(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】放射線撮像装置用の識別可能な散乱防止グリッド
(51)【国際特許分類】
A61B 6/06 20060101AFI20241205BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61B6/06 535
G01T7/00 B
(21)【出願番号】P 2023571168
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2022064139
(87)【国際公開番号】W WO2022248519
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-15
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス ヨハネス ウィルヘルムス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ミラー レスター ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】シング ニシャント
(72)【発明者】
【氏名】メンサー ベルンド
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0213116(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0115494(US,A1)
【文献】国際公開第2013/140445(WO,A1)
【文献】特開2002-186613(JP,A)
【文献】特開2012-192031(JP,A)
【文献】特表2009-542299(JP,A)
【文献】特表2022-504147(JP,A)
【文献】特表2014-507247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/06
G01T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮像装置のための散乱防止グリッドを提供する方法であって、
前記散乱防止グリッドの製品仕様に従って
、アディティブマニュファクチャリングプロセスにより当該散乱防止グリッドのグリッドパターンを形成するステップと、
前記グリッドパターン
に又は前記グリッドパターン内
に、
アディティブマニュファクチャリングプロセスによりいくつかの構造的修正部を形成するステップ
であって、前記いくつかの構造的修正部は、当該散乱防止グリッドがその意図された使用に従って前記放射線撮像装置の放射線源からの視認方向に視認される場合に、画像ベースで認識可能であるともに、固有の識別パターンで形成され、前記固有の識別パターンは、当該散乱防止グリッドが1つ又は複数の他の散乱防止グリッドから識別できるようにする固有の識別子を与えるように構成される、ステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記いくつかの構造的修正部は、前記グリッドパターンを形成する一つ又は
複数の壁及び/又は表面に
少なくとも部分的に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記いくつかの構造的修正部は、前記グリッドパターンを形成する一つ又は
複数の壁を局所的にシフトさせることによって少なくとも部分的に形成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記いくつかの構造的修正部は、前記グリッドパターンを形成する一つ又は
複数の壁の厚さの局所的変化を形成することによって少なくとも部分的に形成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記いくつかの構造的修正部は、前記グリッドパターンを形成する一つ又は
複数の壁において局所的突出部を形成することによって少なくとも部分的に形成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記いくつかの構造的修正部は、前記グリッドパターンにおける局所的材料没入部によって少なくとも部分的に形成される、請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グリッドパターンは、関心領域と、前記関心領域を少なくとも部分的に囲む周辺部とを備え、前記いくつかの構造的修正部は前記周辺部上に形成され、前記いくつかの構造的修正部のうちの個々のものの形状及び/又は寸法は前記識別パターンを形成するように変更される、請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記いくつかの構造的修正部は、画像データにおいて異なって見えるように前記グリッドパターンを形成するために使用される第1の材料と異なる第2の材料を局所的に適用することによって、少なくとも部分的に形成される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記識別パターンは、前記識別パターン内で冗長である少なくとも1つの部分パターンを含む、請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
特定の散乱防止グリッドを一つ又は
複数の他の
散乱防止グリッドから識別可能にするための方法であって、前記散乱防止グリッドは、
アディティブマニュファクチャリングプロセスによって製造され、前記方法は、
撮像装置によって
、前記特定の散乱防止グリッド
の画像データを捕捉するステップであって、前記散乱防止グリッドは、
その意図された使用に従って放射線源からの視認方向に視認される、ステップと、
データ処理ユニットによって、前記捕捉された画像データを処理して
、いくつかの構造的修正部によって形成される識別パターンを抽出するステップ
であって、前記散乱防止グリッドの製品仕様に従って前記アディティブマニュファクチャリングプロセスにより形成されたグリッドパターンに又はグリッドパターン内に、前記いくつかの構造的修正部が形成されている、ステップと、
前記データ処理ユニットによって、前記抽出された識別パターンに基づいて、前記特定の散乱防止グリッドに割り当てられる
固有の識別子データを生成するステップと、
前記特定の散乱防止グリッドに関連して前記
固有の識別子データを記録するステップと
を有する、方法。
【請求項11】
前記撮像装置は放射線撮像装置である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
放射線撮像装置用の散乱防止グリッドであって、
前記散乱防止
グリッドの製品仕様に従って
、アディティブマニュファクチャリングプロセスによ
り形成され
たグリッドパターンと、
前記散乱防止
グリッドが
その意図された使用に従って放射線源からの視認方向において視認され
る場合に、撮像装置によって認識
可能であるように構成され
た識別パターン
であって、前記識別パターンは、前記グリッドパターンに又は前記グリッドパターン内にアディティブマニュファクチャリングプロセスにより形成された前記いくつかの構造的修正部により形成される、識別パターンと
を有する、散乱防止グリッド。
【請求項13】
一つ又は
複数の他の
散乱防止グリッドから特定の散乱防止グリッドを識別するための装置であって、前記装置は、
データ処理ユニットであって、
前記特定の散乱防止グリッドの画像データを取得するステップであって、前記散乱防止グリッドは、その意図された使用に従って放射線源からの視認方向
に視認される、ステップと、
前記取得された画像データを処理して、前記散乱防止グリッドの製品仕様に従って形成されたグリッドパターンに又はグリッドパターン内に形成されたいくつかの構造的修正部によって形成される識別パターンを抽出する、ステップと、
前記抽出された識別パターンに基づいて、前記特定の散乱防止グリッドに割り当てられる
固有の識別子データを生成するステップと、
前記特定の散乱防止グリッドに関連して前記
固有の識別子データを記録するステップと
を実行するように構成される、データ処理ユニット
を有する、装置。
【請求項14】
前記データ処理ユニットはさらに、
固有のソフトウェア識別子データを有するソフトウェアアプリケーションプログラムデータを取得するステップと、
前記
固有のソフトウェア識別子データを、前記特定の散乱防止グリッドに割り当てられる
固有の識別子データと比較するステップと、
前記比較された識別子データの間に一致がない場合、前記ソフトウェアアプリケーション
プログラムデータへのアクセスをブロックし、前記比較された識別子データの間に一致がある場合、前記ソフトウェアアプリケーション
プログラムデータへのアクセスを許可するステップと
を実行するように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記データ処理ユニットはさらに、前記特定の散乱防止グリッドの識別子データに基づいて、前記特定の散乱防止グリッド専用の較正データセットを取得するように構成され、前記特定の散乱防止グリッドのために撮像システムを較正するように構成される、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
製品の活性化及び/又はライセンス検証のための、請求項12に記載の散乱防止グリッドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線撮影に関し、特に、放射線撮像装置のための散乱防止グリッドを提供するための方法、特定の散乱防止グリッドを1つ以上の中で識別可能にするための方法、放射線撮像装置のための散乱防止グリッド、及び1つ以上の中で特定の散乱防止グリッドを識別するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2017/0213116(A1)号は、3Dプリンタを用いてコンポーネントにデータ構造を挿入する方法を記載している。本方法は、構成要素に関連する少なくとも1つの構造パラメータを有するデータ構造を提供することと、データ構造をデータ構造を表す証印に変換することと、証印を含む構成要素を製造することとを含む。
【0003】
国際公開第2008/007309(A1)号は、本質的に放射線不透過性の粉末物質の選択的レーザー焼結の手段によって構築された少なくとも1つの構造要素を有する、電磁波放射、特にX線放射の選択的透過のためのグリッドを記載している。
【0004】
例えば、医療用及び/又は工業用放射線撮影において、放射線撮像装置の検出器に到達する放射線撮影露光において生成される放射線散乱を低減するために、散乱防止グリッドが使用される。それによって、散乱防止グリッドは、露光中に被検体と検出器との間に配置される。そのような散乱防止グリッドは、3Dプリントなどのアディティブマニュファクチャリングプロセス(additive manufacturing process、積層造形プロセス)を使用することによって製造することができる。製造中、製品識別を提供するために、レーザ彫刻の後処理段階が実行されてもよく、これは、3Dプリント製品上に固有のコードを追加する。この後処理段階は、全体的な製造時間を延長する時間を要するため、煩雑である。さらに、それは、製品誤差につながる可能性があり、製品損傷又は追加の欠陥を引き起こす可能性があり、全体的な生産歩留まりを低下させる。また、製造業者からエンドユーザまでの完全なサプライチェーンにわたる製品トレースは、透明性がなく、混乱やエラーにつながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、散乱防止グリッドの改善された製品識別の必要性があり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独立請求項によって定義される。有利な実施形態は、従属請求項によって定義される。
【0007】
第1の態様によれば、放射線撮像装置用の散乱防止グリッドを提供するための方法が提供される。方法は、
アディティブマニュファクチャリングプロセスによって、前記提供される散乱防止グリッドの製品仕様に従ってグリッドパターンを形成するステップと、
前記アディティブマニュファクチャリングプロセスによって、前記散乱防止グリッドが、前記放射線撮像装置の放射線源からの視認方向においてその意図された使用に従って視認されるとき、いくつかの構造的修正部を画像ベースで認識可能にする態様で、前記グリッドパターンにおいて、又は前記グリッドパターン内で、及び前記提供される散乱防止グリッドを一つ又はそれより多くの他のものの間で識別可能にするように固有の識別子を生成する固有の識別パターンにおいて、前記いくつかの構造的修正部を形成するステップと
を有する。
【0008】
このように、明確に定義された固有の識別子は、いくつかの構造的修正部からなるウォーターマークの種類又は明確に定義されたウォーターマークとも呼ばれ得る。これは、たとえこれらが同じタイプのものであっても、特定の散乱防止グリッドが1つ又は複数の他のもの中で一意に識別されることを可能にする。透かしは、構造的に、すなわち物理的に、散乱防止グリッド構造内に直接埋め込むことができる。有利には、これは実際の散乱防止グリッドの製造プロセス中に直接実行され、それによって、後処理された製品コードなどによって製品を識別可能にするための、レーザ彫刻などの追加の後処理段階を省略する。それによって、いくつかの構造的修正部は、散乱防止グリッドの機能性又は動作を妨害しないように配置及び/又は形成される。さらに、散乱防止グリッドはその意図された使用に対応する位置及び/又は方向、すなわち、撮像操作のために準備された位置及び/又は方向でさえ、方向、特に観察方向から識別され得る。これは、散乱防止グリッドがそれ自体で使用されることになっている、又はそれを伴う放射線撮像装置によってさえ行われてもよい。
【0009】
本明細書で使用される場合、アディティブマニュファクチャリングプロセスは、散乱防止グリッドを製造するのに適した任意の3次元(3D)プリント技術として広く理解され得る。例えば、アディティブマニュファクチャリングプロセスは、直接金属レーザ焼結(DMLS)、選択的レーザ溶融(SLM)、選択的レーザ焼結(SLS)、電子ビーム溶融(EBM)などであってもよい。これは、本明細書において限定されない。
【0010】
さらに、本明細書で使用するとき、グリッドパターンはxを外縁とし、yを別の外縁とする平面、例えばx―y平面内に二次元的に(2D)延在し、それに垂直な方向、例えばz方向の厚さを有する。グリッドパターンは例えば、複数の交互の平行なストリップ又は壁を含むことができ、製造材料は例えば、タングステン、鉛など、及びプラスチック、炭素繊維、アルミニウム、紙などの放射線透過性物質から選択することができる。(1つ又は複数の)外縁は、散乱防止グリッドの周囲とも呼ばれ得る。
【0011】
本明細書で使用するとき、製品仕様は散乱防止グリッドの構造、例えば、寸法、壁の装置、材料の選択などに関する情報を含むことができる。それによって、製品仕様は、特定のタイプの散乱防止グリッド及び/又は特定の放射線画像撮像装置専用の散乱防止グリッドを定義することができる。
【0012】
さらに、本明細書で使用されるように、いくつかの構造的修正部は製品仕様に従って全体的に製造される実際のグリッドパターン内の対応するいくつかの位置における、いくつかの意図された構造的修正部とも呼ばれ得、意図されたいくつかの構造的修正部はたとえば、そのわずかな修正のみのために、散乱防止グリッドの指定された機能に対して全く又はほとんど影響を及ぼさないか、又は、散乱防止グリッドに対する影響が特定の散乱防止グリッドに関連する、対応する較正データなどによって補償され得る。言い換えれば、いくつかの構造的修正部は意図的であり、ターゲットとされ、生成されるべき必要な数の固有の組み合わせ、固有のコード、又は固有の識別子を作成することを可能にし、及び/又は固有の識別パターンの信頼できる視覚認識を確実にするものとして理解され得る。
【0013】
本明細書で使用されるように、固有の識別パターンは、ある種の透かしとして理解され得、好ましくは特定の散乱防止グリッドと1対1の対応で、固有の識別子を作成する。固有の識別パターンは、少なくともその機能において、QRコードなどと比較可能であり得る。なお、固有の識別パターンは例えば、適切なコードリーダ、光学式コードリーダ、第4の態様に係る装置、放射線画像撮影装置等を利用して読み出すことができる。
【0014】
なお、グリッドパターンの形成といくつかの構造的修正部の形成とは、アディティブマニュファクチャリングプロセスの能力に応じて、時間的に、交互に、又は順次、同時に行われてもよい。
【0015】
さらに、グリッドパターンの形成及びいくつかの構造的修正部の形成は必ずしも同じアディティブマニュファクチャリングプロセスを使用する必要はないが、任意選択的に、各アディティブマニュファクチャリングプロセスについて、他とは異なる別個の処理を使用することができることに留意されたい。例えば、DMLSは一方の形成プロセスに使用することができ、選択的レーザ焼結を他方に使用することができ、任意の公知のアディティブマニュファクチャリングプロセスが好適であり得、ここで、これは、本明細書において限定されない。
【0016】
本明細書で使用される放射線撮像装置は、放射線源を使用する撮像装置、及び/又はX線、ガンマ線、又は同様の電離放射線及び非電離放射線を使用してオブジェクトの内部形態を見るか又は図示する撮像技術として広く理解され得る。例えば、放射線撮像装置は医用放射線撮影において、例えば診断及び/又は治療目的のために、工業用放射線撮影において、空港警備において、又は同様のものにおいて使用されてもよい。これは、本明細書において限定されない。
【0017】
さらに、各識別パターンはいくつかの修正から形成される固有の組み合わせを有するので、識別パターンは他のものと同じではなく、少なくとも1つの組み合わせ点、すなわち、少なくとも1つの構造的修正部において他の全てとは異なり、したがって一意に識別可能であることに留意されたい。それによって、いくつかの修正の各々は例えば、その位置、寸法、形状、及び/又はタイプなどにおいて変更され得る。
【0018】
一実施形態によれば、いくつかの構造的修正部は、グリッドパターンを形成する1つ以上の壁及び/又は表面にいくつかの構造的修正部の少なくとも一部を形成することによって認識可能に形成されてもよい。例えば、いくつかの構造的修正部は壁厚の局所変動、壁位置の局所変動、壁の上部又は底部における明確な突出部の局所的な追加、グリッド構造からの小さい明確な構造の局所的な除去、小さい明確な表面修正、例えば、壁の粗さなどの局所的な適用、明確に定義された形状及び寸法を有する特定の構造要素、例えば、ピンホール、十字線などの局所的な適用、例えば、散乱防止グリッドが二次元的に延在する平面内を走る散乱防止グリッドの円周エッジ部、及びグリッドパターンを形成するために使用される第1の3D材料とは異なる量の第2の3D材料の局所的な適用のうちの1つ又は複数によって形成され得、グリッドパターンに対する第2の3D材料の量の割合は 最初の3D材料の量の割合より少ない。このようにして、散乱防止グリッドの全体的な機能は、いくつかの構造的修正部によって乱されず、これらの修正オプションはすべて、後処理を必要とすることなく、形成プロセス中に適用することができる。
【0019】
この説明内で、壁は単一の壁であってもよく、グリッドパターンは複数の壁によって形成されることに留意されたい。さらに、いくつかの構造的修正部の各々は、同時に2つ以上の壁に形成されてもよい。さらに、本明細書で使用するとき、壁は隔壁とも呼ばれることがあり、隔壁は、グリッドパターンをより小さいものに形成するキャビティ又は構造を分割する壁として理解されるべきである。
【0020】
一実施形態では、いくつかの構造的修正部がグリッドパターンを形成する1つ又は複数の壁を局所的にシフトさせることによって、少なくとも部分的に形成され得る。例えば、壁の一部分はこれが視覚的に認識可能であるように、隣接する部分と整列しないようにされてもよい。このようにして、散乱防止グリッドの全体的な機能は、いくつかの構造的修正部によって乱されず、これらの修正オプションはすべて、後処理を必要とすることなく、形成プロセス中に適用することができる。
【0021】
一実施形態によれば、いくつかの構造的修正部は、グリッドパターンを形成する1つ又は複数の壁の厚さの局所変動を形成することによって、少なくとも部分的に形成され得る。例えば、追加量の材料は、好ましくは対応する位置でわずかに厚くすることができる。好ましくは、追加量の材料が2つの壁の間の角に配置されてもよい。このようにして、散乱防止グリッドの全体的な機能は、いくつかの構造的修正部によって乱されず、これらの修正オプションはすべて、後処理を必要とすることなく、形成プロセス中に適用することができる。
【0022】
一実施形態では、いくつかの構造的修正部がグリッドパターンを形成する1つ以上の壁にローカル突出部を形成することによって少なくとも部分的に形成される。例えば、突出部は、グリッドパターンが二次元的に延在する平面内に延在してもよい。任意選択的に、突出部は、2つ以上の壁を横切って延在してもよい。このようにして、散乱防止グリッドの全体的な機能は、いくつかの構造的修正部によって乱されず、これらの修正オプションはすべて、後処理を必要とすることなく、形成プロセス中に適用することができる。
【0023】
一実施形態によれば、いくつかの構造的修正部は、グリッドパターンにおける局所材料没入部によって少なくとも部分的に形成される。例えば、材料没入部は、壁によって形成されるエッジ、コーナーなどに配置されてもよい。このようにして、散乱防止グリッドの全体的な機能は、いくつかの構造的修正部によって乱されず、これらの修正オプションはすべて、後処理を必要とすることなく、形成プロセス中に適用することができる。
【0024】
一実施形態では散乱防止グリッド及び/又はグリッドパターンが関心領域と、関心領域を少なくとも部分的に取り囲む周辺部とを備えてもよく、いくつかの構造的修正部は周辺部上に形成されてもよく、いくつかの構造的修正部のうちの個々のもの形状及び/又は寸法は識別パターンを形成するように変更される。
【0025】
本明細書で使用される場合、関心領域は、検出器に到達する放射線撮影露光のために定期的に使用される領域又は領域として理解され得る。この点に関して、散乱防止グリッドの関心領域は、意図された放射線撮影露光に対するアクティブ領域と呼ばれることもある。同様に、散乱防止グリッドの境界、エッジ等であってもよい周囲は、放射線撮影露光を通常意図していないため、非アクティブ領域として理解されてもよい。例えば、いくつかの構造的修正部はピンホール又は断面ヘアパターンを形成することができ、いくつかの構造的修正部の一部又は全部は、形状及び/又は寸法が互いに異なる。好ましくは、いくつかの構造的修正部がグリッドパターンの活性領域、すなわち関心領域の外側に位置し得る。例えば、それらは、グリッドパターンの周りを走る円周エッジ部に配置されてもよい。さらに、構造的修正部は、例えばX線焦点のサイズ、位置、及び/又は変位の測定のためにそれらを使用するために意図的に配置、成形、及び/又は寸法決めされてもよい。このようにして、散乱防止グリッドの全体的な機能は、いくつかの構造的修正部によって乱されず、これらの修正オプションはすべて、後処理を必要とすることなく、形成プロセス中に適用することができる。さらに、識別パターンは、例えば焦点スポット測定に使用することもできる。
【0026】
一実施形態によれば、グリッドパターンを形成するために使用される第1の材料に異なる第2の材料を局所的に適用して、画像データにおいて異なるように見えるようにすることによって、いくつかの構造的修正部を少なくとも部分的に形成することができる。なお、グリッドパターンは、第1の材料以外の1つ以上の他の材料を用いて形成されてもよいので、これは単一の材料に限定されない。第2の材料は、好ましくは明確に定義された、光学的又は放射線学的画像特性の認識可能な変化を提供するように選択されてもよい。第2の材料は例えば、光反射アルミニウム、又は例えば、多数のグリッド画素に配置された非X線吸収ポリマーであってもよい。このようにして、散乱防止グリッドはX線撮影装置、例えばX線装置によって直接読み出すことができ、このX線撮影装置には散乱防止グリッドが設けられている。さらに、これらの修正はグリッドパターンの外側構造を変更することなく、散乱防止グリッドに埋め込むことができ、光学画像が使用される場合であっても、第2の材料は、それから突出することなく表面付近に適用されてもよい。
【0027】
一実施形態では、識別パターンが識別パターン内で冗長である少なくとも1つの部分パターンを含むことができる。例えば、識別パターンは、少なくとも1つの2回又は4回対称性などを含むことができる。これは、画像が大きく異なる露光条件、例えば、低いX線強度、大きな焦点、システムの振動又は動きなどの下で取得された場合に、それを読み出すために使用されるX線画像又は光学画像内の識別パターンの検出可能性を高める。
【0028】
第2の態様によれば、1つ以上の中で特定の散乱防止グリッドを識別可能にするための方法が提供され、散乱防止グリッドは、アディティブマニュファクチャリングプロセスによって製造される。本方法は、第1の態様による方法によって製造された散乱防止グリッドに適用することができる。本方法は、
撮像装置によって、画像データにおける特定の散乱防止グリッドを捕捉するステップと、
データ処理ユニットによって、前記捕捉された画像データを処理して、前記散乱防止グリッドの製品仕様に従って前記アディティブマニュファクチャリングプロセスによって形成されるグリッドパターンに加えて形成されるいくつかの構造的修正部によって形成される識別パターンを抽出するステップと、
前記データ処理ユニットによって、前記抽出された識別パターンに基づいて、前記特定の散乱防止グリッドに割り当てられる固有の識別子データを生成するステップと、
前記特定の散乱防止グリッドに関連して前記固有の識別子データを記録するステップと
を有する。
【0029】
例えば、画像データの取り込みは、散乱防止グリッドの厚さ方向に沿って、例えば、散乱防止グリッドが二次元的に延在する平面に垂直な方向に沿って、観察方向に実行されてもよい。
【0030】
さらに、捕捉された画像データの処理は、特徴又はパターン認識などの1つ又は複数の画像分析技術を含むことができる。
【0031】
例えば、識別子データの生成は、製品コード割り当てなどに基づいてランダムであってもよい。
【0032】
さらに、固有の識別子データの記録は、データセットとして記憶媒体に記憶されてもよい。また、メモリやデータベース等に格納されていてもよい。
【0033】
一実施形態によれば、撮像装置は、放射線撮像装置であってもよい。放射線撮像装置は放射線源と検出器とを備えてもよく、散乱防止グリッドは意図されたように使用されるとき、又は放射線撮像装置内でもしくは放射線撮像装置と共に使用されるときに、放射線源と検出器との間に配置される。例えば、いくつかの構造的修正部は、X線及び/又は光学的特性の明確な変化を提供する第2の3Dプリント材料のローカルアプリケーションで少なくとも部分的に形成されてもよく、第2の3Dプリント材料は例えば、光反射アルミニウム、又は例えば、多数の散乱防止グリッド画素内に位置する非X線吸収ポリマーであってもよい。このようにして、識別パターンは、それが既にインストールされている、仕様に従って意図された装置において読み出すことができる。
【0034】
第3の態様によれば、放射線撮像装置用の散乱防止グリッドが提供される。散乱防止グリッドは、
散乱防止グリッドの製品仕様に従ってアディティブマニュファクチャリングプロセスによって形成されるグリッドパターンと、 散乱防止グリッドが放射線源からの視線方向においてその意図された使用に従って見られるときに撮像装置によって認識可能であるように構成され、アディティブマニュファクチャリングプロセスによってグリッドパターンに加えて形成されるいくつかの構造的修正部によって形成される識別パターンとを含む。
【0035】
例えば、散乱防止グリッドは、第1の態様による方法を実施することによって製造することができる。さらに、散乱防止グリッドは、第2の態様による方法を適用することによって、及び/又は第4の態様による装置を使用することによって、その固有の識別子を取得するために読み出されるように構成され得る。
【0036】
散乱防止グリッドは第1の態様に関して上述したように、少なくとも大部分が対応する技術的効果を提供する。
【0037】
第4の態様によれば、1つ以上の他のもの中から特定の散乱防止グリッドを識別するための装置が提供される。例えば、装置は第1の態様の方法によって生成された識別パターンを読み出し、第2の態様による方法を実行し、第3の態様による散乱防止グリッドに適用されるように構成され得る。装置は、
データ処理ユニットであって、
前記特定の散乱防止グリッドの画像データを取得するステップであって、前記散乱防止グリッドは、その意図された使用に従って放射線源からの視認方向で視認される、ステップと、
前記取得された画像データを処理して、前記散乱防止グリッドの製品仕様に従って形成される、グリッドパターンに加えて形成されるいくつかの構造的修正部によって形成される識別パターンを抽出する、ステップと、
前記抽出された識別パターンに基づいて、前記特定の散乱防止グリッドに割り当てられる固有の識別子データを生成するステップと、
前記特定の散乱防止グリッドに関連して前記識別子データを記録するステップと
を実行するように構成される、データ処理ユニット
を有する。
【0038】
例えば、データ処理ユニットは、プロセッサなどの任意の計算手段であってもよい。
【0039】
画像データは、光学撮像装置、例えばカメラなどの撮像装置、又は放射線装置、例えばX線装置によって提供されてもよい。例えば、画像データは、光学画像データ、放射線画像などであってもよい。
【0040】
装置は、第2の態様を参照して上述したものに少なくとも大部分が対応する技術的効果を提供するので、ここではこれを繰り返さない。
【0041】
一実施形態によれば、前記データ処理ユニットはさらに、
特定の散乱防止グリッド専用で、固有のソフトウェア識別子データを有するソフトウェアアプリケーションプログラムデータを取得するステップと、
前記固有のソフトウェア識別子データを、前記特定の散乱防止グリッドに割り当てられる固有の識別子データと比較するステップと、
前記比較された識別子データの間に一致がない場合、前記ソフトウェアアプリケーションへのアクセスをブロックし、前記比較された識別子データの間に一致がある場合、前記ソフトウェアアプリケーションへのアクセスを許可するステップと
を実行するように構成される。
【0042】
例えば、ソフトウェアアプリケーションプログラムは特定の散乱防止グリッドと組み合わせてのみ動作するように意図及び/又は構成することができ、これは、異なる固有の識別パターンを有する散乱防止グリッドと組み合わせて動作すること、又は全く同じものがないことが許可されることを意味する。このようにして、ユーザアクセス保護が提供される。
【0043】
一実施形態では、データ処理ユニットが特定の散乱防止グリッドの識別子データに基づいて、特定の散乱防止グリッド専用の較正データセットを取得し、特定の散乱防止グリッドのために放射線撮像システムを較正するように構成されてもよい。
【0044】
第5の態様は、製品活性化のための第3の態様による散乱防止グリッドの使用に関する。言い換えれば、散乱防止グリッドの固有の識別パターンは、ライセンス検証プロシージャを可能にするプロダクトキーとしても理解され得る。このようなプロシージャは、第4の態様を参照して上述されている。したがって、別の態様は、ライセンス検証プロシージャにおける第3の態様による散乱防止グリッドの使用に関する。起動される製品は、第4の態様を参照して上述したソフトウェアアプリケーションであってもよい。
【0045】
第6の態様によれば、プロセッサによって実行されると、第1又は第2の態様の方法を実行するように、及び/又は第4の態様による装置又はシステムを制御するように構成されたコンピュータプログラム要素が提供される。
【0046】
第7の態様によれば、第6の態様によるコンピュータプログラム要素を記憶又は搬送するコンピュータ可読記憶又は伝送媒体が提供される。
【0047】
上述の実施形態は、関連する態様にかかわらず、互いに組み合わせることができることに留意されたい。したがって、方法は他の態様の装置及び/又はシステムの構造的特徴と組み合わされてもよく、同様に、装置及びシステムは、互いの特徴と組み合わされてもよく、方法に関して上述した特徴と組み合わされてもよい。
【0048】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【0049】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】一実施形態による散乱防止グリッドの概略平面図又は上面図を示す。
【
図2】例示的な形状、寸法、配向などを有する多数の構造要素を含む、一実施形態による散乱防止グリッドの断面を概略側面図で示す。
【
図3】
図2の散乱防止グリッドの断面を概略平面図又は上面図で示す。
【
図4】一実施形態による、散乱防止グリッドを概略斜視図で示す。
【
図5】一実施形態による、散乱防止グリッドを提供するために使用される例示的な3Dプリント装置を示す。
【
図6】一実施形態による、散乱防止グリッドと、散乱防止グリッドを識別するための装置とを利用する製品識別処理を概略ブロック図で示す。
【
図7】一実施形態による、放射線撮像装置のための散乱防止グリッドを提供するための方法をフローチャートで示す。
【
図8】一実施形態による、特定の散乱防止グリッドを、1つ又は複数の中で識別可能にするための方法をフローチャートで示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、一実施形態による例示的な散乱防止グリッド100を概略平面図又は上面図で示す。例えば、散乱防止グリッド100は、X線装置、ガンマ線装置、又は他の電離放射線利用装置などの放射線撮像装置の検出器に到達する放射線散乱の量を制限するために使用されてもよい。その意図された使用において、散乱防止グリッド100は、好ましくは放射線源と放射線撮像装置の検出器との間に配置及び/又は配置される。特に、散乱防止グリッドは、放射線源から撮像される被検体の反対側、及び被検体と検出器との間に配置することができる。
【0052】
散乱防止グリッド100は放射線、例えば、X線、タングステン、鉛などの吸収材料、及び放射線非吸収性、例えば、放射線透過性の材料、例えば、プラスチック、炭素繊維、アルミニウム、紙などで作られた、隔壁とも呼ばれる複数の平行な壁によって形成されたグリッドパターン110を備える。グリッドパターン110は、複数のグリッド画素を形成する。
【0053】
以下でより詳細に説明するように、グリッドパターン110は、散乱防止グリッド100の製品仕様に従ってアディティブマニュファクチャリングプロセスによって形成される。それによって、1つ又は複数の散乱防止グリッド100は第1の製品仕様に従って形成され得、1つ又は複数の散乱防止グリッド100は少なくとも1つのさらなる、第2の、第3のなどの製品仕様に従って形成され得、共通の製品仕様に従って製造されたすべての散乱防止グリッド100は互いから区別可能であり、ならびに1つ又は複数のさらなる製品仕様に従って製造されたすべての散乱防止グリッド100から区別可能であることが望ましい。例えば、製品仕様は散乱防止グリッド100の構造に関する情報、例えば、寸法、壁の装置、材料の選択などを含むことができる。それによって、製品仕様は、特定のタイプの散乱防止グリッド及び/又は特定の放射線画像撮像装置専用の散乱防止グリッドを定義することができる。
【0054】
さらに、散乱防止グリッド100は、グリッドパターン110に加えて形成されたいくつかの、好ましくは複数の、又は多数の構造的修正部121によって形成された識別パターン120を備える。言い換えれば、いくつかの、例えば、サブセット、又はいくつかの構造的修正部121のすべてが、一緒に追加の識別パターン120を形成する。少なくともいくつかの実施形態では、識別パターン120が
図1に例示的に示されるように、グリッドパターン110内に位置し得る。識別パターン120は以下でより詳細に説明するように、散乱防止グリッド100が放射線源からの視線方向におけるその意図された使用に従って見られるときに、撮像装置によって認識可能であるように構成される。
【0055】
図1はほんの一例として、同一に示された点によるいくつかの構造的修正部121(それらのうちのいくつかのみが、明確にするために参照符号121によって示される)を示すが、いくつかの構造的修正部121のうちの1つ又は複数、又はそれぞれも、互いに構造的に異なり得ることに留意されたい。さらに、いくつかの構造的修正部121は同じ壁上に配置されてもよく、そうでなければ、結果として生じる識別パターン120が一意であるという条件で、自由に設定可能であってもよい。言い換えれば、特定の1つの散乱防止グリッド100に提供される各識別パターン120はいくつかの修正121から形成される
固有の組み合わせを有し、その結果、識別パターン120は他のものと同じではないが、少なくとも1つの組み合わせ点、すなわち、少なくとも1つの構造的修正部121において他のすべてとは異なり、したがって、一意に識別可能である。それによって、いくつかの修正121の各々は例えば、その位置、寸法、形状、及び/又はタイプなどにおいて変更され得る。
【0056】
さらに、以下でより詳細に説明されるように、識別パターン120及び/又はいくつかの構造的修正部121は基本製造プロセスによって形成され、基本製造プロセスはグリッドパターン110を形成するためのプロセスと同じであってもよく、又はそれとは異なっていてもよい。例えば、グリッドパターン110は第1のタイプのアディティブマニュファクチャリングプロセスによって形成されてもよく、識別パターン120は第2のタイプのアディティブマニュファクチャリングプロセスによって形成されてもよく、第1及び第2のタイプは互いに同一又は異なり得る。さらに、少なくともいくつかの実施形態では、識別パターン110がグリッドパターン110を形成する間、すなわち、第1のタイプのアディティブマニュファクチャリングプロセスを実行する間に形成され得る。
【0057】
識別パターン120はたとえこれらが共通の基礎となる製品仕様に従って製造されたとしても、提供されるべき散乱防止グリッドを他の1つ以上の間で識別可能にするための固有の識別子を作成するように、製造及び/又は提供される各散乱防止グリッド100について一意であることに留意されたい。言い換えれば、識別パターン120は、関連する散乱防止グリッド100との1対1の対応を記録することを可能にする固有の識別子、例えば透かしとして理解され得る。識別パターン120は、物理的散乱防止グリッド100と、識別パターン120又はその識別子を示す電子記録との両方において、読み出され、電子的に処理され得る。
【0058】
以下ではいくつかの構造的修正部121の設計に関する例示的な実施形態を以下に説明するが、これらの実施形態の各々は識別パターン120を形成するために、単独で形成されてもよく、又は他の一つ又は複数と組み合わせられてもよい。
【0059】
任意選択的に、いくつかの構造的修正部121は、グリッドパターン110を形成する1つ以上の壁を局所的にシフトさせることによって少なくとも部分的に形成される。例えば、壁の一部分はこれが視覚的に認識可能であるように、隣接する部分と整列しないようにされてもよい。
【0060】
任意選択的に、いくつかの構造的修正部121は、グリッドパターンを形成する1つ以上の壁の厚さの局所的変化を形成することによって少なくとも部分的に形成される。例えば、追加量の材料は、好ましくは対応する位置でわずかに厚くすることができる。好ましくは、追加量の材料が2つの壁の間の角に配置されてもよい。
【0061】
任意選択的に、いくつかの構造的修正部121は、グリッドパターン110におけるローカル材料没入部によって少なくとも部分的に形成される。例えば、材料没入部は、壁によって形成されるエッジ、コーナーなどに配置されてもよい。
【0062】
任意選択的に、識別パターン120は、識別パターン内で冗長である少なくとも1つの部分パターン、例えば構造的修正部121のサブセットを含む。すなわち、構造的修正部121の少なくともサブセットの1つ又は複数の組合せが、少なくとも2回、3回、4回などで形成される。例えば、識別パターンは、少なくとも1つの2回又は4回対称性などを含むことができる。
【0063】
さらに、任意選択的に、いくつかの構造的修正部110は、画像データにおいて異なるように見えるようにグリッドパターンを形成するために使用される第1の材料とは異なる第2の材料を局所的に適用することによって、少なくとも部分的に形成される。第2の材料は、好ましくは明確に定義された、光学的又は放射線学的画像特性の認識可能な変化を提供するように選択されてもよい。第2の材料は例えば、光反射アルミニウム、又は例えば、多数のグリッド画素に配置された非X線吸収ポリマーであってもよい。
【0064】
図2は、例示的な実施形態による散乱防止グリッド100の少なくとも一部分を、ある種の部分断面で、概略側面図で示す。特に、
図2はいくつかの構造的修正部121の設計に関連するさらなる例示的な実施形態を示し、これらの実施形態の各々は単独で形成されてもよく、又は他のものうちの一つ又は複数と組み合わせられてもよく、及び/又は識別パターン120を形成するために、
図1を参照して上で説明されたものと組み合わせられてもよい。構造的修正部121の設計は本明細書に記載されるように、形状、寸法、方向、位置、突出部又は没入部のパターン、材料などに関して変更されてもよい。
【0065】
さらに、
図2は放射線撮像装置のピクセルアレイを有する例示的な検出器Dを示し、散乱防止グリッド100の好ましい用途であり、
図2のシート平面を参照する検出器Dは、構造的修正部121の下に配置される。さらに、
図2は構造的修正部121の例示的な方向、幾何学的形状、形状などを示す。
【0066】
同様に、
図3は、
図2に示すような散乱防止グリッド100の断面を概略側面図で概略平面図又は上面図で示す。好ましくは、
図2及び
図3が同じ1つ又は複数の壁を指し得る。
図3を参照すると、いくつかの構造的修正部121の設計は本明細書に記載されるように、形状、寸法、方向、位置、突出部又は没入部のパターン、材料などに関して変更され得る。それによって、これらの実施形態の各々は単独で形成されてもよく、又は他の一つ又は複数と組み合わせられてもよく、及び/又は識別パターン120を形成するために、
図1及び2を参照して上記で説明されたものと組み合わせられてもよい。
【0067】
さらに、
図3は、
図3のシート面を参照して構造的修正部121の下に配置された検出器Dのピクセルアレイも示す。
【0068】
図2及び/又は
図3によれば、さらに任意選択的に、いくつかの構造的修正部121は、グリッドパターン110を形成する1つ又は複数の壁にローカル突出部を形成することによって少なくとも部分的に形成される。例えば、そのような突出部は、グリッドパターンが二次元的に延在する平面内に延在してもよい。任意選択的に、そのような突出部は、2つ以上の壁を横切って延在してもよい。例として、1つ又は複数のローカル突起、すなわち、この実施形態によるいくつかの構造的修正部はグリッドパターン110の壁の中、上、又は底部に位置する、好ましくは小さい、明確に画定された突起として形成されてもよく、
図2は、そのうちの1つ又は複数が選択されても上部異なる設定を例示する。
【0069】
図4は、散乱防止グリッド100の例示的な実施形態を概略斜視図で示す。この実施形態では、散乱防止グリッド100及び/又はグリッドパターン100が
、関心領域111及び
該関心領域111を少なくとも部分的に囲む周囲112を含む。これにより、周囲112上、すなわち関心領域111の外側、例えばグリッドパターン110の周りを走る円周エッジ上に位置するいくつかの構造的修正部121が形成される。いくつかの構造的修正部121のうちの個々のもの形状及び/又は寸法などは、
固有の態様で識別パターン120を形成するように変更される。例えば、いくつかの構造的修正部121はピンホール又は十字線パターンを形成することができ、いくつかの構造的修正部121のうちのいくつか又はすべては、形状及び/又は寸法が互いに異なる。
【0070】
さらに、少なくともいくつかの実施形態では、構造的修正部121が例えばX線焦点のサイズ、位置、及び/又は変位の測定のためにそれらを使用するために、意図的に配置、成形、及び/又は寸法決めされてもよい。
【0071】
図5は、上述のように散乱防止グリッド100を製造するために使用され得る例示的な付加的な製造装置200、例えば3Dプリント装置を示す。付加的な製造装置200は直接金属レーザ焼結(DMLS)装置として例示的に示されているが、代替的に、選択的レーザ溶融(SLM)、選択的レーザ焼結(SLS)、電子ビーム溶融(EBM)などのための装置として構成され得ることに留意されたい。これは、本明細書において限定されない。上述のように、グリッドパターン110及びいくつかの構造的修正部121は、異なる
アディティブマニュファクチャリングプロセス又は技術を使用することによって形成され得、その結果、2つ以上の異なる付加的な製造装置200が散乱防止グリッド100を提供するために使用され得る。
【0072】
付加的な製造装置200は例えば、スキャナシステム220、粉末送達システム230、及び粉末形成システム240と結合されたレーザ210を備えてもよい。異なる構成の付加的な製造装置は当技術分野で知られており、装置の構成は、本明細書に記載の目的に適した方法で選択することができる。
【0073】
図6は、上述のような散乱防止グリッド100と、散乱防止グリッド100を識別するための装置300とを利用する、一実施形態による製品識別プロセス又は方法を概略ブロック図で示す。
【0074】
装置300は、1つ又は複数の他の中で、同じタイプ又は異なるタイプの何れかの特定の散乱防止グリッド100を識別するように構成される。例えば、装置300は、本明細書で説明されるように生成された識別パターン120を読み出すように構成される。装置300は特定の散乱防止グリッド100の画像データを取得するように構成された少なくともデータ処理ユニット310を備え、「特定」は識別パターン120と対応する散乱防止グリッド100との間で1対1の対応がなされることを理解されたい。データ処理ユニット310は取得された画像データを処理して、取得された画像データから、いくつかの構造的修正部121によって形成された識別パターン120を抽出するようにさらに構成される。さらに、データ処理ユニット310は、抽出された識別パターン120に基づいて、特定の散乱防止グリッド100に割り当てられた対応する固有の識別子データを生成するように構成される。データ処理ユニット310は特定の散乱防止グリッドに関連する識別子データを、例えば、メモリ320、データベース、サーバなどに電子的に記録するようにさらに構成される。記録された識別子データは、製品識別、製品トレース、製品著作権保護、製品サービスなどのために使用され得る。
【0075】
画像データは光学撮像装置、例えば、カメラなどの撮像装置330、又は放射線撮影及び/又は放射線学的装置、例えば、X線装置などによって提供され得る。したがって、画像データは、光学画像データ、放射線画像などであってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、撮像装置330が放射線源及び検出器を備える放射線撮像装置であってもよい。それによって、その意図された使用において、散乱防止グリッド100は、好ましくは放射線源(図示せず)と検出器との間に配置及び/又は配置される。特に、散乱防止グリッド100は、放射線源から撮像される被検体の反対側、及び被検体と検出器との間に配置することができる。そして、この意図された使用において、すなわち、そのように配置されるとき、散乱防止グリッド100は、本明細書に記載されるように識別され得る。放射線撮像装置自体によってさえも、それが使用されることが意図されるか、又は使用されることが意図される。任意選択的に、いくつかの構造的修正部121はX線及び/又は光学特性の明確な変化を提供する第2の3Dプリント材料の局所適用によって少なくとも部分的に形成されてもよく、第2の3Dプリント材料は例えば、光反射アルミニウム、又は、例えば、いくつかの散乱防止グリッド画素内に位置する非X線吸収ポリマーであってもよい。
【0076】
任意選択で、データ処理ユニット310は、特定の散乱防止グリッド100専用の、固有のソフトウェア識別子データを含むソフトウェアアプリケーションプログラムデータ340を取得するようにさらに構成される。さらに、データ処理ユニット310は、固有のソフトウェア識別子データを、固有の散乱防止グリッド100に割り当てられた一意の識別子データと比較するように構成される。さらに、データ処理ユニット310は比較された識別子データ間に一致がない場合、ソフトウェアアプリケーションへのアクセスをブロックするように、又は比較された識別子データ間に一致がある場合、ソフトウェアアプリケーションへのアクセスを許可するように構成される。
【0077】
さらに任意選択で、データ処理ユニット310は、特定の散乱防止グリッドの識別子データに基づいて、特定の散乱防止グリッド専用の較正データセット350を取得するようにさらに構成され、特定の散乱防止グリッド用の放射線撮像システムを較正するように構成される。
【0078】
言い換えれば、散乱防止グリッドの固有の識別パターンは、ライセンス検証手順、及び/又は補償又は較正プロシージャを可能にするプロダクトキーとしても理解され得る。
【0079】
図7は、散乱防止グリッド100を提供するための方法400をフローチャートで示す。本方法は、上述のように装置200を使用することによって実行され得る。方法400は、以下のステップを含む。
【0080】
ステップS410において、グリッドパターン110はアディティブマニュファクチャリングプロセスによって形成され、グリッドパターン110は提供されるべき散乱防止グリッド100の対応する製品仕様に従って形成される。
【0081】
ステップS420において、いくつかの構造的修正部121が同じ又は別のアディティブマニュファクチャリングプロセスによって、いくつかの構造的修正部121を画像ベースで認識方法するように、及び固有の識別パターン120において、グリッドパターン110内又はグリッドパターンにおいて形成され、それによって、提供されるべき散乱防止グリッド100を他の1つ又は複数のもの中で識別方法するための固有の識別子を作成する。
【0082】
図8は、特定の1つの散乱防止グリッド100を1つ以上の他のもの中で識別可能にするための方法500をフローチャートで示す。本方法は、上述のように装置300によって実行され得る。方法は、以下のステップを有する。
【0083】
ステップS510は、撮像装置330によって、画像データ内の特定の散乱防止グリッド100を捕捉することを有する。
【0084】
ステップS520は、データ処理ユニット310によって、取り込まれた画像データを処理して、散乱防止グリッド100の製品仕様に従ってアディティブマニュファクチャリングプロセスによって形成される、グリッドパターンに加えて形成されたいくつかの構造的修正部によって形成された識別パターン320を抽出することを有する。
【0085】
ステップS530はデータ処理ユニット310によって、抽出された識別パターン120に基づいて、特定の散乱防止グリッド100に割り当てられた固有の識別子データを生成することを有する。
【0086】
ステップS540は例えば、メモリ320、データベース、サーバなどに、特定の散乱防止グリッドに関連する固有の識別子データを記録することを有する。
【0087】
本発明の実施形態は、異なる主題を参照して説明されることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態は方法タイプの請求項を参照して説明され、他の実施形態は装置タイプの請求項を参照して説明される。しかしながら、当業者は別段の通知がない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴間の任意の組み合わせも、本出願で開示されると見なされる、上記及び以下の説明から集まるのであろう。しかしながら、全ての特徴を組み合わせて、特徴の単純な合計以上の相乗効果を提供することができる。
【0088】
本発明は図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されているが、そのような図示及び説明は例示的又は例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は図面、開示、及び従属請求項の研究から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。
【0089】
請求項において、単語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に列挙されるいくつかの項目の機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0090】
100 グリッド
110 グリッドパターン
111 関心領域
112 周囲
120 識別パターン
121 構造的修正部
200 製造装置
2×× 装置の構成要素
300 透かし読取装置等の装置
310 データ処理部
320 記憶
330 撮像装置
340 データセット
350 データセット
D 検出器
4×× 方法(ステップ)
5××× 方法(ステップ)