(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
(21)【出願番号】P 2021138581
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥子
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】岡部 大輝
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-98491(JP,A)
【文献】特開2012-197640(JP,A)
【文献】特開2011-157738(JP,A)
【文献】特開2022-86424(JP,A)
【文献】特開2011-208416(JP,A)
【文献】特開平8-177111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00- 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い落とし式の水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、
このボウル部に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部と、
前記ボウル部に接続され、前記ボウル部から下方へ延びる下降管路、及びこの下降管路に接続され、下降管路から上方へ延びる上昇管路を含む排水トラップ管路と、を有し、
前記上昇管路は、前記排水トラップ管路の最下点から、前記ボウル部内の溜水水位を規定する最高点まで延び、
前記上昇管路は、前記最下点における流路断面が略逆三角形状に形成されると共に、所定の長さに亘って流路断面が略四角形状に形成され、前記最高点における流路断面の底辺は略水平な略直線状であることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記上昇管路は、流路断面が略四角形状にされている所定区間において、その中心軸線が略直線状に形成されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記上昇管路は、その少なくとも一部において、前記最下点から前記最高点に向けて流路断面積が増大している請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記上昇管路は、その流路断面の最大高さ及び最大幅が略一定である請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記上昇管路は、前記最高点を含む流路断面が略四角形状に形成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記上昇管路には、前記最下点から所定区間に亘って湾曲部が設けられており、この湾曲部において、前記上昇管路の流路断面形状は、前記最下点における略逆三角形状から、略四角形状に漸変する請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係わり、特に、下降管路と上昇管路を含むトラップ管路を有する洗い落とし式の水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗大便器には、ボウル部に下降管路と上昇管路を含む排水トラップ管路が接続され、ボウル部に排泄された汚物を洗浄水により排出するようになっている。
この排水トラップ管路の中心軸線に直交する断面である流路断面の形状には、種々の形状が採用されている。例えば、特許文献1の水洗大便器においては、排水トラップ管路の入口部の流路断面は略三角形であり、最下点における流路断面は略四角形状であり、上昇管路の入り口における流路断面は円弧と直線を組み合わせた形状にされている。このような形状により、確実に浮遊汚物を排出するようにしている。
【0003】
さらに、特許文献2の水洗大便器においては、排水トラップ管路の流路断面が円弧と直線を組み合わせた形状、又は略四角形状に形成されており、このような形状により、汚物や紙がつまりにくいようにしている。
【0004】
また、特許文献3の水洗大便器においても、排水トラップ管路の流路断面が円弧と直線を組み合わせた形状、又は略四角形状に形成されており、このような形状により、汚物及び洗浄水の排出性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-51883号公報
【文献】特開2016-98491号公報
【文献】特開2017-145631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、水洗大便器の排水トラップ管路には、汚物の排出開始(初動)を早くし、排水トラップ管路内の整流を促進し、さらに、汚物の排出速度を早くすることが要望され、これらを両立させることができる水洗大便器が要望されている。
【0007】
特に、洗い落とし式の水洗大便器においては、サイホン作用によりボウル部内の洗浄水を吸引する力が実質的に作用しないため、ボウル部に流入する洗浄水による押し込み力のみによって、洗浄水及び汚物が排水トラップ管路を乗り越えて排出される必要がある。
【0008】
加えて、吐水口から吐出される洗浄水の旋回流によりボウル部を洗浄するタイプの水洗大便器においては、吐水口から吐出される洗浄水の瞬間流量を高く設定することができず、瞬間流量は比較的低く抑える必要がある。このため、ボウル部に流入する洗浄水の押し込み力が弱くなり、洗浄水及び汚物が排水トラップ管路を乗り越えることが、より困難になる。
【0009】
従って、本発明は、旋回流によりボウル部を洗浄する洗い落とし式の便器においても、効果的に洗浄水及び汚物を排出することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗い落とし式の水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部と、ボウル部に接続され、ボウル部から下方へ延びる下降管路、及びこの下降管路に接続され、下降管路から上方へ延びる上昇管路を含む排水トラップ管路と、を有し、上昇管路は、排水トラップ管路の最下点から、ボウル部内の溜水水位を規定する最高点まで延び、上昇管路は、最下点における流路断面が略逆三角形状に形成されると共に、所定の長さに亘って流路断面が略四角形状に形成され、最高点における流路断面の底辺は略水平な略直線状であることを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、上昇管路の最下点における流路断面が略逆三角形状に形成されているので、下降管路から上昇管路へ向かう流れのベクトルをスムーズに変換することができ、ボウル部から下降管路に押し込まれた流れのエネルギーをあまり損なうことなく、洗浄水を上昇管路に流入させることができる。また、上昇管路の所定の長さに亘って流路断面が略四角形状に形成されているので、上昇管路内を上方に流れる洗浄水を整流することができ、エネルギー損失を抑えると共に、汚物の排出速度を速くすることができる。さらに、最高点における流路断面の底辺が略水平な略直線状に形成されているので、最高点において広い流路を確保することができ、少ないエネルギーで多くの洗浄水及び汚物が最高点を乗り越えることができる。これらの作用により、効果的に洗浄水及び汚物を排出することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上昇管路は、流路断面が略四角形状にされている所定区間において、その中心軸線が略直線状に形成されている。
このように構成された本発明によれば、流路断面が略四角形状の所定区間における中心軸線が略直線状に形成されているので、上昇管路における汚物の詰まりを抑制することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上昇管路は、その少なくとも一部において、最下点から最高点に向けて流路断面積が増大している。
このように構成された本発明によれば、最下点から最高点に向けて上昇管路の流路断面積が増大しているので、上昇管路内を流れる洗浄水の流速を低下させることができ、洗浄水の流れのエネルギー損失を抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上昇管路は、その流路断面の最大高さ及び最大幅が略一定である。
このように構成された本発明によれば、上昇管路の流路断面の最大高さ及び最大幅が略一定に形成されているので、上昇管路内を流れる洗浄水の流れのエネルギー損失を抑制することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上昇管路は、最高点を含む流路断面が略四角形状に形成されている。
このように構成された本発明によれば、最高点を含む流路断面が略四角形状にされているので、所定の長さに亘る流路断面が略四角形状の部分と、底辺が略水平な略直線状にされた最高点における流路断面をスムーズに接続することができ、洗浄水の流れの乱れを抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、上昇管路には、最下点から所定区間に亘って湾曲部が設けられており、この湾曲部において、上昇管路の流路断面形状は、最下点における略逆三角形状から、略四角形状に漸変する。
このように構成された本発明によれば、湾曲部において、上昇管路の流路断面形状が、最下点における略逆三角形状から、略四角形状に漸変するので、略逆三角形状の流路断面から略四角形状の流路断面に移行する際の流れ抵抗を抑制することができ、効果的に洗浄水及び汚物を排出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による水洗大便器によれば、旋回流によりボウル部を洗浄する洗い落とし式の便器においても、効果的に洗浄水及び汚物を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
【
図2】
図1のII―II線に沿って見た断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路を拡大して示した断面図である。
【
図4】
図3のIV―IV線に沿って見た断面図である。
【
図6】
図3のVI―VI線に沿って見た断面図である。
【
図7】
図3のVII―VII線に沿って見た断面図である。
【
図8】
図3のVIII―VIII線に沿って見た断面図である。
【
図9】
図3のIX―IX線に沿って見た断面図である。
【
図10】
図3のX―X線に沿って見た断面図である。
【
図11】本発明の実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路の上昇管路の入口部の断面形状を模式的に示した図である。
【
図12】下降管路の入口部と出口部の断面を重ねて示した断面図である。
【
図13】上昇管路の入口部から上部の断面までの各断面を重ねて示した断面図である。
【
図14】本発明の実施形態による水洗大便器のトラップ管路及び比較例1と2のトラップ管路を比較して示す比較図である。
【
図15】本発明の実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路及び比較例1と2の排水トラップ管路による汚物の残留割合と時間の関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、
図1乃至
図7を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器について説明する。先ず、
図1及び
図2により、本発明の実施形態による水洗大便器の基本構造を説明する。
図1は本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、
図2は
図1のII―II線に沿って見た断面図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、符号1は本発明の実施形態による水洗大便器を示し、この水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器であり、便器本体2と、この便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク4と、を備えている。便器本体2は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部6が形成され、上半分のうち前方にボウル部8が形成されている。また、ボウル部8の後方上部には、その上流端が貯水タンク4に連通する共通通水路10が形成され、さらに、ボウル部8の後方下部に汚物を排出するための排水トラップ管路12が形成されている。
【0021】
上述した貯水タンク4は、洗浄水源であり、この貯水タンク4内には、排水弁14が設けられており、操作レバー(図示せず)により排水弁14が開閉するようになっている。なお、本実施形態は、貯水タンク4を設けず、水道から直接洗浄水が供給される直圧式水洗大便器や、フラッシュバルブにより洗浄水が供給されるタイプの水洗大便器等にも適用することができる。
【0022】
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面16と、上縁に位置するリム部18と、汚物受け面16の下方に形成された凹部20と、を備えている。ここで、リム部18の内周面18aは、内側に向かってオーバハングした形状となっており、後述するように旋回する洗浄水が外部へ飛び出ないようになっている。
【0023】
ボウル部8のリム部18の内周面の前方から見て左側の中央部の少し後方側に、洗浄水を吐水する吐水部である第1吐水口22が形成され、前方から見て右側後方側(下流側)に、吐水部である第2吐水口24が形成されている。これらの第1吐水口22及び第2吐水口24は、同一方向(
図1では反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成するようになっている。
【0024】
また、上述した水洗大便器1の後方上部に形成された共通通水路10は、便器前方に向かって、第1通水路26及び第2通水路28に分岐している。第1通水路26は、第1吐水口22に洗浄水を供給するためのものであり、第2通水路28は、第2吐水口24に洗浄水を供給するためのものである。
なお、本実施形態においては、第1吐水口を含む第1通水路と、第2吐水口を含む第2通水路を便器本体とは別体のディストリビユータ等により形成するようにしても良い。
【0025】
ここで、第1吐水口22及び第2吐水口24は、オーバハング形状のリム部18の内周面18aに沿って洗浄水を吐出させ、内周面18aに沿って旋回する洗浄水が少しずつ流下することによりボウル部8の内壁面が洗浄される。この際、第1吐水口22及び第2吐水口24から夫々吐出された洗浄水が、リム部18を越えてボウル部8の外へ飛び出すことがないように、各吐水口から吐出される洗浄水の瞬間流量は抑えられている。
【0026】
次に、
図2に示すように、排水トラップ管路12は、ボウル部8の凹部20の一部である凹部20の下部20aと接続し且つ後方下方へ延びる下降管路32と、この下降管路32と接続し上方へ延びる上昇管路34とを備えている。さらに、上昇管路34は、下流側の排水管路36に接続され、この排水管路36は、図示しない排水ソケットなどと連結し、床や壁に設けられた排水口に汚物を排水するようになっている。
【0027】
下降管路32は、凹部20の下部20aと下降管路32が接続され凹部20の下部20aから下降管路32に切り替わる入口部38を備えている。本実施形態では、凹部20の下部20aと下降管路32の接続部の断面積の変化割合が小さくなる又はゼロとなる箇所を下降管路32の入口部38としているが、凹部20の下部20aと下降管路32の接続部の形状によって、入口部38の位置は、多少前後するようになっている。さらに、下降管路32は、排水トラップ管路12の最下点Bにおいて、上昇管路34の入口部40と接続されている。
【0028】
下降管路32は、下降管路32の入口部38から上昇管路34の入口部40まで下降している。下降管路32の入口部38及び上昇管路34の入口部40は、それぞれ排水トラップ管路の中心軸線Xに直交する流路断面として設けられている。入口部40は、排水トラップ管路12の最下点Bに位置している。洗浄前には、凹部20の少なくとも一部と排水トラップ管路12は、溜水で満たされており封水を形成している。一定量以上の封水を形成するために本実施形態では、下降管路32の入口部38よりも排水トラップ管路12の最高点Tの方が高い位置に配置されており、これにより、下降管路32と、下降管路32と接続する凹部20の一部を水で満たし封水を形成することができるようになっている。換言すれば、ボウル部8内の溜水の溜水水位は、最高点Tの高さにより規定されている。
【0029】
次に、上昇管路34は、最下点Bにおいて下降管路32の下流側に接続された管路であり、最下点Bから最高点Tまで延びている。また、後述するように、上昇管路34は、最下点Bにおける流路断面が略逆三角形状に形成されると共に、所定区間において流路断面が略四角形状に形成されている。さらに、上昇管路34には、最下点Bから所定区間に亘って湾曲部が設けられており、この湾曲部において、流路断面の形状が逆三角形状から、略四角形状に漸変している。また、最高点Tにおける流路断面の底辺は略水平な略直線状に形成されている。なお、本実施形態において、上昇管路34は、流路断面が略四角形状に形成された所定区間が最高点Tを含むように形成されている。
【0030】
さらに、上昇管路34の下流側には、最高点Tよりも上方に、比較的広い空間35が設けられており、上昇管路34から流出した洗浄水及び汚物は、この空間35を通って排水管路36に流入する。即ち、便器洗浄時において、ボウル部8内の溜水及び汚物は、ボウル部8に流入した洗浄水によって押し流され、上昇管路34の最高点Tを乗り越えて空間35内に入り、排水管路36の中に落下する。ここで、空間35によって形成される流路の断面積は、上昇管路34の流路断面積よりも十分に広いため、洗浄水及び汚物が最高点Tを乗り越えている際も、空間35内は実質的に満水になることはない。また、空間35の下流側に設けられた排水管路36の流路断面積も、上昇管路34の流路断面積よりも十分に広いため、排水管路36内も実質的に満水になることはない。従って、本実施形態の水洗大便器1では実質的にサイホン作用が発生することはない。
【0031】
次に、
図3乃至
図9により、下降管路32及び上昇管路34の断面形状を説明する。
図3は便器本体の排水トラップ管路を拡大して示した断面図である。
図4は
図3のIV―IV線に沿って見た断面図(下降管路の入口部の断面図)であり、
図5は
図3のV―V線に沿って見た断面図(上昇管路の入口部の断面図)である。
図6は
図3のVI―VI線に沿って見た断面図(上昇管路の第1の断面図)であり、
図7は
図3のVII―VII線に沿って見た断面図(上昇管路の第2の断面図)であり、
図8は
図3のVIII―VIII線に沿って見た断面図(上昇管路の第3の断面図)であり、
図9は
図3のIX―IX線に沿って見た断面図(上昇管路の上部の断面図)であり、
図10は
図3のX―X線に沿って見た断面図(上昇管路の出口の断面図)である。なお、
図4乃至
図10に示す下降管路32及び上昇管路34の断面は、何れも、排水トラップ管路12の中心軸線に直交する方向に切断された「流路断面」に相当する。
【0032】
まず、
図4に示すように、下降管路32の入口部38の断面形状は略四角形である。入口部38の断面は、上辺38a、右側辺38b、下辺38c、左側辺38dを備えている。ここで、下辺38cは円弧形状であり、上辺38aは、下辺38cよりも横方向の長さが長くなっている。また、右側辺38bおよび左側辺38dは、緩やかに内側傾斜しており、上辺38aの最頂点、下辺38cの最下点を結ぶ線を境にして左右対称になるように設けられている。
【0033】
次に、
図5に示すように、上昇管路34の入口部40(下降管路32の出口に相当)の断面形状は略逆三角形状である。入口部40の断面は、上辺40a、右側辺40b、左側辺40cを備えている。ここで、厳密には、右側辺40bと左側辺40cは比較的曲率半径の大きい円弧形状に形成されているが、入口部40の断面は全体として略逆三角形状ということができる。また、入口部40の断面における右側辺40bと左側辺40cが交わる点が、排水トラップ管路12の最下点Bに対応する。なお、入口部40の断面は、最下点Bを通る鉛直軸線に対して左右対称になるように設けられている。このように、本実施形態においては、上昇管路34の最下点Bにおける流路断面が略逆三角形状に形成されているので、下降管路32から上昇管路34へ向かう流れのベクトルをスムーズに変換することができる。これにより、ボウル部8から下降管路32に押し込まれた流れのエネルギーをあまり損なうことなく、洗浄水を上昇管路34に流入させることができる。
【0034】
なお、下降管路32の断面形状は、図示は省略するが、その入口部38から上昇管路34の入口部40(下降管路32の出口に相当)に向けて徐々に断面形状が略四角形から略逆三角形に変化している。特に、下降管路32の出口部側32a(
図2)は、入口部38を0、上昇管路34の入口部40を100とした場合には、下降管路32の50~100の範囲(又は100を含むより短い範囲)において、その断面形状が
図5のような略逆三角形となっている。下降管路32の断面形状の変化割合を一定にすることにより断面形状の変化により生じるエネルギー損失をより一層抑制することができる。なお、エネルギー損失をある程度抑制できる範囲であれば、変化割合を不均一にすることもできる。
【0035】
次に、
図6に示すように、上昇管路34の入口部40よりも少し上方に位置する上昇管路34の第1の断面60の断面形状は略五角形状である。第1の断面60は、上辺60a、右側辺60b、右下辺60c、左側辺60d、及び左下辺60eを備えている。ここで、右側辺60b及び左側辺60dは概ね鉛直方向に向けられ、右下辺60c及び左下辺60eは斜めに向けられ、中央で交わっている。厳密には、各辺の接続部にはRが付けられているが、上昇管路34の第1の断面60は全体として略五角形状ということができる。なお、第1の断面60は、右下辺60cと左下辺60eの交点を通る鉛直軸線に対して左右対称になるように設けられている。
【0036】
次に、
図7に示すように、第1の断面60よりも少し上方に位置する上昇管路34の第2の断面70の断面形状は略五角形状である。第2の断面70は、上辺70a、右側辺70b、右下辺70c、左側辺70d、及び左下辺70eを備えている。ここで、右側辺70b及び左側辺70dは概ね鉛直方向に向けられ、右下辺70c及び左下辺70eは斜めに向けられ、中央で交わっている。厳密には、各辺の接続部にはRが付けられているが、上昇管路34の第2の断面70は全体として略五角形状ということができる。また、第2の断面70の各辺の接続部に付けられているRの曲率半径は、第1の断面60よりも大きくされている。なお、第2の断面70は、右下辺70cと左下辺70eの交点を通る鉛直軸線に対して左右対称になるように設けられている。
【0037】
さらに、
図8に示すように、第2の断面70よりも少し上方に位置する上昇管路34の第3の断面80は四角形と円弧を組み合わせた形状にされている。第3の断面80は、上辺80a、右側辺80b、左側辺80c、及び下辺80dを備えている。ここで、右側辺80b及び左側辺80cは概ね鉛直方向に向けられ、下辺80dは下方に向けて凸形状の略円弧状にされている。即ち、第2の断面70において右下辺70cと左下辺70eを接続していたR部の曲率半径が、第3の断面80においてはさらに大きくなり、1本の円弧状の下辺80dが構成されている。
【0038】
次に、
図9に示すように、上昇管路34の上部の断面90は、略四角形状である。上昇管路34の上部の断面90は、上辺90a、右側辺90b、左側辺90c、底辺90dを備えており、上辺90aは、底辺90dよりも横方向の長さが少し長くなっている。また、右側辺90bおよび左側辺90cは、緩やかに内側に傾斜している。さらに、底辺90dは、下方に向けて凸型の、曲率半径の極めて大きい円弧形状とも見られるが、略直線状とみなすことができる。なお、上昇管路34の断面形状は、第3の断面80よりも少し上方から下流側に向けて延びる所定区間92(
図3)に亘って、
図9に示す断面形状と略同一の略四角形状に形成されている。また、本実施形態においては、所定区間92における排水トラップ管路12の中心軸線Xは直線にされ、この所定区間92は上昇管路34の出口近傍まで延びている。このように、本実施形態においては、流路断面が略四角形状の所定区間92における中心軸線Xが略直線状に形成されているので、上昇管路34における汚物の詰まりを抑制することができる。一方、上昇管路34の入口の断面40から所定区間92までの区間は、上昇管路34の向きが上方に向けられるように上側方向に向かって管路が湾曲されている。この湾曲している区間の断面を変化させることにより、上側方向に向かう湾曲による影響が緩和され、エネルギー損失を抑えることができる。
【0039】
さらに、本実施形態においては、所定区間92の下流側(上方側)においても、断面形状は略四角形状にされており、
図10に示す上昇管路34の出口の断面37も、上昇管路34の上部の断面90と略同一の略四角形状に形成されている。即ち、上昇管路34の出口の断面37は、上辺37a、右側辺37b、左側辺37c、底辺37dを備えている。ここで、
図3に示すように、上昇管路34の出口の断面37は、排水トラップ管路12の最高点Tを含んでいる。従って、出口の断面37の底辺37dは、最高点Tの高さに位置し、略水平な略直線状に形成されている。このように、本実施形態においては、最高点Tにおける流路断面37の底辺37dが略水平な略直線状に形成されているので、最高点Tにおいて広い流路を確保することができ、少ないエネルギーで多くの洗浄水及び汚物が最高点Tを乗り越えることができる。
【0040】
上昇管路34の断面形状は、
図5乃至
図10で示したように、上流端の入口部40においては、下降管路32の出口部側32aの略逆三角形との連続性を保持する略逆三角形状(
図5)であり、その下流側の断面は、
図6、
図7、
図8に示すように、少しずつ略四角形状に近くなっている。即ち、上昇管路34の流路断面形状は、最下点Bにおける略逆三角形状から、下流側に向けて略四角形状に漸変する。このように、本実施形態においては、上昇管路34の流路断面形状が、最下点Bにおける略逆三角形状から、略四角形状に漸変するので、略逆三角形状の流路断面から略四角形状の流路断面に移行する際の流れ抵抗を抑制することができ、効果的に洗浄水及び汚物を排出することができる。また、本実施形態において、上昇管路34の断面形状は、上昇管路34の所定区間92(
図3)及びその下流側全体が略四角形状にされている。このように、本実施形態においては、上昇管路34の所定の長さに亘って流路断面が略四角形状に形成されているので、上昇管路34内を上方に流れる洗浄水を整流することができ、エネルギー損失を抑えると共に、汚物の排出速度を速くすることができる。好ましくは、上昇管路34の全長の40%~60%の長さに亘って、流路断面を略四角形状とする。また、流路断面を略四角形状とする区間は、上昇管路34の下流端(最高点T)から上昇管路34の全長の40%~60%の範囲に設けるのが良い。
【0041】
さらに、
図4乃至
図10に示すように、本実施形態においては、下降管路32の入口部38の中心軸線Xに直交する断面の最大高さH1と、上昇管路34の入口部40の中心軸線Xに直交する断面の最大高さH2と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する第1の断面の最大高さH3と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する第2の断面の最大高さH4と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する第3の断面の最大高さH5と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する上部の断面の最大高さH6と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する出口の断面の最大高さH7は、略一定である。このため、排水トラップ管路12の中心軸線Xに直交する断面の最大高さは略一定である。
【0042】
また、
図4乃至
図10に示すように、本実施形態においては、上昇管路34の入口部40の中心軸線Xに直交する断面の最大幅W2と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する第1の断面の最大幅W3と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する第2の断面の最大幅W4と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する第3の断面の最大幅W5と、上昇管路34の中心軸線Xに直交する上部の断面の最大幅Wと、上昇管路34の中心軸線Xに直交する出口の断面の最大幅W7は、略一定である。従って、上昇管路34の中心軸線Xに直交する断面の最大幅Wは略一定である。このように、本実施形態においては、上昇管路34の流路断面の最大高さ及び最大幅が略一定に形成されているので、上昇管路34内を流れる洗浄水の流れのエネルギー損失を抑制することができる。一方、下降管路32の入口部38の中心軸線Xに直交する断面の最大幅W1は、上昇管路34の入口部40の中心軸線Xに直交する断面の最大幅W2よりも狭くされている。
【0043】
次に、
図11により、上昇管路34の入口部40の断面形状について詳細に説明する。
図11は本発明の実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路の上昇管路の入口部の断面形状を模式的に示した図である。
図11に示すように、上昇管路34の入口部40の断面形状は上述したように略逆三角形である。この略逆三角形の形状を具体的に説明する。
図11は上昇管路34の入口部40の内壁の形状を示している。入口部40は、上辺42と、右側第1側辺44と、この右側第1側辺44に接続部45により接続された右側第2側辺46と、左側第1側辺48と、この左側第1側辺48に接続部49により接続された左側第2側辺50とにより、断面形状が略三角形となっている。これらの上辺42、右側第1側辺44、右側第2側辺46、左側第1側辺48、左側第2側辺50は、全て略円弧形状となっている。
【0044】
また、上昇管路34の入口部40の上辺42の中央が断面の上端51であり、右側第2側辺46と左側第2側辺50の交点が断面の下端52となっている。
ここで、上昇管路34の入口部40の断面において、接続部45、49と下端52まで高さ(距離)bが、上端51と接続部45、49までの高さ(距離)aより大きな値となっている(即ち、b>aの関係がある)。入口部40の断面形状は、上端51と下端52を結ぶ線を境にして左右対称になるように設けられている。
【0045】
図11に示すように、上昇管路34の入口部40の断面は、右側第2側辺46の鉛直方向に対する内側に向けた傾き角(具体的には右側第2側辺46の中央点で引いた接線の鉛直方向に対する傾き度)βが、右側第1側辺44の鉛直方向に対する内側に向けた傾き角(具体的には右側第1側辺44の中央点で引いた接線の鉛直方向に対する傾き度)αよりも大きくなるような形状となっている(即ちβ>αの関係がある)。
同様に、上昇管路34の入口部40の断面は、左側第2側辺50の鉛直方向に対する内側に向けた傾き角(具体的には左側第2側辺50の中央点で引いた接線の鉛直方向に対する傾き度)βが、左側第1側辺48の鉛直方向に対する内側に向けた傾き角(具体的には左側第1側辺48の中央点で引いた接線の鉛直方向に対する傾き度)αよりも大きくなるような形状となっている(即ちβ>αの関係がある)。
【0046】
さらに、
図11に示すように、上昇管路34の入口部40の断面において、右側第2側辺46の中央点で引いた接線と左側第2側辺50の中央点で引いた接線により形成される角度γは、105度である。ここで、角度γは85度から125度の間の角度であることが好ましい。角度γは、上辺42と左側第1側辺48、右側第1側辺44のそれぞれがなす角よりも大きくなっている。
【0047】
次に、
図12により、下降管路32の入口部38と出口部(上昇管路34の入口部40に相当)のそれぞれの断面積について説明する。
図12は下降管路の入口部と出口部の断面を重ねて示した断面図である。
図12に示すように、下降管路32の入口部38の断面形状は想像線で示し、出口部の断面形状は実線で示されている。ここで、入口部38の断面積S1と出口部の断面積S2は略同じである。そのため、入口部38の断面の高さH1と出口部の高さH2は略一定なので、入口部38の断面の幅W1は出口部(上昇管路34の入口部40)の断面の幅W2よりも大きな値とすることにより、断面積を略一定にしている。また、略四角形の入口部38に比べ出口部(上昇管路34の入口部40)は、略逆三角形であるため、断面の底面が狭くなっている。
【0048】
次に、
図13により、上昇管路34の各部における断面積について説明する。
図13は上昇管路34の入口部40から上部の断面90までの各断面を重ねて示した断面図である。
図13において、入口部40(
図5)を太い実線で示し、第1の断面60(
図6)を破線、第2の断面70(
図7)を一点鎖線、第3の断面80(
図8)を二点鎖線、上部の断面90(
図9)を細い実線で夫々示している。
【0049】
上述したように、上昇管路34の入口部40から上部の断面90までの各断面の最大高さH2からH6は略一定であり、各断面の最大幅W2からW6も略一定である。このように、上昇管路34は、各断面の最大高さ、及び最大幅が略一定である一方、断面形状は、入口部40の略逆三角形状から、上部の断面90の略四角形状まで、形状が漸変している。このため、上昇管路34の断面は、入口部40の略逆三角形状から両側の斜め下隅が次第に拡張され、上昇管路34は、最下点Bから最高点Tに向けて流路断面積が増大している。このように、本実施形態においては、最下点Bから最高点Tに向けて上昇管路34の流路断面積が増大しているので、上昇管路34内を流れる洗浄水の流速を低下させることができ、洗浄水の流れのエネルギー損失を抑制することができる。
【0050】
また、上昇管路34の断面は、最下点Bから最高点Tに向けて、下側部分において流路断面積が広くなるように構成されており、洗浄水で汚物を押し上げるのに必要なエネルギーが少なくすむようになっている。上昇管路34内から汚物を排出するためには、重力に逆らって汚物を押し上げる必要があるが、上昇管路34の下側の部分において流路断面が狭い場合には、同量の洗浄水及び汚物を流出させるために、より多くの洗浄水及び汚物を上方まで押し上げる必要がある。これにより、洗浄水の流れのエネルギー損失が増大してしまう虞がある。それに対し、本実施形態においては、上昇管路34の下側の部分の流路断面が広く構成されているので、流路断面内の上方まで汚物を押し上げて流す量が少なくすむため、エネルギー損失を抑えることができる。
【0051】
次に、水洗大便器に必要な3つの特性である、「排出開始の速さ」、「下降管路内の整流」及び「排出速度」について、本実施形態による水洗大便器1と、従来技術である比較例1及び比較例2による水洗大便器とを対比して説明する。
図14は本発明の実施形態による水洗大便器のトラップ管路及び比較例1と2のトラップ管路を比較して示す比較図であり、
図15は本発明の実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路及び比較例1と2の排水トラップ管路による汚物の残留割合と時間の関係を示す線図であり、
図16は
図15のA部の部分拡大線図である。
【0052】
先ず、比較例1と比較例2はいずれも従来の「洗い落とし式便器」である。比較例1の水洗大便器においては、下降管路の入口部における中心軸線に直交する断面形状が略四角形であり、上昇管路の入口部における中心軸線に直交する断面形状が略四角形であり、上昇管路の上部における中心軸線に直交する断面形状が略四角形である。
比較例2の水洗大便器においては、下降管路の入口部における中心軸線に直交する断面形状が略逆三角形であり、上昇管路の入口部における中心軸線に直交する断面形状が略四角形であり、上昇管路の上部における中心軸線に直交する断面形状が略四角形である。
なお、本実施形態による水洗大便器1においては、上述したように、下降管路の入口部における中心軸線に直交する断面形状が略四角形であり、上昇管路の入口部における中心軸線に直交する断面形状が略逆三角形であり、上昇管路の上部における中心軸線に直交する断面形状が略四角形である。
【0053】
これらの比較例1、比較例2、実施形態による水洗大便器の上述した3つの特性を確認するため、疑似汚物(汚物とほぼ同じ質量の微細粒子を多量に使用)も使用して実験を行い、
図15及び
図16に示す結果を得た。
先ず、
図14に示すように、「排出開始(初動)の速さ」については、比較例1及び実施形態による水洗大便器が早く(〇)で、比較例2が少し遅くなった(△)。
下降管路内の整流については、比較例2と実施形態による水洗大便器が良好(〇)で、比較例1が弱かった(△)。
汚物の排出速度については、比較例1及び実施形態による水洗大便器が早く(〇)で、比較例2が少し遅くなった(△)。
【0054】
次に、
図15及び
図16に示すように、ボウル部から汚物を排水トラップ管路に排出するとき、排出開始時(0秒)には、ボウル部内に100%の汚物があり、排出終了時には、ボウル内に汚物は残らない(ほぼゼロ)状態となる。
排出開始から2秒経過後に、ボウル部内の汚物が、ボウル部内の水の落差による流水作用により、排水トラップ管路内への汚物の排出が開始される。このとき、
図16に示すように、汚物の排出開始は、実線で示された本実施形態による水洗大便器が一番速く、次に、破線で示された比較例1の水洗大便器が速く、一点鎖線で示された比較例2の水洗大便器が最も遅くなっている。
【0055】
以上から、本実施形態による水洗大便器においては、水洗大便器に必要な3つの特性である、「排出開始の速さ」、「下降管路内の整流」及び「排出速度」が両立していることが確認できた。
【0056】
次に、上述した本発明の実施形態による水洗大便器における作用効果を説明する。
本発明の実施形態の水洗大便器によれば、上昇管路34の最下点Bにおける断面(上昇管路34の入口部40における断面)が略逆三角形状(
図5)に形成されているので、下降管路32から上昇管路34へ向かう流れのベクトルをスムーズに変換することができ、ボウル部8から下降管路32に押し込まれた流れのエネルギーをあまり損なうことなく、洗浄水を上昇管路34に流入させることができる。また、上昇管路34の所定の長さに亘って断面90が略四角形状(
図9)に形成されているので、上昇管路34内を上方に流れる洗浄水を整流することができ、エネルギー損失を抑えると共に、汚物の排出速度を速くすることができる。さらに、最高点Tにおける断面37の底辺37dが略水平な略直線状(
図10)に形成されているので、最高点Tにおいて広い流路を確保することができ、少ないエネルギーで多くの洗浄水及び汚物が最高点Tを乗り越えることができる。これらの作用により、効果的に洗浄水及び汚物を排出することができる。
【0057】
また、本実施形態の水洗大便器によれば、断面が略四角形状(
図9)の所定区間92における中心軸線Xが略直線状に形成されている(
図3)ので、上昇管路34における汚物の詰まりを抑制することができる。
【0058】
さらに、本実施形態の水洗大便器によれば、最下点Bから最高点Tに向けて上昇管路34の流路断面積が増大している(
図13)ので、上昇管路34内を流れる洗浄水の流速を低下させることができ、洗浄水の流れのエネルギー損失を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の水洗大便器によれば、上昇管路34の断面の最大高さ(H2乃至H7)及び最大幅(W2乃至W7)が略一定に形成されている(
図13)ので、上昇管路34内を流れる洗浄水の流れのエネルギー損失を抑制することができる。
【0060】
さらに、本実施形態の水洗大便器によれば、最高点Tを含む断面37(
図10)が略四角形状にされているので、所定の長さに亘る断面が略四角形状の部分と、底辺37dが略水平な略直線状にされた最高点Tにおける出口の断面37をスムーズに接続することができ、洗浄水の流れの乱れを抑制することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 水洗大便器
2 便器本体
8 ボウル部
12 排水トラップ管路
22 第1吐水口(吐水部)
24 第2吐水口(吐水部)
32 下降管路
32a 出口部側
34 上昇管路
34a 上辺
34b 右側辺
34c 下辺
34d 左側辺
38 入口部
38a 上辺
38b 右側辺
38c 下辺
38d 左側辺
40 入口部
40a 上辺
40b 右側辺
40c 左側辺
42 上辺
44 右側第1側辺
45、49 接続点
46 右側第2側辺
48 左側第1側辺
50 左側第2側辺
51 上端
52 下端