(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】エレベータのドア装置
(51)【国際特許分類】
B66B 13/30 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B66B13/30 E
(21)【出願番号】P 2023131109
(22)【出願日】2023-08-10
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 寛
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-280183(JP,A)
【文献】実開昭63-178284(JP,U)
【文献】特開2009-249155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのドア装置であって、
ドアパネルの開閉方向に延びるドアレールと、
前記ドアパネル、及び前記開閉方向と直交し且つ水平方向に延びる回転軸まわりに回転可能なローラを有し、該ローラが前記ドアレール上を転動することによって前記開閉方向に移動するドア部と、
前記ドア部を前記開閉方向に駆動するドア駆動部と、
前記開閉方向に延びる付着抑制部と、を備え、
前記ドア駆動部は、
駆動プーリを有し、該駆動プーリを回転駆動するモータ部と、
前記駆動プーリに対して前記開閉方向に間隔をあけて配置される従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻き掛けられ且つ前記ドア部が接続される無端ベルトと、を有し、
前記ドアレールは、前記開閉方向から見て前記駆動プーリの下方に位置し、
前記付着抑制部は、前記開閉方向から見て前記駆動プーリと前記ドアレール及び前記ローラとの間に配置されると共に、前記開閉方向において前記駆動プーリと対応する位置に配置されている、エレベータのドア装置。
【請求項2】
前記付着抑制部は、前記駆動プーリの位置から下方側を見たときに前記ドアレールと前記ローラとが隠れる前記ローラの回転軸方向の寸法を有する、請求項1に記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
前記開閉方向に延びるフレーム部材を備え、
前記フレーム部材は、
前記ローラの回転軸方向と直交する面方向に広がり且つ該回転軸方向における一方の面に前記ドアレールが配置される第一部位と、
前記第一部位の上端から前記回転軸方向における前記一方の面側に延びると共に前記開閉方向に延びる第二部位と、を有し、
前記第二部位が前記付着抑制部を構成する、請求項1又は2に記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
前記第二部位における前記回転軸方向の先端部が下方向、又は先端側に進むにつれて下方に位置する傾斜方向に延びている、請求項3に記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
前記開閉方向に延びるフレーム部材を備え、
前記モータ部は、前記フレーム部材の上端部に配置され、
前記付着抑制部は、上下方向における前記駆動プーリと前記フレーム部材の上端との間に配置されている、請求項1又は2に記載のエレベータのドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、かごの出入口等に配置されるエレベータのドア装置が知られている(特許文献1参照)。
このドア装置100は、
図22に示すように、かご出入口100aの上方に配置されたフレーム100bに取り付けられ且つかご出入口100aの開閉方向に延びるドアレール101と、該ドアレール101に沿って開閉するドア部102と、ドア部102を開閉駆動するドア駆動部105と、を備える。
【0003】
ドア部102は、ローラ103aを有し且つ該ローラ103aがドアレール101上を転動することによって開閉方向に移動するドアハンガー103と、該ドアハンガー103に吊り下げられるドアパネル104と、を有する。
【0004】
また、ドア駆動部105は、駆動プーリ106を有するモータ107と、駆動プーリ106に対して開閉方向に間隔をあけて配置される従動プーリ108と、駆動プーリ106と従動プーリ108とに巻き掛けられる無端状のベルト109と、を有する。これら駆動プーリ106と従動プーリ108とは、ドアレール101の上方において、開閉方向におけるかご出入口100aの両側に位置するように配置されている。
【0005】
無端状のベルト109には、ドアハンガー103が接続されており、モータ107によってベルト109が回転することで、ドア部102が開閉方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のドア装置100において、駆動プーリ106の下方にドアレール101が配置されており、ドア部102の開閉時には、このドアレール101上をドア部102のローラ103aが転動する。このとき、モータ107の回転駆動力によってベルト109と駆動プーリ106との接触部分において該ベルト109が摩耗し、摩耗粉がドアレール101やローラ103aに付着することで、ドア部102がドアレール101に沿って開閉移動し難くなる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、無端ベルトの摩耗粉のドアレール及びドア部のローラへの付着が抑えられるエレベータのドア装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベータのドア装置は、
エレベータのドア装置であって、
ドアパネルの開閉方向に延びるドアレールと、
前記ドアパネル、及び前記開閉方向と直交し且つ水平方向に延びる回転軸まわりに回転可能なローラを有し、該ローラが前記ドアレール上を転動することによって前記開閉方向に移動するドア部と、
前記ドア部を前記開閉方向に駆動するドア駆動部と、
前記開閉方向に延びる付着抑制部と、を備え、
前記ドア駆動部は、
駆動プーリを有し、該駆動プーリを回転駆動するモータ部と、
前記駆動プーリに対して前記開閉方向に間隔をあけて配置される従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻き掛けられ且つ前記ドア部が接続される無端ベルトと、を有し、
前記ドアレールは、前記開閉方向から見て前記駆動プーリの下方に位置し、
前記付着抑制部は、前記開閉方向から見て前記駆動プーリと前記ドアレール及び前記ローラとの間に配置されると共に、前記開閉方向において前記駆動プーリと対応する位置に配置されている。
【0010】
このように、開閉方向における駆動プーリと対応する位置において、該駆動プーリと、該駆動プーリの下方に位置するドアレール及びローラとの間に付着抑制部が配置されることで、無端ベルト(駆動プーリに巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉のドアレールやローラへの付着が抑えられる。
【0011】
前記エレベータのドア装置では、
前記付着抑制部は、前記駆動プーリの位置から下方側を見たときに前記ドアレールと前記ローラとが隠れる前記ローラの回転軸方向の寸法を有してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、無端ベルト(駆動プーリに巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉がその下方に位置するドアレール及びローラにより到達し難くなり、これにより、摩耗粉のドアレールやローラへの付着が効果的に抑えられる。
【0013】
また、前記エレベータのドア装置は、
前記開閉方向に延びるフレーム部材を備え、
前記フレーム部材は、
前記ローラの回転軸方向と直交する面方向に広がり且つ該回転軸方向における一方の面に前記ドアレールが配置される第一部位と、
前記第一部位の上端から前記回転軸方向における前記一方の面側に延びると共に前記開閉方向に延びる第二部位と、を有し、
前記第二部位が前記付着抑制部を構成してもよい。
【0014】
このように、ドアレールが配置される部材(フレーム部材)の一部(第二部位)を利用して付着抑制部を構成することで、部品点数の低減や構成の簡素化等を図り易くなる。
【0015】
この場合、
前記第二部位における前記回転軸方向の先端部が下方向、又は先端側に進むにつれて下方に位置する傾斜方向に延びていてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、下方向や前記傾斜方向に延びる先端部によって無端ベルト(駆動プーリに巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉がその下方に位置するドアレール及びローラにさらに到達し難くなり、摩耗粉のドアレールやローラへの付着がより効果的に抑えられる。
【0017】
また、前記エレベータのドア装置は、
前記開閉方向に延びるフレーム部材を備え、
前記モータ部は、前記フレーム部材の上端部に配置され、
前記付着抑制部は、上下方向における前記駆動プーリと前記フレーム部材の上端との間に配置されてもよい。
【0018】
このように、上下方向において付着抑制部が駆動プーリと近い位置に配置されることで、無端ベルトから落下等して直ぐに(即ち、摩耗粉の落下等する範囲が広がる前に:
図15参照)付着抑制部によってドアレール及びローラ側への移動が阻止されるため、摩耗粉のドアレールやローラへの付着がより好適に抑えられる。
【発明の効果】
【0019】
以上より、本発明によれば、無端ベルトの摩耗粉のドアレール及びドア部のローラへの付着が抑えられるエレベータのドア装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、出入方向から見た本実施形態に係るエレベータのドア装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、開閉方向から見たドア駆動部及びその周辺の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、開閉方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、ドアレール、第一ローラ、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、開閉方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、ドアレール、第一ローラ、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、開閉方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、ドアレール、第一ローラ、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、開閉方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、ドアレール、第一ローラ、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、開閉方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、ドアレール、第一ローラ、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、開閉方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、ドアレール、第一ローラ、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、出入方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、出入方向から見た他実施形態に係る付着抑制部、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、前記付着抑制部を出入方向から見た図である。
【
図14】
図14は、開閉方向から見たカバー部材、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、出入方向から見た前記カバー部材、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図16】
図16は、開閉方向から見た他実施形態に係るカバー部材を示す図である。
【
図17】
図17は、開閉方向から見た他実施形態に係るカバー部材を示す図である。
【
図18】
図18は、開閉方向から見た他実施形態に係るカバー部材を示す図である。
【
図19】
図19は、開閉方向から見た他実施形態に係るカバー部材を示す図である。
【
図20】
図20は、開閉方向から見た他実施形態に係る第一ブラケット、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図21】
図21は、開閉方向から見た他実施形態に係る第一ブラケット、及びその周辺の構成を示す図である。
【
図22】
図22は、従来のエレベータのドア装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図2を参照しつつ説明する。
【0022】
本実施形態に係るエレベータのドア装置(以下、単に、「ドア装置」とも称する。)は、
図1に示すように、エレベータのかご本体11の開口部(かご出入口)12に配置され、該開口部12を開閉する。このように、本実施形態のエレベータのかご10は、かご本体11とドア装置1とを備える。
【0023】
具体的に、ドア装置1は、かご本体11における開口部12の上方に配置されるフレーム部材2を備える。また、ドア装置1は、開口部12の開閉方向(
図1における左右方向)に延びるドアレール3と、第一ローラ(ローラ)421を有し、第一ローラ421がドアレール3上を転動することによって開閉方向に移動するドア部4と、ドア部4を開閉駆動するドア駆動部5と、を備える。また、ドア装置1は、ドア駆動部5において発生する摩耗粉のドアレール3及び第一ローラ421への付着を防ぐための付着抑制部6を備える。本実施形態のドア装置1において、この付着抑制部6は、フレーム部材2の一部(第二部位)22によって構成されている。また、本実施形態のドア装置1は、二つのドア部4を備え、ドア部4同士が開閉方向に互いに接近又は離間することで開口部12を開閉する、いわゆるセンターオープン式のドア装置である。
【0024】
フレーム部材2は、開口部12の上方において開閉方向に延びている。具体的に、フレーム部材2は、
図2にも示すように、開口部12の出入方向(
図2における左右方向)と直交する面方向に広がり且つ出入方向における一方の面21aにドアレール3が配置される第一部位21と、第一部位21の上端から出入方向における一方の面21a側に延びると共に開閉方向に延びる第二部位22と、を有する。本実施形態のフレーム部材2は、開閉方向に延びる帯板状の部材の上端部が折り曲げられることによって形成されている。このフレーム部材2は、取付部材13を介してかご本体11における開口部12の上方に取り付けられている。
【0025】
具体的に、第一部位21は、開閉方向に長尺な矩形板状の部位である。この第一部位21の開閉方向の寸法は、かご本体11の開閉方向の寸法より大きい。
【0026】
第二部位22は、開閉方向に長尺な帯板状の部位であり、開閉方向における第一部位21の一端から他端まで連続して延びている。本実施形態の第二部位22では、開閉方向の各位置における出入方向の寸法は、同じである。この第二部位22の出入方向の寸法は、第二部位22より上方から下方側を見たときに、ドアレール3と該ドアレール3上を転動する第一ローラ421とが隠れる大きさである。即ち、第二部位22は、第一部位21の上端から出入方向におけるドアレール3及び第一ローラ421より一方側(
図2における左側)まで延びている。本実施形態の第二部位22における出入方向の先端は、出入方向におけるドアハンガー42の第一ブラケット43と第一ローラ421との間に位置している。
【0027】
本実施形態の第二部位22は、上下方向において、該第二部位22と第一ローラ421(詳しくは、第一ローラ421の上端)との間隔α1が第一ローラ421の直径より小さくなる位置に配置されている。また、上下方向において、第二部位22と第一ローラ421との間隔α1は、駆動プーリ51(詳しくは、駆動プーリ51の下端)と第二部位22との間隔α2より小さい。
【0028】
二つのドア部4のそれぞれは、ドアパネル41と、ドアパネル41を吊り下げるドアハンガー42と、ドアハンガー42をドア駆動部5に接続する第一ブラケット43と、を有する。
【0029】
ドアパネル41は、出入方向と直交する面方向に広がるパネル部材であり、上下方向に長尺な矩形板状である。
【0030】
ドアハンガー42は、ドアパネル41が連結されるハンガー本体420と、ハンガー本体420に配置され且つドアレール3上で転動する第一ローラ(ローラ)421と、ハンガー本体420に配置され且つ下方からドアレール3に当接した状態で転動する第二ローラ422と、を有する。本実施形態のドアハンガー42は、二つの第一ローラ421と一つの第二ローラ422とを有する。
【0031】
ハンガー本体420は、ドアパネル41の上端に連結され且つ該上端から上方に延びる板状の部位である。本実施形態のハンガー本体420は、開閉方向に長尺な矩形状である。
【0032】
二つの第一ローラ421のそれぞれは、出入方向(即ち、開閉方向と直交し且つ水平方向)に延びる第一回転軸(回転軸)421aまわりに回転可能にハンガー本体420に配置されている。これら二つの第一ローラ421は、開閉方向に間隔をあけ且つそれぞれが上方からドアレール3に当接するようにハンガー本体420に配置されている。
【0033】
第二ローラ422は、出入方向に延びる第二回転軸422aまわりに回転可能にハンガー本体420に配置されている。この第二ローラ422は、上下方向において、第一ローラ421との間にドアレール3を挟み込むように下方からドアレール3に当接した状態でハンガー本体420に配置されている。
【0034】
第一ブラケット43は、ハンガー本体420から上方に延びる部材であり、この第一ブラケット43の先端は、ドア駆動部5の無端ベルト55に連結されている。
【0035】
ドア駆動部5は、駆動プーリ51を有し、該駆動プーリ51を回転駆動するモータ部50と、駆動プーリ51に対して開閉方向に間隔をあけて配置される従動プーリ54と、駆動プーリ51と従動プーリ54とに巻き掛けられる無端ベルト55と、を有する。
【0036】
モータ部50は、ドア部4を開閉方向に移動させるための駆動源であり、具体的に、駆動プーリ51と、駆動プーリ51を回転させる駆動軸52を有するモータ53と、を有する。駆動軸52は、出入方向に延び、モータ53が駆動軸52を回転駆動する。これにより、駆動軸52に接続される駆動プーリ51が該駆動軸52まわりに回転する。本実施形態の駆動プーリ51は、周縁部において周方向に並ぶ複数の歯が設けられたプーリである。
【0037】
尚、本実施形態のドア装置1では、全開位置及び全閉位置でのドア部4の位置保持は、モータ53のトルク(即ち、モータ53の制御)によって行われており、位置保持機構等のメカニカルな機構によるドア部4の位置保持は行われていない。
【0038】
このモータ部50は、フレーム部材2の上端部に配置されている。本実施形態のモータ部50は、第二ブラケット23を介してフレーム部材2の上端部(詳しくは、第二部位22)に取り付けられている。即ち、本実施形態のドア装置1は、モータ部50をフレーム部材2に取り付けるための第二ブラケット23も有する。また、モータ部50は、開閉方向における開口部12より外側に配置されている(
図1参照)。この状態において、駆動プーリ51は、開閉方向から見てドアレール3の上方に位置している(
図2参照)。
【0039】
従動プーリ54は、出入方向に延びる回転軸54aまわりに回転可能に第三ブラケット24を介してフレーム部材2の上端部に取り付けられている。この従動プーリ54は、上下方向におけるモータ部50の駆動プーリ51と同じ位置に配置されている。また、従動プーリ54は、開閉方向における開口部12の外側(モータ部50(駆動プーリ51)とは反対の外側)に配置されている。この状態において、従動プーリ54は、開閉方向から見てドアレール3の上方に位置している。本実施形態の従動プーリ54は、駆動プーリ51と同様に、周縁部において周方向に並ぶ複数の歯が設けられたプーリである。
【0040】
無端ベルト55は、開閉方向に間隔をあけて配置される駆動プーリ51と従動プーリ54とに巻き掛けられている。この巻き掛けられた状態で、無端ベルト55の開閉方向の全域が、開閉方向から見てドアレール3の上方に位置している(
図2参照)。駆動プーリ51と従動プーリ54とに巻き掛けられた無端ベルト55における二つのプーリ51、54間に位置する部位のうち、上側の部位(上側部位)に、二つのドア部4のうちの一方のドア部4の第一ブラケット43が連結され、下側の部位(下側部位)に、二つのドア部4のうちの他方のドア部4の第一ブラケット43が連結されている。本実施形態の無端ベルト55は、歯付ベルトである。
【0041】
付着抑制部6は、上下方向における無端ベルト55とドアレール3及び第一ローラ421との間に配置されて無端ベルト55から落下等する摩耗粉を遮蔽することによって該摩耗粉がドアレール3及び第一ローラ421に付着(到達)するのを抑える部材又は部位である。この付着抑制部6は、開閉方向から見て駆動プーリ51とドアレール3及び第一ローラ421との間に配置されると共に、開閉方向において少なくとも駆動プーリ51と対応する位置に配置されている。
【0042】
本実施形態の付着抑制部6は、上述のようにフレーム部材2の一部(詳しくは、フレーム部材2の第二部位22)によって構成されている。このため、付着抑制部6は、開閉方向において無端ベルト55の配置範囲を含む範囲に形成されている
【0043】
以上のように構成されるドア装置1では、ドア駆動部5のモータ53が駆動軸52まわりに駆動プーリ51を回転駆動することで、該駆動プーリ51と従動プーリ54とに巻き掛けられた無端ベルト55が回転し、即ち、無端ベルト55の上側部位と下側部位とが開閉方向において互いに反対方向に移動し、これにより、該上側部位と該下側部位とに接続される各ドア部4(ドアパネル41)がドアレール3に沿って互いに離間し、又は互いに接近し、その結果、かご本体11の開口部12が開閉される。
【0044】
このドア装置1の開閉動作の際には、無端ベルト55の歯と各プーリ51、54の歯との噛み合いにより、無端ベルト55の各プーリ51、54と対応する部位において摩耗が生じ、摩耗粉が発生する。特に、無端ベルト55における駆動プーリ51と対応する部位では、モータ53からの回転駆動力が伝達される部位であるため、この摩耗粉の発生量が顕著になる。このように無端ベルト55から発生した摩耗粉は、下方側に落下する。
【0045】
このとき、本実施形態のドア装置1は、エレベータのドア装置1であって、ドアパネル41の開閉方向に延びるドアレール3と、ドアパネル41、及び開閉方向と直交し且つ水平方向に延びる第一回転軸(回転軸)421aまわりに回転可能な第一ローラ(ローラ)421を有し、該第一ローラ421がドアレール3上を転動することによって開閉方向に移動するドア部4と、ドア部4を開閉方向に駆動するドア駆動部5と、開閉方向に延びる付着抑制部6(本実施形態の例では、第二部位22)と、を備える。そして、ドア駆動部5は、駆動プーリ51を有し、該駆動プーリ51を回転駆動するモータ部50と、駆動プーリ51に対して開閉方向に間隔をあけて配置される従動プーリ54と、駆動プーリ51と従動プーリ54とに巻き掛けられ且つドア部4が接続される無端ベルト55と、を有し、ドアレール3は、開閉方向から見て駆動プーリ51の下方に位置し、付着抑制部6(第二部位22)は、開閉方向から見て駆動プーリ51とドアレール3及び第一ローラ421との間に配置されると共に、開閉方向において駆動プーリ51と対応する位置に配置されている。
【0046】
このように、開閉方向における駆動プーリ51と対応する位置において、該駆動プーリ51と、該駆動プーリ51の下方に位置するドアレール3及び第一ローラ421との間に付着抑制部6(第二部位22)が配置されることで、無端ベルト55(駆動プーリ51に巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉のドアレール3や第一ローラ421への付着が抑えられる。
【0047】
また、本実施形態のドア装置1では、付着抑制部6(第二部位22)は、開閉方向から見て従動プーリ54とドアレール3及び第一ローラ421との間で、且つ、開閉方向において従動プーリ54と対応する位置にも配置されている。このため、無端ベルト55(従動プーリ54に巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉のドアレール3や第一ローラ421への付着も抑えられる。
【0048】
更に、本実施形態のドア装置1では、付着抑制部6(第二部位22)は、開閉方向における無端ベルト55の配置領域の全域において、開閉方向から見て無端ベルト55とドアレール3及び第一ローラ421との間に配置されている。これにより、プーリ51、54の無い位置で無端ベルト55から落下等する摩耗粉のドアレール3及び第一ローラ421への付着も抑えられる。
【0049】
また、本実施形態のドア装置1では、付着抑制部6(第二部位22)は、開閉方向から見て駆動プーリ51と該駆動プーリ51の下方に位置する第二ローラ422との間に配置されている。これにより、無端ベルト55(駆動プーリ51に巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉の第二ローラ422への付着も抑えられる。
【0050】
また、本実施形態のドア装置1では、付着抑制部6は、駆動プーリ51の位置から下方側を見たときにドアレール3と第一ローラ(ローラ)421とが隠れる出入方向(第一ローラ421の第一回転軸(回転軸)421a方向)の寸法を有している。このため、無端ベルト55(駆動プーリ51に巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉がその下方に位置するドアレール3及び第一ローラ421により到達し難くなり、これにより、摩耗粉のドアレール3や第一ローラ421への付着が効果的に抑えられる。
【0051】
また、本実施形態のドア装置1では、付着抑制部6は、駆動プーリ51の位置から下方側を見たときに第二ローラ422も隠れる出入方向の寸法を有している。このため、無端ベルト55(駆動プーリ51に巻き掛けられた部位及びその近傍)から落下等した摩耗粉がその下方に位置する第二ローラ422にも到達し難く、これにより、摩耗粉の第二ローラ422への付着も効果的に抑えられる。
【0052】
また、本実施形態のドア装置1は、開閉方向に延びるフレーム部材2を備え、フレーム部材2は、第一ローラ421の第一回転軸421a方向と直交する面方向に広がり且つ該第一回転軸421a方向における一方の面21aにドアレール3が配置される第一部位21と、第一部位21の上端から第一回転軸421a方向における前記一方の面21a側に延びると共に開閉方向に延びる第二部位22と、を有している。そして、本実施形態のドア装置1では、フレーム部材2の第二部位22が付着抑制部6を構成している。このように、ドアレール3が配置される部材(フレーム部材)2の一部(第二部位)22を利用して付着抑制部6を構成することで、部品点数の低減や構成の簡素化等を図り易くなる。
【0053】
尚、本発明のエレベータのドア装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0054】
上記実施形態のドア装置1は、かご本体11の開口部12を開閉するように該かご本体に配置されているが、この構成に限定されない。ドア装置1は、乗場の開口部(即ち、乗場と昇降路とを連通する開口部)に配置され、該開口部を開閉してもよい。
【0055】
また、上記実施形態のドア装置1は、いわゆるセンターオープン式であるが、この構成に限定されない。ドア装置1は、いわゆる片開き式であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態のドア装置1では、付着抑制部6がフレーム部材2の一部(第二部位)22によって構成されているが、この構成に限定されない。付着抑制部6は、フレーム部材2以外の他の部材の一部や、独立した部材等によって構成されていてもよい。
【0057】
また、付着抑制部6の具体的な形状も限定されない。上記実施形態の付着抑制部6(第二部位22)は、出入方向において第一部位21からドアレール3及び第一ローラ421より外側まで延びているが、この構成に限定されない。付着抑制部6より上方から下方側を見たときに、付着抑制部6の出入方向の先端がドアレール3及び第一ローラ421の一部と重なる位置まで該付着抑制部6が延びていればよい。かかる構成によっても、無端ベルト55から落下等する摩耗粉の少なくとも一部が付着抑制部6によってドアレール3及び第一ローラ421に向かうのが防がれ、これにより、該摩耗粉のドアレール3及び第一ローラ421への付着を抑えられる。
【0058】
また、上記実施形態の付着抑制部6は、第一部位21から出入方向に真っすぐ延びているが、この構成に限定されない。
図3~
図5に示すように、付着抑制部6(第二部位22)における出入方向(第一回転軸421a方向)の先端部が下方向、又は先端側に進むにつれて下方に位置する傾斜方向に延びていてもよい。このように、付着抑制部6の出入方向の先端部が下方向又は前記傾斜方向(先下がり方向)に延びることで、無端ベルト55から落下等した摩耗粉がその下方に位置するドアレール3及びローラ421、422にさらに到達し難くなり、摩耗粉のドアレール3やローラ421、422への付着がより効果的に抑えられる。
【0059】
この場合、付着抑制部6の先端6aの上下方向の位置が第一ローラ421の上端位置又はその近傍に位置していることが好ましく(
図4参照)、先端6aの上下方向の位置が第一ローラ421の上端よりも下方に位置していることがより好ましい(
図5参照)。先端6aが下方に位置するほど、無端ベルト55から落下等した摩耗粉がドアレール3及び第一ローラ421に到達し難く(即ち、付着し難く)なる。
【0060】
また、
図6~
図8に示すように、付着抑制部6における出入方向の先端部が上方向、又は先端側に進むにつれて上方に位置する傾斜方向に延びていてもよい。このように、付着抑制部6の出入方向の先端部が上方向又は前記傾斜方向(先上がり方向)に延びることで、無端ベルト55から落下等した摩耗粉が付着抑制部6上に溜まり(保持され)、昇降路内等への摩耗粉の落下を抑えることができる。
【0061】
このように、付着抑制部6における出入方向の先端部が上方向、又は先端側に進むにつれて上方に位置する傾斜方向に延びる場合には、付着抑制部6は、
図9に示すように、開閉方向における各プーリ51、54と対応する位置(
図9のドットが付された部位)のみに配置(形成)されていてもよい。
【0062】
また、付着抑制部6は、例えば、
図10~
図13に示すように、上方が開口した容器Bを載置できる構成であってもよい。具体的に、付着抑制部6は、水平方向に広がる底壁60と、底壁60の出入方向の一方側の端縁から上方に延びる前壁61と、底壁60の出入方向の他方側の端縁から上方に延びる後壁62と、を有する。
【0063】
底壁60は、フレーム部材2(詳しくは、第二部位22)に固定される部位であり、平面視において開閉方向に長尺な矩形板状である。前壁61は、出入方向から見て開閉方向に長尺な矩形板状である。前壁61の開閉方向の寸法は、底壁60の開閉方向の寸法より小さく、該前壁61は、底壁60の開閉方向の中央部に配置されている。後壁62は、出入方向から見て開閉方向に長尺な矩形板状であり、開閉方向の寸法は、底壁60の開閉方向の寸法と同じである。
【0064】
かかる構成によれば、無端ベルト55から落下等する摩耗粉を容器B内に溜めることができる。また、容器Bが用いられることで、摩耗粉の廃棄作業が容易になる。この場合、付着抑制部6は、容器Bを保持できる構成が好ましい。
【0065】
また、上記実施形態のドア装置1では、付着抑制部6がフレーム部材2の上端部に配置されているが、この構成に限定されない。付着抑制部6は、例えば
図14~
図19に示すように、上下方向における駆動プーリ51とフレーム部材2の上端との間に配置される構成であってもよい。例えば、以下の通りである。
【0066】
ドア装置1は、モータ部50に取り付けられるカバー部材7を備え、このカバー部材7の一部又は全部が付着抑制部6を構成していてもよい。具体的に、このカバー部材7は、カバー部材7をモータ部50又はフレーム部材2に固定するための固定部71と、付着抑制部6と、摩耗粉の出入方向への飛散を防ぐための飛散防止部72と、を有する。
【0067】
固定部71は、フレーム部材2、第二ブラケット23、モータ53のケーシング等に対してボルト等の締結部材、溶接等によって固定される。
【0068】
付着抑制部6は、固定部71の上端から延びる板状の部位であり、開閉方向から見て出入方向に延びてもよく(
図14、
図16、
図17参照)、先端側に進むにつれて上方に位置する傾斜方向(先上がり方向)に延びてもよい(
図18、
図19参照)。また、カバー部材7は、飛散防止部72のない構成であってもよい。即ち、カバー部材7は、固定部71と付着抑制部6とによって構成されていてもよい。
【0069】
以上のように、上下方向において付着抑制部6が駆動プーリ51と近い位置に配置されることで、無端ベルト55から落下等して直ぐに(即ち、摩耗粉の落下等する範囲が広がる前に:
図15の矢印参照)付着抑制部6によってドアレール3及び第一ローラ421側への移動が阻止されるため、摩耗粉のドアレール3や第一ローラ421への付着がより好適に抑えられる。
【0070】
尚、付着抑制部6は、一つの部材のみによって構成されている、即ち、フレーム部材2の一部22のみで構成され、又はカバー部材7の一部6のみで構成されていなくてもよい。例えば、付着抑制部6は、フレーム部材2の一部22と、カバー部材7の一部6との両方を含んでいてもよい。
【0071】
また、上記実施形態のドア装置1では、無端ベルト55は、歯付ベルトであるが、この構成に限定されない。無端ベルト55は、Vベルト等の他のベルトであってもよい。
【0072】
上記実施形態のドア装置1では、ハンガー本体420と無端ベルト55とを接続する第一ブラケット43が、ハンガー本体420の一方の面420aから上方に真っすぐ延びているが(
図1及び
図2参照)、この構成に限定されない。第一ブラケット43は、
図20に示すように、上下方向の付着抑制部6(第二部位22)と対応する位置において、出入方向の一方側(
図20における左側)に突出するように屈曲等していてもよい。また、第一ブラケット43は、ハンガー本体420の一方の面420aから出入方向の一方側に間隔をあけた位置で上方に延びていてもよい(
図21参照)。かかる構成とすることで、付着抑制部6の出入方向の寸法を確保し易くなる。
【符号の説明】
【0073】
1…ドア装置、2…フレーム部材、21…第一部位、21a…一方の面、22…第二部位(付着抑制部)、23…第二ブラケット、24…第三ブラケット、3…ドアレール、4…ドア部、41…ドアパネル、42…ドアハンガー、420…ハンガー本体、421…第一ローラ(ローラ)、421a…第一回転軸(回転軸)、422…第二ローラ、422a…第二回転軸、43…第一ブラケット、5…ドア駆動部、50…モータ部、51…駆動プーリ、52…駆動軸、53…モータ、54…従動プーリ、54a…回転軸、55…無端ベルト、6…付着抑制部、6a…先端、7…カバー部材、71…固定部、72…飛散防止部、10…かご、11…かご本体、12…開口部、13…取付部材、100…ドア装置、100a…かご出入口、100b…フレーム、101…ドアレール、102…ドア部、103…ドアハンガー、103a…ローラ、104…ドアパネル、105…ドア駆動部、106…駆動プーリ、107…モータ、108…従動プーリ、109…ベルト、B…容器
【要約】
【課題】無端ベルトの摩耗粉のドアレール及びドア部のローラへの付着が抑えられるエレベータのドア装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ドアレールと、ドアパネル及びローラを有し、該ローラがドアレール上を転動することによって開閉方向に移動するドア部と、ドア部を駆動するドア駆動部と、開閉方向に延びる付着抑制部と、を備え、ドア駆動部は、駆動プーリを回転駆動するモータ部と、駆動プーリに対して開閉方向に間隔をあけて配置される従動プーリと、駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられ且つドア部が接続される無端ベルトと、を有し、ドアレールは、開閉方向から見て駆動プーリの下方に位置し、付着抑制部は、開閉方向から見て駆動プーリとドアレール及びローラとの間に配置され、且つ、開閉方向の駆動プーリと対応する位置に配置されている、ことを特徴とする。
【選択図】
図2