(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】超電導コイル、磁場発生装置、及び、超電導コイル製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20241205BHJP
H01F 6/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01F6/06 150
H01F6/00 ZAA
(21)【出願番号】P 2021083514
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000133939
【氏名又は名称】テラル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】河島 裕
(72)【発明者】
【氏名】伊東 徹也
(72)【発明者】
【氏名】福井 聡
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0042841(US,A1)
【文献】米国特許第5426408(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01F 6/00
H01B 12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場発生装置に用いられるように構成された、超電導コイルであって、
前記超電導コイルは、スパイラル状に延在するテープ状の複合部材を備え、
前記複合部材は、
超電導テープ線材を有する、テープ状の超電導部材と、
超電導体を含まない、テープ状の補填部材と、
を有し、
前記超電導コイルの各巻き層は、前記超電導部材の一部からなる超電導部材部分を含み、
前記超電導コイルの各巻き層の前記超電導部材部分の幅は、不均一であり、
少なくとも1つの前記巻き層は、前記超電導部材部分に対するコイル幅方向の少なくとも一方側に配置され、前記補填部材の一部からなる、補填部材部分を、さらに含み、
前記各巻き層の幅は、均一である、超電導コイル。
【請求項2】
前記各巻き層の前記超電導部材部分の臨界電流は、ほぼ同じである、請求項1に記載の超電導コイル。
【請求項3】
前記超電導部材部分の幅が最も大きい前記巻き層での磁場の垂直成分の最大値は、前記超電導部材部分の幅が最も小さい前記巻き層での磁場の垂直成分の最大値よりも、大きい、請求項1又は2に記載の超電導コイル。
【請求項4】
前記各巻き層の前記超電導部材部分の臨界電流に対する定格電流の割合は、ほぼ同じである、請求項1~3のいずれか一項に記載の超電導コイル。
【請求項5】
前記各巻き層の臨界電流は、それぞれ、定格電流の2~10倍である、請求項1~4のいずれか一項に記載の超電導コイル。
【請求項6】
前記補填部材は、銅を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の超電導コイル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の超電導コイルと、
前記超電導コイルを収容する真空断熱容器と、
を備えた、磁場発生装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の超電導コイルを製造するための超電導コイル製造方法であって、
互いに別体の複数の前記超電導部材部分と、互いに別体の複数の前記補填部材部分と、を巻回して、スパイラル状に延在する前記複合部材を得る、巻回ステップを含み、
前記巻回ステップでは、前記巻き層毎に、1つ又は複数の前記超電導部材部分と1つ又は複数の前記補填部材部分とを、コイル幅方向に沿って配列して巻回する、超電導コイル製造方法。
【請求項9】
それぞれ超電導テープ線材からなる1つ以上の超電導線材片の各々を、1つ以上のテープ幅方向位置においてテープ延在方向に沿って切断し、それにより、前記1つ以上の超電導線材片の各々から2つ以上の分割超電導線材片を得る、超電導線材片切断ステップと、
それぞれ超導電体を含まないテープ状の補填テープ線材からなる1つ以上の補填線材片の各々を、1つ以上のテープ幅方向位置においてテープ延在方向に沿って切断し、それにより、前記1つ以上の補填線材片の各々から2つ以上の分割補填線材片を得る、補填線材片切断ステップと、
をさらに含み、
前記巻回ステップにおいて、前記複数の超電導部材部分は、各前記分割超電導線材片を含み、前記複数の補填部材部分は、各前記分割補填線材片を含む、請求項8に記載の超電導コイル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超電導コイル、磁場発生装置、及び、超電導コイル製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、均一幅の超電導テープ線材を巻回してなる超電導コイルがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の超電導コイルにおいては、超電導テープ線材の使用量を低減する余地があった。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためのものであり、超電導テープ線材の使用量を低減できる、超電導コイル、磁場発生装置、及び、超電導コイル製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超電導コイルは、
磁場発生装置に用いられるように構成された、超電導コイルであって、
前記超電導コイルは、テープ状の複合部材を巻回してなるものであり、
前記複合部材は、
超電導テープ線材を有する、テープ状の超電導部材と、
超電導体を含まない、テープ状の補填部材と、
を有し、
前記超電導コイルの各巻き層は、前記超電導部材の一部からなる超電導部材部分を含み、
前記超電導コイルの各巻き層の前記超電導部材部分の幅は、不均一であり、
少なくとも1つの前記巻き層は、前記超電導部材部分に対するコイル幅方向の少なくとも一方側に配置され、前記補填部材の一部からなる、補填部材部分を、さらに含み、
前記各巻き層の幅は、均一である。
【0007】
本発明の超電導コイルにおいて、
前記各巻き層の前記超電導部材部分の臨界電流は、ほぼ同じであると、好適である。
【0008】
本発明の超電導コイルにおいて、
前記超電導部材部分の幅が最も大きい前記巻き層での磁場の垂直成分の最大値は、前記超電導部材部分の幅が最も小さい前記巻き層での磁場の垂直成分の最大値よりも、大きいと、好適である。
【0009】
本発明の超電導コイルにおいて、
前記各巻き層の前記超電導部材部分の臨界電流に対する定格電流の割合は、ほぼ同じであると、好適である。
【0010】
本発明の超電導コイルにおいて、
前記各巻き層の臨界電流は、それぞれ、定格電流の2~10倍であると、好適である。
【0011】
本発明の超電導コイルにおいて、
前記補填部材は、銅を含むと、好適である。
【0012】
本発明の磁場発生装置は、
上記の超電導コイルと、
前記超電導コイルを収容する真空断熱容器と、
を備えている。
【0013】
本発明の超電導コイル製造方法は、
上記の超電導コイルを製造するための超電導コイル製造方法であって、
互いに別体の複数の前記超電導部材部分と、互いに別体の複数の前記補填部材部分と、を巻回して、スパイラル状に延在する前記複合部材を得る、巻回ステップを含み、
前記巻回ステップでは、前記巻き層毎に、1つ又は複数の前記超電導部材部分と1つ又は複数の前記補填部材部分とを、コイル幅方向に沿って配列して巻回する。
【0014】
本発明の超電導コイル製造方法において、
それぞれ超電導テープ線材からなる1つ以上の超電導線材片の各々を、1つ以上のテープ幅方向位置においてテープ延在方向に沿って切断し、それにより、前記1つ以上の超電導線材片の各々から2つ以上の分割超電導線材片を得る、超電導線材片切断ステップと、
それぞれ超導電体を含まないテープ状の補填テープ線材からなる1つ以上の補填線材片の各々を、1つ以上のテープ幅方向位置においてテープ延在方向に沿って切断し、それにより、前記1つ以上の補填線材片の各々から2つ以上の分割補填線材片を得る、補填線材片切断ステップと、
をさらに含み、
前記巻回ステップにおいて、前記複数の超電導部材部分は、各前記分割超電導線材片を含み、前記複数の補填部材部分は、各前記分割補填線材片を含むと、好適である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、超電導テープ線材の使用量を低減できる、超電導コイル、磁場発生装置、及び、超電導コイル製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超電導コイルを備えた、本発明の一実施形態に係る磁場発生装置を概略的に示す、断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る超電導コイルを概略的に示す、斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る超電導コイルを概略的に示す、コイル幅方向断面図である。
【
図4】
図3の超電導コイルについての説明図である。
【
図5】
図3の超電導コイルについての説明図である。
【
図6】
図3の超電導コイルを構成する複合部材を平面上に展開した様子を示す、平面展開図である。
【
図7】超電導テープ線材の内部構造の一例の説明図である。
【
図8】複合部材の一例を概略的に示す、テープ幅方向断面図である。
【
図9】複合部材の他の例を概略的に示す、テープ幅方向断面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る超電導コイルを概略的に示す、コイル幅方向断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る超電導コイル製造方法を説明するための説明図である。
【
図12】参考例に係る超電導コイルについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る超電導コイル、及び、本発明に係る超電導コイル製造方法によって製造される超電導コイルは、磁場発生装置に利用できるものである。
本発明に係る超電導コイルを備えた磁場発生装置(ひいては、本発明に係る磁場発生装置)は、任意の用途に利用できるものであり、例えば、アルミビレットの加熱装置に利用できるものである。
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係る超電導コイル、磁場発生装置、及び、超電導コイル製造方法の実施形態を例示説明する。
【0018】
〔磁場発生装置〕
以下、本発明に係る磁場発生装置の実施形態を説明する。本発明の各実施形態に係る磁場発生装置1は、本発明の任意の実施形態に係る超電導コイル3を、1つ又は複数、備える。磁場発生装置1は、所定の作業空間6に磁場を発生するように構成される。磁場発生装置1は、任意の用途に利用できるものであり、例えば、アルミビレットの加熱装置に利用できるものである。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る磁場発生装置1を示している。
図1に示すように、本実施形態の磁場発生装置1は、鉄心2と、それぞれ本発明の任意の実施形態に係る一対の超電導コイル3と、一対の真空断熱容器4と、を備えている。
【0020】
図1の実施形態において、鉄心2は、ヨーク21と、一対の分割鉄心部22と、を有している。
ヨーク21は、鉄を含んで構成されており、磁束を通すように構成されている。ヨーク21は、略C字状又は略U字状(
図1の例では、略C字状)をなしている。ヨーク21は、一対の端部21aを有している。
図1の例において、ヨーク21は、一対の端部21aが作業空間6側を向くように指向されている。ただし、ヨーク21は、分割鉄心部22の装置軸線方向外側ADOの面と狭い隙間で対向する面が設けられていれば、ヨーク21の端部21aは任意の向きに指向されてよい。
一対の分割鉄心部22は、鉄を含んで構成されており、磁束を通すように構成されている。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21とは別体に構成されている。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21の内側に位置しており、互いに作業空間6を介して対向配置されている。作業空間6は、エアギャップである。
このようにして、鉄心2は、略C字状をなしている。
【0021】
本明細書では、磁場発生装置1において、一対の分割鉄心部22を通るとともに一対の分割鉄心部22どうしが対向する方向に延在する装置軸線Oに平行な方向を、「装置軸線方向AD」という。また、装置軸線方向ADにおいて作業空間6に近い側を「装置軸線方向内側ADI」といい、装置軸線方向ADにおいて作業空間6から遠い側を「装置軸線方向外側ADO」という。また、装置軸線方向ADに対し垂直な方向を「装置軸直方向OD」という。装置軸直方向ODにおいて装置軸線Oに近い側を「装置軸直方向内側」といい、装置軸直方向ODにおいて装置軸線Oから遠い側を「装置軸直方向外側」という。また、本明細書では、装置軸線Oを中心とする周方向を、「装置周方向」という。また、装置軸線Oを中心としたときの外周側、内周側を、それぞれ「装置外周側」、「装置内周側」という。
【0022】
一対の分割鉄心部22とヨーク21の一対の端部21aとは、装置軸線方向ADに対向している。一対の分割鉄心部22は、ヨーク21の一対の端部21aに対し装置軸線方向内側ADIに位置している。一対の分割鉄心部22の装置軸線方向外側ADOの面は、一対のヨーク21の装置軸線方向内側ADIの面に対して狭い隙間で対向している。
【0023】
図1に示すように、各分割鉄心部22には、各超電導コイル3が、装置軸線Oを中心とする装置周方向に沿って(言い換えれば、装置軸線Oの周りを周回するように)、それぞれ巻かれている。
図1の例において、超電導コイル3は、分割鉄心部22の外周面に形成された凹部22aに収容されている。ただし、超電導コイル3は、分割鉄心部22の外周面は、凹部22aを有していなくてもよい。超電導コイル3は、分割鉄心部22の外周面の外周側に位置して、当該外周面と径方向に離間対向するか、又は、当該外周面と接触する。
図2は、
図1の磁場発生装置1に用いられることができる、本発明の一実施形態に係る超電導コイル3を示す斜視図である。本実施形態において、装置軸線Oは、超電導コイル3の中心軸線Cと平行である。装置軸線Oは、本実施形態において超電導コイル3の中心軸線Cと一致してもよいし、超電導コイル3の中心軸線Cと一致しなくてもよい。
超電導コイル3の具体的な構成については、後述する。
図示は省略するが、磁場発生装置1は、超電導コイル3に電流(例えば直流電流)を流すための電流供給部を備えている。
分割鉄心部22と、当該分割鉄心部22に巻かれた超電導コイル3とは、分割鉄心コイル組立体5を構成している。すなわち、分割鉄心コイル組立体5は、分割鉄心部22と、当該分割鉄心部22に巻かれた超電導コイル3と、からなる。本実施形態の磁場発生装置1は、一対の分割鉄心コイル組立体5を有している。
【0024】
各分割鉄心コイル組立体5は、各真空断熱容器4にそれぞれ収容されている。ひいては、各超電導コイル3は、各真空断熱容器4にそれぞれ収容されている。ヨーク21は、一対の真空断熱容器4の外に配置されている。一対の真空断熱容器4どうしは、作業空間6を介して互いに装置軸線方向ADに対向している。真空断熱容器4における装置軸線方向内側ADIの壁は、分割鉄心コイル組立体5と作業空間6との間に位置している。また、真空断熱容器4における装置軸線方向外側ADOの壁は、分割鉄心コイル組立体5とヨーク21の端部21aとの間に位置している。
磁場発生装置1は、図示しない冷凍機を備えており、当該冷凍機により、真空断熱容器4の内部の機器が冷却される。真空断熱容器4は、冷凍機によって冷却された内部の機器の温度を保冷するように構成されている。これにより、真空断熱容器4は、冷凍機とともに、分割鉄心コイル組立体5ひいては超電導コイル3を、冷却し、超低温に維持するように構成されている。具体的に、超電導コイル3は、超電導体が超電導状態となるまで(ひいては、電気抵抗が実質的にゼロになるまで)、冷却される。
真空断熱容器4は、内部が真空にされるとともに、壁の一部又は全部に積層断熱材を有していると、好適である。積層断熱材は、例えば、金属蒸着樹脂フィルムと樹脂網を複数枚積層することにより構成される。真空断熱容器4の本体を構成する材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、複合材のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等が挙げられる。
ただし、真空断熱容器4は、これとは異なる任意の方法により、分割鉄心コイル組立体5ひいては超電導コイル3を冷却するように構成されてもよい。
【0025】
このように構成された磁場発生装置1においては、図示しない電流供給部によって超電導コイル3に電流が流されると、鉄心2(ヨーク21及び一対の分割鉄心部22)に磁束が通り、作業空間6に強磁場が発生する。このとき、各分割鉄心コイル組立体5において、超電導コイル3には、装置軸線方向外側ADOに向かってローレンツ力が作用し、分割鉄心部22には、装置軸線方向内側ADIに向かって電磁力が作用する。
なお、磁場発生装置1の使用時において、電流供給部によって超電導コイル3に流される電流(使用電流)は、超電導コイル3の臨界電流の最小値よりも小さな電流である。また、磁場発生装置1の使用時において、真空断熱容器4内の温度(ひいては超電導コイル3の温度)は、超電導コイル3の臨界温度よりも低い温度(例えば、4~20K°)に維持される。
作業空間6に発生する強磁場は、任意の用途に用いられてよい。
【0026】
例えば、磁場発生装置1は、アルミビレットの加熱装置に用いられてもよい。この場合、当該加熱装置は、磁場発生装置1に加えて、アルミビレットを回転させるモータを備える。超電導コイル3には、直流電流が流され、ひいては、作業空間6には直流強磁場が発生するようにされる。アルミビレットは、アルミビレットの中心装置軸線が装置軸線方向ADに対し垂直かつ水平になるように、作業空間6に配置され、モータによって、アルミビレットの中心装置軸線の周りに回転される。そうすると、アルミビレットには交流磁場が印加されたことと等価となり、アルミビレット内に誘導電流が流れ、アルミビレットが加熱される。
【0027】
図示は省略するが、真空断熱容器4の内部において、分割鉄心コイル組立体5の装置軸線方向内側ADIの面(具体的には、分割鉄心部22の装置軸線方向内側ADIの端面、及び/又は、超電導コイル3の装置軸線方向内側ADIの端面)には、冷却板が当てられていてもよい。この場合、超電導コイル3と冷却板とが接触していると、より好適である。これにより、超電導コイル3をより効果的に冷却できる。
ただし、冷却板は設けられていなくてもよい。
【0028】
真空断熱容器4や分割鉄心コイル組立体5の構成は、磁場発生装置1の装置軸線方向ADの中心に対して対称であると、好適であるが、磁場発生装置1の装置軸線方向ADの中心に対して非対称であってもよい。
【0029】
本発明の任意の実施形態に係る磁場発生装置1は、上述した構成とは異なる任意の構成を有してよい。
【0030】
例えば、磁場発生装置1は、真空断熱容器4を1つのみ備えてもよい。この場合、例えば、一対の分割鉄心コイル組立体5は、当該真空断熱容器4に収容され、また、ヨーク21は、当該真空断熱容器4の外に配置されるようにしてもよい。なお、この場合の真空断熱容器4は、例えば、
図1の例の一対の真空断熱容器4どうしを連結管等で連結して一体化した構成を有してもよい。
【0031】
また、鉄心2は、
図1の構成とは異なる任意の構成を有してよい。例えば、鉄心2は、1つの部品からなるとともに略C字状又は略U字状に構成されてもよい。あるいは、鉄心2は、一対の分割鉄心部22のみから構成されてもよい。
【0032】
また、磁場発生装置1は、鉄心2を備えていなくてもよい。この場合、磁場発生装置1は、超電導コイル3を備えるが、分割鉄心コイル組立体5を備えない。
【0033】
本明細書で説明する各例において、磁場発生装置1は、
図1の実施形態のように、1つ又は複数の超電導コイル3と、当該1つ又は複数の超電導コイルを収容する1つ又は複数の真空断熱容器4と、を備えている。この構成を満たす限り、磁場発生装置1は、任意の構成を有してよい。
【0034】
〔超電導コイル〕
以下、本発明に係る超電導コイルの実施形態を説明する。本発明の各実施形態に係る超電導コイル3は、上述した本発明の任意の実施形態に係る磁場発生装置1に用いられるように構成されている。すなわち、本発明の各実施形態に係る超電導コイル3は、本発明の任意の実施形態に係る磁場発生装置1の一部を構成した状態で使用される。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態に係る超電導コイル3を概略的に示す斜視図である。
図3は、
図2の超電導コイル3を概略的に示す、コイル幅方向断面図である。
図4~
図5は、
図3の超電導コイル3の説明図である。
図2~
図3に示すように、超電導コイル3は、スパイラル状に延在するテープ状(すなわち、帯状)の複合部材36を備えており、環状に構成されている。
図6は、
図3の超電導コイル3を構成する複合部材36を平面上に展開した様子を示す、平面展開図である。
図3及び
図6に示すように、複合部材36は、1つ又は複数(本実施形態では、1つ)の超電導部材31と、1つ又は複数(本実施形態では、1つ)の補填部材32と、を有する。
【0036】
本明細書では、超電導コイル3の中心軸線Cに平行な方向を、「コイル幅方向WD」という。コイル幅方向WDは、超電導コイル3を構成する複合部材36(ひいては超電導部材31及び補填部材32)の幅方向(以下、「テープ幅方向」という。)と一致する。また、超電導コイル3の径方向を「コイル径方向RD」といい、超電導コイル3の外周側及び内周側をそれぞれ「コイル外周側CO」及び「コイル内周側CI」といい、超電導コイル3の周方向を「コイル周方向CD」といい、超電導コイル3の径方向を「コイル径方向RD」という。また、超電導コイル3を構成する複合部材36(ひいては超電導部材31及び補填部材32)の延在方向を「テープ延在方向LD」(
図6)という。複合部材36(ひいては超電導部材31及び補填部材32)が超電導コイル3を構成している状態において、テープ延在方向LDは、コイル周方向CDと一致する。
【0037】
図2の例において、超電導コイル3は、平面視において、中心軸線Cの周りを周回する略四角環形状をなしているが、超電導コイル3は、平面視において、中心軸線Cの周りを周回する環形状である限り、例えば略円環形状、略楕円環形状等、任意の環形状をなしていてよい。
【0038】
図6に示すように、超電導部材31は、テープ状に構成されており、超電導テープ線材を有する。超電導テープ線材は、超電導体を含む。超電導テープ線材は、高温超電導テープ線材であると好適であり、希土類系高温超電導テープ線材であるとより好適である。超電導テープ線材は、超電導体を含む限り、任意の構成を有してよい。
図3及び
図6に示すように、超電導部材31は、幅が不均一である。
【0039】
図7は、超電導部材31を構成する超電導テープ線材31Mの内部構造の一例を概略的に示している。
図7の例において、超電導テープ線材31Mは、希土類系高温超電導テープ線材である。
図7の例において、超電導テープ線材31Mは、安定化層31aと、金属基板31eと、1層以上の機能層31b、31c、31dと、を含む。
安定化層31aは、金属基板31eと1層以上の機能層31b、31c、31dとを部分的又は全体的に覆う。安定化層31aは、例えば銅からなり、例えばめっきにより形成される。
金属基板31eは、例えばハステロイ(登録商標)からなる。
1層以上の機能層31b、31c、31dは、金属基板31eの上に積層されている。
1層以上の機能層31b、31c、31dは、超電導体からなる超電導層31cを含む。超電導層31cを構成する超電導体としては、例えば、GdBCO、及び/又は、EuBCOにBHOを添加した材料等が挙げられる。
1層以上の機能層31b、31c、31dは、金属基板31eと超電導層31cとの間に、1層以上の中間層31dを含んでもよい。中間層31dを構成する材料としては、例えばMgOが挙げられる。
1層以上の機能層31b、31c、31dは、超電導層31cに対する金属基板31eとは反対側に、保護層31bを含んでもよい。保護層31bは、例えば、Agからなる。
【0040】
超電導部材31は、超電導テープ線材のみから構成され、その全体が一体的に形成されていてもよい。この場合、超電導部材31を構成する後述の複数の超電導部材部分3Pどうしは、一体的に形成される。
あるいは、超電導部材31は、テープ延在方向LDに沿って配列され、それぞれ超電導テープ線材からなる、複数の分割超電導部材(例えば、
図11を参照しつつ後述する、互いに別体の複数の超電導部材部分3P)からなるものでもよい。この場合、これら複数の分割超電導部材どうしは、連結されずに接触している。
あるいは、超電導部材31は、テープ延在方向LDに沿って配列され、それぞれ超電導テープ線材からなる、複数の分割超電導部材(例えば、
図11を参照しつつ後述する、互いに別体の複数の超電導部材部分3P)と、当該複数の分割超電導部材の厚み方向の一方側又は両側の面に貼られた固定テープ部材と、からなるものでもよい。この場合、当該複数の分割超電導部材は、固定テープ部材によって、互いに連結される。固定テープ部材は、例えば粘着テープである。固定テープ部材は、樹脂又は金属等を含んでもよい。
【0041】
補填部材32は、テープ状に構成されている。補填部材32は、超電導体を含まず、超電導体以外の材料のみから構成される。補填部材32は、補填テープ線材を有する。補填テープ線材は、超電導体を含まず、超電導体以外の材料のみから構成される。熱伝導性向上の観点から、補填テープ線材は、金属を含むと好適であり、金属のみからなるとより好適である。補填テープ線材は、銅を含むとより好適であり、銅のみからなるとさらに好適である。補填テープ線材は、ハステロイ、銀、及び/又は金を含んでもよい。
補填部材32は、
図3及び
図6に示すように、幅が不均一であってもよいし、幅が均一であってもよい。
【0042】
補填部材32は、補填テープ線材のみから構成され、その全体が一体的に形成されていてもよい。この場合、補填部材32を構成する後述の複数の補填部材部分3Qどうしは、一体的に形成される。
あるいは、補填部材32は、テープ延在方向LDに沿って配列され、それぞれ補填テープ線材からなる、複数の分割補填部材(例えば、
図11を参照しつつ後述する、互いに別体の複数の補填部材部分3Q)からなるものでもよい。この場合、これら複数の分割超電導部材どうしは、連結されずに接触している。
あるいは、補填部材32は、テープ延在方向LDに沿って配列され、それぞれ補填テープ線材からなる、複数の分割補填部材(例えば、
図11を参照しつつ後述する、互いに別体の複数の補填部材部分3Q)と、当該複数の分割補填部材の厚み方向の一方側又は両側の面に貼られた固定テープ部材と、からなるものでもよい。この場合、当該複数の分割補填部材は、固定テープ部材によって、互いに連結される。固定テープ部材は、例えば粘着テープである。固定テープ部材は、樹脂又は金属等を含んでもよい。
【0043】
超電導部材31と補填部材32とは、コイル幅方向WDに沿って配列される。
図3及び
図6に示すように、本例において、複合部材36は、コイル幅方向WDに沿って超電導部材31と補填部材32とを1つずつ有しており、補填部材32を、超電導部材31に対するコイル幅方向WDの一方側のみに有する。ただし、複合部材36は、補填部材32を、超電導部材31に対するコイル幅方向の両側に有してもよい。複合部材36は、
図3及び
図6に示すように、コイル幅方向WDに沿って補填部材32を1つのみ有してもよいし、コイル幅方向WDに沿って補填部材32を複数有してもよい。複合部材36は、
図3及び
図6に示すように、コイル幅方向WDに沿って超電導部材31を1つのみ有してもよいし、コイル幅方向WDに沿って超電導部材31を複数有してもよい。
【0044】
超電導部材31と補填部材32とは、互いに接触している。
図8に示すように、超電導部材31と補填部材32とは、互いに一体的に形成されていてもよい。この場合、複合部材36は、1つ又は複数の超電導部材31と、1つ又は複数の補填部材32と、からなる。
あるいは、
図9に示すように、超電導部材31と補填部材32とは、それらの厚み方向の一方側又は両側の面に固定テープ部材3Rが貼られることによって、互いに固定されていてもよい。この場合、複合部材36は、1つ又は複数の超電導部材31と、1つ又は複数の補填部材32と、1つ又は複数の固定テープ部材3Rと、を備える。固定テープ部材3Rは、例えば粘着テープである。固定テープ部材3Rは、樹脂又は金属等を含んでもよい。
あるいは、超電導部材31と補填部材32とは、互いに固定されずに単に互いに接触していてもよい。この場合、複合部材36は、1つ又は複数の超電導部材31と、1つ又は複数の補填部材32と、からなる。
【0045】
図3及び
図6に示すように、複合部材36は、幅が均一である。上述のように、超電導部材31は、幅が不均一であるが、補填部材32によって複合部材36の幅が補填されることによって、複合部材36の幅が均一になるようにされている。すなわち、補填部材32の幅は、複合部材36の幅から超電導部材31の幅を差し引いた幅である。
【0046】
超電導部材31は、複合部材36の全長にわたって延在している。これに伴い、
図3に示すように、超電導コイル3の各巻き層3Lは、超電導部材31の一部(コイル周方向CDの一部)からなる超電導部材部分3Pを含む。超電導コイル3の各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅は、不均一である。
超電導部材31は、例えば、
図6に示すように、超電導コイル3の各巻き層3Lの超電導部材部分3Pを構成する部分の幅がそれぞれ対応する巻き層3Lの全長にわたって一定であるようにされると、好適である。
【0047】
超電導コイル3の各巻き層3Lのうち少なくとも1つの巻き層3Lは、補填部材32の一部(コイル周方向CDの一部)からなる補填部材部分3Qを、さらに含む。補填部材部分3Qは、複合部材36のテープ延在LD方向の一部のみにわたって延在していると好適であるが、複合部材36の全長にわたって延在していてもよい。よって、
図3の例のように、超電導コイル3の各巻き層3Lのうち一部(1つ又は複数)のみの巻き層3Lが、補填部材部分3Qを含むと好適であるが、超電導コイル3の各巻き層3Lの全てが、補填部材部分3Qを含んでもよい。
補填部材32は、例えば、
図6に示すように、補填部材部分3Qを含む各巻き層3Lの補填部材部分3Qを構成する部分の幅がそれぞれ対応する巻き層3Lの全長にわたって一定であるようにされると、好適である。
【0048】
補填部材部分3Qを含む巻き層3Lにおいて、超電導部材部分3Pと補填部材部分3Qとは、コイル幅方向WDに沿って配列される。補填部材部分3Qを含む巻き層3Lにおいて、補填部材部分3Qは、超電導部材部分3Pに対するコイル幅方向WDの少なくとも一方側に配置される。
図3に示す例では、補填部材部分3Qを含む巻き層3Lは、それぞれ、コイル幅方向WDに沿って超電導部材部分3Pと補填部材部分3Qとを1つずつ有しており、補填部材部分3Qを、超電導部材部分3Pに対するコイル幅方向WDの一方側のみに有する。ただし、超電導コイル3の各巻き層3Lのうち少なくとも1つの巻き層3Lは、補填部材部分3Qを、超電導部材部分3Pに対するコイル幅方向の両側に有してもよい。超電導コイル3の各巻き層3Lのうち少なくとも1つの巻き層3Lは、
図3に示すように、コイル幅方向WDに沿って補填部材部分3Qを1つのみ有してもよいし、コイル幅方向WDに沿って補填部材部分3Qを複数有してもよい。超電導コイル3の各巻き層3Lのうち少なくとも1つの巻き層3Lは、
図3に示すように、補填部材部分3Qを有さず、超電導部材部分3Pのみを有してもよい。超電導コイル3の各巻き層3Lは、それぞれ、
図3に示すように、コイル幅方向WDに沿って超電導部材部分3Pを1つのみ有してもよいし、コイル幅方向WDに沿って超電導部材部分3Pを複数有してもよい。
【0049】
なお、複合部材36がコイル幅方向WDに沿って超電導部材31を複数有する場合、本明細書において、「超電導部材31の幅」とは、複合部材36がコイル幅方向WDに沿って有する各超電導部材31の幅の合計を指す。また、複合部材36がコイル幅方向WDに沿って補填部材32を複数有する場合、本明細書において、「補填部材32の幅」とは、複合部材36がコイル幅方向WDに沿って有する各補填部材32の幅の合計を指す。
同様に、巻き層3Lがコイル幅方向WDに沿って超電導部材部分3Pを複数有する場合、本明細書において、「超電導部材部分3Pの幅」とは、巻き層3Lが有する各超電導部材部分3Pの幅の合計を指す。また、巻き層3Lがコイル幅方向WDに沿って補填部材部分3Qを複数有する場合、本明細書において、「補填部材部分3Qの幅」とは、巻き層3Lが有する各補填部材部分3Qの幅の合計を指す。
【0050】
図3に示すように、超電導コイル3の各巻き層3Lの幅は、均一である。上述のように、各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅は、不均一であるが、補填部材部分3Qによって少なくとも1つの巻き層3Lの幅が補填されることによって、各巻き層3Lの幅が均一になるようにされている。すなわち、補填部材部分3Qの幅は、巻き層3Lの幅から超電導部材部分3Pの幅を差し引いた幅である。
【0051】
上述した本実施形態によれば、超電導コイル3の各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅が不均一であるので、仮に超電導コイル3の各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅が均一である場合に比べて、超電導テープ線材の使用量を低減できる。これにより、超電導コイル3のコストを低減できる。なお、超電導テープ線材は、一般的に高価であるため、超電導テープ線材の使用量の低減による低コスト化の効果は大きいといえる。
また、本実施形態によれば、超電導体を含まない補填部材32の一部からなる補填部材部分3Qによって、少なくとも1つの巻き層3Lの幅が補填されることによって、各巻き層3Lの幅が均一にされている。これにより、超電導コイル3の製造時において巻き層3Lの構成要素(超電導部材部分3Pのみ、又は、超電導部材部分3P及び補填部材部分3Q)を巻回する間、各巻き層3Lに掛かる圧力を略均等にすることができ、ひいては、最終的に得られる超電導コイル3の各巻き層3Lの厚みや傾きのばらつきを抑制できる。仮に超電導コイル3が超電導部材31のみからなり、それにより、各巻き層3Lが超電導部材部分3Pのみからなり、ひいては、各巻き層3Lの幅が不均一である場合、超電導コイル3の製造時において巻き層3Lの構成要素(超電導部材部分3Pのみ)を巻回する間、より小さな幅を有する巻き層3Lに、より大きな圧力が掛かる結果、最終的に得られる超電導コイル3の各巻き層3Lには、厚みや傾きのばらつきが生じるおそれがある。
また、本実施形態によれば、各巻き層3Lの幅が均一にされているので、通電時に超電導コイル3にコイル幅方向WDに作用するローレンツ力への対応が容易になり、当該ローレンツ力による超電導コイル3の変位や変形を抑制できる。
また、本実施形態によれば、各巻き層3Lの幅が均一にされているので、超電導コイル3のコイル幅方向WDの両側の側面を平坦にすることができる。これにより、超電導コイル3のコイル幅方向WDの少なくとも一方側の側面を介した冷却の効率を向上できる。具体的には、例えば前述のように、超電導コイル3のコイル幅方向WDの少なくとも一方側の端面に、磁場発生装置1の冷却板を当てる場合に、冷却板と超電導コイル3との接触面積を増やすことができ、冷却効率を向上できる。また、例えば
図1の例のように、超電導コイル3のコイル幅方向WDの少なくとも一方側の側面を、磁場発生装置1の鉄心2に接触させる場合に、鉄心2と超電導コイル3との接触面積を増やすことができ、冷却効率を向上できる。
【0052】
上述のように、補填部材32を構成する補填テープ線材は、銅を含むとより好適であり、銅のみからなるとさらに好適である。これにより、コストを低減できる。
また、仮に、超電導コイル3が補填部材32を有さず、かつ、超電導部材31を構成する超電導テープ線材31M(
図7)が銅めっきからなる安定化層31aを有する場合においては、超電導テープ線材31Mに部分的な常電導部が発生した場合に、銅めっきからなる安定化層31aに電流が迂回する。しかし、銅めっきからなる安定化層31aは非常に薄いため、超電導テープ線材31Mに流れている電流がすべて安定化層31aに迂回すると、瞬時に温度が上昇し、焼損するおそれがある。その点、超電導コイル3が補填部材32を有し、かつ、補填部材32を構成する補填テープ線材が銅を含む場合は、銅の使用量が増大するので、超電導コイル3が、局所的な常電導部発生に対し、より頑健となる。また、銅の良熱伝導性により、超電導コイル3の冷却効率も向上するので、更に安定性が増す。
【0053】
図5(a)は、磁場発生装置1の使用時(ひいては通電時)において磁場発生装置1の一部を構成する超電導コイル3に生じる磁場分布の一例を示している。
図5(a)において、曲線は、等磁場線であり、黒色の濃淡は、磁場の強さを表しており、黒色が濃いほど磁場が強いことを表している。
図5(a)に例示するように、磁場発生装置1の使用時(ひいては通電時)において、磁場発生装置1の一部を構成する超電導コイル3内では、磁場が分布する。これに伴い、超電導コイル3の超電導部材31内では、臨界電流が分布する。臨界電流は、一般的に、温度、磁場(具体的には、磁場の垂直成分)、及び電流に依存する。磁場発生装置1の使用時において、超電導コイル3の温度及び電流は、超電導コイル3の全体にわたってほぼ均一である。したがって、超電導コイル3の超電導部材31内の臨界電流は、実質的に、磁場(具体的には、磁場の垂直成分)の分布に応じて分布するといえる。磁場の垂直成分とは、磁場のうち、巻き層3Lの面に対し垂直な成分を指す。磁場の垂直成分が大きいほど、臨界電流は小さくなる。
図5(b)に例示するように、巻き層3Lの磁場の垂直成分の最大値Tmaxは、巻き層3L毎に異なり得る。
また、超電導コイル3の各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの臨界電流は、超電導部材部分3Pの幅にも依存し、超電導部材部分3Pの幅が小さいほど、小さくなる。超電導部材部分3P内の温度、磁場(具体的には、磁場の垂直成分)、及び電流を一定としたとき、超電導部材部分3Pの臨界電流は、超電導部材部分3Pの幅に比例する。例えば、超電導部材部分3P内の温度、磁場(具体的には、磁場の垂直成分)、及び電流を一定としたとき、超電導部材部分3Pの幅がHのときの超電導部材部分3Pの臨界電流は、超電導部材部分3Pの幅が2Hのときの超電導部材部分3Pの臨界電流の1/2倍となる。なお、超電導部材部分3Pの幅を変えても、超電導コイル3の各巻き層3Lに生じる磁場分布はほぼ変わらない。
【0054】
本明細書で説明する各例において、各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの臨界電流は、ほぼ同じであると、好適であり、言い換えれば、超電導部材31の臨界電流は、超電導部材31の全体にわたってほぼ同じであると、好適である。具体的に、臨界電流が最も大きい巻き層3Lの超電導部材部分3Pの臨界電流は、臨界電流が最も小さい巻き層3Lの超電導部材部分3Pの臨界電流の100~110%であると、好適である。同様に、超電導部材31の臨界電流の最大値は、超電導部材31の臨界電流の最小値の100~110%であると、好適である。
このことは、超電導コイル3内に分布する磁場の垂直成分に応じて各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅を調整することで、実現できる。すなわち、
図4に例示するように、磁場の垂直成分が比較的小さい巻き層3Lにおいて、当該巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅を比較的小さくすることで、実現できる。
磁場発生装置1の使用時においては、超電導コイル3の超電導部材31の全体を超電導状態とするために、超電導部材31の臨界電流の最小値よりも十分に小さな使用電流を使用する必要がある。仮に、
図12に示す参考例に係る超電導コイル3’のように各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅が均一であり、それにより、各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの臨界電流どうしが大きく異なると、各巻き層3Lの超電導部材部分3Pのうち、臨界電流が比較的大きな部分では、臨界電流と使用電流との差が過剰に大きくなる結果、過剰スペックとなり、余分な超電導部材部分3Pが存在することとなる。その点、上述のように各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅を調整することで、各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの臨界電流をほぼ同じとした場合(
図4)、各巻き層3Lの超電導部材部分3Pの全体にわたって、臨界電流と使用電流との差(ひいては両者の比)の変動を小さく抑えることがができ、それにより、磁場発生能力(起磁力(アンペアターン))を維持しつつ、超電導テープ線材の使用量を低減できる。
【0055】
本明細書で説明する各例においては、上述のように磁場発生能力を維持しつつ超電導テープ線材の使用量を低減する観点から、
図4に示すように、超電導部材部分3Pの幅が最も大きい巻き層3Lでの磁場の垂直成分の最大値Tmaxは、超電導部材部分3Pの幅が最も小さい巻き層3Lでの磁場の垂直成分の最大値Tmaxよりも、大きいと、好適である。同様の観点から、
図4に示すように、超電導コイル3の全体にわたって、超電導部材部分3Pの幅が大きい巻き層3Lほど、当該巻き層3Lでの磁場の垂直成分の最大値Tmaxが大きいと、より好適である。
言い換えれば、磁場の垂直成分の最大値Tmaxが最も大きい巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅は、磁場の垂直成分の最大値Tmaxが最も小さい巻き層3Lの超電導部材部分3Pの幅よりも、大きいと、好適である。また、超電導コイル3の全体にわたって、磁場の垂直成分の最大値Tmaxが大きい巻き層3Lほど、超電導部材部分3Pの幅が大きいと、より好適である。
【0056】
本明細書で説明する各例においては、上述のように磁場発生能力を維持しつつ超電導テープ線材の使用量を低減する観点から、
図4に示すように、各巻き層3Lの磁場の垂直成分の最大値Tmaxに対応する臨界電流は、同じであると、より好適である。
このことは、各巻き層3Lの幅を、それぞれの巻き層3Lの磁場の垂直成分の最大値Tmaxに対し、それぞれ同じ比例定数で比例するように調整することで、実現できる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、
図4に示すように、各巻き層3Lの幅が、それぞれの巻き層3Lの磁場の垂直成分の最大値Tmaxに対し、それぞれ同じ比例定数で比例していると、より好適である。
【0057】
本明細書で説明する各例においては、磁場発生能力を維持しつつ超電導テープ線材の使用量を低減する観点から、各巻き層3Lの超電導部材部分3Pにおける臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)は、ほぼ同じであると、好適であり、言い換えれば、超電導部材31における臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)は、超電導部材31の全体にわたってほぼ同じであると、好適である。具体的に、臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)が最も大きい巻き層3Lの超電導部材部分3Pにおける、臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)は、臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)が最も小さい巻き層3Lの超電導部材部分3Pにおける、臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)の100~110%であると、好適である。同様に、超電導部材31における臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)の最大値は、超電導部材31における臨界電流Icに対する定格電流Irの割合(Ir/Ic)の最小値の100~110%であると、好適である。
ここで、「定格電流Ir」とは、超電導コイル3によって所定の磁場を発生させるのに必要な電流として、超電導コイル3の設計時に設定される設計電流である。定格電流Irは、例えば、磁場発生装置1のメーカーが、カタログやHP等を介して、磁場発生装置1のユーザに対して、使用を推奨する電流であり得る。したがって、磁場発生装置1のユーザは、定格電流Irを、磁場発生装置1の超電導コイル3の使用電流とし得る。
【0058】
本明細書で説明する各例においては、磁場発生能力を維持しつつ超電導テープ線材の使用量を低減する観点から、各巻き層3Lの臨界電流Icは、それぞれ、定格電流Irの2~10倍であると好適であり、定格電流Irの2~4倍であるとより好適である。
【0059】
本明細書で説明する各例においては、
図3に示すように、超電導部材31と補填部材32とは、厚さが同じである。言い換えれば、補填部材部分3Qを含む各巻き層3Lにおいて、超電導部材部分3Pと補填部材部分3Qとは、厚さが同じである。これにより、超電導コイル3の製造時において複合部材36を巻回する間、複合部材36に作用させるテンションが調整しやすくなる。また、巻き層3Lどうしの間に隙間ができるのを抑制できる。
【0060】
本明細書で説明する各例においては、超電導コイル3は、
図3の例のように、コイル幅方向WDに沿って1層のみからなる1段構造からなってもよいし、あるいは、
図10の例のように、コイル幅方向WDに沿って複数層の超電導コイル層35が配列された多段構造からなってもよい。各超電導コイル層35は、それぞれ、別々の複合部材36を巻回してなるものである。各超電導コイル層35を構成する複合部材36は、それぞれ、1つ又は複数の超電導部材31と1つ又は複数の補填部材32とを有する。各複合部材36の構成は、上述した任意の例の複合部材36と同様である。各超電導コイル層35の構成は、互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0061】
図3や
図10の各例において、超電導コイル3は、1つ又は複数の複合部材36のみから構成されている。ただし、超電導コイル3は、1つ又は複数の複合部材36に加え、当該1つ又は複数の複合部材36を内部に収容する1つ又は複数のコイルケースをさらに備えてもよい。コイルケースは、例えば樹脂等から構成される。
図10の例のように超電導コイル3が複数の複合部材36(ひいては複数層の超電導コイル層35)を備える場合、複数層の超電導コイル層35が1つのコイルケース内に収容されてもよいし、あるいは、各超電導コイル層35がそれぞれ別々のコイルケース内に収容されてもよい。
【0062】
〔超電導コイル製造方法〕
以下、本発明に係る超電導コイル製造方法の実施形態を説明する。本発明の各実施形態に係る超電導コイル製造方法は、上述した本発明の任意の実施形態に係る超電導コイル3を製造するために使用することができる。
【0063】
まず、本発明の第1実施形態に係る超電導コイル製造方法について説明する。本発明の第1実施形態に係る超電導コイル製造方法は、巻回ステップを含む。
【0064】
巻回ステップでは、互いに別体の複数の超電導部材部分3Pと、互いに別体の複数の補填部材部分3Qと、を巻回して、スパイラル状に延在する複合部材36を得る。これにより、超電導コイル3を得る。
各超電導部材部分3Pは、それぞれ超電導テープ線材からなる。各超電導部材部分3Pどうしは、幅が不均一である。各補填部材部分3Qは、それぞれ超伝導体を含まない補填テープ線材からなる。各補填部材部分3Qどうしは、幅が不均一であってもよいし、幅が均一であってもよい。
各超電導部材部分3Pの長さは、それぞれ対応する巻き層3Lのコイル周方向CD長さと同じである。各補填部材部分3Qの長さは、それぞれ対応する巻き層3Lのコイル周方向CD長さと同じである。
【0065】
巻回ステップでは、巻き層3L毎に、1つ又は複数の超電導部材部分3Pと1つ又は複数の補填部材部分3Qとを、コイル幅方向(テープ幅方向)WDに沿って配列して巻回する。この際、複数の超電導部材部分3Pどうしをコイル周方向CD(テープ延在方向LD)に沿って配列する。また、複数の補填部材部分3Qどうしをコイル周方向CD(テープ延在方向LD)に沿って配列する。コイル周方向CD(テープ延在方向LD)に沿って配列される複数の超電導部材部分3Pは、超電導部材31を構成する。コイル周方向CD(テープ延在方向LD)に沿って配列される複数の補填部材部分3Qは、補填部材32を構成する。
巻回ステップでは、各巻き層3Lにおいて、コイル幅方向(テープ幅方向)WDに沿って配列される1つ又は複数の超電導部材部分3Pと1つ又は複数の補填部材部分3Qとは、作業性の観点から、連結させずに接触させると好適であるが、連結させてもよい。コイル幅方向(テープ幅方向)WDに沿って配列される1つ又は複数の超電導部材部分3Pと1つ又は複数の補填部材部分3Qとを連結する方法としては、例えば、これらの厚み方向の一方側又は両側の面に固定テープ部材を貼ることによってこれらを連結する方法が挙げられるが、その他の任意の方法(接合等)を用いてもよい。
巻回ステップでは、コイル周方向CD(テープ延在方向LD)に沿って配列される複数の超電導部材部分3Pどうしは、作業性の観点から、連結させると好適であるが、連結させずに接触させてもよい。また、巻回ステップでは、コイル周方向CD(テープ延在方向LD)に沿って配列される複数の補填部材部分3Qどうしは、作業性の観点から、連結させると好適であるが、連結させずに接触させてもよい。超電導部材部分3Pどうし、及び/又は、補填部材部分3Qどうしを連結する方法としては、例えば、これらの厚み方向の一方側又は両側の面に固定テープ部材を貼ることによってこれらを連結する方法が挙げられるが、その他の任意の方法(接合等)を用いてもよい。
【0066】
本発明の第1実施形態に係る超電導コイル製造方法は、超電導線材片切断ステップと、補填線材片切断ステップと、をさらに含むと、好適である。超電導線材片切断ステップと補填線材片切断ステップとは、巻回ステップの前に行うと好適であるが、巻回ステップと並行して行ってもよい。
【0067】
超電導線材片切断ステップでは、
図11に示すように、それぞれ超電導テープ線材からなる1つ以上の超電導線材片310の各々を、1つ以上(
図11の例では、1つ)のテープ幅方向WD位置においてテープ延在方向LDに沿って切断し、それにより、1つ以上の超電導線材片310の各々から2つ以上(
図11の例では、2つ)の分割超電導線材片320を得る。このようにして得られた各分割超電導線材片320どうしは、幅が不均一であり得る。上記1つ以上の超電導線材片310は、予め、超電導テープ線材のメーカー等から、所定幅の超電導テープ線材を購入し、当該所定幅の超電導テープ線材を所定長さ毎に切断することにより、得られる。各超電導線材片310の長さは、それぞれ対応する巻き層3Lのコイル周方向CD長さと同等である。
巻回ステップにおいて用いられる複数の超電導部材部分3Pは、超電導線材片切断ステップで得られた各分割超電導線材片320を含む。この場合、各分割超電導線材片320は、それぞれ別々の超電導部材部分3Pを構成する。
巻回ステップにおいて用いられる複数の超電導部材部分3Pは、超電導線材片切断ステップで得られた各分割超電導線材片320のみを含んでもよいし、あるいは、超電導線材片切断ステップで得られた各分割超電導線材片320に加えて、別途準備した超電導テープ線材からなる任意の幅の1つ以上の分割超電導部材を含んでもよい。
【0068】
超電導線材片切断ステップにより、予め購入した1種類の超電導テープ線材から得られる1つ以上の超電導線材片310の各々から、様々な幅を有する2つ以上の分割超電導線材片320を得ることができる。そのため、仮に互いに幅の異なる複数種類の超電導テープ線材を購入する場合に比べて、コストを低減できる。また、1つ以上の超電導線材片310の各々から、様々な幅を有する2つ以上の分割超電導線材片320を得て、各分割超電導線材片320を超電導部材31の構成要素として用いるので、仮に、1つ以上の超電導線材片310の各々から、それぞれ必要な幅を有する1つの分割超電導線材片320のみを得て、残りの部分を破棄する場合に比べて、超電導テープ線材の無駄を削減でき、コストを低減できる。
【0069】
補填線材片切断ステップでは、図示は省略するが、上述の超電導線材片切断ステップと同様に、それぞれ補填テープ線材からなる1つ以上の補填線材片の各々を、1つ以上のテープ幅方向WD位置においてテープ延在方向LDに沿って切断し、それにより、1つ以上の補填線材片の各々から2つ以上の分割補填線材片330(
図11)を得る。このようにして得られた各分割補填線材片330どうしは、幅が不均一であり得る。上記1つ以上の補填線材片は、予め、補填テープ線材のメーカー等から、所定幅の補填テープ線材を購入し、当該所定幅の補填テープ線材を所定長さ毎に切断することにより、得られる。各補填線材片の長さは、それぞれ対応する巻き層3Lのコイル周方向CD長さと同等である。
巻回ステップにおいて用いられる複数の補填部材部分3Qは、補填線材片切断ステップで得られた各分割補填線材片330を含む。この場合、各分割補填線材片330は、それぞれ別々の補填部材部分3Qを構成する。
巻回ステップにおいて用いられる複数の補填部材部分3Qは、補填線材片切断ステップで得られた各分割補填線材片330のみを含んでもよいし、あるいは、補填線材片切断ステップで得られた各分割補填線材片330に加えて、別途準備した補填テープ線材からなる任意の幅の1つ以上の分割補填部材を含んでもよい。
【0070】
補填線材片切断ステップにより、上述の超電導線材片切断ステップと同様に、補填テープ線材の無駄を削減でき、コストを低減できる。
【0071】
ただし、巻回ステップで用いられる複数の超電導部材部分3P及び複数の補填部材部分3Qは、それぞれ超電導線材片切断ステップ及び補填線材片切断ステップを用いない任意の方法により準備されてもよい。
【0072】
つぎに、本発明の第2実施形態に係る超電導コイル製造方法について説明する。本発明の第2実施形態に係る超電導コイル製造方法は、複合部材準備ステップと、巻回ステップと、を含む。
まず、複合部材準備ステップにおいて、複合部材36を準備する。
複合部材準備ステップの後、巻回ステップにおいて、複合部材36を巻回して、スパイラル状に延在する複合部材36を得る。これにより、超電導コイル3を得る。
【0073】
複合部材準備ステップは、例えば、超電導部材31を準備する超電導部材準備ステップと、補填部材32を準備する補填部材準備ステップと、複合部材36を得る複合部材取得ステップと、を含んでもよい。
ただし、複合部材準備ステップでは、これとは異なる任意の方法により、複合部材36を準備してよい。
【0074】
複合部材準備ステップ(具体的には、超電導部材準備ステップ)は、超電導部材31を準備するために、超電導線材片切断ステップと、超電導部材部分配列ステップと、を含むと、好適である。
【0075】
超電導線材片切断ステップは、本発明の第1実施形態に係る超電導コイル製造方法の説明において上述した超電導線材片切断ステップと同じである。。
【0076】
超電導線材片切断ステップの後、超電導部材部分配列ステップでは、
図11に示すように、互いに別体の複数の超電導部材部分3Pどうしをテープ延在方向LDに沿って配列して、超電導部材31を得る。ここで、超電導部材部分配列ステップで用いられる複数の超電導部材部分3Pは、超電導線材片切断ステップで得られた各分割超電導線材片320を含む。この場合、各分割超電導線材片320は、それぞれ別々の超電導部材部分3Pを構成する。
超電導部材部分配列ステップにおいて用いられる複数の超電導部材部分3Pは、超電導線材片切断ステップで得られた各分割超電導線材片320のみを含んでもよいし、あるいは、超電導線材片切断ステップで得られた各分割超電導線材片320に加えて、別途準備した超電導テープ線材からなる任意の幅の1つ以上の分割超電導部材を含んでもよい。
この際、テープ延在方向LDに沿って配列される複数の超電導部材部分3Pを、連結せずに接触させてもよいし、あるいは、連結してもよい。各超電導部材部分3Pどうしをテープ延在方向LDに沿って連結する方法としては、例えば、これらの厚み方向の一方側又は両側の面に固定テープ部材を貼ることによってこれらを連結する方法が挙げられるが、その他の任意の方法(接合等)を用いてもよい。
超電導線材片切断ステップ及び超電導部材部分配列ステップにより、予め購入した1種類の超電導テープ線材から得られる1つ以上の超電導線材片310の各々から、様々な幅を有する2つ以上の分割超電導線材片320を得ることができる。そのため、仮に互いに幅の異なる複数種類の超電導テープ線材を購入する場合に比べて、コストを低減できる。また、1つ以上の超電導線材片310の各々から、様々な幅を有する2つ以上の分割超電導線材片320を得て、各分割超電導線材片320を超電導部材31の構成要素として用いるので、仮に、1つ以上の超電導線材片310の各々から、それぞれ必要な幅を有する1つの分割超電導線材片320のみを得て、残りの部分を破棄する場合に比べて、超電導テープ線材の無駄を削減でき、コストを低減できる。
ただし、複合部材準備ステップ(具体的には、超電導部材準備ステップ)では、これとは異なる任意の方法により、超電導部材31を準備してよい。
【0077】
複合部材準備ステップ(具体的には、補填部材準備ステップ)は、補填部材32を準備するために、補填線材片切断ステップと、補填部材部分配列ステップと、を含んでもよい。
【0078】
補填線材片切断ステップは、本発明の第1実施形態に係る超電導コイル製造方法の説明において上述した補填線材片切断ステップと同じである。
【0079】
補填線材片切断ステップの後、補填部材部分配列ステップでは、図示は省略するが、上述の超電導部材部分配列ステップと同様に、互いに別体の複数の補填部材部分3Qどうしをテープ延在方向LDに沿って配列して、補填部材32を得る。ここで、補填部材部分配列ステップで用いられる複数の補填部材部分3Qは、補填線材片切断ステップで得られた各分割補填線材片330を含む。この場合、各分割補填線材片330は、それぞれ別々の補填部材部分3Qを構成する。
補填部材部分配列ステップにおいて用いられる複数の補填部材部分3Qは、補填線材片切断ステップで得られた各補填部材部分3Qのみを含んでもよいし、あるいは、補填線材片切断ステップで得られた各補填部材部分3Qに加えて、別途準備した補填テープ線材からなる任意の幅の1つ以上の分割補填部材を含んでもよい。
この際、テープ延在方向LDに沿って配列される複数の補填部材部分3Qを、連結せずに接触させてもよいし、あるいは、連結してもよい。各補填部材部分3Qどうしをテープ延在方向LDに沿って連結する方法としては、例えば、これらの厚み方向の一方側又は両側の面に固定テープ部材を貼ることによってこれらを連結する方法が挙げられるが、その他の任意の方法を用いてもよい。
補填線材片切断ステップ及び補填部材部分配列ステップにより、上述の超電導線材片切断ステップ及び超電導部材部分配列ステップと同様に、補填テープ線材の無駄を削減でき、コストを低減できる。
ただし、複合部材準備ステップ(具体的には、補填部材準備ステップ)では、これとは異なる任意の方法により、補填部材32を準備してよい。
【0080】
複合部材取得ステップでは、超電導部材準備ステップで準備した超電導部材31と、補填部材準備ステップで準備した補填部材32と、を用いて、複合部材36を得る。複合部材取得ステップでは、上述のように、超電導部材31と補填部材32とを、それらの厚み方向の一方側又は両側の面に固定テープ部材3Rを貼ることによって、互いに固定してもよいし、あるいは、これらを互いに固定せずに単に互いに接触させてもよいし、あるいは、これらを一体的に形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る超電導コイル、及び、本発明に係る超電導コイル製造方法によって製造される超電導コイルは、磁場発生装置に利用できるものである。
本発明に係る超電導コイルを備えた磁場発生装置(ひいては、本発明に係る磁場発生装置)は、任意の用途に利用できるものであり、例えば、アルミビレットの加熱装置に利用できるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 磁場発生装置
2 鉄心
21 ヨーク
21a 端部
22 分割鉄心部
22a 凹部
3、3’ 超電導コイル
31 超電導部材
31M 超電導テープ線材
31a 安定化層
31b 保護層(機能層)
31c 超電導層(機能層)
31d 中間層(機能層)
31e 金属基板
310 超電導線材片
320 分割超電導線材片
330 分割補填線材片
32 補填部材
3L 巻き層
3P 超電導部材部分
3Q 補填部材部分
3R 固定テープ部材
35 超電導コイル層
36 複合部材
4 真空断熱容器
5 分割鉄心コイル組立体
6 作業空間
O 磁場発生装置の装置軸線
AD 装置軸線方向(対向方向)
ADI 装置軸線方向内側
ADO 装置軸線方向外側
OD 装置軸直方向
C 超電導コイルの中心軸線
WD コイル幅方向(テープ幅方向)
CO コイル外周側
CI コイル内周側
CD コイル周方向
RD コイル径方向
LD テープ延在方向