IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リセの特許一覧

特許7598576文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法
<>
  • 特許-文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法 図1
  • 特許-文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法 図2
  • 特許-文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法 図3
  • 特許-文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法 図4
  • 特許-文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 40/186 20200101AFI20241205BHJP
   G06F 40/40 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G06F40/186
G06F40/40
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024088616
(22)【出願日】2024-05-31
(62)【分割の表示】P 2020136404の分割
【原出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2024103660
(43)【公開日】2024-08-01
【審査請求日】2024-06-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年2月1日株式会社エーピーコミュニケーションズ、令和2年3月1日楽天投債投資顧問株式会社、令和2年3月1日プラス株式会社、令和2年6月1日セガサミーホールディングス株式会社、令和2年7月1日I-PEX株式会社(旧:第一精工株式会社)、令和2年7月1日株式会社電通国際情報サービス、令和2年7月1日株式会社明治屋、令和2年7月1日AsiaWise法律事務所、令和2年7月13日堂島法律事務所、令和2年7月15日株式会社ジャパネットホールディングス、令和2年7月20日株式会社ブックウォーカー、令和2年8月1日太陽誘電株式会社、令和2年8月1目弁護士法人イノベンティア、令和2年7月28日トヨタ・リサーチ・インスティテユート・ アドバンスト・デベロップメント株式会社、令和2年7月30日大東建託パートナーズ株式会社、令和2年8月1日株式会社明治屋、令和2年8月11日ポケットカード株式会社、令和2年8月11日青木精一朗法律事務所、株式会社リセは、左記の各配布相手に対し、藤田美樹が発明した文書作成支援プログラムを配布した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519313471
【氏名又は名称】株式会社リセ
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美樹
【審査官】齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-202828(JP,A)
【文献】特開2016-122417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 40/00-40/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書の作成を支援する文書作成支援装置であって、
第一の言語で記載された原稿を取得する取得手段と、
前記原稿又は、前記原稿を第二の言語に翻訳して得られる翻訳原稿の記載内容に基づいて、事前に登録される文書の雛形の中から、前記原稿又は翻訳原稿に対応する前記雛形を特定する特定手段と、
前記翻訳原稿及び前記雛形を表示させる表示手段と、を備える文書作成支援装置。
【請求項2】
第二の言語により表現された前記雛形が事前に登録され、
前記表示手段は、前記雛形を第二の言語で表示させる、請求項1に記載の文書作成支援装置。
【請求項3】
前記雛形は、第一の言語及び第二の言語の双方における表現が対応付けて登録され、
前記表示手段は、前記雛形を更に第一の言語で表示させる、請求項2に記載の文書作成支援装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記翻訳原稿と、第二の言語の前記雛形と、第一の言語の前記雛形と、を同一画面上で対応付けて表示させる、請求項3に記載の文書作成支援装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記翻訳原稿及び前記雛形を同一画面上で対応付けて表示させる、請求項1から請求項3の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項6】
前記原稿は、複数の項目を含み、
前記特定手段は、前記原稿又は翻訳原稿の前記項目ごとに、対応する前記雛形を特定し、
前記表示手段は、前記項目ごとに、前記翻訳原稿及び第二の言語の前記雛形を表示させる、請求項1から請求項5の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記項目ごとに、前記翻訳原稿と、第二の言語の前記雛形と、第一の言語の前記雛形と、のうち少なくとも2つを、同一画面上で対応付けて表示させる、請求項3又は請求項4に従属する、請求項6に記載の文書作成支援装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記項目ごとに、前記翻訳原稿と、第二の言語の前記雛形と、第一の言語の前記雛形と、を同一画面上で対応付けて表示させる、請求項3又は請求項4に従属する、請求項6又は請求項7に記載の文書作成支援装置。
【請求項9】
前記項目は、文書中で区分けされた一定の単位となる1又は複数の文である、
請求項6から請求項8の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項10】
前記原稿は、契約書であり、
前記項目は、前記契約書の条文である、
請求項6から請求項9の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項11】
前記項目ごとに対応する雛形は、対応する項目の記載例を含む、
請求項6から請求項10の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項12】
前記項目ごとに対応する雛形は、対応する項目の解説を含む、
請求項6から請求項11の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項13】
前記特定手段は、一の項目に対応する複数の雛形を特定し、
前記表示手段は、さらに、一の項目に対応する前記複数の雛形を第二の言語で表示する
請求項6から請求項12の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項14】
前記特定手段は、前記翻訳原稿において不足する不足項目を特定し、
前記表示手段は、前記不足項目に関する第二の言語の前記雛形を表示する請求項1から請求項13の何れかに記載の文書作成支援装置。
【請求項15】
文書の作成を支援する文書作成支援プログラムであって、
第一の言語で記載された原稿を取得する取得手段と、
前記原稿又は、前記原稿を第二の言語に翻訳して得られる翻訳原稿の記載内容に基づいて、事前に登録される文書の雛形の中から、前記原稿又は翻訳原稿に対応する前記雛形を特定する特定手段と、
前記翻訳原稿及び前記雛形を表示させる表示手段と、としてコンピュータを機能させる文書作成支援プログラム。
【請求項16】
文書の作成を支援する文書作成支援方法であって、
第一の言語で記載された原稿を取得するステップと、
前記原稿又は、前記原稿を第二の言語に翻訳して得られる翻訳原稿の記載内容に基づいて、事前に登録される文書の雛形の中から、前記原稿又は翻訳原稿に対応する前記雛形を特定するステップと、
前記翻訳原稿及び前記雛形を表示させるステップと、をコンピュータが実行する文書作成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書作成支援装置、文書作成支援プログラムおよび文書作成支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
業務を行う上で、様々な文書の作成を行うことがある。例えば契約書の作成は重要な業務であるが、専門的な知識を要するケースも多く、不慣れな担当者には大きな負担となる。このような契約書の作成に関し、契約書の内容を分析して分析結果を提供する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、契約書を分析し、各条項の種類や契約者の有利不利を示唆する技術が記載されている。特許文献1には、分析精度を高めるために、他の言語に翻訳した上で分析を行うことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6640395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
契約書等の文書は、国内のみならず外国の相手と交わすこともある。このような場合には文書が外国語で作成されることとなり、内容の理解や適切な内容への修正作業にはより一層の負担が生じる。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、契約書の内容について参考となる情報を与えることはできるものの、異なる言語を使う者の間での契約において、契約書の内容理解や修正作業の支援には不十分であった。例えば担当者が外国語に堪能でない場合、そもそも契約書の内容を理解できず、また修正する場合にもどのように直せばよいのかを理解できないという課題があった。
【0007】
上記のような現状に鑑みて、本発明は、外国語の文書の作成を支援することが可能な、新規な文書作成支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、文書の作成を支援する文書作成支援装置であって、
第一の言語で記載された原稿を取得する取得手段と、
前記原稿又は、前記原稿を第二の言語に翻訳して得られる翻訳原稿に基づいて、事前に登録される文書の雛形の中から、前記原稿又は翻訳原稿に対応する前記雛形を特定する特定手段と、
前記翻訳原稿及び第二の言語の前記雛形を表示させる表示手段と、を備える。
【0009】
このような構成とすることで、ユーザは外国語(第一の言語)で作成された文書の内容及びその修正例となる雛形を、自らの得意な言語(第二の言語)で確認することができる。これにより、例えばユーザが相手方から提供された契約書の内容が適切か否かを判断したり、新たな契約書を外国語で作成する際の修正作業を行ったりする場合に、有益な情報をユーザに提供することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記表示手段は、前記翻訳原稿及び第二の言語の前記雛形を同一画面上で対応付けて表示させる。
このような構成とすることで、ユーザは翻訳原稿と雛形を同時に比較しながら確認することが可能となり、どの部分を修正すればよいかが理解しやすくなるため、利便性が向上する。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記雛形は、第一の言語及び第二の言語の双方における表現が対応付けて登録され、
前記表示手段は、前記雛形を更に第一の言語で表示させる。
このような構成とすることで、雛形がもとの原稿の言語で表示されるため、ユーザは修正作業をより簡単に行うことができる。具体的には、ユーザは第一の言語で表示された雛形をそのまま原稿に流用することができるため、第一の言語が不得手なユーザでも、適切な修正を行うことが可能となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記表示手段は、前記翻訳原稿と、第二の言語の前記雛形と、第一の言語の前記雛形と、を同一画面上で対応付けて表示させる。
このような構成とすることで、ユーザは、文書の翻訳結果と、それに対応するユーザの得意な言語(第二の言語)の雛形と、元の文書の言語(第一の言語)の雛形と、を同時に比較しながら確認することができる。これにより、翻訳原稿、第二の言語の雛形及び第一の言語の雛形が、それぞれどのように対応するのかを確認しやすくなり、例えば第一の言語の雛形を原稿に適用する場合に、より利便性が向上する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記原稿は、複数の項目を含み、
前記特定手段は、前記原稿又は翻訳原稿の前記項目ごとに、対応する前記雛形を特定し、
前記表示手段は、前記項目ごとに、前記翻訳原稿及び第二の言語の前記雛形を表示させる。
このような構成とすることで、複数の項目を含む文書において、例えば一部の項目では修正が必要であるが他の項目では修正が不要等、より詳細なアドバイスをユーザに提供することが可能となる。またユーザは、項目ごとに翻訳原稿及び雛形を確認することができるため、より好適に修正作業を行うことが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記表示手段は、前記項目ごとに、前記翻訳原稿と、第二の言語の前記雛形と、第一の言語の前記雛形と、のうち少なくとも2つを、同一画面上で対応付けて表示させる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記表示手段は、前記項目ごとに、前記翻訳原稿と、第二の言語の前記雛形と、第一の言語の前記雛形と、を同一画面上で対応付けて表示させる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記特定手段は、前記翻訳原稿において不足する不足項目を特定し、
前記表示手段は、前記不足項目に関する第二の言語の前記雛形を表示する。
このような構成とすることで、ユーザは原稿において不足している項目を認識することができるため、より好適に文書の作成を支援することができる。例えば契約書の作成を行う場合、必要な条文が不足している場合には、ユーザが表示された雛形を利用して新たな条文を追加することで、より適切な内容の契約書を作成することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、文書の作成を支援する文書作成支援プログラムであって、
第一の言語で記載された原稿を取得する取得手段と、
前記原稿又は、前記原稿を第二の言語に翻訳して得られる翻訳原稿に基づいて、事前に登録される文書の雛形の中から、前記原稿又は翻訳原稿に対応する前記雛形を特定する特定手段と、
前記翻訳原稿及び第二の言語の前記雛形を表示させる表示手段と、としてコンピュータを機能させる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、文書の作成を支援する文書作成支援方法であって、
第一の言語で記載された原稿を取得するステップと、
前記原稿又は、前記原稿を第二の言語に翻訳して得られる翻訳原稿に基づいて、事前に登録される文書の雛形の中から、前記原稿又は翻訳原稿に対応する前記雛形を特定するステップと、
前記翻訳原稿及び第二の言語の前記雛形を表示させるステップと、をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外国語の文書の作成を支援することが可能な、新規な文書作成支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における文書作成支援装置の機能ブロック図である。
図2】本発明の実施形態において文書作成支援装置に登録される情報の一例を示す 図である。
図3】本発明の実施形態における文書作成支援装置の原稿の取得から結果の出力ま での処理フローチャートである。
図4】本発明の実施形態における文書作成支援装置によって出力される、レビュー 画面の表示例である。
図5】本発明の実施形態における文書作成支援装置によって出力される画面の表示 例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の文書作成支援装置について説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0022】
例えば、本実施形態では、文書作成支援装置がサーバの機能を果たす、クライアントサーバモデルのシステム構成、動作等について説明するが、ユーザが使用するコンピュータ装置が本発明の文書作成支援装置として機能してもよい。また同様の構成の方法、コンピュータプログラム、システム等も、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができる。ここで、プログラムを記憶した記録媒体は、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。
【0023】
本発明は、作成途中の文書や他社から提案された文書について、その原稿を取得して分析することで、内容理解や修正に有用な情報を提供するものである。即ち本発明における「原稿」とは、内容の分析及び修正の対象となる文書である。また「翻訳原稿」とは、原稿を翻訳して得られる文書であり、原稿と同一の内容が異なる言語で表現されたものである。
【0024】
また本実施形態では、分析対象の文書として、契約書を想定する。本実施形態の文書作成支援装置は、複数の条文を含む契約書の原稿を取得して、各条文をそれぞれ個別の項目として扱って、分析結果として翻訳原稿及び雛形を表示させる。即ち本発明における項目とは、例えば契約書に含まれる個々の条文のように、文書中で区分けされた一定の単位となる1又は複数の文を指す。
【0025】
なお、本実施形態では文書の作成言語、即ち第一の言語として英語を、ユーザの得意な言語、即ち第二の言語として日本語を想定した形態を例示するが、第一の言語及び第二の言語は任意に変更されてもよい。ここで第一の言語と第二の言語は異なる言語である。
【0026】
図1は、本実施形態における文書作成装置を含むシステムの機能ブロック図である。本実施形態では、文書作成支援装置1と、ユーザ端末2と、がネットワークNWを介して接続されており、相互に通信可能に構成される。
【0027】
文書作成支援装置1としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、サーバ装置等の一般的なコンピュータ装置を利用することができる。
【0028】
ユーザ端末2としては、演算装置、記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、スマートフォンやタブレット型端末等の任意のコンピュータ装置を利用することができる。その他、PC(Personal Computer)をユーザ端末2として利用してもよい。文書作成支援装置1との間で各種情報の入力及び送受信を行うための専用のアプリケーションや、専用のウェブページにアクセスするためのブラウザアプリケーション等が記憶装置に記憶され、演算装置が各種の処理を実行することで、任意のコンピュータ装置が本発明のユーザ端末2として機能する。
【0029】
本実施形態の文書作成支援装置1は、取得手段11と、翻訳手段12と、特定手段13と、表示手段14と、記憶部15と、を備える。なおこれらの手段の全てをひとつのコンピュータ装置が備えている必要は無く、例えば翻訳手段12や特定手段13等、一部の手段を他のコンピュータ装置等が備えており、文書作成支援装置1との間で通信を行うことで、これらの手段が実現されてもよい。
【0030】
取得手段11は、第一の言語で記載された原稿を取得する。本実施形態では、ユーザの操作に応じてユーザ端末2から原稿が送信され、ネットワークNWを介して取得手段11が原稿を取得する。なおユーザが使用する端末が文書作成支援装置1として機能する場合には、取得手段11はユーザ端末2に備えられ、ユーザの操作に応じて端末に備えられた記憶装置や外部の記憶装置から、対象の文書を取得する。
【0031】
翻訳手段12は、取得手段11によって取得された原稿を、第二の言語に翻訳して翻訳原稿を作成する。翻訳は任意の方法で行われればよく、例えば辞書データを文書作成支援装置1の備える記憶装置や外部の記憶装置が記憶しておき、これに基づいて翻訳が行われてもよいし、多数の教師データに基づいて作成された翻訳モデルに原稿を入力することで翻訳原稿が作成されてもよい。また原稿の全文が一括して翻訳されてもよいし、項目(条文)ごとに翻訳が行われてもよい。
【0032】
特定手段13は、翻訳手段12によって作成された翻訳原稿を受け取り、翻訳原稿を分析して、事前に登録される文書の雛形の中から、翻訳原稿に対応する雛形を特定する。なお、特定手段13は、翻訳原稿ではなく第一の言語で記載された原稿を分析し、原稿に対応する雛形を特定してもよい。本実施形態では、特定手段13が翻訳原稿を条文に区分した上で、記憶部15に登録された雛形の中から、各条文に対応する雛形を特定する。
【0033】
ここでの分析は当業者が可能な任意の手段で行われてよい。例えば、多数の教師データを用いて任意の文を登録済みの条文の何れかに分類する分類モデルを事前に作成しておき、翻訳原稿の条文を個別に分類モデルに入力することで、条文ごとの雛形を特定することが想定される。なお分類モデルについても任意の方法で作成されてよい。また本実施形態における契約書のカテゴリ等、文書の種類ごとに異なる分類モデルを用いる等、文書の種類に基づく分析が行われてもよい。この他、事前に登録されるキーワードに基づいて、雛形が特定されてもよい。
【0034】
表示手段14は、翻訳手段12が作成した翻訳原稿及び、特定手段13が特定した雛形を表示処理して、ユーザ端末2において、翻訳原稿、第二の言語の雛形及び第一の言語の雛形を、条文ごとに同一画面上で対応付けて表示させる。
【0035】
記憶部15は、事前に登録される雛形を含む、各種の情報を記憶する。図2は、登録される情報の一例を示す図である。本実施形態では、記憶部15は項目情報を記憶している。項目情報とは、文書に含まれる項目に関する情報であり、本実施形態では契約書のカテゴリごとに必要な条文についての情報が、項目情報として登録されている。即ち項目情報とは、各カテゴリにおいて必要な条文を示す情報と理解することができる。本実施形態の項目情報は、項目(条文)を一意に特定する条文IDと、対象となる契約書の種類を示すカテゴリと、条タイトルと、タグと、を含んでいる。タグとしては、例えば、基本条文であることや重要条文であること等を示す情報を登録することができる。
【0036】
また記憶部15は、雛形の情報を記憶する。本実施形態の雛形は条文単位で登録されており、雛形の情報は、雛形を一意に特定する雛形IDと、契約書の種類を示すカテゴリと、契約におけるユーザの立場を示すポジションと、項目情報のレコードを特定する条文IDと、第一の言語における雛形の表現と、第二の言語における雛形の表現と、条文の解説と、を含む。なお、本願の図面及び明細書において雛形の本文や解説文は省略して示すが、実際には条文や解説文の全文が登録され、表示される。
【0037】
本実施形態ではこのように、各種の契約書のカテゴリごとに、項目情報のそれぞれに対応する雛形が登録される。即ち、取得手段11が取得した原稿のカテゴリに対応付けられた項目情報のそれぞれについて、対応する雛形を組み合わせることで、必要な条文を備えた契約書の全体を構成することができる。
【0038】
ここで、同一の条文IDを含む雛形が複数登録されてもよい。具体的には、例えば売買契約における支払について記載する条文(図2の条文ID00003の項目情報に対応)として、前払いの場合と後払いの場合の両方が考えられるため、図2の雛形ID0003及び0004のように、それぞれの場合の条文の雛形が登録されることが想定される。またユーザの立場によっても有利な条文が異なるため、同一条文IDを含む雛形がポジションごとに複数登録されてもよい。また、ひとつの雛形に対して複数の解説文が対応付けられていてもよい。
【0039】
以下、画面の表示例を示しながら、本実施形態の文書作成支援装置1における処理手順について説明する。図3は、本実施形態における、原稿の取得から結果の出力までの処理フローチャートである。なおここで示す処理は一例であり、本発明の課題が解決される範囲内で手順や用いる情報等の詳細は変更可能である。例えば項目ごとに処理を行う場合に、原稿を項目ごとに区分するタイミングは、原稿の翻訳前後どちらであってもよいし、文書作成支援装置1のいずれの手段が、原稿又は翻訳原稿を項目ごとに区分する処理を行ってもよい。
【0040】
まずステップS1において、取得手段11が、第一の言語で記載された原稿を取得する。本実施形態では、ユーザ端末2を介して、ユーザにより選択された原稿がネットワークNWを介して文書作成支援装置1に送信され、取得手段11がこれを取得する。この際に、続いて行われる翻訳等の精度を向上させるために、原稿中の本文の範囲をユーザによって指定させてもよい。
【0041】
ここで本実施形態では、原稿と共に、原稿の種類、即ち例えば秘密保持契約や売買契約等、契約書のカテゴリの選択と、ユーザの契約状の立場を示すポジションの選択と、文書タイトル及び案件名の入力と、を、取得手段11が受け付ける。またこの他、契約締結日、契約期間、契約の状態、契約の自動更新の有無等についても、更に入力を受け付けてもよい。これにより、原稿データの本体と共に、契約に関する基本的な情報が取得手段11によって取得される。
【0042】
ステップS2では、ステップS1で取得された原稿を翻訳手段12が翻訳して、第二の言語で記載された翻訳原稿を作成する。翻訳処理は文書作成支援装置1において行われてもよいし、翻訳手段12が外部のサーバに第一の言語で記載された原稿を送信して、当該サーバから翻訳結果として第二の言語の翻訳原稿を受け取ってもよい。ここで本実施形態では、翻訳原稿が条文ごとに作成される。
【0043】
次に特定手段13が、ステップS3で翻訳原稿を条文ごとに分析して、ステップS4で各条文に対応する雛形を特定する。具体的には、翻訳原稿の各条文に対応する項目情報の条文IDが特定される。ステップS3では例えば任意の方法で事前に作成された分類モデルに、翻訳原稿の各条文を入力することで、対応する条文IDを特定し、これによりステップS4で当該条文IDが紐づけられた雛形を特定することが想定される。ここで契約書のカテゴリごとに異なる分類モデルを用いる等、文書の種類に基づく分析が行われてもよい。
【0044】
このとき、原稿取得時に選択されたカテゴリに対応する項目情報のうち、ステップS3及びステップS4において翻訳原稿内の条文に対応する雛形として特定されなかった項目情報の条文IDが、不足条文(不足項目)の情報として別途特定される。そして特定手段13は更に、当該条文IDに紐づけられた雛形を特定する。これにより、取得された原稿において不足する条文を特定し、条文の追加例として雛形を特定することが可能となる。
【0045】
そしてステップS5で、表示手段14が翻訳原稿及び雛形を条文ごとに表示処理して、表示結果をユーザ端末2に送信し、ユーザ端末2においては図4に示すようなレビュー画面が表示される。本実施形態のレビュー画面W1は、上部に契約書情報表示部W11を備えており、文書タイトルや案件名等、契約に関する基本的な情報が表示される。
【0046】
レビュー画面W1は、更に翻訳原稿表示部W12と、第二雛形表示部W13と、第一雛形表示部W14と、を備える。翻訳原稿表示部W12、第二雛形表示部W13、及び第一雛形表示部W14においては、ステップS4で特定手段13によって特定された雛形に基づいて、翻訳原稿及び雛形が、条文ごとに対応付けて表示される。
【0047】
翻訳原稿表示部W12には、翻訳原稿が条文ごとに表示される。各条文の表示内容としては、条番号と、条タイトルと、条文の本文が含まれる。また、ステップS4で不足する条文が存在すると判断された場合には、当該不足条文についても図4の「保証条文がありません。」のように表示する。なおここでは不足条文の条タイトルに基づいて表示されている。
【0048】
第二雛形表示部W13は、翻訳原稿表示部W12の同じ行の条文に対応する雛形を、第二の言語で表示する。ここでは条タイトル及び条文の本文が、雛形の情報に基づいて表示される。同様に第一雛形表示部W14は、翻訳原稿表示部W12の同じ行の条文に対応する雛形を、第一の言語で表示する。第二雛形表示部W13及び第一雛形表示部W14は、条タイトル及び条文のそれぞれについてコピーボタンW15を備えており、ユーザがコピーボタンW15を選択すると、その内容がユーザ端末2のクリップボードにコピーされる。これにより操作性が向上し、雛形の内容を反映した契約書の修正版の作成が容易になる。
【0049】
また第二雛形表示部W13は、解説ボタンW16を備え、解説ボタンW16が操作されると、雛形の情報に含まれる解説が表示される。図5(a)は、解説画面W2の表示例を示す図である。ここで、解説文を複数用意しておき、表示する解説文をユーザに応じて決定してもよい。例えば、ユーザ情報として契約に関するユーザの知識に応じたレベルを設定しておき、これに基づいて、対応する解説文を表示すればよい。
【0050】
また、翻訳原稿の条文に対応する雛形が複数存在する場合、第二雛形表示部W13において類似条文ボタンW17が表示される。具体的には、翻訳原稿の条文に対応すると特定された項目情報に紐づく雛形が複数登録されている場合には、そのうちの何れかの情報が第二雛形表示部W13及び第一雛形表示部W14に表示され、類似条文ボタンW17が第二雛形表示部W13に表示される。
【0051】
図5(b)は、類似条文ボタンW17が選択された場合に表示される類似条文画面W3の表示例である。類似条文画面W3においては、翻訳原稿の条文に対応する項目情報に紐づく複数の雛形が表示され、その各々について設定ボタンW31が表示される。設定ボタンW31が選択されると、選択された雛形が適用され、レビュー画面W1の第二雛形表示部W13及び第一雛形表示部W14において対応する箇所に表示される。
【0052】
このように、レビュー画面W1において、翻訳原稿と、第二の言語の雛形と、第一の言語の雛形と、を同一画面上で比較可能に表示することにより、ユーザは第一の言語で記載された原稿の内容を理解できるとともに、修正の要否、並びにどのように修正を行うべきかを詳細に理解することができる。特に、第一の言語の雛形を表示することにより、ユーザは第一の言語の雛形をそのまま利用して文書の修正を行うことができるため、第一の言語や書類の内容に詳しくないユーザに対しても、好適に文書の作成を支援することが可能となる。
【0053】
更に、これらを項目ごとに表示することにより、例えば複数の条文を含む契約書の作成作業において、個々の条文について内容の理解及び修正作業をより好適に支援することが可能となる。また、雛形に解説を対応づけて記憶し、ユーザに対して表示することにより、文書の内容に詳しくないユーザであっても容易に文書の内容を理解して、原稿作成及び修正作業を行うことができる。
【0054】
ここで本実施形態では、翻訳原稿、第二の言語の雛形及び第一の言語の雛形を項目ごとに対応付けて表示するために、翻訳原稿が条文ごと(項目ごと)に作成されるが、項目ごとに区分する処理は、任意のタイミングで実行されればよい。例えば原稿取得時に取得手段11が、取得した原稿を条文ごとに区分する処理を行ってもよいし、翻訳後に、翻訳原稿を条文ごとに区分する処理が行われてもよい。また特定手段13が翻訳原稿を分析する際に、条文ごとに区分する処理及び対応する雛形を特定する処理を行ってもよい。原稿又は翻訳原稿を条文ごとに区分する際には、例えば条文番号の記載や書式等をもとに条文の境目を判断することができる。
【0055】
なお、本実施形態において示した処理は一例であり、任意に設計の変更が可能である。
例えば文書作成支援装置1が備える各手段の一部又は全部をユーザ端末2が備えていてもよい。また原稿の内容を項目ごとに区分する処理や翻訳処理の手順も任意に変更されてよい。例えば本実施形態では、まず原稿の翻訳を行い、その後に対応する雛形の特定を行う形態を示したが、翻訳原稿ではなく原稿に基づいて雛形の特定を行い、その後に翻訳が行われてもよい。
【0056】
また本実施形態では文書として契約書を想定し、項目として条文を示したが、本発明はこれに限られず、外国語で作成された任意の書類の修正作業に適用してよい。
【符号の説明】
【0057】
1 :文書作成支援装置
2 :ユーザ端末
11 :取得手段
12 :翻訳手段
13 :特定手段
14 :表示手段
15 :記憶部
NW :ネットワーク
W1 :レビュー画面
W11 :契約書情報表示部
W12 :翻訳原稿表示部
W13 :第二雛形表示部
W14 :第一雛形表示部
W15 :コピーボタン
W16 :解説ボタン
W17 :類似条文ボタン
W2 :解説画面
W3 :類似条文画面
W31 :設定ボタン

図1
図2
図3
図4
図5