(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水抜き配管用ホルダ
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20241205BHJP
F16L 3/12 20060101ALI20241205BHJP
F16L 3/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E04B1/64 B
E04B1/64 A
F16L3/12 B
F16L3/12 F
F16L3/08 D
(21)【出願番号】P 2023142870
(22)【出願日】2023-09-04
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一利
(72)【発明者】
【氏名】川上 剛史
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-28340(JP,Y1)
【文献】特開2012-007721(JP,A)
【文献】特開2014-052009(JP,A)
【文献】特開2003-156178(JP,A)
【文献】実開昭49-23643(JP,U)
【文献】特開2013-217410(JP,A)
【文献】特開2016-044783(JP,A)
【文献】特開2011-202503(JP,A)
【文献】特開2008-121741(JP,A)
【文献】特開2023-031465(JP,A)
【文献】実開平06-085983(JP,U)
【文献】特開2022-142590(JP,A)
【文献】特開2018-096483(JP,A)
【文献】特開2003-082726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64
E03C 1/12
E02D 27/01
F16L 1/00
F16L 3/00-3/26
F16L 57/00
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートの立ち上がり部に設置される水抜き配管を保持するための水抜き配管用ホルダであって、
上下方向に延びる第1配筋及び第2配筋に沿ってそれぞれ延びるように形成されるとともに、前記第1配筋及び前記第2配筋にそれぞれ固定される第1固定部及び第2固定部と、
前記第1固定部から前記第2固定部まで延びるとともに前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する連結部とを備え、
前記第1固定部、前記第2固定部及び前記連結部は樹脂材によって一体成形され、
前記連結部には、前記水抜き配管を下方から支持する複数の支持部が前記水抜き配管の軸方向に互いに間隔をあけて形成されるとともに、前記水抜き配管の両側面部及び上面部を保持する保持部が形成されている、水抜き配管用ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の水抜き配管用ホルダにおいて、
前記樹脂材は、弾性を有しており、
前記第1固定部は、前記第1配筋の外周面における周方向の半分を超える領域を覆う円弧状断面を有するように形成されている、水抜き配管用ホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の水抜き配管用ホルダにおいて、
前記第1固定部の周方向両端部には、それぞれ径方向外方へ突出するとともに上下方向に延びる突出部が形成されている、水抜き配管用ホルダ。
【請求項4】
請求項1に記載の水抜き配管用ホルダにおいて、
前記支持部は、前記水抜き配管の軸方向中間部分を支持する第1支持部と、前記水抜き配管の軸方向一端側の部分を支持する第2支持部と、前記水抜き配管の軸方向他端側の部分を支持する第3支持部とを含んでいる、水抜き配管用ホルダ。
【請求項5】
請求項4に記載の水抜き配管用ホルダにおいて、
前記保持部は、前記第1支持部から前記水抜き配管の一方の側面部に沿って上方へ延びる第1保持部と、前記第1支持部から前記水抜き配管の他方の側面部に沿って上方へ延びる第2保持部とを含んでいる、水抜き配管用ホルダ。
【請求項6】
請求項5に記載の水抜き配管用ホルダにおいて、
前記第1保持部の先端部と前記第2保持部の先端部とは前記水抜き配管の上面部に配置され、
前記第1保持部の先端部及び前記第2保持部の先端部には、それぞれ上方へ突出するとともに番線が巻き掛けられる第1凸部及び第2凸部が形成されている、水抜き配管用ホルダ。
【請求項7】
請求項5に記載の水抜き配管用ホルダにおいて、
前記第1保持部の先端部には、水平な主筋に沿って延びるように形成されるとともに、前記主筋に固定される第3固定部が設けられている、水抜き配管用ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基礎コンクリートの打設時に水抜き配管を例えば配筋や主筋等に保持するための水抜き配管用ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、基礎コンクリートに設けられる水抜き配管が開示されている。水抜き配管は、基礎コンクリートの立設壁面を厚み方向に貫通するように設けられる配管本体と、通常時に配管本体を閉じておくための蓋部材とを備えている。配管本体は、基礎コンクリートの立設壁面に埋め込まれた状態となっている。配管本体の軸方向一方の開口が基礎の内側に開口する一方、他方の開口が基礎の外側に開口しており、基礎の外側に開口する開口部に、上記蓋部材が着脱可能に取り付けられている。
【0003】
そして、例えば大雨等によって基礎コンクリートの内側に水が溜まった場合には、蓋部材を配管本体から取り外すことで基礎コンクリートの内側に溜まった水を配管本体から基礎コンクリートの外側に排水することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような水抜き配管の設置作業を行う現場では、コンクリートの打設前に、
図17に示すように水抜き配管100を配筋101に対して番線102によって固定する方法が考えられる。
【0006】
ところが、番線102を用いた固定の場合、水抜き配管100の傾きが発生し易い。また、コンクリート打設時の流動圧によって水抜き配管100が軸方向に変位したり、径方向に変位することも考えられる。このため、水抜き配管100を所定の位置に精度良く設置するのが困難であった。
【0007】
また、
図18に示すように、水抜き配管100をベタ基礎に設置する場合もある。この場合、
図19に示すように、型枠400の間に水抜き配管100を設置した後、コンクリートを打設する。このコンクリートの流動圧によって水抜き配管100が移動しないように、水抜き配管100をベタ基礎に載置することが可能である。
【0008】
ところが、布基礎の場合は、水抜き配管100を空中で保持しておかなければならないので、水抜き配管100が不安定になり、その結果、水抜き配管100を所定の位置に精度良く設置するのが困難であった。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、水抜き配管を簡単な作業で所定の位置に精度良く設置できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、基礎コンクリートの立ち上がり部に設置される水抜き配管を保持するための水抜き配管用ホルダを前提とすることができる。水抜き配管用ホルダは、上下方向に延びる第1配筋及び第2配筋に沿ってそれぞれ延びるように形成されるとともに、前記第1配筋及び前記第2配筋にそれぞれ固定される第1固定部及び第2固定部と、前記第1固定部から前記第2固定部まで延びるとともに前記第1固定部と前記第2固定部とを連結する連結部とを備えている。
【0011】
前記第1固定部、前記第2固定部及び前記連結部は樹脂材によって一体成形されている。前記連結部には、前記水抜き配管を下方から支持する複数の支持部が前記水抜き配管の軸方向に互いに間隔をあけて形成されるとともに、前記水抜き配管の両側面部及び上面部を保持する保持部が形成されている。
【0012】
この構成によれば、第1固定部及び第2固定部を第1配筋及び第2配筋にそれぞれ固定すると、第1固定部及び第2固定部が第1配筋及び第2配筋に沿って延びているので、両者の接触面積が大きくなって強固に固定することが可能になる。これにより、水抜き配管用ホルダが安定した状態で第1配筋及び第2配筋に取り付けられる。
【0013】
水抜き配管は、その軸方向に互いに間隔をあけて形成された複数の支持部によって下方から支持されるので、コンクリートの打設時の流動圧による水抜き配管の傾きが抑制される。また、水抜き配管の両側面部及び上面部は保持部によって保持されるので、コンクリートの打設時の流動圧による水抜き配管の軸方向の変位及び径方向の変位が抑制される。
【0014】
前記第1固定部、前記第2固定部及び前記連結部を構成する樹脂材は、弾性を有していてもよい。この場合、前記第1固定部は、前記第1配筋の外周面における周方向の半分を超える領域を覆う円弧状断面を有するように形成することができる。この構成によれば、第1固定部を第1配筋に固定する際に、第1固定部の周方向両端部の間に第1配筋を入れようとすると、第1固定部の周方向両端部の間隔が拡大する方向に当該第1固定部が弾性変形する。第1配筋が第1固定部の内部に完全に入ると、第1固定部の形状が復元しようとし、第1固定部が第1配筋の外周面における周方向の半分を超える領域を覆うことになるので、第1固定部の第1配筋からの脱落が抑制される。
【0015】
前記第1固定部の周方向両端部には、それぞれ径方向外方へ突出するとともに上下方向に延びる突出部が形成されていてもよい。すなわち、第1固定部の周方向両端部に上下方向に延びる突出部が形成されることで、突出部がリブのように機能するので、第1固定部の変形が抑制される。
【0016】
前記支持部は、前記水抜き配管の軸方向中間部分を支持する第1支持部と、前記水抜き配管の軸方向一端側の部分を支持する第2支持部と、前記水抜き配管の軸方向他端側の部分を支持する第3支持部とを含んでいてもよい。この構成によれば、水抜き配管の軸方向に離れた3箇所以上が支持部によって支持されるので、水抜き配管の傾きを抑制できる。
【0017】
前記保持部は、前記第1支持部から前記水抜き配管の一方の側面部に沿って上方へ延びる第1保持部と、前記第1支持部から前記水抜き配管の他方の側面部に沿って上方へ延びる第2保持部とを含んでいてもよい。この構成によれば、水抜き配管を第1保持部及び第2保持部により両側から挟むようにして固定できるので、水抜き配管の径方向への変位がより一層起こりにくくなる。
【0018】
前記第1保持部の先端部と前記第2保持部の先端部とは前記水抜き配管の上面部に配置されていてもよい。この場合、前記第1保持部の先端部及び前記第2保持部の先端部には、それぞれ上方へ突出するとともに番線が巻き掛けられる第1凸部及び第2凸部を形成することができる。この構成によれば、第1凸部及び第2凸部に番線を巻き掛けると、水抜き配管を第1保持部及び第2保持部によって締結できる。
【0019】
前記第1保持部の先端部には、水平な主筋に沿って延びるように形成されるとともに、前記主筋に固定される第3固定部が設けられていてもよい。この構成によれば、主筋を利用して水抜き配管を所定の位置からずれないように固定できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、第1配筋及び第2配筋に沿ってそれぞれ延びる第1固定部及び第2固定部を連結部によって連結し、その連結部に複数の支持部を水抜き配管の軸方向に互いに間隔をあけて形成するとともに、水抜き配管の両側面部及び上面部を保持する保持部を形成したので、水抜き配管を簡単な作業で所定の位置に精度良く設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る水抜き配管用ホルダを用いて水抜き配管を設置したコンクリート基礎の断面図である。
【
図2】水抜き配管用ホルダによって水抜き配管を配筋に保持した状態を示す正面図である。
【
図3】水抜き配管用ホルダを用いて水抜き配管を設置した立ち上がり部の水平方向の断面図である。
【
図7】水抜き配管用ホルダを屋外側から見た図である。
【
図10】補強筋を増設する前の主筋及び配筋の配置を示す正面図である。
【
図11】補強筋の増設が完了した状態を示す
図10相当図である。
【
図12】水抜き配管用ホルダの取り付けが完了した状態を示す
図10相当図である。
【
図13】実施形態の変形例に係る
図6相当図である。
【
図14】実施形態の変形例に係る
図7相当図である。
【
図15】実施形態の変形例に係る
図8相当図である。
【
図16】実施形態の変形例に係る
図9相当図である。
【
図17】従来の水抜き配管の固定方法を説明する図である。
【
図18】従来の水抜き配管をベタ基礎に設置する方法を説明する図である。
【
図19】従来の水抜き配管をベタ基礎に設置する途中の段階を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1~
図3は、本発明の実施形態に係る水抜き配管用ホルダ1を用いて水抜き配管200を設置したコンクリート基礎300の断面図である。このコンクリート基礎300は、いわゆる布基礎であり、例えば住宅、事務所、店舗、工場、倉庫等の各種建築物の基礎として使用される。コンクリート基礎300は、フーチングと呼ばれる底盤部301と、底盤部301から上方へ立ち上がる立ち上がり部302とを有している。
【0024】
図2及び
図3に示すように、コンクリート基礎300には上下方向(鉛直方向)に延びる複数の配筋A1、A2、A3と、水平方向に延びる複数の主筋B1、B2、B3とが埋設されている。配筋A2は、後述するが補強筋である。配筋(補強筋)A2を第1配筋とし、配筋A3を第2配筋とする。
【0025】
上下方向に延びる複数の配筋A1、A2、A3は、水平方向に互いに間隔をあけて設けられており、底盤部301から立ち上がり部302の上側部分まで連続して延びている。水平方向に延びる複数の主筋B1、B2、B3は、上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。上下方向に延びる配筋A1、A2、A3と、水平方向に延びる主筋B1、B2、B3との交差部分は、番線C等によって緊結されている。
【0026】
図1において立ち上がり部302の左側を屋外側とし、立ち上がり部302の右側を屋内側としている。地面を符号Gの二点鎖線で示している。また、立ち上がり部302の屋内側にはスラブコンクリート303が打設されている。尚、この実施形態の説明では、本発明を布基礎に適用した場合について説明するが、本発明は布基礎以外にもいわゆるベタ基礎にも適用できる。
【0027】
立ち上がり部302には、水抜き配管200が設置されている。
図4に示すように、水抜き配管200は、配管本体201と、蓋部材202と、パッキン203とを備えている。水抜き配管200の長手方向と軸方向とは一致している。水抜き配管200は、その軸方向が立ち上がり部302の厚み方向と一致するように設置される。設置された状態で、配管本体201の軸方向一方の開口が立ち上がり部302の屋外側の壁面に開口し、配管本体201の軸方向他方の開口が立ち上がり部302の屋内側の壁面に開口するようになっている。また、水抜き配管200の径方向のうち、水平な方向と、水抜き配管200の幅方向とは一致している。
【0028】
配管本体201は、両端が開口した樹脂製の筒状部材で構成されている。配管本体201の下面部201aは、水平に延びるように形成されている。
図5に示すように、配管本体201の一方の側面部201bは、下面部201aの幅方向一方の縁部から上方へ延びるように形成されている。他方の側面部201cは、下面部201aの幅方向他方の縁部から上方へ延びるように形成されている。一方の側面部201bと他方の側面部201cとは略平行である。
【0029】
配管本体201の上面部201dは、上方へ向けて膨出するように湾曲した湾曲面で構成されている。この上面部201dの形状は、配管本体201の径方向中心部を中心とした円弧状をなしている。一方の側面部201bの上縁部は、上面部201dの幅方向一方の縁部と連続している。他方の側面部201cの上縁部は、上面部201dの幅方向他方の縁部と連続している。
【0030】
蓋部材202は、配管本体201の屋外側の端部に形成されている開口を開閉するための部材であり、配管本体201に対して着脱自在に取り付けられる。具体的には、蓋部材202は、略円形の閉塞板部202aと、閉塞板部202aの裏面から配管本体201内へ突出する環状部202bとを有している。環状部202bには、溝202cが形成されている。一方、配管本体201の内面には、係止部201eが内方へ向けて突出している。蓋部材202の環状部202bを配管本体201に挿入して例えば右方向に回転させると、係止部201eが溝202cに入り込んで係止し、蓋部材202が配管本体201に取り付けられた状態になる。取り付け状態にある蓋部材202を左方向に回転させると、係止部201eが溝202cから出て非係止状態になり、蓋部材202を配管本体201から取り外すことが可能になる。パッキン203は、蓋部材202と配管本体201との間に配設され、蓋部材202と配管本体201との間をシールするための部材である。
【0031】
この実施形態では、配管本体201の外周面に防蟻ブチルゴム204が設けられている。防蟻ブチルゴム204は、防蟻剤を含有したブチルゴムで構成されており、配管本体201の全周を囲むように形成されている。
【0032】
図6~
図9は、水抜き配管用ホルダ1単体を示す図である。これら図に示すように、水抜き配管用ホルダ1の屋外側及び屋内側と、左側及び右側を定義する。水抜き配管用ホルダ1の屋外側とは、立ち上がり部302に設置された状態で屋外側となる側であり、水抜き配管用ホルダ1の屋内側とは、立ち上がり部302に設置された状態で屋内側となる側である。水抜き配管用ホルダ1の左側とは、立ち上がり部302に設置された状態で屋外側から見て左となる側であり、水抜き配管用ホルダ1の右側とは、立ち上がり部302に設置された状態で屋外側から見て右となる側である。尚、この方向の定義は実施形態の説明の便宜を図るためであり、水抜き配管用ホルダ1の使用時の向きを限定するものではない。
【0033】
水抜き配管用ホルダ1は、コンクリート基礎300の立ち上がり部302に設置される水抜き配管1を保持するための器具である。水抜き配管用ホルダ1は、第1配筋A2に固定される第1固定部10と、第2配筋A3に固定される第2固定部20と、第1固定部10と第2固定部20とを連結する連結部30とを備えている。第1固定部10、第2固定部20及び連結部30は樹脂材によって一体成形され、従って、水抜き配管用ホルダ1は、一部品で構成されている。水抜き配管用ホルダ1を構成する樹脂材は、弾性を有しており、例えばポリプロピレン等の樹脂材を用いて水抜き配管用ホルダ1を成形することができる。
【0034】
第1固定部10は、第1配筋A2に沿って上下方向に延びている。第1固定部10の上下方向の寸法は特に限定されるものではないが、第1配筋A2との接触面積を大きくする観点から、例えば30mm以上150mm以下の範囲で設定することができる。
【0035】
第1固定部10の水平方向の断面は円弧状断面となっている。具体的には、第1固定部10が第1配筋A2に固定された状態で、第1固定部10の水平方向の断面が、第1配筋A2の外周面における周方向の半分を超える領域を覆う円弧状断面を有している。このため、第1固定部10には、側方に開放するとともに当該第1固定部10の上端部から下端部まで連続して延びるスリット状の開放部10aが形成されることになる。第1固定部10の円弧状断面が第1配筋A2の外周面における周方向の半分を超える領域を覆う形状となっているので、開放部10aの幅は、第1配筋A2の外径よりも狭く設定されることになる。
【0036】
第1固定部10を第1配筋A2に固定する際には、開放部10aの幅が第1配筋A2の外径よりも狭いので、第1固定部10の開放部10aに第1配筋A2を強く押し当てて開放部10aが開くように第1固定部10を弾性変形させる。これは樹脂材が持っている弾性によって可能になる。これにより、第1配筋A2を開放部10aから第1固定部10の内部に入れることができる。
【0037】
第1配筋A2が第1固定部10の内部に入ると、第1固定部10が元の形状に復元しようとして開放部10aの幅が第1配筋A2の外径よりも狭くなるので、第1配筋A2が第1固定部10の開放部10aから抜けなくなる。また、第1固定部10の復元力によって第1固定部10の内面が第1配筋A2の外面に密着しようとするので、第1固定部10の上下方向への移動が規制される。
【0038】
第1固定部10に開放部10aが形成されているので、第1固定部10の周方向両端部は互いに間隔をあけた状態となる。第1固定部10の周方向両端部の間隔と、開放部10aの幅とは同じである。第1固定部10の周方向両端部には、それぞれ径方向外方へ突出する第1突出部10bが形成されている。各第1突出部10bは、第1固定部10の周方向の端部に沿って上下方向に延びており、第1突出部10bの上端部は第1固定部10の上端部に位置し、第1突出部10bの下端部は第1固定部10の下端部に位置している。第1固定部10の周方向両端部に上下方向に延びる突出部10bがそれぞれ形成されることで、突出部10bがリブのように機能するので、第1固定部10の剛性が高まり、第1固定部10の変形が抑制される。また、両突出部10bは、突出方向先端へ行くほど互いの間隔が広くなるように形成されている。これにより、第1配筋A2を第1固定部10の内部へ入れるときのガイドとなるように、両突出部10bが機能する。
【0039】
第2固定部20は、第1固定部10と同様に構成されており、第2配筋A3に沿って上下方向に延びている。第2固定部20の水平方向の断面は第1固定部10と同様に円弧状断面となっている。具体的には、第2固定部20が第2配筋A3に固定された状態で、第2固定部20の水平方向の断面が、第2配筋A3の外周面における周方向の半分を超える領域を覆う円弧状断面を有している。このため、第2固定部20には、側方に開放するとともに当該第2固定部20の上端部から下端部まで連続して延びるスリット状の開放部20aが形成されることになる。
【0040】
第2固定部20を第2配筋A3に固定する際には、第1固定部10を第1配筋A2に固定する場合と同様に、第2固定部20の開放部20aに第2配筋A3を強く押し当てて開放部20aが開くように第2固定部20を弾性変形させ、第2配筋A3を開放部20aから第2固定部20の内部に入れることができる。
【0041】
第2固定部20の周方向両端部には、それぞれ径方向外方へ突出する第2突出部20bが形成されている。各第2突出部20bは、第2固定部20の周方向の端部に沿って上下方向に延びており、第2突出部20bの上端部は第2固定部20の上端部に位置し、第2突出部20bの下端部は第2固定部20の下端部に位置している。第2固定部20の周方向両端部に上下方向に延びる突出部20bがそれぞれ形成されることで、突出部20bがリブのように機能する。
【0042】
連結部30は、第1固定部10から第2固定部20まで延びている。連結部30における左側の端部に第1固定部10の上下方向中間部が一体成形され、連結部30における右側の端部に第2固定部20の上下方向中間部が一体成形されている。尚、第1固定部10と連結部30とは別部品で構成されていてもよく、また、第2固定部20と連結部30とは別部品で構成されていてもよい。
【0043】
連結部30は、第1固定部10の外面から右方向へ延びる第1左側棒状部31、第2左側棒状部32及び第3左側棒状部33を備えている。第1左側棒状部31は、屋外側に位置しており、第1固定部10の外面から右方向へ向かって右側へ行くほど屋外側に位置するように延びている。第3左側棒状部33は、屋内側に位置しており、第1固定部10の外面から右方向へ向かって右側へ行くほど屋内側に位置するように延びている。したがって、第1左側棒状部31と第3左側棒状部33との間隔は右側へ行けば行くほど広くなっている。
【0044】
第2左側棒状部32は、第1左側棒状部31と第3左側棒状部33との間に位置している。第2左側棒状部32と第1左側棒状部31との間隔は、右側へ行けば行くほど広くなっており、また、第2左側棒状部32と第3左側棒状部33との間隔は、右側へ行けば行くほど広くなっている。第1左側棒状部31、第2左側棒状部32及び第3左側棒状部33は略水平に延びている。
【0045】
連結部30は、第1左側棒状部31の右端部から、第2左側棒状部32の右端部を経て第3左側棒状部33の右端部まで延びる左側補強部34を備えている。第1左側棒状部31、第2左側棒状部32、第3左側棒状部33及び左側補強部34は同じ高さに配置される。左側補強部34は、第1左側棒状部31の右端部と、第2左側棒状部32の右端部と、第3左側棒状部33の右端部とを連結する部分である。左側補強部34は立ち上がり部302の厚み方向に略水平に延びている。したがって、平面視で、左側補強部34と第1左側棒状部31と第3左側棒状部33とにより、第1固定部10側に頂点が位置する三角形が形成される。左側補強部34と第1左側棒状部31と第3左側棒状部33とで形成される三角形を左右方向に横切るように、第2左側棒状部32が位置している。
【0046】
連結部30は、第2固定部20の外面から左方向へ延びる第1右側棒状部35、第2右側棒状部36及び第3右側棒状部37を備えている。第1右側棒状部35、第2右側棒状部36及び第3右側棒状部37と、第1左側棒状部31、第2左側棒状部32及び第3左側棒状部33とは、左右対称に構成されている。
【0047】
第1右側棒状部35は、屋外側に位置しており、第2固定部20の外面から左方向へ向かって左側へ行くほど屋外側に位置するように延びている。第3右側棒状部37は、屋内側に位置しており、第2固定部20の外面から左方向へ向かって左側へ行くほど屋内側に位置するように延びている。したがって、第1右側棒状部35と第3右側棒状部37との間隔は左側へ行けば行くほど広くなっている。
【0048】
第2右側棒状部36は、第1右側棒状部35と第3右側棒状部37との間に位置している。第2右側棒状部36と第1右側棒状部35との間隔は、左側へ行けば行くほど広くなっており、また、第2右側棒状部36と第3右側棒状部37との間隔は、左側へ行けば行くほど広くなっている。第1右側棒状部35、第2右側棒状部36及び第3右側棒状部37は略水平に延びている。
【0049】
連結部30は、第1右側棒状部35の右端部から、第2右側棒状部36の右端部を経て第3右側棒状部37の右端部まで延びる右側補強部38を備えている。第1右側棒状部35、第2右側棒状部36、第3右側棒状部37及び右側補強部38は同じ高さに配置される。右側補強部38は、第1右側棒状部35の左端部と、第2右側棒状部36の左端部と、第3右側棒状部37の左端部とを連結する部分である。右側補強部38は左側補強部34と略平行に、立ち上がり部302の厚み方向に略水平に延びている。したがって、平面視で、右側補強部38と第1右側棒状部35と第3右側棒状部37とにより、第2固定部20側に頂点が位置する三角形が形成される。右側補強部38と第1右側棒状部35と第3右側棒状部37とで形成される三角形を左右方向に横切るように、第2右側棒状部36が位置している。
【0050】
連結部30には、水抜き配管200を下方から支持するための支持部41、42、43が水抜き配管200の軸方向(立ち上がり部302の厚み方向)に互いに間隔をあけて形成されている。支持部41、42、43は、水抜き配管200の軸方向中間部分を支持する第1支持部41と、水抜き配管200の軸方向一端側(屋外側)の部分を支持する第2支持部42と、水抜き配管200の軸方向他端側(屋内側)の部分を支持する第3支持部43とを含んでいる。第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43は同じ高さに配置されており、略水平に延びる棒状に形成されている。第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43の長さは全て同じに設定されている。
【0051】
第1支持部41は、第2左側棒状部32の右端部から第2右側棒状部36の左端部まで左右方向に延びており、第2左側棒状部32の右端部と第2右側棒状部36の左端部とを連結する部分である。第2左側棒状部32の長手方向の延長線上に、第1支持部41及び第2右側棒状部36が位置するようになっており、第2左側棒状部32、第1支持部41及び第2右側棒状部36は同一直線上を左右方向に延びている。平面視で、第1支持部41と左側補強部34とは直交する関係にあり、また、第1支持部41と右側補強部38とは直交する関係にある。
【0052】
第2支持部42は、第1左側棒状部31の右端部から第1右側棒状部35の左端部まで左右方向に延びており、第1左側棒状部31の右端部と第1右側棒状部35の左端部とを連結する部分である。第2支持部42と第1支持部41とは略平行である。
【0053】
第3支持部43は、第3左側棒状部33の右端部から第3右側棒状部37の左端部まで左右方向に延びており、第3左側棒状部33の右端部と第3右側棒状部37の左端部とを連結する部分である。第3支持部43と第1支持部41とは略平行である。
【0054】
連結部30には、水抜き配管200の側面部201b及び上面部201dを保持するための保持部51、52が形成されている。保持部51、52は、第1支持部41から水抜き配管200の一方の側面部(左の側面部)201bに沿って上方へ延びる第1保持部51と、第1支持部41から水抜き配管200の他方の側面部(右の側面部)201bに沿って上方へ延びる第2保持部52とを含んでいる。第1保持部51及び第2保持部52は、共に棒状をなしている。
【0055】
第1保持部51は、第1支持部41の左端部から上方へ延びた後、第1支持部41の上面部201dに沿って右側へ向けて湾曲しており、第1保持部51の先端部(上端部)は水抜き配管200の上面部201dに配置されるようになっている。第1保持部51の基端部(下端部)には、第2左側棒状部32の右端部が一体化されている。また、第1保持部51の基端部には、左側補強部34の長手方向中間部が一体化されている。
【0056】
第2保持部52は、第1支持部41の右端部から上方へ延びた後、第1支持部41の上面部201dに沿って左側へ向けて湾曲しており、第2保持部52の先端部(上端部)は水抜き配管200の上面部201dに配置されるようになっている。第2保持部52の基端部(下端部)には、第2右側棒状部36の右端部が一体化されている。また、第2保持部52の基端部には、右側補強部38の長手方向中間部が一体化されている。
【0057】
第1保持部51の先端部及び第2保持部52の先端部には、それぞれ上方へ突出する第1凸部51a及び第2凸部52aが形成されている。
図2に示すように、第1凸部51a及び第2凸部52aには、番線Cが巻き掛けられるようになっている。第1凸部51a及び第2凸部52aに番線Cを巻き掛けて縛ることで、第1凸部51a及び第2凸部52aが互いに離れないように保持される。
【0058】
(施工要領)
次に、水抜き配管用ホルダ1を用いて水抜き配管200を設置する施工要領について説明する。
図10に示すように、立ち上がり部302に埋め込まれる主筋B2、B3と配筋A1、A3とを組み合わせて番線Cによって緊結する。このとき、補強筋を増設する部分(仮想線L1で示す)の墨だしを行う。その後、
図11に示すように墨だしした部分に補強筋となる配筋A2を設置し、番線Cによって主筋B2、B3に緊結する。配筋A2と配筋A3との間隔は、水抜き配管用ホルダ1の第1固定部10と第2固定部20の間隔を同じである。尚、補強筋は必要に応じて増設すればよい。
【0059】
次いで
図12に示すように水抜き配管用ホルダ1を配筋A2、A3に取り付ける。このとき、第1固定部10の開放部10aに第1配筋A2を強く押し当てて開放部10aが開くように第1固定部10を弾性変形させ、第1配筋A2を開放部10aから第1固定部10の内部に入れる。また、第2固定部20の開放部20aに第2配筋A3を強く押し当てて開放部20aが開くように第2固定部20を弾性変形させ、第2配筋A3を開放部20aから第2固定部20の内部に入れる。これにより、水抜き配管用ホルダが配筋A2、A3に仮固定される。
【0060】
仮固定後、第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43が略水平になっていることを確認する。傾いている場合には、第1固定部10または第2固定部20の高さを調整し、第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43を略水平にする。そして、番線Cを第1固定部10に巻いて縛ることで第1固定部10を第1配筋A2に緊結する。同様に、番線Cを第2固定部20に巻いて縛ることで第2固定部20を第2配筋A3に緊結する。
【0061】
その後、
図2に示すように、第1保持部51と第2保持部52の間に水抜き配管200を入れる。このとき、第1保持部51及び第2保持部52の間隔が拡がるように、第1保持部51及び第2保持部52を弾性変形させることで、水抜き配管200を容易に入れることができる。
【0062】
水抜き配管200は、第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43によって下方から支持される。第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43によって支持された水抜き配管200は、第1配筋A2と第2配筋A3との間において主筋B2と主筋B3との間に配置される。水抜き配管200の設置高さは、水抜き配管用ホルダ1の取り付け高さによって任意に変更できる。
【0063】
第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43の高さが同じなので、水抜き配管200は管軸が略水平な状態で配置される。尚、水抜き配管200を所定角度で傾斜させたい場合には、水抜き配管200が所定角度となるように、第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43の高さを変えればよい。
【0064】
第1保持部51と第2保持部52の間に水抜き配管200を入れた後、第1凸部51a及び第2凸部52aに番線Cを巻き掛けて縛る。これにより、第1保持部51及び第2保持部52で水抜き配管200の側面部201b及び上面部201dを押さえることができるとともに、水抜き配管200の下面部201aを第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43の上面に押し付けることができ、水抜き配管200が軸方向、左右方向及び上下方向のいずれの方向にも移動しなくなる。このように、水抜き配管200を簡単な作業で所定の位置に精度良く設置できる。
【0065】
水抜き配管200を水抜き配管用ホルダ1に保持した後、図示しない型枠を設置する。その後、コンクリートを打設して立ち上がり部302を形成する。コンクリートの打設時には、コンクリートの流動圧が水抜き配管200に作用することになるが、水抜き配管200は、軸方向に互いに間隔をあけて形成された第1支持部41、第2支持部42及び第3支持部43によって下方から支持されるので、コンクリートの打設時の流動圧による水抜き配管200の傾きが抑制される。また、水抜き配管200の両側面部201b及び上面部201dは保持部51、52によって保持されるので、コンクリートの打設時の流動圧による水抜き配管200の軸方向の変位及び径方向の変位が抑制される。
【0066】
(変形例)
図13~
図16は、本発明の実施形態の変形例に係る水抜き配管用ホルダ1を示すものである。この変形例に係る水抜き配管用ホルダ1の第1保持部51の先端部には、水平な主筋B3に沿って延びるように形成されるとともに、主筋B3に固定される第3固定部60が設けられている。第3固定部60は、第1保持部51の上部から上方へ延びる延出部51bの上端部に一体成形されている。
【0067】
第3固定部60の水平方向の断面は円弧状断面となっている。具体的には、第3固定部60が主筋B3に固定された状態で、第3固定部60の鉛直方向の断面が、主筋B3の外周面における周方向の半分を超える領域を覆う円弧状断面を有している。このため、第3固定部60には、スリット状の開放部60aが形成されることになる。第3固定部60の円弧状断面が主筋B3の外周面における周方向の半分を超える領域を覆う形状となっているので、開放部60aの幅は、主筋B3の外径よりも狭く設定されることになる。
【0068】
第3固定部60を主筋B3に固定する際には、開放部60aの幅が主筋B3の外径よりも狭いので、第3固定部60の開放部60aに主筋B3を強く押し当てて開放部60aが開くように第3固定部60を弾性変形させ、主筋B3を開放部60aから第3固定部60の内部に入れる。図示しないが、第3固定部60は番線によって主筋B3に緊結することができる。
【0069】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本開示に係る水抜き配管用ホルダは、例えば布基礎の立ち上がり部に水抜き配管を設置する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 水抜き配管用ホルダ
10 第1固定部
10b 第1突出部
20 第2固定部
20b 第2突出部
30 連結部
41、42、43 第1支持部、第2支持部、第3支持部
51、52 第1保持部、第2保持部
60 第3固定部
200 水抜き配管
【要約】
【課題】水抜き配管を簡単な作業で所定の位置に精度良く設置する。
【解決手段】水抜き配管用ホルダ1は、第1固定部10及び第2固定部20と、第1固定部10と第2固定部20とを連結する連結部30とを備えている。第1固定部10、第2固定部20及び連結部30は樹脂材によって一体成形されている。連結部30には、水抜き配管を下方から支持する複数の支持部41、42、43が水抜き配管の軸方向に互いに間隔をあけて形成されるとともに、水抜き配管の両側面部及び上面部を保持する保持部51、52が形成されている。
【選択図】
図6