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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20241204BHJP
   G01W 1/02 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G01W1/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024150584
(22)【出願日】2024-09-02
【審査請求日】2024-09-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和6年度、国立研究開発法人防災科学技術研究所、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマート防災ネットワークの構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000173577
【氏名又は名称】一般財団法人河川情報センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 幸司
(72)【発明者】
【氏名】朝堀 泰明
(72)【発明者】
【氏名】野仲 典理
(72)【発明者】
【氏名】岩見 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田所 正
(72)【発明者】
【氏名】澤野 久弥
(72)【発明者】
【氏名】岸本 紀子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 治
(72)【発明者】
【氏名】清 新
(72)【発明者】
【氏名】平国 妙子
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中太 大智
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2024/153703(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/229706(WO,A1)
【文献】特開2024-030214(JP,A)
【文献】特開2023-096271(JP,A)
【文献】特開2008-310036(JP,A)
【文献】Xing Zheng他,GeoFlood: Large-Scale Flood Inundation Mapping Based on High-Resolution Terrain Analysis,Water Resources Research,2019年02月15日,https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1029/2018WR023457,[検索日2024年11月12日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川を含む評価対象領域の浸水図を作成する情報処理装置であって、
最近傍排水地点との相対的な高低差であるHAND地盤高を、グリッドセルの値とするHANDモデルを取得し、X軸方向が河川の流下方向となるよう回転させるHANDモデル取得手段と、
前記HANDモデルと浸水に関する情報を含む動的センシング情報に基づいて、浸水図を作成する浸水図作成手段を備え、
該浸水図作成手段は、
前記動的センシング情報の取得位置ごとに、前記HAND地盤高と前記動的センシング情報に基づいて実測HAND水面高を算出する実測HAND水面高算出手段と、
前記評価対象領域を、前記河川の流下方向と交差する方向に分割して複数のセグメントを設定する浸水図作成用セグメント判別手段と、
前記セグメントごとで、前記実測HAND水面高の最大値を取得する実測HAND水面高最大値算出手段と、
前記実測HAND水面高の最大値を、河川の流下方向を横軸とし実測HAND水面高を縦軸とする投影面に投影し、内挿関数を算出する浸水図作成用内挿関数算出手段と、
前記HANDモデルの、X軸方向に連続するグリッドセル各々に前記内挿関数より算出した算出値を対応させるとともに、該算出値と同値をY軸方向に隣り合うグリッドセルに対応させたのち、グリッドセルごとに、前記算出値から前記HAND地盤高を差し引いた浸水深を算出し、浸水深が0より大きいグリッドセルを浸水有と判定し、浸水図を作成する浸水図算出手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記浸水図作成手段に、前記動的センシング情報で浸水有とする位置に対応する前記浸水図のグリッドセルが、浸水有と判定されるよう前記浸水図を補正する浸水図補正手段を含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記動的センシング情報が、浸水センサ、航空写真、衛星画像、もしくはSNS投稿のうちの少なくとも1つから取得した情報であり、
航空写真、衛星画像、及びSNS投稿に基づいて浸水有りの情報を取得した場合に、取得位置のHAND地盤高を実測HAND水面高とすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置において、
前記浸水図作成手段に、前記浸水センサに含まれる異常値を、複数の前記セグメントごとに検出する異常値検出手段を含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記HANDモデルと既存浸水情報に基づいて、前記評価対象領域の仮想浸水図を作成する仮想浸水図作成手段をさらに備え、
該仮想浸水図作成手段は、
前記既存浸水情報から取得した浸水範囲に、複数の仮想浸水センサを任意に配置した仮想動的センシング情報を作成する仮想動的センシング情報生成手段と、
前記仮想浸水センサの配置位置の前記HAND地盤高を、仮想HAND水面高に設定する仮想HAND水面高算出手段と、
前記評価対象領域を、前記河川の流下方向と交差する方向に分割して複数のセグメントを設定し、該セグメントごとで、前記仮想HAND水面高の最大値を取得する仮想HAND水面高最大値算出手段と、
前記仮想HAND水面高の最大値を、河川の流下方向を横軸とし仮想HAND水面高を縦軸とする投影面に投影し、内挿関数を算出する仮想浸水図作成用内挿関数算出手段と、
前記HANDモデルの、X軸方向に連続するグリッドセル各々に前記仮想浸水図作成用内挿関数算出手段で取得した内挿関数より算出した算出値を対応させるとともに、該算出値と同値をY軸方向に隣り合うグリッドセルに対応させたのち、グリッドセルごとに、前記算出値から前記HAND地盤高を差し引いた仮想浸水深を算出し、仮想浸水深が0より大きいグリッドセルを浸水有と判定し、仮想浸水図を作成する仮想浸水図算出手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置において、
前記既存浸水情報に、既存の洪水浸水想定情報もしくは過去の洪水実績情報が含まれることを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載の情報処理装置において、
前記仮想浸水図作成手段が、評価指標値平均算出手段をさらに備え、
該評価指標値平均算出手段は、
前記セグメントの分割数、前記仮想浸水センサの数、及び仮想浸水センサの配置位置を任意に変更して作成した複数の前記仮想浸水図ごとで、各グリッドセルと前記既存浸水情報とを比較して、浸水の有無に係る適合率と再現率の調和平均であるF値を取得し、
仮想センサ密度が同じ前記仮想浸水図のF値平均を、前記セグメントの分割数ごとに算出するものであり、
前記仮想センサ密度は、
前記既存浸水情報から取得した前記評価対象領域における浸水範囲の、面積に対する前記仮想浸水センサの数であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理装置において、
前記浸水図作成手段に備える前記浸水図作成用セグメント判別手段が、
前記セグメントの分割数、前記仮想センサ密度、前記F値平均よりなる3次元散布データに基づいて内挿関数を算出し、
該内挿関数と実測センサ密度に基づいて算出した前記F値平均が最大となる前記セグメントの分割数で、前記評価対象領域に複数のセグメントを設定するものであり、
前記実測センサ密度は、前記評価対象領域における浸水想定区域の、面積に対する前記動的センシング情報の取得位置の総数であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の破堤等を原因とする外水氾濫、下水道の排水能力不足等を原因とする内水氾濫による浸水発生時に、浸水センサ、SNS(Social Networking Service)画像(静止画)、航空写真(静止画)、衛星画像(SAR:Synthetic Aperture Radar画像)等の多種多様な動的センシング情報に基づいて、行政機関、住民等が災害対応や避難判断等に用いるための高精度な浸水図算出を実現する情報処理装置、及びコンピュータを上述した情報処理装置として機能させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冠水センサからの冠水情報すなわち現実の浸水情報を起点として浸水域を推定する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、高精度に浸水状況をシミュレーションすることが可能な浸水シミュレーション装置、浸水シミュレーション方法およびプログラムに関する技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、現地調査によって得られる浸水深及び浸水域を入力として、浸水域内の浸水深分布を適切に推定する技術が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、DEM(Digital Elevation Model)と呼ばれる地形モデルに基づいて、HAND(Height Above Nearest Drainage)と呼ばれる地形モデルを作成する技術が開示されている。ここで、HANDとは、河川といった最近傍排水地点との相対的な高低差を各グリッドセルの値とする地形モデルのことである。
【0006】
非特許文献2には、HANDと呼ばれる地形モデルに基づいて、等高線を描く方法で、静的な洪水浸水想定区域図のデータを算出する技術が開示されている。
【0007】
非特許文献3には、HANDと呼ばれる地形モデルとマニングの公式とに基づいて、水位流量曲線と呼ばれる曲線を算出して、当該水位流量曲線と洪水時の氾濫流量とに基づいて、水面高を算出して、当該水面高に基づいて、浸水図のデータを算出する技術が開示されている。また、河川を流下方向に対して等間隔に分割する分割点を算出して、それぞれの分割点に水が集まる領域(集水域)をセグメントとして、それぞれのセグメントで水位流量曲線を用いた浸水図のデータを算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2024-030214号公報
【文献】特開2023-096271号公報
【文献】特開2008-310036号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Camilo Daleles Renno、Antonio Donato Nobre、Luz Adriana Cuartas、Joao Vianei Soares、Martin G.Hodnett、Javier Tomasella、Maarten J.Waterloo、HAND、a new terrain descriptor using SRTM-DEM:Mapping terra-firme rainforest environments in Amazonia、Remote Sensing of Environment、Netherlands、Elsevier、2008/3/18
【文献】Antonio Donato Nobre、Luz Adriana Cuartas、Marcos Rodrigo Momo、Dirceu Luis Severo、Adilson Pinheiro、Carlos Afonso Nobre、HAND contour:a new proxy predictor of inundation extent、Hydrological Processes、USA、Wiley、2015
【文献】Xing Zheng、David R.Maidment、David G.Tarboton、Yan Y.Liu、Paola Passalacqua、GeoFlood:Large-Scale Flood Inundation Mapping Based on High-Resolution Terrain Analysis、Water Resources Research、USA、Wiley、2018/12/13、pp.10013-10033
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
浸水センサには、浸水センサ設置高における浸水有無を検知するのみで、一例として、浸水センサが地盤から50cmの高さに設置されている場合、50cmより小さい浸水深を検知できず、また、100cmの浸水深があっても、50cm以上の浸水深があるとの限定された情報しか検知できないという特徴がある。電柱といった構造物に、一つもしくは複数の浸水センサが設置されている場合、それぞれの浸水センサが検知した水面高の大小関係を比較することは容易である。しかしながら、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合、河川の流下方向に地盤勾配があるため、それぞれの浸水センサが検知した水面高の大小関係を比較できないという問題があった。
【0011】
また、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合、それぞれの浸水センサが検知した水面高に基づいて、一例として、最大水面高を算出して、当該最大水面高を所定の地域全体を代表する水面高とすることも考えられる。このような場合、河川の流下方向に地盤勾配があるため、一般的に、所定の地域の上流付近の水面高が用いられることになり、所定の地域の中流付近や下流付近で水面高が過大に算出されるという問題があった。
【0012】
このように、従来、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合、河川の流下方向に地盤勾配があるため、浸水図のデータを高精度に算出することができなかった。
【0013】
一方、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合、それぞれの浸水センサ設置場所(緯度、経度)、および、それぞれの浸水センサが検知した水面高を通る内挿関数を算出して、当該内挿関数で表される水面高を、所定の地域の水面高とすることも考えられる。このような場合、一例として、浸水深が深くなりやすい低地等で、かつ、浸水センサ設置高が小さい浸水センサ付近では、水面高、および、浸水深が過小に算出されるという問題があった。
【0014】
また、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合、所定の地域を複数のセグメントに分割して、セグメント内の一つもしくは複数の浸水センサが検知した水面高に基づいて、一例として、それぞれのセグメントの最大水面高を算出して、それぞれのセグメントを代表する水面高とすることも考えられる。このような場合、河川の流下方向に地盤勾配があるものの、その影響がそれぞれのセグメント内に限定されるため、算出される水面高の精度向上が期待できる。しかしながら、セグメント内の浸水センサ数とセグメント分割数との間のトレードオフという問題があった。
【0015】
このように、従来、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合、内挿関数を用いて水面高を算出しても、所定の地域を複数のセグメントに分割しても、河川の流下方向に地盤勾配があり、また、セグメント内の浸水センサ数とセグメント分割数との間にトレードオフの問題があるため、浸水図のデータを高精度に算出することができなかった。
【0016】
一方、浸水センサの設置と維持にはコストがかかるため、所定の地域に多数の浸水センサを設置することは困難という問題があった。このような場合、浸水センサ数の不足を補うため、浸水時にSNSに投稿されるSNS画像(静止画)、浸水時に撮影される航空写真(静止画)、浸水時に観測される衛星画像(SAR画像)を採用することも考えられる。このような場合、浸水センサ数の不足を補うことができるものの、一般的には、SNS画像(静止画)、航空写真(静止画)、衛星画像(SAR画像)には、水面高に関する情報が含まれないという問題があった。このため、従来、浸水センサ、SNS画像(静止画)、航空写真(静止画)、衛星画像(SAR画像)といったセンシング情報を統合して入力データとしても、浸水図のデータを高精度に算出することができなかった。また、浸水センサのデータ、SNS画像(静止画)のデータは、一例として、10分間隔等、短時間にデータを受信できるが、航空写真(静止画)のデータは、日中、かつ、天候がある程度回復してからの受信となるという問題があった。衛星画像(SAR画像)のデータは、一例として、ALOS-2衛星の場合、日本の上空を1日に2回通過するため、浸水発生からデータを受信するまでのタイムラグが大きいという問題があった。
【0017】
一方、特許文献1の技術では、冠水センサで検知された冠水情報に基づいて、浸水深を算出して、隣接する位置での位置情報と当該浸水深とを比較することにより浸水域を推定できた。しかしながら、隣接する位置との比較のみでは、狭い地域での浸水域の推定は可能と考えられるが、地形には起伏が繰り返されるため、少数の冠水センサで検知された冠水情報に基づいて、流域全体といった広い地域での浸水域の推定に問題があった。
【0018】
また、特許文献2の技術では、排水溝の位置、深さ、平均流速、粗度係数、潤辺長等の排水溝の情報に基づいて、マニングの公式を変更することにより排水溝の勾配を算出できた。しかしながら、マニングの公式を用いるための粗度係数を正確に求めることは困難という問題があった。また、洪水時に排水溝の平均流速を正確に求めることも困難という問題があった。さらに、排水溝の勾配から地表の高さを変更する技術が十分に開示されていないという問題があった。
【0019】
また、特許文献3の技術では、現地調査によって得られる浸水深及び浸水域を入力として、浸水域の輪郭線を含む複数の区画の浸水位を、各区画の地盤の標高に所定の浸水深を加算することによって算出し、空間補完によって算出された浸水位から地盤の標高を減算することによって、浸水域の浸水深の分布を算出できた。しかしながら、洪水時に浸水深を正確に調査することは困難で、浸水センサは浸水センサ設置高における浸水有無を検知するのみで、SNS画像、航空写真、衛星画像には、水面高や浸水深に関する情報が含まれないという問題があった。
【0020】
さらに、非特許文献1の技術では、DEMと呼ばれる地形モデルに基づいて、HANDと呼ばれる地形モデルを作成できた。しかしながら、河川といった最近傍排水地点との相対的な高低差を各グリッドセルの値とするだけでは、河川の流下方向の地盤勾配が取り除かれるものの、浸水図のデータを算出できなかった。
【0021】
これに加えて、非特許文献2の技術では、HANDと呼ばれる地形モデルに基づいて、等高線を描く方法で、静的な洪水浸水想定区域図のデータを算出することができた。しかしながら、浸水センサといった現地観測データを用いていないため、実際の洪水発生時に、時々刻々と変化する浸水図のデータを算出できなかった。また、所定の地域をセグメントに分割していないため、一例として、上流付近では浸水が発生していないが、中流付近や下流付近では浸水が発生しているといった場合、浸水深を上流付近で過大に算出するといった問題があった。
【0022】
その他、非特許文献3の技術では、HANDと呼ばれる地形モデルとマニングの公式とに基づいて、水位流量曲線と呼ばれる曲線を算出して、当該水位流量曲線と洪水時の氾濫流量とに基づいて、水面高を算出して、当該水面高に基づいて、浸水図のデータを算出できた。また、河川を流下方向に対して等間隔に分割する分割点を算出して、それぞれの分割点に水が集まる領域(集水域)をセグメントとして、それぞれのセグメントで水位流量曲線を用いた浸水図のデータを算出できた。しかしながら、洪水発生時の氾濫流量を正確に観測することは困難という問題があった。また、水位流量曲線を求めるために必要な粗度係数を正確に求めることは困難という問題があった。さらに、河川を流下方向に対して等間隔に分割する分割点を算出して、それぞれの分割点に水が集まる領域(集水域)をセグメントとして分割しているが、当該セグメントを最適に調整する方法が開示されていないため、高精度化に向けて改善の余地があった。
【0023】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、浸水センサ、SNS画像、航空写真、衛星画像等から取得可能な浸水に関する情報に基づいて、高精度な浸水図のデータを算出することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
かかる目的を達成するため、本発明の情報処理装置は、河川を含む評価対象領域の浸水図を作成する情報処理装置であって、最近傍排水地点との相対的な高低差であるHAND地盤高を、グリッドセルの値とするHANDモデルを取得し、X軸方向が河川の流下方向となるよう回転させるHANDモデル取得手段と、前記HANDモデルと浸水に関する情報を含む動的センシング情報に基づいて、浸水図を作成する浸水図作成手段を備え、該浸水図作成手段は、前記動的センシング情報の取得位置ごとに、前記HAND地盤高と前記動的センシング情報に基づいて実測HAND水面高を算出する実測HAND水面高算出手段と、前記評価対象領域を、前記河川の流下方向と交差する方向に分割して複数のセグメントを設定する浸水図作成用セグメント判別手段と、前記セグメントごとで、前記実測HAND水面高の最大値を取得する実測HAND水面高最大値算出手段と、前記実測HAND水面高の最大値を、河川の流下方向を横軸とし実測HAND水面高を縦軸とする投影面に投影し、内挿関数を算出する浸水図作成用内挿関数算出手段と、前記HANDモデルの、X軸方向に連続するグリッドセル各々に前記内挿関数より算出した算出値を対応させるとともに、該算出値と同値をY軸方向に隣り合うグリッドセルに対応させたのち、グリッドセルごとに、前記算出値から前記HAND地盤高を差し引いた浸水深を算出し、浸水深が0より大きいグリッドセルを浸水有と判定し、浸水図を作成する浸水図算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の情報処理装置は、前記浸水図作成手段に、前記動的センシング情報で浸水有とする位置に対応する前記浸水図のグリッドセルが、浸水有と判定されるよう前記浸水図を補正する浸水図補正手段を含むものでもよい。
【0026】
本発明の情報処理装置は、前記動的センシング情報が、浸水センサ、航空写真、衛星画像、もしくはSNS投稿のうちの少なくとも1つから取得した情報であり、航空写真、衛星画像、及びSNS投稿に基づいて浸水有りの情報を取得した場合に、取得位置のHAND地盤高を、実測HAND水面高とするものでもよい。
【0027】
本発明の情報処理装置は、前記浸水図作成手段に、前記浸水センサに含まれる異常値を、複数の前記セグメントごとに検出する異常値検出手段を含むものでもよい。
【0028】
本発明の情報処理装置は、前記HANDモデルと既存浸水情報に基づいて、前記評価対象領域の仮想浸水図を作成する仮想浸水図作成手段をさらに備え、該仮想浸水図作成手段は、前記既存浸水情報から取得した浸水範囲に、複数の仮想浸水センサを任意に配置した仮想動的センシング情報を作成する仮想動的センシング情報生成手段と、前記仮想浸水センサの配置位置の前記HAND地盤高を、仮想HAND水面高に設定する仮想HAND水面高算出手段と、前記評価対象領域を、前記河川の流下方向と交差する方向に分割して複数のセグメントを設定し、該セグメントごとで、前記仮想HAND水面高の最大値を取得する仮想HAND水面高最大値算出手段と、前記仮想HAND水面高の最大値を、河川の流下方向を横軸とし仮想HAND水面高を縦軸とする投影面に投影し、内挿関数を算出する仮想浸水図作成用内挿関数算出手段と、前記HANDモデルの、X軸方向に連続するグリッドセル各々に前記仮想浸水図作成用内挿関数算出手段で取得した内挿関数より算出した算出値を対応させるとともに、該算出値と同値をY軸方向に隣り合うグリッドセルに対応させたのち、グリッドセルごとに、前記算出値から前記HAND地盤高を差し引いた仮想浸水深を算出し、仮想浸水深が0より大きいグリッドセルを浸水有と判定し、仮想浸水図を作成する仮想浸水図算出手段と、を備えるものでもよい。
【0029】
本発明の情報処理装置は、前記既存浸水情報に、既存の洪水浸水想定情報もしくは過去の洪水実績情報が含まれるものでもよい。
【0030】
本発明の情報処理装置は、前記仮想浸水図作成手段が、評価指標値平均算出手段をさらに備え、該評価指標値平均算出手段は、前記セグメントの分割数、前記仮想浸水センサの数、及び仮想浸水センサの配置位置を任意に変更して作成した複数の前記仮想浸水図ごとで、各グリッドセルと前記既存浸水情報とを比較して、浸水の有無に係る適合率と再現率の調和平均であるF値を取得し、仮想センサ密度が同じ前記仮想浸水図のF値平均を、前記セグメントの分割数ごとに算出するものであり、前記仮想センサ密度は、前記既存浸水情報から取得した前記評価対象領域における浸水範囲の、面積に対する前記仮想浸水センサの数であるものでもよい。
【0031】
本発明の情報処理装置は、前記浸水図作成手段に備える前記浸水図作成用セグメント判別手段が、前記セグメントの分割数、前記仮想センサ密度、前記F値平均よりなる3次元散布データに基づいて内挿関数を算出し、該内挿関数と実測センサ密度に基づいて算出した前記F値平均が最大となる前記セグメントの分割数で、前記評価対象領域に複数のセグメントを設定するものであり、前記実測センサ密度は、前記評価対象領域における浸水想定区域の、面積に対する前記動的センシング情報の取得位置の総数であるものでもよい。
【0032】
本発明は、コンピュータを上述した情報処理装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【0033】
本発明の情報処理装置及びプログラムによれば、動的センシング情報の取得位置ごとに、HAND地盤高と動的センシング情報とに基づいて実測HAND水面高を算出している。これにより、動的センシング情報の取得位置の水面高の大小関係を、河川の流下方向の地盤勾配が取り除かれた実測HAND水面高で比較できる。したがって、動的センシング情報として、例えば河川の上流側から下流側に分散して設置され、かつ設置高(地盤面からの設置高さ)が異なる複数の浸水センサから取得した情報を採用する場合にも、評価対象領域を河川の流下方向と交差する方向に分割して複数のセグメントを設定し、このセグメントごとに実測HAND水面高の最大値を算出することで、この最大値をセグメントごとの現実に見合った水面高として取得することができる。そして、セグメントごとに取得した最大値の内挿関数を算出し、この内挿関数に基づいて評価対象領域の浸水深を算出することで、河川の上流域と下流域で浸水状況が異なる場合にも、これに対応しつつ連続した浸水図のデータを、高精度で算出することが可能となる。さらに、セグメントの数を評価対象領域の実測センサ密度に基づいて設定すれば、より高精度な浸水図のデータを算出することが可能となる。
【0034】
また、動的センシング情報として、浸水センサ、SNS画像(静止画)、航空写真(静止画)、衛星画像(SAR画像)から取得した浸水に関する情報を採用できる。このように、浸水に関する情報が、点データや面データであるなど様々な条件を有する場合にも、これらを統合して浸水図のデータに反映することが可能となる。さらに、浸水センサ、SNS画像、航空写真、衛星画像は、浸水発生からデータを取得するまでにタイムラグがあるが、これらのデータを取得するごとに追加しつつ各情報を更新していくことで、評価対象領域における浸水状況が時々刻々と変化する様子を、浸水図のデータとして捉えることも可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、浸水センサ、SNS画像(静止画)、航空写真(静止画)、衛星画像(SAR画像)等から取得可能な浸水に関する情報を動的センシング情報として採用し、河川を含む評価対象領域について、高精度な浸水図のデータを算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】DEMを用いた浸水図作成の課題を説明する模式図である。
図2】HANDを用いた浸水図作成の効果を説明する模式図である。
図3】実測センサ密度が時間とともに変化することを説明する模式図である。
図4】HANDモデル作成の一例を示すフローチャートである。
図5】情報処理装置のシステム構成の一例を示す図である。
図6】端末装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】サーバ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8】情報処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図9】HANDモデル取得手段の機能構成の一例を示す図である。
図10】HANDモデル取得手段の機能構成の他の例を示す図である。
図11】画像座標空間を回転させる機能を説明する模式図である。
図12】浸水センサに関する動的センシング情報の一例を示す図である。
図13】SNSに関する動的センシング情報の一例を示す図である。
図14】航空写真に関する動的センシング情報の一例を示す図である。
図15】衛星画像に関する動的センシング情報の一例を示す図である。
図16】動径基底関数を用いた内挿関数算出機能を説明する模式図である。
図17】セグメント分割機能の一例を説明する模式図である。
図18】セグメント分割機能の他の例を説明する模式図である。
図19】実測HAND水面高を断面に投影する機能を説明する模式図である。
図20】浸水図算出手段の機能構成の一例を示す図である。
図21】浸水図算出手段の機能構成の他の例を示す図である。
図22】浸水図算出機能を説明する模式図である。
図23】既存浸水情報取得手段の機能構成の一例を示す図である。
図24】既存浸水情報取得手段の機能構成の他の例を示す図である。
図25】評価指標値平均の一例を示す図である。
図26】サーバ装置の浸水図作成処理の一例を示すフローチャートである。
図27】サーバ装置の仮想浸水図作成処理の一例を示すフローチャートである。
図28】情報処理装置で算出した浸水図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、浸水センサ、SNS投稿、航空写真、衛星画像などから取得した浸水に関する情報を動的センシング情報として採用するとともに、HAND(最近接水路鉛直距離)モデルと称される地形モデルを利用して、図28で例示するような、河川を含む評価対象領域(以降、所定の地域という)の浸水図のデータを算出しようとするものである。
【0038】
HANDの詳細は後述するが、「基盤地図情報5mメッシュ数値標高モデル」(国土地理院)を用いて、全国を対象に約5mメッシュで算出される地形モデルであり、局所的に水が貯まりやすい場所(下流に水が抜けにくい場所)の評価等に、広く用いられている指標である。
【0039】
以下、図1図27を用いて、本開示の一実施形態を説明する。なお、図は一例であって、本開示は図に示すものに限定されない。例えば、図示した情報処理装置のシステム構成は一例であって、本開示はこれに限定されるものではない。また、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0040】
≪≪背景技術及び用語の定義≫≫
図1は、DEM(基盤地図情報(数値標高モデル))を用いた浸水図作成の課題を説明する模式図である。所定の地域に浸水センサS1が設置されているとする。図1において、浸水センサS1の設置地点を黒塗りの丸で示し、河川を実線で示し、DEMにおける等高線を破線で示す。図の右側が上流、図の左側が下流である。浸水センサS1が浸水を検知したとして、浸水図を作成することを考える。DEMに基づくと、河川の流下方向には地盤勾配があるため、浸水面が水の動きがない静水面であると仮定する場合、斜線の領域が浸水範囲となる。一例として、浸水センサS1が地盤高103mの地点に設置されているとすると、海岸付近では浸水深が103mと非現実的な数値となる。一方で、浸水面が水の動きがある動水面であると仮定する場合、2次元移流拡散方程式といった偏微分方程式を解く必要があり、10分毎等の短い時間間隔で浸水図を作成することは、困難となる。
【0041】
図2は、HANDを用いた浸水図作成の効果を説明する模式図である。所定の地域に浸水センサS2が設置されているとする。図2において、浸水センサS2の設置地点を黒塗りの丸で示し、河川を実線で示し、HANDモデルにおける等高線を破線で示す。図の右側が上流、図の左側が下流である。浸水センサS2が浸水を検知したとして、浸水図を作成することを考える。HANDモデルに基づくと、河川の位置のHANDモデルで表した地盤高は0mであり、河川の流下方向と直角方向に地盤勾配があるため、斜線の領域が浸水範囲となる。このように、HANDモデルでは、河川の流下方向の地盤勾配が考慮済となるため、2次元移流拡散方程式といった偏微分方程式を解かなくても、浸水図の近似解が算出できるという効果がある。
【0042】
≪動的センシング情報≫
図3は、動的センシング情報から算出される実測センサ密度が時間とともに変化することを説明する模式図である。例えば、電柱等の構造物に設置されている浸水センサ10が検知する浸水有無に関する情報と、SNS11に投稿されるSNS画像(静止画)から判別される浸水有無に関する情報と、航空機12で取得した航空写真(静止画)から判別される浸水範囲に関する情報と、人工衛星13で取得した衛星画像(SAR画像)から判別される浸水範囲に関する情報と、を「動的センシング情報」と命名する。
【0043】
≪実測センサ密度、仮想センサ密度≫
評価対象領域において、(N+N+N+N)/Aにより算出される値を「実測センサ密度」と命名する。ここで、Nは、所定の地域において、洪水浸水想定区域図で指定されている洪水浸水想定区域内に設置されている浸水センサの個数、Nは、所定の地域において、浸水想定区域内で浸水についてSNSに投稿された投稿数、Nは、所定の地域において、浸水想定区域内かつ航空写真の撮影範囲内のグリッドセル数、Nは、所定の地域において、浸水想定区域内かつ衛星画像の観測範囲内のグリッドセル数、Aは、所定の地域において、浸水想定区域の面積である。また、所定の地域において、N/Aにより算出される値を「仮想センサ密度」と命名する。ここで、Nは、所定の地域において、既存浸水情報の浸水範囲内に設置されている仮想浸水センサの個数、Aは、所定の地域において、既存浸水情報の浸水範囲の面積である。なお、洪水浸水想定区域図については、後述する。
【0044】
≪HAND地盤高≫
HANDモデルは、地形モデルの一つである。HANDモデルは、行と列の格子状に並んだグリッドセルから構成されており、各グリッドセルの値を「HAND地盤高」と命名する。「地盤高」は、対象とする地点の海面からの相対的な高さを表す。一方、「HAND地盤高」は、対象とする地点の河川といった最近傍排水地点との相対的な高低差を表す。
【0045】
≪浸水センサ設置高≫
別段示さない限り、本明細書で用いられる「浸水センサ設置高」は、浸水センサが設置されている地点において、地盤から浸水センサのセンサ部までの高さのことをいう。
【0046】
≪HAND水面高、仮想HAND水面高≫
浸水センサの場合、「HAND地盤高」と「浸水センサ設置高」とを加算した値を「HAND水面高」と命名する。SNSの場合、「HAND地盤高」の値を「HAND水面高」と命名する。航空写真の場合、「HAND地盤高」の値を「HAND水面高」と命名する。衛星画像の場合、「HAND地盤高」の値を「HAND水面高」と命名する。「水面高」は、対象とする水面の海面からの相対的な高さを表す。一方、「HAND水面高」は、対象とする水面の河川といった最近傍排水地点との相対的な高低差を表す。また、仮想浸水センサの場合、「HAND地盤高」の値を「仮想HAND水面高」と命名する。
【0047】
≪セグメント≫
所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に等間隔に分割した区画を「セグメント」と命名する。また、所定の地域を河川の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に等間隔に分割して、さらに、河川の中心線で縦断方向に分割した区画も「セグメント」と命名する。
【0048】
≪実測HAND水面高最大値、仮想HAND水面高最大値≫
あるセグメントに複数の浸水センサが設置されているとする。これらの浸水センサの内、複数の浸水センサが浸水を検知しているとする。浸水を検知している浸水センサの実測HAND水面高の最大値を「実測HAND水面高最大値」と命名する。また、あるセグメントに複数の仮想浸水センサが設置されているとする。これらの仮想浸水センサの内、複数の仮想浸水センサが浸水を検知しているとする。浸水を検知している仮想浸水センサの仮想HAND水面高の最大値を「仮想HAND水面高最大値」と命名する。「実測HAND水面高最大値」は、浸水センサの場合に限らない。浸水センサ、SNS画像(静止画)、航空写真(静止画)、衛星画像(SAR画像)、から算出される実測HAND水面高の最大値も「実測HAND水面高最大値」と命名する。
【0049】
≪浸水図作成用内挿関数、仮想浸水図作成用内挿関数≫
セグメント毎に算出する実測HAND水面高最大値に基づいて、動径基底関数を用いた内挿法によって算出する内挿関数を「浸水図作成用内挿関数」と命名する。また、セグメント毎に算出する仮想HAND水面高最大値に基づいて、動径基底関数を用いた内挿法によって算出する内挿関数を「仮想浸水図作成用内挿関数」と命名する。「浸水図作成用内挿関数」と「仮想浸水図作成用内挿関数」は、動径基底関数の線形結合として表される。
【0050】
≪浸水図作成用実測HAND水面高、浸水図作成用仮想HAND水面高≫
HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)において、浸水図作成用実測HAND水面高=浸水図作成用内挿関数の右辺から左辺への代入式により算出される値を「浸水図作成用実測HAND水面高」と命名する。また、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)において、浸水図作成用仮想HAND水面高=仮想浸水図作成用内挿関数の右辺から左辺への代入式により算出される値を「浸水図作成用仮想HAND水面高」と命名する。
【0051】
≪洪水浸水想定区域図≫
別段示さない限り、本明細書で用いられる「洪水浸水想定区域図」は、国土交通省、および、都道府県が指定した洪水浸水想定区域のことをいう。洪水浸水想定区域図は、想定し得る最大規模の降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を指定したもので、想定される区域、想定される深水深、浸水継続時間を記載したものである。本開示の文脈において、「洪水浸水想定区域図」と言うよりもむしろ、用語「浸水想定図」「浸水想定区域図」「浸水区域図」が用いられてもよい。しかし、当業者は、用語「浸水想定図」「浸水想定区域図」「浸水区域図」が適用可能な場合には「洪水浸水想定区域図」で置き換えられ得ることを理解できる。
【0052】
≪既存浸水情報≫
既存浸水情報は、国土地理院によって公開される想定最大規模の洪水浸水想定区域図であっても良いし、国土地理院によって公開される計画規模の洪水浸水想定区域図であっても良いし、過去の洪水実績から作成された浸水図であっても良いし、2次元移流拡散方程式といった偏微分方程式を解くことによって算出された浸水図であっても良い。
【0053】
≪評価指標値平均≫
別段示さない限り、本明細書で用いられる「評価指標値平均」は、TP(True Positive)、FP(False Positive)、TN(True Negative)、FN(False Negative)、適合率、再現率、F値、F値平均のことをいう。TP、FP、TN、FN、適合率、再現率、F値、F値平均については、後述する。
【0054】
≪湛水量≫
別段示さない限り、本明細書で用いられる「湛水量」は、洪水時の河川氾濫による浸水体積のことをいう。湛水量は、浸水深(m)×グリッドセルの幅(m)×グリッドセルの高さ(m)の和で計算される。
【0055】
≪浸水センサ≫
別段示さない限り、本明細書で用いられる「浸水センサ」は、電柱等の構造物に設置され、浸水を検知すると、浸水の有無といったセンシング情報を通信ネットワークを介してサーバ装置に送信する装置のことをいう。検知方式としては、電波式、圧力式、接触式、フロート式といった検知方式が知られている。通信方式としては、携帯電話網を使用する方式、数10mといった短距離で通信可能な特定小電力無線と中継装置を使用する方式等が知られている。本開示の一実施形態の主体は、浸水センサといったセンサが検知するセンシング情報に基づいて、浸水図を作成する実装方法にあるので、浸水センサの部品構成、動作原理、および、機能の詳細の説明は省略する。
【0056】
≪≪公知の技術:HANDモデルの算出の一例≫≫
HANDモデルは、国土地理院によって公開されるDEMデータに基づいて、公に入手可能なコンピュータプログラムを用いて算出することができる。公に入手可能なコンピュータプログラムとしては、一例として、「https://hydrology.usu.edu/taudem/taudem5/」から入手可能なTauDEM(Terrain Analysis Using Digital Elevation Model)がある。ここで、TauDEMを用いたHANDモデルの算出の一例を、図4のフローチャートを参照しながら、以下に説明する。
【0057】
ユーザからの指示に基づいて、TauDEMに含まれる窪地の除去処理(ST1)を開始する。ここで、窪地とは、DEMデータを構成するグリッドセルの内、より地盤高の高いグリッドセルに囲まれたグリッドセルのことである。このステップST1において、サーバ装置の演算部は、ストレージ装置に記憶されているDEMデータを読み込む。次に、サーバ装置の演算部は、読み込んだDEMデータに基づいて、各グリッドセルについて、窪地であるか、窪地でないかを判別する。次に、サーバ装置の演算部は、各グリッドセルについて、窪地と判別したグリッドセルの地盤高を増加させて、窪地を除去する。次に、サーバ装置の演算部は、窪地除去済のDEMデータをGeoTIFF形式のファイルとしてストレージ装置に記憶させる。その後、ステップST2に移行する。
【0058】
ステップST2では、サーバ装置の演算部は、TauDEMに含まれる8方向の流向の算出処理を実行する。このステップST2において、サーバ装置の演算部は、ステップST1で算出した窪地除去済のDEMデータに基づいて、各グリッドセルについて、周囲8個の隣接するグリッドセルとの地盤高の差を算出する。次に、サーバ装置の演算部は、各グリッドセルについて、周囲8個の隣接するグリッドセルとの地盤高の差に基づいて、流向を判別して、東=1、北東=2、北=3、北西=4、西=5、南西=6、南=7、南東=8をグリッドセルの値とするGeoTIFF形式のファイルをストレージ装置に記憶させる。その後、ステップST3に移行する。
【0059】
ステップST3では、サーバ装置の演算部は、TauDEMに含まれる無限方向の流向の算出処理を実行する。このステップST3において、サーバ装置の演算部は、ステップST1で算出した窪地除去済のDEMデータに基づいて、各グリッドセルについて、周囲8個の隣接するグリッドセルに限らず、グリッドセルの勾配の最大方向を算出する。次に、サーバ装置の演算部は、各グリッドセルについて、グリッドセルの勾配の最大方向に基づいて、東から反時計周りに、0から2piの連続の浮動小数点の値をグリッドセルの値とするGeoTIFF形式のファイルをストレージ装置に記憶させる。その後、ステップST4に移行する。
【0060】
ステップST4では、サーバ装置の演算部は、TauDEMに含まれる上流の流域面積と流路の算出処理を実行する。このステップST4において、サーバ装置の演算部は、ステップST2で算出した8方向の流向データに基づいて、各グリッドセルについて、上流の流域面積を算出する。また、ステップST2で算出した8方向の流向データに基づいて、各グリッドセルについて、流路であるか、流路でないかを判別する。次に、サーバ装置の演算部は、流路であると判別したグリッドセルについて、上流の流域面積の値をグリッドセルの値とするGeoTIFF形式のファイルをストレージ装置に記憶させる。その後、ステップST5に移行する。
【0061】
ステップST5では、サーバ装置の演算部は、TauDEMに含まれる河川の算出処理を実行する。このステップST5において、サーバ装置の演算部は、ステップST4で算出した上流の流域面積データと、ステップST4で算出した流路データと、に基づいて、各グリッドセルについて、河川であるか、河川でないかを判別する。ここで、上流の流域面積が所定の閾値以上で、かつ、ステップST4で流路と判別したグリッドセルを河川と判別する。次に、サーバ装置の演算部は、各グリッドセルについて、河川と判別したグリッドセルの値を「1」、河川でないと判別したグリッドセルの値を「0」とするGeoTIFF形式のファイルをストレージ装置に記憶させる。その後、ステップST6に移行する。
【0062】
ステップST6では、サーバ装置の演算部は、TauDEMに含まれる最近傍排水地点との相対的な高さの算出処理を実行する。このステップST6において、サーバ装置の演算部は、ステップST1で算出した窪地除去済のDEMデータと、ステップST3で算出した無限方向の流向データと、ステップST5で算出した河川データと、に基づいて、各グリッドセルについて、最近傍の排水地点の地盤高と各グリッドセルの地盤高との差を算出する。次に、サーバ装置の演算部は、最近傍の排水地点の地盤高と各グリッドセルの地盤高との差を値とするGeoTIFF形式のファイルをストレージ装置に記憶させる。その後、HANDモデルの算出処理が完了する。
【0063】
≪≪情報処理装置1のシステム構成の一例≫≫
図5は、本開示の一実施形態に係る情報処理装置のシステム構成の一例を示す図である。図5に示すように、情報処理装置1は、浸水センサ10と、SNS11と、航空機12と、人工衛星13と、国または市区町村の防災担当者や住民によって利用される端末装置20と、浸水センサといったセンサが検知する浸水の有無に関する情報を受信して、浸水図を作成するサーバ装置30と、これらを通信可能に接続する通信ネットワーク90と、を備える。
【0064】
≪≪端末装置20及びサーバ装置30のハードウェア構成の一例≫≫
図6は、本開示の一実施形態に係る端末装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。端末装置20は、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータといったコンピュータである。端末装置20は、演算部2001と、メモリ2002と、ストレージ装置2003と、通信部2004と、表示部2005と、入力部2006と、を主たる要素として構成されている。また、端末装置20は、ウェブブラウザを含んでよい。
【0065】
図7は、本開示の一実施形態に係るサーバ装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。サーバ装置30は、例えば、ラックマウントサーバといった汎用的なサーバ用コンピュータ、あるいはクラウドサーバといった仮想的なサーバ用コンピュータである。サーバ装置30は、演算部3001と、メモリ3002と、ストレージ装置3003と、通信部3004と、表示部3005と、入力部3006と、を主たる要素として構成されている。また、サーバ装置30は、ウェブサーバを含んでよい。
【0066】
演算部2001は、CPU等のプロセッサで構成される。演算部2001は、通信部2004からHTML(Hyper Text Markup Language)、CSS(Cascading Style Sheets)、leaflet.js等のJavaScript(登録商標)、浸水図の画像等の応答情報を受け取り、表示部2005にブラウザが処理するHTML、浸水図の画像等を表示する。
【0067】
メモリ2002は、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で構成されている。メモリ2002は、OS、ブラウザ等のコンピュータプログラム、サーバ装置30から受信したHTML、CSS、leaflet.js等のJavaScript(登録商標)、浸水図の画像等を記憶する。leaflet.jsは、ウェブブラウザで地図を表示するためのJavaScript(登録商標)である。leaflet.jsは、「https://leafletjs.com/」から公に入手可能である。ウェブブラウザで地図を表示するためには、leaflet.jsに限らず、Open LayersといったオープンソースのJavaScript(登録商標)でも良い。Open Layersは、「https://openlayers.org/」から公に入手可能である。
【0068】
ストレージ装置2003は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。ストレージ装置2003は、OS、ブラウザ等のコンピュータプログラム、サーバ装置30から受信したHTML、CSS、leaflet.js等のJavaScript(登録商標)、浸水図の画像等を記憶する。
【0069】
表示部2005は、液晶表示パネル、有機ELパネル等で構成されている。表示部2005は、ブラウザを表示するとともに、ブラウザが処理するHTML、浸水図の画像等を表示する。
【0070】
入力部2006は、キーボード、マウス等で構成されている。入力部2006は、ユーザからのスクロール操作、スワイプ操作、拡大アイコン、縮小アイコン等のクリック操作、キー入力操作を受け付ける。
【0071】
通信部2004は、サーバ装置30から送信されるHTML、CSS、leaflet.js等のJavaScript(登録商標)、浸水図の画像等の応答情報を受信する。また、通信部2004は、演算部2001の制御に基づいて、URL等の要求情報をサーバ装置30に送信する。
【0072】
演算部3001は、CPU等のプロセッサで構成される。プロセッサがメモリ等に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、プロセッサとメモリが協働し、OS、ウェブサーバ、データベース、浸水図作成等の機能が実現される。
【0073】
メモリ3002は、RAM等の記憶装置で構成されている。メモリ3002は、OS、ウェブサーバ、データベース等のコンピュータプログラム、浸水図作成のコンピュータプログラム等を記憶する。
【0074】
ストレージ装置3003は、ハードディスク、SSD等で構成されている。ストレージ装置3003は、OS、ウェブサーバ、データベース等のコンピュータプログラム、浸水図作成のコンピュータプログラム、HANDモデル、洪水浸水想定区域図、浸水図、データベースのデータファイル、HTML、CSS、leaflet.js等のJavaScript(登録商標)等のファイルを記憶する。浸水図作成手段36で算出される浸水図は、ストレージ装置3003に含まれる浸水図記憶手段44のディレクトリ、例えば、「/17/114460/」に、例えば、「52432.png」のファイル名で記憶される。ここで、「17」「114460」「52432」は、XYZ方式におけるズームレベルZ、タイル座標X、タイル座標Yの値である。このXYZ方式は、ウェブサーバとウェブブラウザとの通信で地図情報を効率的に配信するために用いられる公知の技術である。
【0075】
通信部3004は、端末装置20から送信されるURL等の要求情報を受信する。演算部3001は、通信部3004からURL等の要求情報を受け取り、要求情報に含まれるURL等に応じて、ストレージ装置3003に含まれる浸水図記憶手段44のディレクトリ、例えば、「/17/114460/」の、例えば、「52432.png」のファイルを読み込んで、通信部3004を経由して、浸水図の画像を含む応答情報を端末装置20に送信する。ここで、「17」「114460」「52432」は、XYZ方式におけるズームレベルZ、タイル座標X、タイル座標Yの値である。
【0076】
表示部3005は、液晶表示パネル等で構成されている。
【0077】
入力部3006は、キーボード、マウス等で構成されている。入力部3006は、ユーザからのスクロール操作、アイコンのクリック操作、キー入力操作を受け付ける。
【0078】
≪≪サーバ装置30の機能構成の一例≫≫
図8に示すように、サーバ装置30は、センシング情報受信判別手段32と、共通処理手段34と、浸水図作成手段36と、仮想浸水図作成手段38と、動的センシング情報記憶手段40と、評価指標値記憶手段42と、浸水図記憶手段44と、浸水図送信制御手段46と、を備える。
【0079】
図8に示すように、センシング情報受信判別手段32は、浸水センサ受信制御手段320と、SNS判別手段322と、航空写真判別手段324と、衛星画像判別手段326と、を備える。
【0080】
図8に示すように、共通処理手段34は、HANDモデル取得手段340、を備える。
【0081】
図8に示すように、浸水図作成手段36は、動的センシング情報取得手段360と、実測HAND水面高算出手段362と、浸水図作成用セグメント判別手段364と、実測HAND水面高最大値算出手段366と、浸水図作成用内挿関数算出手段368と、浸水図算出手段370と、を備える。
【0082】
図8に示すように、浸水図作成手段36は、動的センシング情報取得手段360と、実測HAND水面高算出手段362と、浸水図作成用セグメント判別手段364と、実測HAND水面高最大値算出手段366と、浸水図作成用内挿関数算出手段368と、浸水図算出手段370と、に加えて、さらに、浸水図補正手段372と、異常値検出手段374と、を備える構成としても良い。このように浸水図補正手段372を備える構成とすることで、浸水図の精度をより向上できる。また、異常値検出手段374を備える構成とすることで、浸水図の精度をより向上できる。
【0083】
図8に示すように、仮想浸水図作成手段38は、既存浸水情報取得手段380と、仮想浸水図作成条件設定手段382と、仮想動的センシング情報生成手段384と、仮想HAND水面高算出手段386と、仮想HAND水面高最大値算出手段388と、仮想浸水図作成用内挿関数算出手段390と、仮想浸水図算出手段392と、評価指標値平均算出手段394と、を備える。
【0084】
センシング情報受信判別手段32、共通処理手段34、浸水図作成手段36、仮想浸水図作成手段38、動的センシング情報記憶手段40、評価指標値記憶手段42、浸水図記憶手段44、浸水図送信制御手段46と、これらに含まれる各要素は、演算部3001と、メモリ3002と、ストレージ装置3003と、通信部3004と、が協働してプログラムを実行することにより、機能が実現される。
【0085】
≪≪サーバ装置30の機能詳細の一例≫≫
≪センシング情報受信判別手段32の浸水センサ受信制御手段320≫
浸水センサ受信制御手段320は、通信ネットワーク90を介して、浸水センサ10から浸水有無に関する情報を受信する機能を有する。また、受信する浸水有無に関する情報を動的センシング情報記憶手段40に記憶させる機能を有する。ここで、浸水有無に関する情報とは、浸水センサを識別する浸水センサID、観測日時、浸水センサ設置場所(緯度、経度)、浸水センサ設置高、HAND地盤高、浸水の有無のことである。
【0086】
≪センシング情報受信判別手段32のSNS判別手段322≫
SNS判別手段322は、通信ネットワーク90を介して、SNSを運用する組織が管理するクラウドサーバといったサーバ装置から、SNS情報を受信する機能を有する。また、受信するSNS情報から浸水有無に関する情報を判別する機能を有する。さらに、判別する浸水有無に関する情報を動的センシング情報記憶手段40に記憶させる機能を有する。ここで、SNS情報とは、SNS投稿を識別するSNSID、投稿日時、投稿場所(緯度、経度)、SNS投稿時に添付される画像情報(静止画)のことである。また、浸水有無に関する情報とは、SNS投稿を識別するSNSID、投稿日時、投稿場所(緯度、経度)、SNS投稿時に添付される画像情報(静止画)、HAND地盤高、浸水の有無のことである。
【0087】
SNS情報から浸水有無に関する情報を判別する手法としては、U-NETといったニューラルネットワークを用いるセマンティックセグメンテーション技術が公に知られている。ニューラルネットワークは、次のように学習される:SNS投稿時に添付される画像情報(静止画)と、人間が作成した浸水有無に関する情報を学習用データとして用いる。SNS投稿時に添付される画像情報(静止画)を入力データとして、ニューラルネットワークの出力データと人間が作成した浸水有無に関する情報との、一例として、誤差の二乗の和を算出する。誤差の二乗の和に基づいて、誤差逆伝播法として知られている手法により、ニューラルネットワークの重みとバイアスの値を最適化する。浸水の有無は、次のように判別される:SNS投稿時に添付される画像情報(静止画)を学習済のニューラルネットワークに入力する。学習済のニューラルネットワークから出力されるデータを判別される浸水の有無とする。
【0088】
以上のように、動的センシング情報に、SNS投稿から判別される浸水有無に関する情報を含む態様とすることで、実測センサ密度が大きくなるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0089】
≪センシング情報受信判別手段32の航空写真判別手段324≫
航空写真判別手段324は、通信ネットワーク90を介して、航空写真を撮影する組織が管理するクラウドサーバといったサーバ装置から、航空写真情報を受信する機能を有する。また、受信する航空写真情報から浸水範囲に関する情報を判別する機能を有する。さらに、判別する浸水範囲に関する情報を動的センシング情報記憶手段40に記憶させる機能を有する。ここで、航空写真情報とは、航空写真を識別する航空写真ID、撮影日時、撮影場所(緯度、経度)、撮影される画像情報(静止画)のことである。また、浸水範囲に関する情報とは、浸水範囲のポリゴンを識別する識別用ID、航空写真を識別する航空写真ID、撮影日時、撮影場所(緯度、経度)、撮影される画像情報(静止画)、浸水範囲(外周線の頂点の緯度、経度)のことである。
【0090】
航空写真情報から浸水範囲に関する情報を判別する手法としては、U-NETといったニューラルネットワークを用いるセマンティックセグメンテーション技術が公に知られている。ニューラルネットワークは、次のように学習される:浸水時に撮影された航空写真と、人間が作成した浸水範囲(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)を学習用データとして用いる。浸水時に撮影された航空写真を入力データとして、ニューラルネットワークの出力データと人間が作成した浸水範囲(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)との、一例として、誤差の二乗の和を算出する。誤差の二乗の和に基づいて、誤差逆伝播法として知られている手法により、ニューラルネットワークの重みとバイアスの値を最適化する。浸水範囲(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)は、次のように判別される:浸水時に撮影される航空写真を学習済のニューラルネットワークに入力する。学習済のニューラルネットワークから出力されるデータを判別される浸水範囲1(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)とする。
【0091】
次に、浸水範囲1(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)から、浸水範囲2(外周線の頂点の緯度、経度で定義されるポリゴン)を算出して、この浸水範囲2(外周線の頂点の緯度、経度で定義されるポリゴン)を浸水範囲に関する情報とする。ここで、内部が埋め尽くされたポリゴン(一例として、ピクセルで構成された画像のような場合)から、外周線の頂点で定義されるポリゴンを算出する手法については、エッジ検出技術が公に知られている。浸水範囲1(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)から、浸水範囲2(外周線の頂点の緯度、経度で定義されるポリゴン)を算出するには、OpenCVといったコンピュータプログラムを使うこともできる。OpenCVは、「https://opencv.org/」から公に入手可能である。
【0092】
以上のように、動的センシング情報に、航空写真(静止画)から判別される浸水範囲に関する情報を含む態様とすることで、実測センサ密度が大きくなるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0093】
≪センシング情報受信判別手段32の衛星画像判別手段326≫
衛星画像判別手段326は、通信ネットワーク90を介して、人工衛星を運用する組織が管理するクラウドサーバといったサーバ装置から、衛星画像情報を受信する機能を有する。また、受信する衛星画像情報から浸水範囲に関する情報を判別する機能を有する。さらに、判別する浸水範囲に関する情報を動的センシング情報記憶手段40に記憶させる機能を有する。ここで、衛星画像情報とは、衛星画像を識別する衛星画像ID、観測日時、観測場所(緯度、経度)、観測される衛星画像(SAR画像)のことである。また、浸水範囲に関する情報とは、浸水範囲のポリゴンを識別する識別用ID、衛星画像を識別する衛星画像ID、観測日時、観測場所(緯度、経度)、観測される衛星画像(SAR画像)、浸水範囲(外周線の頂点の緯度、経度)のことである。
【0094】
衛星画像情報から浸水範囲に関する情報を判別する手法としては、U-NETといったニューラルネットワークを用いるセマンティックセグメンテーション技術が公に知られている。ニューラルネットワークは、次のように学習される:浸水時に観測された衛星画像(SAR画像)と、人間が作成した浸水範囲(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)を学習用データとして用いる。浸水時に観測された衛星画像(SAR画像)を入力データとして、ニューラルネットワークの出力データと人間が作成した浸水範囲(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)との、一例として、誤差の二乗の和を算出する。誤差の二乗の和に基づいて、誤差逆伝播法として知られている手法により、ニューラルネットワークの重みとバイアスの値を最適化する。浸水範囲(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)は、次のように判別される:浸水時に観測される衛星画像(SAR画像)を学習済のニューラルネットワークに入力する。学習済のニューラルネットワークから出力されるデータを判別される浸水範囲1(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)とする。
【0095】
次に、浸水範囲1(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)から、浸水範囲2(外周線の頂点の緯度、経度で定義されるポリゴン)を算出して、この浸水範囲2(外周線の頂点の緯度、経度で定義されるポリゴン)を浸水範囲に関する情報とする。ここで、内部が埋め尽くされたポリゴン(一例として、ピクセルで構成された画像のような場合)から、外周線の頂点で定義されるポリゴンを算出する手法については、エッジ検出技術が公に知られている。浸水範囲1(内部が所定の値、一例として、1で埋め尽くされたポリゴン)から、浸水範囲2(外周線の頂点の緯度、経度で定義されるポリゴン)を算出するには、OpenCVといったコンピュータプログラムを使うこともできる。
【0096】
以上のように、動的センシング情報に、衛星画像(SAR画像)から判別される浸水範囲に関する情報を含む態様とすることで、実測センサ密度が大きくなるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、衛星画像(SAR画像)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0097】
≪共通処理手段34のHANDモデル取得手段340≫
[HANDモデル取得機能、メモリ保存機能]
図9に示すように、HANDモデル取得手段340は、ストレージ装置3003に記憶されているHANDモデルと、ストレージ装置3003に記憶されている河川中心線と、を取得する機能を有する。また、取得するHANDモデルと、河川中心線と、をメモリ3002に記憶させる機能を有する。ここで、HANDモデルとは、行と列の格子状に並んだグリッドセルで構成されるラスタデータのことである。
【0098】
HANDモデルは、GeoTIFF形式のファイルとしてストレージ装置3003に記憶されていても良いし、座標参照系(CRS:Coordinate Reference System)、境界ボックス(Bounding Box)といったメタデータと、グリッドセルのHAND地盤高とが所定のデータベース管理方式に基づいて記憶されていても良い。ここで、座標参照系とは、一例として、EPSG:6668-JGD2011のことであり、球体である地球上の位置を平面に投影する方法を示す。また、境界ボックスとは、GeoTIFF形式のファイルの西端の経度、東端の経度、北端の緯度、南端の緯度のことである。GeoTIFF形式のファイルの読み込みには、rasterioといったコンピュータプログラムを使うことができる。rasterioは、「https://rasterio.readthedocs.io/en/stable/」から公に入手可能である。
【0099】
[画像座標空間回転機能]
図10に示すように、HANDモデル取得手段340は、さらに、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)を回転させる機能を有しても良い。図11に示すように、河川の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、または、河川が蛇行して流下しており、平均の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)を回転させることが好ましい。以降の説明において、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)を回転させることで、HANDモデルのX軸方向は、河川の平均の流下方向に一致しているものとする。また、HANDモデルのY軸方向は、河川の平均の流下方向の直角方向に一致しているものとする。
【0100】
以下に、画像座標空間を回転させる機能の詳細を説明する。画像座標空間(行番号、列番号)を時計周りに回転する場合、回転後の行番号は、回転前の行番号×cos(回転角度)-回転前の列番号×sin(回転角度)を整数に四捨五入して算出する。回転後の列番号は、回転前の行番号×sin(回転角度)+回転前の列番号×cos(回転角度)を整数に四捨五入して算出する。ここで、回転角度は、正の実数とする。HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)の回転によって、HAND地盤高が存在しないグリッドセルが発生する場合、最近傍補間(nearest neighbor interpolation)、双一次補間(bilinear interpolation)、双三次補間(bicubic interpolation)等の公知の技術を用いて補間する。
【0101】
≪浸水図作成手段36の動的センシング情報取得手段360≫
動的センシング情報取得手段360は、動的センシング情報記憶手段40に記憶されている動的センシング情報を取得する機能を有する。また、取得する動的センシング情報をメモリ3002に記憶させる機能を有する。さらに、動的センシング情報に基づいて、実測センサ密度を算出して、実測センサ密度をメモリ3002に記憶させる機能を有する。動的センシング情報は、動的センシング情報記憶手段40に所定のデータベース管理方式に基づいて記憶されていても良いし、カンマ区切り形式のファイルとしてストレージ装置3003に記憶されていても良い。
【0102】
図12は、動的センシング情報が浸水センサに関する情報の場合のデータベーステーブルの一例である。図13は、動的センシング情報がSNSに関する情報の場合のデータベーステーブルの一例である。図14は、動的センシング情報が航空写真に関する情報の場合のデータベーステーブルの一例である。図15は、動的センシング情報が衛星画像に関する情報の場合のデータベーステーブルの一例である。
【0103】
以下に、実測センサ密度を算出する機能の詳細を説明する。実測センサ密度は、次の(1)式で算出される。
【0104】
ここで、Dは、実測センサ密度(個/m)である。Nは、所定の地域において、浸水想定区域内に設置されている浸水センサの個数である。Nは、所定の地域において、浸水想定区域内で浸水についてSNSに投稿された投稿数である。Nは、所定の地域において、浸水想定区域内かつ航空写真の撮影範囲内のグリッドセル数である。Nは、所定の地域において、浸水想定区域内かつ衛星画像の観測範囲内のグリッドセル数である。Aは、所定の地域において、浸水想定区域の面積(m)である。
【0105】
≪浸水図作成手段36の実測HAND水面高算出手段362≫
実測HAND水面高算出手段362は、メモリ3002に記憶されているHANDモデルと、メモリ3002に記憶されている動的センシング情報と、に基づいて、実測HAND水面高を算出する機能を有する。また、算出する実測HAND水面高をメモリ3002に記憶させる機能を有する。以下に、実測HAND水面高を算出する機能の詳細を説明する。
【0106】
1)動的センシング情報が浸水センサに関する情報の場合
浸水センサ設置場所のHAND地盤高(i, j)に浸水センサ設置高を加えて、実測HAND水面高(i, j)とする。ここで、i、jは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号である。また、HAND地盤高(i, j)は、HANDモデルのグリッドセルの値であり、画像座標空間(行番号、列番号)で値が記憶されている。さらに、浸水センサ設置場所は、地理座標空間(緯度、経度)で値が記憶されているため、浸水センサ設置場所の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)の行番号i、列番号jに変換して、実測HAND水面高(i, j)を算出する。
【0107】
2)動的センシング情報がSNSに関する情報の場合
SNS投稿場所のHAND地盤高(i, j)を実測HAND水面高(i, j)とする。ここで、SNS投稿場所は、地理座標空間(緯度、経度)で値が記憶されているため、SNS投稿場所の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)の行番号i、列番号jに変換して、実測HAND水面高(i, j)を算出する。
【0108】
3)動的センシング情報が航空写真に関する情報の場合
航空写真から判別された浸水範囲内のHAND地盤高(i, j)を実測HAND水面高(i, j)とする。ここで、航空写真から判別された浸水範囲は、地理座標空間(緯度、経度)で浸水有無が記憶されているため、浸水範囲内の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)の行番号i、列番号jに変換して、実測HAND水面高(i, j)を算出する。
【0109】
4)動的センシング情報が衛星画像に関する情報の場合
衛星画像から判別された浸水範囲内のHAND地盤高(i, j)を実測HAND水面高(i, j)とする。ここで、衛星画像から判別された浸水範囲は、地理座標空間(緯度、経度)で浸水有無が記憶されているため、浸水範囲内の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)の行番号i、列番号jに変換して、実測HAND水面高(i, j)を算出する。
【0110】
上記の1)~4)の処理を、動的センシング情報のリストの件数分繰り返し実行して、実測HAND水面高(i, j)を算出する。ここで、2)~4)でHAND地盤高(i, j)を実測HAND水面高(i, j)とするのは、一般に、SNSに投稿される画像情報(静止画)から判別される浸水の有無、航空写真(静止画)から判別される浸水範囲、衛星画像(SAR画像)から判別される浸水範囲には、浸水深に関する情報が含まれないためである。
【0111】
また、地理座標空間における緯度、経度から画像座標空間における行番号i、列番号jへの変換は、境界ボックスの西端の経度と、東端の経度と、北端の緯度と、南端の緯度と、HANDモデルの幅方向のグリッドセル数と、高さ方向のグリッドセル数と、グリッドセルの幅あたりの経度と、グリッドセルの高さあたりの緯度と、に基づいて算出する。北西の端(左上の角)を原点とする行番号i、列番号jは、次の(2)式で算出される。
【0112】
ここで、i、jは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号、latnorthは、北端の緯度、lonwestは、西端の経度、latは、緯度、lonは、経度、latcellは、グリッドセルの高さあたりの緯度、loncellは、グリッドセルの幅あたりの経度である。また、(2)式の右辺は、実数値となるため、整数に四捨五入して、行番号i、列番号jを算出する。ここで、グリッドセルの高さあたりの緯度は、北端の緯度と、南端の緯度と、高さ方向のグリッドセル数から、(北端の緯度-南端の緯度)/(高さ方向のグリッドセル数)の式を用いて算出される。また、グリッドセルの幅あたりの経度は、西端の経度と、東端の経度と、幅方向のグリッドセル数から、(東端の経度-西端の経度)/(幅方向のグリッドセル数)の式を用いて算出される。
【0113】
以上のように、HAND地盤高を用いて実測HAND水面高を算出しているため、河川の流下方向の地盤勾配が取り除かれるため、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合にも、実測HAND水面高の大小関係を比較することができるようになるという作用効果を奏する。
【0114】
≪浸水図作成手段36の浸水図作成用セグメント判別手段364≫
浸水図作成用セグメント判別手段364は、メモリ3002に記憶されている実測センサ密度と、評価指標値記憶手段42に記憶されている評価指標値平均と、に基づいて、浸水図作成用セグメント分割数を判別する機能を有する。また、評価指標値平均に基づいて、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割することの必要性を判別する機能を有する。さらに、浸水図作成用セグメント分割数に基づいて、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割したセグメントを算出する機能を有する。これに加えて、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割することの必要性に基づいて、その必要がある場合には、河川中心線に基づいて、河川の中心線で縦断方向にさらに分割したセグメントを算出する機能を有する。
【0115】
[浸水図作成用セグメント分割数を判別する機能]
以下に、浸水図作成用セグメント分割数を判別する機能の詳細を説明する。
1)評価指標値平均がN個あるとして、(X、Y、Z)、…、(X、Y、Z)の点列で表されるとする。ここで、X、…、Xは、仮想センサ密度、Y、…、Yは、仮想浸水図作成用セグメント分割数、Z、…、Zは、F値平均とする。
【0116】
2)次に、動径基底関数を用いて、(X、Y、Z)、…、(X、Y、Z)の各点の近傍を通る滑らかな内挿関数を求める。次の(3)式に示すように、内挿関数を動径基底関数の重み付き線形結合で近似する。
【0117】
ここで、z(x)は、内挿関数、λは、点xに中心を持つ動径基底関数の重み、φは、動径基底関数、||x-x||は、点xから点xまでの距離である。また、x、xは、位置座標のベクトル表現であり、デカルト座標系(直交座標系、カーテシアン座標系)では、それぞれ、(X、Y)、(X、Y)である。また、動径基底関数は、ガウス関数、多重二乗関数、逆多重二乗関数といった関数が公に知られている。本開示の一実施形態では、次の(4)式に示すように、2次元のガウス関数を用いるが、その他の2次元の動径基底関数を用いても良い。
【0118】
ここで、εは、動径基底関数の形状に関するパラメータで、値が大きくなると尖った形状となり、値が小さくなるとなだらかな形状となる。点列(X、Y、Z)、…、(X、Y、Z)の値が与えられているとして、それぞれの点(X、Y)からその他の点(X、Y)までの距離に対して動径基底関数の値を計算する。次に、図16に示すように、点xにおける内挿関数の値を次の(5)式で近似する。
【0119】
次に、(5)式に基づいて、点x、点x、…、点xにおける内挿関数の近似値を次の(6)式で近似する。次の(6)式は、点x、点x、…、点xにおける内挿関数の近似値を行列と、ベクトルと、で記述したものである。
【0120】
次の(7)式は、(6)式をベクトルZと、行列Φと、ベクトルΛと、で記述したものである。
【0121】
次に、行列ΦをQR分解と呼ばれる公知の技術を用いて、N次直行行列Qと、N次上三角行列Rに分解する。(7)式に左から逆行列Φ-1を掛けて、左辺と右辺を入れ替えると、動径基底関数の重み付き線形結合の重みのベクトルΛは、次の(8)式で表現される。ここで、動径基底関数の対称性の特徴から、行列Φは、実対称行列である。実対称行列は、常にN次直行行列Qと、N次上三角行列RにQR分解可能という特徴を有する。また、N次上三角行列Rは、対角成分が全て非0の場合、逆行列が計算可能という特徴を有する。
【0122】
ここで、Qは、N次直行行列Qの転置行列である。(8)式では、N次直行行列Qの逆行列Q-1は、Qの転置行列となる特徴を利用している。
【0123】
3)次に、2)で算出した内挿関数1(上記の(3)式)の変数Xに実測センサ密度を代入して、仮想浸水図作成用セグメント分割数を変数Y、F値平均を変数Zとする内挿関数2を算出する。
【0124】
4)次に、3)で算出した内挿関数2から、F値平均が最大となる仮想浸水図作成用セグメント分割数を算出して、この値を浸水図作成用セグメント分割数とする。
ここで、動径基底関数を用いた内挿関数の算出は、scikit-learnといったコンピュータプログラムを使うこともできる。scikit-learnは、「https://scikit-learn.org/stable/」から公に入手可能である。
【0125】
内挿関数の算出では、位置座標(X、Y)、…、(X、Y)に中心を持つ動径基底関数を用いる手法を例示したが、内挿関数の算出はこれに限らない。格子の節点に中心を持つ動径基底関数を用いて、最小二乗法で内挿関数を求めても良いし、ガウス過程回帰を用いて内挿関数を求めても良いし、動径基底関数ネットワークを用いて、勾配降下法で内挿関数を求めても良い。
【0126】
[河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割することの必要性を判別する機能]
以下に、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割することの必要性を判別する機能の詳細を説明する。Fdivide≧Fnotdivideの場合、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割すると判別する。また、Fdivide<Fnotdivideの場合、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割しないと判別する。ここで、Fdivideは、実測センサ密度、浸水図作成用セグメント分割数において、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割するとした場合のF値平均のことである。また、Fnotdivideは、実測センサ密度、浸水図作成用セグメント分割数において、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割しないとした場合のF値平均のことである。
【0127】
[横断方向分割機能]
以下に、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に等間隔に分割する機能の詳細を説明する。図17に示すように、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割する線がX軸と交わる点の列番号をJ、J、…、JN-1とする。J、J、…、JN-1は、それぞれ、(X-X)/N、2×(X-X)/N、…、(N-1)×(X-X)/Nを整数に四捨五入して算出する。ここで、Xは、HANDモデルの列番号の最小値、Xは、HANDモデルの列番号の最大値、Nは、浸水図作成用セグメント分割数である。この場合、セグメント1は、列番号がX以上、J以下のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメント2は、列番号がJより大きく、J以下のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメントNは、列番号がJN-1より大きく、X以下のグリッドセルから構成されることになる。
【0128】
[縦横断方向分割機能]
以下に、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に等間隔に分割して、さらに、河川の中心線で縦断方向に分割する機能の詳細を説明する。図18に示すように、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割する線がX軸と交わる点の列番号をJ、J、…、JN-1とする。J、J、…、JN-1は、それぞれ、(X-X)/N、2×(X-X)/N、…、(N-1)×(X-X)/Nを整数に四捨五入して算出する。ここで、Xは、HANDモデルの列番号の最小値、Xは、HANDモデルの列番号の最大値、Nは、浸水図作成用セグメント分割数である。次に、河川の中心線で縦断方向に分割する。この場合、セグメント1は、列番号がX以上、J以下で、行番号が河川の中心線の上側のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメントNは、列番号がJN-1より大きく、X以下で、行番号が河川の中心線の上側のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメントN+1は、列番号がX以上、J以下で、行番号が河川の中心線の下側のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメント2Nは、列番号がJN-1より大きく、X以下で、行番号が河川の中心線の下側のグリッドセルから構成されることになる。
【0129】
以上のように、実測センサ密度のデータと、評価指標値平均のデータと、を用いて、F値平均が最大となるセグメント分割数を算出しているため、最適なセグメント分割数が自動的に判別される。また、評価指標値平均のデータを用いて、所定の地域を河川の中心線で縦断方向に分割することの必要性を判別しているため、精度向上に寄与しない不必要なセグメント分割により、セグメント当たりの浸水センサ数が不必要に低下することを防止できるという作用効果を奏する。
【0130】
≪浸水図作成手段36の実測HAND水面高最大値算出手段366≫
実測HAND水面高最大値算出手段366は、メモリ3002に記憶されているセグメントと、メモリ3002に記憶されている実測HAND水面高と、に基づいて、実測HAND水面高最大値を算出する機能を有する。さらに、算出する実測HAND水面高最大値をメモリ3002に記憶させる機能を有する。
【0131】
[実測HAND水面高最大値算出機能(横断方向に分割されている場合)]
以下に、河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)にセグメント分割する場合に、実測HAND水面高最大値を算出する機能の詳細を説明する。一例として、セグメント1に浸水センサ1~5が設置されているとして説明する。浸水センサ1~5の設置場所の画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号が、(1, 1)、(1, 5)、(1, 10)、(3, 5)、(3, 10)とする。ここで、括弧内の左側の数字が行番号、括弧内の右側の数字が列番号である。また、浸水センサ1~5の実測HAND水面高が、それぞれ1.0m、1.5m、2.0m、2.5m、3.0mとする。この場合、セグメント1における実測HAND水面高最大値は、3.0m、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号は、(3, 10)となる。また、セグメントに浸水センサが設置されていない場合、当該セグメントにおける実測HAND水面高最大値は算出しない。次に、セグメント2~セグメントNについても、同様に、実測HAND水面高最大値とその画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号を算出する。
【0132】
[実測HAND水面高最大値算出機能(横断方向に加えて縦断方向に分割されている場合)]
以下に、河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)のセグメント分割に加えて、河川の中心線で縦断方向にセグメント分割する場合に、実測HAND水面高最大値を算出する機能の詳細を説明する。一例として、セグメント1に浸水センサ1~3が設置されているとして説明する。浸水センサ1~3の設置場所の画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号が、(1, 1)、(1, 5)、(1, 10)とする。ここで、括弧内の左側の数字が行番号、括弧内の右側の数字が列番号である。また、浸水センサ1~3の実測HAND水面高が、それぞれ1.0m、1.5m、2.0mとする。この場合、セグメント1における実測HAND水面高最大値は、2.0m、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号は、(1, 10)となる。また、セグメントに浸水センサが設置されていない場合、当該セグメントにおける実測HAND水面高最大値は算出しない。次に、セグメント2~セグメント2Nについても、同様に、実測HAND水面高最大値とその画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号を算出する。
【0133】
≪浸水図作成手段36の浸水図作成用内挿関数算出手段368≫
浸水図作成用内挿関数算出手段368は、メモリ3002に記憶されている実測HAND水面高最大値と、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号と、列番号と、に基づいて、浸水図作成用内挿関数を算出する機能を有する。また、算出される浸水図作成用内挿関数をメモリ3002に記憶させる機能を有する。
【0134】
[浸水図作成用内挿関数算出機能(横断方向に分割されている場合)]
以下に、浸水図作成用内挿関数を算出する機能の詳細を説明する。ここで、所定の地域が河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)にセグメントに分割されているとする。また、セグメントがN個あるとして、それぞれのセグメントで実測HAND水面高最大値が算出されているものとする。
【0135】
1)実測HAND水面高最大値の画像座標空間(行番号、列番号)における行番号と、列番号と、実測HAND水面高最大値と、が(X、Y、M)、…、(X、Y、M)の点列で表されるとする。ここで、X、…、Xは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号、Y、…、Yは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、M、…、Mは、それぞれのセグメントにおける実測HAND水面高最大値とする。
【0136】
2)次に、図19に示すように、(X、Y、M)、…、(X、Y、M)の点列を浸水図作成用投影面に投影して、(X、M)、…、(X、M)の点列を算出する。ここで、浸水図作成用投影面は、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号を横軸、実測HAND水面高最大値を縦軸とする面である。
【0137】
3)次に、動径基底関数を用いて、(X、M)、…、(X、M)の各点の近傍を通る滑らかな浸水図作成用内挿関数を求める。動径基底関数を用いた内挿関数の算出は、浸水図作成用セグメント判別手段364で説明した手法を用いる。
【0138】
[浸水図作成用内挿関数算出機能(横断方向に加えて縦断方向に分割されている場合)]
浸水図作成用内挿関数算出手段368の浸水図作成用内挿関数を算出する機能は、河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)の分割に加えて、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割されているとしても良い。ここで、セグメントが2N個あるとして、それぞれのセグメントで実測HAND水面高最大値が算出されているものとする。
【0139】
1)実測HAND水面高最大値の画像座標空間(行番号、列番号)における行番号と、列番号と、実測HAND水面高最大値と、が(X、Y、M)、…、(X、Y、M)、(XN+1、YN+1、MN+1)、…、(X2N、Y2N、M2N)の点列で表されるとする。ここで、X、…、Xは、河川中心線の上側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号、XN+1、…、X2Nは、河川中心線の下側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号、Y、…、Yは、河川中心線の上側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、YN+1、…、Y2Nは、河川中心線の下側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、M、…、Mは、河川中心線の上側のそれぞれのセグメントにおける実測HAND水面高最大値、MN+1、…、M2Nは、河川中心線の下側のそれぞれのセグメントにおける実測HAND水面高最大値とする。
【0140】
2)次に、動径基底関数を用いて、(X、Y、M)、…、(X、Y、M)、(XN+1、YN+1、MN+1)、…、(X2N、Y2N、M2N)の各点の近傍を通る滑らかな浸水図作成用内挿関数を求める。動径基底関数を用いた内挿関数の算出は、浸水図作成用セグメント判別手段364で説明した手法を用いる。
【0141】
以上のように、それぞれのセグメントにおいて、実測HAND水面高の最大値を算出して、動径基底関数による内挿技術を用いて浸水図作成用内挿関数を算出しているため、浸水センサ設置高が小さい浸水センサ付近で、水面高、および、浸水深が過小となることを防止できるという作用効果を奏する。
【0142】
≪浸水図作成手段36の浸水図算出手段370≫
図20に示すように、浸水図算出手段370は、メモリ3002に記憶されている浸水図作成用内挿関数と、メモリ3002に記憶されているHANDモデルと、に基づいて、浸水図を算出する機能を有する。また、算出する浸水図を浸水図記憶手段44に記憶させる機能を有する。さらに、算出する浸水図に基づいて、Webアプリケーションでの利用に適したタイル画像を算出してストレージ装置3003に記憶させる機能を有する。これらに加えて、図21に示すように、浸水図算出手段370は、浸水図の画像座標空間(行番号、列番号)を回転させる機能と、算出する浸水図に基づいて、湛水量を算出する機能と、ストレージ装置3003に記憶されているマスク図に基づいて、算出する浸水図から河道を含む不要な領域をマスクする機能と、を有しても良い。
【0143】
[浸水図算出機能(横断方向に分割されている場合)]
以下に、浸水図を算出する機能の詳細を説明する。ここで、所定の地域が河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)にセグメントに分割されているとする。この場合、図22に示すように、浸水図作成用内挿関数は、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号を横軸、実測HAND水面高最大値を縦軸とする浸水図作成用投影面で定義される。
【0144】
1)浸水図作成用内挿関数(j)に基づいて、浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)を算出する。浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)は、浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)=浸水図作成用内挿関数(j)の右辺から左辺への代入式を用いて算出される。ここで、i、jは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号である。また、代入式から明らかな通り、浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)は、列番号jにのみ依存し、行番号iとは無関係である。
【0145】
2)次に、1)で算出した浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)に基づいて、浸水深1(i, j)を算出する。浸水深1(i, j)は、浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)-HAND地盤高(i, j)の式を用いて算出される。ここで、HAND地盤高(i, j)は、画像座標空間(行番号、列番号)の行番号iと列番号jの位置におけるHANDモデルのグリッドセルの値である。
【0146】
3)次に、2)で算出した浸水深1(i, j)に基づいて、浸水深(i, j)を算出する。浸水深1(i, j)が0m以下の場合、浸水無と判別して、浸水深(i, j)を0mとする。また、浸水深1(i, j)が0mより大きい場合、浸水有と判別して、浸水深1(i, j)を浸水深(i, j)とする。
【0147】
4)次に、3)で算出した浸水深(i, j)を、GeoTIFF形式のファイルとして浸水図記憶手段44に記憶させる。または、浸水深(i, j)と、座標参照系、境界ボックスといったメタデータとを、所定のデータベース管理方式に基づいて記憶させても良い。ここで、座標参照系とは、一例として、EPSG:6668-JGD2011のことであり、球体である地球上の位置を平面に投影する方法を示す。また、境界ボックスとは、GeoTIFF形式のファイルの西端の経度、東端の経度、北端の緯度、南端の緯度のことである。GeoTIFF形式のファイルの書き込みには、rasterioといったコンピュータプログラムを使うことができる。
【0148】
[浸水図算出機能(横断方向に加えて縦断方向に分割されている場合)]
以下に、浸水図算出手段370の浸水図を算出する機能について、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)の分割に加えて、河川の中心線で縦断方向に分割する場合について、機能の詳細を説明する。
【0149】
1)浸水図作成用内挿関数(i, j)に基づいて、浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)を算出する。浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)は、浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)=浸水図作成用内挿関数(i, j)の右辺から左辺への代入式を用いて算出される。ここで、i、jは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号である。
【0150】
2)次に、1)で算出した浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)に基づいて、浸水深1(i, j)を算出する。浸水深1(i, j)は、浸水図作成用実測HAND水面高(i, j)-HAND地盤高(i, j)の式を用いて算出される。ここで、HAND地盤高(i, j)は、画像座標空間(行番号、列番号)の行番号iと列番号jの位置におけるHANDモデルのグリッドセルの値である。
【0151】
3)次に、2)で算出した浸水深1(i, j)に基づいて、浸水深(i, j)を算出する。浸水深1(i, j)が0m以下の場合、浸水無と判別して、浸水深(i, j)を0mとする。また、浸水深1(i, j)が0mより大きい場合、浸水有と判別して、浸水深1(i, j)を浸水深(i, j)とする。
【0152】
4)次に、3)で算出した浸水深(i, j)を、GeoTIFF形式のファイルとして浸水図記憶手段44に記憶させる。または、浸水深(i, j)と、座標参照系、境界ボックスといったメタデータと、を所定のデータベース管理方式に基づいて記憶させても良い。
【0153】
[タイル画像算出機能]
以下に、算出する浸水図に基づいて、Webアプリケーションでの利用に適したタイル画像を算出する機能の詳細を説明する。
【0154】
1)浸水図記憶手段44に記憶されている浸水図を読み込んで、座標参照系、境界ボックスといったメタデータと、浸水深(i, j)のデータと、をメモリ3002に記憶させる。
【0155】
2)次に、所定のズームレベルと、所定のタイル座標Xと、所定のタイル座標Yと、を設定して、浸水深(i, j)のデータをXYZタイル形式のデータに変換する。ここで、XYZタイル形式のデータとは、地図を格子状に分割した小さな正方形の画像データのことである。また、ズームレベルとは、地図の縮尺を表し、ズームレベルが0の場合、全世界が一つのタイルで表現される。ズームレベルが1になると、地図は4枚のタイルに分割される。さらに、タイル座標Xとは、タイルの東西方向(横方向)の位置のことである。また、タイル座標Yとは、タイルの南北方向(縦方向)の位置のことである。
【0156】
3)次に、2)で変換されたXYZタイル形式のデータを、幅256ピクセル、高さ256ピクセルのPNG形式のファイルとしてストレージ装置3003に記憶させる。このとき、所定のズームレベルと所定のタイル座標に応じて、ディレクトリを、一例として、「/17/114460/」、PNG形式のファイルの名前を「52432.png」とする。ここで、「17」「114460」「52432」は、XYZ形式におけるズームレベルZ、タイル座標X、タイル座標Yの値である。このXYZ方式は、ウェブサーバとウェブブラウザとの通信で地図情報を効率的に配信するために用いられる公知の技術である。GeoTIFF形式のファイルの読み込みには、rasterioといったコンピュータプログラムを使うことができる。また、XYZタイル形式のデータへの変換には、riotilerといったコンピュータプログラムを使うことができる。riotilerは、「https://cogeotiff.github.io/rio-tiler/」から公に入手可能である。
【0157】
[画像座標空間回転機能]
HANDモデル取得手段340の説明において、図11に示すように、河川の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、または、河川が蛇行して流下しており、平均の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)を回転させることが好ましいと説明した。このような場合、浸水深(i, j)の画像座標空間(行番号、列番号)を反対方向に回転させて、元の画像座標空間(行番号、列番号)に戻すことが好ましい。
【0158】
以下に、浸水深(i, j)の画像座標空間(行番号、列番号)をHANDモデル取得時の回転と反対方向に回転する機能の詳細を説明する。
【0159】
1)画像座標空間(行番号、列番号)を反時計周りに回転する場合、回転後の行番号は、回転前の行番号×cos(-回転角度)-回転前の列番号×sin(-回転角度)を整数に四捨五入して算出する。回転後の列番号は、回転前の行番号×sin(-回転角度)+回転前の列番号×cos(-回転角度)を整数に四捨五入して算出する。ここで、回転角度は、正の実数とする。浸水深(i, j)の画像座標空間(行番号、列番号)の回転によって、浸水深が存在しないグリッドセルが発生する場合、最近傍補間、双一次補間、双三次補間等の公知の技術を用いて補間する。
【0160】
2)次に、1)で回転した浸水深(i, j)の値を、GeoTIFF形式のファイルとして浸水図記憶手段44に記憶させる。または、浸水深(i, j)と、座標参照系、境界ボックスといったメタデータと、を所定のデータベース管理方式に基づいて記憶させても良い。
【0161】
[湛水量算出機能]
以下に、湛水量を算出する機能の詳細を説明する。湛水量は、次の(9)式で算出される。
【0162】
ここで、Vは、湛水量(m)、Dijは、浸水図の行番号i、列番号jの位置における浸水深(m)、Wは、グリッドセルの幅(m)、Hは、グリッドセルの高さ(m)、Nは、グリッドセルの行数、Nは、グリッドセルの列数である。
【0163】
以上のように、浸水図のデータに加えて、湛水量のデータを算出することで、国や自治体において、排水用のポンプ車を効率的に配車できるという作用効果を奏する。
【0164】
[マスク機能]
以下に、浸水図から河道を含む不要な領域をマスクする機能の詳細を説明する。マスク図は、GeoTIFF形式のファイルとして、予めストレージ装置3003に記憶されているものとする。
【0165】
1)浸水図記憶手段44に記憶されている浸水図と、ストレージ装置3003に記憶されているマスク図と、を読み込んで、メモリ3002に記憶させる。ここで、浸水図とは、行と列の格子状に並んだグリッドセルで構成されるラスタデータのことで、浸水範囲の内部が浸水深(i, j)で埋め尽くされている。また、マスク図とは、行と列の格子状に並んだグリッドセルで構成されるラスタデータのことで、マスクする範囲が、一例として、1で埋め尽くされている。
【0166】
2)次に、浸水図のグリッドセルの行番号、列番号毎に、一例として、マスク図のグリッドセルの値が1の場合、浸水図のグリッドセルの値を0mとして、マスク済みの浸水図とする。
【0167】
3)次に、2)で算出したマスク済みの浸水図を、GeoTIFF形式のファイルとして、浸水図記憶手段44に記憶させる。
【0168】
≪浸水図作成手段36の浸水図補正手段372≫
浸水図補正手段372は、メモリ3002に記憶されている動的センシング情報と、浸水図記憶手段44に記憶されている浸水図と、に基づいて、浸水図を補正する機能を有する。以下に、浸水図を補正する機能の詳細を説明する。
【0169】
1)浸水図記憶手段44に記憶されている浸水図を読み込んで、座標参照系、境界ボックスといったメタデータと、浸水深(i, j)のデータと、をメモリ3002に記憶させる。
【0170】
2)次に、動的センシング情報が、浸水センサに関する情報の場合、動的センシング情報に含まれる浸水センサ設置場所の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)における行番号i、列番号jに変換する。動的センシング情報が、SNSに関する情報の場合、SNS投稿場所の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)における行番号i、列番号jに変換する。動的センシング情報が、航空写真に関する情報の場合、浸水範囲内の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)における行番号i、列番号jに変換する。動的センシング情報が、衛星画像に関する情報の場合、浸水範囲内の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)における行番号i、列番号jに変換する。
【0171】
3)次に、動的センシング情報が、浸水センサに関する情報の場合、2)で算出した浸水センサ設置場所の行番号i、列番号jの位置において、浸水深(i, j)が浸水無、つまり、0m以下で、動的センシング情報に含まれる浸水の有無が浸水有と矛盾した値になっていないかを判別する。
【0172】
4)次に、動的センシング情報が、SNSに関する情報の場合、2)で算出したSNS投稿場所の行番号i、列番号jの位置において、浸水深(i, j)が浸水無、つまり、0m以下で、動的センシング情報に含まれる浸水の有無が浸水有と矛盾した値になっていないかを判別する。
【0173】
5)次に、動的センシング情報が、航空写真に関する情報の場合、2)で算出した浸水範囲内の行番号i、列番号jの位置において、浸水深(i, j)が浸水無、つまり、0m以下で、動的センシング情報に含まれる浸水の有無が浸水有と矛盾した値になっていないかを判別する。
【0174】
6)次に、動的センシング情報が、衛星画像に関する情報の場合、2)で算出した浸水範囲内の行番号i、列番号jの位置において、浸水深(i, j)が浸水無、つまり、0m以下で、動的センシング情報に含まれる浸水の有無が浸水有と矛盾した値になっていないかを判別する。
【0175】
7)次に、3)~6)の判別結果が矛盾した値になっていた場合、当該位置の行番号i、列番号jが浸水図の浸水範囲の内側か外側かを判別する。当該位置の行番号i、列番号jが浸水図の浸水範囲の内側か外側かの判別は、当該位置から所定の距離の範囲内に、浸水深(i, j)の値が0mより大きいグリッドセルが存在している場合、浸水範囲の内側と判別する。また、当該位置から所定の距離の範囲内に、浸水深(i, j)の値が0mより大きいグリッドセルが存在していない場合、浸水範囲の外側と判別する。
【0176】
8)次に、7)で当該位置の行番号i、列番号jが浸水図の浸水範囲の外側と判別した場合、実測HAND水面高最大値のリストに、該当する浸水センサの設置場所の緯度、経度、実測HAND水面高、該当するSNS投稿場所の緯度、経度、実測HAND水面高、航空写真から判別した浸水範囲内の該当する緯度、経度、実測HAND水面高、衛星画像から判別した浸水範囲内の該当する緯度、経度、実測HAND水面高を追加する。
【0177】
9)次に、2)~8)の処理を繰り返して、3)~6)の判別結果が矛盾した値になっている行番号i、列番号jが存在しなくなるまで繰り返す。
【0178】
10)次に、2)~9)の処理で算出した実測HAND水面高最大値と、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号iと、列番号jと、に基づいて、浸水図作成用内挿関数算出手段368の説明と同様に、浸水図作成用内挿関数を算出する。
【0179】
11)次に、10)で算出した浸水図作成用内挿関数と、メモリ3002に記憶されているHANDモデルと、に基づいて、浸水図算出手段370の説明と同様に、浸水図を算出して、この浸水図を補正した浸水図として、浸水図記憶手段44に記憶させる。
【0180】
以上のように、動的センシング情報において浸水有となっているにも関わらず、浸水図のデータにおいて浸水無となっているデータを用いることができるようになるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、衛星画像(SAR画像)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0181】
≪浸水図作成手段36の異常値検出手段374≫
異常値検出手段374は、メモリ3002に記憶されている実測HAND水面高に基づいて、異常値を検出する機能を有する。また、検出する異常値をメモリ3002に記憶させる機能を有する。ここで、異常値とは、浸水センサにおいて、浸水センサの故障、浸水センサへの泥の付着等の原因により、当該浸水センサの設置高において、本来浸水しているにもかかわらず浸水有の情報が発信されない、本来浸水していないにもかかわらず浸水有の情報が発信されることをいう。以下に、異常値を検出する機能の詳細を説明する。ここで、所定の地域が河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)にセグメントに分割されているものとする。また、直角方向(横断方向)の分割に加えて、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割されているとしても良い。
【0182】
1)あるセグメントにおいて、浸水センサS、S、…、Sが設置されているとする。また、浸水センサの実測HAND水面高が、H、H、…、Hとして、浸水センサS、S、…、Sの番号が、実測HAND水面高の昇順にソートされているとする。さらに、浸水センサの信頼度を、W、W、…、Wとする。ここで、W、W、…、Wは、0から1の数字で、0が信頼度が最も低い、1が信頼度が最も高いとする。ここで、浸水センサの信頼度は、一例として、すべて1.0とする。また、浸水センサの信頼度は、過去に明らかに浸水が発生していないときに、浸水ありの情報を発信したといった情報から算出しても良い。
【0183】
2)次に、一例として、浸水センサS、S、…、Sが浸水無、浸水センサSK+1、…、Sが浸水有、浸水センサSL+1、…、Sが浸水無とする。実測HAND水面高が低いS、S、…、Sが浸水無にもかかわらず、これよりも実測HAND水面高が高いSK+1、…、Sが浸水有となっており、S、S、…、Sが異常値、または、SK+1、…、Sが異常値の何れかとする。
【0184】
3)次に、浸水センサS、S、…、Sについて、信頼度W、W、…、Wの値を足し合わせて、この値をAとする。また、浸水センサSK+1、…、Sについて、信頼度WK+1、…、Wの値を足し合わせて、この値をAとする。
【0185】
4)次に、AとAを比較して、AがAより大きい場合、浸水センサS、S、…、Sの浸水無とした情報が正常値、浸水センサSK+1、…、Sの浸水有とした情報が異常値と判別する。また、AがAより小さい場合、浸水センサS、S、…、Sの浸水無とした情報が異常値、浸水センサSK+1、…、Sの浸水有とした情報が正常値と判別する。さらに、AとAが同じ値の場合、S、S、…、S、SK+1、…、Sの情報を正常値と判別する。
【0186】
5)次に、上記1)~4)の処理を、セグメントの数分繰り返し実行して、異常値を検出する。
【0187】
以上のように、浸水センサにおいて、泥の付着といった現象によって、浸水無にも関わらず浸水有といった異常値を除くことができるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、衛星画像(SAR画像)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0188】
≪仮想浸水図作成手段38の既存浸水情報取得手段380≫
[既存浸水情報取得機能、メモリ保存機能]
図23に示すように、既存浸水情報取得手段380は、ストレージ装置3003に記憶されている既存浸水情報を取得する機能を有する。また、取得する既存浸水情報をメモリ3002に記憶させる機能を有する。既存浸水情報は、GeoTIFF形式のファイルとしてストレージ装置3003に記憶されていても良いし、座標参照系、境界ボックスといったメタデータと、グリッドセルの浸水深とが所定のデータベース管理方式に基づいて記憶されていても良い。
【0189】
ここで、座標参照系とは、一例として、EPSG:6668-JGD2011のことであり、球体である地球上の位置を平面に投影する方法を示す。また、境界ボックスとは、GeoTIFF形式のファイルの西端の経度、東端の経度、北端の緯度、南端の緯度のことである。GeoTIFF形式のファイルの読み込みには、rasterioといったコンピュータプログラムを使うことができる。
【0190】
[画像座標空間回転機能]
図24に示すように、既存浸水情報取得手段380は、さらに、既存浸水情報の画像座標空間(行番号、列番号)を回転させる機能を有しても良い。図11に示すように、河川の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、または、河川が蛇行して流下しており、平均の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、既存浸水情報の画像座標空間(行番号、列番号)を回転させることが好ましい。以降の説明において、既存浸水情報の画像座標空間(行番号、列番号)を回転させることで、既存浸水情報のX軸方向は、河川の平均の流下方向に一致しているものとする。また、既存浸水情報のY軸方向は、河川の平均の流下方向の直角方向に一致しているものとする。画像座標空間の回転は、HANDモデル取得手段340で説明した手法を用いる。
【0191】
≪仮想浸水図作成手段38の仮想浸水図作成条件設定手段382≫
仮想浸水図作成条件設定手段382は、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストを設定する機能を有する。また、仮想浸水センサ数のリストを設定する機能を有する。さらに、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数を設定する機能を有する。ここで、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストとは、一例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10といった正の整数のリストのことである。また、仮想浸水センサ数のリストとは、一例として、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100といった正の整数のリストのことである。さらに、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数とは、一例として、10といった正の整数のことである。仮想浸水図作成条件設定手段382は、これらの仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストと、仮想浸水センサ数のリストと、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数と、をメモリ3002に記憶させる機能を有する。
【0192】
≪仮想浸水図作成手段38の仮想動的センシング情報生成手段384≫
仮想動的センシング情報生成手段384は、メモリ3002に記憶されている既存浸水情報と、仮想浸水センサ数のリストと、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数と、に基づいて、仮想動的センシング情報を算出する機能を有する。また、算出する仮想動的センシング情報をメモリ3002に記憶させる機能を有する。さらに、仮想動的センシング情報に基づいて、仮想センサ密度を算出して、仮想センサ密度をメモリ3002に記憶させる機能を有する。以下に、仮想動的センシング情報を算出する機能の詳細を説明する。
【0193】
1)既存浸水情報に含まれる境界ボックスのメタデータから、GeoTIFFファイルの西端の経度、東端の経度、北端の緯度、南端の緯度を取得する。この西端の経度、東端の経度、北端の緯度、南端の緯度で囲まれる地域を所定の地域とする。
【0194】
2)次に、所定の地域の西端の経度、東端の経度、北端の緯度、南端の緯度の範囲内で、緯度の乱数と、経度の乱数と、を算出する。
【0195】
3)次に、2)で算出した緯度の乱数、経度の乱数を画像座標空間(行番号、列番号)の行番号i、列番号jに変換する。ここで、行番号i、列番号jへの変換には、実測HAND水面高算出手段362で説明した(2)式を用いる。
【0196】
4)次に、3)で算出した行番号i、列番号jの位置が既存浸水情報の浸水範囲内に含まれていることを判別する。ここで、行番号i、列番号jの位置において、浸水深(i, j)が0mより大きい場合、行番号i、列番号jの位置が既存浸水情報の浸水範囲内に含まれているとする。また、行番号i、列番号jの位置において、浸水深(i, j)が0m以下の場合、行番号i、列番号jの位置が既存浸水情報の浸水範囲内に含まれていないとする。
【0197】
5)次に、3)で算出した行番号i、列番号jの位置が既存浸水情報の浸水範囲内に含まれている場合、仮想動的センシング情報のリストに、2)で算出した緯度の乱数と、経度の乱数と、識別用IDと、を追加する。ここで、識別用IDは、シーケンス番号等、他の識別用IDと重複しない値を設定する。
【0198】
6)次に、上記2)~5)の処理を、仮想動的センシング情報のリストの件数が、仮想浸水センサ数のリストの中から選択する仮想浸水センサ数に到達するまで繰り返し実行して、仮想動的センシング情報を算出する。
【0199】
以下に、仮想センサ密度を算出する機能の詳細を説明する。仮想センサ密度は、次の(10)式で算出される。
【0200】
ここで、Dは、仮想センサ密度(個/m)である。Nは、所定の地域において、既存浸水情報の浸水範囲内に設置されている仮想浸水センサの個数である。Aは、所定の地域において、既存浸水情報の浸水範囲の面積(m)である。一例として、既存浸水情報が国土地理院によって公開される想定最大規模の洪水浸水想定区域図の場合、Nは、所定の地域において、浸水想定区域内に設置されている仮想浸水センサの個数、Aは、所定の地域において、浸水想定区域の面積(m)である。
【0201】
≪仮想浸水図作成手段38の仮想HAND水面高算出手段386≫
仮想HAND水面高算出手段386は、メモリ3002に記憶されているHANDモデルと、メモリ3002に記憶されている仮想動的センシング情報と、に基づいて、仮想HAND水面高を算出する機能を有する。また、算出する仮想HAND水面高をメモリ3002に記憶させる機能を有する。
【0202】
以下に、仮想HAND水面高を算出する機能の詳細を説明する。仮想浸水センサ設置場所のHAND地盤高(i, j)を仮想HAND水面高(i, j)とする。ここで、仮想浸水センサ設置場所は、地理座標空間(緯度、経度)で値が記憶されているため、仮想浸水センサ設置場所の緯度、経度を画像座標空間(行番号、列番号)の行番号i、列番号jに変換して、仮想HAND水面高(i, j)を算出する。上記の処理を、仮想動的センシング情報のリストの件数分繰り返し実行して、仮想HAND水面高(i, j)を算出する。
【0203】
≪仮想浸水図作成手段38の仮想HAND水面高最大値算出手段388≫
仮想HAND水面高最大値算出手段388は、メモリ3002に記憶されている仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストと、メモリ3002に記憶されているHANDモデルと、に基づいて、所定の地域をセグメントに分割する機能を有する。また、算出するセグメントと、メモリ3002に記憶されている仮想HAND水面高と、に基づいて、仮想HAND水面高最大値を算出する機能を有する。さらに、算出する仮想HAND水面高最大値をメモリ3002に記憶させる機能を有する。
【0204】
[横断方向分割機能]
以下に、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に等間隔に分割する機能の詳細を説明する。図17に示すように、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割する線がX軸と交わる点の列番号をJ、J、…、JN-1とする。J、J、…、JN-1は、それぞれ、(X-X)/N、2×(X-X)/N、…、(N-1)×(X-X)/Nを整数に四捨五入して算出する。ここで、Xは、HANDモデルの列番号の最小値、Xは、HANDモデルの列番号の最大値、Nは、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストの中から選択する仮想浸水図作成用セグメント分割数である。この場合、セグメント1は、列番号がX以上、J以下のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメント2は、列番号がJより大きく、J以下のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメントNは、列番号がJN-1より大きく、X以下のグリッドセルから構成されることになる。
【0205】
[縦横断方向分割機能]
仮想HAND水面高最大値算出手段388の所定の地域をセグメントに分割する機能は、河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)の等間隔の分割に加えて、河川の中心線で縦断方向に分割を行う機能としても良い。
【0206】
以下に、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に等間隔に分割して、さらに、河川の中心線で縦断方向に分割する機能の詳細を説明する。図18に示すように、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割する線がX軸と交わる点の列番号をJ、J、…、JN-1とする。J、J、…、JN-1は、それぞれ、(X-X)/N、2×(X-X)/N、…、(N-1)×(X-X)/Nを整数に四捨五入して算出する。ここで、Xは、HANDモデルの列番号の最小値、Xは、HANDモデルの列番号の最大値、Nは、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストの中から選択する仮想浸水図作成用セグメント分割数である。次に、河川の中心線で縦断方向に分割する。この場合、セグメント1は、列番号がX以上、J以下で、行番号が河川の中心線の上側のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメントNは、列番号がJN-1より大きく、X以下で、行番号が河川の中心線の上側のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメントN+1は、列番号がX以上、J以下で、行番号が河川の中心線の下側のグリッドセルから構成されることになる。同様に、セグメント2Nは、列番号がJN-1より大きく、X以下で、行番号が河川の中心線の下側のグリッドセルから構成されることになる。
【0207】
[仮想HAND水面高最大値を算出する機能(横断方向に分割されている場合)]
以下に、仮想HAND水面高最大値を算出する機能の詳細を説明する。一例として、セグメント1に仮想浸水センサ1~5が設置されているとして説明する。仮想浸水センサ1~5の設置場所の画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号が、(1, 1)、(1, 5)、(1, 10)、(3, 5)、(3, 10)とする。ここで、括弧内の左側の数字が行番号、括弧内の右側の数字が列番号である。また、仮想浸水センサ1~5の仮想HAND水面高が、それぞれ、1.0m、1.5m、2.0m、2.5m、3.0mとする。この場合、セグメント1における仮想HAND水面高最大値は、3.0m、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号は、(3, 10)となる。また、セグメントに仮想浸水センサが設置されていない場合、当該セグメントにおける仮想HAND水面高最大値は算出しない。次に、セグメント2~セグメントNについても、同様に、仮想HAND水面高最大値とその画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号を算出する。
【0208】
[仮想HAND水面高最大値を算出する機能(横断方向に加えて縦断方向に分割されている場合)]
以下に、仮想HAND水面高最大値を算出する機能の詳細を説明する。一例として、セグメント1に仮想浸水センサ1~3が設置されているとして説明する。仮想浸水センサ1~3の設置場所の画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号が、(1, 1)、(1, 5)、(1, 10)とする。ここで、括弧内の左側の数字が行番号、括弧内の右側の数字が列番号である。また、仮想浸水センサ1~3の仮想HAND水面高が、それぞれ1.0m、1.5m、2.0mとする。この場合、セグメント1における仮想HAND水面高最大値は、2.0m、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号は、(1, 10)となる。また、セグメントに仮想浸水センサが設置されていない場合、当該セグメントにおける仮想HAND水面高最大値は算出しない。次に、セグメント2~セグメント2Nについても、同様に、仮想HAND水面高最大値とその画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号を算出する。
【0209】
≪仮想浸水図作成手段38の仮想浸水図作成用内挿関数算出手段390≫
仮想浸水図作成用内挿関数算出手段390は、メモリ3002に記憶されている仮想HAND水面高最大値と、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号と、列番号と、に基づいて、仮想浸水図作成用内挿関数を算出する機能を有する。また、算出される仮想浸水図作成用内挿関数をメモリ3002に記憶させる機能を有する。以下に、仮想浸水図作成用内挿関数を算出する機能の詳細を説明する。ここで、所定の地域が河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)にセグメントに分割されているとする。また、セグメントがN個あるとして、それぞれのセグメントで仮想HAND水面高最大値が算出されているものとする。
【0210】
[仮想浸水図作成用内挿関数を算出する機能(横断方向に分割されている場合)]
1)仮想HAND水面高最大値の画像座標空間(行番号、列番号)における行番号と、列番号と、仮想HAND水面高最大値と、が(X、Y、M)、…、(X、Y、M)の点列で表されるとする。ここで、X、…、Xは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号、Y、…、Yは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、M、…、Mは、それぞれのセグメントにおける仮想HAND水面高最大値とする。
【0211】
2)次に、(X、Y、M)、…、(X、Y、M)の点列を仮想浸水図作成用投影面に投影して、(X、M)、…、(X、M)の点列を算出する。ここで、仮想浸水図作成用投影面は、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号を横軸、仮想HAND水面高最大値を縦軸とする面である。
【0212】
3)次に、動径基底関数を用いて、(X、M)、…、(X、M)の各点の近傍を通る滑らかな仮想浸水図作成用内挿関数を求める。動径基底関数を用いた内挿関数の算出は、浸水図作成用セグメント判別手段364で説明した手法を用いる。
【0213】
[仮想浸水図作成用内挿関数を算出する機能(横断方向に加えて縦断方向に分割されている場合)]
仮想浸水図作成用内挿関数算出手段390の仮想浸水図作成用内挿関数を算出する機能は、河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)の分割に加えて、河川の中心線で縦断方向にセグメントに分割されているとしても良い。ここで、セグメントが2N個あるとして、それぞれのセグメントで仮想HAND水面高最大値が算出されているものとする。
【0214】
1)仮想HAND水面高最大値の画像座標空間(列番号、行番号)における行番号と、列番号と、仮想HAND水面高最大値と、が(X、Y、M)、…、(X、Y、M)、(XN+1、YN+1、MN+1)、…、(X2N、Y2N、M2N)の点列で表されるとする。ここで、X、…、Xは、河川中心線の上側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号、XN+1、…、X2Nは、河川中心線の下側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号、Y、…、Yは、河川中心線の上側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、YN+1、…、Y2Nは、河川中心線の下側で、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、M、…、Mは、河川中心線の上側のそれぞれのセグメントにおける仮想HAND水面高最大値、MN+1、…、M2Nは、河川中心線の下側のそれぞれのセグメントにおける仮想HAND水面高最大値とする。
【0215】
2)次に、動径基底関数を用いて、(X、Y、M)、…、(X、Y、M)、(XN+1、YN+1、MN+1)、…、(X2N、Y2N、M2N)の各点の近傍を通る滑らかな仮想浸水図作成用内挿関数を求める。動径基底関数を用いた内挿関数の算出は、浸水図作成用セグメント判別手段364で説明した手法を用いる。
【0216】
≪仮想浸水図作成手段38の仮想浸水図算出手段392≫
仮想浸水図算出手段392は、メモリ3002に記憶されている仮想浸水図作成用内挿関数と、メモリ3002に記憶されているHANDモデルと、に基づいて、仮想浸水図を算出する機能を有する。また、算出する仮想浸水図をメモリ3002に記憶させる機能を有する。さらに、仮想浸水図の画像座標空間(行番号、列番号)を回転させる機能を有しても良い。以下に、仮想浸水図を算出する機能の詳細を説明する。ここで、所定の地域が河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)にセグメントに分割されているとする。この場合、仮想浸水図作成用内挿関数は、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における列番号を横軸、仮想HAND水面高最大値を縦軸とする仮想浸水図作成用投影面で定義される。
【0217】
[仮想浸水図算出機能(横断方向に分割されている場合)]
1)仮想浸水図作成用内挿関数(j)に基づいて、浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)を算出する。浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)は、浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)=仮想浸水図作成用内挿関数(j)の右辺から左辺への代入式を用いて算出される。ここで、i、jは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号である。また、代入式から明らかな通り、浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)は、列番号jにのみ依存し、行番号iとは無関係である。
【0218】
2)次に、1)で算出した浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)に基づいて、仮想浸水深1(i, j)を算出する。仮想浸水深1(i, j)は、浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)-HAND地盤高(i, j)の式を用いて算出される。ここで、HAND地盤高(i, j)は、画像座標空間(行番号、列番号)の行番号iと列番号jの位置におけるHANDモデルのグリッドセルの値である。
【0219】
3)次に、2)で算出した仮想浸水深1(i, j)に基づいて、仮想浸水深(i, j)を算出する。仮想浸水深1(i, j)が0m以下の場合、浸水無と判別して、仮想浸水深(i, j)を0mとする。また、仮想浸水深1(i, j)が0mより大きい場合、浸水有と判別して、仮想浸水深1(i, j)を仮想浸水深(i, j)とする。
【0220】
4)次に、3)で算出した仮想浸水深(i, j)をメモリ3002に記憶させる。
【0221】
[仮想浸水図算出機能(横断方向に加えて縦断方向に分割されている場合)]
以下に、仮想浸水図算出手段392の仮想浸水図を算出する機能について、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)の分割に加えて、河川の中心線で縦断方向に分割する場合について、機能の詳細を説明する。
【0222】
1)仮想浸水図作成用内挿関数(i, j)に基づいて、浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)を算出する。浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)は、浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)=仮想浸水図作成用内挿関数(i, j)の右辺から左辺への代入式を用いて算出される。ここで、i、jは、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)における行番号、列番号である。
【0223】
2)次に、1)で算出した浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)に基づいて、仮想浸水深1(i, j)を算出する。仮想浸水深1(i, j)は、浸水図作成用仮想HAND水面高(i, j)-HAND地盤高(i, j)の式を用いて算出される。ここで、HAND地盤高(i, j)は、画像座標空間(行番号、列番号)の行番号iと列番号jの位置におけるHANDモデルのグリッドセルの値である。
【0224】
3)次に、2)で算出した仮想浸水深1(i, j)に基づいて、仮想浸水深(i, j)を算出する。仮想浸水深1(i, j)が0m以下の場合、浸水無と判別して、仮想浸水深(i, j)を0mとする。また、仮想浸水深1(i, j)が0mより大きい場合、浸水有と判別して、仮想浸水深1(i, j)を仮想浸水深(i, j)とする。
【0225】
4)次に、3)で算出した仮想浸水深(i, j)をメモリ3002に記憶させる。
【0226】
[仮想浸水図の画像座標空間を回転させる機能]
HANDモデル取得手段340、および、既存浸水情報取得手段380の説明において、図11に示すように、河川の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、または、河川が蛇行して流下しており、平均の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、HANDモデル、および、既存浸水情報の画像座標空間(行番号、列番号)を回転させることが好ましいと説明した。このような場合、仮想浸水深(i, j)の画像座標空間(行番号、列番号)を反対方向に回転させて、元の画像座標空間(行番号、列番号)に戻すことが好ましい。画像座標空間(行番号、列番号)の反対方向への回転は、浸水図算出手段370で説明した手法を用いる。
【0227】
≪仮想浸水図作成手段38の評価指標値平均算出手段394≫
評価指標値平均算出手段394は、メモリ3002に記憶されている既存浸水情報と、メモリ3002に記憶されている仮想浸水図と、に基づいて、評価指標値平均を算出する機能を有する。また、算出する評価指標値平均を評価指標値記憶手段42に記憶させる機能を有する。以下に、評価指標値平均を算出する機能の詳細を説明する。
【0228】
1)TPは、仮想浸水図で浸水有と算出したグリッドセルのうち、既存浸水情報においても浸水有であるグリッドセルの数で算出される。
2)FPは、仮想浸水図で浸水有と算出したグリッドセルのうち、既存浸水情報においては浸水無であるグリッドセルの数で算出される。
3)TNは、仮想浸水図で浸水無と算出したグリッドセルのうち、既存浸水情報においても浸水無であるグリッドセルの数で算出される。
4)FNは、仮想浸水図で浸水無と算出したグリッドセルのうち、既存浸水情報においては浸水有であるグリッドセルの数で算出される。
5)適合率は、TP/(TP+FP)により算出される。
6)再現率は、TP/(TP+FN)により算出される。
7)F値は、2×適合率×再現率/(適合率+再現率)により算出される。
8)F値平均は、図25に示すように、同じ仮想センサ密度と、同じ仮想浸水図作成用セグメント分割数のF値の平均により算出される。なお、図25では、河川中心線での分割の有無ごとにF値の平均を算出する場合を例示している。
【0229】
次に、識別用ID、仮想センサ密度、仮想浸水図作成用セグメント分割数、1)~8)で算出するTP、FP、TN、FN、適合率、再現率、F値、F値平均を評価指標値記憶手段42に記憶させる。
【0230】
≪動的センシング情報記憶手段40≫
動的センシング情報記憶手段40は、浸水センサ受信制御手段320が受信する浸水有無に関する情報と、SNS判別手段322が判別する浸水有無に関する情報と、航空写真判別手段324が判別する浸水範囲に関する情報と、衛星画像判別手段326が判別する浸水範囲に関する情報とを、所定のデータベース管理方式に基づいて記憶する機能を有する。また、動的センシング情報記憶手段40は、動的センシング情報取得手段360によって、動的センシング情報を読みだされる機能を有する。
【0231】
図12に例示するように、動的センシング情報が浸水センサに関する情報の場合のデータベーステーブルは、動的センシング情報を識別する識別用IDと、浸水センサを識別するセンサIDと、観測日時と、浸水センサ設置場所(緯度、経度)と、浸水センサ設置高と、HAND地盤高と、浸水の有無と、が記憶される。
【0232】
また、図13に例示するように、動的センシング情報がSNSに関する情報の場合のデータベーステーブルは、動的センシング情報を識別する識別用IDと、SNS投稿を識別するSNSIDと、投稿日時と、投稿場所(緯度、経度)と、SNS投稿時に添付される画像情報(静止画)と、HAND地盤高と、浸水の有無と、が記憶される。
【0233】
また、図14に例示するように、動的センシング情報が航空写真に関する情報の場合のデータベーステーブルは、浸水範囲のポリゴンを識別する識別用IDと、航空写真を識別する航空写真IDと、撮影日時と、撮影場所(緯度、経度)と、撮影される画像情報(静止画)と、浸水範囲のポリゴンの外周線の頂点の緯度と、経度と、が記憶される。浸水範囲のポリゴンの外周線の頂点の数は複数であるため、浸水範囲(外周線の頂点の緯度、経度)の項目は、CSV形式(カンマ区切り形式)で記憶されても良い。
【0234】
また、図15に例示するように、動的センシング情報が衛星画像に関する情報の場合のデータベーステーブルは、浸水範囲のポリゴンを識別する識別用IDと、衛星画像を識別する衛星画像IDと、観測日時と、観測場所(緯度、経度)と、観測される衛星画像(SAR画像)と、浸水範囲のポリゴンの外周線の頂点の緯度と、経度と、が記憶される。浸水範囲のポリゴンの外周線の頂点の数は複数であるため、浸水範囲(外周線の頂点の緯度、経度)の項目は、CSV形式(カンマ区切り形式)で記憶されても良い。
【0235】
≪評価指標値記憶手段42≫
評価指標値記憶手段42は、評価指標値平均算出手段394が算出する評価指標値平均を、所定のデータベース管理方式に基づいて記憶する機能を有する。また、評価指標値記憶手段42は、浸水図作成用セグメント判別手段364によって、評価指標値平均を読みだされる機能を有する。図25に例示するように、評価指標値平均のデータベーステーブルは、評価指標値平均を識別するための識別用IDと、仮想センサ密度と、仮想浸水図作成用セグメント分割数と、TPと、FPと、TNと、FNと、適合率と、再現率と、F値と、F値平均と、が記憶される。
【0236】
≪浸水図記憶手段44≫
浸水図記憶手段44は、浸水図算出手段370が算出する浸水図と、タイル画像と、をストレージ装置3003に記憶する機能を有する。また、浸水図記憶手段44は、浸水図送信制御手段46によって、タイル画像を読みだされる機能を有する。ここで、浸水図は、GeoTIFF形式のファイルとしてストレージ装置3003に記憶されても良いし、座標参照系、境界ボックスといったメタデータと、グリッドセルの浸水深とが所定のデータベース管理方式に基づいて記憶されても良い。また、タイル画像は、ストレージ装置3003のディレクトリ、一例として、「/17/114460/」に、一例として、「52432.png」のファイル名で記憶される。ここで、「17」「114460」「52432」は、XYZ方式におけるズームレベルZ、タイル座標X、タイル座標Yの値である。このXYZ方式は、ウェブサーバとウェブブラウザとの通信で地図情報を効率的に配信するために用いられる公知の技術である。
【0237】
≪浸水図送信制御手段46≫
浸水図送信制御手段46は、通信ネットワーク90を介して、端末装置20のウェブブラウザからの送信要求を受信する機能を有する。また、受信する送信要求に応じて、浸水図記憶手段44に記憶されているタイル画像を読み込んで、メモリ3002に記憶させる機能を有する。さらに、メモリ3002に記憶されているタイル画像を、通信ネットワーク90を介して、端末装置20のウェブブラウザに送信する機能を有する。浸水図送信制御手段46は、ウェブサーバと呼ばれるコンピュータプログラムであっても良いし、ウェブサーバとウェブサーバと連携するコンピュータプログラムの組み合わせであっても良い。
【0238】
≪≪浸水図作成のフローチャートの一例≫≫
ここで、本実施の形態の浸水図作成の動作の一例を、図26のフローチャートを参照しながら、以下に説明する。
【0239】
定期的にプログラムを実行するためのプログラム、一例として、cronの指示に基づいて、サーバ装置30の演算部3001は、浸水図の作成処理を開始する。ここで、cronとは、UNIX(登録商標)やLinux(登録商標)のデーモンプログラムの一つで、指定の日時に特定のプログラムを起動するものである。
【0240】
その後、サーバ装置30の演算部3001は、HANDモデルの取得処理を実行する(ST11)。このステップST11において、サーバ装置30の演算部3001は、ストレージ装置3003に記憶されているHANDモデルを取得する。これにより、HANDモデルがメモリ3002に記憶される。
【0241】
また、図12に示すように、河川の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、または、河川が蛇行して流下しており、平均の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)を回転するようにしても良い。その後、ステップST12に移行する。
【0242】
ステップST12では、サーバ装置30の演算部3001は、動的センシング情報の取得処理を実行する。このステップST12において、サーバ装置30の演算部3001は、動的センシング情報記憶手段40に記憶されている動的センシング情報を取得する。また、サーバ装置30の演算部3001は、動的センシング情報に基づいて、実測センサ密度を算出する。これにより、動的センシング情報がメモリ3002に記憶される。また、実測センサ密度がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST13に移行する。
【0243】
ステップST13では、サーバ装置30の演算部3001は、実測HAND水面高の算出処理を実行する。このステップST13において、動的センシング情報が浸水センサに関する情報の場合、サーバ装置30の演算部3001は、浸水センサ設置場所のHAND地盤高に浸水センサ設置高を加えて、実測HAND水面高とする。また、動的センシング情報がSNSに関する情報の場合、サーバ装置30の演算部3001は、SNS投稿場所のHAND地盤高を実測HAND水面高とする。また、動的センシング情報が航空写真に関する情報の場合、サーバ装置30の演算部3001は、航空写真から判別された浸水範囲内のHAND地盤高を実測HAND水面高とする。また、動的センシング情報が衛星画像に関する情報の場合、サーバ装置30の演算部3001は、衛星画像から判別された浸水範囲内のHAND地盤高を実測HAND水面高とする。これにより、実測HAND水面高がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST14に移行する。
【0244】
ステップST14では、サーバ装置30の演算部3001は、動的センシング情報リストの終了判定を実行する。このステップST14において、動的センシング情報が1件の場合(ST14でYES)、ステップST15に移行する。ステップST14において、動的センシング情報が複数件の場合、最後の動的センシング情報であれば(ST14でYES)、ステップST15に移行する。ステップST14において、動的センシング情報が複数件の場合、最後の動的センシング情報でなければ(ST14でNO)、ステップST13に戻り、最後の動的センシング情報になるまで、ステップST13~ST14が繰り返される。
【0245】
ステップST15では、サーバ装置30の演算部3001は、浸水図作成用セグメント分割数の算出処理を実行する。このステップST15において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST12で算出した実測センサ密度と、評価指標値記憶手段42に記憶されている評価指標値平均と、に基づいて、浸水図作成用セグメント分割数を算出する。これにより、浸水図作成用セグメント分割数がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST16に移行する。
【0246】
ステップST16では、サーバ装置30の演算部3001は、セグメントリストの設定処理を実行する。このステップST16において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST11で取得したHANDモデルと、ステップST15で算出した浸水図作成用セグメント分割数と、に基づいて、所定の地域を複数のセグメントに分割して、セグメントリストを設定する。これにより、セグメントリストがメモリ3002に記憶される。その後、ステップST17に移行する。
【0247】
ステップST17では、サーバ装置30の演算部3001は、実測HAND水面高最大値の算出処理を実行する。このステップST17において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST16で設定したセグメントリストと、ステップST13~ST14で算出した実測HAND水面高と、に基づいて、セグメントリストの中から選択されたセグメントにおける実測HAND水面高最大値を算出して、実測HAND水面高最大値のリストに追加する。これにより、実測HAND水面高最大値のリストがメモリ3002に記憶される。その後、ステップST18に移行する。
【0248】
ステップST18では、サーバ装置30の演算部3001は、セグメントリストの終了判定を実行する。このステップST18において、セグメントリストの最後のセグメントであれば(ST18でYES)、ステップST19に移行する。ステップST18において、セグメントリストの最後のセグメントでなければ(ST18でNO)、ステップST17に戻り、セグメントリストの最後のセグメントになるまで、ステップST17~ST18が繰り返される。
【0249】
ステップST19では、サーバ装置30の演算部3001は、浸水図作成用内挿関数の算出処理を実行する。このステップST19において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST17~ST18で算出した実測HAND水面高最大値のリストと、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号と、列番号と、に基づいて、浸水図作成用内挿関数を算出する。これにより、浸水図作成用内挿関数がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST20に移行する。
【0250】
ステップST20では、サーバ装置30の演算部3001は、浸水図の算出処理を実行する。このステップST20において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST11で取得したHANDモデルと、ステップST19で算出した浸水図作成用内挿関数と、に基づいて、浸水図を算出する。また、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST20で算出した浸水図に基づいて、Webアプリケーションでの利用に適したタイル画像を算出する。これにより、浸水図が浸水図記憶手段44に記憶される。また、タイル画像がストレージ装置3003に記憶される。
【0251】
その後、浸水図作成の動作が完了する。
【0252】
≪≪仮想浸水図作成のフローチャートの一例≫≫
続いて、本実施の形態の仮想浸水図作成の動作の一例を、図27のフローチャートを参照しながら、以下に説明する。
【0253】
サーバ装置30の入力部3006を経由したユーザからの指示に基づいて、サーバ装置30の演算部3001は、仮想浸水図の作成処理を開始する。
【0254】
その後、サーバ装置30の演算部3001は、HANDモデルの取得処理を実行する(ST31)。このステップST31において、サーバ装置30の演算部3001は、ストレージ装置3003に記憶されているHANDモデルを取得する。これにより、HANDモデルがメモリ3002に記憶される。
【0255】
また、図12に示すように、河川の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、または、河川が蛇行して流下しており、平均の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、HANDモデルの画像座標空間(行番号、列番号)を回転するようにしても良い。その後、ステップST32に移行する。
【0256】
ステップST32では、サーバ装置30の演算部3001は、既存浸水情報の取得処理を実行する。このステップST32において、サーバ装置30の演算部3001は、ストレージ装置3003に記憶されている既存浸水情報を取得する。これにより、既存浸水情報がメモリ3002に記憶される。
【0257】
また、図12に示すように、河川の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、または、河川が蛇行して流下しており、平均の流下方向が南北方向や東西方向から傾いている場合、既存浸水情報の画像座標空間(行番号、列番号)を回転するようにしても良い。その後、ステップST33に移行する。
【0258】
ステップST33では、サーバ装置30の演算部3001は、仮想浸水図作成条件リストの設定処理を実行する。このステップST33において、サーバ装置は、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストと、仮想浸水センサ数のリストと、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数と、を設定する。ここで、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストとは、一例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10といった正の整数のリストのことである。また、仮想浸水センサ数のリストとは、一例として、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100といった正の整数のリストのことである。さらに、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数とは、一例として、10といった正の整数のことである。これにより、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストと、仮想浸水センサ数のリストと、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数と、がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST34に移行する。
【0259】
ステップST34では、サーバ装置30の演算部3001は、仮想動的センシング情報の生成処理を実行する。このステップST34において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST32で取得した既存浸水情報と、ステップST33で設定した仮想浸水センサ数のリストと、緯度の乱数と、経度の乱数と、に基づいて、仮想動的センシング情報を算出する。また、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST34で算出した仮想動的センシング情報に基づいて、仮想センサ密度を算出する。これにより、仮想動的センシング情報がメモリ3002に記憶される。また、仮想センサ密度がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST35に移行する。
【0260】
ステップST35では、サーバ装置30の演算部3001は、仮想HAND水面高の算出処理を実行する。このステップST35において、サーバ装置30の演算部3001は、仮想浸水センサ設置場所のHAND地盤高を仮想HAND水面高とする。これにより、仮想HAND水面高がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST36に移行する。
【0261】
ステップST36において、仮想動的センシング情報が1件の場合(ST36でYES)、ステップST37に移行する。ステップST36において、仮想動的センシング情報が複数件の場合、最後の仮想動的センシング情報であれば(ST36でYES)、ステップST37に移行する。ステップST36において、仮想動的センシング情報が複数件の場合、最後の仮想動的センシング情報でなければ(ST36でNO)、ステップST35に戻り、最後の仮想動的センシング情報になるまで、ステップST35~ST36が繰り返される。
【0262】
ステップST37では、サーバ装置30の演算部3001は、セグメントリストの設定処理を実行する。このステップST37において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST31で取得したHANDモデルと、ステップST33で設定した仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストの中から選択された仮想浸水図作成用セグメント分割数と、に基づいて、所定の地域を複数のセグメントに分割して、セグメントリストを設定する。これにより、セグメントリストがメモリ3002に記憶される。その後、ステップST38に移行する。
【0263】
ステップST38では、サーバ装置30の演算部3001は、仮想HAND水面高最大値の算出処理を実行する。このステップST38において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST37で設定したセグメントリストと、ステップST35~ST36で算出した仮想HAND水面高と、に基づいて、セグメントリストの中から選択されたセグメントにおける仮想HAND水面高最大値を算出して、仮想HAND水面高最大値のリストに追加する。これにより、仮想HAND水面高最大値のリストがメモリ3002に記憶される。その後、ステップST39に移行する。
【0264】
ステップST39において、セグメントリストの最後のセグメントであれば(ST39でYES)、ステップST40に移行する。ステップST39において、セグメントリストの最後のセグメントでなければ(ST39でNO)、ステップST38に戻り、セグメントリストの最後のセグメントになるまで、ステップST38~ST39が繰り返される。
【0265】
ステップST40では、サーバ装置30の演算部3001は、仮想浸水図作成用内挿関数の算出処理を実行する。このステップST40において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST38~ST39で算出した仮想HAND水面高最大値のリストと、その画像座標空間(行番号、列番号)における行番号と、列番号と、に基づいて、仮想浸水図作成用内挿関数を算出する。これにより、仮想浸水図作成用内挿関数がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST41に移行する。
【0266】
ステップST41では、サーバ装置30の演算部3001は、仮想浸水図の算出処理を実行する。このステップST41において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST31で取得したHANDモデルと、ステップST40で算出した仮想浸水図作成用内挿関数と、に基づいて、仮想浸水図を算出する。これにより、仮想浸水図がメモリ3002に記憶される。その後、ステップST42に移行する。
【0267】
ステップST42では、サーバ装置30の演算部3001は、評価指標値平均の算出処理を実行する。このステップST42において、サーバ装置30の演算部3001は、ステップST32で取得した既存浸水情報と、ステップST41で算出した仮想浸水図と、に基づいて、評価指標値平均を算出する。これにより、評価指標値平均が評価指標値記憶手段42に記憶される。その後、ステップST43に移行する。
【0268】
ステップST43では、サーバ装置30の演算部3001は、仮想浸水図作成条件リストの終了判定を実行する。このステップST43において、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストの最後の仮想浸水図作成用セグメント分割数であり、かつ、仮想浸水センサ数のリストの最後の仮想浸水センサ数であり、かつ、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数に到達していれば(ST43でYES)、仮想浸水図作成の動作が完了する。ステップST43において、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストの最後の仮想浸水図作成用セグメント分割数でなければ、または、仮想浸水センサ数のリストの最後の仮想浸水センサ数でなければ、または、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数に到達していなければ(ST43でNO)、ステップST34に戻り、最後の仮想浸水図作成用セグメント分割数、かつ、最後の仮想浸水センサ数、かつ、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数に到達するまで、ステップST34~ST43が繰り返される。
【0269】
≪≪付記≫≫
上述の実施形態に関する特徴について付記する。
【0270】
情報処理装置は、動的センシング情報記憶手段と、浸水図記憶手段と、動的センシング情報取得手段と、HANDモデル取得手段と、実測HAND水面高算出手段と、浸水図作成用セグメント判別手段と、実測HAND水面高最大値算出手段と、浸水図作成用内挿関数算出手段と、浸水図算出手段と、を備えている。
【0271】
(a)本構成において、動的センシング情報記憶手段は、浸水センサに関する識別用ID、センサID、観測日時、浸水センサ設置場所(緯度、経度)、浸水センサ設置高、浸水有無のデータが対応付けられた動的センシング情報を記憶する。
(b)本構成において、浸水図記憶手段は、浸水図算出手段で算出される浸水図のデータを記憶する。
(c)本構成において、動的センシング情報取得手段は、動的センシング情報記憶手段から、浸水センサに関する識別用ID、センサID、観測日時、浸水センサ設置場所(緯度、経度)、浸水センサ設置高、浸水有無を含む動的センシング情報を取得する。
(d)本構成において、HANDモデル取得手段は、ストレージ装置から、HANDモデルのデータと、河川中心線のデータと、を取得する。実施例では、河川中心線のデータは、国土地理院によって公開される国土数値情報の河川データを使用する。また、HANDモデルのデータは、国土地理院によって公開される基盤地図情報のデータに基づいて、非特許文献1の技術を用いて算出する。
(e)本構成において、実測HAND水面高算出手段は、動的センシング情報に含まれる浸水センサ設置高のデータと、HANDモデルに含まれるHAND地盤高のデータと、に基づいて、浸水センサ設置場所(緯度、経度)の浸水センサ設置高に、浸水センサ設置場所(緯度、経度)のHAND地盤高を加算して、浸水センサ設置場所(緯度、経度)の実測HAND水面高のデータを算出する。
(f)本構成において、浸水図作成用セグメント判別手段は、所定の浸水図作成用セグメント分割数のデータに基づいて、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割したセグメントのデータを算出する。また、所定の河川中心線での分割有無のデータと、河川中心線のデータと、に基づいて、その必要がある場合には、所定の地域を河川の中心線で縦断方向にさらに分割したセグメントのデータを算出する。
(g)本構成において、実測HAND水面高最大値算出手段は、浸水センサ設置場所(緯度、経度)の実測HAND水面高のデータと、セグメントのデータと、に基づいて、それぞれのセグメントにおける実測HAND水面高の最大値のデータを算出する。
(h)本構成において、浸水図作成用内挿関数算出手段は、動径基底関数による内挿技術を用いて、それぞれのセグメントで、実測HAND水面高が最大となった浸水センサ設置場所(緯度、経度)のデータと、実測HAND水面高最大値のデータと、に基づいて、浸水図作成用内挿関数のデータを算出する。ここで、浸水図作成用内挿関数は、動径基底関数の重み付き線形結合で表される。
(i)本構成において、浸水図算出手段は、浸水図作成用内挿関数のデータと、HANDモデルに含まれるHAND地盤高のデータと、に基づいて、それぞれの緯度、経度の浸水図作成用内挿関数から、それぞれの緯度、経度のHAND地盤高を減算して、それぞれの緯度、経度の浸水深のデータを算出する。
(j)本構成において、浸水図算出手段は、それぞれの緯度、経度の浸水深のデータに基づいて、所定の地域全体の浸水図のデータを算出して、当該浸水図のデータを浸水図記憶手段に記憶させる。
【0272】
以上のように、本構成では、それぞれのセグメントにおいて、実測HAND水面高の最大値を算出して、動径基底関数による内挿技術を用いて浸水図作成用内挿関数を算出しているため、浸水深が深くなりやすい低地等で、かつ、浸水センサ設置高が小さい浸水センサ付近で、水面高、および、浸水深が過小となることを防止できる。また、HAND地盤高を用いて実測HAND水面高を算出しているため、河川の流下方向の地盤勾配が取り除かれるため、所定の地域に、一つもしくは複数の浸水センサが分散して設置されている場合にも、実測HAND水面高の大小関係を比較することができるようになる。これにより、本構成では、所定の地域において、地理座標空間のそれぞれの緯度、経度における水面高、および、浸水深の精度が向上し、浸水センサを採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0273】
2)上記の1)の構成において、本願発明の情報処理装置は、評価指標値記憶手段と、既存浸水情報取得手段と、仮想浸水図作成条件設定手段と、仮想動的センシング情報生成手段と、仮想HAND水面高算出手段と、仮想HAND水面高最大値算出手段と、仮想浸水図作成用内挿関数算出手段と、仮想浸水図算出手段と、評価指標値平均算出手段と、をさらに備えていることが好ましい。
【0274】
(a)本構成において、評価指標値記憶手段は、評価指標値に関する識別用ID、仮想センサ密度、仮想浸水図作成用セグメント分割数、河川中心線での分割有無、TP、FP、TN、FN、適合率、再現率、F値、F値平均が対応付けられた評価指標値平均のデータを記憶する。
(b)本構成において、既存浸水情報取得手段は、ストレージ装置から、既存浸水情報を取得する。ここで、既存浸水情報は、国土地理院によって公開される想定最大規模の洪水浸水想定区域図のデータであっても良いし、国土地理院によって公開される計画規模の洪水浸水想定区域図のデータであっても良いし、過去の洪水実績から作成された浸水図のデータであっても良いし、2次元移流拡散方程式といった偏微分方程式を解くことによって算出された浸水図のデータであっても良い。
(c)本構成において、仮想浸水図作成条件設定手段は、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストを設定する。また、仮想浸水図作成条件設定手段は、仮想浸水センサ数のリストを設定する。さらに、仮想浸水図作成条件設定手段は、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数を設定する。これらに加えて、河川中心線での分割有無のリストを設定する。
(d)本構成において、仮想動的センシング情報生成手段は、既存浸水情報と、仮想浸水センサ数のリストと、に基づいて、仮想動的センシング情報を算出する。ここで、仮想動的センシング情報とは、仮想動的センシング情報を識別する識別用ID、仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)、浸水有無が対応付けられたデータのことである。また、仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)は、仮想浸水センサ数分、サーバ装置の演算部によって算出される乱数を用いて算出する。さらに、仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)は、既存浸水情報の浸水範囲に含まれるように算出する。
(e)本構成において、仮想動的センシング情報生成手段は、仮想動的センシング情報と、浸水想定区域の面積のデータと、に基づいて、仮想センサ密度のデータを算出する。
(f)本構成において、仮想HAND水面高算出手段は、仮想動的センシング情報に含まれる仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)のデータと、HANDモデルに含まれるHAND地盤高のデータとに基づいて、仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)のHAND地盤高を、仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)の仮想HAND水面高のデータとする。
(g)本構成において、仮想HAND水面高最大値算出手段は、HANDモデルのデータと、仮想浸水図作成用セグメント分割数のリストと、に基づいて、所定の地域を、河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割したセグメントのデータを算出する。また、河川中心線での分割有無のリストに基づいて、その必要がある場合には、河川の中心線で縦断方向にさらに分割したセグメントのデータを算出する。
(h)本構成において、仮想HAND水面高最大値算出手段は、仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)の仮想HAND水面高のデータと、セグメントのデータと、に基づいて、それぞれのセグメントにおける仮想HAND水面高の最大値のデータを算出する。
(i)本構成において、仮想浸水図作成用内挿関数算出手段は、動径基底関数による内挿技術を用いて、それぞれのセグメントで、仮想HAND水面高が最大となった仮想浸水センサ設置場所(緯度、経度)のデータと、仮想HAND水面高最大値のデータと、に基づいて、仮想浸水図作成用内挿関数のデータを算出する。ここで、仮想浸水図作成用内挿関数は、動径基底関数の重み付き線形結合で表される。
(j)本構成において、仮想浸水図算出手段は、仮想浸水図作成用内挿関数のデータと、HANDモデルに含まれるHAND地盤高のデータと、に基づいて、それぞれの緯度、経度の仮想浸水図作成用内挿関数から、それぞれの緯度、経度のHAND地盤高を減算して、それぞれの緯度、経度の仮想浸水深のデータを算出する。
(k)本構成において、仮想浸水図算出手段は、それぞれの緯度、経度の仮想浸水深のデータに基づいて、所定の地域全体の仮想浸水図のデータを算出する。
(l)本構成において、評価指標値平均算出手段は、既存浸水情報と、仮想浸水図のデータと、に基づいて、TP、FP、TN、FN、適合率、再現率、F値、F値平均のデータを算出して、識別用ID、仮想センサ密度、仮想浸水図作成用セグメント分割数、河川中心線での分割有無のデータを対応付けて、評価指標値記憶手段に記憶させる。
(m)仮想浸水図作成用セグメント分割数のリスト、仮想浸水センサ数のリスト、仮想浸水センサのランダムな配置の繰り返し数、河川中心線での分割有無のリストが最後の値でない場合には、(d)に戻って、仮想動的センシング情報、仮想センサ密度のデータ、仮想HAND水面高のデータ、セグメントのデータ、仮想HAND水面高最大値のデータ、仮想浸水図作成用内挿関数のデータ、仮想浸水深のデータ、仮想浸水図のデータ、評価指標値平均のデータの算出を繰り返す。
(n)本構成において、動的センシング情報取得手段は、動的センシング情報と、所定の地域の浸水想定区域の面積と、に基づいて、実測センサ密度のデータを算出する。
(o)本構成において、浸水図作成用セグメント判別手段は、実測センサ密度のデータと、評価指標値平均のデータと、に基づいて、F値平均が最大となる浸水図作成用セグメント分割数を判別する。また、評価指標値平均のデータに基づいて、所定の地域を、河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)の分割に加えて、河川中心線での分割の必要性を判別する。河川中心での分割の必要性は、Fdivide≧Fnotdivideの場合、分割すると判別する。また、Fdivide<Fnotdivideの場合、分割しないと判別する。ここで、Fdivideは、当該浸水図作成用セグメント分割数において、河川中心線での分割有の場合のF値平均のことである。また、Fnotdivideは、当該浸水図作成用セグメント分割数において、河川中心線での分割無の場合のF値平均のことである。
(p)本構成において、浸水図作成用セグメント判別手段は、判別結果の浸水図作成用セグメント分割数のデータに基づいて、所定の地域を河川の平均の流下方向に対して、直角方向(横断方向)に分割したセグメントのデータを算出する。また、判別結果の河川中心線での分割の必要性と、河川中心線のデータと、に基づいて、その必要がある場合には、所定の地域を河川の中心線で縦断方向にさらに分割したセグメントのデータを算出する。
【0275】
以上のように、本構成では、実測センサ密度のデータと、評価指標値平均のデータと、を用いて、F値平均が最大となる浸水図作成用セグメント分割数を算出しているため、最適な浸水図作成用セグメント分割数が自動的に判別される。また、評価指標値平均のデータを用いて、所定の地域を河川の中心線で縦断方向に分割することの必要性を判別しているため、精度向上に寄与しない不必要なセグメント分割により、セグメント当たりの浸水センサ数が不必要に低下することを防止できる。これにより、本構成では、所定の地域において、地理空間座標のそれぞれの緯度、経度における水面高、および、浸水深の精度が向上し、浸水センサを採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0276】
3)上記の2)の構成において、動的センシング情報記憶手段は、SNSに関するデータをさらに記憶することが好ましい。ここで、SNSに関するデータとは、SNS投稿を識別するSNSID、投稿日時、投稿場所(緯度、経度)、SNS投稿時に添付される画像情報(静止画)、浸水の有無のデータのことである。
【0277】
以上のように、本構成では、上記の2)の構成と比較して実測センサ密度が大きくなるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0278】
4)上記の3)の構成において、動的センシング情報記憶手段は、航空写真に関するデータをさらに記憶することが好ましい。ここで、航空写真に関するデータとは、浸水範囲のポリゴンを識別する識別用ID、航空写真を識別する航空写真ID、撮影日時、撮影場所(緯度、経度)、撮影される画像情報(静止画)、浸水範囲(外周線の頂点の緯度、経度)のことである。
【0279】
以上のように、本構成では、上記の3)の構成と比較して実測センサ密度が大きくなるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0280】
5)上記の4)の構成において、動的センシング情報記憶手段は、衛星画像に関するデータをさらに記憶することが好ましい。ここで、衛星画像に関するデータとは、浸水範囲のポリゴンを識別する識別用ID、衛星画像を識別する衛星画像ID、観測日時、観測場所(緯度、経度)、観測される衛星画像(SAR画像)、浸水範囲(外周線の頂点の緯度、経度)のことである。
【0281】
以上のように、本構成では、上記の4)の構成と比較して実測センサ密度が大きくなるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、衛星画像(SAR画像)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0282】
6)上記の5)の構成において、本願発明の情報処理装置は、浸水図補正手段をさらに備えていることが好ましい。
【0283】
(a)本構成において、浸水図補正手段は、動的センシング情報において浸水有となっているにも関わらず、浸水図のデータにおいて浸水無となっているデータを判別する。
(b)本構成において、浸水図補正手段は、判別結果のデータに基づいて、その必要がある場合には、当該浸水センサ設置場所(緯度、経度)のデータと、当該浸水センサ設置場所(緯度、経度)の実測HAND水面高のデータを実測HAND水面高最大値のリストに追加して、補正された浸水図のデータを算出して、補正された浸水図のデータを浸水図記憶手段に記憶させる。
【0284】
以上のように、本構成では、動的センシング情報において浸水有となっているにも関わらず、浸水図のデータにおいて浸水無となっているデータを用いることができるようになるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、衛星画像(SAR画像)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【0285】
7)上記の6)の構成において、本願発明の情報処理装置は、異常値検出手段をさらに備えていることが好ましい。
【0286】
(a)本構成において、異常値検出手段は、あるセグメントにおいて、実測HAND水面高が小さい浸水センサが浸水無にもかかわらず、これよりも実測HAND水面高が大きい浸水センサが浸水有の場合に、どちらかの浸水センサのデータが異常値の可能性があると判別する。
(b)本構成において、異常値検出手段は、異常値の可能性がある浸水センサについて、浸水センサの個数を算出して、多数決により、どちらの浸水センサのデータが異常であるか判別する。
(c)本構成において、異常値検出手段は、判別結果のデータに基づいて、その必要がある場合には、当該データを実測HAND水面高のデータから取り除いて、補正された浸水図のデータを算出して、補正された浸水図のデータを浸水図記憶手段に記憶させる。
【0287】
以上のように、本構成では、浸水センサにおいて、泥の付着といった現象によって、浸水無にも関わらず浸水有といった異常値を取り除くことができるため、浸水センサと、SNS画像(静止画)と、航空写真(静止画)と、衛星画像(SAR画像)と、を採用した情報処理装置においても、高精度な浸水図のデータを算出できるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0288】
1…情報処理装置
10…浸水センサ
11…SNS
12…航空機
13…人工衛星
20…端末装置
30…サーバ装置
32…センシング情報受信判別手段
34…共通処理手段
36…浸水図作成手段
38…仮想浸水図作成手段
40…動的センシング情報記憶手段
42…評価指標値記憶手段
44…浸水図記憶手段
46…浸水図送信制御手段
90…通信ネットワーク
320…浸水センサ受信制御手段
322…SNS判別手段
324…航空写真判別手段
326…衛星画像判別手段
340…HANDモデル取得手段
360…動的センシング情報取得手段
362…実測HAND水面高算出手段
364…浸水図作成用セグメント判別手段
366…実測HAND水面高最大値算出手段
368…浸水図作成用内挿関数算出手段
370…浸水図算出手段
372…浸水図補正手段
374…異常値検出手段
380…既存浸水情報取得手段
382…仮想浸水図作成条件設定手段
384…仮想動的センシング情報生成手段
386…仮想HAND水面高算出手段
388…仮想HAND水面高最大値算出手段
390…仮想浸水図作成用内挿関数算出手段
392…仮想浸水図算出手段
394…評価指標値平均算出手段
2001…演算部
2002…メモリ
2003…ストレージ装置
2004…通信部
2005…表示部
2006…入力部
3001…演算部
3002…メモリ
3003…ストレージ装置
3004…通信部
3005…表示部
3006…入力部
【要約】
【課題】浸水センサ、SNS画像、航空写真、衛星画像等から取得可能な浸水に関する情報を採用し、高精度な浸水図のデータを算出する。
【解決手段】河川を含む評価対象領域の浸水図を作成する情報処理装置であって、最近傍排水地点との相対的な高低差であるHAND地盤高を、グリッドセルの値とするHANDモデルを取得し、X軸方向が河川の流下方向となるよう回転させるHANDモデル取得手段と、HANDモデルと浸水に関する情報を含む動的センシング情報に基づいて、浸水図を作成する浸水図作成手段を備え、浸水図作成手段は、実測HAND水面高算出手段と、浸水図作成用セグメント判別手段と、実測HAND水面高最大値算出手段と、浸水図作成用内挿関数算出手段と、浸水図算出手段と、を備える。
【選択図】図8
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