(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】化合物、重合体、組成物、成形体、フィルム、硬化物、積層体、電子部品及び膜形成方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/12 20060101AFI20241205BHJP
C08G 81/02 20060101ALI20241205BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241205BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08G73/12
C08G81/02
C08J5/18 CFG
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2021075527
(22)【出願日】2021-04-28
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東原 知哉
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慎治
(72)【発明者】
【氏名】石毛 亮平
(72)【発明者】
【氏名】丸山 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤冨 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】門田 敏明
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08G73、C08F
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジアミン化合物に由来する構造単位を有する、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である、重合体。
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。x及びyはそれぞれ独立に1~50の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)中のxが4~40の整数であり、yが1又は2の整数である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
下記式(2)で表されるアミン化合物に由来する構造単位を有する、請求項1または2に記載の重合体。
【化2】
(式(2)中、zは2~200の整数を表す。)
【請求項4】
前記式(2)中のzが2~150の整数である、請求項3に記載の重合体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体の少なくとも一部をイミド化した重合体。
【請求項6】
前記重合体の重量平均分子量が10000~1000000である、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体を含む組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体又は請求項7に記載の組成物から得られた成形体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体又は請求項7に記載の組成物から得られたフィルム。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体又は請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体を含む組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項11】
基板と、請求項5に記載の重合体又は請求項10に記載の硬化物を含む層とを有する、積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体を有する電子部品。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体又は請求項7に記載の組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程を含む膜形成方法であって、
請求項1~4及び6のいずれか一項に記載の重合体並びに請求項7に記載の組成物に含まれる重合体が、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である場合、さらに、該重合体の少なくとも一部をイミド化する工程を含む、膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、重合体、組成物、成形体、フィルム、硬化物、積層体、電子部品及び膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとから得られる全芳香族ポリイミドは、分子の剛直性や、分子が共鳴安定化していること、強い化学結合を有すること等に起因して、優れた耐熱性、機械的特性を有しており、該ポリイミド又はポリイミド形成用組成物は、電気、電池、自動車及び航空宇宙産業などの分野において、フィルム、コーティング剤、成形部品、絶縁材料の原料として幅広く使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、オリゴシロキサン又はポリシロキサン基等の柔軟な骨格を有するポリイミドが開示されている。また、このポリイミドによれば、高耐熱性、低線膨張係数(低CTE)などの特性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のポリイミドは、シロキサン骨格を有するため、酸・アルカリに対する化学安定性や加熱条件下での分解等の耐熱性に更なる改善が求められていた。
【0006】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、自由度の高いアルキルジアミンを新たに創成し、これを用いて、高耐熱性、低CTE、低応力及び化学的安定性を有する重合体を得ることができる重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出した。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0008】
[1] 下記式(1)で表されるジアミン化合物に由来する構造単位を有する、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である、重合体。
【0009】
【化1】
(式(1)中、Rは、水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。x及びyはそれぞれ独立に1~50の整数を表す。)
【0010】
[2] 前記式(1)中のxが4~40の整数であり、yが1又は2の整数である、[1]に記載の重合体。
【0011】
[3] 下記式(2)で表されるアミン化合物に由来する構造単位を有する、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である、重合体。
【0012】
【化2】
(式(2)中、zは2~200の整数を表す。)
【0013】
[4] 前記式(2)中のzが2~150の整数である、[3]に記載の重合体。
【0014】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の重合体の少なくとも一部をイミド化した重合体。
【0015】
[6] 前記重合体の重量平均分子量が10000~1000000である、[1]~[5]のいずれかに記載の重合体。
【0016】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の重合体を含む組成物。
【0017】
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の重合体又は[7]に記載の組成物から得られた成形体。
[9] [1]~[6]のいずれかに記載の重合体又は[7]に記載の組成物から得られたフィルム。
【0018】
[10] [1]~[4]のいずれかに記載の重合体又は[1]~[4]のいずれかに記載の重合体を含む組成物を硬化してなる硬化物。
【0019】
[11] 基板と、[5]に記載の重合体又は[10]に記載の硬化物を含む層とを有する、積層体。
[12] [11]に記載の積層体を有する電子部品。
【0020】
[13] [1]~[6]のいずれかに記載の重合体又は[7]に記載の組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程を含む膜形成方法であって、
[1]~[4]及び[6]のいずれかに記載の重合体並びに[7]に記載の組成物に含まれる重合体が、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である場合、さらに、該重合体の少なくとも一部をイミド化する工程を含む、膜形成方法。
【0021】
[14] 下記式(1)で表される化合物。
【0022】
【化3】
(式(1)中、Rは、水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。x及びyはそれぞれ独立に1~50の整数を表す。)
【0023】
[15] 前記式(1)中のxが4~40の整数であり、yが1又は2の整数である、[14]に記載の化合物。
【0024】
[16] 下記式(2)で表される化合物。
【0025】
【化4】
(式(2)中、zは2~200の整数を表す。)
【0026】
[17] 前記式(2)中のzが2~150の整数である、[16]に記載の化合物。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高耐熱性、低CTE、低応力及び化学的安定性を有する重合体、並びに、この重合体を構成する化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施例2で得られたランダムマルチブロック共重合体を用いた加熱イミド化前後のIRスペクトルである。
【
図2】
図2は、実施例3で得られた交互マルチブロック共重合体の加熱イミド化前後のIRスペクトルである。
【
図3】
図3は、実施例5で得られたABA型ブロック共重合体の加熱イミド化前後のIRスペクトルである。
【
図4】
図4は、実施例2で得られたランダムマルチブロック共重合体、実施例3で得られた交互マルチブロック共重合体、及び、実施例5で得られたABA型トリブロック共重合体の加熱イミド化後のTGA曲線である。
【
図5】
図5は、実施例2で得られたランダムマルチブロック共重合体と実施例3で得られた交互マルチブロック共重合体の加熱イミド化後のDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【0030】
1.化合物
本発明の一実施形態に係る化合物(以下「化合物(1)」ともいう。)は、下記式(1)で表される。該化合物(1)は、オリゴイソブチレン(以下「OIB」ともいう。)骨格を有するジアミン化合物であるということができる。
【0031】
【化5】
〔式(1)中、Rは、水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。x及びyはそれぞれ独立に1~50の整数を表す。〕
【0032】
Rは、水素原子又は炭素数1~12の脂肪族炭化水素基が好ましい。
該炭素数1~12の脂肪族炭化水素基としては、t-ブチル基が好ましい。
【0033】
xは4~40の整数が好ましい。yは1又は2が好ましい。この範囲であると、化合物(1)を用いて合成される重合体の溶解性と強度のバランスの点で好ましい。
【0034】
化合物(1)を合成する手法は特に限定されるものではないが、一例として、ガブリエルアミン合成が挙げられる。すなわち、式(1)における二つのアミノ基部分がハロゲン元素であるハロゲン化物を原料とし、二段階の反応を経て、化合物(1)を合成する方法であり、具体的には、まず、該ハロゲン化物をフタルイミド化反応することによって、その両末端をフタルイミド化し、続いて該フタルイミド化した部分をヒドラジンによって還元して、目的とするジアミン体である化合物(1)を合成する手法である。
【0035】
本発明の他の実施形態に係る化合物(以下「化合物(2)」ともいう。)は、下記式(2)で表される。
【0036】
【化6】
〔式(2)中、zは2~200の整数を表す。〕
【0037】
zは2~150がさらに好ましい。この範囲であると、化合物(2)を用いて合成される重合体の溶解性と強度のバランスの点で好ましい。
【0038】
化合物(2)を合成する手法については特に限定されるものではないが、例えば、化合物(1)と同様に、ガブリエルアミン合成法などによって、目的とする化合物(2)を高収率で得ることができる。
【0039】
2.重合体
本発明の一実施形態に係る重合体(以下「本重合体」ともいう。)は、
ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種であって、下記式(1)で表されるジアミン化合物に由来する構造単位を有する重合体(以下「重合体(1)」ともいう。)、
ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種であって、下記式(2)で表されるアミン化合物に由来する構造単位を有する重合体(以下「重合体(2)」ともいう。)、又は、
重合体(1)及び/又は重合体(2)の少なくとも一部をイミド化した重合体(以下「イミド化重合体」ともいう。)
である。
【0040】
【化7】
〔式(1)中、Rは、水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。x及びyはそれぞれ独立に1~50の整数を表す。〕
【0041】
該式(1)におけるR、x及びyの好ましい態様は、前記化合物(1)の欄の好ましい態様と同様である。
【0042】
重合体(2)は、式(2)で表されるアミン化合物に由来する構造単位を、該重合体(2)の末端に有することが好ましい。
【0043】
【化8】
〔式(2)中、zは2~200の整数を表す。〕
【0044】
該式(2)におけるzの好ましい態様は、前記化合物(2)の欄の好ましい態様と同様である。
【0045】
前記イミド化重合体は、重合体(1)及び/又は重合体(2)の少なくとも一部がイミド化していれば特に制限されず、重合体(1)及び/又は重合体(2)の全てがイミド化していてもよい。
【0046】
本重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは20,000~500,000である。
また、本重合体は、該MwとGPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
【0047】
前記ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
前記ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物を、アルコールを用いて開環することによりジエステル化し、得られたジエステルとジアミンとを反応させることにより得ることができる。また、このように反応させて得られたポリマーのカルボキシ基を、さらにアルコールによりエステル化してもよい。
前記イミド化重合体は、前記ポリアミック酸のアミック酸構造の少なくとも一部を脱水閉環してイミド化する、又は、前記ポリアミック酸エステルのエステル構造の少なくとも一部を脱アルコール閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0048】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
前記テトラカルボン酸二無水物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0049】
前記テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、
ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、3-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルナン-2:3,5:6-二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、4,9-ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン-3,5,8,10-テトラオンなどの脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物;
が挙げられ、また、公知のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0050】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物のみからなるか、又は、芳香族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の混合物のみからなるものであることが、本重合体の安定性の観点から好ましい。後者の場合、脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用割合は、全テトラカルボン酸二無水物に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0051】
前記ジアミンとしては特に制限されず、前記重合体(1)の場合には、化合物(1)を用いれば特に制限されず、化合物(1)と、該化合物(1)以外のジアミンとを用いてもよい。前記重合体(2)の場合には、化合物(1)以外のジアミンを用いればよい。
化合物(1)以外のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンが挙げられる。
前記ジアミンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0052】
前記化合物(1)以外のジアミンの具体例としては、
1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂肪族ジアミン;
1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂環式ジアミン;
p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7-ジアミノフルオレン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノアクリジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,5-ジアミノ安息香酸などの芳香族ジアミン;
1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサンなどのジアミノオルガノシロキサン;
が挙げられ、また、公知のジアミンを用いることができる。
【0053】
前記重合体(1)の場合、低応力性、力学特性の維持(切断時伸び値)に優れる重合体を容易に得ることができる等の点から、前記ジアミンとしては、化合物(1)を、全ジアミンに対して、1~50モル%含むことが好ましく、1~20モル%含むことがより好ましい。
【0054】
前記ジアミンとしては、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して、30モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましく、特に80モル%以上含むことが好ましい。但し、前記重合体(1)の場合、該芳香族ジアミンの使用量の上限は、全ジアミンに対して、100モル%未満であり、好ましくは99モル%以下である。
【0055】
前記ポリアミック酸エステルの合成に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族アルコールやシラノールなどが挙げられる。
該アルコールは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0056】
前記重合体(1)の場合、前記ポリアミック酸やポリアミック酸エステルを合成するに際して、前記テトラカルボン酸二無水物及びジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成してもよい。該分子量調節剤としては、前記化合物(2)を用いてもよい。なお、前記化合物(2)を用いて得られる重合体(1)は、重合体(1)とする。
前記重合体(2)の場合、前記ポリアミック酸やポリアミック酸エステルを合成するに際して、前記テトラカルボン酸二無水物及びジミアンとともに、化合物(2)を用い、また、必要により、化合物(2)以外の適当な分子量調節剤を用いてもよい。
【0057】
前記分子量調節剤としては、例えば、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物が挙げられる。
前記分子量調節剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0058】
前記分子量調節剤の具体例としては、
無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n-デシルコハク酸無水物、n-ドデシルコハク酸無水物、n-テトラデシルコハク酸無水物、n-ヘキサデシルコハク酸無水物などの酸一無水物;
アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、前記化合物(2)などのモノアミン化合物;
フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物;
が挙げられる。
【0059】
得られる重合体の分子量を調節する手法としては、例えば、酸無水物とジアミンとの比率を変える方法と、分子量調節剤を用いる方法の二つが挙げられる。
【0060】
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
【0061】
ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.9~1.2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは1.0~1.1当量となる割合である。
【0062】
ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは-20℃~150℃、より好ましくは0~100℃において、好ましくは0.1~100時間、より好ましくは0.5~50時間行われる。
【0063】
該有機溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、炭化水素など一般的にポリアミック酸の合成反応に使用できる有機溶媒を使用することができる。
該有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0064】
これら有機溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メトキシエチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒;
m-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール誘導体;
メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコールなどのアルコール;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;
エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコール-ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどのエーテル;
乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどのエステル;
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素;
が挙げられる。
【0065】
前記イミド化は、好ましくは、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルを加熱する方法、又は、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルを有機溶媒に溶解した溶液中に、脱水剤や脱アルコール剤と、閉環触媒とを添加し、必要に応じて加熱する方法により行われる。
【0066】
前記ポリアミック酸やポリアミック酸エステルを加熱する方法における反応温度は、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは200℃以上である。反応温度を200℃以上にすることで閉環反応が十分に進行しやすくなる。
前記ポリアミック酸やポリアミック酸エステルを加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.1~20時間であり、より好ましくは0.5~10時間である。
【0067】
前記脱水剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物が挙げられ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記脱アルコール剤としては、例えば、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのN,N-2置換カルボジイミド、無水酢酸などの酸無水物が挙げられ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記脱水剤及び脱アルコール剤の使用割合は、ポリアミック酸のアミック酸構造及びポリアミック酸エステルのエステル構造の1モルに対して0.01~0.20モルとすることが好ましい。
【0068】
前記閉環触媒としては、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが挙げられ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記閉環触媒の使用割合は、使用する脱水剤及び脱アルコール剤1モルに対して0.01~0.20モルとすることが好ましい。
【0069】
閉環触媒を用いたイミド化の際に用いられる有機溶媒としては、前記ポリアミック酸やポリアミック酸エステルの合成に用いられる有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0070】
閉環触媒を用いたイミド化の際の反応温度は、好ましくは0~180℃、より好ましくは10~150℃であり、反応時間は、好ましくは1~10時間、より好ましくは2~5時間である。
【0071】
3.組成物
本発明の一実施形態に係る組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、前記本重合体を含有する。
本組成物に含まれる本重合体は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0072】
本組成物は、本重合体以外に、硬化性化合物、硬化助剤等を含有することが好ましい。また、本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。
【0073】
本組成物は、各種用途に適用可能な汎用性の高い組成物である。また、本組成物は、耐熱性及び機械特性に優れる本重合体を含有するため、耐熱性に優れるとともに、高い機械特性及び高い寸法安定性を有する成形体を容易に形成することができる。
【0074】
本組成物中の本重合体の含有割合は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.8質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以下である。
本重合体の含有割合が前記範囲にあると、高耐熱分解性、高耐熱変形性、低線膨張性等に優れる硬化物や成形体を容易に形成することができる等の点から好ましい。
【0075】
3-1.硬化性化合物
前記硬化性化合物は、熱や光(例えば、可視光、紫外線、近赤外線、遠赤外線、電子線)の照射により硬化する化合物であり、後述する硬化助剤を必要とする化合物であってもよい。このような硬化性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、アリル化合物、アクリル化合物、メタクリル化合物、ウレタン化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、及びプロパルギル化合物が挙げられる。前記硬化性化合物としては、これらの中でも、本重合体との相容性、耐熱性等の特性上の点から、特に、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物、ビニル化合物、シリコーン化合物、オキサジン化合物、マレイミド化合物、アリル化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、及びプロパルギル化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
前記硬化性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0076】
これら硬化性化合物としては、例えば、国際公開第2020/179443号に記載の化合物が挙げられる。
【0077】
本組成物が硬化性化合物を含有する場合、該硬化性化合物の含有割合は、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
硬化性化合物の含有割合が前記範囲にあると、本組成物から得られる硬化物や成形体の靱性、耐熱性、耐薬品性をより向上させることができる等の点から好ましい。
【0078】
また、本組成物中の硬化性化合物及び本重合体の合計を100質量%とした場合に、前記硬化性化合物の含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
硬化性化合物の含有割合が前記範囲にあると、本組成物から得られる硬化物や成形体の靱性、耐熱性、耐薬品性をより向上させることができる等の点から好ましい。
【0079】
3-2.硬化助剤
前記硬化助剤としては、例えば、硬化剤、熱反応開始剤(熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤、熱塩基発生剤)、光反応開始剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤)等の重合開始剤が挙げられる。
前記硬化助剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0080】
これら硬化助剤としては、例えば、国際公開第2020/179443号に記載の化合物が挙げられる。
【0081】
本組成物が硬化助剤を含有する場合、該硬化助剤の含有割合は、本組成物が良好に硬化して、硬化物や成形体が得られる範囲であることが好ましい。具体的には、硬化助剤の含有割合は、本重合体及び前記硬化性化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0082】
3-3.他の成分
本組成物は更に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有していてもよい。
該他の成分としては、例えば、(有機)溶剤、酸化防止剤、強化剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤、離型剤、発泡剤、重合体(1)及び重合体(2)以外の他の重合体(例:エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアリーレン等の低誘電率かつ低誘電正接の特性を有する公知の重合体)が挙げられる。
これらの他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0083】
4.硬化物
本発明の一実施形態に係る硬化物(以下「本硬化物」ともいう。)は、重合体(1)、重合体(2)、又は、重合体(1)及び/又は重合体(2)を含む組成物を硬化してなる硬化物であり、重合体(1)、重合体(2)、又は、重合体(1)及び/又は重合体(2)を含む組成物の硬化物である。
本硬化物の形状は特に限定されず、用途や目的等に応じて適した形状とすればよい。本硬化物は、下記成形体でもある。
【0084】
例えば、本組成物が溶剤を含む場合、硬化の前に必要により、溶剤を乾燥させてもよい。また、本硬化物は、重合体(1)、重合体(2)、又は、重合体(1)及び/又は重合体(2)を含む組成物を半硬化させた状態であってもよい。
【0085】
前期組成物の硬化方法は特に限定されないが、通常、加熱により熱硬化する方法や、光の照射により光硬化する方法が挙げられる。なお、これらの方法を併用してもよい。
前記熱硬化する場合、加熱温度は、好ましくは50~350℃、より好ましくは100~300℃である。加熱時間は、好ましくは0.5~36時間、より好ましくは0.1~5時間である。
光硬化させる場合、照射する光としては、例えば、可視光、紫外線、近赤外線、遠赤外線、電子線が挙げられる。
【0086】
5.成形体
本発明の一実施形態に係る成形体は、本重合体又は本組成物から得られる、所望の形状を有する成形体である。
【0087】
前記所望の形状としては特に制限されず、成形体の用途に応じて適宜選択すればよいが、好適例としては、フィルムが挙げられる。なお、本発明において、フィルムとシートとは特に区別しているわけではない。
該フィルムは、例えば、本重合体又は本組成物を用いて、これを溶融成形又はキャスト成形し、必要により硬化することによってフィルム形状の硬化物として得ることができる。
【0088】
前記フィルムの厚みは特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば10μm~2mm、好ましくは30μm~1mmである。
【0089】
6.膜形成方法
本発明の一実施形態に係る膜形成方法は、
本重合体又は本組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程を含み、
本重合体及び本組成物に含まれる重合体が、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種である場合、さらに、該重合体の少なくとも一部をイミド化する工程を含む。
該膜形成方法によれば、膜付き基板が得られ、得られた膜付き基板から、膜を剥離することで、前記フィルムを得ることができ、得られた膜付き基板をそのまま、下記本積層体とすることができる。
【0090】
前記基板としては、接着性や実用上の観点から、無機基板、金属基板、樹脂基板等が挙げられる。
前記無機基板としては、例えば、シリコン、シリコンカーバイト、窒化シリコン、アルミナ、ガラス、窒化ガリウム等を成分とする無機基板が挙げられる。
前記金属基板としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム等を成分として有する金属基板が挙げられる。
前記樹脂基板としては、例えば、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリオレフィン等を成分として有する樹脂基板が挙げられる。
これら基板は、表面処理等がされていてもよく、前記のように膜を剥離する場合には、離型処理等がされていてもよい。
【0091】
前記塗布する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を用いればよい。なお、前記塗布する際には、形成される膜が所望の厚みとなるように塗布することが好ましい。
該膜の厚みは、前記フィルムの厚みと同程度である。
【0092】
前記イミド化としては、前記重合体の欄に記載のイミド化と同様の方法が挙げられる。
【0093】
前記膜形成方法では、前記工程以外の工程、例えば、本組成物が溶媒を含む場合、基板上に塗布された該本組成物から溶媒を蒸発させる工程を含んでいてもよい。
【0094】
7.積層体
本発明の一実施形態に係る積層体(以下「本積層体」ともいう。)は、基板と、前記イミド化重合体又は本硬化物を含む層(硬化物層)、好ましくは前記イミド化重合体又は本硬化物からなる層とを有する。本積層体は、2層以上の基板を有していてもよく、2層以上の硬化物層を有していてもよく、基板と硬化物層以外の従来公知の他の層(例:銅箔や他のプリプレグ)等を有していてもよい。本積層体が、2層以上の基板や硬化物層、他の層を有する場合、これらはそれぞれ同一の層であってもよく、異なる層であってもよい。
【0095】
本積層体は、本重合体又は本組成物を、ガラスクロス、アラミド不織布、ポリエステル不織布等の基板に含浸させ、必要により硬化させたプリプレグであってもよい。
【0096】
前記硬化物層及びプリプレグの厚みは特に限定されないが、例えば、1μm~3mmである。
【0097】
8.用途
本重合体、本組成物、本硬化物、前記成形体及び本積層体は、航空機産業や自動車産業等の輸送機産業で用いられる構造用材料、電気電子産業で用いられる電気電子材料等に好適に用いることができる。具体的には、例えば、電気電子部品の封止材、層間絶縁膜、応力緩和用プライマー;積層板(例:プリント配線基板、層間接着剤、ソルダレジスト、ソルダペースト);接着剤(例:熱伝導性接着剤、接着シート);各種構造材料に用いる構造接着剤・プリプレグ;各種コーティング、光学部品(例:波長板、位相差板等の光学フィルム、円錐レンズ、球面レンズ、円筒レンズ等の各種特殊レンズ、レンズアレイ等)、プリント配線板用絶縁性フィルムに好適に利用することができる。
特に、“Demonstration of 20μm Pitch Micro-vias by Excimer Laser Ablation in Ultra-thin Dry-film Polymer Dielectrics for Multi-layer RDL on Glass Interposers”、 “2015 IEEE Electronic Components & Technology Conference, 922-927”、 “Demonstration of enhanced system-level reliability of ultra-thin BGA packages with circumferential polymer collars and doped solder alloys”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1377-1385”、 “Modeling, Design, Fabrication and Demonstration of RF Front-End 3D IPAC Module with Ultra-thin Glass Substrates for LTE Applications”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1297-1302”、 “Design, Demonstration and Characterization of Ultra-thin Low-warpage Glass BGA Packages for Smart Mobile Application Processor”、 “2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 1465-1470”、 “Design and Demonstration of Ultra-thin Glass 3D IPD Diplexers”, 2016 IEEE 66th Electronic Components and Technology Conference, 2348-2352”等に記載されている実装構造の材料として好適に使用することができる。
【0098】
9.電子部品
本発明の一実施形態に係る電子部品は、本硬化物及び/又は本積層体を有する。該電子部品は、2つ以上の本硬化物を有していてもよく、2つ以上の本積層体を有していてもよく、1つ以上の本硬化物および1つ以上の本積層体を有していてもよい。2つ以上の本硬化物や本積層体を有する場合、これらはそれぞれ同一であってもよく、異なってもよい。
【0099】
前記電子部品としては、回路基板、半導体パッケージ又は表示基板等が挙げられる。本硬化物(フィルム)は、これら電子部品の、表面保護膜、再配線層又は平坦化膜として用いることができる。本硬化物は、高温高湿下であっても絶縁性を維持できることから、前記電子部品は、埃、熱、湿気などの外部環境から回路パターンを保護できるとともに、回路パターン間の絶縁信頼性に優れ、長年にわたって安定して動作させることが可能となる。
【0100】
例えば、本硬化物(フィルム)のパターン間に、メッキ等により金属を充填し、必要に応じて、さらに本硬化物(フィルム)を積層し、金属を充填することを繰り返して再配線層を形成することができ、これにより、基板と、金属配線及び絶縁膜を含む再配線層とを有する電子部品を製造することができる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
[合成例1]5-tret-ブチルイソフタル酸ジメチルの合成
【化9】
【0103】
式(3)に合成経路を示す。
還流管を装着した二つ口フラスコに、5-tert-ブチルイソフタル酸を入れ、系内を窒素置換した後に、メタノール30mL及び硫酸1.14mLを加えて、室温で終夜還流を行った。その後、フラスコを氷冷し、沈殿物を濾過により回収した。得られた粗生成物を蒸留水で30分間洗浄し、50℃の減圧オーブン内で乾燥させた。最後にメタノールで再結晶を行うことで、5-tret-ブチルイソフタル酸ジメチルが5.48g(収率81%)得られた。
【0104】
得られた5-tret-ブチルイソフタル酸ジメチルの1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 8.50 (s, 1H), 8.26 (s, 2H), 3.94 (s, 6H), 1.38 (s, 9H)
【0105】
[合成例2]5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼンの合成
【化10】
【0106】
式(4)に合成経路を示す。
滴下漏斗を装着した三つ口フラスコの内部を窒素置換し、メチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル溶液、3.0M)64.7mL及びテトラヒドロフラン(THF)20mLを加えた。次いで、5-tret-ブチルイソフタル酸ジメチル5.48g(21.9mmol)をTHF80mLに溶解し、滴下漏斗内に加えた。その後、フラスコを氷冷しながら滴下漏斗内の溶液を滴下し、滴下終了後は室温で終夜撹拌した。次いで、塩化アンモニウムと氷水を入れたビーカーに、反応溶液を注ぎ、撹拌した後に有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムを濾過により除去した後、濾液を濃縮し、酢酸エチルで再結晶を行うことで、5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼンが結晶性の固体として3.40g(64%)得られた。
【0107】
得られた5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼンの1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 7.43 (m, 3H), 1.60 (s, 12H), 1.35 (s,9H)
【0108】
[合成例3]5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンの合成
【化11】
【0109】
式(5)に合成経路を示す。
二つ口の丸底フラスコに5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼン2.8g(11.2mmol)を入れ、系内を窒素置換した後に、36%濃塩酸40mLを加えて0℃で6時間撹拌した。その後、ジクロロメタン40mLをフラスコに加え、室温で30分間撹拌した後、有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで脱水した。硫酸ナトリウムを濾過により除去した後、濾液を濃縮し、ヘキサンで再結晶を行った。最後に生成物をベンゼンに溶解し、凍結乾燥を行うことで、5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンが白色固体として0.87g(27%)得られた。
【0110】
得られた5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼンの1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 7.61 (s, 1H), 7.53 (s, 2H), 2.01 (s,12H), 1.55 (s, 9H)
【0111】
[合成例4]両鎖末端にクロロアリル基を有するオリゴイソブチレン(OIB)の合成
【化12】
【0112】
式(6)に合成経路を示す。
グローブボックス内において、窒素雰囲気下で枝付のシュレンクフラスコに、ヘキサン2.0mmL/ジクロロメタン0.8mL(7/3、v/v)に溶解した5-tert-ブチル-1,3-ビス(1-クロロ-1-メチルエチル)ベンゼン0.201g(0.700mmol)を入れ、次いでジ-tert-ブチルピリジン0.675g(3.50mmol)を加えた後、ヘキサン91mL及びジクロロメタン39mLを加え、密栓した。
また、シリンジバイアルに、四塩化チタン0.965g(5.04mmol)を加え、ヘキサン5.0mL/ジクロロメタン2.1mL(7/3、v/v)に溶解させ、密栓した。
【0113】
前記シュレンクフラスコと、前記シリンジバイアルとをグローブボックスから取り出し、以下のようにして、分子量2,000を目標としてリビングカチオン重合を行った。
取り出したシュレンクフラスコをドライアイス/アセトン浴で-78℃に冷却し、液化イソブテン(-78℃)を1.90mL(20.3mmol)加えた。次に、前記シリンジバイアル中の四塩化チタン溶液を該シュレンクフラスコに添加することで重合を開始した。-78℃で1.5時間撹拌した後、液化1,3-ブタジエン(-78℃)を2.20mL加え、同条件でさらに4.5時間撹拌することで、鎖末端をキャップした。その後、冷却したメタノール10mLを加えて反応停止した。次いで、メタノール/アンモニア水溶液(9/1、v/v)に反応溶液を注ぎ、終夜撹拌して洗浄した。その後、ヘキサンを少量加えて有機層を抽出し、蒸留水/イソプロパノール/塩化ナトリウム(77.5/15/7.5、v/v/w)で二回、蒸留水で二回洗浄した。得られた溶液を濃縮し、少量のヘキサンに生成物を溶解し、メタノールに沈殿させることで粘性体の目的物(両鎖末端にクロロアリル基を有するオリゴイソブチレン(OIB))を得た。収量1.15g、収率81%。
【0114】
得られた両鎖末端にクロロアリル基を有するオリゴイソブチレン(OIB)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 7.17 (s, 3H), 5.76-5.84 (m, 1H), 5.56-5.66 (m, 1H), 4.05 (d, 4H), 2.01 (d, 4H), 1.83 (s, 4H), 1.36-1.43 (m, 62H), 1.34 (s, 12H), 0.98-1.13 (m. 183H)
【0115】
[実施例1]両鎖末端にアミノ基を有するオリゴイソブチレン(H
2N-OIB-NH
2)の合成
【化13】
【0116】
合成経路を式(7)に示す。
還流管を装着した二つ口フラスコに、合成例4で合成した両鎖末端にクロロアリル基を有するオリゴイソブチレン(OIB)(1.15g、0.48mmol)及びフタルイミドカリウム(5.32g、28.7mmol)を入れ、系内を窒素置換した。その後、THF37.5mL及びジメチルアセトアミド(DMAc)12.5mLを加え、24時間還流を行った。濾過で不溶成分を除去し、濾液をエバポレーターで濃縮した。最後に少量のヘキサンに生成物を溶解し、メタノールに沈殿させることで、透明な粘性体(両鎖末端にフタルイミド基を有するオリゴイソブチレン)を得た。収量1.19g、収率99%。
【0117】
得られた両鎖末端にフタルイミド基を有するオリゴイソブチレンの1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 7.82-7.86 (m, 4H), 7.69-7.73 (m, 4H), 7.16 (s, 3H), 5.75-5.83 (m, 2H), 5.44-5.52 (m, 2H), 4.25 (d, 4H), 1.95 (d, 4H), 1.83 (s, 4H), 1.36-1.40 (m, 62H), 1.31 (s, 12H), 0.95-1.10 (m, 189 H), 0.78 (s, 12H)。
【0118】
続いて、還流管を装着した二つ口フラスコに、得られた両鎖末端にフタルイミド基を有するオリゴイソブチレン(1.19g、0.476mmol)を入れ、系内を窒素置換した。その後、ヒドラジン一水和物(2.38g、47.6mmol)及びTHF50mLを加え、20時間還流を行った。次いで、フラスコの温度を室温まで冷却した後、10%水酸化ナトリウム水溶液を少量加え、30分間撹拌した。その後、有機層を抽出し、溶液をエバポレーターで留去した後、少量のヘキサンに生成物を溶解し、メタノールに加えて沈殿物を回収した。最後にトルエンで共沸蒸留を行うことで脱水を行い、目的物(両鎖末端にアミノ基を有するオリゴイソブチレン(H2N-OIB-NH2))を1.08g(収率96%)得た。
【0119】
得られた両鎖末端にアミノ基を有するオリゴイソブチレン(H2N-OIB-NH2)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 7.17 (s, 3H), 5.49-5.61 (m, 4H), 3.26 (d, 4H), 1.97 (d, 4H), 1.83 (s, 4H), 1.37-1.41 (m, 72H), 0.93-1.10 (m, 206H), 0.78 (s, 12H)
【0120】
[実施例2]一段階法を用いたランダムマルチブロック共重合体の合成
【化14】
【0121】
式(8)に合成経路を示す。
サンプル管内において、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン[TFMB](1.13g、3.54mmol)及びH2N-OIB-NH2(0.161g、0.0670mmol)を、メチルイソブチルケトン[MIBK]/シクロヘキサノン[CHN](2/1、w/w)の混合溶液に溶解し、10分間室温で撹拌することで均一な溶液を得た。この溶液に、ピロメリット酸無水物[PMDA]を全体の半量(0.402g、1.84mmol)加え、室温条件下で30分間撹拌した。その後、γ-ブチロラクトン[GBL]と残り半量のPMDAとを添加して、24時間撹拌することで14wt%のランダムマルチブロック共重合体を含む溶液を調製した。調製した溶液を、MIBK/CHN/GBL(2/1/1、w/w/w)溶液で0.5g/dLに調整し、オストワルド粘度計を用いて30℃で対数粘度の測定を行った結果、ηinh(dL/g)=0.72であった。
また調製した溶液中の共重合体の分子量を、東ソー(株)製HLC-8220型GPC装置(ガードカラム:TSKguardcolomnALPHAカラム:TSKgelALPHA-M、展開溶剤:N-メチルピロリドン[NMP])を用いて測定した結果、Mw=11.56×104、Mn=1.63×104、Mw/Mn=7.10であった。
【0122】
[実施例3]二段階法を用いた交互マルチブロック共重合体の合成
【化15】
【0123】
式(9)に合成経路を示す。
サンプル管内において、TFMB(1.127g、3.52mmol)をMIBK/CHN/GBL(2/1/1、w/w/w)の混合溶液に溶解し、10分間室温で撹拌することで均一な溶液を得た。この溶液に、PMDA(0.814 g、3.73mmol)を加え、室温条件で3時間撹拌してポリアミック酸1stブロック溶液を得た。次いで、少量のMIBKに溶解したH2N-OIB-NH2(0.159g、0.0660mmol)を前記サンプル管に加え、24時間撹拌することで、14wt%の交互マルチブロック共重合体を含む溶液を調製した。
実施例2と同様の手法にて、調製した溶液中の共重合体の対数粘度と分子量を測定した結果、ηinh(dL/g)=0.73、Mw=12.85×104、Mn=3.47×104、Mw/Mn=3.70であった。
【0124】
[合成例5]鎖末端にブロモアルキル基を有するポリイソブチレン(PIB-Br)の合成
【化16】
【0125】
式(10)に合成経路を示す。
原料である末端OH基化ポリイソブチレン(PIB-OH[CH3-C(CH3)2-(CH2-C(CH3)2-)Z-C3H6OH]、Mn:6000、z:105)はPolymer Source Inc.より購入し、そのまま反応に用いた。
100mLの二つ口フラスコに、PIB-OH(1.52g、0.254mmol)と四臭化炭素(4.21g、12.7mmol)とを入れ、系内を窒素置換した。次に、THF10mLを加え、0℃に氷冷した後に、トリフェニルホスフィン(3.33g、12.7mmol)を加え、室温条件下で48時間撹拌した。得られた混合物をヘキサンで洗浄し、不溶物を濾過により除去した。その後、濾液を濃縮し、ヘキサンとメタノールとをそれぞれ約20mLずつ加え、溶解/沈殿の操作を二回繰り返すことにより精製を行った。得られたポリマーの1H-NMRスペクトルに、原料由来のピークが確認されたため、前記精製後のヘキサン溶液をシリカゲルカラムに通じることで、原料を除去した。次いで、12時間減圧乾燥することで、PIB-Brが無色の粘性体として0.87g(収率57%)得られた。
【0126】
得られた鎖末端にブロモアルキル基を有するポリイソブチレン(PIB-Br)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 3.37 (t, 2H), 1.85 (m, 2H), 1.34-1.48 (m, 326H), 1.03-1.17 (m, 990H)
【0127】
[実施例4]鎖末端にアミノ基を有するポリイソブチレン(PIB-NH
2)の合成
【化17】
【0128】
式(11)に合成経路を示す。
PIB-Br(0.87g、0.145mmol)を入れた100mLの二つ口フラスコを窒素置換し、THF30mLとDMAc10mLとを加えた。そこに、フタルイミドカリウム(1.35g、7.25mmol)を加え、48時間還流を行った。得られた鎖末端にフタルイミド基を有するポリイソブチレン(PIB-フタルイミド)をジエチルエーテルで抽出し、有機層を水と飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて脱水し、濾過を行った。濃縮した濾液にヘキサンとメタノールとを加え、PIB-Brと同様に精製することで、PIB-フタルイミドが透明な粘性体として0.75g(収率85%)得られた。
【0129】
得られたPIB-フタルイミドの1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 3.64 (t, 2H), 1.37-1.45 (m, 404H), 1.02-1.14 (m, 1220H)
【0130】
続いて、PIB-フタルイミド(0.51g、0.085mmol)を入れた50mLの二つ口フラスコ内部を窒素置換し、ヒドラジン一水和物(0.43g、8.53mmol)及びTHF17mLを加え、20時間還流を行った。次いで、フラスコを室温まで冷却した後、水酸化カリウムの10%水溶液を少量加え、30分間撹拌した。次いで、有機層を分離してエバポレーターで濃縮した後、ヘキサンに溶解し、メタノールに沈殿させることで精製を行った。最後にトルエンで共沸蒸留を行い脱水することで、PIB-NH2が透明な粘性体として0.50g(収率99%)得られた。
【0131】
得られた鎖末端にアミノ基を有するポリイソブチレン(PIB-NH2)の1H-NMRの結果は以下のとおりである。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, 25 ℃) δ (ppm) : 2.65 (t, 2H), 1.35-1.46 (m, 491H), 1.02-1.15 (m, 1520H)
【0132】
[実施例5]ポリイソブチレン(PIB)とポリアミック酸(PAA)とのABA型ブロック共重合体(PIB-b-PAA-b-PIB)の合成
【化18】
【0133】
式(12)に合成経路を示す。
サンプル管内において、TFMB(1.68g、5.24mmol)をMIBK/CHN/GBL(2/1/1、w/w/w)の混合溶液に溶解し、10分間室温で撹拌することで均一な溶液を得た。この溶液に、PMDA(1.17g、5.38mmol)を加え、室温条件で30分間撹拌してポリアミック酸1stブロック溶液を得た。次いで、少量のMIBKに溶解したPIB-NH2(0.237g、0.04mmol)をサンプル管に加え、室温で24時間撹拌し、14wt%のPIB-b-PAA-b-PIBを含む溶液を調製した。
実施例2と同様の手法にて調製した溶液中のPIB-b-PAA-b-PIBの対数粘度と分子量を測定した結果、ηinh(dL/g)=0.89、Mw=18.78×104、Mn=2.44×104、Mw/Mn=7.70であった。
【0134】
<重合体の製膜とIR評価>
実施例2、3又は5で合成した共重合体溶液をガラス基板上に塗布し、ホットプレートを用い、100℃で15分間、125℃で15分間、150℃で30分間、及び、250℃で90分間、窒素フロー下で加熱することで、加熱イミド化を行うことで、製膜した。
実施例2、3及び5で合成した共重合体溶液と、前記加熱イミド化後のFT-IRを、Thermo Fisher社製scientific Nicolet iS5 FT-IRを使用し測定した。それぞれのIRスペクトルを、
図1~
図3に示す。
実施例2、3及び5で合成した共重合体溶液全てにおいて、加熱イミド化により、1700cm
-1付近のアミド基由来の吸収ピークの減少、及び、新しいイミド基由来の吸収ピークの出現が確認され、イミド化反応の進行が確認された。
【0135】
<熱重量分析(TGA)>
前記と同様にして製膜したポリイミドフィルムをガラス基板から削り取った。実施例2、3又は5で合成した共重合体溶液から得られたポリイミドフィルム3mgをそれぞれ入れた白金パンを、計量器内部の天秤に載せて熱重量分析(TGA)を行った。具体的には、NETZCH社製のTG/DTAモジュール STA2500Regulusを用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から600℃まで昇温し、各温度における重量を測定し、TGA曲線を作成した。
5%重量損失温度を表1に示し、TGA曲線を
図4に示す。
いずれも重合体においても、高い耐熱分解性(化学的耐熱性)を有していることが確認された。
【0136】
<示差走査熱量測定(DSC)>
実施例2又は3で合成した共重合体溶液を用い、前記と同様にして製膜したポリイミドフィルムを用い、EXSTAR 6000ステーションに接続されたDSCモジュールDSC6200を、最低温度を-70℃、最高温度をTGAで得た1%重量損失温度より20℃程度低い温度に設定し、20℃/minで昇温及び降温を行うことで、示差走査熱量測定(DSC)を行った。結果を
図5に示す。
いずれのフィルムにおいても、実施した測定範囲ではガラス転移温度及び融点は観測されず、高い耐熱変形性(物理的耐熱性)を有していることが確認された。
【0137】
<ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)>
実施例2、3又は5で合成した共重合体溶液をシリコンウエハー上に塗布した後、ホットプレートを用い、大気下で、70℃で15分間、125℃で15分間加熱し、窒素下で、400℃で30分間加熱した。得られたポリイミドフィルム(厚み:約15μm)をシリコンウエハーから剥離し、セイコーインスツル(株)製SSC/5200を用いて、昇温速度6℃/minで、25~350℃の範囲で熱機械分析(TMA)を行い、100~200℃の範囲における線膨張係数(CTE)を算出した。結果を表1に示す。
【0138】
<ポリイミドフィルムの力学特性>
CTEと同様にして製膜したポリイミドフィルムをシリコンウエハーから剥離し、JIS K 6251:2017の7号形ダンベルを用い、23℃下、50mm/minの速度で引張り試験を実施し、引張強さ、切断時伸び及び弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
<シリコンウエハーからのポリイミドフィルムの剥離性評価>
CTEと同様にして製膜したシリコンウエハー付きポリイミドフィルムを5mm幅にカットした後、インストロン社製の「Instron 5567」を用い、500mm/分の条件で、ポリイミドフィルムをシリコンウエハーから90度方向に剥離し、「IPC-TM-650 2.4.9」に準拠してピール強度を測定した。剥離開始位置から10~20mmの剥離強さ(mN)の平均値をポリイミドフィルム幅で割った値であるピール強度(mN/mm)を表1に示す。
【0140】
<ポリイミドフィルムの応力評価>
実施例2、3又は5で合成した共重合体溶液をシリコンウエハー基板(残留応力測定用、秩父電子(株)製、厚み:300μm、直径:4インチ)上に塗布した後、ホットプレートを用い、大気下で、70℃で15分間、120℃で15分間加熱し、窒素下で、400℃で30分間加熱した。得られたポリイミドフィルム(厚み:約20μm)付き基板の反りをレーザーで測定し、ポリイミドフィルムの応力を下記式より算出した。結果を表1に示す。
【0141】
【数1】
〔σ:ポリイミドフィルムの応力、t:ポリイミドフィルムの厚み、R:測定された曲率半径、h:基板の厚さ、E:基板のヤング率、ν:基板のポアソン比〕
【0142】
【0143】
表1から、得られたポリイミドフィルムが、一定の伸び、接着性を有しつつ、高耐熱分解性、高耐熱変形性、低CTE(高寸法安定性)、高強度、高弾性率、低応力値を実現していることが明らかになった。
【0144】
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同様の構成(例えば、機能、方法及び結果が同様の構成や、目的及び効果が同様の構成)を包含する。また、本発明は、前記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに、本発明は、前記の実施形態で説明した構成と同様の作用効果を奏する構成又は同様の目的を達成することができる構成をも包含する。また、本発明は、前記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。