IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱転写受像シート 図1
  • 特許-熱転写受像シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】熱転写受像シート
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B41M5/52 400
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020205116
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092348
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】川崎 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】下形 貴宣
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-132747(JP,A)
【文献】特開平07-309073(JP,A)
【文献】特開2003-034084(JP,A)
【文献】特開平07-276826(JP,A)
【文献】特開2011-201258(JP,A)
【文献】特開2003-063152(JP,A)
【文献】特開2009-196322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0026940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/035
B41M 5/26-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、多孔質層と、白色層と、中間層と、受容層とを順に備える熱転写受像シートであって、
前記熱転写受像シートは、前記白色層と前記中間層との間に光沢付与層を備え、
前記光沢付与層は、厚さが15μm以上100μm以下の、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記中間層は、粒子及びバインダーを含む、熱転写受像シート。
【請求項2】
前記粒子が扁平粒子である、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記粒子は、タルク及びマイカからなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含む、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記粒子の含有量が、10質量%以上70質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱転写画像を有する印画物を製造する手段として、昇華性染料を含有する色材層を備えた熱転写シートと、受容層を備えた熱転写受像シートとを組み合わせる昇華転写方式が知られている。昇華転写方式は、熱転写シートにエネルギーを印加し、熱転写シートの色材層が含有する昇華性染料を、熱転写受像シートの受容層に移行して、画像を形成する方式である。
【0003】
昇華転写方式によって高画質の画像を形成するためには、熱転写受像シートの熱転写感度が高いことが重要である。それには、熱転写受像シートの受容層への効果的な熱の伝達と、受容層から基材側への熱の伝達の抑制が重要である。このような受容層から基材側への熱伝達を抑えるために、熱転写受像シートの基材と受容層の間に、断熱性を備えた多孔質構造を有する層(以下、多孔質層とも称する)を設けることが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、熱転写受像シートには、画像の鮮明度を高めるために、高い白色度を有することが望まれる。熱転写受像シートの白色度を向上するために、熱転写受像シートにおいて、白色顔料を含む白色層を設けることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-130892号公報
【文献】特開2006-327060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多孔質層を備える熱転写受像シートは、得られた印画物の印画部分に凹みが発生し、画像にエンボスが生ずるという問題点があった。
また、白色顔料等を含む白色層を備える熱転写受像シートにおいては、白色顔料等によって、受容層の表面が粗面となり、光沢感が無くなるという問題点があった。
【0007】
本開示は上記知見に鑑みてなされたものであり、その目的は、白色性に優れる熱転写受像シートであると共に、画像の濃度及び光沢感に優れ、且つ、エンボスが抑制された印画物を形成できる熱転写受像シートの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
今般、本発明者らは、熱転写受像シートにおいて、基材と、受像層との間に、多孔質層、白色層、光沢付与層及び中間層を設けると共に、これらの層の積層順を規定することにより、上記目的を達成できることを見出した。また、本発明者らは、光沢付与層及び中間層を特定の構成とすることによって、熱転写受像シートを使用して得られた印画物におけるエンボスを著しく抑制できることを見出した。
【0009】
従って、本開示の熱転写受像シートは、以下の通りである。
【0010】
本開示は、基材と、多孔質層と、白色層と、中間層と、受容層とを順に備える熱転写受像シートであって、
熱転写受像シートは、白色層と中間層との間に光沢付与層を備え、
光沢付与層が、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
中間層は、粒子及びバインダーを含む、熱転写受像シートである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、白色性に優れる熱転写受像シートであると共に、画像の濃度及び光沢感に優れ、且つ、エンボスが抑制された印画物を形成できる熱転写受像シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の熱転写受像シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図2】本開示の熱転写受像シートの一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[熱転写受像シート]
本開示の熱転写受像シートは、基材と、多孔質層と、白色層と、中間層と、受容層とを順に備え、白色層と中間層との間に光沢付与層を備える。本開示の熱転写受像シートは、任意の層間に接着層を更に備えてもよい。
【0014】
上記の通り、本開示の熱転写受像シートは、白色層と中間層との間に光沢付与層を備える。即ち、光沢付与層は、白色層よりも受容層側に設けられている。
白色層よりも光沢付与層が基材側に位置する場合、白色層に含まれる白色顔料によって受容層表面が粗面となり、印画物に光沢感を付与することが困難となる。本開示の熱転写受像シートのように、光沢付与層を白色層よりも受容層側に設け、更に光沢付与層を、後述するポリエチレンテレフタレートフィルムとすることにより、受容層表面が滑らかとなり、印画物に光沢感を付与できる。
また、熱転写受像シートは、多孔質層を備えることにより、印画時における受容層から基材側への熱の伝達を抑制し、画像の濃度に優れる印画物を製造できるが、その一方で、多孔質層を備える熱転写受像シートを印画物の製造に使用すると、得られた印画物にエンボスが発生する。本開示による熱転写受像シートは、多孔質層と受容層側との間に位置する中間層が粒子を含むことにより、エンボスが著しく抑制された印画物を製造できる。この理由は、中間層に含まれる粒子が、印画時に加わる熱を中間層内で分散し、多孔質層に加わる熱が面方向において均一に分散されるためであると考えられる。更に、本開示による熱転写受像シートは、耐熱性が高く、且つ熱変形しにくいポリエチレンテレフタレートフィルムが、多孔質層と受容層との間に位置することにより、エンボスがより抑制された印画物を製造できる。
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の熱転写受像シートを説明する。
【0016】
本開示の熱転写受像シート10は、図1に示すように、基材11と、多孔質層12と、白色層13と、光沢付与層14と、中間層15と、受容層16とを順に備える。
【0017】
一実施形態において、本開示の熱転写受像シート10は、図2に示すように、基材11と、第2接着層18と、多孔質層12と、白色層13と、第1接着層17と、光沢付与層14と、中間層15と、受容層16とを順に備える。
【0018】
以下、熱転写受像シートが備え得る各層について説明する。
【0019】
<基材>
基材は、熱転写時に加えられる熱エネルギー(例えば、サーマルヘッドによる熱)に耐え得る耐熱性を有し、基材上に設けられる受容層等を支持できる機械的強度を有する。
基材として、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙、上質紙、アート紙、コート紙、ノンコート紙、キャストコート紙、壁紙、セルロース繊維紙、合成樹脂内添紙、及び裏打用紙及び含浸紙(合成樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙)等の紙基材やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6及びナイロン6,6等のポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドン(PVP)等のビニル樹脂、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリイミド及びポリエーテルイミド等のポリイミド、セロファン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロース樹脂、ポリスチレン(PS)等のポリスチレン、ポリカーボネート、並びにアイオノマー樹脂等から構成されるフィルム(以下、単に「樹脂フィルム」という。)を使用できる。該樹脂フィルムは、延伸フィルムであっても、未延伸フィルムであってもよいが、強度という観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムを使用することが好ましい。
なお、本開示において、「(メタ)アクリル」には「アクリル」と「メタクリル」の両方が包含される。
また、本開示において、「(メタ)アクリレート」には「アクリレート」と「メタクリレート」の両方が包含される。
基材は、プリンタ内における搬送性や機械的強度の観点から、紙基材であることが好ましい。
【0020】
また、上記した紙基材単独からなる積層体、樹脂フィルム単独からなる積層体、又は紙基材と樹脂フィルムとの積層体を基材として使用することもできる。
これら積層体は、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法及びエクストリュージョン法等を利用することにより作製できる。
【0021】
<受容層>
受容層は、熱転写シートが備える染料層から移行してくる昇華性染料を受容し、形成された画像を維持する層である。
【0022】
受容層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含む。受容層に含まれる樹脂材料は、透明性を有するものであり、例えば、ポリオレフィン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル、アミド樹脂、ポリカーボネート、スチレン樹脂、ポリウレタン及びアイオノマー樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において、透明とは、可視光が十分透過すればよく、無色又は有色で透明なものも含まれる。
【0023】
一実施形態において、受容層の全光線透過率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
本明細書において、全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定できる。
【0024】
受容層における上記樹脂材料の含有量は、80質量%以上98質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。
【0025】
一実施形態において、受容層は、1種又は2種以上の離型材を含む。これにより、熱転写シートとの離型性を向上できる。
受容層に含まれる離型材としては、例えば、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素又はリン酸エステル界面活性材、シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、及び各種シリコーン樹脂等が挙げられる。上記シリコーンオイルとしては油状のものも用いることができるが、変性シリコーンオイルが好ましい。変性シリコーンオイルとしてはアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ-アラルキル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等を好ましく、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ-アラルキル変性シリコーンが特に好ましい。
【0026】
受容層における離型材の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。これにより、受容層の透明性を維持しつつ、熱転写シートとの離型性を向上できる。
【0027】
受容層は、1種又は2種以上の添加材を含んでもよい。受容層に含まれる添加材としては、例えば、可塑材、紫外線安定化材、着色防止材、界面活性材、蛍光増白材、艶消し材、消臭材、難燃材、耐候材、帯電防止材、摩擦低減材、スリップ材、抗酸化材、イオン交換材、分散材、及び紫外線吸収材等が挙げられる。
【0028】
受容層の厚さは、0.5μm以上20μm以下が好ましい。
受容層の厚さを0.5μm以上とすることにより、受容層上に形成される画像の濃度及び熱転写受像シートの凹カール発生抑制性をより向上できる。受容層の厚さは、1.0μm以上がより好ましい。
受容層の厚さを20μm以下とすることにより、受容層の透明性を向上できる。受容層の厚さは、10μm以下がより好ましい。
【0029】
受容層は、上記材料を水又は適当な溶剤へ分散又は溶解して、公知の塗布手段により、中間層等の上に塗布して塗膜を形成させ、これを乾燥させることにより形成できる。公知の塗布手段としては、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法等が挙げられる。
【0030】
<白色層>
白色層は、画像の鮮明度を向上させるための層である。白色層は、白色顔料と、バインダーとを含む。また、白色層に接着層としての機能を付与する場合には、従来公知の接着性を有するバインダーを使用しても、接着剤を含有させてもよい。
【0031】
白色顔料としては、例えば、酸化チタン及び酸化亜鉛等の白色顔料、シリカ、アルミナ、クレイ、タルク、炭酸カルシウム及び硫酸バリウム等の無機粒子や充填材、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂等の樹脂粒子(プラスチックピグメント)が用いられる。また、白色顔料は、これらを2種以上含んでもよい。なお、酸化チタンには、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとがあるが、いずれであってもよい。
【0032】
白色顔料の含有量は、白色層における固形分総量に対して、50質量%以上75質量%以下が好ましい。
白色顔料の含有量を50質量%以上とすることにより、熱転写受像シートの白色性をより向上して、画像の鮮明度をより向上できる。白色顔料の含有量は、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましい。
白色顔料の含有量を75質量%以下とすることにより、他の層との密着性を向上できる。白色顔料の含有量は、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
【0033】
バインダーは、従来公知のものを用いることができる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂及びセルロース樹脂等が挙げられる。
【0034】
バインダーの含有量は、白色層における固形分総量に対して、25質量%以上50質量%以下が好ましい。
バインダーの含有量を25質量%以上とすることにより、他の層との密着性を向上でき、また白色顔料を白色層中に良好に分散できる。バインダーの含有量は、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。
バインダーの含有量を50質量%以下とすることにより、白色層における白色顔料の含有量を確保でき、熱転写受像シートの白色性をより向上して、画像の鮮明度をより向上できる。バインダーの含有量は、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0035】
白色層は、上記白色顔料とバインダーとの他に、蛍光増白材を含んでもよい。蛍光増白材としては、例えば、スチルベンゼン化合物やピラゾリン化合物等のような蛍光増白効果のある公知化合物を使用できる。
【0036】
白色層の厚さは、0.5μm以上3.0μm以下が好ましい。
白色層の厚さを0.5μm以上とすることにより、熱転写受像シートの白色性をより向上して、画像の鮮明度をより向上できる。
白色層の厚さを3.0μm以下とすることにより、白色層を形成する際に、塗膜の塗工を容易に行うことができ、熱転写受像シートの生産性を向上できる。
【0037】
一実施形態において、白色層は、全光線透過率が60%以下の層である。白色層の全光線透過率を60%以下とすることにより、画像の鮮明度をより向上できる。白色層の全光線透過率は、50%以下が好ましく、40%以下が更に好ましい。このような白色層は、白色層の組成や厚さを適宜選択することより形成できる。
【0038】
白色層は、1種又は2種以上の上記添加材を含んでもよい。
【0039】
白色層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、多孔質層又は光沢付与層等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0040】
<多孔質層>
多孔質層は、基材と白色層との間に位置する層、即ち、光沢付与層及び中間層よりも基材側に位置する層である。本開示の熱転写受像シートが多孔質層を備えることにより、印画時における受容層から基材側への熱の伝達を抑制し、画像の濃度に優れる印画物を製造できる。また、本開示の熱転写受像シートは、多孔質層を備えることにより、熱転写受像シートのマルテンス硬さが低減されてクッション性が向上し、受容層上への保護層を転写する際に、未転写部の発生を抑制する、即ち、保護層転写性を向上できる。
なお、熱転写受像シートにおける熱伝達の確認は、熱転写受像シートの熱伝導率を測定することにより実施できる。
本明細書において、熱伝導率の測定は、JIS R2616:2001に記載の非定常熱線法に準拠して、熱伝導率計(京都電子工業(株)製、QTM-500)を用いて、熱転写受像シートの受容層側から実施できる。
本明細書において、マルテンス硬さの測定は、ISO 14577:2002に準拠して、硬度計(エフアイテック(株)製、FISCHERSCOPE H100VS)を用いて、熱転写受像シートの受容層側から実施できる。
【0041】
一実施態様において、多孔質層は、内部に微細空隙を有する多孔質フィルムにより構成される。
多孔質フィルムを構成する樹脂材料としては、PE及びPP等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、PET及びPBT等のポリエステル、スチレン樹脂、並びにポリアミド等が挙げられる。
上記した中でも、多孔質フィルムの状態で、フィルムの平滑性、断熱性及びクッション性が高い、PP及びPETがより好ましく、PPが更に好ましい。
【0042】
多孔質層は、1種又は2種以上の上記添加材を含んでもよい。
【0043】
多孔質フィルムは、公知の方法により製造できる。多孔質フィルムは、例えば、上記した樹脂材料に対し、非相溶な有機粒子又は無機粒子を混練した混合物をフィルム化することにより作製できる。
また、一実施態様において、多孔質フィルムは、第1の樹脂材料と、第1の樹脂材料より高い融点を有する第2の樹脂材料を含む混合物をフィルム化することにより作製できる。
なお、上記方法により作製される多孔質フィルムに限定されるものではなく、市販されている多孔質フィルムを使用してもよい。
【0044】
多孔質フィルムの厚さは、10μm以上100μm以下が好ましく、15μm以上50μm以下がより好ましい。これにより、受容層に形成される画像の濃度をより向上できると共に、受容層上への保護層転写性をより向上できる。
【0045】
一実施形態において、多孔質層は、中空粒子及びバインダーを含む中空粒子含有層である。
中空粒子は、樹脂材料等から構成される有機中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機中空粒子であってもよい。中空粒子は、分散性に優れるという理由から、有機中空粒子が好ましい。
有機中空粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、イミド樹脂及びポリカーボネート等が挙げられる。
中空粒子は、発泡粒子であっても、非発泡粒子であってもよい。
【0046】
一実施形態において、中空粒子は、樹脂粒子等中にブタンガス等の発泡材を封入し、加熱発泡することにより作製できる。
一実施形態において、中空粒子は、エマルジョン重合を利用することによっても作製できる。
中空粒子として、市販されている中空粒子を使用してもよい。
【0047】
中空粒子含有層に含まれるバインダーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、セルロース樹脂、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、スチレン樹脂、ゼラチン及びその誘導体、スチレンアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸及びその塩、寒天、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、ι-カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸並びにアラビアゴム等が挙げられる。これらの中でも、多孔質層に接着層としての機能を付与できるため、スチレンアクリル酸エステルが好ましい。
【0048】
中空粒子含有層におけるバインダーの含有量は、20質量%以上75質量%以下が好ましく、50質量%以上70質量%以下がより好ましい。これにより、受容層に形成される画像の濃度をより向上できると共に、受容層上への保護層転写性をより向上できる。
【0049】
中空粒子含有層は、1種又は2種以上の上記添加材を含んでもよい。
【0050】
中空粒子含有層の厚さは、0.1μm以上10.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。これにより、受容層に形成される画像の濃度をより向上できると共に、受容層上への保護層転写性をより向上できる。
【0051】
中空粒子含有層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、基材又は白色層等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0052】
<光沢付与層>
光沢付与層は、受容層と白色層との間に位置する層である。光沢付与層は、熱転写受像シートを用いて得られる印画物に光沢感を付与するための層であり、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムである。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、耐熱性が高く、且つ熱変形しにくいため、ポリエチレンテレフタレートフィルムが多孔質層と受容層との間に位置することにより、印画物におけるエンボスをより抑制できる。
光沢付与層は、単層のポリエチレンテレフタレートフィルムであっても、複数のポリエチレンテレフタレートフィルムの積層フィルムであってもよい。
【0053】
一実施形態において、光沢付与層の全光線透過率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
【0054】
ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとを主成分として含むモノマー組成物の重合により得られるポリマーである。
ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸及びエチレングリコール以外のジカルボン酸化合物及びジオール化合物を重合成分として含んでもよいが、その構成割合は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0055】
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコサンジオン酸、メチルマロン酸及びエチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸;アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びデカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸及び9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は、これらを2種以上含んでもよい。
エチレングリコール以外のジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオール、パラキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS及びスチレングリコールが挙げられる。ジオールは、これらを2種以上含んでもよい。
【0056】
ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物以外の重合成分を含んでもよいが、その構成割合は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0057】
ポリエチレンテレフタレートフィルムは、延伸フィルムであっても、未延伸フィルムであってもよいが、光沢付与性の観点からは、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムを使用することが好ましい。
【0058】
光沢付与層の厚さは、10μm以上100μm以下が好ましい。
光沢付与層の厚さを10μm以上とすることにより、熱転写受像シートの光沢感をより向上できる。光沢付与層の厚さは、15μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。
光沢付与層の厚さを100μm以下とすることにより、熱転写受像シートの白色性の低下を抑制でき、画像の鮮明度をより向上できる。光沢付与層の厚さは、35μm以下がより好ましく、25μm以下が更に好ましい。
【0059】
光沢付与層は、1種又は2種以上の上記添加材を含んでもよい。
【0060】
<中間層>
中間層は、受容層と光沢付与層との間に位置する層である。中間層は、粒子と、粒子を分散させるバインダーとを含む。中間層が粒子を含むことにより、エンボスが著しく抑制された印画物を製造できる。この理由は、粒子が印画時に加わる熱を分散し、多孔質層に加わる熱が面方向に均一に分散されるためであると考えられる。具体的には、形成される画像の種類によって、受容層に局所的に熱が加わる場合があるところ、この熱を粒子が中間層内において分散させ、多孔質層に加わる熱が面方向で均一に分散されるためであると考えられる。
【0061】
中間層に含まれる粒子は、扁平粒子であることが好ましい。中間層に含まれる粒子を扁平粒子とすることにより、上記した熱の分散がより向上し、エンボスをより抑制できる。
本明細書において、扁平粒子とは、略板状の粒子である。扁平粒子のアスペクト比(平均径/厚さ)は、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。なお、アスペクト比は、板の厚さに対する板の面における平均径(平均径/厚さ)の比である。
上記平均径は、レーザー回折・散乱法により測定できる。また、扁平粒子の厚さは、測定対象となる粒子群から所定の数(好ましくは100個以上)の扁平粒子を抜き出し、電子顕微鏡を用いてそれらの厚さを計測することにより測定できる。
【0062】
扁平粒子の平均径は、1μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上15μm以下がより好ましい。
扁平粒子の厚さは、0.1μm以上5μm以下が好ましく、0.5μm以上1.5μm以下がより好ましい。
【0063】
粒子の含有量は、中間層における固形分総量に対して、10質量%以上70質量%以下が好ましい。
粒子の含有量を10質量%以上とすることにより、印画物におけるエンボスをより抑制できる。粒子の含有量は、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
粒子の含有量を70質量%以下とすることにより、他の層との密着性を向上できる。粒子の含有量は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0064】
粒子は、無機材料を含む。無機材料としては、例えば、天然マイカ及び合成マイカ等のマイカ、タルク、ガラス、アルミ並びにアルミナ等が挙げられる。これらの中でも、良好な扁平形状を有し、入手容易であることから、粒子は、マイカ及びタルクからなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含むことが好ましい。また、粒子は、2種以上の無機材料を含むことが好ましく、マイカ及びタルクを含むことがより好ましい。粒子が2種以上の無機材料を含むことにより、驚くべきことに、エンボスをより抑制できる。
【0065】
粒子は、被覆顔料であってもよい。被覆顔料とは、芯材を金属又は金属酸化物等の被覆材により被覆した粒子を意味する。
【0066】
芯材としては、上記無機材料が挙げられる。芯材としては、マイカが好ましい。
【0067】
被覆材としては、アルミニウム、鉄、チタン、ジルコニウム、ケイ素、セリウム、ニッケル、クロム、真鍮、錫、黄銅、青銅、亜鉛、銀、白金、金及びこれらの酸化物等が挙げられる。これらの中でも透明性の観点から、金属酸化物が好ましく、酸化チタンがより好ましい。
【0068】
中間層に含まれるバインダーは、従来公知のものを用いることができる。バインダーは、透明性を有するものであり、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂及びセルロース樹脂等が挙げられる。
【0069】
一実施形態において、中間層の全光線透過率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0070】
バインダーの含有量は中間層における固形分総量に対して、30質量%以上90質量%以下が好ましい。
バインダーの含有量を30質量%以上とすることにより、他の層との密着性を向上でき、また、扁平粒子を中間層中に良好に分散できる。バインダーの含有量は、40質量量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
バインダーの含有量を90質量%以下とすることにより、中間層における扁平粒子の含有量を確保でき、印画物におけるエンボスをより抑制できる。バインダーの含有量は、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
【0071】
中間層は、帯電防止材及び/又は上記添加材を含んでもよい。
中間層に含まれる帯電防止材としては、例えば、アニオン性界面活性材、カチオン性界面活性材、非イオン性界面活性材、両性界面活性材等が挙げられる。
【0072】
中間層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、光沢付与層等の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
【0073】
<接着層>
本開示の熱転写受像シートは、任意の層間に、接着層を備える。これにより、層間の密着性を向上できる。
【0074】
接着層は、1種又は2種以上の樹脂材料を含む。接着層に含まれる樹脂材料としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、PVB、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、PE及びPP等のポリオレフィン、PET及びPBT等のポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート及びポリメチルメタアクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、セルロースジアスターゼ等のセルロース樹脂、ポリオール樹脂、ポリアミド、イミド樹脂並びにポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、接着層はポリウレタンを含むことが好ましい。接着層のポリウレタンは、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物との硬化物が好ましい。
接着層が白色層よりも受容層側に位置する場合、接着層に含まれる樹脂材料は透明性を有するものを用いる。
【0075】
接着層は、1種又は2種以上の上記添加材を含んでもよい。
【0076】
接着層の厚さは、例えば、0.5μm以上10μm以下である。
【0077】
接着層は、上記材料を適当な溶媒へ分散又は溶解して、塗工液を作成し、上記塗布手段により、任意の層の上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥することにより形成できる。
また、一実施形態において、接着層は、上記材料を含む樹脂組成物を溶融押出することにより形成できる。
【0078】
上記した各層を備える熱転写受像シートは、従来公知の方法により製造できる。製造方法としては、例えば、1)基材上に、各層を構成する材料を含む塗工液を順に塗布、乾燥して、熱転写受像シートを製造する方法;2)基材と、多孔質層と、白色層とを備える積層体A、及び光沢層と、中間層と、受容層とを備える積層体Bを別々に作製し、接着層等を介して積層体Aと積層体Bを貼り合わせることにより、熱転写受像シートを製造する方法;3)多孔質層と、白色層と、光沢層と、中間層と、受容層とを備える積層体Cとを作製し、接着層等を介して基材と積層体Cを貼り合わせることにより、熱転写受像シートを製造する方法;並びに4)積層体A、及び光沢層と、中間層とを備える積層体Dを別々に作製し、接着層等を介して積層体Aと積層体Dを貼り合わせ、次いで、中間層上に受容層を構成する材料を含む塗工液を塗布、乾燥して、熱転写受像シートを製造する方法等が挙げられる。
【0079】
以下に、本開示の熱転写受像シートの一実施形態を示す。なお、本開示の熱転写受像シートは、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0080】
本開示は、基材と、多孔質層と、白色層と、中間層と、受容層とを順に備える熱転写受像シートであって、
熱転写受像シートは、白色層と中間層との間に光沢付与層を備え、
光沢付与層が、透明なポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
中間層は、粒子及びバインダーを含む、熱転写受像シートである。
【0081】
一実施形態において、粒子が扁平粒子である。
【0082】
一実施形態において、粒子は、タルク及びマイカからなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含む。
【0083】
一実施形態において、粒子の含有量が、10質量%以上70質量%以下である。
【0084】
一実施形態において、光沢付与層の厚さが、10μm以上100μm以下である。
【実施例
【0085】
次に実施例を挙げて、本開示を詳細に説明するが、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
基材として、厚さ190μmの両面レジンコート紙(三菱製紙(株)製)を準備した。
基材の一方の面に、下記組成の接着層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ3.5μmの第1接着層を形成すると共に、第1接着層を介して、多孔質層として、厚さ36μmの多孔質ポリプロピレン(PP)フィルム(三井化学東セロ(株)製、SP-U)を積層した。
次いで、上記多孔質PPフィルム上に、下記組成の白色層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ1.5μmの白色層を形成した。
次いで、上記白色層上に、接着層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ3.5μmの第2接着層を形成すると共に、第2接着層を介して、光沢付与層として、厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡(株)製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム E500)を積層した。
次いで、上記PETフィルム上に、下記組成の中間層用塗工液1を塗布、乾燥し、厚さ1.0μmの中間層を形成した。
次いで、上記中間層上に、下記組成の受容層用塗工液を塗布、乾燥し、厚さ4.0μm、の受容層を形成し、熱転写受像シートを得た。本実施例の熱転写受像シートの層構成を表1に示す。
【0087】
<接着層用塗工液>
・ポリオール化合物 30質量部
(三井化学(株)、タケラック(登録商標)A-969V)
・イソシアネート化合物 10質量部
(三井化学(株)製、タケネート(登録商標)A-5)
・酢酸エチル 60質量部
【0088】
<白色層用塗工液>
・ポリウレタン 12質量部
(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標)5199)
・酸化チタン 18質量部
(トーケムプロダクツ(株)製、TCA888)
・メチルエチルケトン(MEK) 150質量部
<中間層用塗工液1>
・ポリウレタン 15質量部
(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標)5199)
・シルバーパールマイカ顔料 15質量部
(メルク(株)製、イリオジン(登録商標)123 ブライトラスターサテン)
・MEK 150質量部
【0089】
<受容層用塗工液>
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 60質量部
(日信化学工業(株)製、ソルバイン(登録商標)C)
・エポキシ変性シリコーン樹脂 1.2質量部
(信越化学工業(株)製、X-22-3000T)
・メチルスチル変性シリコーン樹脂 0.6質量部
(信越化学工業(株)製、X-24-510)
・MEK 2.5質量部
・トルエン 2.5質量部
【0090】
[実施例2]
被覆粒子(シルバーパールマイカ顔料)をタルク(日本タルク工業(株)製、ミクロエース(登録商標)P-3)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シートを得た。本実施例の熱転写受像シートの層構成を表1に示す。
【0091】
[実施例3]
中間層用塗工液1に替えて、中間層用塗工液2を用いて中間層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シートを得た。
<中間層用塗工液2>
・ポリウレタン 15質量部
(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標)5199)
・シルバーパールマイカ顔料 7.5質量部
(メルク(株)製、イリオジン(登録商標)123 ブライトラスターサテン)
・タルク 7.5質量部
(日本タルク工業(株)製、ミクロエース(登録商標)P-3)
・MEK 150質量部
【0092】
[比較例1]
第2接着層、光沢付与層及び中間層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして熱転写受容シートを得た。本比較例の熱転写受像シートの層構成を表1に示す。
【0093】
[比較例2]
多孔質層、白色層及び第2第接着層を形成せず、中間層用塗工液1に替えて、下記組成の中間層用塗工液3を用いて中間層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シートを得た。
【0094】
<中間層用塗工液3>
・ポリウレタン 30質量部
(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標)5199)
・MEK 150質量部
【0095】
[比較例3]
白色層を形成せず、中間層用塗工液1に替えて、中間層用塗工液3を用いて中間層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シートを得た。本比較例の熱転写受像シートの層構成を表1に示す。
【0096】
[比較例4]
中間層用塗工液1に替えて、中間層用塗工液3を用いて中間層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シートを得た。本比較例の熱転写受像シートの層構成を表1に示す。
【0097】
[比較例5]
多孔質層と第2接着層との間の白色層を、受容層と光沢付与層との間に形成したこと以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シートを得た。本比較例の熱転写受像シートの層構成を表1に示す。
【0098】
なお、表1中の行の高さは、各層の厚さを示すものではない。例えば、比較例1の受容層の行の高さは、受容層の厚さが、実施例1の受容層と、中間層と、光沢付与層と、第2接着層との総厚さと同じであることを意味するものではない。
【0099】
<<画像濃度評価>>
実施例及び比較例の熱転写受像シートと、昇華型熱転写プリンタ(大日本印刷(株)製、DS620)と、昇華性染料を含む染料層と、保護層とを備える該プリンタ用の純正リボンとを用意した。
20℃、30%RH環境にて、受容層に黒ベタ画像を印画し、印画物を得た。なお、プリンタは、グロスモードに設定し、黒ベタ画像の画像階調は、0/255階調とした。
得られた印画物の画像の濃度を光学濃度計(X-Rite社製、i1Pro2)により測定した。測定は以下の条件で行った。
(測定条件)
・Densityステータス:ステータスA
・測定照明条件:M0(ISO 13655-2009)
【0100】
下記評価基準に基づいて画像濃度(OD値:Optical Density)を評価した。評価結果を表1に示す。
〔評価基準〕
5:OD値が2.0以上であった。
4:OD値が1.8以上2.0未満であった。
3:OD値が1.6以上1.8未満であった。
2:OD値が1.4以上1.6未満であった。
1:OD値が1.4未満であった。
【0101】
<<光沢感評価>>
実施例及び比較例の熱転写受像シートと、上記昇華型熱転写プリンタと、上記純正リボンとを用意した。
20℃、30%RH環境にて、受容層に白ベタ画像を印画し、その上から保護層を転写して、印画物を得た。なお、プリンタは、グロスモードに設定し、白ベタ画像の画像階調は、255/255階調とした。
得られた印画物の20度鏡面光沢度をJIS Z8741:1997に記載の20度鏡面光沢度測定方法に準拠して測定した。具体的には、光沢度計(日本電色(株)製、VG 7000)を用いて、受容層における20度鏡面光沢度を測定した。下記評価基準に基づいて光沢感を評価した。評価結果を表1に示す。
〔評価基準〕
5:20度鏡面光沢度が60以上であった。
4:20度鏡面光沢度が50以上60未満であった。
3:20度鏡面光沢度が40以上50未満であった。
2:20度鏡面光沢度が30以上40未満であった。
1:20度鏡面光沢度が20以上30未満であった。
【0102】
<<白色性評価>>
実施例及び比較例の熱転写受像シートの白色度を、白色度計(日本電色工業(株)製、PF7000)を用いて測定した。下記の評価基準に基づいて白色性を評価した。評価結果を表1に示す。
〔評価基準〕
5:白色度が90.0以上であった。
4:白色度が87.5以上90.0未満であった。
3:白色度が85.0以上87.5未満であった。
2:白色度が82.5以上85.0未満であった。
1:白色度が82.5未満であった。
【0103】
<<エンボス評価>>
実施例及び比較例の熱転写受像シートと、上記昇華型熱転写プリンタと、上記純正リボンとを用意した。
20℃、30%RH環境にて、受容層に白黒画像(画面の左半分を白とし、画像の右半分を黒とした)を印画し、印画物を得た。なお、プリンタは、グロスモードに設定し、白ベタ画像の画像階調は255/255階調、黒ベタ画像の画像階調は0/255階調とした。
得られた印画物の白と黒の境界のエンボスの程度を目視にて確認した。下記の評価基準に基づいてエンボスを評価した。評価結果を表1に示す。
〔評価基準〕
5:エンボスが全く見られない。
4:エンボスが僅かに生じるが、ほとんど視認できず印画品質に影響しない。
3:エンボスが生じるが、視認しづらく印画品質に問題はない。
2:エンボスがやや目立ち、印画品質がやや低下する。
1:エンボスが目立ち、印画品質が低下する。
【0104】
<<総合評価>>
以下の評価基準に基づいて、総合評価を行った。その結果を表1に示す。
〔評価基準〕
OK:画像濃度評価、光沢感評価、白色性評価、及びエンボス評価において、全ての評価が4以上である。
NG:画像濃度評価、光沢感評価、白色性評価、及びエンボス評価において、少なくとも1つの評価が3以下である。
【0105】
<<保護層転写性評価>>
実施例及び比較例の熱転写受像シートと、上記昇華型熱転写プリンタと、上記純正リボンとを用意した。
20℃、30%RH環境にて、受容層に白ベタ画像を印画し、その上から保護層を転写して、印画物を得た。なお、プリンタは、グロスモードに設定し、白ベタ画像の画像階調は、255/255階調とした。
得られた印画物を目視により観察した。下記評価基準に基づいて保護層転写性を評価した。評価結果を表1に示す。
〔評価基準〕
5:保護層が転写されていない箇所は存在せず、高い保護層転写性を確認できた。
4:保護層が転写されていない箇所が局所的に存在するものの、目視では確認できないレベルであり、良好な保護層転写性を確認できた。
3:保護層が転写されていない箇所が存在するものの、印画品質に影響しないレベルであり、保護層転写性を確認できた。
2:保護層が転写されていない箇所が存在した。
1:保護層が全く転写されなかった。
【0106】
【表1】
【符号の説明】
【0107】
10:熱転写受像シート、11:基材、12:多孔質層、13:白色層、14:光沢付与層、15:中間層、16:受容層、17:第1接着層、18:第2接着層
図1
図2