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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C01B3/04 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020153545
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047643
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】毛利 安希
(72)【発明者】
【氏名】金岡 佳充
(72)【発明者】
【氏名】永岡 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝俊
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/090739(WO,A1)
【文献】特開2019-085302(JP,A)
【文献】特開2018-023938(JP,A)
【文献】特開2018-024555(JP,A)
【文献】特開2019-006652(JP,A)
【文献】特開2009-274881(JP,A)
【文献】特開2016-164109(JP,A)
【文献】特開2010-241675(JP,A)
【文献】特開平10-141044(JP,A)
【文献】特開2014-111517(JP,A)
【文献】永岡勝俊,触媒の酸化熱を利用したアンモニアの酸化分解による水素製造プロセスのコールドスタート,ENEOS Technical Review,日本,2016年06月,Vol.58, No.2,p.49-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化合物を分解して水素を生成する触媒を収容する反応容器と、
前記水素化合物と酸素とを含む混合ガスを前記反応容器に供給する供給部と、
前記触媒の一部の領域を局所的かつ選択的に水素化合物が燃焼可能な温度にまで加熱し、前記水素化合物の燃焼を開始する加熱部と、
を備える、水素製造装置。
【請求項2】
前記水素化合物はアンモニアを含む、請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記加熱部は抵抗を含み、前記抵抗は前記触媒の一部と接している、請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記加熱部はマイクロ波を前記触媒の一部に照射するマイクロ波発振器を含む、請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記加熱部は前記マイクロ波を共振させる空胴共振器を含む、請求項4に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記加熱部はマイクロ波を吸収して熱に変換するサセプタを含み、
前記サセプタは、前記マイクロ波を吸収する位置であって、かつ、前記触媒の一部と接する位置に配置される、請求項4又は5に記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記供給部は混合ガスを前記触媒に導く混合ガス供給管を含み、
前記反応容器は、混合ガスを前記触媒に導き、前記混合ガス供給管よりも小さい径を有する小径管を含み、
前記小径管内には前記触媒の一部が収容され、
前記加熱部は前記小径管内の前記触媒を加熱する、請求項1から6のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項8】
前記反応容器は前記混合ガスを前記触媒に導く供給口と、前記触媒によって生成された水素を排出する排出口と、前記供給口に接続され、前記供給口から前記排出口に向かうにつれて径が拡大する拡径部とを含み、
前記触媒の少なくとも一部が前記拡径部内に収容されており、
前記加熱部は前記拡径部の中央よりも前記供給口側に収容された前記触媒の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する、請求項1から6のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記触媒の一部の領域のみを局所的かつ選択的に水素化合物が燃焼可能な温度にまで加熱し、前記水素化合物の燃焼を開始する、請求項1から8のいずれか一項に記載の水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーとして、水素利用技術に関する研究開発が盛んに進められている。水素ガスは天然にはほとんど存在せず、貯蔵及び輸送も容易ではないため、触媒を用いてアンモニアなどの水素化合物から水素を生成することが検討されている。触媒は、通常、反応容器内に収容され、水素の生成比率を高くするために加熱される。特許文献1には、水素化合物を分解して水素を発生させる触媒部内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段を備える改質装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-205599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の改質装置によれば、プラズマ発生手段を使用するため、短時間で水素を生成することができる。しかしながら、このような改質装置では、プラズマ発生手段が改質室全体を覆うため、装置全体の寸法が大きくなってしまい、使用される用途及び場所が制限されるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、触媒を加熱する加熱部を小型化可能な水素製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る水素製造装置は、水素化合物を分解して水素を生成する触媒を収容する反応容器を備える。水素製造装置は、水素化合物と酸素とを含む混合ガスを反応容器に供給する供給部を備える。水素製造装置は、触媒の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する加熱部を備える。
【0007】
水素化合物はアンモニアを含んでもよい。
【0008】
加熱部は抵抗を含み、抵抗は触媒の一部と接していてもよい。
【0009】
加熱部はマイクロ波を触媒の一部に照射するマイクロ波発振器を含んでもよい。
【0010】
加熱部はマイクロ波を共振させる空胴共振器を含んでもよい。
【0011】
加熱部はマイクロ波を吸収して熱に変換するサセプタを含んでもよい。サセプタは、マイクロ波を吸収する位置であって、かつ、触媒の一部と接する位置に配置されてもよい。
【0012】
供給部は混合ガスを触媒に導く混合ガス供給管を含んでもよい。反応容器は、混合ガスを触媒に導き、混合ガス供給管よりも小さい径を有する小径管を含んでもよい。小径管内には触媒の一部が収容され、加熱部は小径管内の触媒を加熱してもよい。
【0013】
反応容器は混合ガスを触媒に導く供給口と、触媒によって生成された水素を排出する排出口と、供給口に接続され、供給口から排出口に向かうにつれて径が拡大する拡径部とを含んでもよい。触媒の少なくとも一部が拡径部内に収容されており、加熱部は拡径部の中央よりも供給口側に収容された触媒の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、触媒を加熱する加熱部を小型化可能な水素製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る水素製造装置の一例を示す模式的な断面図である。
図2】第2実施形態に係る水素製造装置の一例を示す模式的な断面図である。
図3】第3実施形態に係る水素製造装置の一例を示す模式的な断面図である。
図4】第4実施形態に係る水素製造装置の一例を示す模式的な断面図である。
図5】第5実施形態に係る水素製造装置の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本実施形態に係る水素製造装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0017】
[第1実施形態]
水素製造装置1は、水素化合物を分解して水素を生成する。水素製造装置1は、水素よりも貯蔵及び輸送が容易な水素化合物から水素を生成することができるため、水素をエネルギー供給源として容易に利用することができる。水素化合物は、分子中に水素を含有する化合物であればよい。本実施形態においては、水素化合物としてアンモニアを例として説明するが、水素化合物は、例えば、アンモニア及び炭化水素の少なくともいずれか一方を含む化合物であってもよい。
【0018】
水素化合物としてアンモニアを使用した場合、アンモニアから水素を生成する分解反応は、以下のような反応式(1)によって表される。
NH→1.5H+0.5N ΔH=45.4kJ (1)
【0019】
水素化合物の分解反応は、上記反応式(1)に示すように、通常、吸熱反応であるため、分解反応を継続させるには、外部から熱を与え続ける必要がある。そこで、本実施形態に係る水素製造装置1では、水素化合物と酸素とを含む混合ガスが反応容器10に供給され、反応容器10内で水素化合物が燃焼する。水素化合物としてアンモニアを使用した場合、アンモニアの燃焼反応は例えば以下のような反応式(2)によって表される。
NH+0.25O→H+0.5N+0.5HO ΔH=-75.4kJ (2)
【0020】
水素化合物の燃焼反応は、上記反応式(2)に示すように、通常、発熱反応であるため、水素化合物の燃焼反応で生じた熱の少なくとも一部を水素化合物の分解反応に用いることにより、水素化合物の分解反応を継続して進行させることができる。したがって、水素化合物の燃焼反応と分解反応とを同一の反応容器10内で進行させることにより、外部から熱エネルギーを継続して供給しなくても、水素化合物の分解反応を継続して進行させることができる。すなわち、本実施形態に係る水素製造装置1はオートサーマル反応を利用したATR(オートサーマルリフォーマー)である。
【0021】
図1に示すように、水素製造装置1は、反応容器10と、供給部20と、排出部30と、加熱部40とを備えている。反応容器10には、供給部20と排出部30とが接続されている。
【0022】
反応容器10は、内部に触媒11を収容する。触媒11は、水素化合物を分解して水素を生成する。反応容器10は、円筒形状をしており、混合ガスが供給可能なように設けられた供給口12と、生成された水素が排出可能なように設けられた排出口13とを有している。反応容器10は触媒11を収容し、触媒11によって水素化合物から水素を生成することができれば、形状等は特に限定されない。
【0023】
触媒11は、反応容器10の内部に収容され、水素化合物を分解して水素を生成する。また、触媒11には、水素化合物の燃焼可能温度を低減可能な物質が含まれていてもよい。触媒11は、例えば、白金、ルテニウム、パラジウム及びロジウムからなる群より選択される少なくとも1つの貴金属、並びに、コバルト、ニッケル、鉄、タングステン、モリブデン、バナジウム、クロム、マンガン及び銅からなる群より選択される少なくとも1つの遷移金属の少なくともいずれか一方の金属を含んでいてもよい。
【0024】
触媒11に含まれる金属は金属酸化物などの担体に担持されてもよい。担体は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、イットリア安定ジルコニア、NaY型ゼオライト、超安定化Y型ゼオライト、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ルチル-アナターゼ混晶型酸化チタン、酸化セリウム、及びセリウム―ジルコニウム複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を含んでいてもよい。
【0025】
触媒11の形状は特に限定されず、水素化合物を分解して水素を生成可能な形状であればよい。触媒11の形状は、例えば、粉状、粒子状、ハニカム状、多孔質状などのような形状で反応容器10に収容されていてもよい。ただし、オートサーマル反応は供給された酸素が全て消費されれば、燃焼は広がらない。したがって、経済的な観点から、触媒11の収容量は、燃焼熱によって水素化合物の分解可能温度以上となる領域と一致するように触媒11が反応容器10に収容されていることが好ましい。
【0026】
水素化合物の分解可能温度は、水素化合物及び触媒11の種類にもよるが、例えば、300℃以上900℃以下であり、より好ましくは400℃以上800℃以下である。
【0027】
供給部20は、水素化合物と酸素とを含む混合ガスを反応容器10に供給する。供給部20は、水素化合物供給管21と、酸素供給管22と、混合部23と、混合ガス供給管24とを含む。
【0028】
水素化合物供給管21は、水素供給源と混合部23とを接続し、水素化合物を混合部23に供給する。水素供給源は、例えば水素化合物が収容されたボンベである。水素化合物供給管21には、水素化合物の流量を調整可能な流量調整器が設けられてもよい。
【0029】
酸素供給管22は、酸素供給源と混合部23とを接続し、酸素含有ガスを混合部23に供給する。酸素供給源は、例えば、高純度の酸素が封入されたボンベ、又は、大気中の空気である。酸素供給管22には、酸素含有ガスの流量を調整可能な流量調整器が設けられてもよい。また、酸素供給管22には、大気中の空気を混合部23に供給するためのブロワが設けられてもよい。
【0030】
混合部23では、水素化合物供給管21から供給される水素化合物と、酸素供給管22から供給される酸素含有ガスとが混合される。混合部23は、例えば、水素化合物及び酸素含有ガスが通過可能な通路又は空間である。混合部23には、水素化合物と酸素含有ガスとを拡散するディフューザが設けられてもよい。
【0031】
混合ガス中の水素化合物に対する酸素のモル比(酸素/水素化合物)は、水素化合物及び触媒11の種類によって適宜変更することができる。水素化合物に対する酸素のモル比(酸素/水素化合物)は、燃焼反応を促進させて多くの熱を供給する観点から、例えば、0.05以上であってもよく、0.1以上であってもよい。また、水素化合物に対する酸素のモル比は、水素化合物の分解反応を促進させて水素の生成比率を増加させる観点から、0.4以下であってもよく、0.3以下であってもよい。混合ガスには、水素化合物及び酸素含有ガスに加え、ヘリウム、ネオン及びアルゴンなどの貴ガスがキャリアガスとして含まれていてもよい。
【0032】
混合ガス供給管24は、混合部23と反応容器10の供給口12とを接続し、混合部23で混合された混合ガスを反応容器10に供給する。
【0033】
排出部30は、反応容器10の排出口13と接続され、反応容器10で生成された水素を含む生成ガスを反応容器10から排出する。生成ガスには、例えば、未反応の水素化合物(アンモニア)及び酸素、並びに、燃焼反応又は分解反応によって生成された窒素及び水が含まれる場合がある。
【0034】
加熱部40は、触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する。具体的には、加熱部40の少なくとも一部は反応容器10内に収容された触媒11に埋設され、埋設された加熱部40は加熱部40の周囲にある触媒11の一部の領域のみを加熱することができる。加熱部40によって加熱される触媒11の位置は、特に限定されないが、加熱部40は、反応容器10内の混合ガスの流れを考慮し、例えば、供給口12付近の領域など、触媒燃焼反応による熱が広がりやすい位置を加熱してもよい。また、混合ガスの流れを考慮し、反応容器10は触媒11の一部の領域が加熱されたことによって起こった触媒燃焼反応による熱が全体的に広がりやすい形状であることが好ましい。
【0035】
加熱部40は、触媒11の一部を水素化合物が燃焼可能な温度にまで加熱する。燃焼可能な温度は、水素化合物の種類、及び触媒11の種類などにもよるが、例えば、150℃以上800℃以下である。
【0036】
触媒11のうち、加熱部40によって加熱される一部の領域の触媒11に含まれる材料は、それ以外の領域の触媒11に含まれる材料よりも、水素化合物が燃焼可能な温度を低減可能な材料であってもよい。これにより、より少ないエネルギーで触媒11を加熱することが可能となる。
【0037】
加熱部40は、触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱することができれば加熱手段は特に限定されない。加熱部40は、例えば、ジュール熱によって触媒11の一部の領域のみを局所的かつ選択的に加熱してもよい。具体的には、加熱部40は、図1に示すように、電源41と、抵抗42とを含んでいてもよい。
【0038】
電源41は、抵抗42を含む回路に電流を流すことができる。電源41は、直流電源であってもよく、交流電源であってもよい。
【0039】
抵抗42は、触媒11の一部と接触した状態で配置されている。抵抗42の一部が触媒11と接触していてもよく、抵抗42の周囲を覆うように触媒11が配置されてもよい。抵抗42は、ジュール熱を発生させることができれば、材料や形状などは特に限定されない。抵抗42は導線を複数回巻いたコイル状であってもよく、棒状であってもよい。
【0040】
抵抗42の体積抵抗率は、例えば、8×10-8Ωm以上である。抵抗42は、例えば、金属及びセラミックの少なくともいずれか一方を含んでいる。金属は、特に限定されないが、白金などの貴金属を含んでいてもよい。これにより、アンモニアなどの腐食性の高いガスと接触させた場合であっても、金属が腐食するのを抑制することができる。セラミックは、炭化ケイ素及びニケイ化モリブデンなどであってもよい。抵抗42は、必要に応じてステンレスなどの耐腐食性が高い材質でできたシースなどに収容されていてもよい。
【0041】
抵抗42の表面には、触媒11を含む焼成体が設けられてもよい。焼成体は、例えば、触媒11に用いられた金属と金属を担持する担体とを混練、塗布及び焼成して形成することができる。これにより、触媒11を含む焼成体が加熱されて水素化合物の燃焼反応及び分解反応を促進させることができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る水素製造装置1の水素製造機構について説明する。
【0043】
まず、水素化合物が、水素化合物供給管21によって水素化合物供給源から混合部23に供給される。また、酸素含有ガスが、酸素供給管22によって酸素供給源から混合部23に供給される。水素化合物と酸素含有ガスは混合部23で混合され、混合ガスが生成される。混合ガスは、混合ガス供給管24によって混合部23から反応容器10に供給される。反応容器10に供給された混合ガスは、触媒11と接触した後、排出部30によって反応容器10から排出される。
【0044】
電源41によって抵抗42に電流が流されると、抵抗42でジュール熱が発生し、このジュール熱が抵抗42と接触する触媒11に移動することで、触媒11の一部が加熱される。加熱された触媒11が燃焼可能な温度にまで達すると、水素化合物が燃焼を開始する。触媒11が加熱されて水素化合物が分解可能な温度にまで達すると、加熱された一部の触媒11と接触した水素化合物は分解し、水素化合物から水素が生成される。
【0045】
反応容器10には混合ガスが供給され続けるため、水素化合物の触媒燃焼反応は未反応の酸素分子が全て消費される範囲まで反応容器10内で広がり、一部の触媒11から反応容器10に収容された触媒11全体へ加熱される触媒11の領域が広がる。これに伴い、水素化合物が分解可能な温度に達する触媒11の領域が広がり、水素化合物が分解される領域も広がるため、抵抗42のジュール熱による加熱を停止してもよい。
【0046】
生成された水素は、反応容器10の排出口13を通り、排出部30によって反応容器10から排出される。
【0047】
反応容器10では、水素化合物の燃焼反応によって生じた反応熱の少なくとも一部が、水素化合物の分解に必要な熱エネルギーとして利用される。触媒11による分解反応を停止させる場合には、水素化合物及び酸素含有化合物の少なくともいずれか一方の反応容器10への供給が停止されればよい。これらの供給が停止されれば、燃焼反応が終了するため、水素化合物の分解に必要な熱の供給も停止される。
【0048】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る水素製造装置1について図2を用いて説明する。第1実施形態に係る水素製造装置1ではジュール熱を使用して触媒11を加熱したが、第2実施形態に係る水素製造装置1ではシングルモードのマイクロ波を使用して触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する。具体的には、加熱部40は反応容器10の外側に設けられて反応容器10の外側からマイクロ波を所望の位置に照射して触媒11の一部の領域のみを加熱する。なお、上記実施形態と同一の構成については説明を省略する。本実施形態に係る加熱部40は、例えば、マイクロ波発振器43と、アプリケータ44と、を含む。
【0049】
マイクロ波発振器43は、所定の周波数を有するマイクロ波を出力する。マイクロ波発振器43から出力されるマイクロ波の周波数や強度等は問わない。マイクロ波の周波数は、例えば、915MHzであってもよく、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内であってもよい。マイクロ波発振器43は、例えば、マグネトロン、VCO(電圧制御発振器)及びPLL(位相同期回路)などである。
【0050】
アプリケータ44は、反応容器10の混合ガスの流路方向(円筒の中心軸方向)の一部かつ周方向全体を覆っている。アプリケータ44の中心部には、触媒11が配置されている。アプリケータ44は、本実施形態においては空胴共振器である。空胴共振器は、マイクロ波発振器43から出力されるマイクロ波を共振させることができる。空胴共振器の形状は、例えば、円筒形又は長方形を含む多筒形である。空胴共振器内では、例えば、TMmnp(mは1以上の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数)モード、又は、TEmnp(mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数)モードの定在波が形成可能である。
【0051】
アプリケータ44として円筒空胴共振器を使用し、マイクロ波発振器43から出力されるマイクロ波をTM010モードで共振させた場合、円筒空胴共振器内では、電界強度の極大値が、円筒空胴共振器の円の中心軸方向に延びるように分布している。これにより、円筒空胴共振器の中心軸上に配置された触媒11が強く加熱される。
【0052】
マイクロ波は、例えば、導波管及び同軸ケーブルの少なくともいずれか一方を介して空胴共振器内に導入される。導波管及び同軸ケーブルは、空胴共振器に設けられた照射孔を覆うように配置することができる。高周波のマイクロ波を高出力で伝送するという観点からは、導波管を用いることが好ましい。導波管の材質や形状や特に限定されないが、金属製の方形導波管や円形導波管を用いることが好ましい。水素製造装置1を小型にするという観点からは、同軸ケーブルを介して、マイクロ波を空胴共振器内に直接入射させることが好ましい。
【0053】
次に、本実施形態に係る水素製造装置1の水素製造機構について説明する。まず、混合ガスが反応容器10に供給されて触媒11と接触する。
【0054】
次に、マイクロ波発振器43からマイクロ波が出力され、照射孔を通って空胴共振器内に入射される。空胴共振器内に入射したマイクロ波は、照射孔と対向する空胴共振器の側壁の内面に衝突し、反射波となってはね返る。はね返った反射波は、空胴共振器内に入射したマイクロ波と重なることで、定在波を形成して共振する。定在波の腹が形成される位置に配置された触媒11は強く加熱され、加熱された一部の触媒11が燃焼可能な温度にまで達すると、水素化合物が燃焼を開始する。触媒11が加熱されて水素化合物が分解可能な温度にまで達すると、加熱された一部の触媒11と接触した水素化合物は分解し、水素化合物から水素が生成される。
【0055】
反応容器10には混合ガスが供給され続けるため、水素化合物の触媒燃焼反応は未反応の酸素分子が全て消費される範囲まで反応容器10内で広がり、一部の触媒11から反応容器10に収容された触媒11全体へ加熱される触媒11の領域が広がる。これに伴い、水素化合物が分解可能な温度に達する触媒11の領域が広がり、水素化合物が分解される領域も広がるため、マイクロ波発振器43からのマイクロ波出力を停止してもよい。
【0056】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る水素製造装置1について図3を用いて説明する。第2実施形態に係る水素製造装置1ではシングルモードのマイクロ波を使用して触媒11を加熱したが、第3実施形態に係る水素製造装置1ではマルチモードのマイクロ波等を使用して触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する。具体的には、触媒11に埋設されたサセプタ45に反応容器10の外側からマイクロ波が照射され、触媒11の一部の領域が局所的かつ選択的に加熱される。なお、上記実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0057】
本実施形態に係る加熱部40は、例えば、マイクロ波発振器43と、アプリケータ44と、サセプタ45とを含む。マイクロ波発振器43は、上述したものを使用することができる。
【0058】
アプリケータ44内では、マイクロ波発振器43から出力されるマイクロ波が触媒11に照射される。アプリケータ44内で照射されるマイクロ波は、マルチモードであるため、定在波を形成していない。したがって、アプリケータ44の形状は、定在波を形成するための形状に適合させる必要がなく、アプリケータ44の形状の自由度は高い。アプリケータ44には、マイクロ波発振器43から出力されたマイクロ波が通過可能な照射孔が設けられている。そして、マイクロ波発振器43とアプリケータ44の照射孔とが、導波管及び同軸ケーブルの少なくともいずれか一方を介してアプリケータ44と接続されている。
【0059】
サセプタ45は、マイクロ波を吸収する位置であって、かつ、触媒11の一部と接する位置に配置される。具体的には、サセプタ45は、アプリケータ44内のマイクロ波が照射される位置に配置することができる。また、サセプタ45は、触媒11の一部と接触した状態で配置されている。この際、サセプタ45の一部が触媒11と接触していてもよく、サセプタ45の周囲を覆うように触媒11が配置されてもよい。サセプタ45は、反応容器10内で固定してもよく、反応容器10に固定せずに触媒11内に埋設させてもよい。
【0060】
サセプタ45は、マイクロ波を吸収して熱に変換する特性を有している。サセプタ45は、例えば、触媒11よりも高い誘電損失係数を有している。これにより、触媒11がマイクロ波によって加熱されにくい材料を含んでいても、サセプタ45がマイクロ波を吸収して加熱されやすい。したがって、加熱されたサセプタ45の熱が触媒11に移動し、触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱することができる。なお、誘電損失係数は、空胴共振器法などにより、例えば25℃、2450MHzの測定条件で測定することができる。
【0061】
サセプタ45は、例えば、炭化ケイ素、カーボン、酸化チタン及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含んでいてもよい。これらの材料は、マイクロ波を吸収しやすいため、マイクロ波による加熱効率を向上させることができる。また、サセプタ45の表層は、触媒11よりも燃焼開始温度が低い触媒、又は金属を含んでいてもよい。
【0062】
次に、本実施形態に係る水素製造装置1の水素製造機構について説明する。まず、混合ガスが反応容器10に供給されて触媒11と接触する。
【0063】
次に、マイクロ波発振器43からマイクロ波が出力され、照射孔を通ってアプリケータ44内にマイクロ波が入射される。アプリケータ44内に入射したマイクロ波は、アプリケータ44内で拡散される。照射されたマイクロ波の一部は、サセプタ45によって吸収され、サセプタ45が加熱される。加熱されたサセプタ45の周囲には触媒11が配置されているため、サセプタ45の熱の一部が触媒11に移動し、触媒11の一部の領域が局所的かつ選択的に加熱される。加熱された触媒11が燃焼可能な温度にまで達すると、水素化合物が燃焼を開始する。触媒11が加熱されて水素化合物が分解可能な温度にまで達すると、加熱された一部の触媒11と接触した水素化合物は分解し、水素化合物から水素が生成される。
【0064】
反応容器10には混合ガスが供給され続けるため、水素化合物の触媒燃焼反応は未反応の酸素分子が全て消費される範囲まで反応容器10内で広がり、一部の触媒11から反応容器10に収容された触媒11全体へ加熱される触媒11の領域が広がる。これに伴い、水素化合物が分解可能な温度に達する触媒11の領域も広がるため、マイクロ波発振器43からのマイクロ波出力を停止してもよい。
【0065】
[第4実施形態]
次に、本実施形態に係る水素製造装置1について図4を用いて説明する。第4実施形態に係る水素製造装置1では、反応容器10に触媒11の一部を収容する小径管14が設けられ、小径管14内の触媒11が局所的かつ選択的に加熱部40によって加熱される。これにより、触媒11の一部の領域が局所的かつ選択的に加熱される。なお、上記実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0066】
反応容器10は、小径管14と本体15とを含んでいる。本体15は混合ガスが供給可能なように設けられた供給口12と、生成された水素が排出可能なように設けられた排出口13とを有している。小径管14は、混合ガスを触媒11に導き、混合ガス供給管24よりも小さい径を有する。小径管14は混合部23と反応容器10の本体15とを接続しており、混合ガスは小径管14によって混合部23から反応容器10へ導かれる。小径管14内には触媒11の一部が収容される。
【0067】
供給部20は、混合ガスを触媒11に導く混合ガス供給管24を含んでいる。混合ガス供給管24は、混合部23と反応容器10の本体15とを接続している。混合ガス供給管24は、小径管14と並列に配置されている。
【0068】
加熱部40は小径管14内の触媒11を加熱する。本実施形態に係る加熱部40は、上述したマイクロ波発振器43と、アプリケータ44と、サセプタ45とを含む。アプリケータ44は小径管14を覆うように配置されている。サセプタ45は小径管14内に配置された触媒11と接するように配置されている。
【0069】
次に、本実施形態に係る水素製造装置1の水素製造機構について説明する。まず、混合ガスが反応容器10に供給されて触媒11と接触する。
【0070】
次に、マイクロ波発振器43からマイクロ波が出力され、サセプタ45によって小径管14内の触媒11が加熱される。加熱された触媒11が燃焼可能な温度にまで達すると、小径管14を通り、触媒11と接触した水素化合物が燃焼を開始する。触媒11が加熱されて水素化合物が分解可能な温度にまで達すると、小径管14を通じて供給された水素化合物は触媒11と接触して分解し、水素化合物から水素が生成される。
【0071】
反応容器10には、小径管14及び混合ガス供給管24を通じて混合ガスが供給され続ける。そのため、水素化合物の触媒燃焼反応は未反応の酸素分子が全て消費される範囲まで反応容器10内で広がり、小径管14内の少なくとも一部の触媒11から本体15を含む反応容器10に収容された触媒11全体へ加熱される触媒11の領域が広がる。これに伴い、水素化合物が分解可能な温度に達する触媒11の領域が広がり、水素化合物が分解される領域も広がるため、マイクロ波発振器43からのマイクロ波出力を停止してもよい。
【0072】
なお、本実施形態では、マルチモードのマイクロ波を使用して触媒11を加熱したが、シングルモードのマイクロ波を使用して触媒11を加熱してもよい。また、本実施形態では、マイクロ波を使用して触媒11を加熱したが、ジュール熱等他の加熱手段を使用して触媒11を加熱してもよい。
【0073】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係る水素製造装置1について図5を用いて説明する。上記実施形態に係る水素製造装置1では円筒状の反応容器10が使用されたが、第5実施形態に係る水素製造装置1では拡径部16を含む反応容器10が使用される。なお、上記実施形態と同一の構成については説明を省略する。
【0074】
本実施形態に係る水素製造装置1では、反応容器10は、供給口12と、排出口13と、拡径部16と、同径部17とを含んでいる。供給口12は混合ガスを触媒11に導く。排出口13は触媒11によって生成された水素を排出する。拡径部16は、供給口12に接続され、供給口12から排出口13に向かうにつれて径が拡大する。同径部17は拡径部16の排出口13側と接続され、同一の径を有する円筒である。拡径部16内には、触媒11の少なくとも一部が収容されている。また、同径部17内には、触媒11のうち、拡径部16内に収容されていない残りの触媒11が収容されている。
【0075】
加熱部40は、拡径部16の中央よりも供給口12側に収容された触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する。加熱部40は、具体的には、供給口12付近の領域48を加熱する。加熱部40の加熱手段は特に限定されず、上述したような抵抗42のジュール熱を使用して触媒11を加熱してもよく、マイクロ波発振器43から発せられたマイクロ波を使用して触媒11を加熱してもよい。
【0076】
次に、本実施形態に係る水素製造装置1の水素製造機構について説明する。まず、混合ガスが反応容器10に供給されて触媒11と接触する。
【0077】
次に、加熱部40によって拡径部16の中央よりも供給口12側に収容された触媒11の一部の領域が局所的かつ選択的に加熱される。加熱された触媒11が燃焼可能な温度にまで達すると、水素化合物が燃焼を開始する。触媒11が加熱されて水素化合物が分解可能な温度にまで達すると、加熱された一部の触媒11と接触した水素化合物は分解し、水素化合物から水素が生成される。
【0078】
反応容器10には供給口12から排出口13に向かって混合ガスが供給され続ける。そのため、水素化合物は拡径部16の先端の供給口12から排出口13に向かって径方向に広がりながら流れていく。したがって水素化合物の触媒燃焼反応が未反応の酸素分子が全て消費される範囲まで反応容器10内で広がり、一部の触媒11から反応容器10に収容された触媒11全体へ加熱される触媒11の領域が広がる。これに伴い、水素化合物が分解可能な温度に達する触媒11の領域が広がり、水素化合物が分解される領域も広がるため、加熱を停止してもよい。
【0079】
次に、水素製造装置1の効果について説明する。
【0080】
本実施形態に係る水素製造装置1は、水素化合物を分解して水素を生成する触媒11を収容する反応容器10を備える。水素製造装置1は、水素化合物と酸素とを含む混合ガスを反応容器10に供給する供給部20を備える。水素製造装置1は、触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する加熱部40を備える。
【0081】
水素製造装置1は、加熱部40が反応容器10内に収容された触媒11全体ではなく、触媒11の一部の領域のみを局所的かつ選択的に加熱するため、触媒11全体を加熱する場合と比較し、加熱箇所を局所的な領域に限定することができる。そのため、加熱部40を小型にすることが可能である。また、加熱部40が触媒11の一部の領域のみを局所的かつ選択的に加熱することによって、必要最小限の加熱だけで水素化合物の燃焼を開始させ、燃焼反応を進行させることができる。なお、局所的かつ選択的に加熱される触媒11の一部の領域は、反応容器10内に収容された触媒11の一部の領域であればよく、混合ガスの流れ方向に対して垂直に切った断面内の一部の領域、及び、混合ガスの流れ方向に対して水平に切った断面内の一部の領域の少なくともいずれか一方であってもよい。
【0082】
また、水素製造装置1は、水素化合物の燃焼熱を利用して水素化合物の分解反応に必要な熱を供給することができる。そのため、加熱部40を停止させて外部から熱エネルギーを供給し続けなくても、燃焼熱によって水素化合物の分解反応を継続させることができる。
【0083】
また、加熱部40は触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する。これにより、触媒11の加熱効率を向上させることができる。例えば、混合ガスを加熱して触媒11を通過させる場合には、反応容器10内を通る全ての混合ガスを水素化合物の分解可能温度まで加熱しなければならないため、加熱に必要なエネルギーが多くなる傾向にある。一方、触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱する場合、固定された触媒11の一部のみを水素化合物の分解可能温度以上まで加熱すればよい。そのため、加熱対象物の容量を小さくすることができることから、オートサーマル反応を開始させるために必要なエネルギーを低減させることができる。また、加熱領域が局所的であるため、触媒11の温度が早く上昇する。昇温に要する時間が少なくてすむため、迅速にオートサーマル反応を開始することができる。
【0084】
水素化合物はアンモニアを含んでいてもよい。アンモニアは、水素密度が高く、水素の生成効率が高い。また、アンモニア分解反応によって生成される分子は水素及び窒素であるため、二酸化炭素のような地球温暖化ガスが生成されない。したがって、地球温暖化の原因とされている地球温暖化ガスの排出を抑制することができる。
【0085】
加熱部40は抵抗42を含み、抵抗42は触媒11の一部と接していてもよい。これにより、抵抗42のジュール熱によって触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱することができる。したがって、簡易な構成で触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱することができる。
【0086】
加熱部40は、マイクロ波を触媒11の一部に照射するマイクロ波発振器43を含んでいてもよい。これにより、反応容器10の全体を覆う電気炉などを用いて加熱した場合と比較し、触媒11の加熱の応答性を早くすることができる。
【0087】
加熱部40はマイクロ波を共振させる空胴共振器を含んでいてもよい。これにより、マイクロ波の定在波が形成され、定在波が形成される位置に配置された触媒11を強く加熱することができる。
【0088】
加熱部40はマイクロ波を吸収して熱に変換するサセプタ45を含み、サセプタ45は、マイクロ波を効率よく吸収する位置であって、かつ、触媒11の一部と接する位置に配置されてもよい。これにより、シングルモードのマイクロ波を使用した場合には、加熱に必要なエネルギーを低減することができる。また、マルチモードのマイクロ波を使用した場合であっても、効率よく触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱することができる。
【0089】
供給部20は混合ガスを触媒11に導く混合ガス供給管24を含んでいてもよい。反応容器10は、混合ガスを触媒11に導き、混合ガス供給管24よりも小さい径を有する小径管14を含んでいてもよい。小径管14内には触媒11が収容され、加熱部40は小径管14内の触媒11を加熱してもよい。これにより、小径管14内の触媒11が加熱されるため、加熱効率が高く、加熱の広がり具合を予め予想して反応容器10を設計することが可能である。また、加熱部40が触媒11をピンポイントで加熱することが困難な手法であっても、触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に容易に加熱することができ、加熱部40の大きさや触媒11の加熱のために投入するエネルギー量をさらに小さくすることができる。また、加熱部40の形状をより小型化でき、より少ないエネルギーで触媒11を加熱することが可能となる。
【0090】
反応容器10は混合ガスを触媒11に導く供給口12と、触媒11によって生成された水素を排出する排出口13と、供給口12に接続され、供給口12から排出口13に向かうにつれて径が拡大する拡径部16とを含んでいてもよい。触媒11の少なくとも一部が拡径部16内に収容されており、加熱部40は、拡径部16の中央よりも供給口12側に収容された触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱してもよい。これにより、径が小さい供給口12から径が大きい排出口13に向かって径方向に広がるように反応容器10内に混合ガスが供給される。そして、加熱部40によって供給口12付近の領域48で水素化合物の燃焼が開始するため、触媒11の一部の領域で起こった燃焼反応が反応容器10全体により広がる。これにより、触媒11が全体的に加熱されやすく、触媒11全体が加熱されるまでの時間を短縮させることができ、より効率的な水素生成に寄与することができる。
【0091】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、各実施形態を組み合わせるなど、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態では、加熱部40は、ジュール熱、マイクロ波を使用して触媒11を加熱したが、レーザー加熱などのように触媒11を部分的に加熱可能な手段によって加熱することができるものであれば特に限定されない。
【0093】
上記実施形態では、加熱部40が触媒11の一部分のみを加熱する例について説明した。しかしながら、加熱部40は互いに離れた複数の地点の触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱してもよい。これにより、水素化合物が燃え広がりやすくなるため、触媒11全体を素早く加熱することができる。
【0094】
円筒形状の反応容器10は、例えば、反応容器10の径方向の長さ(直径)が、径方向に対して垂直な中心軸方向の長さよりも長くてもよい。そして、中心軸よりも下方の触媒11の一部の領域を局所的かつ選択的に加熱してもよい。これにより、水素化合物の燃焼時に熱対流が生じやすくなるため、反応容器10内の触媒11全体を素早く加熱することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 水素製造装置
10 反応容器
11 触媒
12 供給口
13 排出口
14 小径管
16 拡径部
20 供給部
24 混合ガス供給管
40 加熱部
42 抵抗
43 マイクロ波発振器
45 サセプタ
図1
図2
図3
図4
図5