(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法、及び検査システムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20241205BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/359
(21)【出願番号】P 2020183918
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】北村 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】北村 満
(72)【発明者】
【氏名】上羽 陽介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 啓史
(72)【発明者】
【氏名】山本 星子
(72)【発明者】
【氏名】小池 秀明
(72)【発明者】
【氏名】北島 一輝
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086499(JP,A)
【文献】国際公開第2007/058102(WO,A1)
【文献】特表2019-537014(JP,A)
【文献】特開2019-045240(JP,A)
【文献】特表2015-520398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17-21/61
G01N 21/00-21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する解析部と、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記複製標準スペクトルを生成する際に前記標準スペクトルを波長方向にどれだけ平行移動させるかは、前記検査システムが置かれることが想定される雰囲気温度に基づいて決定される、検査システム。
【請求項2】
前記複製標準スペクトルは、前記標準スペクトルを波長方向に-0.5nm~+1.0nmの範囲で平行移動させることにより生成される、請求項
1に記載の検査システム。
【請求項3】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
雰囲気温度を測定する温度モニタと、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する解析部と、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記第1の雰囲気温度で取得された前記第1標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値、及び、前記第2の雰囲気温度で取得された前記第2標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値が、前記複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す1つの前記回帰式に反映されている、検査システム。
【請求項4】
前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、請求項
3に記載の検査システム。
【請求項5】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
雰囲気温度を測定する温度モニタと、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す第1の回帰式
、第2の回帰式
及び、第3の回帰式を含む複数の回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記第1の回帰式
と、前記第2の回帰式
と、前記第3の回帰式とを含む複数の前記回帰式の中から選択された一の回帰式と前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する解析部と、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記第1の回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光
を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記第2の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記第3の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記解析部は、前記対象物の前記反射光又は前記透過光が取得された際に前記温度モニタで測定された前記雰囲気温度に応じて前記第1の回帰式
と前記第2の回帰式
と前記第3の回帰式を含む複数の前記回帰式の中から一の回帰式を選択して、当該選択された回帰式と前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する、検査システム。
【請求項6】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
雰囲気温度を測定する温度モニタと、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式と前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて算出された前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を前記雰囲気温度に応じて補正する温度別補正式とが予め記憶された記憶部と、前記予測分子量を算出し、当該予測分子量を前記雰囲気温度に応じて前記温度別補正式で補正した補正分子量を算出する解析部と、前記補正分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記複製標準スペクトルを生成する際に前記標準スペクトルを波長方向にどれだけ平行移動させるかは、前記検査システムが置かれることが想定される雰囲気温度に基づいて決定される、検査システム。
【請求項7】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
雰囲気温度を測定する温度モニタと、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式と前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて算出された前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を前記雰囲気温度に応じて補正する温度別補正式とが予め記憶された記憶部と、前記予測分子量を算出し、当該予測分子量を前記雰囲気温度に応じて前記温度別補正式で補正した補正分子量を算出する解析部と、前記補正分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準試料の反射光又は透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記第1の雰囲気温度で取得された前記第1標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値、及び、前記第2の雰囲気温度で取得された前記第2標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値が、前記複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す1つの前記回帰式に反映されている、検査システム。
【請求項8】
前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準試料の反射光又は透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、請求項
7に記載の検査システム。
【請求項9】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記複製標準スペクトルを生成する際に前記標準スペクトルを波長方向にどれだけ平行移動させるかは、前記検査方法を実施する検査システムが置かれることが想定される雰囲気温度に基づいて決定される、検査方法。
【請求項10】
前記複製標準スペクトルは、前記標準スペクトルを波長方向に-0.5nm~+1.0nmの範囲で平行移動させることにより生成される、請求項
9に記載の検査方法。
【請求項11】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記第1の雰囲気温度で取得された前記第1標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値、及び、前記第2の雰囲気温度で取得された前記第2標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値が、前記複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す1つの前記回帰式に反映されている、検査方法。
【請求項12】
前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、請求項
11に記載の検査方法。
【請求項13】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
雰囲気温度を測定する温度測定工程と、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す第1の回帰式
、第2の回帰式
及び第3の回帰式を含む複数の回帰式の中から選択された一の回帰式と前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記第1の回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記第2の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記第3の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記判定工程では、前記対象物の前記反射光又は前記透過光が取得された際に前記温度測定工程で測定された前記雰囲気温度に応じて前記第1の回帰式
と前記第2の回帰式
と前記第3の回帰式とを含む複数の前記回帰式の中から一の回帰式を選択して、当該選択された回帰式と前記処理工程で算出された複数の前記パラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する、検査方法。
【請求項14】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
雰囲気温度を測定する温度測定工程と、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量を前記温度測定工程で測定された雰囲気温度に応じた温度別補正式で補正することにより補正分子量を算出し、前記補正分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記複製標準スペクトルを生成する際に前記標準スペクトルを波長方向にどれだけ平行移動させるかは、前記検査方法を実施する検査システムが置かれることが想定される雰囲気温度に基づいて決定される、検査方法。
【請求項15】
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
雰囲気温度を測定する温度測定工程と、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量を前記温度測定工程で測定された雰囲気温度に応じた温度別補正式で補正することにより補正分子量を算出し、前記補正分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成され
、
前記第1の雰囲気温度で取得された前記第1標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値、及び、前記第2の雰囲気温度で取得された前記第2標準スペクトルの前記複数の波長点に基づいて得られる前記値が、前記複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す1つの前記回帰式に反映されている、検査方法。
【請求項16】
前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、請求項
15に記載の検査方法。
【請求項17】
請求項
6に記載の検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料に照射光を照射する標準試料照射工程と、
前記照射光を複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む、複数の標準スペクトルを取得する標準スペクトル生成工程と、
複数の標準スペクトルの複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、複数の前記標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値としてそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
各標準試料の複数のパラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法。
【請求項18】
請求項
1又は
6に記載の検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料に照射光を照射する標準試料照射工程と、
前記照射光を複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む、複数の標準スペクトルを取得する標準スペクトル生成工程と、
前記標準スペクトル及び前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトル及び前記複製標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値としてそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法。
【請求項19】
請求項
3又は
7に記載の検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値及び複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法。
【請求項20】
請求項
4又は
8に記載の検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第3標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第3の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第3標準反射光又は第3標準透過光の強度を検出する第3標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第3標準スペクトルを取得する第3標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第3標準スペクトルの複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第3標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第3標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第3標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値、複数の前記第2標準パラメータ値及び複数の前記第3標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法。
【請求項21】
請求項
5に記載の検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第1の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第1解析工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第2の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第2解析工程と、を備える、検査システムの製造方法。
【請求項22】
請求項
5に記載の検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第1の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第1解析工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第2の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第2解析工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第3標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第3の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第3標準反射光又は第3標準透過光の強度を検出する第3標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第3標準スペクトルを取得する第3標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第3標準スペクトルの複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第3標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第3標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第3標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第3の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第3解析工程と、
を備える、検査システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、検査システム、検査方法、及び検査システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を非破壊で検査する方法が提案されている。例えば特許文献1は、光を樹脂に照射することによって得られたスペクトルに基づいて、樹脂の予測分子量を算出し、予測分子量に基づいて対象物の状態を検査する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
予測分子量の算出に用いられるスペクトルは、当該スペクトルを生成するために用いられる反射光を取得する際の検査システムの温度や検査システムが置かれている雰囲気温度の影響を受ける。この結果、検査システムにより得られる検査結果も、検査システムの温度や雰囲気温度の影響を受ける。
【0005】
本開示の実施形態は、このような課題を解決し得る検査システム、検査方法、及び検査システムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
前記照射装置及び/又は前記検出装置を冷却する冷却部と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する解析部と、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備える、検査システムである。
【0007】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記冷却部は送風機であってもよい。
【0008】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する解析部と、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、検査システムである。
【0009】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記複製標準スペクトルは、前記標準スペクトルを波長方向に-0.5nm~+1.0nmの範囲で平行移動させることにより生成されてもよい。
【0010】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
雰囲気温度を測定する温度モニタと、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する解析部と、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、検査システムである。
【0011】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、
前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0012】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
雰囲気温度を測定する温度モニタと、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す第1の回帰式及び第2の回帰式を含む複数の回帰式が予め記憶された記憶部と、前記記憶部の前記第1の回帰式及び前記第2の回帰式を含む複数の前記回帰式の中から選択された一の回帰式と前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する解析部と、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備え、
前記第1の回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を前記第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記第2の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記解析部は、前記対象物の前記反射光又は前記透過光が取得された際に前記温度モニタで測定された前記雰囲気温度に応じて前記第1の回帰式及び前記第2の回帰式を含む複数の前記回帰式の中から一の回帰式を選択して、当該選択された回帰式と前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する、検査システムである。
【0013】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、
複数の前記回帰式は、前記第1の回帰式と、前記第2の回帰式と、複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す第3の回帰式とを含み、
前記第3の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記解析部は、前記対象物の前記反射光又は前記透過光が取得された際に前記温度モニタで測定された前記雰囲気温度に応じて前記第1の回帰式と前記第2の回帰式と前記第3の回帰式を含む複数の前記回帰式の中から一の回帰式を選択して、当該選択された回帰式と前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出してもよい。
【0014】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査システムであって、
雰囲気温度を測定する温度モニタと、
前記対象物に照射光を照射する照射部を含む照射装置と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成装置と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理装置と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式と前記回帰式及び前記処理装置が算出した前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて算出された前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を前記雰囲気温度に応じて補正する温度別補正式とが予め記憶された記憶部と、前記予測分子量を算出し、当該予測分子量を前記雰囲気温度に応じて前記温度別補正式で補正した補正分子量を算出する解析部と、前記補正分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定部と、を含む判定装置と、を備える、検査システムである。
【0015】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0016】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準試料の反射光又は透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0017】
本開示の一実施形態による検査システムにおいて、前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準試料の反射光又は透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0018】
本開示の一実施形態による検査システムは、前記照射装置及び/又は前記検出装置を冷却する冷却部を更に備えていてもよい。
【0019】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
照射装置を用いて前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出装置によって検出する検出工程と、
前記照射装置及び/又は前記検出装置を冷却する冷却工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程において算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備える、検査方法である。
【0020】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、検査方法である。
【0021】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記複製標準スペクトルは、前記標準スペクトルを波長方向に-0.5nm~+1.0nmの範囲で平行移動させることにより生成されてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成される、検査方法である。
【0023】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第3標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0024】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
雰囲気温度を測定する温度測定工程と、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す第1の回帰式及び第2の回帰式を含む複数の回帰式の中から選択された一の回帰式と前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記第1の回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記第2の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記判定工程では、前記対象物の前記反射光又は前記透過光が取得された際に前記温度測定工程で測定された前記雰囲気温度に応じて前記第1の回帰式及び前記第2の回帰式を含む複数の前記回帰式の中から一の回帰式を選択して、当該選択された回帰式と前記処理工程で算出された複数の前記パラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出する、検査方法。
【0025】
本開示の一実施形態による検査方法において、複数の前記回帰式は、前記第1の回帰式と、前記第2の回帰式と、複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す第3の回帰式とを含み、
前記第3の回帰式は、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値に基づいて作成され、
前記判定工程では、前記対象物の前記反射光又は前記透過光が取得された際に前記温度測定工程で測定された前記雰囲気温度に応じて前記第1の回帰式と前記第2の回帰式と前記第3の回帰式を含む複数の前記回帰式の中から一の回帰式を選択して、当該選択された回帰式と前記処理工程で算出された複数の前記パラメータ値とに基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出してもよい。
【0026】
本開示の一実施形態は、樹脂材料を含む樹脂層を備える対象物の状態を検査する検査方法であって、
雰囲気温度を測定する温度測定工程と、
前記対象物に照射光を照射する照射工程と、
前記照射光を前記対象物に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する検出工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む対象スペクトルを生成する生成工程と、
複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記対象スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出する処理工程と、
複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示す回帰式及び前記処理工程で算出された前記樹脂層の複数のパラメータ値に基づいて前記樹脂層の樹脂材料の予測分子量を算出し、前記予測分子量を前記温度測定工程で測定された雰囲気温度に応じた温度別補正式で補正することにより補正分子量を算出し、前記補正分子量に基づいて前記対象物の状態を判定する判定工程と、を備える、検査方法である。
【0027】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を所定の雰囲気温度で取得することにより得られる標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における値、又は、前記複製標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0028】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記回帰式は、分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料の反射光又は透過光である標準反射光又は標準透過光を第1の雰囲気温度で取得することにより得られる第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度で取得することにより得られる第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0029】
本開示の一実施形態による検査方法において、前記回帰式は、前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第1標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、前記標準反射光又は前記標準透過光を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度で取得することにより得られる第3標準スペクトルの複数の波長点における前記標準反射光又は前記標準透過光の強度の値、又は、前記第2標準スペクトルに平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値と、に基づいて作成されてもよい。
【0030】
本開示の一実施形態による検査方法において、
前記照射光は照射装置によって照射され、
前記反射光又は前記透過光の強度は検出装置によって検出され、
前記検査方法は、前記照射装置及び/又は前記検出装置を冷却する冷却工程を更に備えてもよい。
【0031】
本開示の一実施形態は、上記検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料に照射光を照射する標準試料照射工程と、
前記照射光を複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む、複数の標準スペクトルを取得する標準スペクトル生成工程と、
複数の標準スペクトルの複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、複数の前記標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値としてそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
各標準試料の複数のパラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【0032】
本開示の一実施形態は、上記検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料に照射光を照射する標準試料照射工程と、
前記照射光を複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光の強度を検出する標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度に関する情報を含む、複数の標準スペクトルを取得する標準スペクトル生成工程と、
前記標準スペクトル及び前記標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより生成される複製標準スペクトルによって表される光の強度の複数の波長点における前記反射光又は前記透過光の強度の値、又は、前記標準スペクトル及び前記複製標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数のパラメータ値としてそれぞれ算出する標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【0033】
本開示の一実施形態は、上記検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値及び複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【0034】
本開示の一実施形態は、上記検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第3標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第3の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第3標準反射光又は第3標準透過光の強度を検出する第3標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第3標準スペクトルを取得する第3標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第3標準スペクトルの複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第3標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第3標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第3標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値、複数の前記第2標準パラメータ値及び複数の前記第3標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する解析工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【0035】
本開示の一実施形態は、上記検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第1の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第1解析工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第2の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第2解析工程と、を備える、検査システムの製造方法である。
【0036】
本開示の一実施形態は、上記検査システムの製造方法であって、
分子量が既知の樹脂材料を含む複数の標準試料を第1の雰囲気温度に置いて前記標準試料に照射光を照射する第1標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第1の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第1標準反射光又は第1標準透過光の強度を検出する第1標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第1標準スペクトルを取得する第1標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第1標準スペクトルの複数の波長点における前記第1標準反射光又は前記第1標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第1標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第1標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第1標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第1の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第1解析工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第2標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第2の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第2標準反射光又は第2標準透過光の強度を検出する第2標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第2標準スペクトルを取得する第2標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第2標準スペクトルの複数の波長点における前記第2標準反射光又は前記第2標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第2標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第2標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第2標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第2の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第2解析工程と、
複数の前記標準試料を前記第1の雰囲気温度及び前記第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度に置いて複数の前記標準試料に照射光を照射する第3標準試料照射工程と、
前記照射光を前記第3の雰囲気温度に置かれた複数の前記標準試料に照射することにより得られる反射光又は透過光である第3標準反射光又は第3標準透過光の強度を検出する第3標準試料検出工程と、
各々が複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度に関する情報を含む、複数の第3標準スペクトルを取得する第3標準スペクトル生成工程と、
複数の前記第3標準スペクトルの複数の波長点における前記第3標準反射光又は前記第3標準透過光の強度の値、又は、複数の前記第3標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施すことによって複数の波長点において得られる値を、各波長点に対応する複数の第3標準パラメータ値としてそれぞれ算出する第3標準試料処理工程と、
各標準試料の複数の前記第2標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す第3の回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する第3解析工程と、
を備える、検査システムの製造方法である。
【発明の効果】
【0037】
本開示の一実施形態によれば、検査システムの温度や雰囲気温度が検査結果に与える影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】一実施形態に係る対象物を示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る検査システムの照射装置及び検出装置を模式的に示す図である。
【
図4】照射装置及び検出装置を収容するケースの一例を示す斜視図である。
【
図6】検査工程の一例を示すフローチャートである。
【
図7】検査用校正スペクトル生成工程の一例を示すフローチャートである。
【
図8】校正試料に照射光を照射する工程の一例を示す図である。
【
図9】対象パラメータ値算出工程の一例を示すフローチャートである。
【
図10】検査システム製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図11】回帰式作成工程の一例を示すフローチャートである。
【
図12】標準パラメータ値算出工程の一例を示すフローチャートである。
【
図13】第1ノイズ評価工程の一例を示すフローチャートである。
【
図16】対象スペクトルと平均化スペクトルの差の一例を示す図である。
【
図17】第2ノイズ評価工程の一例を示すフローチャートである。
【
図24】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
【
図25】標準スペクトル及び複製標準スペクトルの一例を示す図である。
【
図26】対象物の樹脂材料の予測分子量と実際の分子量との関係の一例を示す図である。
【
図27】対象物の樹脂材料の予測分子量と実際の分子量との関係の一例を示す図である。
【
図28】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
【
図29】標準試料の樹脂材料の予測分子量と実際の分子量との関係の一例を示す図である。
【
図30】対象物の樹脂材料の補正分子量と実際の分子量との関係の一例を示す図である。
【
図31】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
【
図32】対象物の樹脂材料の補正分子量と実際の分子量との関係の一例を示す図である。
【
図33】一実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示の実施形態に係る対象物及び検査システムの構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。本発明において、「基材」や「シート」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基材」は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0040】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0041】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータPは、例えばQ1以上であり、Q2以上であってもよく、Q3以上であってもよい。パラメータPは、例えばQ4以下であり、Q5以下であってもよく、Q6以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータPの数値範囲は、Q1以上Q4以下であってもよく、Q1以上Q5以下であってもよく、Q1以上Q6以下であってもよく、Q2以上Q4以下であってもよく、Q2以上Q5以下であってもよく、Q2以上Q6以下であってもよく、Q3以上Q4以下であってもよく、Q3以上Q5以下であってもよく、Q3以上Q6以下であってもよい。
【0042】
本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0043】
(第1の実施の形態)
図1は、対象物10の一例を示す図である。対象物10は、例えば樹脂シートである。樹脂シートは、床材などの建材の化粧シート、農業用シート、半導体素子の封止シート、包装用シートなど、様々な用途で用いられる。
【0044】
対象物10は、基材シート11と、基材シート11に積層された樹脂層12と、を備える。樹脂層12は、基材シート11の面の全域に設けられていてもよく、若しくは、模様を呈するように基材シート11の面に部分的に設けられていてもよい。以下の説明において、樹脂層12側に位置する対象物10の面を第1面10xと称し、基材シート11側に位置する対象物10の面を第2面10yと称する。
【0045】
基材シート11は、例えば紙、合成樹脂、金属、セラミック、薬剤などを含む。より具体的には、基材シート11は、セルロース樹脂を含んでいてもよく、ポリプロピレンなどのオレフィン系合成樹脂を含んでいてもよい。基材シート11の坪量は、例えば50g/m2以上である。基材シート11の坪量は、例えば300g/m2以下であり、120g/m2以下であってもよい。
【0046】
樹脂層12は、樹脂材料を含む。樹脂層12に含まれる樹脂材料は、特に限定されないが、例えば高分子樹脂である。高分子樹脂の例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミドなどを挙げることができる。
ポリエチレン系樹脂の例としては、ポリエチレンの他、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体などの、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体などを挙げることができる。また、樹脂層12は、ゴムを含んでいてもよい。ゴムの例としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴムなどを挙げることができる。樹脂層12の厚みは、例えば50μm以上である。樹脂層12の厚みは、例えば40μm以上である。樹脂層12の厚みは、700μm以下であってもよい。
後述するように、樹脂層12は、樹脂材料に加えて、発泡剤又は発泡助剤を含んでいてもよい。この場合、発泡前の樹脂層12の厚みは、例えば40μm以上100μm以下である。発泡後の樹脂層12の厚みは、例えば300μm以上700μm以下である。
【0047】
樹脂層12は、顔料などの着色材を更に含んでいてもよい。顔料は、無機顔料であってもよく、有機顔料であってもよい。無機顔料の例としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料の例としては、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。樹脂層12における顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば5質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよい。樹脂層12における顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。
【0048】
樹脂層12は、フィラーを含んでいてもよい。これにより、樹脂層12の強度、硬度などを高めることができる。フィラーは、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、タルクなどの無機材料を含む。樹脂層12におけるフィラーの含有量は、樹脂材料100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。樹脂層12におけるフィラーの含有量は、樹脂材料100質量部に対して、例えば100質量部以下であってもよく、70質量部以下であってもよい。
【0049】
樹脂層12は、防カビ剤、防虫剤、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、重合開始剤、重合禁止剤、増感剤、架橋剤、可塑剤、難燃剤、帯電制御剤、熱安定剤、光安定剤、導電剤、消泡剤、防錆剤、酸化防止剤、発泡剤、発泡助剤、近赤外吸収剤、紫外吸収剤、乳化剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
〔検査システム〕
図2は、対象物10を検査するための検査システム15を示すブロック図である。検査システム15は、樹脂層12の特徴を表すスペクトルを測定する。検査システム15は、樹脂層12を構成する材料の予測分子量を、スペクトルに基づいて算出する。また、検査システム15は、算出した予測分子量に基づいて、対象物10の脆化などの状態を判定する。この場合、対象物10の状態と樹脂層12に含まれる樹脂材料の分子量との関係を示す情報は、予め検査システム15に記憶されている。なお、検査システム15で判定される対象物10の状態は、対象物10の脆化に関する状態に限定されない。
【0051】
検査システム15は、照射装置21、検出装置24、生成装置25、処理装置27、判定装置28及び冷却部29を備える。照射装置21及び検出装置24は、分光モジュール20を構成する。分光モジュール20は、後述するケース40に収容される。生成装置25、処理装置27、判定装置28及び冷却部29の一部又は全部は、分光モジュール20に含まれていてもよく、分光モジュール20以外の構成要素に含まれていてもよい。例えば、生成装置25、処理装置27及び判定装置28の一部又は全部は、分光モジュール20と通信可能なコンピュータによって実現されてもよい。
【0052】
〔照射装置〕
照射装置21は、対象物10に近赤外線などの照射光L1を照射する。照射装置21は、照射部211を含む。照射部211は、対象物10の第1面10xに照射光L1を照射する。照射光L1の波長は、例えば800nm以上であり、900nm以上であってもよい。照射光L1の波長は、例えば2500nm以下であり、2000nm以下であってもよく、1700nm以下であってもよい。近赤外線を照射する照射装置21としては、例えば、オーシャンフォトニクス社製の重水素ハロゲン光源 DH-2000を用いることができる。
【0053】
図3は、照射装置21及び検出装置24を模式的に示す図である。
照射装置21は、拡散部212を含んでいてもよい。拡散部212は、照射部211から放射された照射光L1を拡散させる。これにより、様々な方向から照射光L1を対象物10に照射できる。このため、検査システム15は、反射スペクトルを得ることができる。拡散部212は、例えば、照射部211と対象物10との間に配置される拡散板である。
【0054】
〔検出装置〕
検出装置24は、対象物10によって反射された反射光L2を受光する。検出装置24は、反射光L2の強度を検出できる。
【0055】
検出装置24は、複数の波長点において反射光L2を検出する検出部241を含む。波長点の数は、検出部241の分解能に応じて定まる。例えば、検出部241が900nm以上1800nm以下の範囲内において、3nmの分解能で反射光L2の強度を検出する場合、波長点の数は301である。検出部241としては、近赤外分光器、近赤外ハイパースペクトルカメラなどを用いることができる。
【0056】
検出部241は、対象物10によって正反射された反射光L2を検出する。検出部241は、対象物10によって正反射された反射光L2に加えて、対象物10によって拡散反射された反射光L2を検出してもよい。これにより、樹脂材料に関する情報をより多く得ることができる。このため、樹脂層12の組成の判定の精度を向上させることができる。
図3において、符号H1は、検出部241と対象物10との距離を表し、符号W1は、検出部241の幅を表す。距離H1及び幅W1は、対象物10によって拡散反射された反射光L2が検出部241に入射するよう適切に定められている。
【0057】
なお、照射装置21及び検出装置24としては、照射光L1の照射機能と反射光L2の検出機能とが一体化した分光器を用いてもよい。そのような分光器としては、例えば、innoSpectra製の近赤外線分光組込み反射モジュール M-R2を用いることができる。
【0058】
〔生成装置〕
生成装置25は、第1生成部251及び第2生成部252を含む。第1生成部251は、複数の波長点における反射光L2の強度に関する情報を含むスペクトルを生成する。以下の説明において、対象物10によって反射された反射光L2の強度に関する情報を含むスペクトルのことを、対象スペクトルとも称する。
【0059】
本明細書において、「スペクトル」は、波長点に対応するデータのグループを意味する。データのグループを図示すると、後述する
図14に示すようなグラフが生成される。データは、波長点における反射光L2の強度に関する情報を含む。データは、反射光L2の強度そのものであってもよい。データは、波長点における反射光L2の強度に何らかの処理を施すことによって算出されたものであってもよい。例えば、データは、吸光度であってもよい。吸光度とは、対象物10が光を吸収する程度を表す無次元量である。吸光度Absは、例えば以下の式により算出される。
Abs=-log
10(Itar/Iref)
Itarは、対象物10によって反射された反射光の強度である。Irefは、校正試料によって反射された反射光の強度である。校正試料は、例えば標準反射板である。標準反射板は、標準白色板、白色板などとも称される。このような校正試料としては、例えばLabsphere製のスペクトラロンを採用可能である。
【0060】
第2生成部252は、複数の波長点における、校正試料によって反射された反射光の強度に関する情報を含むスペクトルを生成する。以下の説明において、校正試料によって反射された反射光の強度に関する情報を含むスペクトルのことを、校正スペクトルとも称する。第1生成部251は、上述の式で表されているように、校正スペクトルを基準として用いることにより対象スペクトルを生成してもよい。
【0061】
なお、検出装置24及び生成装置25としては、反射光の受光機能及び反射スペクトルの取得機能とが一体化した装置を用いてもよい、そのような装置としては、例えば、JFEテクノリサーチ株式会社製の近赤外線用イメージング分光解析装置SWIR-2400や、VIVA社製のMicro NIR Spectrometer等を用いることができる。
【0062】
〔処理装置〕
処理装置27は、第1処理部271及び第2処理部272を含む。第1処理部271は、対象スペクトルに何らかの処理を施す。例えば、第1処理部271は、対象スペクトルを局所的に平均化することにより平均化スペクトルを生成する局所平均化を実施してもよい。第1処理部271は、対象スペクトルと局所平均化スペクトルの差に基づいて第1ノイズ指標を算出する第1ノイズ評価を実施してもよい。第1処理部271は、第1ノイズ指標が第1閾値TH1以上である場合に、対象スペクトルを記録する第1記録を実施してもよい。
【0063】
第1処理部271は、第1記録によって記録又は生成された対象スペクトルに更に何らかの処理を施してもよい。例えば、第1処理部271は、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を対象スペクトルに施してもよい。これにより、第1処理部271は、複数の波長点に対応する複数のパラメータ値を算出できる。これらの処理の詳細は、例えば特開2019-86499号公報に記載されている。
【0064】
第2処理部272は、校正スペクトルに何らかの処理を施してもよい。例えば、第2処理部272は、校正スペクトルを二次微分することにより二次微分スペクトルを生成する二次微分を実施してもよい。第2処理部272は、二次微分スペクトルに基づいて第2ノイズ指標を算出する第2ノイズ評価を実施してもよい。第2処理部272は、第2ノイズ指標が第2閾値TH2以上である場合に、校正スペクトルを記録する第2記録を実施してもよい。
【0065】
〔判定装置〕
判定装置28は、第1処理部271による処理によって記録又は生成された情報に基づいて樹脂層12の樹脂材料の予測分子量を算出することにより、対象物10の状態を判定する。例えば、判定装置28は、第1処理部271が算出したパラメータ値に基づいて、樹脂層12の樹脂材料の予測分子量を算出する。判定装置28は、処理装置27と一体化していてもよい。判定装置28は、記憶部281と、解析部282と、判定部283と、を含む。
【0066】
記憶部281は、複数のパラメータ値と樹脂層12の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式が予め記憶された構成要素である。記憶部281は、例えばROMやRAMなどのメモリーである。回帰式は、後述するように、照射装置21の照射部211から標準試料に照射されて検出装置24の検出部241で検出される反射光の強度に基づいて作成される。回帰式の詳細は、例えば特開2019-86499号公報に記載されている。
なお、
図2に示す例では、回帰式は、記憶部281には特定の(単一の)雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料から得られる反射光の反射強度に基づいて作成され、以下では標準回帰式とも呼ぶ。
【0067】
解析部282は、記憶部281の回帰式(
図2に示す例では標準回帰式)を、複数のパラメータ値にそれぞれ適用する。これにより、樹脂層12の樹脂材料の予測分子量を算出できる。解析部282は、例えばCPUである。予測分子量の算出方法の詳細は、例えば特開2019-86499号公報に記載されている。
【0068】
判定部283は、解析部282が算出した予測分子量に基づいて、樹脂層12の状態を判定する。判定部283により対象物10の状態を判定する方法は、特に限定されない。例えば、樹脂材料としてポリエチレン系樹脂を含む樹脂層12を備える対象物10が脆化しているか否かを判定する場合には、樹脂材料の分子量が80000以上と算出された対象物10は脆化しておらず、80000未満と算出された樹脂シート10は脆化している、と判定してもよい。判定部283は、例えばCPUである。
【0069】
図示はしないが、判定装置28は、判定結果を表示する表示部を有していてもよい。表示部における判定結果の表示の仕方は、表示から判定結果が理解できる限り、特に限定されない。例えば、対象物10が脆化しているか否かを判定する場合には、解析部282において算出された予測分子量を表示してもよく、判定部283において対象物10が脆化していないと判定された場合には丸等の記号を表示してもよい。また、予測分子量と丸等の記号との両方を表示してもよい。また、判定結果によって異なる色を表示部に表示してもよい。
【0070】
〔冷却部〕
冷却部29は、照射装置21及び/又は検出装置24を冷却する。図示された例では、冷却部29は、ファンを含む送風機であり、ファンによって分光モジュール20に送風することにより照射装置21及び/又は検出装置24を冷却するが、これに限られない。冷却部29は、ベルチェ素子や放熱板により照射装置21及び/又は検出装置24を冷却するものであってもよい。
【0071】
分光モジュール20が冷却部29により冷却されることにより、検査システム15が稼働中に検査システム15に内蔵されたランプや電子回路等が発する熱によって分光モジュール20の温度が上昇する、ということが抑制される。ここで、本件発明者らは、照射装置21又は検出装置24の温度が、検出装置24で検出される反射光の強度(生成装置25で生成されるスペクトルのピーク位置)に影響を与えることを見出した。すなわち、同じ対象物10或いは同じ試料によって反射された反射光であっても、検出装置24で検出される反射光の強度は当該反射光を検出する際の照射装置21又は検出装置24の温度によって異なることを見出した。そして、検査システム15が稼働中に分光モジュール20を冷却部29で冷却することにより、分光モジュール20の温度上昇が抑制され、検出装置24で検出される反射光の強度が安定することを見出した。
【0072】
次に、検査システム15の具体的な構造を説明する。
図4に示すように、検査システム15は、分光モジュール20及び冷却部29を収容するケース40を備えていてもよい。分光モジュール20は、照射装置21及び検出装置24を含む。ケース40は、持ち運び可能な形態を有することが好ましい。照射装置21及び検出装置24が収容されているケース40の重量は、例えば5kg以下であり、2kg以下であってもよく、好ましくは1kg以下である。ケース40を持ち運ぶことにより、様々な場所に配置されている対象物10を検査できる。
【0073】
ケース40は、第1面41、第2面42及び側面を含んでいてもよい。第1面41は、検査システム15を用いる検査方法を実施するとき、対象物10に対向する。第1面41は、光が通過するウインドウ48を含む。光は、照射装置21から放射された光、又は、検出装置24によって受光される反射光である。ウインドウ48は、第1面41に形成されている開口を含んでいてもよい。第2面42は、第1面41に対向している。側面は、第1面41と第2面42の間に位置している。側面は、例えば、第1側面43、第2側面44、第3側面45及び第4側面46を含んでいてもよい。第2面42は第1面41に対向している。第2側面44は第1側面43に対向している。第1側面43及び第2側面44は第1面41と第2面42の間に位置している。
【0074】
ケース40は、例えば、第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414を含んでいてもよい。第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414は、対象物10に対向するケース40の部分の外縁を構成する。
【0075】
第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414の一部又は全部は、第1面41の外縁であってもよい。第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414の一部又は全部は、第1側面43、第2側面44、第3側面45及び第4側面46などの側面の外縁であってもよい。
【0076】
第1外縁411の寸法K1は、例えば500mm以下であり、400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよい。第1外縁411の寸法K1は、例えば50mm以上であり、100mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。
第3外縁413の寸法K2は、例えば500mm以下であり、400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよい。第3外縁413の寸法K2は、例えば50mm以上であり、100mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。
第1面41と第2面42の間の距離K3は、例えば500mm以下であり、400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよい。距離K3は、例えば50mm以上であり、100mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。
【0077】
図5は、検査システム15の一使用例を示す図である。
図5に示す例においては、人の右手61及び左手62によってケース40が保持されている。ケース40の第1面41は、対象物10に対向している。検査システム15を用いる検査方法を実施するとき、第1外縁411、第2外縁412、第3外縁413及び第4外縁414の一部又は全部が対象物10に接していてもよい。
【0078】
〔検査方法〕
次に、上述の検査システム15を用いて対象物10の状態を検査する方法の一例を説明する。検査方法は、対象物10の状態の検査を実施する検査工程を含む。
【0079】
〔検査工程〕
検査工程について説明する。
図6に示す例では、検査工程は、検査用校正スペクトル記録工程S1と、対象パラメータ値算出工程S2と、判定工程S3とを含む。
【0080】
まず、検査用校正スペクトル記録工程S1について説明する。検査用校正スペクトル記録工程S1は、
図7に示すように、校正試料準備工程S11と、校正試料照射工程S12と、校正試料検出工程S13と、校正スペクトル生成工程S14と、第2ノイズ評価工程S15と、第2記録工程S16と、を含む。
校正試料準備工程S11では、校正試料51を準備する。
校正試料照射工程S12では、冷却部29によって分光モジュール20を冷却した状態(図示された例では、冷却部29によって分光モジュール20へ送風した状態)で、照射装置21が、校正試料51に照射光として近赤外線を照射する。
校正試料検出工程S13では、冷却部29によって分光モジュール20を冷却した状態(図示された例では、冷却部29によって分光モジュール20へ送風した状態)で、検出装置25が、校正試料51によって反射された反射光(「校正反射光」といい、以下同じ)の強度を検出する。
校正試料照射工程S12及び校正試料検出工程S13は、
図8に示すように、ウインドウ48を覆うように校正試料51を第1面41に接触させた状態で実施されてもよい。この場合、ケース40に対して校正試料51が固定されていてもよい。例えば、ケース40に巻き付けたゴムバンド52によって校正試料51がウインドウ48に押し付けられていてもよい。図示はしないが、校正試料51が第1面41から離れていてもよい。なお、校正試料51が第1面41から離れている場合、周囲を暗室にすることが好ましい。これにより、検査システム15が外光を検出することを抑制できる。また、対象物10の検出を行う工程において、対象物10と第1面41との間の距離が校正試料51と第1面41との間の距離と同一であることが好ましい。
また、
図2に示す例では、校正試料照射工程S12及び校正試料検出工程S13は、特定の(単一の)雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた校正試料51に対して行われる。
校正スペクトル生成工程S14では、生成装置25の第2生成部252が、校正スペクトルを生成する。校正スペクトルは、複数の波長点における校正反射光の強度に関する情報を含む。
第2ノイズ評価工程S15では、校正スペクトルに二次微分を施して、二次微分スペクトルを生成し、二次微分スペクトルに基づいて第2ノイズ指標を算出する。第2ノイズ指標は、校正スペクトルに含まれるノイズの程度の指標である。
第2記録工程S16では、第2処理部272が、第2ノイズ指標が第2閾値TH2以上である校正スペクトルを記録する。
【0081】
次に、対象パラメータ値算出工程S2について説明する。対象パラメータ値算出工程S2は、
図9に示すように、対象物照射工程S21と、対象物検出工程S22と、対象スペクトル生成工程S23と、対象物第1ノイズ評価工程S24と、対象物第1記録工程S25と、対象物処理工程S26と、を含む。
対象物照射工程S21では、冷却部29によって分光モジュール20を冷却した状態(図示された例では、冷却部29によって分光モジュール20へ送風した状態)で、照射装置21が、対象物10に照射光L1として近赤外線を照射する。
対象物検出工程S22では、冷却部29によって分光モジュール20を冷却した状態(図示された例では、冷却部29によって分光モジュール20へ送風した状態)で、検出装置25が、対象物10によって反射された反射光(対象反射光)L2の強度を検出する。
図2に示す例では、対象物照射工程S21及び対象物検出工程S22は、
図7の校正試料照射工程S12及び校正試料検出工程S13で校正試料51が置かれた雰囲気温度と概ね同じ雰囲気温度に置かれた対象物10に対して行われることが望ましい。
対象スペクトル生成工程S23は、第1対象スペクトル生成工程と、第2対象スペクトル生成工程とを含む。第1対象スペクトル生成工程では、生成装置25の第1生成部251が、第1対象スペクトルを生成する。第1対象スペクトルは、複数の波長点における対象反射光L2の強度に関する情報を含む。第2対象スペクトル生成工程では、第1対象スペクトルと第2記録工程S16で記録された校正スペクトルとに基づいて複数の波長点における吸光度を算出し、複数の波長点における吸光度を含む吸光度スペクトル(第2対象スペクトル)を算出する。
対象物第1ノイズ評価工程S24では、第1処理部271が、第2対象スペクトルを局所的に平均化して、局所平均化スペクトル(局所平均化対象スペクトル)を生成する。また、対象物第1ノイズ評価工程S24では、第1処理部271が、第2対象スペクトルと局所平均化対象スペクトルの差に基づいて第1ノイズ指標(対象物第1ノイズ指標)を算出する。対象物第1ノイズ指標は、対象スペクトルに含まれるノイズの程度の指標である。算出された対象物第1ノイズ指標は、処理装置27を構成するコンピュータのディスプレイに表示されてもよい。
対象物第1記録工程S25では、第1処理部271が、第1ノイズ指標が第1閾値TH1以上である第2対象スペクトルを記録する。第1ノイズ指標と第1閾値TH1の比較結果は、処理装置27を構成するコンピュータのディスプレイに表示されてもよい。
対象物処理工程S26では、対象物第1記録工程S25で記録された第2対象スペクトルの各々に、処理装置27により、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して、複数の波長点に対応する複数のパラメータ値を算出する。このような処理の詳細は、例えば特開2019-86499号公報に記載されている。
【0082】
次に、判定工程S3について説明する。
判定工程S3では、解析部282が、判定装置28の記憶部281に記憶された回帰式(
図2に示す例では標準回帰式)、及び対象物処置工程S26において算出したパラメータ値に基づいて、対象物10の樹脂材料の予測分子量を算出する。そして、算出した予測分子量に基づいて、判定部283において対象物10の状態を判定する。このような判定の詳細は、例えば特開2019-86499号公報に記載されている。
【0083】
以上の方法により、対象物10の状態を判定することができる。
【0084】
なお、検査工程は検査用校正スペクトル記録工程S1を含まなくてもよい。この場合、対象パラメータ算出工程S2の対象スペクトル生成工程S23は、第2対象スペクトル生成工程を含まなくてもよい。また、この場合、対象パラメータ算出工程S2の対象物第1ノイズ評価工程S24では、第1対象スペクトルを局所的に平均化して、局所平均化対象スペクトルを生成し、第1対象スペクトルと局所平均化対象スペクトルとの差に基づいて第1ノイズ指標を算出してもよい。また、この場合、対象物第1記録工程S25では、第1処理部271が、第1ノイズ指標が第1閾値TH1以上である第1対象スペクトルを記録してもよい。そして、対象物処理工程S26では、記録された第1対象スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して、複数の波長点に対応する複数の対象パラメータ値を算出してもよい。
【0085】
また、検査用校正スペクトル記録工程S1は、第2ノイズ評価工程S15を含まなくてもよい。この場合、第2記録工程S16では、校正スペクトル生成工程S14で生成された全ての校正スペクトルが記録されてよい。
【0086】
また、対象パラメータ値算出工程S2は、対象物第1ノイズ評価工程S24を含まなくてもよい。この場合、対象物第1記録工程S25では、対象スペクトル生成工程S23で生成された全ての第1対象スペクトルが記録されてよい。
【0087】
〔検査システムの製造方法〕
次に、上述の検査システム15の製造方法について説明する。検査システム15の製造方法は、検査システム製造工程を含む。
図10に示す例では、検査システム製造工程は、準備工程S4と、回帰式作成工程S5とを含む。
【0088】
準備工程S4では、
図2に示すような分光モジュール20(照射装置21及び検出装置24)、処理装置27、判定装置28及び冷却部29を準備する。
【0089】
〔回帰式作成工程〕
次に、回帰式作成工程S5について説明する。回帰式作成工程S5は、
図11に示すように、標準試料準備工程S51と、回帰式用校正スペクトル記録工程S52と、標準パラメータ値算出工程S53と、解析工程S54と、回帰式記録工程S55とを含む。回帰式用校正スペクトル記録工程S52は、上述した検査用校正スペクトル記録工程S1と同様の工程であるため、ここでは説明を省略する。
【0090】
標準試料準備工程S51では、複数の標準試料を準備する。各標準試料は、対象物10と同様に構成されており、樹脂材料を含む樹脂層を備えている。樹脂材料の分子量は既知である。例えば、各標準試料の樹脂材料の分子量は、事前に液体クロマトグラフ付属のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システムにより測定されている。各標準試料の分子量は、例えば、10000以上220000以下である。
【0091】
標準パラメータ値算出工程S53は、
図12に示すように、標準試料照射工程S531と、標準試料検出工程S532と、標準スペクトル生成工程S533と、標準試料第1ノイズ評価工程S534と、標準試料第1記録工程S535と、標準試料処理工程S536と、を含む。
標準試料照射工程S531では、冷却部29によって分光モジュール20を冷却した状態(図示された例では、冷却部29によって分光モジュール20へ送風した状態)で、照射装置21が、標準試料準備工程S51で準備した標準試料に照射光として近赤外線を照射する。
標準試料検出工程S532では、冷却部29によって分光モジュール20を冷却した状態(図示された例では、冷却部29によって分光モジュール20へ送風した状態)で、検出装置25が、標準試料によって反射された反射光(標準反射光)の強度を検出する。
なお、標準試料照射工程S531及び標準試料検出工程S532は、
図9に示す対象物照射工程S21及び対象物検出工程S22が行われる際に対象物10が置かれる雰囲気温度と概ね同じ雰囲気温度に置かれた標準試料に対して行われることが望ましい。
図2に示す例では、標準試料照射工程S531及び標準試料検出工程S532は、特定の(単一の)雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料に対して行われる。
標準スペクトル生成工程S533は、第1標準スペクトル生成工程と、第2標準スペクトル生成工程とを含む。第1標準スペクトル生成工程では、生成装置25の第1生成部251が、標準スペクトル(第1標準スペクトル)を生成する。第1標準スペクトルは、複数の波長点における標準反射光の強度に関する情報を含む。第2対象スペクトル生成工程では、第1標準スペクトルと回帰式用校正スペクトル記録工程S52の第2記録工程で記録された校正スペクトルとに基づいて複数の波長点における吸光度を算出し、複数の波長点における吸光度を含む吸光度スペクトル(第2標準スペクトル)を算出する。
標準試料第1ノイズ評価工程S534では、第1処理部271が、第2標準スペクトルを局所的に平均化して、局所平均化スペクトル(局所平均化標準スペクトル)を生成する。また、標準試料第1ノイズ評価工程S534では、第1処理部271が、第2標準スペクトルと局所平均化標準スペクトルの差に基づいて第1ノイズ指標(標準試料第1ノイズ指標)を算出する。標準試料第1ノイズ指標は、標準スペクトルに含まれるノイズの程度の指標である。算出された標準試料第1ノイズ指標は、処理装置27を構成するコンピュータのディスプレイに表示されてもよい。
標準試料第1記録工程S535では、第1処理部271が、標準試料第1ノイズ指標が第1閾値TH1以上である第2標準スペクトルを記録する。標準試料第1ノイズ指標と第1閾値TH1の比較結果は、処理装置27を構成するコンピュータのディスプレイに表示されてもよい。
標準試料処理工程S536では、標準試料第1記録工程S535で記録された第2標準スペクトルの各々に、処理装置27により、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して、複数の波長点に対応する複数のパラメータ値(標準パラメータ値)を算出する。
【0092】
解析工程S54では、判定装置28の解析部282が、各標準試料の複数の標準パラメータ値と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式(
図2に示す例では標準回帰式)を、多変量解析手法を用いて作成する。多変量解析は、記憶部281に多変量解析用のプログラムを記録しておき、このプログラムを解析部282において実行することによって行うことができる。
多変量解析手法として、例えばPLS回帰分析を行うことができる。PLS回帰分析を実施するためのソフトウエアとして、カモソフトウェア製の多変量解析ソフト The Unscrambler Xを用いることができる。
解析工程S54においては、PLS回帰分析以外の多変量解析が採用されてもよい。例えば、CLS(Classical least square)、ILS(Inverse least square)、MLR(Multiple liner regression)、PCR(Princical component regression analysis)などの多変量解析手法が採用されてもよい。
【0093】
回帰式記録工程S55では、判定装置28の記憶部281が、解析工程で作成した回帰式を記録する。
【0094】
以上の方法により、上述の検査システム15を製造することができる。
【0095】
なお、回帰式作成工程S5は、回帰式用校正スペクトル記録工程S52を含まなくてもよい。この場合、標準パラメータ値算出工程S53の標準スペクトル生成工程S533は、第2標準スペクトル生成工程を含まなくてもよい。また、この場合、標準パラメータ値算出工程S53の標準試料第1ノイズ評価工程S534では、第1標準スペクトルを局所的に平均化して、局所平均化標準スペクトルを生成し、第1標準スペクトルと局所平均化標準スペクトルとの差に基づいて標準試料第1ノイズ指標を算出してもよい。また、この場合、標準試料第1記録工程S535では、第1処理部271が、標準試料第1ノイズ指標が第1閾値TH1以上である第1標準スペクトルを記録してもよい。そして、標準試料処理工程S536では、記録された第1標準スペクトルの各々に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して、複数の波長点に対応する複数の標準パラメータ値を算出してもよい。
【0096】
また、標準パラメータ値算出工程S53は、標準試料第1ノイズ評価工程S534を含まなくてもよい。この場合、標準試料第1記録工程S535では、標準スペクトル生成工程S533で生成された全ての第1標準スペクトルが記録されてよい。
【0097】
また、標準試料処理工程S536及び解析工程S54では、生成装置25で生成された第1標準スペクトル(反射スペクトル)又は第2標準スペクトル(吸光度スペクトル)に微分などの処理を施すことによって得られる標準パラメータ値に基づいて、多変量解析を実施する例を示した。しかしながら、これに限られることはない。例えば、第1標準スペクトル(反射スペクトル)を反転させることによって得られる吸収スペクトル(標準吸収スペクトル)に微分などの処理を施すことによって得られるパラメータ値に基づいて、多変量解析を実施してもよい。また、第1標準スペクトル(反射スペクトル)、第2標準スペクトル(吸光度スペクトル)又は標準吸収スペクトルに含まれる、各波長点における強度、反射率、吸収率などの値に基づいて、多変量解析を実施してもよい。
【0098】
さらに、標準試料第1記録工程S535で使用される第1閾値TH1は、対象物第1記録工程S25で使用される第1閾値TH1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
同様に、回帰式用校正スペクトル記録工程S52で使用される第2閾値TH2は、検査用校正スペクトル記録工程S1で使用される第2閾値TH2と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0099】
回帰式作成工程S5の具体例については、例えば特開2019-86499号公報に記載されている。
【0100】
〔第1ノイズ評価工程の詳細〕
次に、第1ノイズ評価工程S24,S534について詳述する。
図13に示す例では、第1ノイズ評価工程S24,S534は、局所平均化スペクトル生成工程S6と、第1ノイズ指標算出工程S7とを含む。ここでは、対象物第1ノイズ評価工程S24を例に挙げて説明する。
【0101】
まず、局所平均化スペクトル生成工程S6について説明する。局所平均化スペクトル生成工程S6では、局所平均化スペクトルを生成する。ここでは、局所平均化スペクトルとして局所平均化対象スペクトルを生成する場合を例に挙げて説明する。
図14は、対象スペクトルA1の一例を示す図である。
【0102】
まず、対象スペクトルA1を局所的に平均化する。例えば、対象スペクトルA1の各波長点において局所平均値を算出する工程を実施する。局所平均値は、対象となる波長点における対象スペクトルA1の値、及び対象となる波長点の近傍に位置する複数の波長点における対象スペクトルA1の値を平均することによって算出される。
【0103】
対象スペクトルA1の値が吸光度である例を説明する。例えば1200nmの波長点における局所平均値は、以下のように算出される。
まず、1200nmにおける吸光度Abs(1200)を取得する。続いて、1200nmの近傍に位置する複数の波長点における対象スペクトルA1の値を取得する。検出装置24の分解能が3nmである場合、例えば、1188nmにおける吸光度Abs(1188)、1191nmにおける吸光度Abs(1191)、1194nmにおける吸光度Abs(1194)、1197nmにおける吸光度Abs(1197)、1203nmにおける吸光度Abs(1203)、1206nmにおける吸光度Abs(1206)、1209nmにおける吸光度Abs(1209)及び1212nmにおける吸光度Abs(1212)を取得する。続いて、これらの9個の波長点における吸光度の平均値を算出する。この平均値が、1200nmの波長点における局所平均値である。
【0104】
各波長点において局所平均値を算出する。これによって、
図15に示すように、局所平均化スペクトルA2を生成できる。
図15においては、対象スペクトルA1が一点鎖線で表され、平均化スペクトルA2が実線で表されている。
【0105】
局所平均値を算出する時の波長点の数は、上述の9個には限られない。波長点の数は、例えば5個以上であり、7個以上であってもよい。波長点の数は、例えば15個以下であり、13個以下であってもよい。
【0106】
なお、局所平均化標準スペクトルは、局所平均化対象スペクトルを生成する場合と同様に、標準スペクトルを局所的に平均化して各波長点における局所平均値を算出することにより生成される。
【0107】
次に、第1ノイズ指標算出工程S7について説明する。第1ノイズ指標算出工程S7では、第1ノイズ指標を算出する。ここでは、第1ノイズ指標として対象物第1ノイズ指標を算出する場合を例に挙げて説明する。
【0108】
第1ノイズ指標算出工程S7においては、対象スペクトルA1と局所平均化スペクトルA2の差を算出する。例えば、各波長点において、対象スペクトルA1の吸光度から平均化スペクトルA2の局所平均値を減算する。これによって生成されるスペクトルを、差分スペクトルとも称する。
図16は、差分スペクトルA3の一例を示す図である。
図16においては、対象スペクトルA1が一点鎖線で表され、平均化スペクトルA2が二点鎖線で表され、差分スペクトルA3が実線で表されている。
【0109】
続いて、第1ノイズ指標算出工程S7においては、対象スペクトルA1と局所平均化スペクトルA2の差の標準偏差を算出する。標準偏差は、対象スペクトルA1と局所平均化スペクトルA2の差のばらつきの程度を表す。仮に、対象スペクトルA1にノイズが含まれていない場合、対象スペクトルA1と局所平均化スペクトルA2の差がほぼゼロになると予想される。従って、標準偏差が小さいことは、対象スペクトルA1に含まれるノイズが少ないことを意味する。標準偏差が大きいことは、対象スペクトルA1に含まれるノイズが多いことを意味する。
【0110】
なお、ノイズとは関係なく、対象スペクトルA1のピークの位置では対象スペクトルA1と局所平均化スペクトルA2の差が大きい。対象スペクトルA1に含まれるノイズを適切に評価するためには、対象スペクトルA1のピークから離れた位置において差の標準偏差を算出することが好ましい。例えば
図16に示すように、ピークから離れている安定領域R1において差の標準偏差を算出してもよい。具体的には、まず、安定領域R1に含まれる複数の波長点における差の値を取得する。続いて、複数の差の値の標準偏差を算出する。
【0111】
安定領域R1は、対象物10に含まれると予想される材料の情報に基づいて予め定められていてもよい。例えば、対象物10にポリエチレンが含まれると予想される場合、対象スペクトルA1は、約1200nmに現れるピークを含む。この場合、970nm以上1100nm以下の波長域が安定領域R1として予め定められていてもよい。
【0112】
続いて、第1ノイズ指標算出工程S7においては、標準偏差に基づいて第1ノイズ指標を算出する。第1ノイズ指標は、対象スペクトルA1に含まれるノイズの程度の指標である。第1ノイズ指標は、例えば、標準偏差の逆数である。第1ノイズ指標が大きいことは、対象スペクトルA1に含まれるノイズが少ないことを意味する。第1ノイズ指標が小さいことは、対象スペクトルA1に含まれるノイズが多いことを意味する。算出された第1ノイズ指標は、処理装置27を構成するコンピュータのディスプレイに表示されてもよい。
【0113】
なお、標準試料第1ノイズ指標は、対象物第1ノイズ指標を算出する場合と同様に、標準スペクトルとその局所平均化スペクトルの差の標準偏差に基づいて算出される。
【0114】
対象物第1ノイズ指標が第1閾値TH1未満である場合、
図9に示すように、工程S21、S22、S23及びS24を再び対象物10に対して実施してもよい。同様に、標準試料第1ノイズ指標が第1閾値TH1未満である場合、
図12に示すように、工程S531、S532、S533及びS534を再び標準試料に対して実施してもよい。
図5に示すようにケース40を手で保持する場合、検査工程又は検査システム製造工程(回帰式作成工程S5)の間に手が動くことなどに起因して対象スペクトルA1又は標準スペクトルにノイズが生じることが考えられる。
図6に示す検査工程又は
図10に示す検査システム製造工程によれば、手の動きなどに起因して生じたノイズを多く含む対象スペクトルA1又は標準スペクトルを排除できる。例えば、分光モジュール20の振動に起因して生じたノイズを多く含む対象スペクトルA1又は標準スペクトルを排除できる。また、例えば、
図9の対象物検出工程S22又は
図12の標準試料検出工程S532において空気の反射光を取得し、この反射光が対象スペクトルA1や標準スペクトルの生成に用いられることに起因して生じたノイズを多く含む対象スペクトルA1又は標準スペクトルを排除できる。また、第1閾値TH1以上の第1ノイズ指標を有する対象スペクトルA1又は標準スペクトルが得られるまで検査工程又は回帰式作成工程S5を繰り返し実施できる。このため、適切な対象スペクトルA1又は標準スペクトルを記録できる。
【0115】
〔第2ノイズ評価工程の詳細〕
次に、第2ノイズ評価工程S15について詳述する。
図17に示す例では、第2ノイズ評価工程S15は、二次微分スペクトル生成工程S151と、第2ノイズ指標算出工程S152とを含む。
【0116】
まず、二次微分スペクトル生成工程S151について説明する。二次微分スペクトル生成工程S151においては、校正スペクトルを二次微分する。二次微分スペクトルを生成する。二次微分スペクトルの値が小さいことは、校正スペクトルに含まれているノイズが少ないことを意味する。
【0117】
第2ノイズ指標算出工程S152においては、二次微分スペクトルに基づいて標準偏差を算出する。例えば、まず、複数の波長点における二次微分スペクトルの値の標準偏差を算出する。二次微分スペクトルの全波長域に基づいて標準偏差が算出されてもよく、二次微分スペクトルの一部の波長域に基づいて標準偏差が算出されてもよい。例えば、
図18に示すように1600nm以上の波長域においては校正スペクトルの値が低下することが予想される場合、1600nm以上の波長域における二次微分スペクトルの値を考慮せずに標準偏差を算出してもよい。
【0118】
続いて、第2ノイズ指標算出工程S152においては、標準偏差に基づいて第2ノイズ指標を算出する。第2ノイズ指標は、校正スペクトルに含まれるノイズの程度の指標である。第2ノイズ指標は、例えば、標準偏差の逆数である。第2ノイズ指標が大きいことは、校正スペクトルに含まれるノイズが少ないことを意味する。第2ノイズ指標が小さいことは、校正スペクトルに含まれるノイズが多いことを意味する。
【0119】
なお、第2ノイズ指標が第2閾値TH2未満である場合、校正試料51の表面の全体又は一部が汚れていることが考えられる。この場合、校正試料51を別のものに変更するか、若しくは、校正試料51における測定位置を変更してもよい。その後、新たな校正試料51に対して、若しくは校正試料51の新たな測定位置に対して、
図7に示すように、工程S12、S13、S14及びS15を再び実施してもよい。
或いは、第2ノイズ指標が第2閾値TH2未満である場合、校正反射光の受光中に、手の動きなどに起因して分光モジュール20が校正試料51に対して移動したことが考えられる。この場合、同じ校正試料51の同じ測定位置に対して、若しくは同じ校正試料51の新たな測定位置に対して、
図7に示すように、工程S12、S13、S14及びS15を再び実施してもよい。
このような第2ノイズ評価工程S15を行うことにより、校正試料51の表面の汚れや手の動きなどに起因して生じたノイズを多く含む校正スペクトルを排除できる。また、第2閾値TH2以上の第2ノイズ指標を有する校正スペクトルが得られるまで校正工程を繰り返し実施できる。このため、適切な校正スペクトルを記録できる。
【0120】
検査用校正スペクトル生成工程S1では、第2閾値TH2以上の第2ノイズ指標を有するN個の校正スペクトルが得られるまで、工程S12、S13、S14及びS15が繰り返されてもよい。例えば、記録されている校正スペクトルの数がN個未満である場合、校正試料51における測定位置を変更してもよい。その後、校正試料51の新たな測定位置に対して、S12、S13、S14及びS15を再び実施してもよい。このような検査用校正スペクトル生成工程S1によれば、第2閾値TH2以上の第2ノイズ指標を有するN個の校正スペクトルを得ることができる。Nは、例えば2以上であり、3以上であってもよく、4以上であってもよい。Nは、例えば10以下であってもよい。
【0121】
検査用校正スペクトル生成工程S1においては、記録されているN個の校正スペクトルの平均を算出してもよい。これによって、平均化校正スペクトルを生成できる。平均化校正スペクトルの各波長点におけるスペクトル値は、N個の校正スペクトルのスペクトル値の平均値である。例えば、1200nmの波長点における平均化校正スペクトルの値は、N個の校正スペクトルの、1200nmの波長点における値の平均値である。
【0122】
上述の第1生成部251は、平均化校正スペクトルを基準として用いることにより対象スペクトルを生成してもよい。これにより、校正スペクトルのノイズの影響が対象スペクトルに現れることを更に抑制できる。
【0123】
〔ノイズが対象スペクトルに与える影響〕
次に、
図19乃至
図23を参照して、上述したノイズが対象スペクトル及び予測分子量に与える影響について説明する。ここでは校正スペクトルに含まれるノイズが対象スペクトル及び予測分子量に与える影響について説明する。
【0124】
図19は、対象物10の第1スペクトルとノイズの少ない校正スペクトルとを用いて生成された、対象物10の第2対象スペクトル(吸光度スペクトル)を示す図である。具体的には、
図19に示す例では、表面の汚れが無い校正試料51が用いられ、校正試料51に対して分光モジュール20がしっかりと固定された状態で校正反射光が受光された。そして、このような適切な条件で受光された校正反射光に基づいて、校正スペクトルが生成された。
図19には、1つの対象物10の9つの測定位置に対して行われた検査工程で生成された第2対象スペクトルが示されている。
図19に示す例では、生成された9つの第2対象スペクトルのノイズ指標は、それぞれ、9652.83、14216.5、10542.8、12783.5、12084.6、10231.1、13034.2、13440.5及び11907.5であった。
【0125】
図20は、対象物10の第1スペクトルとノイズの多い校正スペクトルとを用いて生成された、対象物10の第2対象スペクトル(吸光度スペクトル)を示す図である。
図20に示す例では、
図19に示す例で使用された対象物10及び校正試料51と同じ対象物10及び同じ校正試料51が用いられた。しかし、
図20に示す例では、校正スペクトルは、校正試料51から適切に受光された校正反射光と空気からの反射光とに基づいて生成された。空気からの反射光は、手の動きなどに起因して分光モジュール20が校正試料51から離れた状態で、検出装置24によって受光されたものと考えられる。
図20には、
図19に示す例と同様に、対象物10の9つの測定位置に対して行われた検査工程で生成された第2対象スペクトルが示されている。
図20に示す9つの第2対象スペクトルのノイズ指標は、それぞれ、77.0739、77.1067、77.0010、77.0618、77.0862、77.0764、77.0791、77.0143及び77.1123であった。
【0126】
図21は、対象物10の第1スペクトルとノイズの多い校正スペクトルとを用いて生成された、対象物10の第2対象スペクトル(吸光度スペクトル)を示す図である。
図21に示す例では、
図19に示す例で使用された対象物10及び校正試料51と同じ対象物10及び同じ校正試料51が用いられた。しかし、
図21に示す例では、校正反射光を受光する際、手の動きなどに起因して分光モジュール20が校正試料51に対して振動した。
図21には、
図19に示す例と同様に、対象物10の9つの測定位置に対して行われた検査工程で生成された第2対象スペクトルが示されている。
図21に示す9つの第2対象スペクトルのノイズ指標は、それぞれ、376.256、377.219、381.004、381.094、377.306、379.493、377.383、377.824及び376.819であった。
【0127】
図19乃至
図21から理解されるように、校正スペクトルのノイズは、校正スペクトルを用いて生成される対象スペクトルに影響を与える。そして、対象スペクトルに基づいて算出される予測分子量に影響を与える。
【0128】
図22には、分子量が130000、40000及び95000の樹脂材料を含む対象物10について、
図19に示す条件と同様の条件で算出された予測分子量と、
図20に示す条件と同様の条件で算出された予測分子量とが示されている。
図22において、
図19に示す条件で算出された予測分子量は、四角の記号で示されている。また、
図22において、
図20に示す条件で算出された予測分子量は、三角の記号で示されている。
図22から理解されるように、算出された予測分子量は、実際の分子量と大きく異なっていることがわかる。
【0129】
図23には、分子量が130000、40000及び95000の樹脂材料を含む対象物10について、
図19に示す条件と同様の条件で算出された予測分子量と、
図21に示す条件と同様の条件で算出された予測分子量とが示されている。
図23において、
図19に示す条件で算出された予測分子量は、四角の記号で示されている。また、
図23において、
図21に示す条件で算出された予測分子量は、丸の記号で示されている。
図23に示すように、算出された予測分子量のいくつかは負の値となっている。このことは、予測分子量を適切に算出できていないことを示している。
【0130】
なお、図示された例では、対象物10、校正試料51及び標準試料の反射光を利用して対象スペクトル、校正スペクトル及び標準スペクトルを生成したが、これに限られない。対象物10、校正試料51及び標準試料の透過光を利用して対象スペクトル、校正スペクトル及び標準スペクトルを生成してもよい。
この場合、パラメータ値算出工程S2、S53では、複数の波長点における透過光の強度の値が、各波長点に対応する複数のパラメータ値として算出されもよい。
また、この場合、吸光度Absは、例えば以下の式により算出される。
Abs=-log10(I/Io)
Iは、対象物10を透過した透過光の強度である。Ioは、校正試料を透過した透過光の強度である。
【0131】
また、図示された例では、回帰式は、対象物10の反射光又は透過光に基づいて得られる複数のパラメータ値と樹脂材料の分子量との関係を示すが、これに限られない。回帰式は、対象物10の反射光又は透過光に基づいて得られる複数のパラメータ値と、対象物10の樹脂材料の破断強度、線膨張係数、弾性係数、硬度、結晶度、その他の物性値との関係を示すものであってもよい。言い換えると、判定工程S3では、対象物10の樹脂材料の破断強度、線膨張係数、弾性係数、硬度、結晶度、その他の物性値が算出されてもよい。この場合も、算出された物性値に基づいて、対象物10の状態を判定することができる。
【0132】
〔第1の実施の形態の効果〕
第1の実施の形態によれば、照射装置21及び/又は検出装置24が冷却部29により冷却されることにより、対象物10、校正試料51又は標準試料からの反射光の強度を検出中に分光モジュール20の温度が上昇することが抑制される。これにより、対象物10、校正試料51又は標準試料からの反射光の強度を安定して検出するこができ、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0133】
なお、検出システム15が置かれている雰囲気温度が低い場合は、分光モジュール20の温度が分光モジュール20で検出される反射光の強度に影響を与えるほど上昇する、という虞は低い。この場合、照射装置21及び/又は検出装置24を冷却部29により冷却しなくてもよい。
【0134】
また、検出システム15が置かれている雰囲気温度が低く、当該雰囲気温度が分光モジュール20により検出される反射光の強度に影響を与える場合は、照射装置21及び/又は検出装置24を断熱性の高い材料で覆って、照射装置21及び/又は検出装置24の温度低下を防止してもよい。言い換えると、検査システム15は、照射装置21及び/又は検出装置24を覆う断熱材を備えていてもよい。あるいは、この場合、照射装置21及び/又は検出装置24をヒーター等で加熱してもよい。言い換えると、検査システム15は、照射装置21及び/又は検出装置24を加熱する加熱部を備えていてもよい。
【0135】
さらに、分光モジュール20による反射光の強度の検出は、分光モジュール20の電源を入れてからある程度の時間が経過してから行うことが好ましい。言い換えると、反射光を検出する前に、分光モジュール20を暖機運転することが好ましい。この場合、暖機運転中に照射装置21及び/又は検出装置24の温度が安定して、反射光の強度を安定して検出することができる。
【0136】
また、第1の実施の形態によれば、
図9に示す対象物第1ノイズ評価工程S24を実施することにより、対象スペクトルに含まれるノイズを評価できる。このため、手の動きなどに起因して生じたノイズを多く含む対象スペクトルを排除できる。また、第1閾値TH1以上の第1ノイズ指標を有する対象スペクトルが得られるまで対象パラメータ値算出工程S2を繰り返し実施できる。このため、適切な対象スペクトルを記録できる。従って、樹脂層12を構成する材料の状態を適切に判定できる。
【0137】
また、第1の実施の形態によれば、
図12に示す標準試料第1ノイズ評価工程S534を実施することにより、標準スペクトルに含まれるノイズを評価できる。このため、手の動きなどに起因して生じたノイズを多く含む標準スペクトルを排除できる。また、第1閾値TH1以上の第1ノイズ指標を有する標準スペクトルが得られるまで標準パラメータ値算出工程S53を繰り返し実施できる。このため、適切な標準スペクトルを記録できる。従って、樹脂層12を構成する材料の予測分子量を適切に算出可能な回帰式を作成することができる。
【0138】
また、第2ノイズ評価工程S15を実施することにより、校正スペクトルに含まれるノイズを評価できる。このため、校正試料51の表面が汚れていることなどに起因して生じたノイズを多く含む校正スペクトルを排除できる。また、第2閾値TH2以上の第2ノイズ指標を有する校正スペクトルが得られるまで検査用校正スペクトル記録工程S1を繰り返し実施できる。このため、適切な校正スペクトルを記録できる。従って、樹脂層12を構成する材料の組成を適切に判定できる。
【0139】
上述した一実施形態を様々に変更できる。以下、必要に応じて図面を参照しながら、その他の実施形態について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した一実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の一実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いる。重複する説明は省略する。また、上述した一実施形態において得られる作用効果がその他の実施形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略する場合もある。
【0140】
(第2の実施の形態)
次に、
図24乃至
図27を参照して、第2の実施の形態による検査システムについて説明する。第2の実施の形態による検査システムは、第1の実施の形態による検査システム15と比較して、判定工程S3で用いられる回帰式(すなわち、回帰式作成工程S5における回帰式の作成方法)が異なっている。その他の点は、第1の実施の形態による検査システム15と同様である。第2の実施の形態において、第1の実施の形態による検査システム15と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0141】
図24は、第2の実施の形態による検査システム15を示すブロック図である。
図24に示す検査システム15で用いられる回帰式には、次のような工夫がなされている。まず、本件発明者らは、同じ対象物10であっても、対象物10が置かれている雰囲気温度が変化すると、得られる反射スペクトルが変化することがあることを発見した。このことは、対象物10の樹脂材料の予測分子量及び予測分子量に基づく検査結果が、雰囲気温度による影響を受けることを意味する。そこで、第2の実施の形態の回帰式には、対象物10が置かれている雰囲気温度の変化に起因する予測分子量の変化を低減させるための工夫がなされている。
【0142】
対象物10が置かれている雰囲気温度が変化すると生成装置25で生成される反射スペクトルが変化する原因として、本件発明者らは、上記雰囲気温度が検出装置24で検出される反射光の強度(生成装置25で生成される反射スペクトルのピーク位置)に影響を与えることを見出した。すなわち、同じ対象物10によって反射された反射光であっても、対象物10が置かれている雰囲気温度によって、検出装置24で検出される反射光の強度が異なることを見出した。
【0143】
この点について、本件発明者らは、様々な(複数の)雰囲気温度に置かれた標準試料のパラメータ値に基づいて回帰式を作成すれば、対象反射光L2が取得される雰囲気温度の違いが予測分子量に与える影響を抑制することができることを発見した。すなわち、従来、回帰式の作成は、一の雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料の反射スペクトルに基づいて行われた。これに対し、標準試料を様々な雰囲気温度(例えば5℃、15℃、25℃、35℃)に置いて標準スペクトルを得、これら様々な雰囲気温度における標準スペクトルの情報を回帰式に反映させることにより、対象反射光L2が取得される雰囲気温度の違いが予測分子量に与える影響を抑制することができることを発見した。
【0144】
さらに、本件発明者らは、標準試料が置かれた雰囲気温度の違いによって標準スペクトルのピーク位置が概ね波長方向にのみ変化することを発見した。つまり、ある雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料から取得された標準反射光に基づいて生成された標準スペクトルを波長方向に平行移動させることにより、上記雰囲気温度とは異なる雰囲気温度(例えば5℃、15℃、35℃)に置かれた標準試料から取得される標準反射光に基づいて生成される標準スペクトルに似たスペクトルを得ることができることを発見した。したがって、標準反射光を実際に様々な雰囲気温度(例えば5℃、15℃、25℃、35℃)に置かれた標準試料から取得しなくても、一つの雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料から取得された標準反射光に基づいて生成される標準スペクトルから、上記複数の雰囲気温度に置かれた標準試料から取得される標準反射光に基づいて生成される標準スペクトルに似たスペクトルを、簡単に生成することができることを見出した。
【0145】
図25には、ある雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料から取得された標準反射光に基づいて生成された標準スペクトルB1が実線で示されている。また、
図25には、標準スペクトルB1を波長方向(
図25の横軸方向)に平行移動させることにより生成された複製標準スペクトルB11、B12、B13、B14、B15、B16が示されている。第1複製標準スペクトルB11は、標準スペクトルB1を波長方向に-1nm平行移動させることにより生成されたスペクトルである。第2複製標準スペクトルB12は、標準スペクトルB1を波長方向に-0.5nm平行移動させることにより生成されたスペクトルである。第3複製標準スペクトルB13は、標準スペクトルB1を波長方向に+0.5nm平行移動させることにより生成されたスペクトルである。第4複製標準スペクトルB14は、標準スペクトルB1を波長方向に+1nm平行移動させることにより生成されたスペクトルである。第5複製標準スペクトルB15は、標準スペクトルB1を波長方向に+1.5nm平行移動させることにより生成されたスペクトルである。第6複製標準スペクトルB16は、標準スペクトルB1を波長方向に+2nm平行移動させることにより生成されたスペクトルである。複製標準スペクトルB11、B12、B13、B14、B15、B16は、標準スペクトルB1が取得された標準試料を約-15~約45℃の雰囲気温度に置いて取得された標準反射光から生成される標準スペクトルに似ている。
【0146】
以上の点を考慮して、
図24に示す検査システム15で用いられる回帰式(汎用回帰式)は、次のようにして作成される。
まず、
図12の標準試料検出工程S532において、ある雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料からの標準反射光を取得する。そして、標準スペクトル生成工程S533において、上記標準反射光に基づいて標準スペクトル(
図12に示す例では第2標準スペクトル)を算出する。次に、標準スペクトルを波長方向に平行移動させて複製標準スペクトルを生成する。なお、複製標準スペクトルを生成する際に標準スペクトルを波長方向にどれだけ平行移動させるかは、検査システム15が置かれることが想定される雰囲気温度に基づいて決定される。例えば、検査システム15が5℃~35℃の雰囲気温度に置かれることが想定される場合には、25℃の雰囲気温度に置かれた標準試料からの標準反射光に基づいて生成された標準スペクトルを、波長方向(
図25の横軸方向)に-0.5nm~+1.0nm平行移動させて複製標準スペクトルを生成ればよい。この場合、5℃~35℃の雰囲気温度に置かれた標準試料からの標準反射光に基づいて生成される標準スペクトルに似た複製標準スペクトルを得ることができる。
次に、標準スペクトル及び複製標準スペクトルの各々に、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して、複数の波長点に対応する複数のパラメータ値をそれぞれ算出する。
そして、各標準試料の複数のパラメータ値(各標準試料の標準スペクトルに基づいて算出されたパラメータ値及び各標準スペクトルから生成された複製標準スペクトルに基づいて算出されたパラメータ値)と各標準試料の樹脂材料の分子量との関係を表す回帰式を、多変量解析手法を用いて作成する。
【0147】
このようにして得られた汎用回帰式を用いることにより、対象物10が置かれた雰囲気温度の変化が当該対象物10の樹脂材料の予測分子量に与える影響を、低減させることができる。とりわけ、標準反射光が取得された雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた対象物10からの対象反射光に基づいて算出された予測分子量と、標準反射光が取得された雰囲気温度(例えば25℃)以外の雰囲気温度(例えば0~24℃、26~40℃)に置かれた対象物10からの対象反射光に基づいて算出された予測分子量との違いを、小さくすることができる。このことは、標準反射光が取得された雰囲気温度(例えば25℃)以外の雰囲気温度(例えば0~24℃、26~40℃)に置かれた対象物10からの対象反射光に基づいて予測分子量を算出した場合であっても、当該対象物10の樹脂材料の実際の分子量に近い予測分子量を算出することができることを意味する。
【0148】
なお、上述の実施の形態においては、標準スペクトル及び複製標準スペクトルを用いて汎用回帰式を作成したが、これに限られない。汎用回帰式は、複製標準スペクトルのみを用いて作成されてもよい。
【0149】
図26に、5℃、15℃、25℃及び35℃の雰囲気温度に置かれた対象物10に対して、
図2に示す検査システム15を用いることにより算出された当該対象物10の樹脂材料の予測分子量と、当該樹脂材料の実際の分子量との関係が示されている。
図26に示す例では、回帰式として、25℃の雰囲気温度に置かれた標準試料からの標準反射光から生成された標準スペクトルに基づいて作成された標準回帰式が用いられている。また、
図27には、
図26に示す例と同じ雰囲気温度に置かれた同じ対象物10に対し、
図24に示す検査システム15を用いることにより算出された対象物10の樹脂材料の予測分子量と、当該樹脂材料の実際の分子量との関係が示されている。
図27に示す例では、回帰式として、25℃の雰囲気温度に置かれた標準試料からの標準反射光から生成された標準スペクトルと、当該標準スペクトルを波長方向に-0.5nm~+1.0nmの範囲で平行移動させることにより生成された複製標準スペクトルとに基づいて作成された汎用回帰式が用いられている。
図26及び
図27から理解されるように、
図24に示す検査システム15を用いて予測分子量を算出した場合、
図2に示す検査システム15を用いて予測分子量を算出した場合と比較して、対象物10が置かれていた雰囲気温度による予測分子量の違いが全体的に小さい。
【0150】
〔第2の実施の形態の効果〕
第2の実施の形態によれば、回帰式は、様々な雰囲気温度で取得される複数の標準スペクトルに各々対応する複数のスペクトル(標準スペクトル及び複製標準スペクトル)に基づいて作成されている。これにより、対象物10が置かれた雰囲気温度が変化することによる予測分子量の変化が抑制される。とりわけ、標準反射光が取得された雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた対象物10からの対象反射光に基づいて算出された予測分子量と、標準反射光が取得された雰囲気温度(例えば25℃)以外の雰囲気温度(例えば0~24℃、26~40℃)に置かれた対象物10からの対象反射光に基づいて算出された予測分子量との違いを、小さくすることができる。そして、標準反射光が取得された雰囲気温度(例えば25℃)以外の雰囲気温度(例えば0~24℃、26~40℃)に置かれた対象物10からの対象反射光に基づいて予測分子量を算出した場合であっても、当該対象物10の樹脂材料の実際の分子量に近い予測分子量を算出することができる。
【0151】
(第2の実施の形態の変形例)
第2の実施の形態の変形例では、複製標準スペクトルを用いずに、様々な雰囲気温度で実際に取得された標準反射光から生成された標準スペクトルを用いて汎用回帰式を作成する。例えば、第1の雰囲気温度(例えば5℃)に置かれた標準試料の標準スペクトルである第1標準スペクトルと、第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度(例えば15℃)に置かれた標準試料の標準スペクトルである第2標準スペクトルと、第1~第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度(例えば25℃)に置かれた標準試料の標準スペクトルである第3標準スペクトルと、第1~第3の雰囲気温度とは異なる第4の雰囲気温度(例えば35℃)に置かれた標準試料の標準スペクトルである第4標準スペクトルと、に平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施して得られるパラメータ値に基づいて、汎用回帰式を作成する。この場合も、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0152】
(第3の実施の形態)
次に、
図28乃至
図30を参照して、第3の実施の形態による検査システムについて説明する。第3の実施の形態による検査システムは、第1の実施の形態による検査システム15と比較して、判定工程S3で算出された予測分子量を温度別補正式で補正する点が異なっている。また、第1の実施の形態による検査システム15と比較して、温度モニタ30を備える点が異なっている。その他の点は、第1の実施の形態による検査システム15と同様である。第3の実施の形態において、第1の実施の形態による検査システム15と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0153】
図28は、第3の実施の形態による検査システム15を示すブロック図である。
図28に示す検査システム15は、温度モニタ30を備えている。また、判定装置28の記憶部281は、回帰式(
図28に示す例では標準回帰式)に加えて温度別補正式を記憶している。
【0154】
〔温度モニタ〕
温度モニタ30は、検査システム15の雰囲気温度(より具体的には、分光モジュール20が置かれている雰囲気温度)を測定する。温度モニタ30は、分光モジュール20に含まれていてもよい。温度モニタ30は、後述するケース40に収容されていてもよい。温度モニタ30は、分光モジュール20及びケース40から分離された構造を有していてもよい。温度モニタ30は、雰囲気温度に関する情報を判定装置28に伝える。
【0155】
上述したように、同じ対象物10であっても、対象物10が置かれている雰囲気温度が変化すると、得られる反射スペクトルが変化することがある。このため、対象物10の樹脂材料の予測分子量及び予測分子量に基づく検査結果が、雰囲気温度によって変化することがある。この点に関し、本件発明者らは、回帰式に基づいて算出された予測分子量を以下のようにして作成された温度別補正式で補正することにより、検査システム15で算出される分子量(補正分子量)を実際の分子量に近づけることができることを見出した。すなわち、回帰式だけでなく温度別補正式も用いて対象物10の状態を検査することにより、検査の精度が向上することを見出した。なお、温度別補正式は、判定装置28の記憶部281に予め記録されている。
【0156】
〔温度別補正式の作成方法〕
まず、温度別補正式の作成方法について説明する。
標準試料を第1の雰囲気温度(例えば5℃)に置いて、
図11及び
図12に示す標準パラメータ値算出工程S53を行う。次に、得られたパラメータ値を回帰式(
図28に示す例では標準回帰式)に回帰させて予測分子量を算出し、
図29に示すような散布図を描く。
図29では、縦軸yが回帰式に基づいて得られた標準試料の樹脂材料の予測分子量を示し、横軸xが標準試料の樹脂材料の実際の分子量を示す。そして、第1の雰囲気温度に置かれた標準試料の散布図の近似直線(第1の近似線C1)を求める。その後、第1の近似線C1の傾きを1にし、切片を零にするような、第1の温度別補正式y1を求める。例えば、第1の近似直線C1がy=ax+bで表される場合、第1の温度別補正式はy1=(y-b)/aとなる。
同様に、標準試料を第1の雰囲気温度とは異なる第2の雰囲気温度(例えば15℃)に置いて、
図11及び
図12に示す標準パラメータ値算出工程S53を行う。次に、得られたパラメータ値を回帰式に回帰させて予測分子量を算出し、
図29に示すような散布図を描く。そして、第2の雰囲気温度に置かれた標準試料の散布図の近似直線(第2の近似線C2)を求める。その後、第2の近似線C2の傾きを1にし、切片を零にするような、第2の温度別補正式y2を求める。第2の温度別補正式y2の求め方は、第1温度別補正式y1の求め方と同様である。
同様に、標準試料を第1~第2の雰囲気温度とは異なる第3の雰囲気温度(例えば25℃)に置いて、
図11及び
図12に示す標準パラメータ値算出工程S53を行う。次に、得られたパラメータ値を回帰式に回帰させて予測分子量を算出し、
図29に示すような散布図を描く。そして、第3の雰囲気温度に置かれた標準試料の散布図の近似直線(第3の近似線C3)を求める。その後、第3の近似線C3の傾きを1にし、切片を零にするような、第3の温度別補正式y3を求める。第3の温度別補正式y3の求め方も、第1温度別補正式y1の求め方と同様である。
同様に、標準試料を第1~第3の雰囲気温度とは異なる第4の雰囲気温度(例えば35℃)に置いて、
図11及び
図12に示す標準パラメータ値算出工程S53を行う。次に、得られたパラメータ値を回帰式に回帰させて予測分子量を算出し、
図29に示すような散布図を描く。そして、第4の雰囲気温度に置かれた標準試料の散布図の近似直線(第4の近似線C4)を求める。その後、第4の近似線C4の傾きを1にし、切片を零にするような、第4の温度別補正式y4を求める。第4の温度別補正式y4の求め方も、第1温度別補正式y1の求め方と同様である。
【0157】
〔温度別補正式を用いた検査方法〕
次に、上述の温度別補正式を用いて対象物10の状態を検査するための検査方法について説明する。
まず、
図6及び
図7に示す検査用校正スペクトル記録工程S1、並びに、
図6及び
図9に示す対象パラメータ値算出工程S2を行う。対象パラメータ値算出工程S2は、温度モニタ30によって対象物10の雰囲気温度(より具体的には、対象反射光L2を取得した際の雰囲気温度)を測定する温度測定工程を含む。
次に、
図6に示す判定工程S3を行う。判定工程S3においては、まず判定装置28の記憶部281に記憶された回帰式、及び対象パラメータ値算出工程S2において算出したパラメータ値に基づいて、解析部282が対象物10の樹脂材料の予測分子量を算出する。また、温度モニタ30によって測定された上記測定温度に基づいて、記憶部281に記録された第1~第4温度別補正式y1,y2,y3,y4のうち一の温度別補正式を選択する。次に、解析部282は、選択した温度補正式で予測分子量を補正することにより、補正分子量を算出する。
最後に、補正分子量に基づいて、判定部283において対象物10の状態を判定する。
【0158】
なお、記憶部281は、上記対象物10の雰囲気温度と温度補正式y1,y2,y3,y4との対応関係に関する情報を、予め記憶している。例えば、10℃未満の雰囲気温度に対応する温度補正式は第1の温度別補正式y1である、という情報を記憶している。また、10℃以上20℃未満の雰囲気温度に対応する温度補正式は第2の温度別補正式y2である、という情報を記憶している。また、20℃以上30℃未満の雰囲気温度に対応する温度補正式は第3の温度別補正式y3である、という情報を記憶している。また、30℃以上の雰囲気温度に対応する温度補正式は第4の温度別補正式y4である、という情報を記憶している。この場合、上記対象物10の雰囲気温度が10℃未満であれば、解析部282は、予測分子量を第1の温度別補正式y1で補正して、補正分子量を算出する。また、上記対象物10の雰囲気温度が10℃以上20℃未満であれば、解析部282は、予測分子量を第2の温度別補正式y2で補正して、補正分子量を算出する。また、上記対象物10の雰囲気温度が20℃以上30℃未満であれば、解析部282は、予測分子量を第3の温度別補正式y3で補正して、補正分子量を算出する。また、上記対象物10の雰囲気温度が30℃以上であれば、解析部282は、予測分子量を第4の温度別補正式y4で補正して、補正分子量を算出する。
【0159】
図30に、
図26に示す例と同じ雰囲気温度に置かれた同じ対象物10に対し、
図28に示す検査システム15を用いることにより算出された対象物10の樹脂材料の補正分子量と、当該樹脂材料の実際の分子量との関係を示す。
図26及び
図30から理解されるように、
図28に示す検査システム15を用いて算出された補正分子量は、
図2に示す検査システム15を用いて算出された予測分子量と比較して、対象物10が置かれていた雰囲気温度による違いが全体的に小さい。このことは、
図28に示す検査システム15によれば、対象物10が置かれていた雰囲気温度によって検査結果が変化することを抑制することができる、ということを意味する。
【0160】
〔第3の実施の形態の効果〕
第3の実施の形態によれば、予測分子量を温度別補正式で補正した補正分子量を用いて対象物10の検査を行っている。これにより、対象物10が置かれていた雰囲気温度によって検査結果が変化することを抑制することができる。
【0161】
(第4の実施の形態)
図31及び
図32を参照して、第4の実施の形態による検査システム15について説明する。第4の実施の形態による検査システム15は、第3の実施の形態の検査システム15と比較して、回帰式として第2の実施の形態の回帰式を用いる点が異なっている。その他の点は、第3の実施の形態の検査システム15と同様である。
【0162】
図31は、第4の実施の形態による検査システム15を示すブロック図である。
図31に示す検査システム15は、温度モニタ30を備えている。また、判定装置28の記憶部281は、汎用回帰式及び温度別補正式を記憶している。
【0163】
図32に、
図26に示す例と同じ雰囲気温度に置かれた同じ対象物10に対し、
図31に示す検査システム15を用いることにより算出された対象物10の樹脂材料の補正分子量と、当該樹脂材料の実際の分子量との関係を示す。
図26及び
図32から理解されるように、
図31に示す検査システム15を用いて算出された補正分子量は、
図2に示す検査システム15を用いて算出された予測分子量と比較して、対象物10が置かれていた雰囲気温度による違いが全体的に小さい。このことは、
図31に示す検査システム15によれば、対象物10が置かれていた雰囲気温度によって検査結果が変化することを抑制することができる、ということを意味する。
【0164】
さらに、
図30及び
図32から理解されるように、
図31に示す検査システム15を用いて算出された補正分子量は、
図28に示す検査システム15を用いて算出された補正分子量と比較して、実際の分子量に近いことが分かる。このことは、
図31に示す検査システム15によれば、対象物10をより精度高く検査することができる、ということを意味する。
【0165】
〔第4の実施の形態の効果〕
第4の実施の形態によれば、回帰式として、様々な雰囲気温度で取得される複数の標準スペクトルに各々対応する複数のスペクトル(標準スペクトル及び複製標準スペクトル)に基づいて作成された回帰式を用いている。そして、当該回帰式に基づいて算出された予測分子量を温度別補正式で補正して補正分子量を算出し、補正分子量を用いて対象物10の検査を行っている。これにより、対象物10が置かれていた雰囲気温度によって検査結果が変化することを抑制することができるだけでなく、対象物10をより精度高く検査することができる。
【0166】
(第5の実施の形態)
図33を参照して、第5の実施の形態による検査システム15について説明する。第5の実施の形態による検査システム15は、第1の実施の形態の検査システム15と比較して、温度モニタ30を備える点で異なっている。また、第5の実施の形態による検査システム15は、第1の実施の形態の検査システム15と比較して、対象物10が置かれた雰囲気温度によって判定工程S3で用いられる回帰式が異なる点が異なっている。その他の点は、第1の実施の形態の検査システム15と同様である。第5の実施の形態において、第1の実施の形態による検査システム15と同様の部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0167】
図33は、第5の実施の形態による検査システム15を示すブロック図である。
図33に示す検査システム15は、
図28に示す温度モニタ30と同様の温度モニタ30を備えている。また、判定装置28の記憶部281は、複数の回帰式を記憶している。
【0168】
上述したように、同じ対象物10であっても、対象物10が置かれている雰囲気温度が変化すると、得られる反射スペクトルが変化することがある。このため、対象物10の樹脂材料の予測分子量及び予測分子量に基づく検査結果が、雰囲気温度によって変化することがある。この点に関し、本件発明者らは、互いに異なる複数の回帰式を準備し、対象物10が置かれた雰囲気温度に応じて異なる回帰式を用いて予測分子量を算出することにより、予測分子量を実際の分子量に近づけることができることを見出した。
より具体的には、第1の雰囲気温度に置かれた標準試料の標準反射光から生成された第1標準スペクトルに基づいて作成された第1の回帰式と、第2の雰囲気温度に置かれた標準試料の標準反射光から生成された第2標準スペクトルに基づいて作成された第2の回帰式とを準備する。そして、対象物10の対象反射光が取得された際に温度モニタ30で測定された雰囲気温度に応じて、第1の回帰式及び第2の回帰式から一の回帰式を選択して、当該選択された回帰式を用いて予測分子量を算出する。
【0169】
図示された例では、制御装置28の記憶部281は、第1の回帰式と、第2の回帰式と、第3の回帰式と、第4の回帰式とを記憶している。
第1の回帰式は、5℃の雰囲気温度に置かれた標準試料の標準反射光から生成された標準スペクトル(すなわち、5℃の雰囲気温度で取得された標準反射光から生成された標準スペクトル)に基づいて作成されている。
第2の回帰式は、15℃の雰囲気温度に置かれた標準試料の標準反射光から生成された標準スペクトル(すなわち、15℃の雰囲気温度で取得された標準反射光から生成された標準スペクトル)に基づいて作成されている。
第3の回帰式は、25℃の雰囲気温度に置かれた標準試料の標準反射光から生成された標準スペクトル(すなわち、25℃の雰囲気温度で取得された標準反射光から生成された標準スペクトル)に基づいて作成されている。
第4の回帰式は、35℃の雰囲気温度に置かれた標準試料の標準反射光から生成された標準スペクトル(すなわち、35℃の雰囲気温度で取得された標準反射光から生成された標準スペクトル)に基づいて作成されている。
【0170】
〔複数の回帰式を用いた検査方法〕
次に、上述の複数の回帰式を用いて対象物10の状態を検査するための検査方法について説明する。
まず、
図6及び
図7に示す検査用校正スペクトル記録工程S1、並びに、
図6及び
図9に示す対象パラメータ値算出工程S2を行う。対象パラメータ値算出工程S2は、温度モニタ30によって対象物10の雰囲気温度(より具体的には、対象反射光L2を取得した際の雰囲気温度)を測定する温度測定工程を含む。
次に、
図6に示す判定工程S3を行う。判定工程S3においては、まず、制御装置28の解析部282は、対象反射光L2が取得された際に温度モニタ30により測定された雰囲気温度に応じて、第1~第4の回帰式の中から一の回帰式を選択する。次に、解析部282は、選択した回帰式に基づいて予測分子量を算出する。
最後に、予測分子量に基づいて、判定部283において対象物10の状態を判定する。
【0171】
なお、記憶部281は、上記対象物10の雰囲気温度と第1~第4の回帰式との対応関係に関する情報を、予め記憶している。例えば、10℃未満の雰囲気温度に対応する回帰式は第1の回帰式である、という情報を記憶している。また、10℃以上20℃未満の雰囲気温度に対応する回帰式は第2の回帰式である、という情報を記憶している。また、20℃以上30℃未満の雰囲気温度に対応する回帰式は第3の回帰式である、という情報を記憶している。また、30℃以上の雰囲気温度に対応する回帰式は第4の回帰式である、という情報を記憶している。この場合、上記対象物10の雰囲気温度が10℃未満であれば、解析部282は、第1~第4の回帰式の中から第1の回帰式を選択し、第1の回帰式に基づいて予測分子量を算出する。また、上記対象物10の雰囲気温度が10℃以上20℃未満であれば、解析部282は、第1~第4の回帰式の中から第2の回帰式を選択し、第2の回帰式に基づいて予測分子量を算出する。また、上記対象物10の雰囲気温度が20℃以上30℃未満であれば、解析部282は、第1~第4の回帰式の中から第3の回帰式を選択し、第3の回帰式に基づいて予測分子量を算出する。また、上記対象物10の雰囲気温度が30℃以上であれば、解析部282は、第1~第4の回帰式の中から第4の回帰式を選択し、第4の回帰式に基づいて予測分子量を算出する。
【0172】
〔第5の実施の形態の効果〕
第5の実施の形態によれば、互いに異なる複数の回帰式を準備し、対象物10が置かれた雰囲気温度に応じて異なる回帰式を用いて予測分子量を算出している。これにより、検査システム15で算出される予測分子量を実際の分子量に近づけることができる。そして、このようにして算出された予測分子量を用いて対象物10の検査を行うことにより、対象物10が置かれていた雰囲気温度によって検査結果が変化することを抑制することができる。
【0173】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態による検査システム15は、第1の実施の形態の検査システム15と比較して、検査工程の間にケース40が動くことを抑制するための工夫がなされている。これにより、対象スペクトルや校正スペクトルにノイズが生じる虞を抑制することができる。その他の点は、第1の実施の形態の検査システム15と同様である。
【0174】
図34は、第6の実施の形態による検査システム15のケース40の一例を示す斜視図である。
図34に示すように、ケース40は、第1面41又は外縁に設けられている第1摩擦層53を備えている。
図34に示す例において、第1摩擦層53は、第3外縁413及び第4外縁414に沿って第1面41に設けられている。
【0175】
第1摩擦層53と対象物10との間の静摩擦力は、第1面41と対象物10との間の静摩擦力よりも大きい。第1摩擦層53をケース40に設けることにより、検査工程の間にケース40が動くことを抑制できる。これにより、手の動きなどに起因して生じたノイズが対象スペクトルや校正スペクトルに現れることを抑制できる。
【0176】
第1摩擦層53の構成は任意である。例えば、第1摩擦層53は、第1面41に貼り付けられているテープの表面の層によって構成されていてもよい。テープとしては、株式会社マイスト製の滑り止めテープ アイテムNo.5187などを用いることができる。
【0177】
(第6の実施の形態の変形例)
第6の実施の形態の変形例による検査システム15も、検査工程の間にケース40が動くことを抑制するための工夫がなされている。第6の実施の形態の変形例による検査システム15は、第6の実施の形態の検査システム15と比較して、第1摩擦層53に代えて支持部材54を備えている点が異なっている。その他の点は、第6の実施の形態の検査システム15と同様である。
【0178】
図35は、第6の実施の形態の変形例による検査システム15のケース40の一例を示す斜視図である。
図35に示すように、ケース40は、側面に固定されている支持部材54を備えている。
図35に示す例において、ケース40は、第1側面43に固定されている1本の支持部材54、及び、第2側面44に固定されている2本の支持部材54を備える。図示はしないが、ケース40は、1本又は2本の支持部材54を備えていてもよく、4本以上の支持部材54を備えていてもよい。支持部材54は、第3側面45又は第4側面46に固定されていてもよい。
【0179】
支持部材54は、側面に固定されている第1部分541と、第1部分541に接続されている第2部分542を含んでいてもよい。第1部分541は、側面から第1面41に向かって延びていてもよい。第2部分542は、第1面41に平行に広がる面を含んでいてもよい。第2部分542は、検査工程の時に対象物10に接してもよい。これにより、検査工程の間、ケース40の姿勢をより安定に維持できる。このため、手の動きなどに起因して生じたノイズが対象スペクトルや校正スペクトルに現れることを抑制できる。
【0180】
図35に示すように、ケース40は、第2部分542に設けられている第2摩擦層55を備えていてもよい。第2摩擦層55は、例えばゴムを含む。第2摩擦層55は、検査工程の時に対象物10に接してもよい。第2摩擦層55と対象物10との間の静摩擦力は、第1面41と対象物10との間の静摩擦力よりも大きい。第2摩擦層55を第2部分542に設けることにより、検査工程の間にケース40が動くことを更に抑制できる。
【0181】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0182】
10 対象物
10x 第1面
10y 第2面
11 基材シート
12 樹脂層
15 検査システム
20 分光モジュール
21 照射装置
211 照射部
24 検出装置
241 検出部
25 生成装置
251 第1生成部
252 第2生成部
27 処理装置
271 第1処理部
272 第2処理部
28 判定装置
281 記憶部
282 解析部
283 判定部
29 冷却部
30 温度モニタ
40 ケース
41 第1面
42 第2面
48 ウインドウ
51 校正試料
53 第1摩擦層
54 支持部材
541 第1部分
542 第2部分
55 第2摩擦層