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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/024 20180101AFI20241205BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20241205BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241205BHJP
   H04W 8/22 20090101ALI20241205BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20241205BHJP
【FI】
H04W4/024
H04W88/04
H04W84/10 110
H04W8/22
H04W4/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020089818
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184571
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】荘司 洋三
【審査官】千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-032062(JP,A)
【文献】特開2005-086262(JP,A)
【文献】特開2012-054676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/024
H04W 88/04
H04W 84/10
H04W 8/22
H04W 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報源局から宛先局へ情報を伝送する情報伝送システムにおいて、
上記宛先局へ伝送すべき伝送情報を保有する情報源局と、
上記情報源局が保有する上記伝送情報を上記宛先局へ中継する、移動自在な移動体とを備え、
上記移動体は、
近接位置にある上記情報源局から上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積する第1移動体、又は上記第1移動体並びに上記第1移動体が元になり中継されてきた上記伝送情報を一時的に蓄積する第2移動体とからなり、
上記第1移動体又は上記第2移動体は、近接位置にある上記宛先局に対して一時的に蓄積した上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信し、
上記情報源局、上記宛先局、及び上記移動体は、
上記伝送情報をミリ波帯域により無線通信する上で上記移動体を上記情報源局の近接位置又は上記宛先局の近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて互いに送受信し、
上記移動体は、さらに、
上記第1移動体が蓄積した伝送情報を上記第2移動体に中継する一又は複数の他の移動体を有し、
上記各移動体間の伝送情報の中継をミリ波帯域による無線通信により行う上で、互いに近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて互いに送受信すること
を特徴とする情報伝送システム。
【請求項2】
情報源局から宛先局へ情報を伝送する情報伝送システムにおいて、
上記宛先局へ伝送すべき伝送情報を保有する情報源局と、
上記情報源局が保有する上記伝送情報を上記宛先局へ中継する、移動自在な移動体と、
近接位置にある一の上記移動体から上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積すると共に、近接位置にある他の上記移動体から蓄積した上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信することで中継する中継局とを備え、
上記移動体は、
近接位置にある上記情報源局から上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積する第1移動体、又は上記第1移動体並びに上記第1移動体が元になり中継されてきた上記伝送情報を一時的に蓄積する第2移動体とからなり、
上記第1移動体又は上記第2移動体は、近接位置にある上記宛先局に対して一時的に蓄積した上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信し、
上記情報源局、上記宛先局、及び上記移動体は、
上記伝送情報をミリ波帯域により無線通信する上で上記移動体を上記情報源局の近接位置又は上記宛先局の近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて互いに送受信し、
上記中継局は、上記一の移動体又は上記他の移動体との間で上記近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて送受信すること
を特徴とする情報伝送システム。
【請求項3】
上記移動体は、受信した案内情報に基づいて運転手に上記近接位置へ案内するための案内表示部を有する車両、又は受信した案内情報に基づいて上記近接位置へ自律的に移動を促す移動案内部を有する車両であること
を特徴とする請求項1又は2記載の情報伝送システム。
【請求項4】
上記情報源局、上記宛先局、上記中継局、及び上記移動体の位置情報並びにこれらが保有し又は一時的に蓄積する伝送情報の各状況を取得可能な総合制御サーバを更に備え、
上記総合制御サーバは、取得した上記位置情報並びに上記伝送情報の各状況に基づいて、上記情報源局の近接位置、上記宛先局の近接位置、上記中継局の近接位置にそれぞれ案内するための案内通知を上記移動体へ送信すること
を特徴とする請求項記載の情報伝送システム。
【請求項5】
上記伝送情報の中継を行う各移動体は、移動自在なロボットからなり、マイクロ波帯域を通じて互いに送受信する案内情報に、互いの距離に関する情報、ミリ波帯域の信号の受信感度及び受信レベルに関する情報、上記ミリ波帯域による無線通信を行うためのアンテナの設置位置又は方向に関する情報、上記ミリ波帯域による無線通信の受信電力レベルに関する情報の何れか1以上を含め、相手側から受信した案内情報に含められた上記各情報に基づいて上記ミリ波帯域による無線通信を実現するための処理動作を実行すること
を特徴とする請求項1又は記載の情報伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報源局から宛先局へ情報を伝送する情報伝送システムに関し、特に直接電波が届かない遠隔地域との間もしくは同一建物内における離れた場所の間において大容量コンテンツ情報を低コストでしかも高速に伝送することで、情報の共有・消費を地域内もしくは地域間でより活性化する上で好適な情報伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化に伴い、高齢者世帯の増加に伴う社会的課題が顕在化している中、屋内外における高齢者の見守りのニーズのみでなく、ITリテラシーに詳しくない高齢者世帯に対する情報提供の手段や、逆に高齢者の状況等の発信手段のニーズが高まっている。
【0003】
多くの場合、ITリテラシーに詳しくない高齢者は、光ファイバ回線や最新のブロードバンド回線を契約する等、ネットワークを積極的に利活用しない傾向もあることから、例えば今後益々コンテンツのマルチメディア化と大容量化が進むであろう、公共目的での高齢者向け情報配信・情報収集のためのインフラの構築が難しくなっている事情がある(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
特に過疎地において、近年飛躍的な高速無線アクセス回線などの技術を用いた情報収集・配信環境の整備を行うことは、極めて非効率であり、インフラ敷設に時間も要するという問題点がある。
【0005】
また、高齢者世帯などを対象とした情報収集・配信システムでなくとも、例えば同一ビル内や駅構内、地下街のような比較的限られた近距離の範囲であって、防犯、防災、観光、商業等のビジネス領域での応用を含めた情報収集・配信が必要な状況においても、光ファイバのようなインフラが十分に同エリア内に整備されていない場合には、異なる拠点間での超広帯域なコンテンツ等のスムーズな配信や収集が困難であるか、多大なコストを要する。
【0006】
上述したように、情報収集・配信基盤である情報ネットワークインフラ基盤において、光ファイバ等を用いる有線ネットワークを敷設することになれば、膨大なコストを要してしまうことにもなり、情報ネットワークインフラ基盤を構築する上では有線ネットワークではなく、あくまで無線ネットワークを中心に据えるべきである。特に近年における第5世代移動通信システム(5G)が普及する過程で、超広帯域通信性(超高速通信性)の向上、多数のデバイス収容性を実現する無線アクセス技術の進歩、更にはLPWA(Low Power Wide Area)のように低速ではあるが低コストで広域性も有するIoTセンサデータの利活用に適した無線アクセスシステムの進歩等も期待され、無線通信を利用した情報ネットワークインフラの構築への社会的な要望は非常に高い。
【0007】
一方、5Gによる無線通信システムでは、ミリ波帯域の周波数も通信資源として活用することで超高速通信性を実現していることから、これを広域展開することになれば、事実上光ファイバ等を用いる有線ネットワークを敷設する場合と同等の敷設コストが発生してしまう。このため、情報ネットワークインフラ基盤の構築が急務となる過疎地においてこのような広帯域ネットワーク環境が整備されるためには、相当の期間を要する可能性が高い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】M.C.Lucas-Estan and J.Gozalvez,”Mode Selection for 5G Heterogeneous and Oppotunistric Networks “in IEEE Access,vol 7,pp.113511-113524,2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、情報源局から宛先局へ情報を伝送する情報伝送システムに関し、特に遠隔地域との間において大容量コンテンツ情報を低コストでしかも高速に伝送することが可能な情報伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る情報伝送システムは、情報源局から宛先局へ情報を伝送する情報伝送システムにおいて、上記宛先局へ伝送すべき伝送情報を保有する情報源局と、上記情報源局が保有する上記伝送情報を上記宛先局へ中継する、移動自在な移動体とを備え、上記移動体は、近接位置にある上記情報源局から上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積する第1移動体、又は上記第1移動体並びに上記第1移動体が元になり中継されてきた上記伝送情報を一時的に蓄積する第2移動体とからなり、上記第1移動体又は上記第2移動体は、近接位置にある上記宛先局に対して一時的に蓄積した上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信し、上記情報源局、上記宛先局、及び上記移動体は、上記伝送情報をミリ波帯域により無線通信する上で上記移動体を上記情報源局の近接位置又は上記宛先局の近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて互いに送受信し、上記移動体は、さらに、上記第1移動体が蓄積した伝送情報を上記第2移動体に中継する一又は複数の他の移動体を有し、上記各移動体間の伝送情報の中継をミリ波帯域による無線通信により行う上で、互いに近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて互いに送受信することを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る情報伝送システムは、情報源局から宛先局へ情報を伝送する情報伝送システムにおいて、上記宛先局へ伝送すべき伝送情報を保有する情報源局と、上記情報源局が保有する上記伝送情報を上記宛先局へ中継する、移動自在な移動体と、近接位置にある一の上記移動体から上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積すると共に、近接位置にある他の上記移動体から蓄積した上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信することで中継する中継局とを備え、上記移動体は、近接位置にある上記情報源局から上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積する第1移動体、又は上記第1移動体並びに上記第1移動体が元になり中継されてきた上記伝送情報を一時的に蓄積する第2移動体とからなり、上記第1移動体又は上記第2移動体は、近接位置にある上記宛先局に対して一時的に蓄積した上記伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信し、上記情報源局、上記宛先局、及び上記移動体は、上記伝送情報をミリ波帯域により無線通信する上で上記移動体を上記情報源局の近接位置又は上記宛先局の近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて互いに送受信し、上記中継局は、上記一の移動体又は上記他の移動体との間で上記近接位置に案内するための案内情報をマイクロ波帯域を通じて送受信することを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る情報伝送システムは、第1発明又は第2発明において、上記移動体は、受信した案内情報に基づいて運転手に上記近接位置へ案内するための案内表示部を有する車両、又は受信した案内情報に基づいて上記近接位置へ自律的に移動を促す移動案内部を有する車両であることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る情報伝送システムは、第2発明において、上記情報源局、上記宛先局、上記中継局、及び上記移動体の位置情報並びにこれらが保有し又は一時的に蓄積する伝送情報の各状況を取得可能な総合制御サーバを更に備え、上記総合制御サーバは、取得した上記位置情報並びに上記伝送情報の各状況に基づいて、上記情報源局の近接位置、上記宛先局の近接位置、上記中継局の近接位置にそれぞれ案内するための案内通知を上記移動体へ送信することを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る情報伝送システムは、第1発明又は第2発明において、上記伝送情報の中継を行う各移動体は、移動自在なロボットからなり、マイクロ波帯域を通じて互いに送受信する案内情報に、互いの距離に関する情報、ミリ波帯域の信号の受信感度及び受信レベルに関する情報、上記ミリ波帯域による無線通信を行うためのアンテナの設置位置又は方向に関する情報、上記ミリ波帯域による無線通信の受信電力レベルに関する情報の何れか1 以上を含め、相手側から受信した案内情報に含められた上記各情報に基づいて上記ミリ波帯域による無線通信を実現するための処理動作を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した構成からなる本発明によれば、情報源局から宛先局へ伝送情報を伝送する際に、仮にその伝送情報が大容量コンテンツからなるものであっても、これを移動体を介して中継させることにより、低コストでしかも高速に伝送することが可能となる。この移動体による中継は、マイクロ波帯域のビーコンパケットに含められる案内情報に基づいてサポートされることから円滑な中継を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明を適用した情報伝送システムが適用される情報ネットワークインフラ基盤6のコンセプトを示す図である。
図2図2は、情報伝送システムにおける、伝送情報の伝送コンセプトを示す図である。
図3図3は、中継局を介することなく、移動体間において伝送情報を直接送受信する例について説明するための図である。
図4図4は、3以上の移動体により伝送情報を中継させる例について説明するための図である。
図5図5は、総合制御サーバから情報源局、宛先局、中継局、及び移動体に対して案内通知を送信する例について説明するための図である。
図6図6は、伝送情報を担わせる上で移動体に迂回させる例について説明するための図である。
図7図7は、ロボットが移動体である場合の動作例について説明するための図である。
図8図8は、情報源局から角部までを移動するロボットからなる第1の移動体と、角部から宛先局までの移動するロボットからなる第2移動体により、伝送情報を伝送する例を示す図である。
図9図9は、移動体と固定局(情報源局、宛先局、中継局)との無線通信を行う場合におけるシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した情報伝送システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0019】
図1は、本発明を適用した情報伝送システム1が適用される情報ネットワークインフラ基盤6のコンセプトを示す図である。情報ネットワークインフラ基盤6は、各地域(エリア)において発生する様々な伝送情報を情報源局2と他の宛先局3との間で共有し、或いはその伝送情報を情報源局2から宛先局3へ伝送する基盤となるものである。特にこの情報伝送システム1は、各情報源局2から伝送情報を宛先局3へ共有・転送するばかりではなくこれを各地域にフィードバックすることで積極的に活用を促し、消費させるための基盤を提供するものでもある。
【0020】
情報ネットワークインフラ基盤6を構成する各エリアは、人々が生活をし、また仕事をする上で必要な電気、ガス、水道等を提供するライフライン基盤、生活や仕事をする上で必要となる固定基盤(ビルやマンション、戸建住宅、駅、小売店舗、保育園、老人ホーム、発電所、郵便局、自動販売機、各種インフラ等)に加え、実際に人や物を運ぶモバイル基盤がこれらの外周に配備される。このモバイル基盤は、車両、バス、トラック、タクシー、ドローン、航空機、ロボット等の移動体4により構成され、あくまで人や物をそれぞれの目的地まで運ぶという目的の下で各エリアの内外を移動する。
【0021】
このような情報ネットワークインフラ基盤6を構成する各エリアにおいては、様々な伝送情報が発生する。例えば高齢者や登下校中の児童に対して見守りが必要である旨の伝送情報が発生する。また過疎地の住民で生活必需品の購入が困難な場合に、その購入希望が含められた伝送情報が発生する。また交通事故や犯罪、自然災害等、各エリアで現実に起きている様々なイベントや事件に対して、救助を求める伝送情報が発生する。また、過疎地に対して娯楽を提供するための映画等大容量コンテンツからなる伝送情報が発生する。また近年進んできた遠隔医療に必要なデータを地域間で伝送し合う場合も発生する。更には、観光業や各ビジネスを行う上、各エリアにおいて起きている様々なイベントや顧客の要望が含められた伝送情報も発生する。
【0022】
つまり、情報ネットワークインフラ基盤6を構成する各エリアにおいては、見守り、買い物難民、交通安全、防犯、防災や減災、娯楽、観光業や商業、見廻り(御用聞き)ビジネス等を例に挙げたとき、各事件やイベントに応じた救助要請や顧客による要望が各エリアにおいて発生し、このような救助要請や要望等が反映された伝送情報が発生する。このような伝送情報が発生し、又各地で発生した伝送情報が送られてきてこれを一時的に保有する局が情報源局2である。伝送情報は、その取得を希望する宛先局3に向けて伝送されることが前提の情報であるため、伝送したい宛先に関する情報もこれに含まれている。従って、情報ネットワークインフラ基盤6では、情報源局2から、この伝送情報が伝送したい宛先に相当する宛先局3に向けて伝送するための処理動作を実行することになる。即ち。情報源局2がこの伝送情報を保有しているとき、その伝送情報の取得を希望する宛先局3へ伝送し、或いはその伝送情報を情報源局2と宛先局3との間で共有することにより、最適なサービスやアシスト、或いは最適な情報配信を各エリアごとに提供することが可能となる。
【0023】
本発明を適用した情報伝送システム1では、このような情報源局2が保有する伝送情報を宛先局3に対して有線ネットワークが敷設された公衆通信網を介して送信するのではなく、移動体4にこれを搬送させる。移動体4は、上述したように人や物をそれぞれの目的地まで運ぶという目的の下で各エリアの内外を移動するものであるが、たまたまある移動体4は、情報源局2の近傍を通過し、しかも宛先局3と間逆の方向ではなく、宛先局3に向けて接近する方向に移動している途中である場合がある。かかる場合には、情報源局2から伝送情報を移動体4aが受信し、宛先局3に向けてこれを搬送する。しかし、この移動体4aの目的地が必ずしも宛先局3と一致するわけではなく、途中で宛先局3と異なる方向を目指す場合が多々ある。一方、この移動体4aとすれ違う他の移動体4bであって、しかもその目的地の方向が宛先局3を目指すものであれば、移動体4aは、この伝送情報を当該他の移動体4bに送信する。伝送情報を受信した他の移動体4bは、宛先局3にこれを搬送する。そして、他の移動体4bは、一時的に蓄積した伝送情報を宛先局3に送信する。これにより、情報源局2から宛先局3に向けて移動体4を介した伝送情報の中継が実現されることになる。
【0024】
図1の例では2つの移動体4a、4bにより伝送情報を中継する例について説明をしたが、これに限定されるものではなく、2つの移動体4a、4b間に、この伝送情報の伝送を中継する1以上の移動体4が介在するものであってもよい。
【0025】
また、移動体4a、4b間に更に伝送情報の伝送を中継する1以上の中継局5が介在するものであってもよい。
【0026】
更に、本発明を適用した情報伝送システム1においては、この情報ネットワークインフラ基盤6を構成する情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5を制御及び管理する総合制御サーバ10が設けられていてもよい。
【0027】
以下この情報ネットワークインフラ基盤6を構成する情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5、総合制御サーバ10について詳細に説明をする。
【0028】
情報源局2は、宛先局3が受信を希望する伝送情報を生成してこれを保有する局であり、或いは他の情報源から生成された伝送情報を集積してこれを保有する局である。情報源局2は、例えばコンビニエンスストアやドラッグストア、銀行、郵便局、交番や自動販売機など、各地域エリアにおいてほぼ必ず設置される対象に対して設置される。実際にこの情報源局2は、一般的な無線ルータとして具現化されていればよく、必要に応じて大容量データからなる伝送情報を格納可能な記録媒体を備えるものであってもよい。特にこの情報源局2は、マンション等の集合住宅や、戸建住宅街において生成された伝送情報を集積する一つの情報集積拠点としての役割を担うものであってもよい。これに以外にこの情報源局2は、各住宅に一台ずつ設置されるものであってもよく、かかる場合には、住宅の玄関付近に設置された郵便受けにミリ波アンテナを内蔵させ、当該アンテナに接続された無線ルータを各住宅内に設置しておくことで実現できる。
【0029】
情報源局2は、伝送情報をミリ波帯域(または、より高周波数であるテラヘルツ帯域)で送受信する機能を備えている。また情報源局2は、マイクロ波によるビーコンパケットを送受信する機能も備えている。情報源局2は、このマイクロ波のビーコンパケットに、移動体4を自らの近接位置に案内情報を重畳させた上でこれを周期的に発信する。また、この情報源局2は、かかるビーコンパケットの発信周期を制御する機能をも備えている。
【0030】
ここでいう案内情報としては、情報源局2の位置、情報源局2の属性を示す情報が含まれている。情報源局2の属性を示す情報を通じてビーコンパケットを受信した側は、発信元が情報源局2であることを識別することが可能となる。また、この案内情報には、情報源局2が自局とミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つが含まれている。更にこの案内情報には、情報源局2が保有する伝送情報のコンテンツの種別や名称、更にはその宛先に関する情報も記述されている。
【0031】
なお情報源局2は、無線ルータとして1箇所に固定されている状態を例に挙げて以下説明をするが、これに限定されるものではなく、移動自在に構成されていてもよい。かかる場合には、この情報源局2を構成する無線ルータが車両、バス、トラック、タクシー、ドローン、航空機、ロボット等に搭載されて移動自在とされていてもよい。かかる場合には、情報源局2は、上述した案内情報において自らの速度や加速度といった移動状態を含めるようにしてもよい。
【0032】
宛先局3は、情報源局2から発信された伝送情報が中継されて送り届けられる局である。宛先局3は、例えばコンビニエンスストアやドラッグストア、銀行、郵便局、交番や自動販売機など、各地域エリアにおいてほぼ必ず設置される対象に対して設置される。実際にこの宛先局3は、一般的な無線ルータとして具現化されていればよく、必要に応じて大容量データからなる伝送情報を格納可能な記録媒体を備えるものであってもよい。特にこの宛先局3は、マンション等の集合住宅や、戸建住宅街に対して伝送情報を配信する一つの情報配信拠点としての役割を担うものであってもよい。これ以外にこの宛先局3は、各住宅に一台ずつ設置されるものであってもよく、かかる場合には、住宅の玄関付近に設置された郵便受けにミリ波アンテナを内蔵させ、当該アンテナに接続された無線ルータを各住宅内に設置しておくことで実現できる。
【0033】
宛先局3は、伝送情報をミリ波帯域(テラヘルツ帯域)で送受信する機能を備えている。また宛先局3は、マイクロ波によるビーコンパケットを送受信する機能も備えている。宛先局3は、このマイクロ波のビーコンパケットに、移動体4を自らの近接位置に案内するための情報を重畳させた上でこれを周期的に発信する。また、この宛先局3は、かかるビーコンパケットの発信周期を制御する機能をも備えている。
【0034】
宛先局3がビーコンパケットに含めて発信する案内情報としては、宛先局3の位置、宛先局3の属性を示す情報が含まれている。宛先局3の属性を示す情報を通じてビーコンパケットを受信した側は、発信元が宛先局3であることを識別することが可能となる。また、この案内情報には、宛先局3が自局とミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つが含まれている。更にこの案内情報には、宛先局3が受信を希望している所望の伝送情報のコンテンツの種別や名称も記述されている。
【0035】
なお宛先局3は、無線ルータとして1箇所に固定されている状態を例に挙げて以下説明をするが、これに限定されるものではなく、移動自在に構成されていてもよい。かかる場合には、この宛先局3を構成する無線ルータが車両、バス、トラック、タクシー、ドローン、航空機、ロボット等に搭載されて移動自在とされていてもよい。かかる場合には、宛先局3は、上述した案内情報において自らの速度や加速度といった移動状態を含めるようにしてもよい。
【0036】
移動体4は、車両、バス、トラック、タクシー、ドローン、航空機、ロボット等、人や物を搬送可能なあらゆる移動手段として具現化される。この移動体4には、アンテナや無線ルータ、伝送情報を格納可能な記録媒体が実装されている。移動体4は、伝送情報をミリ波帯域(テラヘルツ帯域)で送受信する機能を備えている。また移動体4は、マイクロ波によるビーコンパケットを送受信する機能も備えている。移動体4は、このマイクロ波のビーコンパケットに、移動体4自身が情報源局2、宛先局3の近接位置に対して接近する上で必要な案内情報を重畳させた上でこれを周期的に発信する。
【0037】
移動体4がビーコンパケットに含めて発信する案内情報としては、移動体4の位置、移動体4の属性を示す情報が含まれている。移動体4の属性を示す情報を通じてビーコンパケットを受信した側は、発信元が移動体4であることを識別することが可能となる。また案内情報には、移動体4自らの速度や加速度といった移動状態も含められる。また、この案内情報には、移動体4が自身とミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つが含まれている。更にこの案内情報には、移動体4が提供可能な伝送情報のコンテンツの種別や名称、或いは移動体4が取得を望む伝送情報のコンテンツの種別や名称も記述されている。
【0038】
中継局5は、移動体4により搬送されてくる伝送情報をミリ波帯域で受信し、これを一時的に格納する。またこの中継局5は、この一時的に格納した伝送情報を他の移動体4にミリ波で送信し、他の移動体4に対して伝送してもらうためのいわゆる中継機能を果たす。中継局5は、例えばコンビニエンスストアやドラッグストア、銀行、郵便局、交番や自動販売機など、各地域エリアにおいてほぼ必ず設置される対象に対して設置される。実際にこの中継局5は、一般的な無線ルータとして具現化されていればよく、必要に応じて大容量データからなる伝送情報を格納可能な記録媒体を備えるものであってもよい。中継局5は、マイクロ波によるビーコンパケットを送受信する機能も備えている。中継局5は、このマイクロ波のビーコンパケットに、中継局5自身の近接位置に対して移動体4が接近する上で必要な案内情報を重畳させた上でこれを周期的に発信する。
【0039】
この中継局5が発信する案内情報としては、中継局5の位置、中継局5の属性を示す情報が含まれている。中継局5の属性を示す情報を通じてビーコンパケットを受信した側は、発信元が中継局5であることを識別することが可能となる。また、この案内情報には、中継局5が自局とミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つが含まれている。更にこの案内情報には、情報源局2が保有する伝送情報のコンテンツの種別や名称、更にはその宛先に関する情報も記述されている。
【0040】
総合制御サーバ10は、上述した情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5における過去、現在の位置を把握及び管理する。また総合制御サーバ10は、特に刻々と移動する移動体4の未来の位置を過去や現在の位置情報から予測する。また総合制御サーバ10は、情報源局2が保有する伝送情報、情報源局2から受信した移動体4が搬送過程にある伝送情報、中継局5が一時的に蓄積している伝送情報、更には宛先局3が受信を希望する伝送情報について、その内容、属性、種別等を把握、管理する機能を担う。
【0041】
総合制御サーバ10は、情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5と公衆通信網15を介して接続されており、いわゆるインターネットを介して互いに情報を送受信可能とされている。この総合制御サーバ10は、情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5に対して、公衆通信網15を介して各種情報のリクエストを送ることができる。このリクエストを受信した情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5は、総合制御サーバ10が要求する情報を公衆通信網15を介して送信する。係る方法に基づいて、この総合制御サーバ10は、自らが所望する情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5における位置に関する情報や伝送情報の内容、属性、種別等を取得することが可能となり、ひいてはこれらを管理することが可能となる。また総合制御サーバ10は、情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5に対して各種通知を送ることができ、ひいてはこれらを制御することも可能となる。
【0042】
なお、情報ネットワークインフラ基盤6においては、更にBB(ブロードバンド)接続基地局11を備えていてもよい。このBB接続基地局11は、情報源局2や中継局5が保有する大容量の伝送情報のコンテンツデータをミリ波帯域で受信し、これをクラウド上のサーバにアップロードする機能を担う。また、このBB接続基地局11は、クラウド上のサーバに保存されている容量の伝送情報のコンテンツデータをダウンロードし、これをミリ波帯域で中継局5や宛先局3へ送信する機能を担う。他にこのBB接続基地局11に対して、情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5の役割や機能を担わせるようにしてもよい。かかる場合には、このBB接続基地局11は、マイクロ波のビーコンパケットを送信する上で上述した案内情報をこれに含めてもよく、またマイクロ波のビーコンパケットに重畳されてきた上述した案内情報を解読することができる。
【0043】
次に本発明を適用した情報伝送システム1の動作について説明をする。以下説明する動作例は、図2に示すように情報源局2が保有する伝送情報を一の移動体4aが先ず受信し、一の移動体4aが中継局5の近接位置まで移動する。そして、一の移動体4aが中継局5に伝送情報を送信し、中継局5がその伝送情報を一時的に蓄積する。次にこの中継局5の近接位置まで走行してきた他の移動体4bが中継局5から伝送情報を中継し、宛先局3まの近接位置まで移動し、当該伝送情報を宛先局3に送信する。
【0044】
通常、情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5は、それぞれマイクロ波のビーコンパケットを発信している。各情報源局2、宛先局3、移動体4、中継局5が発信するビーコンパケットに含められる案内情報は、上述の通りである。中でも伝送情報を保有する情報源局2は、自らの位置に加え、保有する伝送情報の種別や名称、宛先も案内情報に含めたビーコンパケットを周期発信する。
【0045】
情報源局2から発信されたビーコンパケットは、マイクロ波の性質から見通し外(送受信点間が遠距離のため、ビルや山等により見通しの得られない地点間で用いられる通信)であっても100~1000mの範囲内を走行する移動体4aにより受信されることが期待される。移動体4aは情報源局から受信したビーコンパケットに含まれる案内情報から、自らの近傍に伝送情報を保有している情報源局2が存在することを識別することができ、またその伝送情報の種別や名称、宛先も識別することができる。
【0046】
移動体4aは、この案内情報からこの伝送情報を中継するか否かの判断を行うことになる。移動体4aが車両であれば、その判断は、車両の運転手が行うことになる。かかる場合には、案内情報を社内のナビゲーション情報として表示し、情報源局2が伝送情報を保有しており、宛先が何れであるかについて運転手に表示し、通知する。また情報源局2が移動体4aの現在位置を基点とした場合にどの位置にあるのかを運転手に表示し、通知する。
【0047】
移動体4aの運転手は、これらの案内情報を確認した上で、情報源局2の近傍まで接近し、伝送情報を中継しに行くか否かを判断する。情報ネットワークインフラ基盤6において、仮に移動体4が伝送情報の中継を担った場合に、何らかの特典を与えるルールを予め作っておくことにより、移動体4にとっても伝送情報の中継を担うことによるインセンティブが生まれる。移動体4aの運転手は、このようなインセンティブとの関係において伝送情報の中継を担うか否かを判断する。その結果、伝送情報の中継を担うと判断した場合には、移動体4aを情報源局2の近接位置に向けて運転することになる。このとき、情報源局2の近接位置に案内するために、情報源局2の位置情報に基づいたナビゲーション情報を表示するようにしてもよい。特に移動体4aの目的地が、伝送情報の宛先の近傍か、或いはその宛先まで途中まで方向が一緒の場合、多少時間を要しても伝送情報を中継しても大きな不利益は無く、しかも特典が付与されることから運転手にとってもメリットになる。一方、移動体4aの運転手は、伝送情報の中継を担わないと判断した場合は、受信した案内情報をスルーし、自らの目的地に向けて運転を継続することになる。
【0048】
移動体4aが仮に自動運転車又は半自動運転車の場合は、この伝送情報を中継するか否かの判断を運転手の意思にかかわらず、移動体4a側が自律的に判断を行うようにしてもよい。かかる場合には、移動体4aに対する情報源局2の相対的な位置関係に加え、移動体4aの目的地と伝送情報の宛先との関係、伝送情報の種別や名称、内容、更には、中継することにより与えられるインセンティブに基づいて中継するか否か判断する。そして、移動体4aが伝送情報を中継する旨を判断した場合、情報源局2に向けて必要に応じて方向転換し、情報源局2に向けて接近するように自律的な運転を実行していくことになる。
【0049】
情報源局2から発信されたマイクロ波からなるビーコンパケットは、情報源局2を中心として100~1000mの範囲内を走行する全ての移動体4aにより受信され、各移動体4aは、上述した中継するか否かの判断をそれぞれ行う。これらの各移動体4aの中から伝送情報の中継を希望する旨を判断した移動体4aのみが情報源局2に向けて接近する。
【0050】
ちなみに、各移動体4aは、マイクロ波帯域のビーコンパケットを受信するばかりではなく、自らもビーコンパケットを周期的に発信し続ける。この移動体4aから発信するビーコンパケットを受信した情報源局2は、情報源局2を中心として100~1000mの範囲内を走行する移動体4aが存在することを識別することができる。また、移動体4aから受信したビーコンパケットに含まれる案内情報を情報源局2が読み取ることにより、移動体4aの現在位置や移動状態(速度や加速度)を識別することができる。
【0051】
情報源局2におけるミリ波帯域の信号を受信可能な近接位置まで移動体4aが接近した場合、情報源局2から移動体4aに向けて伝送情報が送信される。通常、適性な伝送速度での伝送情報の伝送には、情報源局2が備えるアンテナと、移動体4aが備えるアンテナ間が適切な距離内に互いが近接することと、各々が備えるアンテナの最大放射方向が互いに対向するように調整する必要がある。移動体4aは、ビーコンパケットによって受信済みの、同情報源局2に関わる、ミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つを用いて、自らの位置ないしはアンテナの方向を調整することで、近接位置にある情報源局2から伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積する。移動体4aは、伝送情報を蓄積した状態で自らの目的地に向けて走行する。ミリ波帯のような非常に周波数が高い信号は、一般に通信に使える周波数幅(周波数帯域)を非常に広く使える利点があり、単位時間あたりに非常に多くの情報量を送受信することができる。またミリ波帯のような周波数の逆数である波長が非常に短いことから各種のデバイスが非常に小型化できることから、ひいては装置の小型化とデバイスの低消費電力が可能となる。
【0052】
なお、情報源局2は、複数の移動体4aが接近してきたとき、接近してきた複数の移動体4a全てに伝送情報を送信するようにしてもよいし、所望の一台又は複数台の移動体4aを選択して絞り込み、これのみに伝送情報を送信するようにしてもよい。所望の移動体4aを絞り込む場合には、例えば移動体4aが提示する伝送情報の伝送の代償として要求するコストに基づくものであってもよい。もしくは、例えば移動体4aの今までの移動経路に基づいて予測された今後の移動経路に基づくものであってもよい。かかる場合には、移動体4aから送られる案内情報に含まれる、宛先情報に基づくものであってもよいし、同移動体4aの以前の移動経路や移動習慣に関する情報が登録された、別途ネットワーク上に設けられたサーバ等に問い合わせることで得られる、同移動体4aの今後の移動経路予測結果に基づくようにしてもよい。この移動経路の予測を複数の移動体4a毎に実行する。そして、予測した移動経路が伝送情報の宛先とより近い移動体4aから順に選択するようにしてもよい。
【0053】
情報源局2から伝送情報を受信してこれを一時的に蓄積した移動体4aは、目的地に向けて走行するが、その過程においても周期的にマイクロ波帯域のビーコン信号を発信し続ける。
【0054】
このとき、移動体4aが中継局5から100~1000mの範囲内に入ったとき、中継局5から発信されたビーコンパケットは、当該移動体4aにより受信される。移動体4aは中継局5から受信したビーコンパケットに含まれる案内情報から、自らの近傍に伝送情報を中継してくれる中継局5が存在することを識別することができ、またその中継局5の位置を識別することができる。
【0055】
このとき、移動体4aから発信されるビーコンパケットも中継局5により受信される。この中継局5により受信されたビーコンパケットから、移動体4aが一次的に蓄積している伝送情報の種別や名称、宛先も識別することができる。
【0056】
移動体4aひいてはその運転手は、中継局5から受信した案内情報からこの伝送情報を中継局5に中継させるか否かの判断を行うことになる。移動体4aが目的地を目指す過程でその中継局5へ中継することが大きな迂回となり、目的地への到着時間が遅れてしまう場合には、その中継局5をスルーし、他の中継局5からのビーコンパケットの受信を待ち付けることになる。一方、その中継局5へ中継することが迂回であっても、特典との関係において当該中継局5へ中継させるメリットがあれば、そこに向けて移動体4aを接近させることになる。
【0057】
移動体4aが仮に自動運転車又は半自動運転車の場合は、この伝送情報をその中継局5に中継するか否かの判断を運転手の意思にかかわらず、移動体4a側が自律的に判断を行うようにしてもよい。かかる場合には、移動体4aに対する中継局5の相対的な位置関係に加え、移動体4aの目的地と伝送情報の宛先との関係、伝送情報の種別や名称、内容、更には、中継することにより与えられるインセンティブに基づいて当該中継局5に中継させるか否か判断することになる。そして、移動体4aが伝送情報を当該中継局5に中継させる旨を判断した場合、当該中継局5に向けて必要に応じて方向転換して接近するように自律的な運転を実行していくことになる。
【0058】
中継局5におけるミリ波帯域の信号を受信可能な近接位置まで移動体4aが接近した場合、移動体4aから中継局5に向けて伝送情報が送信される。中継局5は近接位置にある移動体4aから伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信してこれを一時的に蓄積する。移動体4aは、伝送情報の送信が完了すると、自らの目的地に向けて走行する。移動体4aから中継局5に向けてミリ波帯域による無線通信を行う場合も同様に、適性な伝送速度での伝送情報の伝送を行う上で、中継局5が備えるアンテナと、移動体4aが備えるアンテナ間が互いに適切な距離内に近接することと、各々が備えるアンテナの最大放射方向が互いに対向するように調整する必要がある。移動体4aは、ビーコンパケットによって受信済みの、同中継局5に関わる、ミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つを用いて、自らの位置ないしはアンテナの方向を調整することで、近接位置にある中継局5へ伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信する。
【0059】
伝送情報を一時的に蓄積した中継局5は、周期的にビーコンパケットを送信し続ける。中継局5から発信されたビーコンパケットは、マイクロ波の性質から100~1000mの範囲内を走行する移動体4bにより受信される。移動体4bは、中継局5から受信したビーコンパケットに含まれる案内情報から、自らの近傍に伝送情報を保有している中継局5が存在することを識別することができ、またその伝送情報の種別や名称、宛先も識別することができる。
【0060】
移動体4bは、この案内情報からこの伝送情報を中継するか否かの判断を行うことになる。移動体4bが車両であれば、その判断は、車両の運転手が行うことになる。かかる場合には、案内情報を社内のナビゲーション情報として表示し、中継局5が伝送情報を保有しており、宛先が何れであるかについて運転手に表示し、通知する。また中継局5が移動体4bの現在位置を基点とした場合にどの位置にあるのかを運転手に表示し、通知する。
【0061】
移動体4bの運転手は、これらの案内情報を確認した上で、中継局5の近傍まで接近し、伝送情報を中継しに行くか否かを判断する。情報ネットワークインフラ基盤6において、仮に移動体4が伝送情報の中継を担った場合に、何らかの特典を与えるルールを予め作っておくことにより、移動体4にとっても伝送情報の中継を担うことによるインセンティブが生まれる。移動体4bの運転手は、このようなインセンティブとの関係において伝送情報の中継を担うか否かを判断する。その結果、伝送情報の中継を担うと判断した場合には、移動体4bを中継局5の近接位置に向けて運転することになる。一方、移動体4bの運転手は、伝送情報の中継を担わないと判断した場合は、受信した案内情報をスルーし、自らの目的地に向けて運転を継続することになる。
【0062】
移動体4bが仮に自動運転車又は半自動運転車の場合は、この伝送情報を中継するか否かの判断を運転手の意思にかかわらず、移動体4b側が自律的に判断を行うようにしてもよい。かかる場合における自律的な判断方法と制御方法は、移動体4aが仮に自動運転車又は半自動運転車の場合における説明と同様であるため以下での説明を省略する。
【0063】
中継局5から発信されたマイクロ波からなるビーコンパケットは、中継局5を中心として100~1000mの範囲内を走行する全ての移動体4bにより受信され、各移動体4bは、上述した中継するか否かの判断をそれぞれ行う。これらの各移動体4bの中から伝送情報の中継を希望する旨を判断した移動体4bのみが中継局5に向けて接近する。
【0064】
ちなみに、各移動体4bは、マイクロ波帯域のビーコンパケットを受信するばかりではなく、自らもビーコンパケットを周期的に発信し続ける。この移動体4bから発信するビーコンパケットを受信した中継局5は、中継局5を中心として100~1000mの範囲内を走行する移動体4bが存在することを識別することができる。また、移動体4bから受信したビーコンパケットに含まれる案内情報を中継局5が読み取ることにより、移動体4bの現在位置や移動状態(速度や加速度)を識別することができる。
【0065】
中継局5におけるミリ波帯域の信号を受信可能な近接位置まで移動体4bが接近した場合、中継局5から移動体4bに向けて伝送情報が送信される。中継局5から移動体4bに向けてミリ波帯域による無線通信を行う場合も同様に、適性な伝送速度での伝送情報の伝送を行う上で、中継局5が備えるアンテナと、移動体4bが備えるアンテナ間が互いに適切な距離内に近接することと、各々が備えるアンテナの最大放射方向が互いに対向するように調整する必要がある。移動体4bは、ミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つを用いて、自らの位置ないしはアンテナの方向を調整することで、近接位置にある中継局5との間でミリ波帯域による無線通信を行う。
【0066】
なお、中継局5は、複数の移動体4bが接近してきたとき、接近してきた複数の移動体4b全てに伝送情報を送信するようにしてもよいし、所望の一台又は複数台の移動体4bを選択して絞り込み、これのみに伝送情報を送信するようにしてもよい。所望の移動体4bを絞り込む場合には、例えば移動体4bの今までの移動経路に基づいて予測した今後の移動経路に基づくものであってもよい。移動経路の予測方法は、上述した移動体4aの経路予測と同様である。
【0067】
中継局5から伝送情報を受信してこれを一時的に蓄積した移動体4bは、目的地に向けて走行するが、その過程においても周期的にマイクロ波帯域のビーコン信号を発信し続ける。
【0068】
このとき、移動体4bが宛先局3から100~1000mの範囲内に入ったとき、宛先局3から発信されたビーコンパケットは、当該移動体4bにより受信される。移動体4bは宛先局3から受信したビーコンパケットに含まれる案内情報から、自らの近傍に伝送情報の受信を希望する宛先局3が存在することを識別することができ、またその宛先局3の位置を識別することができる。
【0069】
このとき、移動体4bから発信されるビーコンパケットも宛先局3により受信される。この宛先局3により受信されたビーコンパケットから、移動体4bが一次的に蓄積している伝送情報の種別や名称、宛先も識別することができる。
【0070】
移動体4bひいてはその運転手は、宛先局3から受信した案内情報からこの伝送情報を宛先局3に送信するため、当該宛先局3に向けて移動体4bを接近させる。宛先局3におけるミリ波帯域の信号を受信可能な近接位置まで移動体4bが接近した場合、移動体4bから宛先局3に向けて伝送情報が送信される。宛先局3は近接位置にある移動体4bから伝送情報をミリ波帯域による無線通信により受信する。これにより、宛先局3は、所望していた伝送情報を得ることが可能となる。宛先局3と移動体4bとの間でミリ波帯域による無線通信を行う場合も同様に、宛先局3が備えるアンテナと、移動体4bが備えるアンテナ間が互いに適切な距離内に近接することと、各々が備えるアンテナの最大放射方向が互いに対向するように調整する必要がある。移動体4bは、ミリ波帯域で通信可能となる正確な絶対位置又は相対位置、前記位置において使用すべき適切なミリ波帯アンテナの利得ないしは方向性に関わる情報、適性な受信レベルないしは最低受信可能レベルの情報の、少なくとも何れか一つを用いて、自らの位置ないしはアンテナの方向を調整することで、近接位置にある宛先局3との間でミリ波帯域による無線通信を行う。
【0071】
なお、宛先局3は、この伝送情報を受信した後、情報源局2から公衆通信網15を介して暗号鍵を受信するようにしてもよい。宛先局3は、伝送情報を受信した暗号鍵に基づいて開くことが可能となる。これにより、伝送情報自体が守秘性の高い情報である場合、非特定人に誤って送信された場合に情報の流出を防ぐことが可能となる。
【0072】
なお、本発明を適用した情報伝送システム1は、上述した実施の形態に限定されるものでは無い。例えば図3に示すように、中継局5を介することなく、移動体4間において伝送情報を直接送受信するようにしてもよい。
【0073】
かかる場合には、情報源局2から受信した伝送情報を一時的記憶している移動体4aは、目的地に向けて走行するが、その過程においても周期的にマイクロ波帯域のビーコン信号を発信し続ける。
【0074】
このとき、移動体4aが他の移動体4bから100~1000mの範囲内に入ったとき、移動体4bも同様にビーコンパケットを周期的に発信し続けているため、当該移動体4bから発信されたビーコンパケットは、移動体4aにより受信される。移動体4aは移動体4bから受信したビーコンパケットに含まれる案内情報から、自らの近傍に伝送情報を中継してくれる移動体4bが存在することを識別することができ、またその移動体4bの位置を識別することができる。
【0075】
このとき、移動体4aから発信されるビーコンパケットも移動体4bにより受信される。この移動体4bにより受信されたビーコンパケットから、移動体4aが一次的に蓄積している伝送情報の種別や名称、宛先も識別することができる。
【0076】
移動体4aひいてはその運転手は、移動体4bから受信した案内情報からこの伝送情報を移動体4bに中継させるか否かの判断を行うことになる。同様に移動体4bひいてはその運転手は、移動体4aから受信した案内情報からこの伝送情報を移動体4aから中継するか否かの判断を行うことになる。その結果、中継により付与される特典との関係において、互いに伝送情報を中継させるメリットがあれば、移動体4a、4bは互いに近接する方向に動き、ミリ波帯域の信号を送受信可能な近接位置まで互いに接近した上で、移動体4aから移動体4bに伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信する。伝送情報を受信した移動体4bは、その後同様に宛先局3に向けて走行することになる。
【0077】
このとき、図4に示すように移動体4aと移動体4bとの間に他の1以上の移動体4がこの伝送情報を中継させる場合も同様の処理動作に基づいて実行する。また、この移動体4間で伝送情報を送受信する場合に加え、途中で中継局5を介して伝送情報を随時中継させるようにしてもよいことは勿論である。
【0078】
また、本発明を適用した情報伝送システム1は、情報源局2から受信した伝送情報を一時的記憶している移動体4aが他の移動体4や中継局5に伝送情報を中継させることは必須ではない。仮に移動体4aの目的地が、宛先局3を通過するのであれば、移動体4aはそのまま宛先局3へ直接的に伝送情報をミリ波帯域による無線通信により送信するようにしてもよい。
【0079】
本発明においては、上述した中継や伝送を、更に総合制御サーバ10による制御の下で実行するようにしてもよい。
【0080】
総合制御サーバ10は、公衆通信網15を介して情報源局2、宛先局3、中継局5、及び移動体4の位置情報並びにこれらが保有し又は一時的に蓄積する伝送情報の各状況を取得する。総合制御サーバ10は、図5に示すように、取得した位置情報並びに伝送情報の各状況に基づいて、情報源局2、宛先局3、中継局5、及び移動体4に対して案内通知を送信する。この案内通知には情報源局2の近接位置、宛先局3の近接位置、中継局5の近接位置に移動体4をそれぞれ案内するための情報が含まれており、例えば移動体4の現在位置に対するこれら近接位置の相対的位置関係や最短経路に関する情報をこれに含めてもよい。
【0081】
これにより移動体4は、マイクロ波帯域の案内情報に加え、この案内通知により、情報源局2、宛先局3、中継局5の各近接位置へ誘導されることが可能となる。なお、この総合制御サーバ10は、移動体4同士で伝送情報の送受信を行わせる場合においても同様に、互いの移動体4に対して案内通知を送り続けることにより互いに近接する位置へ誘導させることが可能となる。
【0082】
本発明においては、この情報源局2の近接位置、宛先局3の近接位置、中継局5の近接位置に移動体4をそれぞれ案内する際には、マイクロ波帯域の案内情報を用いることなく、全てこの総合制御サーバ10から送信されてくる案内通知に基づいて実現してもよい。
【0083】
上述した構成からなる本発明によれば、情報源局2から宛先局3へ伝送情報を伝送する際に、仮にその伝送情報が大容量コンテンツからなるものであっても、これを移動体4を介して中継させることにより、低コストでしかも高速に伝送することが可能となる。この移動体4による中継は、マイクロ波帯域のビーコンパケットに含められる案内情報に基づいてサポートされることから円滑な中継を実現することができる。
【0084】
特に移動体4にこの伝送情報を担わせる上で問題になるのが移動体4の迂回である。例えば図6に示すように、移動体4bが目的地としての宛先局3へ向かう過程において、ちょうど移動体4aから中継局5に中継されてきた伝送情報が一時的に蓄積されているものとする。かかる場合において中継局5からのマイクロ波帯域のビーコンパケットに含まれる案内情報、或いは総合制御サーバ10から送信されてくる案内通知を移動体4bが受信したとき、これを無視して目的地(宛先局3)に直行するか、或いはわざわざ迂回して中継局5の近接位置まで接近し、伝送情報を中継した上で宛先局3へ回るかを考えることになる。いち早く目的地に到着したいと誰もが思う中で、やはり伝送情報を中継することによるインセンティブがこれを上回れば多少時間を要しても迂回して中継局5まで行き伝送情報を中継する選択をすることになる。このようなインセンティブの種類としては、例えば、クレジットカードのポイントやガソリンスタンドによる給油の差異のポイント等が考えらえるが、このインセンティブを上手く盛り込むことで情報ネットワークインフラ基盤6を好適に作動させるが可能となる。
【0085】
ちなみに、上述の例では、マイクロ波帯域のビーコンパケットを周期的に各情報源局2、宛先局3、中継局5、及び移動体4から発信する場合を例にとり説明をしたがこれに限定されるものでは無い。ビーコンパケットを送受信する代わりに、マイクロ波帯域の無線信号であればこれを各情報源局2、宛先局3、中継局5、及び移動体4間で互いに送受信するようにしてもよく、その無線信号に上述した案内信号を含ませておくことにより、上述度と同様の移動体4の誘導制御を実現することができる。
【0086】
なお、上述した説明において、移動体4としてはあくまで車両を例に挙げて説明をしたが、これに限定されるものでは無く、例えば図7に示すようなロボットを移動体4として用いてもよい。病院、オフィス等のビル内、駅構内、地下街等において、情報を収集したい、もしくは配信したい者が存在する場合、ロボットとしての移動体にその役目を担わせることができる。情報を収集したい、もしくは配信したい者が、マイクロ波の電波が届く近隣最大数百メートル程度の固定型ロボットないしは移動型ロボットからなる移動体にその旨を周知することで、これらを動作させる。
【0087】
図7に示すように、ロボットを移動体4に用いる場合には、例えば情報源局2と宛先局3が車両を使わなくてもよい程度に近い場合において好適であり、例えばこれらが何れも同じビル内に入っている場合において好適である。かかる場合も同様にロボットとしての移動体4aが情報源局2からミリ波帯域の伝送情報を受信する。この移動体4aがそのまま宛先局3へ移動するか、或いは他の移動体4にこの伝送情報を中継させた上で、最後に宛先局3へ伝送情報をミリ波帯域で送信する。かかる場合において情報源局2は、マイクロ波帯域の無線信号を移動体4に送信することでこれを呼び寄せることができる。また移動体4が宛先局3へ伝送情報を送信する際も、移動体4から発信されたマイクロ波帯域の無線信号と、宛先局3から送信される無線信号を通じて、当該宛先局3の位置を確認することができる。また、情報源局2と宛先局3の位置が近いため、互いにマイクロ波帯域の無線信号を通じてデータの受信確認を行うことができ、また鍵交換を行うこともできる。
【0088】
例えば図8に示すようにミリ波を通さないような壁の角部51があるとき、情報源局2から角部51までを移動するロボットからなる移動体4aと、角部51から宛先局3までの移動するロボットからなる移動体4bにより、伝送情報をバケツリレー式に伝送するようにしてもよい。
【0089】
またバケツリレー式に限ることなく、基本は、情報源局2と直接ミリ波通信が可能な位置にある移動型ロボットからなる移動体4aが、伝送情報を情報源局2から受信し、当該移動体4aが角部51周辺まで移動する。この角部51から直接ミリ波通信が可能な位置にある移動型ロボットからなる移動体4bが存在するとき、移動体4aは、この移動体4bに対して伝送情報をミリ波帯域において送信する。伝送情報を受信した移動体4bは、宛先局3と直接ミリ波通信が可能な場所まで移動し、伝送情報を宛先局3へ届ける、そしてこの動作を定期的、不定期的に繰り返すことで、情報源局2と宛先局3と間で仮想的に広帯域なミリ波伝送路を形成することが可能となる。
【0090】
情報源局2からミリ波帯域で伝送情報を受信した移動体4aは角部51まで移動し、同じくミリ波帯域でこの伝送情報を移動体4bに送信する。移動体4bはこの伝送情報を受信し、宛先局3まで移動して伝送情報を渡す。移動体4aと移動体4bはこの動作を繰り返し実行する。移動体4a、4bと情報源局2、宛先局3間における互いの中継は、上述と同様に互いに送受信するマイクロ波帯域の無線信号を介して制御されることになる。
【0091】
このとき、マイクロ波帯域を通じて互いに送受信する案内情報に、互いの位置に関する情報、相対的な距離に関する情報、ミリ波帯域の信号の受信感度及び受信レベルに関する情報、ミリ波帯域による無線通信を行うためのアンテナの設置位置又は方向に関する情報、これとミリ波帯を用いて通信する場合に適切な通信相手となるアンテナの相対的な位置や方向に関する情報、ミリ波帯域による無線通信を行う場合に得られていることが望ましい受信電力レベルに関する情報の何れか1以上を含めるようにしてもよい。
【0092】
移動体4は、相手側から受信した案内情報に含められたこれら各情報(互いの位置に関する情報、相対的な距離に関する情報、ミリ波帯域の信号の受信感度及び受信レベルに関する情報、ミリ波帯域による無線通信を行うためのアンテナの設置位置又は方向に関する情報、これとミリ波帯を用いて通信する場合に適切な通信相手となるアンテナの相対的な位置や方向に関する情報、ミリ波帯域による無線通信を行う場合に得られていることが望ましい受信電力レベルに関する情報の何れか1以上)に基づいてミリ波帯域による無線通信を実現するための処理動作を実行する。
【0093】
例えば、互いの位置に関する情報、ないしは相対的な距離に関する情報を受信することで、ミリ波帯域の信号が到達可能な距離まで接近するように移動体4を移動させることができる。この位置に関する情報については、情報源局2や移動体4がGPS等や測位を目的とした手段によって取得した情報を使ってもよいし、また移動体が備えるジャイロセンサ等の各種加速度センサ等によって自律的に把握している情報を使っても良い。また相対的な距離については、レーザーレンジング等の測距技術を活用して得ることができる。また、情報源局2や移動体4が備えるミリ波帯域による無線通信を行うためのアンテナの設置位置又は方向に関する情報の他、これとミリ波帯を用いて通信する場合に適切な通信相手となるアンテナの相対的位置や方向に関する情報を受信することで、より正確に移動体4は安定して情報源局2とミリ波通信を実現する場所に移動することが可能となり、更にミリ波帯域の信号の受信感度及び適性な受信レベルに関する情報を受信することで、ミリ波帯域の信号がより適切な受信レベルに達するように移動局は位置の微調整や方向の調整行うことができる。
【0094】
このような情報を移動体4間で互いに送受信することにより、互いのアンテナ指向性が適切に向き合っているか、互いの距離が適正か、もしくは改善可能か確認しつつ、より適切となるように移動体4の位置や方向を修正し、移動することが可能となる。
【0095】
なお、本発明においては、ミリ波帯域の無線通信により伝送情報を送受信する場合には、以下に説明する方法に基づいて実行するようにしてもよい。
【0096】
図9は、移動体4と固定局(情報源局2、宛先局3、中継局5)との無線通信を行う場合におけるシーケンス図を示している。以下の説明においては、固定局として中継局5を適用する場合を例にとる。
【0097】
移動体4には、ミリ波帯域の無線通信を行うミリ波通信部31、マイクロ波帯域の無線通信を制御するマイクロ波通信制御部32、更には移動体4における各種制御を行うための制御部33とを有している。
【0098】
また固定局(情報源局2、宛先局3、中継局5)は、移動体4とのミリ波帯域の無線通信を行うミリ波通信部21と、マイクロ波による無線通信を制御するマイクロ波通信制御部22とを有している。
【0099】
先ずステップS11において、移動体4と中継局5の双方が保有又は所望するコンテンツ情報、移動体4と中継局5間の絶対的位置関係又は相対的位置関係、ミリ波帯域による通信に関わる仕様情報、アンテナ位置や指向性、更には適性な受信電力レベル(RSSI値)等の確認を行う。これらの確認作業は、マイクロ波通信制御部32とマイクロ波通信制御部22間において、マイクロ波帯域の無線通信を通じて行う。
【0100】
次にステップS12に移行し、移動体4におけるマイクロ波通信部32から制御部33にむけて移動体4が向かうべき移動先に関わる情報を送信する。かかる移動先に関わる情報は、移動体4が中継局5との間でミリ波帯域の無線信号を送受信することができる絶対位置に関わる情報や経路を示すものである。制御部33は、この移動先に関わる情報を受信し、移動体4が中継局5との間でミリ波帯域の無線信号を送受信することができる距離に至るまで当該移動体4を移動させる(ステップS13)。
【0101】
次にステップS14へ移行し、移動体4と中継局5は、互いにミリ波帯域の無線信号を受信できるか否かを確認する、ミリ波シグナリング確認を実行する。このミリ波シグナリング確認は、移動体4におけるミリ波通信部31と、中継局5におけるミリ波通信部21間にて行い、必要に応じて何回か繰り返し実行する。ミリ波通信部31は、このミリ波シグナリング確認を通じて相手側(中継局5)から取得したミリ波帯域の信号受信レベルを確認し、通常は上述のようにして得られた信号受信レベルに応じてミリ波通信部31とミリ波通信部32の間で通信方式が決定され、S21のミリ波データ転送手続きの開始に至るが、図9に示すように、S21への自動的な移行を一次保留して、ミリ波シグナリング確認を繰り返し、得られたミリ波受信レベル情報を制御部33へ送ってもよい。
【0102】
その場合、次にステップS15に移行し、実際のミリ波帯域の信号受信レベル(以下、実受信レベルという。)と、適正な受信レベル(以下、適正受信レベルという。)とを比較確認する。
【0103】
次にステップS16へ移行し、仮に実受信レベル<適正受信レベルである場合、実受信レベルが適正受信レベルに至っていないため、このままではミリ波帯域の無線信号を確実に送受信することができなくなる虞がある。かかる場合には、移動体4の位置を微調整し、或いは方向を微調整することで結果的に備えるミリ波アンテナの指向を微調整する。またこの微調整の過程においても引き続き上述したミリ波シグナリンク確認を継続して行うとともに、ミリ波通信部31から相手側(中継局5)から取得したミリ波帯域の信号受信レベルに関するミリ波受信レベル情報を制御部33へ送り続ける。このステップS16の動作の間、ミリ波帯域による伝送情報の送受信を行うことなく待機し続ける。
【0104】
仮に実受信レベル≧適正受信レベルである場合は、実受信レベルが適正受信レベルを上回っているため、このまま無線通信を行うことで、ミリ波帯域の無線信号を確実に送受信することができる。かかる場合には、ミリ波帯域による伝送情報の送受信を開始することになるが、これを確実に伝送するために移動体4の移動を一旦停止させる。そして移動体4の移動を停止させた後にミリ波帯域による伝送情報の送受信を行うことになる。
【0105】
かかる場合には、ステップS18へ移行し、制御部33からマイクロ波通信制御部32に向けてミリ波帯域による通信を介する旨を通知する。マイクロ波通信制御部32は、中継局5におけるマイクロ波通信制御部との間でミリ波帯域による伝送情報の送受信を行うことを確認し合う(ステップS19)。この確認は、マイクロ波帯域の無線通信を通じて行う。
【0106】
次にステップS20に移行し、移動体4において、マイクロ波通信制御部32からミリ波通信部31に対してミリ波帯域による伝送情報の送受信の開始を指示するためのミリ波通信開始命令を通知する。同様に中継局5側においても、マイクロ波通信制御部22からミリ波通信部21に対してミリ波帯域による伝送情報の送受信の開始を指示するためのミリ波通信開始命令を通知する。
【0107】
次にステップS21に移行し、移動体4と中継局5との間でミリ波帯域による伝送情報の送受信を開始する。ミリ波帯域による伝送情報の送受信の終了後、ステップS22に移行し、マイクロ波通信制御部32とマイクロ波通信制御部22との間で、伝送情報のデータ終了を互いに確認し合う。この確認後、ミリ波通信部31から制御部33に向けて、移動体4の再移動を許可するための通知を行う(ステップS23)。当該通知を受けた制御部33は、次の目的地に向けた移動を開始することになる(ステップS24)。
【0108】
上述した動作を実行することにより、ステップS16に示すように、実受信レベル<適正受信レベルである場合、ミリ波帯域による伝送情報の送受信を行うことなく待機し続ける。これにより、移動体4の位置やアンテナ指向性の調整が終了してないまま、拙速にミリ波通信を開始してしまうのを防止することができ、伝送情報の転送完了が結果として遅れてしまうのを防止できる。
【符号の説明】
【0109】
1 情報伝送システム
2 情報源局
3 宛先局
4 移動体
5 中継局
6 情報ネットワークインフラ基盤
10 総合制御サーバ
11 BB接続基地局
15 公衆通信網
51 角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9