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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】飛蚊症改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/9066 20060101AFI20241205BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
A61K36/9066
A61P27/02
A61K125:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020214020
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099937
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591035391
【氏名又は名称】株式会社武蔵野免疫研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】吉田 八束
(72)【発明者】
【氏名】仲間 真司
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105853932(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103877491(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0082065(US,A1)
【文献】春ウコン水 720ml~沖縄県産・無農薬・無化学肥料,2020年09月14日,2024年7月19日検索 <https://web.archive.org/web/20200914172400/https://www.e-yuragi.com/p/item-detail/detail/i46.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
春ウコンの根から、35~40℃で減圧蒸留することにより得た細胞水有効成分として含有することを特徴とする、飛蚊症改善剤。
【請求項2】
服用量が、5~80ml/日ある、請求項記載の飛蚊症改善剤。
【請求項3】
春ウコンの根を、35~40℃で減圧蒸留することにより細胞水を得ることを含む、前記細胞水を含む飛蚊症改善剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物由来の飛蚊症改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
飛蚊症とは、黒い蚊やゴミのような物体が見える状態(症状)である。眼を動かすとともに動き、白い壁や青空を見たときに初めて自覚することもある。加齢とともに生理的な自然現象としてみられることがほとんどであるが、硝子体剥離等の眼の疾病により起こることもある。眼の疾病の場合は治療が必要となるが、加齢に伴う場合などの生理的な現象に基づく場合は、特に症状を抑えるための治療薬や治療方法は無く、経過観察を行うことが一般的である。しかしものを見るときに邪魔になるため、不快感を伴う。
イワシ等の青身の魚の肉と食酢とを一緒に摂取することで飛蚊症を含む眼疾患の症状を改善できるとの報告がある(特許文献1)。しかしながら、植物由来の有効成分により飛蚊症が改善されたとの報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-29107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、飛蚊症の症状を改善することができる、植物由来の有効成分を含む飛蚊症改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ショウガ科ウコン属の植物から得られた成分を、飛蚊症を発症している患者に投与したところ、飛蚊症が改善されることを見いだし、本発明を完成した。
本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕ショウガ科ウコン属植物由来の成分を含有することを特徴とする、飛蚊症改善剤。
〔2〕ショウガ科ウコン属由来の成分が、ショウガ科ウコン属植物の細胞水である、前記〔1〕記載の飛蚊症改善剤。
〔3〕ショウガ科ウコン属植物の細胞水が、ショウガ科ウコン属植物の根の細胞水である、前記〔2〕記載の飛蚊症改善剤。
〔4〕ショウガ科ウコン属植物が秋ウコン、紫ウコン、または春ウコンである前記〔1〕~〔3〕のいずれか一記載の飛蚊症改善剤。
〔5〕ショウガ科ウコン属植物が春ウコンである前記〔1〕~〔4〕のいずれか一記載の飛蚊症改善剤。
〔6〕服用量が、5~80ml/日、好ましくは10~50ml/日、更に好ましくは15~30ml/日である、前記〔2〕~〔5〕のいずれか一記載の飛蚊症改善剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の飛蚊症改善剤により、飛蚊症の症状を改善することができる。また本発明の飛蚊症改善剤は植物由来であり、服用しやすいという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の飛蚊症改善剤は、ショウガ科ウコン属植物から得られた成分を含有することを特徴とする。
ショウガ科ウコン属植物とは、ショウガ科(Zingiberaceae)のウコン属(Curcuma)に分類される植物で、根茎が分枝し、肉質、芳香がある、東南アジア原産の植物である。含まれる種の主なものとして、秋ウコン(Curcuma longa L)、春ウコン(Curcuma aromatica Salisb)、ガジュツ(夏ウコン、紫ウコン、白ウコンとも呼ばれる)(Curcuma phaeocaulis Valeton)、クルクマ・シャローム(Curcuma alismatifolia Gagnep)、ハナウコン(ペティオラタ)(Curcuma petiolata Roxb)、クルクマ・ロスコエアナ(ポニチャ-)(Curcuma roscoeana Wall)、クルクマ・ポトワ(Curcuma thorelii Gagnep)、クルクマ・ハルマンディー(Curcuma harmandii Gagnep)、クルクマ・ラブドタ(Curcuma rhabdota)、クスリウコン(Curcuma xanthorrhiza)などがあげられる。
本発明の飛蚊症改善剤としては、秋ウコン、紫ウコンまたは春ウコンが好ましく、春ウコンが特に好ましい。
春ウコンは別名:キョウオウ(姜黄)であり学名は:クルクマ アロマティカである。強い苦みと突き抜けるような清涼な香りを有する。
【0008】
本発明の飛蚊症改善剤は、上述のショウガ科ウコン属植物由来の成分を含有する。
ショウガ科ウコン属植物由来の成分は、植物のいずれの部位から得られたものでもよい。例えば、根、茎、葉、花、実のいずれでもよい。好ましくは根の部分である。
ショウガ科ウコン属植物由来の成分は、植物の細胞を含む固形分あるいは植物から得られる液体分であってもよい。
【0009】
ショウガ科ウコン属植物由来の成分は、植物の適当な部位を、乾燥、焙煎、蒸す等の加工を施したものでもよく、または生の植物を粉砕して抽出溶媒を加えて抽出したものでもよく、あるいは生の植物の細胞の水分(細胞水ともいう)を濃縮等して得たものでもよい。
植物の加工方法としては粉砕・搾汁、蒸溜などの方法が挙げられる。
植物の抽出方法としては、ミキサーや粉砕機などにより粉砕して、水あるいはエタノール等の水性溶媒を用いて抽出してもよい。
【0010】
植物の細胞の水分を得る方法としては、例えば、生の植物を圧搾してもよく、あるいは、生の植物を、減圧して、蒸留して、蒸発した水を冷却して集めてもよい。減圧の際、35~40℃の低温にしてから減圧することが、成分を破壊することなく抽出できるため好ましい。減圧の程度は、70~100kPaであることが好ましく、85~99kPaであることがより好ましい。前述の減圧状態で、乾燥残分の水分値が10%以下になるまで減圧状態を維持することが好ましい。
ショウガ科ウコン属植物の根100gから、上記低温減圧法による蒸留で、通常、70~85mlの細胞水を採取することができる。
ショウガ科ウコン属植物由来の細胞の水分として、春ウコン水と呼ばれる市販されている春ウコンの根の部分の細胞水を用いてもよい。
例えば、春ウコンの根100gから、上記低温減圧法による蒸留で、70~85ml採取したものを「春ウコン水」として用いることができる。
【0011】
ショウガ科ウコン属植物由来の成分として、上述の方法で製造したショウガ科ウコン属植物の細胞水を用いる場合には、服用量は、5~80ml/日、好ましくは10~50ml/日、更に好ましくは15~30ml/日である。
本発明の飛蚊症改善剤の服用は、少なくとも2週間行うことが好ましく、4週間以上であることがさらに好ましく、6週間以上であることがより好ましく、8週間以上であることがよりさらに好ましい。
【0012】
飛蚊症とは、黒い蚊やゴミのような物体が見える状態(症状)である。本明細書において、飛蚊症改善剤とは、飛蚊症の症状を改善するものであり、飛蚊症の改善とは、視界にあるゴミ様の数及び面積について、服用前と比較して減少することを意味する。
【実施例
【0013】
(ウコン水の調製)
春ウコン(部位:根)320kgを低温(35~40℃)で乾燥残分の水分が10%以下になるまで真空(減圧:91~93kPa)状態にし、蒸発した水分を冷却して取りだし、春ウコン水を得た(266l)。得られたウコン水を15mlのプラスチック製容器に充填した。
【0014】
(ウコン末の調製)
春ウコンを収穫したのち、洗浄、粉砕、乾燥等を行った。乾燥前の春ウコン(部位:根)30kgから4.5kgの乾燥末(ウコン末)が得られた。乾燥末に宮古ビデンス・ピローサエキス末を加えて、通常の方法で打錠して錠剤を製造した。錠剤中にはウコン末を71.4%含有するように製造した。
【0015】
飛蚊症の症状を有する4名の被験者に前述の春ウコン水を投与した。被験者1~4は、ウコン水15mlを1日1回、被験者5は、ウコン水15mlを朝夕それぞれ1回投与して、各飲用日数経過後、下記評価基準に基づいた被験者の評価を、担当医が聞き取りを行って最終評価とした。なお、被験者2のみワーファリン2mgの継続的服薬をしているが、残りの被験者は試験前後において他の薬の服用はない。
評価結果を表1に示す。いずれの被験者においても副作用等の有害作用は無かった。
各被験者は、ウコン水服用前にある期間にわたって、ウコン錠(ウコン末)を服用していた。しかし、その期間において飛蚊症の改善は全く見られなかった(表2参照)。
【0016】
評価基準:視界にあるゴミ様の数や面積で評価(被験者評価)
著効:+++ 7割以上ゴミが見えなくなった
有効:++ 3~6割程度ゴミが見えなくなった
やや有効:+ 1~2割程度ゴミが見えなくなった
効果無し:- ゴミの程度は変わらなかった
悪化 :-- ゴミが増えた
【0017】
[表1]
【0018】
[表2]