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  • 特許-炭酸化スラリー製造システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】炭酸化スラリー製造システム
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20241204BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241204BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241204BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C01F11/18 B
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024547052
(86)(22)【出願日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2024000140
【審査請求日】2024-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2023010845
(32)【優先日】2023-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】新島 瞬
(72)【発明者】
【氏名】仙石 大洋
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 淳一
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-116222(JP,A)
【文献】実開平04-45524(JP,U)
【文献】特開2000-308811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/18
B01D 53/14
B01D 53/62
B01D 53/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーを二酸化炭素含有ガスによって炭酸化してなる炭酸化スラリーを製造するための炭酸化スラリー製造システムであって、
上記スラリーを収容するためのスラリー槽と、
上記スラリーを上記スラリー槽に連続的に供給するためのスラリー供給装置と、
上記二酸化炭素含有ガスを供給するための二酸化炭素含有ガス供給装置と、
上記炭酸化スラリーを上記スラリー槽から連続的に排出するための炭酸化スラリー排出装置と、
上記スラリー槽内のスラリーからなる液面の高さを測定するための液面測定手段と、
上記スラリーの平均滞留時間を制御するためのスラリー制御装置を含み、
上記スラリー槽は、上記スラリー及び上記二酸化炭素含有ガスを、上記スラリーの第一の液面の上方に上記二酸化炭素含有ガスからなる気相が位置するように収容して、上記スラリーと上記二酸化炭素含有ガスを接触させるための第一のスラリー収容部分、及び、上記スラリーの第二の液面の上方に気相が位置するように収容し、かつ、上記スラリーと上記二酸化炭素含有ガスの接触面を有しない第二のスラリー収容部分を有し、
上記二酸化炭素含有ガス供給装置は、上記第一のスラリー収容部分の上記二酸化炭素含有ガスからなる気相に、上記二酸化炭素含有ガスを大気圧よりも大きな圧力で供給し、
上記液面測定手段は、上記第一のスラリー収容部分の第一の液面及び上記第二のスラリー収容部分の第二の液面の各々の高さを測定し、
上記スラリー制御装置は、上記液面測定手段で測定された、上記第一のスラリー収容部分の第一の液面及び上記第二のスラリー収容部分の第二の液面の各々の高さに基づいて、上記スラリー供給装置から供給される単位時間当たりの上記スラリーの量、及び、上記炭酸化スラリー排出装置から排出される単位時間当たりの上記炭酸化スラリーの量を調整して、上記スラリーの平均滞留時間を制御することを特徴とする炭酸化スラリー製造システム。
【請求項2】
上記炭酸化スラリー製造システムが、上記スラリー槽から排出された上記炭酸化スラリーの少なくとも一部を、上記スラリー槽に返送して循環させるためのスラリー循環路を含む請求項1に記載の炭酸化スラリー製造システム。
【請求項3】
上記スラリー槽が、上記スラリー槽内の上記炭酸化スラリーを撹拌し混合するための撹拌手段を有する請求項1または2に記載の炭酸化スラリー製造システム。
【請求項4】
上記炭酸化スラリー製造システムが、上記炭酸化スラリーのpHを測定するためのpH測定手段を含む請求項1または2に記載の炭酸化スラリー製造システム。
【請求項5】
上記炭酸化スラリー製造システムが、上記炭酸化スラリーの液温を調整するための液温調整手段を含む請求項1または2に記載の炭酸化スラリー製造システム。
【請求項6】
カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーを二酸化炭素含有ガスによって炭酸化してなる炭酸化スラリーを製造するための方法であって、
上記カルシウム含有粉末と上記水を混合して、上記スラリーを得るスラリー調製工程と、
上記スラリーを、上記スラリーを収容するためのスラリー槽に連続的に供給するスラリー供給工程と、
上記スラリー及び上記二酸化炭素含有ガスを、上記スラリーの第一の液面の上方に上記二酸化炭素含有ガスからなる気相が位置するように、上記スラリー槽の第一のスラリー収容部分に収容し、上記スラリーの第二の液面の上方に気相が位置し、かつ、上記スラリーと上記二酸化炭素含有ガスの接触面を有しないように、上記スラリー槽の第二のスラリー収容部分に収容するスラリー収容工程と、
上記第一のスラリー収容部分の上記二酸化炭素含有ガスからなる気相に、上記二酸化炭素含有ガスを大気圧よりも大きな圧力で供給して、上記第一の液面と上記気相を接触させることによって、上記スラリーを炭酸化させて、炭酸化スラリーを得る炭酸化スラリー調製工程と、
上記炭酸化スラリーを上記スラリー槽から連続的に排出する炭酸化スラリー排出工程と、
上記第一のスラリー収容部分の上記第一の液面及び上記第二のスラリー収容部分の上記第二の液面の高さを測定する液面測定工程を含み、
上記液面測定工程で得られた測定結果に基づいて、上記スラリー供給工程における上記スラリーの単位時間当たりの供給量、及び、上記炭酸化スラリー排出工程における上記炭酸化スラリーの単位時間当たりの排出量を調整することを特徴とする炭酸化スラリー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸化スラリー製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑制のため、二酸化炭素の排出量の低減が重要な課題になっている。
これに関連して、セメント製造工場で発生する排ガス等から回収された二酸化炭素を、コンクリート等に固定化する技術が検討されている。
一方、一般廃棄物、産業廃棄物等の都市ごみなどを焼却する際に発生する焼却灰やセメント工場から発生するクリンカダスト等のカルシウムを含む粉末は、資源や環境保護の観点からセメント原料として有効に再利用されている。
焼却灰やクリンカダスト等をセメント原料等として好適に利用するために、焼却灰やクリンカダスト等に含まれる塩素を除去する方法として、特許文献1には、塩素含有灰に水を加えて撹拌洗浄する洗浄工程と、この洗浄工程を経た灰スラリーに高分子凝集剤を加えて沈降分離する灰スラリーの濃縮工程と、この濃縮工程から排出された灰の濃縮スラリーを真空ベルトフィルターによって脱水する第1の脱水工程と、この脱水工程から排出された灰の脱水ケーキを水で分散して二酸化炭素含有ガスを加えるとともに加温する高度脱塩工程と、この高度脱塩工程を経たスラリーをフィルタープレスで脱水して洗浄灰ケーキとする第2の脱水工程とを備えることを特徴とする塩素含有灰の処理方法が記載されている。
また、効率的に消石灰と二酸化炭素とを接触させ、炭酸化反応を良好に制御・促進できる方法として、特許文献2には、水酸化カルシウムおよび助剤を含む液体と二酸化炭素を含む排ガスとを、インジェクターによって混合しつつ反応槽に供給することを含む、炭酸カルシウムの製造方法であって、水酸化カルシウムを含む液体として、反応槽から循環させた反応液を用いる、上記方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6252653号公報
【文献】特許第5426982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カルシウムを含む粉末と水からなるスラリーに二酸化炭素を連続的かつ効率的に固定化することができ、さらに、スラリーの平均滞留時間(スラリーが供給された後、炭酸化スラリーとして排出されるまでの平均時間)を、容易かつ安定的に制御することができる炭酸化スラリー製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、スラリーを収容するためのスラリー槽と、スラリーをスラリー槽に連続的に供給するためのスラリー供給装置と、二酸化炭素含有ガスを供給するための二酸化炭素含有ガス供給装置と、炭酸化スラリーを連続的に排出するための炭酸化スラリー排出装置と、スラリーからなる液面の高さを測定する液面測定手段と、スラリーの平均滞留時間を制御するためのスラリー制御装置を含み、液面測定手段で測定された、第一の液面及び第二の液面の各々の高さに基づいて、供給される単位時間当たりのスラリーの量及び排出される単位時間当たりの炭酸化スラリーの量を調整して、スラリーの平均滞留時間を制御する炭酸化スラリー製造システムによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
【0006】
[1] カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーを二酸化炭素含有ガスによって炭酸化してなる炭酸化スラリーを製造するための炭酸化スラリー製造システムであって、上記スラリーを収容するためのスラリー槽と、上記スラリーを上記スラリー槽に連続的に供給するためのスラリー供給装置と、上記二酸化炭素含有ガスを供給するための二酸化炭素含有ガス供給装置と、上記炭酸化スラリーを上記スラリー槽から連続的に排出するための炭酸化スラリー排出装置と、上記スラリー槽内のスラリーからなる液面の高さを測定するための液面測定手段と、上記スラリーの平均滞留時間を制御するためのスラリー制御装置を含み、上記スラリー槽は、上記スラリー及び上記二酸化炭素含有ガスを、上記スラリーの第一の液面の上方に上記二酸化炭素含有ガスからなる気相が位置するように収容して、上記スラリーと上記二酸化炭素含有ガスを接触させるための第一のスラリー収容部分、及び、上記スラリーの第二の液面の上方に気相が位置するように収容し、かつ、上記スラリーと上記二酸化炭素含有ガスの接触面を有しない第二のスラリー収容部分を有し、上記二酸化炭素含有ガス供給装置は、上記第一のスラリー収容部分の上記二酸化炭素含有ガスからなる気相に、上記二酸化炭素含有ガスを大気圧よりも大きな圧力で供給し、上記液面測定手段は、上記第一のスラリー収容部分の第一の液面及び上記第二のスラリー収容部分の第二の液面の各々の高さを測定し、上記スラリー制御装置は、上記液面測定手段で測定された、上記第一のスラリー収容部分の第一の液面及び上記第二のスラリー収容部分の第二の液面の各々の高さに基づいて、上記スラリー供給装置から供給される単位時間当たりの上記スラリーの量、及び、上記炭酸化スラリー排出装置から排出される単位時間当たりの上記炭酸化スラリーの量を調整して、上記スラリーの平均滞留時間を制御することを特徴とする炭酸化スラリー製造システム。
【0007】
[2] 上記炭酸化スラリー製造システムが、上記スラリー槽から排出された上記炭酸化スラリーの少なくとも一部を、上記スラリー槽に返送して循環させるためのスラリー循環路を含む前記[1]に記載の炭酸化スラリー製造システム。
[3] 上記スラリー槽が、上記スラリー槽内の上記炭酸化スラリーを撹拌し混合するための撹拌手段を有する前記[1]または[2]に記載の炭酸化スラリー製造システム。
[4] 上記炭酸化スラリー製造システムが、上記炭酸化スラリーのpHを測定するためのpH測定手段を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の炭酸化スラリー製造システム。
[5] 上記炭酸化スラリー製造システムが、上記炭酸化スラリーの液温を調整するための液温調整手段を含む前記[1]~[4]のいずれかに記載の炭酸化スラリー製造システム。
【0008】
[6] カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーを二酸化炭素含有ガスによって炭酸化してなる炭酸化スラリーを製造するための方法であって、上記カルシウム含有粉末と上記水を混合して、上記スラリーを得るスラリー調製工程と、上記スラリーを、上記スラリーを収容するためのスラリー槽に連続的に供給するスラリー供給工程と、上記スラリー及び上記二酸化炭素含有ガスを、上記スラリーの第一の液面の上方に上記二酸化炭素含有ガスからなる気相が位置するように、上記スラリー槽の第一のスラリー収容部分に収容し、上記スラリーの第二の液面の上方に気相が位置し、かつ、上記スラリーと上記二酸化炭素含有ガスの接触面を有しないように、上記スラリー槽の第二のスラリー収容部分に収容するスラリー収容工程と、上記第一のスラリー収容部分の上記二酸化炭素含有ガスからなる気相に、上記二酸化炭素含有ガスを大気圧よりも大きな圧力で供給して、上記第一の液面と上記気相を接触させることによって、上記スラリーを炭酸化させて、炭酸化スラリーを得る炭酸化スラリー調製工程と、上記炭酸化スラリーを上記スラリー槽から連続的に排出する炭酸化スラリー排出工程と、上記第一のスラリー収容部分の上記第一の液面及び上記第二のスラリー収容部分の上記第二の液面の高さを測定する液面測定工程を含み、上記液面測定工程で得られた測定結果に基づいて、上記スラリー供給工程における上記スラリーの単位時間当たりの供給量、及び、上記炭酸化スラリー排出工程における上記炭酸化スラリーの単位時間当たりの排出量を調整することを特徴とする炭酸化スラリー製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の炭酸化スラリー製造システムによれば、カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーに二酸化炭素を連続的かつ効率的に固定化することができ、さらに、スラリーの平均滞留時間(スラリーが供給された後、炭酸化スラリーとして排出されるまでの平均時間)を、容易かつ安定的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の炭酸化スラリー製造システムの一例を模式的に示す図である。
図2】本発明の炭酸化スラリー製造システムの一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の炭酸化スラリー製造システムは、カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーを二酸化炭素含有ガスによって炭酸化してなる炭酸化スラリーを製造するための炭酸化スラリー製造システムである。本発明の炭酸化スラリー製造システムは、スラリーを収容するためのスラリー槽と、スラリーをスラリー槽に連続的に供給するためのスラリー供給装置と、二酸化炭素含有ガスを供給するための二酸化炭素含有ガス供給装置と、炭酸化スラリーをスラリー槽から連続的に排出するための炭酸化スラリー排出装置と、スラリー槽内のスラリーからなる液面の高さを測定するための液面測定手段と、スラリーの平均滞留時間を制御するためのスラリー制御装置を含む。上記スラリー槽は、スラリー及び二酸化炭素含有ガスを、スラリーの第一の液面の上方に二酸化炭素含有ガスからなる気相が位置するように収容して、スラリーと二酸化炭素含有ガスを接触させるための第一のスラリー収容部分、及び、スラリーの第二の液面の上方に気相が位置するように収容し、かつ、スラリーと二酸化炭素含有ガスの接触面を有しない第二のスラリー収容部分を有する。上記二酸化炭素含有ガス供給装置は、第一のスラリー収容部分の二酸化炭素含有ガスからなる気相に、二酸化炭素含有ガスを大気圧よりも大きな圧力で供給する。上記液面測定手段は、第一のスラリー収容部分の第一の液面及び第二のスラリー収容部分の第二の液面の各々の高さを測定する。上記スラリー制御装置は、液面測定手段で測定された、第一のスラリー収容部分の第一の液面及び第二のスラリー収容部分の第二の液面の各々の高さに基づいて、スラリー供給装置から供給される単位時間当たりのスラリーの量、及び、炭酸化スラリー排出装置から排出される単位時間当たりの炭酸化スラリーの量を調整して、スラリーの平均滞留時間を制御する。
なお、本明細書中、「炭酸化」とは、二酸化炭素を吸収及び固定化することをいう。
以下、図1~2を参照しながら、本発明の炭酸化スラリー製造システム1、21について、詳しく説明する。
【0012】
本発明において、炭酸化の対象となるスラリーは、カルシウム含有粉末及び水を含む混合物(スラリー)である。
カルシウム含有粉末は、カルシウムを含む粉末であれば特に限定されないが、例えば、セメント、廃コンクリート粉砕物、生コンクリートスラッジ粉末、高炉スラグ粉末、都市ゴミ焼却灰(飛灰、主灰)、及びセメントキルンダスト等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。
廃コンクリート粉砕物の例としては、コンクリート構造物等を解体する際に発生するコンクリート廃棄物を破砕した後、該破砕物から骨材を除去した、セメント水和物やセメント未水和物を含む粉末状のものが挙げられる。廃コンクリート粉砕物のCaOの含有率は、通常、15質量%以上である。
生コンクリートスラッジ粉末は、生コンクリート工場やコンクリート製品工場において、コンクリートの製造工程で発生するスラッジを、ふるい等を用いてふるい分けすることで得られた、セメント水和物やセメント未水和物を含む粉末状のものである。生コンクリートスラッジのCaOの含有率は、通常、30質量%以上である。
高炉スラグ粉末は、高炉で銑鉄を製造する際に副生する溶融状態のスラグを、水で急冷・破砕して得られる水砕スラグや、徐冷・破砕して得られる徐冷スラグ等が挙げられる。高炉スラグ粉末のCaO含有率は、通常、35質量%以上である。
カルシウム含有粉末中のカルシウムの含有率は、酸化物(CaO)換算で、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。上記含有率が15質量%以上であれば、得られた炭酸化スラリーをコンクリート等のセメント組成物の材料の一部として使用した場合の該セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。上記含有率の上限値は特に限定されるものではないが、通常、90質量%である。
【0013】
水としては、特に限定されず、例えば、上水道水や、工業用水や、コンクリート製造工場で発生する上澄水やスラッジ水等の回収水等が挙げられる。
スラリーの水カルシウム含有粉末比(水とカルシウム含有粉末の質量比(水/カルシウム含有粉末))は、炭酸化スラリーの用途や、目標とする炭酸化スラリーの濃度によっても異なるが、好ましくは0.2~10.0、より好ましくは0.4~9.5、さらに好ましくは0.6を超え、9.0以下、さらに好ましくは1.0~8.5、さらに好ましくは2.0~8.0、特に好ましくは3.0~7.5である。
上記水カルシウム含有粉末比が0.2以上であれば、スラリーの粘性が低くなるため、作業性が向上するとともに、連続的かつ安定的にスラリーに二酸化炭素を吸収させ固定化することができる。
上記水カルシウム含有粉末比が10.0以下であれば、炭酸化スラリーの用途が限定されにくくなるとともに、炭酸化スラリーをコンクリート等の材料の一部として配合する場合において、他の材料(例えば、水)の量の調整等がより容易になる。また、装置が過大になる事を防ぐことができる。
【0014】
カルシウム含有粉末と水は、例えば、カルシウム含有粉末と水を混合してスラリーを得るための混合用タンク(図示せず)内で、混合用タンク内に配設された撹拌翼や、ハンドミキサ等の混合手段を用いて、撹拌し混合されてスラリーに調製される。調製されたスラリーは、スラリー供給装置3、23から、スラリー流入路13、33を通って、スラリー槽2、22に連続的に供給される。
スラリー流入路13、33、及び、スラリー槽2、22のスラリーが供給される領域の少なくともいずれか一方に、炭酸化の効率をより向上させる等の目的で分散板やノズルを配設してもよい。
また、スラリー槽2、22は、スラリーに含まれるカルシウム含有粉末が、スラリー槽内に沈殿することを防ぐ目的で、撹拌手段19、39を備えている。撹拌手段の例としては、スラリー槽内に配設された撹拌翼や、ハンドミキサ等が挙げられる。
さらに、スラリー槽2、22は、スラリーに含まれるカルシウム含有粉末が、スラリー槽内に沈殿することを防ぐ目的で、炭酸化スラリー排出路15、35(通常、スラリー槽2、22の鉛直方向下部分に配設される。)に向かって、テーパー状に先細る形状を有している。
なお、撹拌手段は省略することができる。また、スラリー槽の形状は特に限定されるものではない。
【0015】
スラリー槽2、22は、スラリー槽2、22内に収容されたスラリー(スラリーの炭酸化の過程で、その一部が炭酸化されたスラリーを含む)及び二酸化炭素含有ガスを、スラリーの第一の液面8a、8b、28a、28bの上方に二酸化炭素含有ガスからなる気相9a、9b、29a、29bが位置するように収容して、スラリーと二酸化炭素含有ガスを接触させるための第一のスラリー収容部分10a、10b、30a、30b、及び、スラリーの第二の液面11a、11b、11c、31の上方に気相12a、12b、12c、32(上述の二酸化炭素含有ガスからなる気相とは異なるもの、通常、空気からなる気相)が位置するように収容し、かつ、スラリーと二酸化炭素含有ガスの接触面を有しない第二のスラリー収容部分を有するものである。
スラリー槽2、22が有する第一のスラリー収容部分の数は少なくとも1個であればよく、2個以上あってもよい。
第一のスラリー収容部分は、スラリー槽の内側に配設されていてもよく、スラリー槽の外側に配設されていてもよい。
【0016】
例えば、図1では、第一のスラリー収容部分10a、10bは、スラリー槽2に収容されたスラリー18に第一のスラリー収容部分の少なくとも一部が没するように配設されている。第一のスラリー収容部分10a、10bは、スラリー槽2の蓋部分に固定されていてもよく、スラリー槽2の内壁部分に、第一のスラリー収容部分の一部分でまたは固定用部材(図示せず)を用いて固定されていてもよい。
気相12a、12b、12cは、連続する空間である。また、第二の液面11a、11b、11cは、スラリー18の第一の液面8a、8b以外の液面であり、第二の液面11a、11b、11cの高さは同じである。
第一のスラリー収容部分10a、10bに収容されるスラリーは、第一のスラリー収容部分10a、10bの鉛直方向下の端部であって、スラリー槽2に収容されたスラリー18(ただし、第一のスラリー収容部分10a、10bに収容されたスラリーを除く。)の液面(第二の液面)より鉛直方向下の位置で開口した流出入口を通って、第一のスラリー収容部分10a、10b内に収容される。
【0017】
図2では、第一のスラリー収容部分30a、30bは、スラリー槽22の外壁部分に配設されている。第一のスラリー収容部分30a、30bは、スラリー槽の外壁の一領域を形成していてもよい。
第一のスラリー収容部分30a、30bに収容されるスラリーは、第一のスラリー収容部分30a、30bの鉛直方向下の端部であって、スラリー槽22に収容されたスラリー38(ただし、第一のスラリー収容部分30a、30bに収容されたスラリーを除く)の液面(第二の液面)より鉛直方向下の位置で開口した流出入口40a、40bを通って、第一のスラリー収容部分30a、30bに収容される。
図2において、第一のスラリー収容部分30a、30bとスラリー槽22は、流出入口40a、40b部分で連結されている。
第一のスラリー収容部分をスラリー槽の外部に配設する場合、第一のスラリー収容部分の流出入口から、スラリー槽の流出入口まで連通する流出入路を備えていてもよい。スラリー槽の流出入口は、通常、スラリー槽の外壁の、スラリー槽に収容されたスラリーの液面(第二の液面)よりも鉛直方向下の位置に配設される。
【0018】
スラリー槽に収容されたスラリーの一部は、流出入口を通って、第一のスラリー収容部分に収容される。
第一のスラリー収容部分において、二酸化炭素含有ガスからなる気相の圧力が大気圧よりも大きい(例えば、圧力の差として0.02MPa以上)環境下でスラリーと二酸化炭素含有ガスを接触させる(液面と気相の境界面で接触させる)ことによって、スラリーに二酸化炭素を、効率的に、かつ、より多量に吸収させ固定化することができる。
なお、第一のスラリー収容部分は、通常、加圧できる構造を有する容器である。加圧下(第一のスラリー収容部分の内部圧力を、大気圧よりも大きくする)において、第一のスラリー収容部分の気相に炭酸ガスを供給することで、炭酸化スラリーに固定化される二酸化炭素の量を増加させて、より多くの二酸化炭素が固定化された炭酸化スラリーを得ることができる。
また、スラリーに二酸化炭素を、効率的に、かつ、より多くの量で吸収させ固定化する観点から、第一のスラリー収容部分に撹拌翼等の撹拌手段を配設し、該撹拌手段を用いてスラリーを撹拌しながら、あるいは、循環手段を用いてスラリーを循環しながらスラリーと二酸化炭素含有ガスを接触させてもよい。
【0019】
二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素含有ガス供給装置4、24から、二酸化炭素含有ガス流入路14、34を通って、第一のスラリー収容部分10a、10b、30a、30bの二酸化炭素含有ガスからなる気相9a、9b、29a、29bに、大気圧よりも大きな圧力で供給される。
第一のスラリー収容部分10a、10b、30a、30bの二酸化炭素含有ガスの流入口は、スケールの発生による閉塞を防ぐ観点から、通常、スラリーと接触しない位置(第一のスラリー収容部分の上部(例えば、蓋)等の、第一の液面よりも鉛直方向上の位置)に配設される。
二酸化炭素含有ガスとしては、二酸化炭素(炭酸ガス)のみからなる気体であってもよいが、入手の容易性等の観点から、二酸化炭素を含む気体であってもよい。
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の割合は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。該割合が5体積%以上であれば、スラリーに固定化される二酸化炭素の量をより増やすことができる。また、炭酸化スラリーが調製されるのに要する時間をより短くすることができる。
二酸化炭素含有ガスの例としては、液化炭酸ガス、セメント製造工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約20体積%)、製鉄工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約20体積%)、火力発電工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約10体積%)、または、これらの排ガスからの分離回収ガス(炭酸ガス濃度:約100体積%)等が挙げられる。
【0020】
二酸化炭素含有ガスが供給される気相(第一のスラリー収容部分の二酸化炭素含有ガスからなる気相)と大気圧の差は、好ましくは0.02~0.2MPa、より好ましくは0.03~0.18MPa、特に好ましくは0.04~0.15MPaである。上記圧力が0.02MPa以上であれば、単位時間当たりのスラリーへの二酸化炭素の固定化量をより大きくすることができ、より効率的にスラリーを炭酸化することができる。また、炭酸化用タンク等の装置をより小型にすることができる。上記圧力が0.2MPa以下であれば、設備にかかる費用が過大になる事を防ぐことができる。
【0021】
第一のスラリー収容部分で炭酸化されたスラリーは、第一のスラリー収容部分から流出入口を通って、スラリー槽内のスラリー(ただし、第一のスラリー収容部分に収容されたスラリーを除く。)からなる液相に移動する。
本明細書中、「液相」の語は、液体と粉粒体(具体的には、水とカルシウム含有粉末)を混合してなるスラリーを包含する概念を有する。
第一のスラリー収容部分の流出入口は、スラリーが第一のスラリー収容部分の内外を移動することができるものであればよい。流出入口は一つであってもよく、第一のスラリー収容部分の中へスラリーを流入させるための流入口と、第一のスラリー収容部分から外へスラリーを流出させるための流出口を別々に備えていてもよい。
【0022】
炭酸化スラリー排出装置5、25は、第一のスラリー収容部分10a、10b、30a、30bで二酸化炭素が十分に固定化されたスラリーを、炭酸化スラリー(目標とする量の二酸化炭素が吸収され固定化された炭酸化スラリー)として、スラリー槽2、22から、連続的に排出するための装置である。炭酸化スラリーは、スラリー槽2、22から、炭酸化スラリーの排出路15、17、35、37を通って排出される。
排出された炭酸化スラリーは、コンクリート等のセメント組成物の材料等として使用することができる。
【0023】
液面測定手段6a、6b、26a、26bは、各々、第一のスラリー収容部分10a、10b、30a、30bの第一の液面8a、8b、28a、28bの高さを測定するためのものである。
また、液面測定手段6c、26cは、各々、スラリー槽2、32内の第二のスラリー収容部分の第二の液面11b、31の高さを測定するためのものである。
なお、第二のスラリー収容部分とは、スラリー槽の、第一のスラリー収容部分に収容されたスラリーを除いた他のスラリーが収容されている部分を意味する。また、第二の液面とは、スラリー槽内のスラリー(ただし、第一のスラリー収容部分に収容されたスラリーを除く。)からなる液相の液面を意味する。
第一のスラリー収容部分の二酸化炭素含有ガスからなる気相は、第二のスラリー収容部分の気相よりも圧力が大きいため、第一の液面の高さは、通常、第二の液面の高さよりも鉛直方向下の位置になる。
スラリー槽が第一のスラリー収容部分を複数有し、かつ、複数の第一のスラリー収容部分への二酸化炭素含有ガスの供給が、一つの二酸化炭素含有ガス流入路から分岐した二酸化炭素含有ガス流入路を用いて行われる場合等、複数の第一のスラリー収容部分の二酸化炭素含有ガスからなる気相の圧力を、同時に制御することができる場合には、複数の第一のスラリー収容部分のうちの一つについてのみ、液面測定手段を用いて第一の液面の高さを測定してもよい。
【0024】
スラリー制御装置7、27は、液面測定手段6a、6b、6c、26a、26b、26cで測定された高さ(第一の液面の高さ、及び、第二の液面の高さ)に基づいて、スラリー供給装置3、23から供給される単位時間当たりのスラリーの量、及び、炭酸化スラリー排出装置5、25から排出される単位時間当たりの炭酸化スラリーの量を調整して、供給から排出までのスラリーの平均滞留時間(スラリーが供給された後、炭酸化スラリーとして排出されるまでに要する平均時間)を制御するためのものである。
加圧下において、スラリーの炭酸化を連続的に行う場合、得られる炭酸化スラリーの品質(例えば、スラリーの炭酸化の程度)は、炭酸化スラリーの平均滞留時間、及び、二酸化炭素含有ガスからなる気相の圧力等に影響されるため、炭酸化スラリーの平均滞留時間を一定に制御し、かつ、炭酸化スラリーの品質を安定的に維持するのは困難である。しかし、本発明によれば、液面測定手段で測定された高さに基づいて、スラリーの単位時間当たりの供給量及び炭酸化スラリーの単位時間当たりの排出量等を調整することで、スラリーの平均滞留時間をより容易かつ安定的に制御し、十分に炭酸化された炭酸化スラリーを連続的に製造することができる。
より具体的には、スラリー槽(第一のスラリー収容部分及び第二のスラリー収容部分)の容量、及び、液面測定手段から得られた測定結果から、スラリー槽内のスラリーの総量を求め、スラリーの総量が一定となるように、スラリーの単位時間当たりの供給量、及び炭酸化スラリーの単位時間当たりの排出量を調整することで、スラリーの平均滞留時間を安定させて、十分に炭酸化された炭酸化スラリーを連続的に製造することができる。
【0025】
スラリー制御装置は、スラリー供給装置から供給される単位時間当たりのスラリーの量、及び、炭酸化スラリー排出装置から排出される単位時間当たりの炭酸化スラリーの量の調整の他に、二酸化炭素含有ガス供給装置からの二酸化炭素含有ガスの供給量の調整(換言すると、供給量の増減によって、第一のスラリー収容手段の二酸化炭素含有ガスからなる気相の圧力の調整)を行ってもよい。
【0026】
炭酸化スラリー製造システム1、21は、スラリー槽2、22から排出された炭酸化スラリーの少なくとも一部を、スラリー槽2、22に返送して循環させるためのスラリー循環路16、36を有している。
なお、スラリー循環路は省略することができる。
また、炭酸化スラリーを循環させるために、循環用ポンプ等の循環手段を、スラリー循環路16、36に配設してもよい。ここで、炭酸化スラリー排出装置5、25は、循環手段を兼ねていてもよい。また、スラリー循環路16及び36から、スラリーが供給される領域の少なくともいずれか一方に、炭酸化の効率をより向上させる等の目的で、分散盤やノズル(図示せず)を配設してもよい。
上記循環は、通常、スラリーが、目標とする量の二酸化炭素が吸収され固定化された炭酸化スラリー(十分な量の炭酸ガスが吸収され固定化された炭酸化スラリー)になるまで行われる。
炭酸化スラリーを循環させながら、スラリーの炭酸化を行うことによって、単位時間当たりのスラリーへの二酸化炭素の固定化量をより大きくすることができ、より効率的にスラリーを炭酸化することができる。また、スラリーの炭酸化を連続的に行う場合であっても、炭酸化に要する時間の調整を容易にすることができる。
循環用ポンプから循環された炭酸化スラリーは、炭酸化の効率をより向上する観点から、第一のスラリー収容手段内に返送してもよい。
【0027】
炭酸化スラリー製造システムは、炭酸化スラリーの液温を調整するための液温調整手段(図示せず)を含んでいてもよい。
スラリーへの二酸化炭素の吸収及び固定化の程度、並びに、炭酸化スラリーの性状(例えば、粘度、炭酸化スラリーに含まれるカルシウム含有粉末の粒径)は、炭酸化スラリー(スラリー槽内に収容された少なくとも一部が炭酸化してなるスラリーを含む。)の温度に影響される。炭酸化スラリーの液温を調整することで、スラリーに二酸化炭素を、より効率的に、かつ、より多量に吸収、固定化させるとともに、炭酸化スラリーの性状をより容易に管理(調整)することができる。
液温調整手段は、冷却手段及び加熱手段を有するものであれば特に限定されるものではない。液温調整手段は、スラリー槽、スラリー循環路等に配設することができる。
液温調整手段は、炭酸化スラリーの液温を測定するための温度測定手段(図示せず)によって測定された液温に基いて、炭酸化スラリーの液温を調整する。温度測定手段は、スラリー槽、スラリー循環路等に適宜配設することができる。
液温調整手段によって調整される炭酸化スラリーの液温は、好ましくは10~50℃、より好ましくは20~40℃である。上記液温が10℃以上であれば、冷却用の設備にかかるコストが過大になることを防ぐことができる。上記液温が50℃以下であれば、スラリーに二酸化炭素を、より効率的に、かつ、より多量に吸収させ固定化することができる。
また、スラリー槽に供給される際のスラリーの温度を調整する目的で、混合用タンク(図示せず。)に液温調整手段、液温測定手段を配設してもよい。
【0028】
炭酸化セメントスラリー製造システムは、炭酸化スラリー(スラリー槽内に収容された少なくとも一部が炭酸化してなるスラリーを含む。)のpHを測定するためのpH測定手段(図示せず)を含んでいてもよい。炭酸化スラリーのpHの測定値に基いて、目標とする量の二酸化炭素が吸収され固定化された炭酸化スラリーが得られたかどうか(スラリーに十分な量の炭酸ガスが吸収され固定化されたかどうか)を判断することができる。
例えば、スラリー槽内の炭酸化スラリー(スラリー槽内に収容された少なくとも一部が炭酸化してなるスラリー)のpHの測定値が、予め定められた所定の数値範囲内である場合、炭酸化スラリーに十分な量の炭酸ガスが吸収され固定化されたと判断し、スラリー槽内の炭酸化スラリーを、目標とする量の二酸化炭素(炭酸ガス)が吸収され固定化された炭酸化スラリーとして排出してもよい。
また、炭酸化スラリーのpHの測定値に基いて、二酸化炭素含有ガス供給装置からの二酸化炭素含有ガスの供給量の調整(換言すると、供給量の増減によって、第一のスラリー収容手段の二酸化炭素含有ガスからなる気相の圧力の調整)や、スラリーの循環の調整等を行うことで、炭酸化スラリーの調製を管理(調整)することができる。
さらに、上述したスラリー制御装置に関して、液面測定手段で測定された高さ(第一の液面の高さ、及び、第二の液面の高さ)とともに、pH測定手段で測定された炭酸化スラリーのpHに基づいて、スラリー供給装置から供給される単位時間当たりのスラリーの量、及び、炭酸化スラリー排出装置から排出される単位時間当たりの炭酸化スラリーの量を調整してもよい。
pH測定手段は、スラリー槽、スラリー循環路等の炭酸化スラリーが貯留又は移送される部材に配設することができる。
さらに、上述した炭酸化スラリー製造システムを構成する各部材は、炭酸化スラリーの調製を管理する目的で、スラリー槽内の気相部分の温度を測定するための温度計、炭酸イオン濃度測定装置、酸素濃度測定装置、二酸化炭素濃度測定装置、及び圧力計等の各種測定手段を備えていてもよい。
また、これらの測定結果を用いて、スラリー制御装置による制御を行ってもよい。
【0029】
上述した炭酸化スラリー製造システムを用いた、カルシウム含有粉末及び水を含むスラリーを二酸化炭素含有ガスによって炭酸化してなる炭酸化スラリーを製造するための方法の例としては、カルシウム含有粉末と水を混合して、スラリーを得るスラリー調製工程と、スラリーを、スラリーを収容するためのスラリー槽に連続的に供給するスラリー供給工程と、スラリー及び二酸化炭素含有ガスを、スラリーの第一の液面の上方に二酸化炭素含有ガスからなる気相が位置するように、スラリー槽の第一のスラリー収容部分に収容し、スラリーの第二の液面の上方に気相が位置し、かつ、スラリーと二酸化炭素含有ガスの接触面を有しないように、スラリー槽の第二のスラリー収容部分に収容するスラリー収容工程と、第一のスラリー収容部分の二酸化炭素含有ガスからなる気相に、二酸化炭素含有ガスを大気圧よりも大きな圧力で供給して、第一の液面と上記気相を接触させることによって、スラリーを炭酸化させて、炭酸化スラリーを得る炭酸化スラリー調製工程と、炭酸化スラリーをスラリー槽から連続的に排出する炭酸化スラリー排出工程と、第一のスラリー収容部分の第一の液面及び第二のスラリー収容部分の第二の液面の高さを測定する液面測定工程を含み、液面測定工程で得られた測定結果に基づいて、スラリー供給工程におけるスラリーの単位時間当たりの供給量、及び、炭酸化スラリー排出工程における炭酸化スラリーの単位時間当たりの排出量を調整する炭酸化スラリー製造方法が挙げられる。
【符号の説明】
【0030】
1、21 炭酸化スラリー製造システム
2、22 スラリー槽
3、23 スラリー供給装置
4、24 二酸化炭素含有ガス供給装置
5、25 炭酸化スラリー排出装置
6a、6b、6c、26a、26b、26c 液面測定手段
7、27 スラリー制御装置
8a、8b、28a、28b 第一の液面
9a、9b、29a、29b 二酸化炭素含有ガスからなる気相
10a、10b、30a、30b 第一のスラリー収容部分
11a、11b、11c、31 第二の液面
12a、12b、12c、32 気相
13、33 スラリー流入路
14、34 二酸化炭素含有ガス流入路
15、17、35、37 炭酸化スラリー排出路
16、36 スラリー循環路
18、38 スラリー(一部が炭酸化されたスラリーを含む)
19、39 撹拌手段
40a、40b 流出入口
【要約】
カルシウムを含む粉末と水からなるスラリーに二酸化炭素を固定化でき、スラリーの平均滞留時間を容易に制御できる炭酸化スラリー製造システムを提供する。
スラリーと二酸化炭素含有ガスを接触させるための第一のスラリー収容部分10a、10bを有するスラリー槽2と、カルシウムを含む粉末と水からなるスラリー供給するためのスラリー供給装置7と、第一のスラリー収容部分の二酸化炭素含有ガスからなる気相9a、9bに、二酸化炭素含有ガスを大気圧よりも大きな圧力で供給するための二酸化炭素含有ガス供給装置4と、炭酸化スラリーを排出するための炭酸化スラリー排出装置5と、スラリーからなる液面の高さを測定するための液面測定手段6a、6b、6cと、第一の液面8a、8b及び第二の液面11の各々の高さに基づいて、スラリーの平均滞留時間を制御するためのスラリー制御装置7を含む炭酸化スラリー製造システム1。
図1
図2