメントをできるだけ低減したいが、図5に仮想線で示すような重り16を設けると投受光モジュール10の重量が増加して好ましくない場合があるので、重り16を設けることなく、投受光モジュール10の回転による慣性モーメントを低減する方法として、重量が嵩む集光部12と、投受光モジュール10の回転軸50とをYZ平面において重複させる方法を採用することができる。これにより、投受光モジュール10の回転軸50の延長線上に集光部12の少なくとも一部が配置されることになる。尚、回転軸50が集光部12と完全に重複していなくてもよく、回転中心線A方向から見たとき、回転軸50の少なくとも一部と、集光部12の少なくとも一部とが互いに重複していればよい。これにより、重り16を不要にすること、または重り16を軽くすることができる。
【0078】
また、変形例1では、撮像部13と受光側反射部材15とが集光部12を挟むように配置されている。これにより、変形例1の集光部12は、YZ平面において、受光側反射部材15と撮像部13との間の光路上に配置され、受光側反射部材15で反射された光を集光して撮像部13に入射させる。
【0079】
さらに、変形例1の投受光モジュール10は、投光側反射部材17を備えている。すなわち、変形例1の投光部11は、光学系11bから照射されるスリット光S1が左奥側へ向かうように配置されている。これにより、投光部11を回転中心線Aに近づけることができ、投受光モジュール10の回転による慣性モーメントをより一層低減できるが、ワークWは、光学系11bから照射されるスリット光S1と反対側に位置している。このことに対応するように、投光側反射部材17は、投光部11の光学系11bから出射されたスリット光S1をワークW側へ向けて反射させるように配置されている。この投光側反射部材17は、支持部材14または投光部11に固定されており、投受光モジュール10が回転しても投光部11に対する相対的な位置関係は変化しない。
【0080】
(実施形態1の変形例2)
図11及び図12は、実施形態1の変形例2に係る光学式変位計1を示している。図11は、光学式変位計1の内部構造を上側から見た図であり、図12は、光学式変位計1の内部構造を下側から見た図である。
【0081】
変形例2の光学式変位計1では、モータ20がダイレクトドライブモータではなく、減速機構25を介して投受光モジュール10を回転させる構成となっている。図11に示すように、モータ20は、投受光モジュール10と共に上側空間R1に格納されている。図12に示すように、モータ20の出力軸20aは基板部45を下方へ貫通して下側空間R2に達している。また、投受光モジュール10に固定された被駆動軸10aも基板部45を下方へ貫通して下側空間R2に達している。
【0082】
減速機構25は、下側空間R2に格納されており、モータ20の出力軸20aに固定された駆動プーリ25aと、被駆動軸10aに固定された従動プーリ25bと、駆動プーリ25a及び従動プーリ25bに巻き掛けられた伝動ベルト25cとを備えている。駆動プーリ25aが従動プーリ25bよりも小径とされている。伝動ベルト25cはタイミングベルトである。
【0083】
変形例2では、上側空間R1に格納されたモータ20の出力軸20aが回転すると駆動プーリ25aが回転し、駆動プーリ25aの回転力は伝動ベルト25cを介して従動プーリ25bに伝達される。従動プーリ25bに伝達された駆動力は被駆動軸10aに伝達されるので、モータ20によって投受光モジュール10を回転させることができる。変形例2の場合、被駆動軸10aが投受光モジュール10の回転軸となる。
【0084】
尚、減速機構25は、プーリ25a、25cと伝動ベルト25cとの組み合わせに限定されるものではなく、例えば駆動スプロケット、従動スプロケット及びタイミングチェーンの組み合わせや、複数枚のギヤの組み合わせで構成されていてもよい。モータ20の種類は、例えばDCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ等を用いることができる。
【0085】
(実施形態2)
図13図15は、本発明の実施形態2に係る光学式変位計1を示すものである。この実施形態2では、ハウジング400の構造、モータ20と投受光モジュール100の位置関係等が実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0086】
図13及び図15に示すように、ハウジング400は1段構造となっており、このハウジング400の内部に、各基板31、33、35も格納されている。ハウジング400の内部を仕切ることで、各基板31、33、35が格納されている空間と、投受光モジュール100が格納されている空間とが異なる空間となるようにすることもできる。
【0087】
ハウジング400は、下壁部401と、下壁部401の周縁部から上方へ延びる周壁部402と、上方の開放部分を閉塞するための上側蓋部材403とを備えている。周壁部402の手前側部分には、投光部11から照射されたスリット光S1が透過する投光窓402aと、ワークWから反射した反射光S2が透過する受光窓402bとが設けられている。
【0088】
図15に示すように、下壁部401の中央部には、ハウジング400の内部へ突出するとともに回転中心線A周りに延びる環状壁部404が形成されている。環状壁部404の先端部には回転中心線Aの径方向に延びる端壁部405が形成されている。端壁部405の中央部には、回転軸50が挿入される開口部405aが形成されている。
【0089】
環状壁部404の内方にモータ格納空間R4が形成されている。モータ20のステータ21及びロータ22は、モータ格納空間R4に格納されている。モータ20のステータ21は、環状壁部404の内面に固定されている。つまり、本実施形態では、環状壁部404及び端壁部405によってステータ保持部が構成されている。一方、モータ20のロータ22は、回転軸50に固定されている。
【0090】
ベアリング51の外輪部材51aは、端壁部405に形成された段差部405bにはめ込まれた状態で端壁部405に固定される。これにより、ベアリング51は、環状壁部404及び端壁部405によって構成されたステータ保持部に保持されることになる。一方、内輪部材51bは、回転軸50に形成された嵌合部50aに嵌合している。
【0091】
モータ格納空間R4には、エンコーダ52も格納されている。ハウジング400の下端部には、下側蓋部材406が設けられている。下側蓋部材406によりモータ格納空間R4が密閉されるので、埃等がエンコーダ52に付着しないようになっている。
【0092】
投受光モジュール100は、実施形態1と同様に、投光部11、集光部12、撮像部13、重り16等を備えているが、投光部11、集光部12及び撮像部13を一体的に保持する支持部材110が実施形態1の支持部材14とは大きく異なっている。
【0093】
すなわち、実施形態1では投受光モジュール10とモータ20(ベアリング51及びエンコーダ52)とが回転軸50方向(高さ方向)に並んでいるのに対し、実施形態2では、投受光モジュール100の回転軸50方向における高さ範囲内の一部に、モータ20、回転軸50を支持するベアリング51、またはモータ20に接続されたエンコーダ52の少なくとも1つが含まれている。これにより、投受光モジュール100の投光部11と集光部12の位置関係を設定する際に、例えば設置距離が比較的長い場合のように、投光部11と集光部12との間の間隔を大きく開けることを考慮した設計が可能になる。
【0094】
具体的に説明すると、支持部材110は、回転軸50に固定される固定部111と、一側縦板部112及び他側縦板部113と、集光部保持部114と、投光部保持部115とを備えている。固定部111、一側縦板部112、他側縦板部113、集光部保持部114及び投光部保持部115は、一体成形されていてもよいし、別部材を組み合わせることによって構成されていてもよい。
【0095】
固定部111は、回転軸50の径方向に延びる板状をなしており、この実施形態では、図14に示すように円形状となっていて、図15に示すように端壁部405を上方から覆うように配置される。一側縦板部112は、図15の右側、即ち固定部111における回転軸50の径方向一側から回転軸50方向に沿って下方へ延びている。他側縦板部113は、図15の左側、即ち固定部111における回転軸50の径方向他側から回転軸50方向に沿って下方へ延びている。一側縦板部112及び他側縦板部113は、環状壁部404と対向するように配置される。また、一側縦板部112及び他側縦板部113は、環状壁部404と同様に円弧状に湾曲しており、投受光モジュール100の回転時には、環状壁部404との間に一定の隙間を保った状態で回転する。
【0096】
尚、一側縦板部112及び他側縦板部113は、一体的に形成されていてもよい。例えば固定部111の周縁部から下方へ延びる環状の周壁部(図示せず)を形成し、この周壁部における周方向の一部で一側縦板部112及び他側縦板部113をそれぞれ形成することもできる。
【0097】
集光部保持部114は、一側縦板部112の下端部から回転軸50の径方向に延びる板状をなしている。集光部保持部114の上面には、集光部12、撮像部13、カバーガラス13c等が保持されている。このため、投受光モジュール100の回転軸50は、YZ平面において、集光部12及び撮像部13と非重複となる位置に配置されることになる。
【0098】
投光部保持部115は、他側縦板部113の下端部から回転軸50の径方向に延びる板状をなしている。投光部保持部115の上面には、投光部11、重り16等が保持されている。このため、投受光モジュール100の回転軸50は、YZ平面において、投光部11と非重複となる位置に配置されることになる。
【0099】
このように、集光部保持部114と投光部保持部115とは、回転軸50を挟むように配置されるとともに、回転軸50の径方向について互いに反対方向へ突出している。重り16は、投光部保持部115に固定することができる。また、重り16を固定部111における一側縦板部112が形成されている側と反対側に固定してもよい。
【0100】
固定部111、一側縦板部112、他側縦板部113、集光部保持部114及び投光部保持部115を有する支持部材110は、X方向断面において複数の屈曲部110Aを有している。このように支持部材110が複数の屈曲部110Aを有する構造となっているので、支持部材110が平板である場合に比べて剛性を高めることができる。
【0101】
モータ20及びベアリング51は、支持部材110の一側縦板部112と他側縦板部113との間に配置される。そして、ベアリング51は、一側縦板部112と他側縦板部113との間においてモータ20よりも固定部111に近い箇所に配置されることになる。これにより、投受光モジュール100の高さ範囲内の一部に、モータ20及びベアリング51が含まれることになる。尚、図示しないが、モータ20のみが投受光モジュール100の高さ範囲内に含まれていてもよいし、ベアリング51のみが投受光モジュール100の高さ範囲内に含まれていてもよい。
【0102】
少なくともモータ20と、ベアリング51と、エンコーダ52とによって、回転駆動部が構成されている。また、モータ20は、スリット光を通過させる投光窓402aと反射光を通過させる受光窓402b(総称して、投受光窓とも呼ぶ)とが設けられた投受光面に隣接する壁面(下壁部401および環状壁部404)に固定されている。
【0103】
本実施形態の投受光窓は、投光窓402aと、別体の受光窓402bとから構成されているが、投光窓と受光窓とが一体的に形成されていても良い。また、投受光面は、ハウジング400の外形を構成する面のうち、投受光窓が設けられた面であり、図4図14のように各窓によって形成される複数の平面からなる面である。投受光窓が一体的に形成されている場合には、投受光面は、当該投受光窓が形成する1つの平面からなる面であっても良い。
【0104】
支持部材110は、X方向に直交し、かつ、回転駆動部が存在する平面内に投受光モジュール100が位置するように、当該投受光モジュール100を支持している。支持部材110は、複数の屈曲部110Aによって形成された回転軸方向に高さが異なる第1部分(例えば、固定部111)および第2部分(例えば、集光部保持部114及び投光部保持部115)を有し、回転駆動部および投受光モジュール100は、回転軸を含む少なくとも一部の断面において、第1部分が形成する平面と第2部分が形成する平面との間に存在する。この構成により、支持部材110の剛性を高めるとともに、ハウジング400のX方向の厚みを減らすことが可能となる。
【0105】
また、図示しないが、エンコーダ52が投受光モジュール100の高さ範囲内に含まれていてもよい。例えばエンコーダ52を回転軸50の中間部や上端部に配設することで、エンコーダ52が投受光モジュール100の高さ範囲内に含まれることになる。エンコーダ52のみが投受光モジュール100の高さ範囲内に含まれていてもよいし、モータ20とエンコーダ52のみが投受光モジュール100の高さ範囲内に含まれていてもよいし、ベアリング51とエンコーダ52のみが投受光モジュール100の高さ範囲内に含まれていてもよい。
【0106】
受光側反射部材15は、YZ平面において、集光部12とハウジング400が有する受光窓402bとの間の光路上に配置され、受光窓402bを透過した反射光S2を集光部12へ向けて反射させる。すなわち、集光部12は、YZ平面において、受光側反射部材15と撮像部13との間の光路上に配置され、受光側反射部材15で反射された反射光S2を集光して撮像部13に入射させる。これにより、YZ平面における撮像部13または集光部12と投受光モジュール100の回転軸50との間の距離が短くなるように、反射光S2を投光部11側に折り返すことができる。
【0107】
(実施形態2の変形例)
図16は、実施形態2の変形例に係る光学式変位計1を示すものである。この変形例は、受光側反射部材15が省略されている。集光部12の光軸がハウジング400の受光窓402bに向くように、集光部12を配置することで、反射部材15が不要になる。
【0108】
また、この変形例は、投光部11と集光部12との間隔を広く確保する場合のレイアウトの一例である。例えば設置距離が比較的長い場合に本変形例を適用することができる。
【0109】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば実施形態2において、投光側反射部材を設けてもよい。また、実施形態2において、減速機構を備えていてもよい。また、実施形態1、2において、モータ20をハウジング40、400の外部に設けてもよい。
【0110】
(実施形態3)
図17は、ワークWの三次元形状を測定する様子を示す模式図である。図18は、本発明の実施形態3に係る光学式変位計1のブロック図である。図17における符号W1は、ワークWの表面を示している。光学式変位計1は、スリット光S1をワークWの上方から表面W1に照射するように設置されている。モータ20は、支持部材14の回転軸50を中心に、投受光モジュール10を時計回り、又は、反時計回りの二方向に往復するように一体的に揺動させる。時計回りとは、回転軸50の延びる方向(X方向)に沿って見たときに右回りとなる方向であり、反時計回りとは、回転軸50に沿って見たときに左回りとなる方向である。モータ制御部30は、モータ20を制御することで投受光モジュール10を上記二方向に往復するように揺動させて、スリット光S1をX方向と直交する方向に走査する。これにより、撮像部13は、モータ制御部30により投受光モジュール10が上記二方向の一方向に揺動している間に、複数の受光画像を取得することが可能になる。
【0111】
上述したように、投受光モジュール10を回転させることによってスリット光S1をワークWに対してX方向と直交する方向に走査しているので、撮像制御部13bは、投受光モジュール10の異なる回転角度のそれぞれにおいて、イメージセンサ13aから読み出した画素信号に基づいて、ワークWのZ方向の高さを示す断面プロファイルを生成することができる。
【0112】
図17に示すように、表面W1が同一高さ(表面W1とY方向とが平行)のワークWの変位を測定する場合、仮に、ワークWの表面W1と平行な方向(矢印Eで示す)に光学式変位計1を直動させれば、表面W1が同一高さであることから、イメージセンサ13aの画素信号を読み出す対象となる領域を部分領域に絞って処理を高速化することが可能になる。
【0113】
一方、本実施形態のように投受光モジュール10を回転させることによってスリット光S1をX方向と直交する方向に走査する場合には、以下に説明するようにワークWの表面W1をY方向の全体で測定することができなくなる場合がある。すなわち、図17において、イメージセンサ13aで読み出すことが可能な最大の領域を、撮像部13の回転軸50の中心に所定の深さを有する略円弧状の最大領域(測定可能範囲)F1とする。変位測定時にイメージセンサ13aの画素信号を読み出す対象となる領域を常時、最大領域F1にしてしまうと、信号処理部32の処理量が増大して測定の高速化が困難になるので、イメージセンサ13aの画素信号を読み出す対象となる領域を線L1よりも下側の領域、即ち部分領域(取込範囲)F2とすることが考えられる。
【0114】
ところが、投受光モジュール10を回転させる場合には、部分領域F2が投受光モジュール10の回転中心線Aを中心とした円弧状に長い領域となる。このため、ワークWの表面W1が同一高さであっても、直線L2よりも右側の部分は部分領域F2の外側に位置することになるので、部分領域F2では測定できなくなる。
【0115】
このことに対して、図19に示すように、本実施形態3の撮像制御部13bは、イメージセンサ13aの画素信号を読み出す対象となる部分領域F3(斜線にて示す部分であり、取込範囲に相当する)を、投受光モジュール10の回転角度に応じて動的に変化可能に構成されている。撮像制御部13bは、モータ20の回転角度を後述する回転角度取得部36に基づいて取得可能に構成されているので、モータ20の回転角度に応じて、部分領域F3のイメージセンサ13aにおける位置を当該イメージセンサ13aのV方向に変化させることができる。
【0116】
撮像制御部13bが部分領域F3の位置を変化させる例について、図19に基づいて説明する。撮像制御部13bは、投受光モジュール10の回転角度がθ1の時には、部分領域F3がイメージセンサ13aの下側領域となるように、部分領域F3のイメージセンサ13aにおける位置を設定する。撮像制御部13bは、投受光モジュール10の回転角度がθ2の時には、部分領域F3がイメージセンサ13aの上下方向中間領域となるように、部分領域F3のイメージセンサ13aにおける位置を設定する。撮像制御部13bは、投受光モジュール10の回転角度がθ3の時には、部分領域F3がイメージセンサ13aの上側領域となるように、部分領域F3のイメージセンサ13aにおける位置を設定する。つまり、投受光モジュール10の回転角度がθ1からθ3に変化する際には、その角度変化に伴って部分領域F3がイメージセンサ13aの下側領域から上側領域に変化し、反対に、投受光モジュール10の回転角度がθ3からθ1に変化する際には、その角度変化に伴って部分領域F3がイメージセンサ13aの上側領域から下側領域に変化する。尚、モータ20の回転角度と、投受光モジュール10の回転角度とは対応する関係にあるので、本制御を行うにあたり、モータ20の回転角度と、投受光モジュール10の回転角度のいずれを用いてもよい。ここでは、モータ20が、後述するダイレクトドライブモータである場合を想定しているため、モータ20の回転角度と投受光モジュール10の回転角度とは等しくなる。なお、モータ20と減速機構25などを用いる場合、回転比によって、モータ20の回転角度と投受光モジュール10の回転角度とが異なる場合もある。
【0117】
撮像制御部13bは、投受光モジュール10の回転角度がθ1の時の部分領域F3のV方向の幅H1と、投受光モジュール10の回転角度がθ2の時の部分領域F3のV方向の幅H2と、投受光モジュール10の回転角度がθ3の時の部分領域F3のV方向の幅H3とを全て同じにする。要するに、撮像制御部13bは、投受光モジュール10の異なる回転角度において、部分領域F3のV方向の読み出し画素数を共通にし、略円弧状の測定可能範囲F1のうち受光量が読み出される領域に共通のZ方向の高さが含まれるように、各回転角度ごとに部分領域F3を変化させる。ワークWの表面が平坦であれば、撮像制御部13bは、略円弧状の測定可能範囲F1のうち受光量が読み出される領域が、当該円略弧状の一端から他端にかけて、Z方向に略一致するように、各回転角度ごとに部分領域F3を変化させることもできる。これにより、撮像制御部13bは、投受光モジュール10の回転角度によらず、Z方向の測定範囲の少なくとも一部が共通となるように、イメージセンサ13aから画素信号を読み出す部分領域F3をV方向に移動させることができる。尚、投受光モジュール10の回転角度がθ1の時の部分領域F3のV方向の幅H1と、投受光モジュール10の回転角度がθ2の時の部分領域F3のV方向の幅H2とは異なっていてもよい。同様に、投受光モジュール10の回転角度がθ1の時の部分領域F3のV方向の幅H1と、投受光モジュール10の回転角度がθ3の時の部分領域F3のV方向の幅H3とは異なっていてもよい。
【0118】
また、投受光モジュール10および信号処理部32の少なくとも一方は、回転角度に応じて光量に関するパラメータを変化させてもよい。光量に関するパラメータは、例えば、投光部11により出射されるスリット光S1の光量、イメージセンサ13aの露光時間、イメージセンサ13aのゲインおよび信号処理部32によりピーク位置を検出するための検出感度(ピークとして検出する受光量のしきい値)の少なくともいずれかを含む。
【0119】
仮に出射光量が回転角度によらず一定とすると、投光部11の投光軸と撮像部13の受光軸とがXY平面に対して正反射の関係(入射角と反射角とが等しくなる関係)となる回転角度(以下、基準角度とも呼ぶ)の時の反射光S2の受光量(反射光量)と比較して、他の回転角度の時の反射光量は減少する傾向にある。例えば、図19においては、θ3からθ1に変化するにつれて、反射光量は減少する傾向にある。したがって、投光制御部11cは、回転角度の基準角度からの変化量が増大するにつれて出射光量を高くしてもよい。また、撮像制御部13bは、回転角度の基準角度からの変化量が増大するにつれて、イメージセンサ13aの露光時間を長くしてもよいし、イメージセンサ13aのゲインを大きくしてもよい。これらにより、反射光量の減少による各受光画像の受光量の低下を抑え、ピーク位置の演算精度を高めることができる。
【0120】
また、信号処理部32は、受光画像からピーク位置のUV座標を演算する際に、当該受光画像が取得された回転角度の基準角度からの変化量が増大するにつれて、検出感度を小さくしてもよい。これにより、反射光量の減少による各受光画像の受光量の低下に伴い、ピーク位置の演算精度が低下することを抑制することができる。
【0121】
なお、基準角度は、正反射の関係となる回転角度に限らず、ワークの形状、材質、表面状態や外部環境に応じて設定してもよい。
【0122】
(高さ画像の生成)
図18に示すように、実施形態3の光学式変位計1は、モータ20による回転角度を取得する回転角度取得部36を備えている。回転角度取得部36は、上述した投受光モジュール10の回転角度を検出するエンコーダ52で構成されていてもよいし、モータ20による回転開始のタイミングを検出し、投受光モジュール10が等速運動しているものとして当該投受光モジュール10の回転角度を演算する演算部で構成されていてもよい。
【0123】
信号処理部32は、イメージセンサ13aにより出力された受光量分布と、回転角度取得部36により検出されたモータ20による回転角度とを取得する。信号処理部32は、イメージセンサ13aにより出力された受光量分布に基づいてUV座標を算出し、当該UV座標およびモータ20による回転角度を所定の変換条件に基づいてXYZ座標に変換する変換処理を実行する部分である。
【0124】
投受光モジュール10が揺動するものであることから、信号処理部32は、投受光モジュール10が時計回りと反時計回りとのうち、一方向に揺動している間に得られた複数の受光画像を撮像部13から取得する。さらに、信号処理部32は、投受光モジュール10が一方向に揺動している間に得られた複数の受光画像に対応する回転角度を回転角度取得部36から取得する。そして、信号処理部32は、投受光モジュール10が一方向に揺動している間に得られた複数の受光画像および各受光画像に対応する回転角度を、所定の変換条件に基づいて複数のXYZ座標に変換する。
【0125】
光学式変位計1は、高さ画像出力部37を備えている。高さ画像出力部37は、例えばマイクロコンピュータやROM、RAM等で構成されており、ROM等に格納された所定のプログラムにしたがって動作し、信号処理部32による変換処理で得られたXYZ座標を取得する。高さ画像出力部37は、取得したXYZ座標に基づいて、XY平面におけるワークWの高さを示す高さ画像を出力する。高さ画像は、各画素を頂点としてポリゴンが形成されている三次元画像でなく、また三次元点群を真上のアングルから見ただけのものではなく、輝度値の代わりに高さデータを含んでいる画像のことであり、距離画像と呼ぶこともできる。
【0126】
(取込範囲の設定)
本実施形態に係る光学式変位計1では、ユーザが高さ画像を見ながら、測定結果を取り込む対象となる取込範囲を設定することができ、ユーザによる取込範囲の設定を受け付けることが可能になっている。すなわち、図18に示すように、実施形態3の光学式変位計1は、各種画面を生成する画面生成部38を備えている。画面生成部38は、例えばマイクロコンピュータやROM、RAM等で構成されており、ROM等に格納された所定のプログラムにしたがって動作し、生成した画面データを表示部3Aに出力する。表示部3Aは、画面生成部38から取得した画面データに基づいて各種画面を表示する部分であり、例えば液晶表示ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等で構成されている。
【0127】
光学式変位計1では、ユーザによる操作部3Bの操作状態を制御部3で取得することができる。操作部3Bは、例えばキーボードやマウス等で構成されている。表示部3A及び操作部3Bは、光学式変位計1の一部を構成する部材であってもよいし、光学式変位計1とは別のパーソナルコンピュータ等からなる設定装置の一部を構成する部材であってもよく、いずれにしても、画面生成部38と接続されている。
【0128】
図20に示すように、画面生成部38は、高さ画像を示す第1画面510と、高さ画像中のX座標に対応するワークWのYZ断面プロファイルを示す第2画面520と、を同時に、又は、切り替えて表示する設定画面530を生成して表示部3Aに表示させる。本例では、ワークWがネジである場合であって、かつ、設定画面530が第1画面510と第2画面520とを同時に表示している場合を示している。画面生成部38は、高さ画像出力部37から出力された高さ画像のデータを取得し、第1画面510に高さ画像を表示させる。第1画面510には、X方向とY方向を示す第1座標系表示部511が設けられている。本例では、第1画面510の横方向がX方向、第1画面510の縦方向がY方向となっており、ワークWであるネジの軸方向がY方向に概ね一致している。図20では表現していないが、高さ画像では、ワークWの低い部分から高い部分まで色の連続的な変化、例えば低い側から高い側に、青、緑、黄、オレンジ、赤といった変化で表現される。また、無効画素は、例えば黒等で表現される。
【0129】
第1画面510には、X座標を示すX座標指示線512と、Y座標を示す第1Y座標指示線513及び第2Y座標指示線514とが表示される。第1画面510の横方向がX方向であるため、X座標指示線512は縦方向に延びる直線で構成される。X座標指示線512は、ユーザが操作部3Bを操作することでX方向の任意の位置に移動させることができる。
【0130】
また、第1画面510の縦方向がY方向であるため、第1Y座標指示線513及び第2Y座標指示線514は横方向に延びる直線で構成される。第1Y座標指示線513及び第2Y座標指示線514は互いに平行である。また、第1Y座標指示線513及び第2Y座標指示線514と、X座標指示線512とは互いに直交する関係となっている。
【0131】
画面生成部38は、第1画面510に表示されている高さ画像中のX座標を取得することができる。第1画面510に表示されているX座標指示線512をユーザが操作部3Bを操作することでX方向に移動させると、移動後のX座標指示線512のX方向の位置に基づいて高さ画像中のX座標を画面生成部38が特定できる。画面生成部38は、高さ画像中のX座標を特定することで、高さ画像中のX座標に対応するワークWのYZ断面プロファイルを取得し、第2画面520に表示する。高さ画像中のX座標の特定方法は、X座標指示線512を用いる方法に限定されるものではなく、例えば点や矢印等を用いた特定方法であってもよい。設定画面530は、まず第1画面510を表示し、当該第1画面510においてX座標が指定されると、第1画面510から第2画面520に切り替えて表示してもよい。
【0132】
設定画面530の第2画面520には、Y方向とZ方向を示す第2座標系表示部521が設けられている。第2画面520は、撮像部13による測定可能範囲を示している。具体的には、第2画面520における白色部分が撮像部13による測定可能範囲であり、第2画面520における黒色部分が撮像部13による測定が不可能な範囲(測定可能範囲外)である。上述したように撮像部13による測定可能範囲が略円弧状であるため、第2画面520における白色部分も略円弧状になる。図20における白と黒の着色は一例であり、測定可能範囲内と外との区別が可能であればよいので、どのような色を用いて表示してもよい。尚、測定可能範囲の表示形態としては、測定可能範囲内と外とで色を変える形態以外にも、色の濃淡を変えることによって測定可能範囲内と外とを示す形態であってもよいし、文字や記号、境界線等によって測定可能範囲内と外とを示す形態であってもよい。測定可能範囲が第2画面520に表示されることで、ユーザは取込範囲をどこまで設定することができるのか、第2画面520を見るだけで簡単に判断できる。
【0133】
第2画面520には、Y方向の基準距離を示すY方向基準線522と、Z方向の基準距離を示すZ方向基準線523とが表示される。Y方向基準線522は第2画面520の横方向に延びる直線で構成され、Z方向基準線523は第2画面520の縦方向に延びる直線で構成されている。よって、Y方向基準線522とZ方向基準線523とは互いに直交する関係となっており、Y方向基準線522とZ方向基準線523との交点が光学式変位計1の視野中心を示している。
【0134】
第2画面520には、一定以上の測定精度を保証する領域として、精度保証領域の表示も可能になっている。図20における線524は、精度保証領域とそれ以外の領域との境界を示す線であり、線524よりも右側の領域が精度保証領域、線524よりも左側の領域が精度保証領域外である。このように精度保証領域が第2画面520に表示されることで、ユーザは十分に高い測定精度が得られる測定範囲にワークWがあるか否かを、第2画面520を見るだけで簡単に判断できる。
【0135】
設定画面530は、第2画面520を介して、測定結果を取り込む対象となる取込範囲の設定を受け付けることができる。図21に示すように、取込範囲は、例えば矩形とすることができる。矩形の場合、取込範囲を画定するための4点(点P0、点P1、点P2、点P3)のYZ座標(Y,Z)、(Y,Z)、(Y,Z)、(Y,Z)が特定される。点P0、点P1、点P2、点P3は、矩形の頂点を決定するための点であり、点P0、点P1、点P3、点P4を4本の直線541、542、543、544で結んでできた領域が取込範囲となる。ユーザが図18に示す操作部3Bを操作することで、点P0、点P1、点P2、点P3を第2画面520上で任意の位置に移動させることができ、取込範囲の形状、大きさ、第2画面520上における位置を任意に設定できる。点P0、点P1、点P2、点P3を操作部3Bによって移動させてもよいし、直線541、542、543、544を操作部3Bによって移動させてもよい。尚、取込範囲は、矩形以外にも、例えば円形、楕円形、自由曲線で囲まれた領域であってもよく、YZ平面上の任意形状とすることができる。どのような形状であっても、第2画面520を介して取込範囲の設定を受け付けることができる。
【0136】
信号処理部32は、取込範囲を画定するためのYZ座標を、所定の変換条件に基づいてV座標および回転角度に変換し、回転角度に基づいて投受光モジュール10の回転角度範囲を決定する。投受光モジュール10の回転角度範囲を決定する際、まず、信号処理部32は、第2画面520を介して受け付けた取込範囲の設定を取得する。本例では、取込範囲が矩形であるため、取込範囲を画定するための4点P0、P1、P2、P3のそれぞれのYZ座標を信号処理部32が取得する。信号処理部32は、取込範囲を構成する点P0、点P1、点P2、点P3のそれぞれのYZ座標を取得した後、所定の変換条件に基づいてV座標および回転角度に変換する(図22に示す)。そして、信号処理部32は、当該4点に対応する回転角度に基づいて回転角度範囲を決定する(図23に示す)。本例では、θからθまでの範囲が回転角度範囲となる。各点のYZ座標は、例えば測定値を算出する際のリニア補正の逆変換でV座標および回転角度に変換することができる。
【0137】
撮像制御部13bは、回動角度に基づいて、イメージセンサ13aにおける受光量分布の出力領域を設定するようにしている。図24に示すように、前提として、本実施形態のように断面プロファイルを三角測距の原理に基づき測定する光学式変位計1では、イメージセンサ13a上の1画素に対する実空間上の距離が近方側と遠方側とで異なり、遠方側の方が1画素の意味する距離が長くなる。また、一定のZ範囲(mm)を測定する際に必要なV方向画素数(ピクセル)は投受光モジュール10の回転角度によっても変動する。
【0138】
仮に、V方向の画素数を一定で取り込むとすると、図25の符号528で示す領域ようになる。このように、投受光モジュール10の回転角度範囲内でイメージセンサ13aのV方向について一定の画素数を取り込み続けると、Z方向の測定範囲がYZ平面で見たときに複雑な形状になるため、ユーザにとって扱いづらくなる。具体的には、Y方向の位置によって測定可能なZ方向高さが変動することになるので、同じ高さのワークWが視野内で移動した場合に、測定できる場合と測定できない場合とが存在することになる。例えば、光学式変位系1の運用前の設置調整時にはワークWを測定できたため、そのまま運用を開始したが、運用時にワークWの位置が設置調整時と異なる位置に配置されると、当該ワークWの測定ができず、手戻りとなるおそれがある。
【0139】
このことに対し、撮像制御部13bは、各回転角度で必要な画素数を算出してイメージセンサ13aの取込範囲を動的に切り替えることで、Z方向の取込開始位置及び取込終了位置がYZ平面で見たときに平坦になるように調整する。つまり、イメージセンサ13aは、投受光モジュール10の回転角度範囲内において各撮像タイミングに対応する回転角度ごとに、複数の画素のうち取込範囲に含まれる画素群の受光量分布のみを出力する。このとき、イメージセンサ13aは、投受光モジュール10の回転角度範囲内において取込範囲のZ方向高さの変動を抑えるように、所定の変換条件に基づいて、各撮像タイミングに対応する回転角度ごとに、受光量分布を出力する画素群のV方向の画素範囲を変化させる。
【0140】
図26に示すように、領域528の下側部分でV方向の取込画素数を減らし、領域528の上側部分でV方向の取込画素数を減らさないようにすることで、Z方向の取込開始位置及び取込終了位置がYZ平面で見たときに平坦になるように調整できる。調整後の領域を符号529で示す。イメージセンサ13aのV方向の取込画素数だけでなく、Z方向の取込開始位置と取込終了位置を変化させても同様に調整できる。
【0141】
上述したように、イメージセンサ13aから取り込む画素数を直接変動させてもよいが、変形例として、イメージセンサ13aから取り込む画素数を直接変動させることなく、イメージセンサ13aから取り込む画素数は一定にしておき、後段の処理でマスクする範囲を調整するようにしてもよい。この場合、イメージセンサ13aは、投受光モジュール10の回転角度範囲内において受光量分布を出力する画素群のV方向の画素範囲が固定されている。信号処理部32は、投受光モジュール10の回転角度範囲内において取込範囲のZ方向高さの変動を抑えるように、所定の変換条件に基づいて、各撮像タイミングに対応する回転角度ごとに、イメージセンサ13aの画素群から出力された受光量分布のうち、マスクする行を決定する。この変形例によっても、ユーザにとって扱い測定範囲の設定が行える。
【0142】
上述したように、XYZ空間内では同じサイズの取込範囲でも、イメージセンサ13aのV方向の取込画素数は異なる。取込画素数の変化は、イメージセンサ13aからの受光量分布の出力処理に要する時間に影響を与えることになり、処理全体の律速段階となる場合がある。その場合、図27に示すように、XYZ空間内で同じサイズのまま取込範囲550を移動させることで処理全体のタクトが変動することになる。具体的には、図27における白色領域は、光学式変位計1の測定可能範囲を示している。図27の左側の図では、取込範囲550が測定可能範囲の下側に位置しているが、これを図27の右側の図に示すように測定可能範囲の上側に移動させた場合、イメージセンサ13aからの受光量分布の出力処理に要する時間(出力時間)は、例えば0.2秒長くなる。
【0143】
このように、取込範囲550の位置と、出力時間との間には対応関係があるが、この対応関係は、装置のタクトが決まっている状態で設定を作り込むユースケースでは不便な場合がある。このことに対して、本実施形態では、取込範囲550を移動させた場合に、移動前後の出力時間の差が小さくなるか、差がなくなるように、取込範囲のZ方向高さを自動的に変化させるようにしている。
【0144】
すなわち、図28に設定画面500の第2画面520を示しているが、設定画面500は、第2画面520を介して、取込範囲の平行移動の指示を受け付ける。例えば、取込範囲が矩形の場合、ユーザが操作部3Bを操作し、取込範囲を画定するための4点を第2画面520の上下方向や左右方向に移動させることで、取込範囲の平行移動の指示を受け付けることができる。図28の左側の図では、取込範囲550が測定可能範囲の下側に位置しているが、これを図28の右側の図に示すように測定可能範囲の上側に平行移動させることができる。
【0145】
信号処理部32は、取込範囲550の平行移動の前における当該取込範囲550に含まれる画素群からの受光量分布の出力時間と、取込範囲550の平行移動の後における当該取込範囲550に含まれる画素群からの受光量分布の出力時間との差異を抑えるように、所定の変換条件に基づいて、平行移動の前後で取込範囲550のZ方向高さを変化させる。図28に示すように、取込範囲550の平行移動の前における当該取込範囲550に含まれる画素群からの受光量分布の出力時間が1.0秒であったとすると、平行移動の後における取込範囲550に含まれる画素群からの受光量分布の出力時間を1.0秒とすることができるように、図28の右側に示す取込範囲550のZ方向高さが低くなる。これにより、装置のタクトが決まっている状態で設定を作り込む際に、取込範囲550を移動させても、イメージセンサ13aからの受光量分布の出力時間が変化しないので設定の作り込みが容易に行えるようになる。尚、取込範囲550の平行移動の前の出力時間と、平行移動の後の出力時間とが厳密に同じでなくてもよく、平行移動の前後で出力時間の差が小さくなるように、取込範囲550のZ方向高さを変化させればよい。また、取込範囲550のZ方向高さを自動的に変化させた後、ユーザによる取込範囲550のZ方向高さの調整を受け付け可能にしてもよい。
【0146】
ワークWが測定範囲内のどの部分に配置されているか分からない場合には、取込範囲の設定が難しいことがある。このような場合に、本実施形態では、現時点での取込範囲の設定に関わらず、投受光モジュール10の最大揺動範囲の全域で三次元測定を実行する。具体的には、モータ制御部30は、取込範囲に対応する回転角度範囲よりも広い設定用角度範囲で、投受光モジュール10を揺動させる。これにより、投受光モジュール10は、設定用角度範囲に対応する設定用YZ断面プロファイルを取得する。図29に示すように、画面生成部38は、第2画面520に設定用YZ断面プロファイルを示す画面を生成する。設定用YZ断面プロファイルには、取込範囲のYZ断面プロファイルが含まれるとともに、取込範囲よりも広い範囲のYZ断面プロファイルが含まれている。ユーザが広範囲のYZ断面プロファイルを見ることで、取込範囲の設定が容易に行えるようになる。
【0147】
(取込範囲設定のフロー)
図30は、取込範囲設定の処理の流れを示すフローチャートである。ステップSA1では、モータ制御部30がモータ20を駆動して投受光モジュール10を測定開始位置に移動させる。ステップSA2では、モータ制御部30がモータ20を駆動して投受光モジュール10を揺動させながら、投光部11がスリット光S1を出射し、撮像部13が複数の受光画像を取得する。撮像は、等時間間隔であってもよいし、等エンコーダ間隔であってもよいし、あるZ方向の距離に対するY方向の等ピッチ間隔等であってもよい。ステップSA3では、撮像部13が等時間間隔、または等エンコーダ間隔ごとに受光画像を生成する。
【0148】
ステップSA4では、信号処理部32が、各受光画像の各U位置においてV方向におけるピーク位置を演算する。ステップSA5では、ステップSA4の処理で取得したピーク位置のUV座標を受光画像に対応するθと関連付けてUVθのセットを生成する。ステップSA6では、UVθをXYZ座標に変換する。XYZ座標への変換は、事前のキャリブレーション情報に基づいて実行することができる。ここで、ステップSA4の処理で取得されたピーク位置には、真のピーク位置と、例えば多重反射などのノイズ由来の偽のピーク位置とが含まれている場合がある。ステップSA4においてUV座標から偽のピーク位置を除去する処理を実行しても良いし、ステップSA6において偽のピーク位置を含めてXYZ座標に変換した後に、当該XYZ座標から偽のピーク位置を除去する処理を実行しても良い。また、ステップSA6では、XY等間隔補正を実行しても良い。すなわち、信号処理部32は、XY座標に対して等間隔補正を実行することにより補正後XY座標に対応する補正後Z座標を算出することができる。信号処理部32は、例えばプロファイル調整後の(X,Z)列からX座標が等間隔なZ列を作成する。Z列を作成する場合に補間点を求める際、まず、XZプロファイルの前後の有効点を特定し、それら有効点から線形補間によって補間点を求めることができる。Y方向についても同様に等間隔補正を実行することにより、X方向およびY方向の両方向に等間隔補正した補正後Z座標を算出することができる。高さ画像出力部37は、等間隔補正により得られた補正後XYZ座標に基づいて高さ画像を出力する。XY等間隔補正を実行することにより、後段の画像処理が容易になるとともに、可視化も容易になる。
【0149】
ステップSA7では、高さ画像を示す第1画面510および高さ画像中の任意のX位置におけるYZ断面プロファイルを示す第2画面520を含む設定画面500を画面生成部38が生成し、表示部3Aに表示させる。
【0150】
ステップSA8では、ステップSA7で表示した第1画面510を介して高さ画像中のX位置の指定を受け付ける。ステップSA9では、ステップSA8で指定されたX位置に対応するYZ断面プロファイルを画面生成部38が第2画面520に表示させる。ステップSA10では、YZ断面プロファイルから取込範囲(複数のYZ座標セット)の指定を信号処理部32が受信する。ステップSA11では、信号処理部32が、UVθからXYZ変換の逆変換を行うことで、複数のYZ座標セットをそれぞれθVに変換する。
【0151】
ステップSA12では、信号処理部32が、ステップSA11で取得したθVから投受光モジュール10の回転角度範囲を決定する。ステップSA13では、イメージセンサ13aから取り込むV方向の画素数を投受光モジュール10の回転角度ごとに決定する。V方向の画素数を投受光モジュール10の回転角度ごとに決定する際、例えばUVθをXYZ座標に変換するための変換テーブルの情報から算出することができる。尚、画素数に限られず、イメージセンサ13aから取り込むV方向の画素範囲を決定すればよい。
【0152】
ステップSA14では、取込範囲が平行移動(図28に示す)されたか否かを信号処理部32が判定する。取込範囲が平行移動された場合にはステップSA15に進み、平行移動の前後で出力時間(取込範囲のV方向の画素数)が一定になるように、取込範囲のZ方向高さを調整し、調整後の取込範囲をユーザに提示する。
【0153】
(受光画像の表示)
本実施形態では、受光画像を表示部3Aに表示させることもできる。例えば、光学式変位計1による三次元測定の正確性や光学式変位計1の設定調整のため、任意断面を取得する際に、イメージセンサ13aの受光画像を観察したい場合がある。このような場合、投受光モジュール10を所望の位置まで移動させることで、任意断面を容易に取得することができる。
【0154】
以下、受光画像を表示部3Aに表示させることが可能な構成について具体的に説明する。画面生成部38は、イメージセンサ13aから出力される受光量分布を取得することで、図31に示すような高さ画像を示す画面600を生成する。画面600は、高さ画像を示す点で、図20の第1画面510と共通である。画面600は、高さ画像内の一点の指定を受け付ける。例えばユーザが操作部3Bを操作することで、点600aを画面600に表示されている高さ画像上の任意の位置に配置できる。点600aを配置することで、高さ画像内の一点の指定が受け付けられる。
【0155】
信号処理部32は、上述したような所定の変換条件に基づいて、一点(点600a)のXYZ座標に対応する投受光モジュール10の回転角度を取得する。モータ制御部30は、モータ20を制御することにより、信号処理部32が取得した回転角度に対応する位置に投受光モジュール10を移動させる。投受光モジュール10は、回転角度に対応する位置における受光画像を取得する。画面生成部38は、受光画像を示す画面601を生成して表示部3Aに表示させる。
【0156】
信号処理部32は、所定の変換条件に基づいて、投受光モジュール10の回転角度に対応するV方向の画素範囲を更に取得することもできる。この場合、画面生成部38は、V方向の画素範囲に対応する受光量分布を特定した受光画像を表示させることができる。モータ制御部30は、高さ画像を生成する過程において受光画像を取得した回転角度に投受光モジュール10を移動させることができる。
【0157】
投受光モジュール10の回転角度をユーザが指定することもできる。図18および図31に示すように、光学式変位計1は、投受光モジュール10の回転角度の指定を受け付ける回転角度指定部3Cを備えている。回転角度指定部3Cは、投受光モジュール10による測定範囲におけるプロファイル番号がユーザによって指定されることにより投受光モジュール10の回転角度の指定を受け付けることができる。一例として、図31において、全部で800本のプロファイルのうち、613番目のプロファイル番号が指定されている。プロファイル番号は、プロファイルが取得された順番に採番することができる。この場合、回転角度を指定するために高さ画像が必要ではなく、また高さ画像がそもそも生成されていない場合もあるため、画面生成部38は、画面600を省略し、画面601だけを生成しても良い。画面生成部38は、回転角度指定部3Cにより指定された回転角度に対応する受光画像を表示部3Aに表示させる。具体的には、投受光モジュール10の回転角度の変更を受け付けると、モータ制御部30がモータ20を制御し、当該変更後の回転角度となるように投受光モジュールを移動させて、当該移動後の位置においてイメージセンサ13aにより撮像された受光画像を表示部3Aに表示させる。また、高さ画像上の任意の一点の座標(X,Y,Z)を指定することで、上述したリニア補正の逆変換と同じロジックを用いて、その座標を含む任意断面を計算することもできる。これにより、例えばノイズが発生している断面をピンポイントで観察することができる。
【0158】
(受光画像の表示フロー)
図32は、受光画像の表示処理を流れの一例を示すフローチャートである。ステップSB1~SB6は、それぞれ図30のステップSA1~SA6と同じである。ステップSB7では、画面生成部38が高さ画像を表示部3Aに表示させる。ステップSB8では、ステップSB7で表示された高さ画像内の一点の指定信号処理部32が受け付ける。ステップSB9では、信号処理部32が受け付けた一点のXYZ座標をUVθに変換する。ステップSB10では、モータ制御部30がモータ20を駆動し、投受光モジュール10をステップSB9で取得したθに移動させる。
【0159】
ステップSB11では、モータ制御部30が投受光モジュール10を移動させた位置で停止させ、停止状態のまま撮像部13が受光画像を取得する。ステップSB12では、ステップSB11で取得した受光画像を画面生成部38が表示部3Aに表示させる。例えば、ステップSB2でθと関連付けて受光画像を記憶しておいて、取得したθに対応する受光画像を後段で読み出すことも考えられるが、全受光画像情報を記憶させると情報量が多すぎて膨大なメモリが必要になるため、ステップSB11で撮像し直している。
【0160】
(ハウジング構造)
図33に示すように、ハウジング40の外形として必要なサイズは、光学系11bの視野範囲によって規定される。また、光学系11bには画角が存在するため、光軸に対して一定の傾斜を持った視野範囲の広がりが存在し、図33に示すように、ハウジング40の外形として単純な直方体形状で視野範囲を満たすには、体積的に無駄な領域(斜線部)が発生する。
【0161】
このことに対し、図34に第1の例として示すように、本実施形態では、ハウジング40の厚み方向一方側を部分的に削り取ったような形状とすることで、体積的に無駄な領域を削除したハウジング40としている。すなわち、ハウジング40の厚み方向をX方向とした時、ハウジング40におけるスリット光の照射方向側の端部と、ハウジング40における照射方向と反対側の端部との厚みに差を設けることができる。具体的には、ハウジング40は、スリット光の照射方向側の端部において、X方向に第1の厚みを有し、照射方向と反対側の端部において、X方向に第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有する形状することができる。このように、ハウジング40における照射方向と反対側の端部を相対的に薄くすることで、体積的に無駄な領域を無くす、若しくは減らすことができる。
【0162】
また、図35に第2の例として示すように、ハウジング40の厚み方向両側を部分的に削り取ったような形状としてもよい。これにより、体積的に無駄な領域をより一層減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
以上説明したように、本開示に係る光学式変位計は、例えばワークの三次元形状のデータを取得する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0164】
1 光学式変位計
3A 表示部
3C 回転角度指定部
10、100 投受光モジュール
11 投光部
12 受光レンズ
13 撮像部
20 モータ
30 モータ制御部
32 信号処理部
36 回転角度取得部
37 高さ画像出力部
38 画面生成部
40、400 ハウジング
52 エンコーダ
61、62 ストッパ
W ワーク
【要約】
【課題】投受光系を揺動させることによって変位を測定する場合に、高さ画像や受光画像を出力可能にする。
【解決手段】光学式変位計1は、投受光モジュール10と、投受光モジュール10を揺動させるモータ20と、モータ20を制御し、投受光モジュール10を揺動させて、スリット光を走査するモータ制御部30と、モータ20による回転角度を取得する回転角度取得部36と、イメージセンサ13aにより出力された受光量分布に基づいてUV座標を算出し、UV座標および回転角度を所定の変換条件に基づいてXYZ座標に変換する信号処理部32と、XYZ座標に基づいて、XY平面におけるワークの高さを示す高さ画像を出力する高さ画像出力部37とを備えている。
【選択図】図18
図1
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図33
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図35