(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ICタグ
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20241205BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20241205BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G08B21/02
G06K7/10 148
G06K7/10 252
G08B21/00 N
(21)【出願番号】P 2019149771
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-06-02
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501429531
【氏名又は名称】株式会社マトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穂崎 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】安田 豊
(72)【発明者】
【氏名】山下 義信
(72)【発明者】
【氏名】兼山 智樹
(72)【発明者】
【氏名】金本 雄一
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】寺谷 大亮
【審判官】上田 翔太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-53515(JP,A)
【文献】特開2019-69836(JP,A)
【文献】特開2019-27049(JP,A)
【文献】特開2013-142675(JP,A)
【文献】特開平7-168986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00-21/24
G06K 7/00- 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界強度を検知する磁界強度検知手段と、
磁界強度検知手段が検知した磁界強度が所定の閾値以上か否かを判定する判定手段と、
判定手段が、磁界強度が、所定の閾値以上であると判定したとき、判定した磁界強度に応じてブザー音の鳴らし方を変える、ブザー音変更手段と、
前記ブザー音変更手段のブザー音を停止するブザー音停止手段と、
キャンセルモードを設定するためのキャンセルボタンと、を含み、
前記キャンセル
モードは、トリガー磁界の検知中において
検知した磁界強度が設定された閾値以上の場所で設定でき、
前記ブザー音停止手段は、検知したトリガーIDを記憶して前記キャンセルモードへ移行し、前記キャンセルモードにおいて、定期的にスリープ状態から復帰し、記憶された前記トリガーIDの検知を確認した場合、再度スリープ状態になる処理を、記憶された前記トリガーIDを検知している限り
続ける、ICタグ。
【請求項2】
磁界IDを検知する磁界ID検知手段を含む、請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
前記ICタグは電池で駆動され、前記電池の容量を検知する電池容量検知手段を含む、請求項1
または2に記載のICタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ICタグに関し、特に、重機を用いた作業時に、その近傍に人がいる場合に警報が可能な、ICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械の近傍で作業する作業者の安全を確保するために、建設機械の作業者検知装置が知られている。このような作業者検知装置が例えば、国際公開第2009/15847号(特許文献1)に開示されている。同公報には、作業者用の個人用の警報装置としての警報器付ヘルメットが開示され、作業者が重機等の近傍で作業する場合に、重機が近接したことを、磁場を検知して報知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の作業者検知装置は上記のように構成されていた。このようなヘルメットを作業者が保持して重機の周囲で作業をする場合、ヘルメットは作業者が、危険領域にあるかいないかを報知可能である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された警報装置では、自分がどの程度危険な位置にいるかどうかは分からなかった。
【0006】
この発明は上記した問題点に鑑みてなされたものであり、重機の周りで作業する作業者にとって、自分がどの程度危険な位置にいるのかを知ることが容易なICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るICタグは、磁界強度を検知する磁界強度検知手段と、磁界強度検知手段が検知した磁界強度が所定の閾値以上か否かを判定する判定手段と、判定手段が、磁界強度が、所定の閾値以上であると判定したとき、判定した磁界強度に応じてブザー音の鳴らし方を変える、ブザー音変更手段とを含む。
【0008】
好ましくは、磁界IDを検知する磁界ID検知手段を含む。
【0009】
さらに好ましくは、ブザー音変更手段のブザー音を停止するブザー音停止手段を含む。
【0010】
この発明の一つの局面においては、ICタグは電池で駆動され、電池の容量を検知する電池容量検知手段を含む。
【発明の効果】
【0011】
この発明のICタグは、磁界強度が所定の閾値以上か否かを判定し、所定値以上であれば、ICタグがトリガー発生装置に対して、どのような位置にあるのかをブザー音の鳴らし方を変えて知らせるため、作業者は、重機に対する自己の位置の危険度を認識できる。
【0012】
その結果、重機の周りで作業する作業者にとって、自分がどの程度危険な位置にいるのかを知ることが容易な警報装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態に係る、ICタグが使用される重機まわりのブロック図である。
【
図4】ICタグのブザー鳴動を示すフローチャートである。
【
図5】ICタグのキャンセルモードを示す図である。
【
図6】ICタグのキャンセルモードを示すフローチャートである。
【
図7】ICタグのキャンセル自動解除モードを示す図である。
【
図8】ICタグ電池残量確認モードを示す図である。
【
図9】ICタグ電池残量確認モードを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係る、ICタグを使用する重機周りの機器の構成を示すブロック図である。
図1を参照して、タイヤローラなどの重機20は、重機用の制御ユニット21と、制御ユニット21に中継ボックス23を介して接続された、電源22および警報器24と、所定のトリガー信号を送信するトリガー送信ユニット28と、図示のない、外部に設けられたICタグからの信号を受信する受信アンテナ25a,25bと、を含む。トリガー送信ユニット28は、複数のトリガー送信ユニット28a,28bを含む。
【0015】
ここで、複数のトリガー送信ユニット28a,28bからは、重機20を特定する、同一のトリガーIDを有するトリガー信号が、磁界の形で送信され、それによって、後に説明するICタグがトリガー信号を受信する検知エリアを生成する。検知エリアは、トリガー送信ユニット28に設けられた図示のないボリュームを調整することによって、大、中、小の3段階等に検知エリアを調整可能である。
【0016】
なお、電源22は重機20本体から供給され、警報器24は図示の無いICタグが磁界を検知したときに警報を発して、重機の運転者に警告する。
【0017】
次に、作業者が保持するICタグ10について説明する。
図2は、ICタグ10の平面図(
図2(A))および側面図(
図2(B))と、その構成を示すブロック(
図2(C))図である。
図2(A)~(C)を参照して、ICタグ10は、縦×横×厚さが、例えば、90mm×44mm×16mm程度の携帯可能な直方体状である。ICタグ10は警報キャンセル機能付きであり、その正面には、キャンセルボタン11と、LED12と、ブザー13とが設けられている。また、ICタグ10は、ICタグ10全体を制御する処理IC(CPU)15と、処理IC15に接続され、周囲のトリガー信号の磁界強度を検知する検知部16と、検知したトリガーIDを含むタグデータを送信する送信部17と、上記した、キャンセルボタン11と、LED12と、ブザー13とを含む。なお、ブザー13は、図中点線等で示すように、実際は内部に収容されているため、以下のICタグ10を示す図では、図示を省略する。
【0018】
次に、ICタグ10の動作について説明する。
図3は
図1に示した重機20の制御ユニット21からのトリガーエリアである検知エリア31と、その周囲に位置する作業者が有するICタグ10a、10b、および10cを示す図であり、
図4は、作業者の保持するICタグ10a、10b、および10cの処理IC15の動作を示すフローチャートである。
【0019】
図3を参照して、ICタグ10aは、重機20の近くに位置し、ICタグ10bは検知エリア31の境界位置の内部に位置し、ICタグ10cは、検知エリア31の外部に位置するものとする。
【0020】
次に
図3および
図4を参照して、ICタグ10a~10cの動作について説明する。ICタグ10は、通常、通常動作モード(
図4でS11)で作動している。ここで、通常モードとは、磁界検知を行っているモードである。通常動作モードにおいて磁界を検知すると(S12でYES)、処理IC15を起動する。例えば、
図3のICタグ10a、10bはトリガー信号の検知エリア(ここでは、トリガーIDを1とする)に入っているため、磁界を検知する。したがって、処理IC15は、磁界強度を検知する磁界強度検知手段、磁界強度が所定の閾値以上か否かを判定する判定手段、として作動する。
【0021】
処理ICは磁界強度を判定する。ここでは、磁界強度が所定の閾値以上か否かを判定する(S14)。所定の閾値以上であれば(S14でYES)、短い間隔でブザーを鳴動する(S15)。所定の閾値以上でなければ(S14でNO)、長い間隔でブザーを鳴動する(S16)。すなわち、ICタグ10aは、短い間隔でブザーを鳴動し、ICタグ10bは、長い間隔でブザーを鳴動する。したがって、処理IC15はブザー音変更手段として作動する。
【0022】
なお、このとき、LED12も、同様に、所定の閾値以上であれば、短い間隔でLEDを点滅し、所定の閾値以上でなければ、長い間隔でLEDを点滅する。
【0023】
次いで、処理ICはトリガーIDを判定する(S17)。トリガーIDの判定ができれば(S17でYES)、そのトリガーIDを記憶し(S18)、自身のタグIDとトリガーIDとを外部へ送信し(S19)、通常動作モードに戻る(S11)。
【0024】
したがって、処理IC15は、磁界IDを検知する磁界ID検知手段として作動する。
【0025】
S17で、トリガー信号にノイズが含まれたり、波形のゆがみ等でトリガーIDの判定ができないときは(S17でNO)、そのまま、通常動作モードに戻る(S11)。
【0026】
なお、ICタグ10cはトリガー信号の検知エリア外にあるため、磁界を検知することはできない。
【0027】
また、ここで、短い間隔でのブザー鳴動やLEDの点滅は、例えば、ピ、ピ、ピ、ピ、と連続した鳴動や、連続した点滅をいい、長い間隔でのブザー鳴動は、例えば、ピー、ピー、ピー、ピー、と連続した鳴動や、一定時間の点灯が連続した点滅をいう。このように、ブザーの鳴動の方法を変えることにより、作業者は、自分が重機の近くの危険な位置にいるのか、重機から比較的離れた安全な位置にいるのかを判断できる。
【0028】
ここで、例えば、安全な位置を5mとしたときに、危険な位置とは、例えば、トリガー送信ユニット28を重機の中心(キャビン内、運転席上等)から3m以内のような範囲である。これは、このような範囲であれば、重機の運転者にとって、起動時に死角となりうるような範囲であり、作業者にとって危険な範囲であるためである。
【0029】
次に、ICタグ10のキャンセルモードについて説明する。
図5はキャンセルモードを設定できる場所を説明する図であり、
図6は、その場合の処理IC15の動作を示すフローチャートである。
図5および
図6を参照して、キャンセルモードは
図2のキャンセルボタン11を押すことによって、設定される。
【0030】
キャンセルモードは、ICタグ10がトリガー磁界の検知中にのみ設定できる。すなわち、トリガー磁界の検知エリア31内の、設定された閾値以上の場所でキャンセルモードに設定できる。
【0031】
また、キャンセルモードの遷移には、トリガー磁界の検知中で、且つ設定された閾値でキャンセルボタンの長押しが、例えば3秒以上で設定される。
【0032】
ここで、キャンセルするのに閾値を設けたのは、トリガー送信ユニット28を上記のように重機の中心に設置した場合、トリガー送信ユニット28から離れた重機のアーム部分のエリアは磁界強度が弱くなるため、磁界の弱いエリアは危険個所として、キャンセルできないようにするのがよいためである。
【0033】
図5および
図6を参照して、通常モードにおいて(S21)、キャンセルボタン11を押し(S22)、トリガー磁界を検知すると(S23でYES)、ボタンの押し下げ時間によって、長押しか否かが判断される。長押しであれば(例えば、2秒以上であれば)(S24でYES)、検出されるトリガーIDが単一であるか否かを、例えば、同一トリガーIDを連続して5回以上検知したか否かで判断し(S25)、5回以上連続して検知したときは(S25でYES)、トリガーIDを記憶し(S26)、キャンセルモードへ移行し、スリープ状態になる(S27)。
【0034】
なお、S23で磁界を検知しなかったり(S23でNO)、ボタンの押し下げ時間が短ければ(S24でNO)、通常動作モード(S21)へ戻る。
【0035】
以後、定期的にスリープ状態から復帰し、記憶されたトリガーIDの検知を確認した場合、再度スリープ状態となり、この処理を記憶されたトリガーIDを検知している限り続ける。具体的には、2秒後に復帰し、4秒間監視し(S28)、記憶されたトリガーIDを検知し(S29)、検知したときは(S29でYES)、ボタンの押し下げが2秒以上か否か(長押しか否か)を判断し(S30)、2秒以上であれば(S30でYES)、LEDを3回点滅し、ブザーを3回鳴動し、通常動作モードになる(S31,S32)。
【0036】
したがって、処理IC15は、ブザー音変更手段のブザー音を停止するブザー音停止手段として作動する。
【0037】
S29でトリガーIDを検知しなかったときは(S29でNO)、S31へ進む。
【0038】
S30でボタンの押し下げが2秒以上でなければ(S30でNO)、S27へ戻る。
【0039】
S25で、同一トリガーIDの連続検知が5回以上でなければ(S25でNO)、LEDを5回点滅し、ブザーを5回鳴動し(S33)、通常動作モードへ戻る(S21)。すなわち、異なるIDのトリガー信号を検知したときは、キャンセルモードへの移行はない。
【0040】
なお、ここでの時間や回数は、全て一例である。
【0041】
なお、トリガーIDごとに、ブザー音の鳴動やデータ送信をさせたり止めたりできるようにしてもよい。
【0042】
この場合、注意しなければならない重機や移動機械のみに注意を集中できる。
【0043】
S29で記憶されたトリガーIDを検知している、重機を操作している間は、いずれのトリガーIDにも反応しない。操作を終了すると、他の重機に搭載のトリガーIDに反応してブザー音などのタグ側での注意喚起機能が動作するようになる。
【0044】
次に、キャンセルモードの自動解除について説明する。
図7は、この場合を説明するための図である。
図7を参照して、作業者が移動してICタグ10が、検知エリア31内から外に図中矢印で示すように移動したとき、ICタグ10は、トリガー磁界を検知しなくなる。するとキャンセルモードが自動的に解除され、ICタグ10は通常動作モードに復帰する。このとき、LEDが3回点滅し、ブザーが3回鳴動する。
【0045】
なお、キャンセルモードの解除は、作業者が、自身の乗る重機の電源をオフしたときにも設定される。
【0046】
また、キャンセルモード中にボタン長押しされたときにも(
図6のS30)設定される。
【0047】
次に、電池残量確認モードについて説明する。
図8は、このモードの作動状態を示す図であり、
図9は、この場合の処理IC15の行う動作を示すフローチャートである。
【0048】
図8の左側に示すように、作業者の有するICタグ10が、所定のトリガー磁界内にあるときは、このモードは作動せず、
図8の右側に示すように、作業者の有するICタグ10が磁界のない場所にあるときのみに作動する。これは、トリガー磁界検知中は重機等が移動している可能性もあり、危険が予測されるためである。
【0049】
図8および
図9を参照して、電池残量確認モードは、スリープモードにあるときに(S41)、電池残量確認ボタンを押すことで行われる(S42)。ここで、電池残量確認ボタンは、キャンセルボタン11である。電池残量確認ボタンを押すと、磁界の検知が行われ(S43)、磁界が検知されると(S43でYES)、スリープモードに移行する(S41)。S43で、磁界が検知されないと(S43でNO)、電池のチェックが行われる(S44)。
【0050】
したがって、処理IC15は、電池の容量を検知する電池容量検知手段として作動する。
【0051】
S44で電池の残量が十分であれば(S44でOK)、LED12を、例えば1秒間点灯する(S45)。S44で電池の残量が不十分であれば(S41でNG)、例えば、LED12の1秒間の点滅を行い、いずれの場合もスリープモードに移行する(S41)。
【0052】
上記実施の形態においては、警報として、ブザーの鳴動回数や、LEDの点灯回数等について、一例を挙げたが、これに限らず、作業者の注意を引ければ、任意の回数鳴動や点灯でも良いし、振動、風圧、温冷感等、接触刺激、音色、音圧変動、鳴動周期やテンポ等聴覚刺激、嗅覚刺激、視覚刺激、または外部機器と接続するための信号出力などでもよい。
【0053】
また、ブザーとLEDの点滅とを併用した場合について説明したが、いずれか一方だけでもよい。
【0054】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示する実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 ICタグ、11 キャンセルボタン、12 LED、13 ブザー、15 処理IC(CPU)、16 検知部、20 重機、21 制御ユニット、22 電源、23 中継ボックス、24 警報器、25 受信アンテナ、28 トリガー送信ユニット、31 検知エリア。