(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】油溶性着色剤
(51)【国際特許分類】
C09B 47/04 20060101AFI20241205BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09B47/04
C09K3/00 104B
(21)【出願番号】P 2020111493
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000180081
【氏名又は名称】株式会社ザイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】池田 学
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-093958(JP,A)
【文献】特開2017-021346(JP,A)
【文献】特開2011-039220(JP,A)
【文献】特開2011-138065(JP,A)
【文献】特開2000-351929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 47/04
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅-フタロシアニン系染料
としてSolvent Blue 70と、
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤である添加剤と、を含む、油溶性着色剤。
【請求項2】
前記銅-フタロシアニン系染料と前記添加剤との質量比が、1~100:5~500である、請求項1に記載の油溶性着色剤。
【請求項3】
前記銅-フタロシアニン系染料の含有量が0.01質量%~10質量%である、請求項1または2に記載の油溶性着色剤。
【請求項4】
前記添加剤の含有量が0.05質量%~50質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の油溶性着色剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯油やナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、パラフィン系溶剤、フッ素系溶剤中において銅-フタロシアニン系染料を安定的に溶解させる技術に関し、特に、木材等の着色を目的とした油溶性着色剤に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅部材等に用いられる木材には、腐朽やしろありの食害を予防するために木材保存剤を処理する場合がある(例えば、特許文献1)。木材保存剤は、浸漬や吹き付け、加圧注入といった手法により木材に処理される。
【0003】
木材保存剤を処理する際、無処理材と処理材の識別をしやすくするために木材保存剤に着色剤を添加する場合がある。着色による無処理材と処理材の識別は、長期にわたって可能であることが望ましいことから、着色剤は堅牢性が高いほうが好まれる。
【0004】
木材保存剤向けの着色剤には顔料、染料、食用色素等を用いるのが一般的であるが、その選定には木材保存剤の性状を考慮する必要がある。例えば、灯油やナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、パラフィン系溶剤、フッ素系溶剤等をベース溶剤とする油溶性木材保存剤の場合、顔料では沈殿を生じやすく均一な着色が難しいことから、溶解しやすく均一な着色が可能な染料が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
染料は堅牢性が顔料よりも劣るため、長期にわたる無処理材と処理材の識別には不向きであるが、比較的長期の識別に適した染料としては、銅-フタロシアニン系染料が挙げられる。ただし、銅-フタロシアニン系染料は、油溶性木材保存剤でベース溶剤として用いられる灯油やナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、パラフィン系溶剤等に対して溶解しにくいことから、溶解性の高いN-メチルピロリドンやエタノール、イソプロパノール等の補助溶剤を添加して溶解させ、着色性を高める必要があった。
【0007】
グリコールエーテル類も銅-フタロシアニン系染料を溶解させることは可能であるが、N-メチルピロリドンやエタノール、イソプロパノールと比べると溶解力は劣る。
【0008】
しかしながら、銅-フタロシアニン系染料に対して高い溶解力を示すN-メチルピロリドンやエタノール、イソプロパノールであっても、灯油やナフテン系溶剤等のベース溶剤中では銅-フタロシアニン系染料が時間の経過とともに沈殿してしまう懸念があった。
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明は、灯油やナフテン系溶剤等のベース溶剤中における銅-フタロシアニン系染料の溶解性を向上させた、着色性の高い油溶性着色剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の油溶性着色剤は、銅-フタロシアニン系染料と、フェノール水酸基を有する酸化防止剤、フェノール水酸基を有する紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む。
【0011】
前記銅-フタロシアニン系染料と前記添加剤との質量比が、1~100:5~500であってもよい。
【0012】
前記銅-フタロシアニン系染料の含有量が0.01質量%~10質量%であってもよい。
【0013】
前記添加剤の含有量が0.05質量%~50質量%であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油溶性木材保存剤で一般的に用いられる灯油やナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、パラフィン系溶剤、フッ素系溶剤中における銅-フタロシアニン染料の溶解性を向上させた、着色性の高い油溶性着色剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器を逆さまにして底を撮影した写真である。
【
図2】貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器を逆さまにして底を撮影した写真である。
【
図3】貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器を逆さまにして底を撮影した写真である。
【
図4】貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器の側面を撮影した写真である。
【
図5】貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器の側面を撮影した写真である。
【
図6】貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器の側面を撮影した写真である。
【
図7】貯蔵して5日後の油溶性着色剤を撹拌せずに紙を浸漬させて取り出した後の状態を撮影した写真である。
【
図8】貯蔵して5日後の油溶性着色剤を撹拌せずに紙を浸漬させて取り出した後の状態を撮影した写真である。
【
図9】貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤の入った透明容器を逆さまにして底を撮影した写真である。
【
図10】貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤の入った透明容器の側面を撮影した写真である。
【
図11】貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤を用いて処理した木材の外観写真である。
【
図12】貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤を用いて処理した木材の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る油溶性着色剤について説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0017】
本発明の油溶性着色剤は、銅-フタロシアニン系染料と、フェノール水酸基を有する酸化防止剤、フェノール水酸基を有する紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種の添加剤と、を含む。
【0018】
[銅-フタロシアニン系染料]
銅-フタロシアニン系染料は、青色または緑色の染料で、銅(Cu)を中心金属としたフタロシアニンである。例えば、直接染料(銅フタロシアニンをスルホン化した染料、C.I.Direct Blue 86等)、建染め染料(コバルトフタロシアニンを部分スルホン化したC.I.Vat Blue 29等)、硫化染料(メルカプト基-SHまたはチオシアノ基-SCNを導入したC.I.Sulphur Green 14等)、カチオン染料(第四級アンモニウム基を導入したAstrazon Blue 6 GLL.等)、アゾイック染料(ピラゾロン環を導入したC.I.Azoic Coupling Component 108等)、反応染料(モノクロロトリアジニル基、トリクロロピリミジニル基、ビニルスルホニル基等の反応基を導入したC.I.Reactive Blue 3、14、15、18、21、25、38、41、C.I.Reactive Green 5等)、銅フタロシアニンにスルファミド基-NHSO2を経て長鎖アルキル基を置換した油溶染料(Solvent blue 70等)等が挙げられる。
【0019】
本発明では、油溶性着色剤に導入することのできる銅-フタロシアニン系染料として、Solvent Blue 70、Solvent Blue 44、Solvent Blue 25、Solvent Blue 38、Solvent Blue 89等を用いることができる。
【0020】
[添加剤]
本発明の油溶性着色剤に含めることのできる添加剤としては、フェノール水酸基を有する酸化防止剤、フェノール水酸基を有する紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらは1種のみを含んでもよく、酸化防止剤と紫外線吸収剤とを併用する等、2種以上を含んでもよい。さらに、酸化防止剤として2種類以上の酸化防止剤を含んでもよく、紫外線吸収剤についても同様である。
【0021】
例えば、構造中にトリアジンを有するトリアジン系紫外線吸収剤は、極めて高い紫外線吸収能力を有し、揮発性が非常に低く、添加剤として樹脂との相溶性も良い。そのため、厳しい加工条件および高い耐候性が求められる用途に適している。
【0022】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、Tinuvin 477、Tinuvin 479、Tinuvin 400、Tinuvin 405、Tinuvin 460(いずれもBASF社製)等を用いることができる。また、フェノール水酸基を有する酸化防止剤またはフェノール水酸基を有する紫外線吸収剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)としてVulkanox BHT、Irganox 1076、Irganox 1010(いずれもBASF社製)、アデカスタブAO50、アデカスタブ1413(いずれも(株)アデ
カ製)等を用いることができる。
【0023】
油溶性着色剤が含む銅-フタロシアニン系染料と添加剤との質量比は、1~100:5~500の範囲内であることにより、銅-フタロシアニン染料の溶解性を向上させた、着色性の高い油溶性着色剤を得ることができる。
【0024】
銅-フタロシアニン系染料と添加剤との質量比が上記の範囲内から外れると、銅-フタロシアニン染料の溶解性が不十分となり、十分な着色性が得られないおそれや、銅-フタロシアニン染料が沈降してしまうおそれがある。
【0025】
そして、油溶性着色剤の銅フタロシアニン系染料の含有量が0.01質量%~10質量%であることにより、着色性の高い油溶性着色剤を得ることができる。
【0026】
銅-フタロシアニン系染料の含有量が上記の範囲内から外れると、十分な着色性が得られないおそれや、油溶性着色剤の製造コストが大幅に上がってしまうおそれがある。
【0027】
また、油溶性着色剤の添加剤の含有量が0.05質量%~50質量%であることにより、銅-フタロシアニン染料の溶解性を十分に向上させることができ、低コストで着色性の高い油溶性着色剤を得ることができる。
【0028】
添加剤の含有量が上記の範囲内から外れると、銅-フタロシアニン染料の溶解性が不十分となり、十分な着色性が得られないおそれや、油溶性着色剤の製造コストが大幅に上がってしまうおそれがある。
【0029】
(その他の構成)
本発明の油溶性着色剤は、銅-フタロシアニン系染料、添加剤のほかに、他の構成を含んでもよい。例えば、防腐剤、防蟻剤、銅-フタロシアニン系染料以外の染料や食用色素、顔料、フェノール水酸基を有する酸化防止剤以外の酸化防止剤、フェノール水酸基を有する紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤、光安定剤(HALS)、酸化防止剤、金属石鹸、防カビ剤、難燃剤、コーティング剤、撥水剤、アルキド樹脂等の樹脂成分、ナフテン系溶剤、灯油、イソパラフィン系溶剤、フッ素系溶剤、グリコールエーテル類、グリコール類、ナフテン系溶剤、灯油やイソパラフィン系溶剤、フッ素系溶剤等のベース溶剤等を含むことができる。
【0030】
例えば、ナフテン系溶剤は、ナフテンを主成分とした炭化水素溶剤である。木材保存剤等にベース溶剤として用いられている溶剤であり、銅-フタロシアニン系染料や添加剤等の含有量を調整することができる。
【0031】
本発明の油溶性着色剤は、防腐成分や防虫成分として用いられる成分と混合してもよい。
【0032】
(防腐成分)
防腐成分としては、例えばジデシルジメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム塩、シプロコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、エポキシコナゾール等のトリアゾール系化合物、ナフテン酸亜鉛、バーサチック酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸等の有機亜鉛化合物、およびブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ジヨードメチルパラトリルスルホン等のヨウ素系化合物等が挙げられる。
【0033】
(防虫成分)
防虫成分としては、例えばピレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、ビフェントリン、ペルメトリン、シフェノトリン、メトフルトリン、シフルトリン等のピレスロイド及び合成ピレスロイド系化合物、イミダクロプリド、アセタミプリド等のネオニコチノイド系化合物、フィプロニル、ピリプロール等のフェニルピラゾール系化合物、クロルフェナピル、クロルフルアズロン、クロラントラニリプロール、ビストリフルロン、ブロフラニリド等が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
〈油溶性着色剤の製造〉
銅-フタロシアニン系染料としてSolvent blue 70、トリアジン系紫外線吸収剤としてTinuvin 477またはTinuvin479またはTinuvin400、ベース溶剤として灯油またはナフテン系溶剤である分留性状140℃~350℃の範囲にある脂肪族炭化水素系溶剤、またはイソパラフィン系溶剤である分留性状140℃~350℃の範囲にあるイソパラフィン系溶剤を使用し、トリアジン系紫外線吸収剤を用いることによる銅-フタロシアニン系染料の溶解性の効果を検証するべく、表1~表3に示す配合により、それぞれ実施例1~18、比較例1~9の油溶性着色剤を製造した。具体的には、容器にベース溶剤である灯油またはナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤以外の各原料をそれぞれ撹拌投入して混合・均一化した後、ベース溶剤を追加投入して油溶性着色剤を作製した。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
〈トリアジン系紫外線吸収剤による銅-フタロシアニン系染料の溶解性の検証〉
表1から表3に示す配合により作製した実施例1~18、比較例1~9の油溶性着色剤をそれぞれポリプロピレン製容器に移し、常温にて5日間貯蔵した。貯蔵して5日後の油溶性着色剤の外観を観察し、銅-フタロシアニン系染料の沈殿の有無や油溶性着色剤の色味を評価した。これらの評価結果を表4~表6に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
図1から
図3に、貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器を逆さまにして底を撮影した写真を示す。
図1~3(a)は、それぞれ表1~3の実施例2、8、14の油溶性着色剤の結果であり、銅-フタロシアニン系染料の沈殿が抑えられていることで色が薄い結果となった。一方で、
図1~3(b)は、表1~3の比較例1、2、4、5、7、8の油溶性着色剤の結果であり、銅-フタロシアニン系染料の沈殿による付着物が確認された。
【0044】
また、
図4~6に、貯蔵して5日後の油溶性着色剤の入った透明容器の側面を撮影した写真を示す。
図4~6は、それぞれ表1~3の実施例2、4、6、8、10、12、14、16、18及び比較例1~9の油溶性着色剤の結果である。実施例2、4、6、8、10、12、14、16、18では、銅-フタロシアニン系染料の沈殿が抑えられているため、色が濃い結果となった。一方で、比較例1~9は、銅-フタロシアニン系染料が沈殿して容器の側面に付着または底に溜まったことにより、実施例2、4、6、8、10、12、14、16、18よりも色が薄くなった。
【0045】
図7~8は、それぞれ表1~2の試験において貯蔵して5日後の油溶性着色剤を撹拌せずに紙を浸漬させて取り出した後の状態を写真で示す。
図7~8の比較例1、2、4、5は、液中で銅フタロシアニン系染料が沈殿しているため、無着色と同等または着色が薄い状態となったのに対し、実施例2、8では濃い着色状態となった。
【0046】
表4~6、
図1~8の結果より、トリアジン系紫外線吸収剤を共存させることにより、N-メチルピロリドンやエタノール、イソプロパノール等の補助溶剤を用いなくても、銅-フタロシアニン系染料の溶解性を向上させることができ、その結果、銅-フタロシアニン系染料の沈殿を防止し、貯蔵後も色味が濃く発色性を維持した油溶性着色剤を得ることができた。
【0047】
〈銅-フタロシアニン系染料で着色した油溶性木材保存剤の製造〉
銅-フタロシアニン系染料としてSolvent blue 70又はSolvent blue 44、トリアジン系紫外線吸収剤としてTinuvin 477またはTinuvin 479、を使用し、トリアジン系紫外線吸収剤を用いることによる木材保存剤中における銅-フタロシアニン系染料の溶解性の効果を検証するべく、表7に示す配合により、実施例19~26、比較例10~15の油溶性木材保存剤を、表8に示す配合により、実施例27、28、比較例16の油溶性木材保存剤をそれぞれ製造した。具体的には、容器にベースであるナフテン系溶剤以外の各原料をそれぞれ撹拌投入して溶解させた後、ベース溶剤を追加投入して油溶性木材保存剤を作製した。
【0048】
なお、グリコールエーテル系溶剤は、溶解力を上げるために補助溶剤として用いるものであり、2-エチルヘキサン酸亜鉛は、薬剤が木材に浸透した度合いを測定するために用いるものであり、2-エチルヘキサン酸は、防蟻成分の安定剤として用いるものである。
【0049】
【0050】
【0051】
〈トリアジン系紫外線吸収剤による銅-フタロシアニン系染料の溶解性の検証〉
表7に示す配合により作製した実施例19~26、比較例10~15の油溶性木材保存剤、表8に示す配合により作成した実施例27、28、比較例16の油溶性木材保存剤をそれぞれ透明容器に移し、40℃の恒温槽にて5日間貯蔵した。貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤の外観を観察し、銅-フタロシアニン系染料の沈殿の有無や油溶性木材保存剤の色味を評価した。表7の評価結果を表9に、表8の評価結果を表10に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
表9の結果について、
図9に貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤の入った透明容器を逆さまにして底を撮影した写真を示す。
図9(a)は、比較例11の油溶性木材保存剤の結果であり、銅-フタロシアニン系染料の沈殿により、色が濃くなった。一方で、
図9(b)は、実施例19の油溶性木材保存剤の結果であり、銅-フタロシアニン系染料の沈殿が無いことで、
図9(a)よりも色が薄い結果となった。
【0055】
また、表9の結果について、
図10に貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤の入った透明容器の側面を撮影した写真を示す。
図10(a)は、比較例11の油溶性木材保存剤の結果であり、銅-フタロシアニン系染料が沈殿して容器の底に溜まったことにより、銅-フタロシアニン系染料が分離して色が薄くなった。一方で、
図10(b)は、実施例19の油溶性木材保存剤の結果であり、銅-フタロシアニン系染料の沈殿や分離が認められず、
図10(a)よりも色が濃い結果となった。
【0056】
また、表9の結果について、
図11及び
図12に貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤を用いて処理した木材の外観写真を示す。
図11(a)は無処理材であり、(b)は比較例11による処理木材、(c)は実施例19による処理木材である。木材の色を比較すると、(c)は(b)よりも着色が明瞭であった。また、(b)の表面には、沈殿物が付着していたのに対し、(c)では不溶解分が確認されず、均一に着色されている状態であった。
【0057】
表9、10、
図9~12の結果より、トリアジン系紫外線吸収剤を共存させることにより、銅-フタロシアニン系染料の溶解性を向上させることができ、その結果、銅-フタロシアニン系染料の沈殿を防止し、貯蔵後も色味が濃く発色性を維持した油溶性木材保存剤を得ることができた。
【0058】
〈銅-フタロシアニン系染料で着色した油溶性木材保存剤の製造2〉
銅-フタロシアニン系染料としてSolvent blue 70、フェノール水酸基を有する酸化防止剤または紫外線吸収剤としてVulkanox BHT、アデカスタブ1413、アデカスタブAO50を使用し、フェノール水酸基を有する酸化防止剤または紫外線吸収剤を用いることによる木材保存剤中における銅-フタロシアニン系染料の溶解性の効果を検証するべく、表11に示す配合により、実施例29~31、比較例17の油溶性木材保存剤を製造した。具体的には、容器にベースであるナフテン系溶剤以外の各原料をそれぞれ撹拌投入して溶解させた後、ベース溶剤を追加投入して油溶性木材保存剤を作製した。
【0059】
【0060】
〈フェノール水酸基を有する酸化防止剤または紫外線吸収剤による銅-フタロシアニン系染料の溶解性の検証〉
表11に示す配合により作製した実施例29~31、比較例17の油溶性木材保存剤をそれぞれ透明容器に移し、40℃の恒温槽にて5日間貯蔵した。貯蔵して5日後の油溶性木材保存剤の外観を観察し、銅-フタロシアニン系染料の沈殿の有無や油溶性木材保存剤の色味を評価した。評価結果を表12に示す。
【0061】
【0062】
表11、12より、トリアジン系紫外線吸収剤に代えて、フェノール水酸基を有する酸化防止剤やフェノール水酸基を有する紫外線吸収剤を共存させた場合においても、トリアジン系紫外線吸収剤の場合と同様に、銅-フタロシアニン系染料の溶解性を向上させることができ、その結果、銅-フタロシアニン系染料の沈殿を防止し、貯蔵後も色味が濃く発色性を維持した油溶性木材保存剤を得ることができた。
【0063】
以上の結果から、本発明であれば、銅-フタロシアニン染料の溶解性を向上させた、着色性の高い油溶性木材保存剤を提供できることは明らかである。
【0064】
なお、上記実施例において紹介した油溶性木材保存剤は、当初より着色されているものであるが、当初から着色されているのではなく、後から本発明の油溶性着色剤を木材保存剤と混合することで、油溶性木材保存剤を製造してもよい。このように後から本発明の油溶性着色剤を木材保存剤と混合した油溶性木材保存剤も、上記実施例と同様に着色性の高い油溶性木材保存剤となる。