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  • 特許-加飾成形品を用いた容器体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】加飾成形品を用いた容器体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241205BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20241205BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20241205BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20241205BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20241205BHJP
   B65D 51/24 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/00 E
B32B3/30
B32B33/00
B44C1/17 E
B44C1/17 G
B65D25/20 N
B65D51/24 200
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020216183
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101847
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 能久
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320158(JP,A)
【文献】特開平11-348496(JP,A)
【文献】特表2016-521645(JP,A)
【文献】特開2006-305809(JP,A)
【文献】特開2019-064093(JP,A)
【文献】特開2022-101890(JP,A)
【文献】特開2021-172057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B44C 1/16-1/175
B65D 1/00-1/48
23/00-25/56
51/24
B29C 53/00-53/84
57/00-59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明から成る合成樹脂製の成形体(10A)の外面(12a)に、転写箔(20)が転写されて成る加飾部(13)が接着層(21)を介して貼着された加飾成形品(10)と、表面に鏡面仕上げが施された内パーツ(41)とを有し、前記加飾成形品(10)の内側に前記内パーツ(41)が設けられた容器体であって、
前記加飾部(13)は、前記転写箔(20)の一部が前記成形体(10A)の外面(12a)に表出されることで視認可能な表面側の微細エンボス加飾(A)と、前記微細エンボス加飾(A)が、前記成形体(10A)の内面(12b)に表出されると共に前記成形体(10A)を透かして視認される裏面側の微細エンボス加飾(A’)と、を有し、
前記裏面側の微細エンボス加飾(A’)が、前記内パーツ(41)の表面に写り込んだ像(B)として前記加飾成形品(10)を透かして表出されることを特徴とする加飾成形品を用いた容器体。
【請求項2】
成形体(10A)の外面(12a)と凸線(27)の両側に隆起形成された頂部(27a)との高低差(δ1)が0.01~0.025mmの範囲で形成され、前記成形体(10A)の外面(12a)と凹線(26)の底部との高低差(δ2)が0.005~0.025mmの範囲で形成されている請求項1記載の加飾成形品を用いた容器体。
【請求項3】
成形体(10A)がキャップである請求項1又は2記載の加飾成形品を用いた容器体。
【請求項4】
微細エンボス加飾(A)は、前記転写箔(20)上に転写された微細な多数の凹線(26)及び凸線(27)による文字、図形、記号又は色彩若しくはこれらを組み合わせた図柄から成る請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加飾成形品を用いた容器体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写箔を用いて成形体全体の意匠性を向上させた加飾成形品を用いた容器体に関する。
【背景技術】
【0002】
成形体の外面に転写箔が転写された加飾成形品が知られている。このような加飾成形品では、成形体の外面に、転写箔の表面に文字、図形、記号又は色彩若しくはこれらを組み合わせた図柄などから構成される綺麗な加飾部が形成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-104447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、転写箔は成形体の外面に接着層を介して貼付される構成であるため、成形体が透明又は半透明な合成樹脂製である場合においては、例え斜め上方の位置から加飾成形品を覗くと、転写箔の裏面に設けられた斑模様の接着層を、透明又は半透明に形成された成形体の内面を透かして視認できてしまうことから、加飾成形品全体の意匠について高級感が失われてしまうという問題があった。
【0005】
また成形体が透明又は半透明なキャップであって、キャップの内側に、表面に鏡面仕上げが施されたポンプ用のヘッド部などの内パーツが設けられる容器体にあっては、キャップの表面に転写箔による加飾を施すと、内パーツの表面に写り込んだ転写箔の裏面である接着層がキャップを透かすと白濁して見えてしまうことがあるため、このような場合にも加飾成形品全体の意匠について高級感が喪失してしまうという問題があった。
【0006】
このように、従来の加飾成形品においては、何らの加飾が施されていない転写箔の裏面が加飾成形品全体の意匠についての高級感を喪失させ、結果として消費者の購買意欲が喚起されず、商品の売上げを妨げる原因の一つになっていた。
【0007】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、転写箔の表面だけでなく裏面側の接着層にも微細エンボス加飾を施すことにより、加飾成形品全体の意匠性を向上させた加飾成形品を用いた容器体を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第1の手段は、
透明又は半透明から成る合成樹脂製の成形体の外面に、転写箔が転写されて成る加飾部が接着層を介して貼着された加飾成形品と、表面に鏡面仕上げが施された内パーツとを有し、前記加飾成形品の内側に前記内パーツが設けられた容器体であって、
前記加飾部は、前記転写箔(20)の一部が前記成形体(10A)の外面(12a)に表出されることで視認可能な表面側の微細エンボス加飾(A)と、前記微細エンボス加飾(A)が、前記成形体(10A)の内面(12b)に表出されると共に前記成形体(10A)を透かして視認される裏面側の微細エンボス加飾(A’)と、を有し、
前記裏面側の微細エンボス加飾が、前記内パーツの表面に写り込んだ像として前記加飾成形品を透かして表出されることを特徴とする、と云うものである。
本発明の第1の手段では、加飾成形品の外面に形成された表面側の微細エンボス加飾及び加飾成形品の内面に表れる接着層に形成された微細エンボス加飾(裏面側の微細エンボス加飾)が内パーツの表面に写り込んだ像が成形体を透かして表出される。これにより、表面側の微細エンボス加飾と内パーツの表面に写り込んだ裏面側の微細エンボス加飾によって意匠性を高めることができる。
【0009】
また本発明の第2の手段は、本発明の第1の手段に、成形体の外面と凸線の両側に隆起形成された頂部との高低差が0.01~0.025mmの範囲で形成され、成形体の外面と凹線の底部との高低差が0.005~0.025mmの範囲で形成されているとの手段を加えたものである。
上記手段では、多数の微細な凹線及び凸線が組み合わされて成る図柄等で構成された微細エンボス加飾に立体感を付与することができる。
【0010】
また本発明の他の手段は、成形体がキャップである、と云うものである。
上記手段では、高級感を有して意匠性に優れたキャップとすることができる。
【0011】
また本発明の第3の手段は、上記いずれかの手段に、
微細エンボス加飾は、前記転写箔上に転写された微細な多数の凹線及び凸線による文字、図形、記号又は色彩若しくはこれらを組み合わせた図柄から成る、との手段を加えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、加飾成形品の外面に表出する表面側の微細エンボス加飾と加飾成形品の内面に表出する裏面側の微細エンボス加飾の一方又は双方で加飾することができるため、加飾成形品の意匠性を向上させることができる。
また加飾成形品の外面に表出する表面側の微細エンボス加飾と、内パーツの表面に写り込んだ裏面側の微細エンボス加飾の一方又は双方で加飾することができるため、容器体の意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施例としての加飾成形品を示し、(a)は加飾成形品の斜視図、(b)は微細エンボス加飾を示す加飾成形品の部分拡大図である。
図2】転写箔の基本的構成を示す断面図である。
図3】ロール状刻印を示す平面図である。
図4】(a)は微細エンボス加飾の断面図、(b)は微細エンボス加飾の一部を拡大して示す断面図である。
図5】第1実施例における加飾部の見え方を説明する加飾成形品の概略断面図である。
図6】(a)は本発明の第2実施例としての容器体を示す斜視図、(b)は転写箔の裏面(接着層)が内パーツに写り込んだ様子を示す部分拡大図である。
図7】第2実施例における加飾部の見え方を説明する容器体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例としての加飾成形品を示し、(a)は加飾成形品の斜視図、(b)は(a)の部分拡大図、図2は転写箔の基本的構成を示す断面図、図3(a)は微細エンボス加飾の断面図、図3(b)は微細エンボス加飾の一部を拡大して示す断面図、図3はロール状刻印を示す平面図、図4(a)は微細エンボス加飾の断面図、図4(b)は微細エンボス加飾の一部を拡大して示す断面図、図5は第1実施例における加飾部の見え方を説明する加飾成形品の概略断面図である。
【0015】
図1に第1実施例として示す加飾成形品10を構成する成形体10Aは、透明又は半透明な合成樹脂材料で形成され、蓋体として使用されるキャップである。成形体10Aは、円板上の頂壁11の外周端に円筒状の側壁12を備えた有頂円筒状の部材であり、側壁12には文字、図形、記号又は色彩若しくはこれらを組み合わせた図柄等から成る加飾部13が形成されている。
【0016】
図2に示すように、本実施例に示す転写箔20は、接着層21、蒸着層22、保護着色層23、離型層24が、下層から上層に向かってこの順序で積層されることにより形成されている。尚、最上層に設けた符号25は転写シート20Aを形成する基材フィルム25であり、基材フィルム25から剥離した転写箔20が側壁12の外面12a上に転写されることにより加飾部13が形成される。
【0017】
加飾部13は、外周面に多数の微細な彫刻線(凹彫刻線及び凸彫刻線)を密集配置し、文字、図形、記号又は色彩若しくはこれらを組み合わせた図柄等で形成され、版として機能する微細彫刻部32が形成されたロール状刻印31を用いて転写シート20Aを熱加熱したときに、転写箔20の一部が成形体10Aの外面12aに熱転写(ホットスタンプ)されることにより形成される(図3参照)。
【0018】
すなわち、図4(a)に示すように、加飾部13は、接着層21、蒸着層22、保護着色層23、離型層24が積層されて成る転写箔20の上に、ロール状刻印31側の微細彫刻部32が転写されることで形成された微細な多数の線(凹線26及び凸線27)で組み合わされた図柄等から成る微細エンボス加飾Aを有して構成される。加飾部13の周囲には、熱転写した際に溶けた樹脂、すなわち被転写面である成形体10Aの外面12aを形成する一部の樹脂が、ロール状刻印31によって隆起変形されることで形成される凸部14が周設されている。そして、密集して形成された微細な凹線26及び凸線27から構成される微細エンボス加飾Aは、周囲を凸部14によって取り囲まれた領域の内側に形成されている。
【0019】
尚、凸部14によって囲まれた領域内に位置する成形体10Aの外面12aの一部も熱転写した際に溶け、凹線26及び凸線27に合わせて凹凸状に変形し、転写箔20と共に微細エンボス加飾Aの一部を形成している。
【0020】
ここで、図4(a)(b)に示すように、成形体10Aの外面12aを基準としたときに、成形体10Aの外面12aと凸部14との高低差δ0は0.02~0.06mmの範囲が好ましい。また成形体10Aの外面12aと凸線27の頂部27aとの高低差δ1は0.01~0.025mmが好ましく、成形体10Aの外面12aと凹線26の底部との高低差δ2は0.005~0.025mmが好ましい。したがって、凸線27の頂部27aと凹線26の底部との高低差(δ1+δ2)は0.015~0.050mmの範囲が好ましい。そして、高低差δ0を、高低差δ1及び高低差δ2よりも大きく形成することにより、コントラストとの関係から視覚的な錯覚と相まって、凸部14の内側に密集して形成された微細エンボス加飾Aに立体感を付与することが可能となっている。
尚、図4(b)に示すように、凸線27の両側には凸部14同様の隆起形成された頂部27aが形成されるが、両側の頂部27aを含んで凸線27を構成している。
【0021】
上記のように、加飾部13では、転写箔20の全体に渡って、すなわち上層側の蒸着層22、保護着色層23、離型層24だけではなく、最下層に設けられた接着層21にも同一の微細エンボス加飾Aが行われている。
【0022】
このため、図1(a)(b)及び図5に示すように、加飾成形品10では、成形体10Aの外面12aに表出する転写箔20の表面に形成された微細エンボス加飾A(以下、表面側の微細エンボス加飾Aという)についてはこれを直接視認することが可能である(図5中のI参照)。
【0023】
また成形体10Aの外面12aには転写箔20の接着層21が貼着されており、この接着層21に形成された微細エンボス加飾Aについては、裏面側の微細エンボス加飾A’として成形体10Aの内面12bに表出されるため、透明又は半透明に形成された成形体10Aを透かして視認することができる(図5中のII参照)。
【0024】
更には、加飾成形品10を見る角度によっては、表面側の微細エンボス加飾Aと裏面側の微細エンボス加飾A’とを同時に視認することも可能である(図5中のI+II参照)。
【0025】
よって、第1実施例に示す加飾成形品10では、転写箔20の表面に形成された微細エンボス加飾Aだけでなく裏面側の接着層21にも微細エンボス加飾Aを形成した構成とすることにより、表面側の微細エンボス加飾Aと裏面側の微細エンボス加飾A’が夫々単独で意匠性を向上させることは勿論のこと、両者を同時に視認することによって加飾成形品10全体の意匠性を向上させることが可能となる。
【0026】
図6(a)は本発明の第2実施例としての容器体を示す斜視図、図6(b)は転写箔の裏面(接着層)が内パーツに写り込んだ様子を示す部分拡大図、図7は第2実施例における加飾部の見え方を説明する容器体の概略断面図である。
第2実施例に示す容器体40は、上記第1実施例と同様の透明又は半透明なキャップで構成され成形体10Aの外面に加飾部13を形成された加飾成形品10と、この加飾成形品10の内側に設けられ、表面に蒸着等による鏡面仕上げが施された内パーツ41とを有して構成されている。尚、本実施例に示す内パーツ41はポンプ用のヘッド部であるが、これに限られるものではない。
【0027】
第2実施例では、加飾成形品10(キャップ)を構成する成形体10Aの外面に表出する表面側の微細エンボス加飾Aについては。これを直接視認することができる(図7のI参照)。
【0028】
また裏面側の微細エンボス加飾A’については、鏡面仕上げされた内パーツ41の表面に写り込むことから、写り込んだ像Bとして加飾成形品10(キャップ)の外部から透明又は半透明で形成された成形体10Aを透かして視認することができる(図7のII参照)。尚、写り込んだ像Bは、裏面側の微細エンボス加飾A’同様に高い意匠性を備えている。
【0029】
更に、加飾成形品10(キャップ)を見る角度によっては、表面側の微細エンボス加飾Aと内パーツ41の表面に写り込んだ像Bとを同時に視認することも可能である(図7のI+II参照)。
【0030】
よって、第2実施例に示す容器体40においても、加飾成形品10が有する表面側の微細エンボス加飾Aと内パーツ41の表面に写り込んだ像Bとが夫々単独で意匠性を向上させることができることは勿論のこと、両者を同時に視認することによって容器体40全体の意匠性を向上させることが可能となる。
【0031】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0032】
例えば、上記実施例では、円筒状の成形体10Aの側面12に加飾する場合を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、楕円状、角筒状その他の形状の側面であってもよい。また加飾部を形成する場所は、成形体の側面に限定されるものではなく、成形体の天面、底面などその他の面であってもよい。
【0033】
また上記実施例では、加飾成形品を構成する成形体の一例としてキャップを示して説明したが、透明又は半透明から成る成形体であればどのようなものでも良く、例えば内容器と外容器から成る二重容器の外容器を加飾成形品とする構成であってもよい。
【0034】

また上記実施例では、成形体の外面に対してロール状刻印を用いて微細エンボス加飾を行う場合について説明したが、微細エンボス加飾の方法はこれに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、加飾成形品を用いた容器体の意匠性を高めようとする分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 : 加飾成形品
10A: 成形体
11 : 頂壁
12 : 側壁
12a: 外面
12b: 内面
13 : 加飾部
14 : 凸部
20 : 転写箔
20A: 転写シート
21 : 接着層
22 : 蒸着層
23 : 保護着色層
24 : 離型層
25 : 基材フィルム
26 : 凹線
27 : 凸線
27a: 凸線の頂部
31 : ロール状刻印
32 : 微細彫刻部
40 : 容器体
41 : 内パーツ
A : 表側の微細エンボス加飾
A’ : 裏面側の微細エンボス加飾
B : 内パーツの表面に写り込んだ像
δ0 : 成形体の表面と凸部との高低差
δ1 : 成形体の表面と凸線の頂部との高低差
δ2 : 成形体の表面と凹線の底部との高低差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7