(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】動力プラント
(51)【国際特許分類】
C25B 9/67 20210101AFI20241205BHJP
F22D 1/00 20060101ALI20241205BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241205BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241205BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241205BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20241205BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20241205BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
C25B9/67
F22D1/00
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/08 302
C25B15/08 304
C25B9/77
C25B13/04 301
C25B15/02
(21)【出願番号】P 2024111509
(22)【出願日】2024-07-11
【審査請求日】2024-08-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398035589
【氏名又は名称】オーテック有限会社
(72)【発明者】
【氏名】織田紀之
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007522(JP,A)
【文献】特開2007-205667(JP,A)
【文献】特開2003-328172(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0090539(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
F22D 1/00 - 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解装置と、水素分離容器と酸素分離容器からなる固体高分子型水電解装置と、
ボイラと、給水と、給水加熱器と、蒸気タービンと、復水器と、
前記給水加熱器の内部に設けられた、高温媒体用流路と、前記給水が流れる低温媒体流路と
からなり、
前記低温媒体流路がその上流の給水管路に設けられた第1の精製装置と連通し、
前記水素分離容器を源流とする流出水が、
前記給水加熱器の前記高温媒体用流路に通されて、前記給水によって冷却され、第2の精製装置で処理され、前記低温媒体流路
に向かうよう、管路が構成され、
前記酸素分離容器を源流とする流出水が、
前記給水加熱器の別の前記高温媒体用流路に通されて、前記給水によって冷却され、第3の精製装置で処理され、前記低温媒体流路
に向かうよう、管路が構成され、
前記低温媒体流路を前記固体高分子型水電解装置に連通させる管路が設けられている動力プラント。
【請求項2】
請求項1において、
筐体からなる中継手段が設けられ、
該中継手段は、上部に空間
が設けられ(以下上部空間という)、下部に給水溜まりを有し、
前記上部空間に減圧手段が講じられ、
前記給水溜まりが、
前記低温媒体流路および、第1~第3の精製装置に連通し、
前記水素分離容器と前記高温媒体用流路の間に絞り手段が設けられ、
前記酸素分離容器と前記別の高温媒体用流路の間に絞り手段が設けられ、
前記低温媒体流路に隣接して接続された管路に給水ポンプが配設されている動力プラント。
【請求項3】
請求項1において、
前記固体高分子型水電解装置の水素ガス管路内の圧力と、酸素ガス管路内の圧力とを平衡させるべく制御する圧力平衡手段であって、
前記固体高分子型水電解装置と水素・酸素燃焼器とを結ぶ、水素ガス管路と酸素ガス管路が設けられ、
前記蒸気タービンに設けられた抽気口と、前記水素・酸素燃焼器を結ぶ抽気管路が設けられた、ガスタービンを含む動力プラント。
【請求項4】
請求項3において、
前記水素・酸素燃焼器が単段、前記ガスタービンが単段設けられ、
前記水素・酸素燃焼器が前記ガスタービンの上流側に配置され、
前記ガスタービンの排気出口が前記蒸気タービンプラントの別の給水加熱器もしくは蒸気発生器に接続されている動力プラント。
【請求項5】
請求項3において、
前記水素・酸素燃焼器および前記ガスタービンがいずれもn段設けられ(nは2以上の数字)、
各段の水素・酸素燃焼器は各段のガスタービンの上流側に配置され、
第n-1段のガスタービンは第n段の水素・酸素燃焼器の上流に配置され、
第n段のガスタービンの排気出口が前記蒸気タービンプラントの別の給水加熱器もしくは蒸気発生器に接続されている動力プラント。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1、第2、第3の精製装置が脱気膜および連続電気再生式イオン交換膜からなる動力プラント。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1の精製装置入口が、前記復水器の下部に設けられたホットウェルと、移送ポンプを介して連通されている動力プラント。
【請求項8】
請求項1において、
前記第1の精製装置で処理される給水が、逆浸透膜モジュールで脱塩処理をされている浸透水であって、
前記給水加熱器の下流側に隣接して設けられた、別の給水加熱器から排出されるドレンによって原水が所定の温度に昇温されていることを含む動力プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
固体高分子型水電解装置と、蒸気タービンプラントと、水素・酸素燃焼によるガスタービンサイクルを組み合わせた、相乗効果の大きい動力プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン発電プラントには、淡水化装置と組み合わせて、複合プラントと呼称されるタイプの技術が公知である。その基本構成は蒸気タービンと蒸発式淡水化装置(MSF等)を組み合わせ、蒸気タービンの排気をMSF等の熱源として海水を淡水化するものである。
【0003】
MSFは建設費が膨大で、エネルギ消費が大きく、薬注が必須でメンテコストが大きいという課題があり、蒸気タービン発電プラントと複合化しても、競合する逆浸透法による海水淡水化に比して、エネルギ原単位が数倍あると言われている。
【0004】
一方逆浸透法は蒸発法に比して排水の塩分濃度が格段に高く、単一プラントでの放流は注意が必要となる。例えば原水が3.5%の海水の場合、水回収率を50%とすると排水の塩分濃度は7%となる。濃度7%の海水をそのまま海に廃棄すると、深層部の酸素濃度が低下するため、海の生態系に深刻な影響を与えるとされている。
【0005】
特許文献1は蒸気タービンによる発電とMSFおよび逆浸透法からなるシステムの提案で、人の飲用水、灌漑用水、動物の飲用水など多用途の水の同時供給が可能な構成となっている。MSFとデアレータを使用する火力発電プラントが併用されており薬注が必須で、保守コストが大であるという課題がある。
【0006】
非特許文献1は、固体高分子型水電解装置からの発生熱の利用についての研究報告で、通常はクーリングタワーによって大気放散されている50-80℃の熱を、地域熱供給等に利用して、エネルギ効率を向上させる検討が紹介されている。課題は熱利用ニーズが当該固体高分子型水電解装置の近場にあるかどうかということである。
【0007】
非特許文献2には、P3に酸素水素燃焼タービン発電システムのイメージ図とシステムの説明がある。その説明によると、「直接燃焼による水蒸気を給水とすることでランキンサイクルとブレイトンサイクルを統合した全く新しいクローズド方式を実現し、高効率化を図る」とある。水素は海外から水素輸送船で運ばれてきて、酸素は別途大気から深冷分離法で得るという前提の研究のようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭49-49114号公報
【文献】特許第4084014号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Utilisation of waste heat from PEM electrolyzer, Els van der Roest et al., International Journal of Hydrogen Energy, Volume 48, Issue 72, 2023
【文献】酸素水素燃焼タービン発電の共通基盤技術の研究開発、発表者壹岐典彦、NEDO水素・燃料電池成果報告会2022、P3、P4、P6、発表No.D-1、2022年7月29日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
固体高分子型水電解装置と、蒸気タービンプラントと、水素・酸素燃焼によるガスタービンサイクルを組み合わせて、相乗効果の大きい動力プラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の発明は、
水電解装置と、水素分離容器と酸素分離容器からなる固体高分子型水電解装置と、
ボイラと、給水と、給水加熱器と、蒸気タービンと、復水器と、
前記給水加熱器の内部に設けられた、高温媒体用流路と、前記給水が流れる低温媒体流路と
からなり、
前記低温媒体流路がその上流の給水管路に設けられた第1の精製装置と連通し、
前記水素分離容器を源流とする流出水が、
前記給水加熱器の前記高温媒体用流路に通されて、前記給水によって冷却され、第2の精製装置で処理され、前記低温媒体流路に向かうよう、管路が構成され、
前記酸素分離容器を源流とする流出水が、
前記給水加熱器の別の前記高温媒体用流路に通されて、前記給水によって冷却され、第3の精製装置で処理され、前記低温媒体流路に向かうよう、管路が構成され、
前記低温媒体流路を前記固体高分子型水電解装置に連通させる管路が設けられている動力プラントである。
【0012】
本発明の第2の発明は、
上記第1の発明において、
筐体からなる中継手段が設けられ、
該中継手段は、上部に空間が設けられ(以下上部空間という)、下部に給水溜まりを有し、
前記上部空間に減圧手段が講じられ、
前記給水溜まりが、
前記低温媒体流路および、第1~第3の精製装置に連通し、
前記水素分離容器と前記高温媒体用流路の間に絞り手段が設けられ、
前記酸素分離容器と前記別の高温媒体用流路の間に絞り手段が設けられ、
前記低温媒体流路に隣接して接続された管路に給水ポンプが配設されている動力プラントである。
【0013】
本発明の第3の発明は、
上記第1の発明において、
前記固体高分子型水電解装置の水素ガス管路内の圧力と、酸素ガス管路内の圧力とを平衡させるべく制御する圧力平衡手段であって、
前記固体高分子型水電解装置と水素・酸素燃焼器とを結ぶ、水素ガス管路と酸素ガス管路が設けられ、
前記蒸気タービンに設けられた抽気口と、前記水素・酸素燃焼器を結ぶ抽気管路が設けられた、ガスタービンを含む動力プラントである。
【0014】
本発明の第4の発明は、
上記第3の発明において、
前記水素・酸素燃焼器が単段、前記ガスタービンが単段設けられ、
前記水素・酸素燃焼器が前記ガスタービンの上流側に配置され、
前記ガスタービンの排気出口が前記蒸気タービンプラントの別の給水加熱器もしくは蒸気発生器に接続されている動力プラントである。
【0015】
本発明の第5の発明は、
上記第3の発明において、
前記水素・酸素燃焼器および前記ガスタービンがいずれもn段設けられ(nは2以上の数字)、
各段の水素・酸素燃焼器は各段のガスタービンの上流側に配置され、
第n-1段のガスタービンは第n段の水素・酸素燃焼器の上流に配置され、
第n段のガスタービンの排気出口が前記蒸気タービンプラントの別の給水加熱器もしくは蒸気発生器に接続されている動力プラントである。
【0016】
本発明の第6の発明は、
上記第1の発明において、
前記第1、第2、第3の精製装置が脱気膜および連続電気再生式イオン交換膜からなる動力プラントである。
【0017】
本発明の第7の発明は、
上記第1の発明において、
前記第1の精製装置入口が、前記復水器の下部に設けられたホットウェルと、移送ポンプを介して連通されている動力プラントである。
【0018】
本発明の第8の発明は、
上記第1の発明において、
前記第1の精製装置で処理される給水が、逆浸透膜モジュールで脱塩処理をされている浸透水であって、
前記給水加熱器の下流側に隣接して設けられた、別の給水加熱器から排出されるドレンによって所定の温度に昇温されていることを含む動力プラントである。
【発明の効果】
【0019】
本発明による動力プラントによれば、水電解に伴う発生熱を、ボイラ給水の加熱に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態にかかる動力プラントの概略的な全体構成図である。
【
図2】固体高分子型水電解装置と給水加熱器を含む循環経路の別形態を示す概略詳細図である。
【
図3】固体高分子型水電解装置のガス側圧力平衡制御と給水循環制御を示す基本的な概略系統図である。
【
図3-1】圧力平衡型水電解と単段構成のガスタービンサイクルとの関連を示す概略系統図である。
【
図3-2】圧力平衡型水電解とn段構成のガスタービンサイクルとの関連を示す概略系統図である。
【
図4】前記給水の流し方の別形態を示す概略図である。
【
図5】前記給水ポンプと前記給水加熱器の相対位置の別形態を示す概略図である。
【
図6】
図4の別形態であって、給水ポンプの位置が変更されている概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明は多くの異なる形態で実施が可能であり、本発明のポイントを満たす限りにおいて以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本願実施形態では作動媒体の流れの経路が二種類設けられている。すなわち
原水を海水とし、復水器で凝縮した超純水を後工程へ移送するオープン方式と
復水を内部循環させるクローズド方式である。
【0023】
(作動媒体の流れ-全体、概要説明、
図1)
(オープン方式)
原水取水口12から精製装置PF1入口までがオープン方式固有の経路で、その後の経路はクローズド方式と同一とされている。
原水取水口12から高圧逆浸透膜14入口までの作動媒体を原水と称し、前記高圧逆浸透膜出口31以後、蒸気発生器1のボイラB入口までの区間を流れる作動媒体はボイラ給水もしくは単に給水と呼称されている。
ボイラB以降前記作動媒体は様々なプロセスを経て過熱蒸気、飽和蒸気、湿り蒸気となり復水器に流入して飽和水となり、前記復水器の下部に位置するホットウェル7wに集められる。 前記復水器で生成した水は凝縮水、復水もしくは超純水と呼称する。
【0024】
(作動媒体の流れ-全体、概要説明、
図1)
(クローズド方式)
本願実施形態でのクローズド方式の再循環管路は、前記復水器7のホットウェル7w下部のXXと精製装置PF1入口のXXを結ぶ管路で、オープン方式からクローズド方式への切り替えは、低圧逆浸透膜出口41付近に設けられた止め弁52を遮断して行うよう構成されている。クローズド方式での精製装置PF1以降の管路はオープン方式と同一である。
なお、給水管路上の位置関係について、下流とはボイラ側を指し、上流とはその反対方向を指している。
また作動媒体の流れの方向については、当該流れの源流の方向が上流とされている。
【0025】
(作動媒体の流れ-淡水化まで、オープン方式、
図1)
海水(塩分濃度3.5%)はモータM1によって駆動される冷却海水ポンプSPによって汲み上げられ、前記復水器7の熱交換器7heに流入する。 前記冷却海水は、前記熱交換器7heを介して、作動媒体から凝縮熱を受取り、例えば5℃昇温され、前記熱交換器7heに接続された冷却海水出口配管11に排出される。
給水の原水は、前記配管11に設けられた開口12から取水され、原水管路9上を
LP1→原水加熱器FWH6→限界濾過膜13→高圧ポンプHP1→高圧逆浸透膜14の浸透水出口31→逆止弁75→低圧逆浸透膜40の浸透水出口41
というルートを辿る。
【0026】
(作動媒体の流れ-淡水化工程、
図1)
高圧逆浸透膜14では純水の品位とされ、上水として使用可能であるが、飲用水としてはホウ素分を調整する必要があり、低圧逆浸透膜40がその機能を有し、該低圧逆浸透膜40で、浸透水、すなわちホウ素除去水41と圧力ヘッドを有する濃縮排水32に分離される。 前記低圧逆浸透膜40はホウ素以外にシリカ分も除去する能力があるが、逆浸透膜として電解質も除去する能力があり、次の精製工程、すなわち超純水化工程の前工程としての機能も有する。
ホウ素分が濃縮された前記低圧逆浸透膜40の排水32は、圧力ヘッドを有するよう構成されているので水タービンHT2に流入して、低圧ポンプLP1を駆動する。前記水タービンHT2を出た排水32は、本願実施形態では排水集合管27に廃棄されている。
【0027】
(省エネルギと機械的エネルギ回収、
図1)
前記逆浸透膜で消費されるエネルギは、原水の取水、前処理(図示されていない)、前記逆浸透膜等で使用されるポンプ動力のうち、前記逆浸透のための高圧ポンプ動力と高圧のまま廃棄される濃縮海水の圧力エネルギがその大半を占めている。前記圧力エネルギの回収については、本願実施形態ではシンプルなペルトン式の水タービンとポンプの組み合わせが使用されている。
【0028】
前記原水加熱器FWH6によって原水の温度が昇温されている理由は、前記原水の粘性係数を低下させて前記高圧ポンプの流動抵抗を下げるためである。前記原水を復水器7から排出された冷却海水から得ているのも、同じ理由である。
HT1=HP1=M2のトレーンにおいて、高圧ポンプHP1とエネルギ回収装置である水タービンHT1が軸連結され、さらにこれにモータM2が連結されている。高圧ポンプHP1に要する動力の約50%が水タービンHT1で回収される。なお、ここでは前記トレーンにおいて記号=は等号を意味せず、軸連結を意味している。
【0029】
(クローズド方式への切り換え、オープン・クローズド併用、
図1)
原水取水を一時的に遮断する場合には、前記低圧逆浸透膜出口41と前記精製装置PF1との中間に設けられた止め弁52が遮断され、
同時に低圧ポンプLP1および高圧ポンプHP1が停止されるべく制御信号が発せられるよう構成されている。
前記制御信号と同時に、復水器下部の連通管8に設けられた止め弁52が開弁され、
ポンプLPxを起動させる制御信号が発せられ、
復水器の貯留水が管路XX―XXを経由して前記精製装置PF1に流入する構成となっている。
オープン・クローズド併用運転も可能で、その場合は、
前記両止め弁52を開として、前記低圧ポンプLP1、前記低圧ポンプLPxおよび前記高圧ポンプHP1を起動し、前記高圧ポンプHP1と連動している電動機M2と、前記高圧ポンプHP1の出口側に設けられた絞り弁72の開度とにより前記原水流量が制御される。
【0030】
(超純水利用の趣旨)
本願実施形態では、2段からなる蒸気タービンの2段目の蒸気タービンからの抽気を希釈蒸気として用いて、水素ガスと酸素ガスを燃焼させ、1400℃~1600℃の温度のガスを発生させ、内燃型超高温のタービン、すなわちガスタービンに導いてコンバインドサイクルを構築することを目的としている。
この目的に鑑み、耐熱金属の高温酸化、アルカリ分アッシュによるエロ―ジョンコロージョン対策として、超純水を作動媒体に使用している。
【0031】
(精製装置PF1,
図1、
図2)
精製装置PF1では、上流から流入する給水は脱酸素機能を有する脱気膜GTM1による処理の後、連続電気イオン交換膜EDIで脱イオン処理をされ、超純水化処理が完了する。GTM,EDIとも一般的に使用されている名称である。精製装置PF1は従来のデアレータを代替するものである。
前記GTM1で水と膜分離された二酸化炭素や酸素ガス等の気体成分は、減圧手段VPを用いて煙道30を経由して放散される。本願実施形態による
図1で
は、海水を限界ろ過膜に続いて高圧逆浸透+低圧逆浸透+GTMという前処理をして、前記EDI1に導いている。
該EDI1においては、微量な電極系排水28が前記管路27に常時排出されている。その他、前記EDIへの給水量の約10%程度が脱イオン化された濃縮液として排出されるが、
図1の高圧ポンプHP1入口に前記濃縮液を還流させることにより濃縮物質は99.6%除去され、水分は全て回収される(図示はされていない)。
【0032】
(中継手段2、
図1~
図3、
図4~
図6)
前記精製装置PF1を出た超純水は中継手段2に流入する。本願実施形態では、前記給水は前記高圧逆浸透膜から圧力ヘッドを有して流出し、所謂中間タンクを用いることなく、中継手段2に至るよう構成されている。
前記中継手段2は、筐体からなり、上部に空間を、下部に給水溜まり2aを有し、
前記上部空間に減圧手段VPが講じられ、前記中継手段2の上流側に設けられた給水管路から、前記給水溜まり2aの下部に前記給水が流入し、精製処理済みの給水と同じ純度となった水素系管路95を流れる水と、酸素系管路94を流れる水とが前記給水溜まり2aの下部に流入するよう構成されている。前記給水加熱器FWHPの前記低温媒体流路を前記固体高分子型水電解装置に連通させる管路が設けられ、前記低温媒体流路に隣接して接続された管路には給水ポンプFP1が配設されているので、前記固体高分子型水電解装置
に向かう給水の圧力は加圧水電解をさせるに十分な圧力となっている。
【0033】
前記中継手段2から前記低温媒体流路を経由して前記固体高分子型水電解装置に至る管路、給水ポンプ位置に関して、
図1の形態以外に、
図5に示されるような位置に給水ポンプの配置を変更した形態や、前記低温媒体流路を排出する流れを二つに分離する
図6のような形態も可能である。その他変形もありうるが、発明のポイントが同一である限り本発明の範囲である。
前記中継手段2に流入する各超純水の温度は35℃~40℃で、前記上部空間の圧力Pが前記温度の水の飽和圧力相当になるよう、前記減圧手段VPが調整
される。 該減圧手段としては、蒸気エジェクタもしくは真空ポンプ等が利用されるが、本願実施形態では真空ポンプが用いられている。
【0034】
(循環経路、固体高分子型水電解装置、
図1~
図3、
図4~
図6)
図1において、管路90を経由して前記固体高分子型水電解装置
に向かう給水、すなわち燃料水(前記給水のうち電解反応に使用される超純水)と冷却用循環水からなる前記給水が、点5に至り管路91と管路92の二手に分けられ、
夫々絞り弁72a、72bで流量調整をされ、
絞り弁72aを通過した前記給水は、水電解装置が収納された、酸素分離機能を有する容器55の、貯留水溜まり55a上部に流入し、
72bを通過した給水は、前記水電解装置を構成する電解セルからなるスタック57に直接流入して
【0035】
その内部で、冷却と電解に使用され、
該スタック57上部から、酸素ガス60(
図1中の気泡)が水とともに、貯留水溜まり55aに吐出される。
図1において、RCTは交流を直流に変換する整流器で、水電解のための直流電源装置であって、
前記スタック57と合わせて、水電解装置として機能している。
前記貯留水溜まり55a上部に流入した超純水は該貯留水と熱交換しつつ下降して、前記スタック57を外側から冷却して管路94系、すなわち酸素系管路に排出される。
前記酸素ガスはデミスタ6で随伴する水分を除去されて管路53に流出し、後述するガスタービンサイクルで使用される。 前記デミスタで分離された水分は落下して貯留水に合流する。 該排出水には微細な酸素ガスの泡とともに微量の酸素が溶解し、さらに前記スタック57中での交差浸透により爆発限界量以下ではあるが、水素ガスも混入しているとされる。
【0036】
一方前記スタックで電解されて生成した水素ガスは、冷却水と共に管路51を経て水素分離容器58へ流入して気液分離され、水素ガスは上方に流れてデミスタ6で随伴する水分を除去されて管路53に流出し、後述するガスタービンサイクルで使用される。 該貯留水溜まり58aに分離集合された水分は管路95、すなわち水素系管路に排出される。
【0037】
(給水加熱器FWHP、
図1、
図2)
前記給水加熱器FWHPは1基の三流体の熱交換器として考えてもよいし、HE94およびHE95という二流体熱交換器が2基並置されていると考えてもよい。いずれにしても、三流体の流路は独立しており、内部リークは許されない。
前記固体高分子型水電解装置を80℃~90℃程度で排出された前記管路94および前記管路95の流出水は、夫々絞り手段72ow、72hwを経て、前記給水加熱器FWHPの夫々相異なる前記高温媒体用流路に流入して、前記低温媒体用流路を流れる前記給水によって、精製装置PF3およびPF2で処理可能な温度、すなわち35~40℃程度にまで冷却され、次いで夫々精製装置PF3およびPF2に導かれる。 前記絞り手段72ow、72hwにはオリフィス、ノズル等を含め、様々な手段が目的に応じて使用可能であるが、
図2では、絞りの程度が調整可能な絞り弁が用いられている。
【0038】
(精製装置PF2およびPF3、
図2)
本願実施形態では該精製装置PF2およびPF3、何れにも夫々脱酸素機能を有する脱気膜GTMと連続電気イオン交換膜EDIの組合せが用いられる。
具体的には、
PF2(95系):GTM2+EDI2
PF3(94系):GTM3+EDI3
【0039】
ここで、前記PF3にもEDIを加えた理由は、本願実施形態では水電解反応が行われているのはアノード側電極であり、該アノード側電極を冷却している94系の冷却水にも微量のオキソニウムイオンが残留していると考えるからである。 勿論、流水量、含有量等により、夫々の脱気膜GTMおよび連続電気イオン交換膜EDIの仕様は相違する。
膜分離された水素ガスや酸素ガス等のガス成分は前記GTM2およびGTM3に設けられた減圧手段VPを用いて排出され、夫々煙道30および29を経由して主バーナ80に送られ、放散燃焼させられる。EDI2およびEDI3の前記電極系排水および前記濃縮水の処理については前記精製装置PF1と同様である。
【0040】
その後95系統の循環水は
前記PF2に導かれて微量の水素ガスはGTM2で除去された後、前記連続電気イオン交換膜EDI2によって前記オキソニウムイオンが水とされ、その他の残留電解質は脱イオン化されて前記濃縮液の処理を前記高圧逆浸透膜でなされて水回収され、超純水レベルの水質となって前記中継手段2の内部の貯留水溜まり2aに合流する。
94系統の循環水は、前記95系統と同様に、
前記PF3に導かれて酸素ガスはGTM3で除去された後、前記連続電気イオン交換膜EDI3によって前記オキソニウムイオンが水とされ、その他の残留電解質は脱イオン化されて前記濃縮液の処理を前記高圧逆浸透膜でなされて水回収され、超純水レベルの水質となって前記中継手段2の内部の前記貯留水溜まり2aに合流する。
【0041】
(循環手段、
図1~
図3、
図4~
図6)
前記中継手段に合流した給水を、該中継手段から前記固体高分子型水電解装置に送り込み、循環させる要因は前記給水ポンプFP1の圧力ヘッドと前記中継手段の水面深さhの位置ヘッドの差である。
この機能は、前記給水ポンプFP1と絞り弁72owおよび72hwによってもたらされており、その意味でこれらの機械要素をまとめて循環手段と呼称する。
【0042】
本願実施形態によれば、ボイラ給水管路上の適切な区間を選んで、上記の循環手段を適用すれば、前記固体高分子型水電解装置稼働に際しての不可避的な発生熱を除去し、該除去熱を100%回収して熱効率向上に生かすことが可能となる。
【0043】
(給水加熱器FWH3-給水加熱器FWH4-原水加熱器FWH6、
図1)
点4を過ぎた給水の流れは、給水ポンプFP2で所定の圧力まで昇圧され、給水加熱器FWH4、FWH3と進む。これら二つの給水加熱器の加熱源は高圧蒸気タービンThからの抽気蒸気である(抽気点B4、64系)。
ここで、
FWH3は給水-過熱蒸気(前記抽気蒸気)、
FWH4は給水-沸騰水
間の熱交換器である。
【0044】
前記FWH4のB8点を排出された飽和水、すなわちドレンは、
絞り弁72を通過することにより、圧力降下して(等エンタルピ変化)、再沸騰する。再沸騰した前記ドレンは、前記原水加熱器FWH6に流入して、原水と熱交換をして該原水を35℃~40℃程度にまで昇温させ、前記ドレンは飽和水となり、別の絞り弁72で減圧されて、前記復水器7に流入する。
図1および
図2では前記給水ポンプFP1、FP2を駆動するモータが省略されている。
【0045】
(給水加熱器FWH2および給水加熱器FWH1、
図1、
図3-2)
前記給水加熱器FWH3を出た前記給水は給水加熱器FWH2に入る。 該給水加熱器FWH2の加熱源は、最終段の給水加熱器FWH1から排出される第2段ガスタービンTgt2の排気で、絞り弁72f1によって圧力降下している。 前記FWH2からの排気は復水器に導かれる。
前記FWH1は本願のガスタービンサイクルのガス冷却器を兼ねており、前記第2段ガスタービンTgt2の排気出口と管路で結ばれている。
【0046】
(蒸気発生器1、
図1)
前記作動媒体(給水)は蒸気発生器1に至る。
前記蒸気発生器1には、前記ボイラB、過熱器SH、再熱器RHが収納、配設されており、主バーナ80から流入した高温ガスは前記各熱交換器と熱交換して前記作動媒体を所定の温度にまで加熱する。 なお、
前記ボイラBは、どのようなタイプのボイラでも本発明を適用することが可能であるが、前記固体高分子型水電解装置および前記水素・酸素燃焼ガスタービンの応答性の速さに合わせて負荷変動に対する追従性の高い貫流ボイラが好ましい。
主バーナ80は、水素・酸素燃焼だけでなく、空気・天然ガス燃焼が可能なように構成されている。 空気供給系は管路81である。
【0047】
(酸素ガス、水素ガス、天然ガス貯蔵タンク、
図1)
なお、主バーナ80の近傍に描かれているOg、Hg、Ngは夫々酸素ガス、水素ガスおよび天然ガスの貯蔵タンクを示す。該貯蔵タンクは夫々53系および54系に接続した同符号タンクと同一である。
【0048】
(蒸気タービン、
図1)
前記過熱器SHで過熱蒸気とされた前記作動媒体は、管路46、B3点を経て高圧蒸気タービンThに流入し、断熱膨張をして動力を発生する(B4点)。
前記B4点近傍には、給水加熱器FWH3、FWH4、FWH6に向かう抽気管路64系と、
エジェクタ49aに向かう抽気管路49系の抽気点が設けられている。
図1の実施形態では、図面を単純化するため前記エジェクタ49aは1本にまとめられているが、通常は複数段設けられている。
【0049】
前記高圧蒸気タービンThで減温減圧された前記作動媒体は、前記再熱器RHにて前記高圧蒸気タービンThの入口温度程度にまで等圧加熱され、前記低圧蒸気タービンTlに流入し、断熱膨張させられて大きな動力を発生し、前記復水器7に流入する。
当該蒸気タービンプラントについて、段数は2段、温度、圧力条件は標準的な陸用、舶用の蒸気タービンプラントの仕様が適用できる。勿論段数が単段でも適用可能である。また、休止中の発電プラントを本発明による動力プラントに設備更新することも可能である。
本願実施形態の場合、復水器7に流入した前記作動媒体は冷却海水に熱を排出し、凝縮した水は、超純水もしくは飲用水、風呂、温水プール、洗剤不要な洗濯用水として貯留されるか、アンモニア合成等の後工程に移送される。
【0050】
(圧力平衡型水電解:基本構成、
図3;単段構成のガスタービン、
図3-1)
本発明では、前記固体高分子型水電解装置への給水圧力(例えば1MPa)と略同一圧力の水素ガスと酸素ガスとを化学量論比通りに生成させるという方式を採用しており、
通常のガスタービンサイクルでのガス(水蒸気)圧縮工程が、
加圧されたボイラ給水と固体高分子型水電解装置との組み合わせによって代替され、ガス圧縮機を用いることなくガスタービンサイクルを構築して、動力を取り出すよう構成されている。
【0051】
図3-1において、
前記酸素分離容器55から前記管路53に流入した酸素ガスが、ミキシングチャンバ86に至り、前記低圧蒸気タービンTlの高圧側の抽気点A1からの抽気88と予混合された後、水素・酸素燃焼器65の前室65fに流入するよう、管路が構成されている。ここで、酸素ガスと抽気蒸気は予混合させずに、夫々個別のルートで前記水素・酸素燃焼器65に導いてもよい。
前記水素分離容器58から管路54に流入した水素ガスが、前記燃焼器65の前室65fの側面に至るよう管路が構成されている。
前記混合気と前記水素ガスはインジェクタ69で、別々の流路を辿りながら燃焼室に流入するよう構成されている。
【0052】
水素ガスと酸素ガスの着火、燃焼に際し、
前記酸素分離容器55のガス出口から前記燃焼器65の前記インジェクタ69までの管路と
前記水素分離容器58のガス出口から前記燃焼器65の前記インジェクタ69までの管路と
前記燃焼器65経由、前記ガスタービンTgt1のノズル入口までの区間
のガス圧力は、
圧力平衡手段によって、例えば1MPaを保持されている。
該圧力平衡手段は、
酸素側背圧制御弁73oと圧力計Pおよび
水素側背圧制御弁73hと圧力計P
からなる背圧制御システムで構成されている。
この区間内の圧力が設定値、1MPaを超えると、瞬時に背圧制御弁が作動し圧力が設定値に下がるまで内部ガスを煙道29(背圧制御弁73oが作動の場合)または煙道30(背圧制御弁73hが作動の場合)を経由してガスが主バーナに放出され燃焼されるよう構成されている(
図3、
図3―1)。
このようにして、前記酸素ガスおよび前記水素ガスが、1MPaで生成され、
前記燃焼器65内では定圧燃焼をするので、
前記ガスタービンTgt1のノズルまでの区間が1MPaに保持される。
ここで前記ノズルは、当該背圧制御システムの圧力を保持する絞り手段の機能も有する。
特許文献2は固体高分子水電解装置に特化した高精度の圧力平衡手段の提案である。 本願実施形態に関わる
図3-1では一般産業用として実績が多く、コンパクトなダイヤフラム弁を用いた背圧制御弁を使用した圧力平衡手段を用いている。
【0053】
前述したように、前記ガスタービンTgt1を排出したガス(水蒸気)は最終段の給水加熱器FWH1に流入して、ボイラ給水を加熱する。その排気は絞り弁72f1で減圧され、給水加熱器FWH2に流入し、前記給水を加熱する。
ここで留意すべきことは、
前記給水加熱器FWH2より上流で前記給水が受熱した熱量の大きさ、
もしくは、
前記ガスタービンの排気熱量の大きさによっては、
前記最終段の給水加熱器FWH1において、作動媒体である給水が沸騰域に入る場合がありうることである。
このような状態における前記「FWH1」は、給水加熱器でもあり、蒸気発生器でもある。
前記給水加熱器FWH2より上流の給水加熱器とは、第一義的には「FWHP」のことである。
ガスタービン単体の場合、ガスタービン+蒸気発生器の構成は公知であり、
ガスタービン+蒸気タービンからなるコンバインドサイクルでも+蒸気発生器とする構成が一般に採用されている。
【0054】
(圧力平衡型水電解、n段構成のガスタービン、
図3-2)
nは正の整数である。
図3-2は、n=2の場合の一実施形態である。
前記酸素分離容器55から前記管路53o1に流入した酸素ガスは、ミキシングチャンバ86に至り、
前記低圧蒸気タービンTlの高圧側の抽気点A1からの抽気88と予混合され、混合気となる。該混合気は、前記ミキシングチャンバ86と第1段燃焼器65を結ぶ管路に沿って前記第1段燃焼器65の前室65fに流入する。
ここで、酸素ガスと抽気蒸気は予混合させずに、夫々個別のルートで前記水素・酸素燃焼器に導いてもよい。
前記第1段燃焼器65の排気出口A2は、第1段ガスタービンTgt1の入口に接続され、
前記第1段ガスタービンTgt1のガス出口A3Iが、
ミキシングチャンバ87に接続され、管路53o2から流入する前記酸素ガスと予混合された後、
第2段燃焼器66の前室66fに流入するよう管路が構成されている。
前記水素分離容器58から管路54に流入した水素ガスは、
管路54h2を経て第2段燃焼器66の前記前室66fの側面に至るよう管路が構成されている。
前記混合気と前記水素ガスはインジェクタ69bで、別々の流路を辿りながら燃焼室(各内筒68の内部空間)に流入するよう構成されている。
図3-2に示されているように、2段構成のガスタービンサイクルでも基本的に単段構成のガスタービンサイクルと同様な圧力平衡手段が用いられており、前記固体高分子水電解装置への給水と、生成酸素ガスおよび水素ガスの圧力は高々1MPa程度である。
【0055】
前記第2段燃焼器66には、外筒67bの内側を冷却するため、前記低圧蒸気タービンTlの低圧側抽気点A12から、240℃程度の低温度の過熱蒸気89が円周上数箇所に設けられた蒸気筒71から噴射されて、外筒67bの内側を冷却して耐圧容器である該外筒67bがクリープを起こさない温度以下に保たれるよう構成されている。その結果、第2段ガスタービン入口温度を、例えば1600℃に抑え乍ら、
追加の燃焼用水素ガス・酸素ガス量を増大させることが可能となり、第2段ガスタービンと給水加熱器FWH1および2を流れる作動媒体の重量流量が増大し、出力と熱効率を上昇させる効果がある。
【0056】
本願実施形態の構成によれば、
前記の通り前記第1段、第2段燃焼器とも希釈蒸気量、燃焼用水素ガス量および酸素ガス量が個別に設定できるため、高圧の第1段燃焼器温度を低く抑え(例えば0.8MPa、1400℃)、低圧の第2段燃焼器の温度を高くできるので(例えば、0.2MPa、1600℃)、耐圧容器の材料選定が容易となる。前記固体高分子型水電解装置に流入する給水の圧力は低圧であり、軽量で信頼性の高い量産品が使用できる。
圧力平衡型のガス生成法を採用しているので、差圧型に比して、前記スタックを構成しているセルエレメントへ作用する横向きの力が殆どなくなり、該セルエレメントの耐久性が格段に向上する、カソード側(水素ガス発生側)とアノード側(酸素ガス発生側)の差圧がなくなるため、水素ガスのカソード側からアノード側への交差浸透量が減少し、安全性が高まることが期待できる。
なお、前記第1段、第2段燃焼器を夫々カンニュラー配置の小径で薄肉の燃焼筒群で構成すれば、重量が小さくなり、応答性が高くなる。
動力プラントの観点からすると、固体高分子型水電解装置の発生熱は熱損失ではなく、主バーナの燃料以外の追加熱源である。
さらに、本発明を船舶に適用し、ガスタービンを推進専用とすれば、推進装置に連結されたガスタービン軸には圧縮機が無いので、前記ガスタービン軸の慣性モーメントが大幅に小さくなり、起動、変速が容易となり、操舵性の向上効果が期待できる。大幅なコスト節減効果も期待できる。
【0057】
(発電所近傍の海に与える環境影響)
オープン方式での試算結果によれば、真水の回収率50%に対し、前記廃棄水合流後の排水の温度、塩分濃度は、周辺海域に比べて、約5.4℃の上昇、塩分濃度で0.02%程度の上昇に留まる。
【符号の説明】
【0058】
1:蒸気発生器
2:中継手段
2a:中継手段貯留水溜まり
4:燃料水および循環冷却水抜出点
7:表面式復水器
7he:熱交換器
7w:ホットウェル
9:給水原水系
10:冷却海水入口配管
11:冷却海水出口配管
12:取水口
13:限界濾過膜
13x:限界濾過膜
14:高圧逆浸透膜
27:廃棄水集合管
28:連続電気再生式イオン交換膜排水管
31:高圧逆浸透膜浸透水
40:低圧逆浸透膜
41:低圧逆浸透膜浸透水
43:給水管路
53:酸素ガス管路
53o1:希釈酸素ガス管路
53o2:希釈酸素ガス管路
54:水素ガス管路
54h1:水素ガス管路
54h2:水素ガス管路
55:酸素分離容器
55a:酸素分離容器貯留水溜まり
57:スタック
58:水素分離容器
58a:水素分離容器貯留水溜まり
60:酸素ガス(貯留水中の気泡)
62:超純水利用系(後工程)
63:超純水系と飲用水系の切換弁
73h:水素側背圧制御弁
73o:酸素側背圧制御弁
75:逆止弁
80:主バーナ
88:希釈蒸気管路
89:希釈蒸気管路
90:燃料水・循環冷却水取水系
94:酸素ガス側循環排水
95:水素ガス側循環排水
EDI:連続電気再生式イオン交換膜
FP1:給水ポンプ
FP2:給水ポンプ
GTM:脱気膜
PF1:精製装置
PF2:精製装置
PF3:精製装置
【要約】
【課題】
固体高分子型水電解装置と、蒸気タービンプラントと、水素・酸素燃焼によるガスタービンサイクルを組み合わせて、相乗効果の大きい動力プラントを提供する。
【解決手段】
ガスタービンおよび固体高分子型水電解装置の圧力、温度条件に見合う蒸気タービンプラントの給水管路上の区間を選んで、前記固体高分子型水電解装置と給水加熱器を含む
給水の循環経路を設け、前記固体高分子型水電解装置の水電解に伴う発生熱を、前記給水加熱器によって吸収して、ボイラ給水の加熱に利用する。
【選択図】
図1