(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20241205BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
C02F1/44 A
C02F1/44 K
C02F1/00 L
(21)【出願番号】P 2020217097
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390021348
【氏名又は名称】フジクリーン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小栗 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岩田 朱加
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-103768(JP,A)
【文献】特開2016-172218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
C02F1/00
C02F3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理装置であって、
外面を形成する外壁と、
前記外壁によって囲まれる空間である装置空間内に設けられた、膜処理槽を含む1以上の水処理槽と、
前記膜処理槽内に配置され、水を濾過する膜を有する膜分離装置と、
前記膜分離装置に接続されるとともに前記装置空間内に配置された管であって、前記膜分離装置によって濾過された水を前記膜分離装置から吸引するための吸引管と、
開口を備え前記吸引管に接続されるとともに前記装置空間内に配置された管であって、前記吸引管内の固形物を含む水を前記吸引管の外に移動させるための洗浄管と、
前記洗浄管の流路上に設けられたバルブと、
を備え
、
前記洗浄管の前記開口は、前記洗浄管の前記開口が配置された水処理槽において、下方を向いて見る場合の前記開口の位置である前記開口の水平方向の位置における水面の高さよりも高い位置に配置されており、
前記洗浄管の前記開口は、前記膜処理槽、または、前記1以上の水処理槽のうちの前記膜処理槽よりも上流側の水処理槽に、配置されている、
排水処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の排水処理装置であって、
前記バルブは、手動バルブである、
排水処理装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の排水処理装置であって、
前記洗浄管の前記開口は、前記吸引管の内部領域のうちの最も高い部分よりも高い位置に配置されている、
排水処理装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記洗浄管は、前記吸引管のうち前記吸引管の内部領域の最も高い部分を形成する部分に接続されている、
排水処理装置。
【請求項5】
請求項1から
3のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記吸引管は、
前記吸引管の内部領域のうちの最も高い部分を形成する第1部分と、
前記第1部分の前記膜分離装置側とは反対側に接続された部分であって前記第1部分の内部領域の最も高い部分よりも低い位置に配置された内部領域を形成する第2部分と、
を含み、
前記洗浄管は、前記吸引管の前記第2部分に接続されている、
排水処理装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記膜処理槽内に配置されたN個(Nは2以上の整数)の膜分離装置を備え、
前記吸引管は、
前記N個の膜分離装置にそれぞれ接続されたN個の第1管と、
前記N個の第1管に接続された第2管と、
を含み、
前記洗浄管は、前記第2管に接続されている、
排水処理装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の排水処理装置であって、
前記第2管の内部領域のうちの最も高い部分の高さは、前記N個の第1管のN個の内部領域のN個の最も高い部分のN個の高さのいずれよりも低い、
排水処理装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれかに記載の排水処理装置と、
吸引ポンプと、
前記吸引管と前記吸引ポンプとを接続する管である外管と、
を備える排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、膜を用いる排水処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、平膜や中空糸膜などの種々の膜を有する膜分離装置が、排水処理に用いられている。例えば、特許文献1は、以下の技術を提案している。膜分離装置は、活性汚泥処理槽に配置される。膜分離装置には、集水管が接続され、集水管には吸引ポンプが接続される。吸引ポンプにより、膜分離装置から処理水が引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膜分離装置は、水と固形物とを分離する。従って、膜分離装置によって濾過された水を吸引するための吸引管には、通常は、固形物は流入しない。ところが、現実には、種々の原因によって、吸引管内に固形物が存在し得る。例えば、排水処理装置の製造時に、意図せずに、固形物が吸引管に入り得る。膜が破損した場合に、膜を通り抜けた固形物が吸引管に到達し得る。濾過された水に含まれるカルシウムなどの溶質が、吸引管内で析出し得る。濾過された水に含まれる有機物によって、吸引管内でバイオフィルムが生成され得る。ところが、吸引管を洗浄する点については、十分な工夫がなされていないのが実情であった。
【0005】
本明細書は、吸引管を洗浄する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
排水処理装置であって、
外面を形成する外壁と、
前記外壁によって囲まれる空間である装置空間内に設けられた、膜処理槽を含む1以上の水処理槽と、
前記膜処理槽内に配置され、水を濾過する膜を有する膜分離装置と、
前記膜分離装置に接続されるとともに前記装置空間内に配置された管であって、前記膜分離装置によって濾過された水を前記膜分離装置から吸引するための吸引管と、
開口を備え前記吸引管に接続されるとともに前記装置空間内に配置された管であって、前記吸引管内の固形物を含む水を前記吸引管の外に移動させるための洗浄管と、
前記洗浄管の流路上に設けられたバルブと、
を備える、排水処理装置。
【0008】
この構成によれば、バルブを開けることによって、洗浄管を通じて吸引管内から固形物を含む水を吸引管の外に移動させることができるので、容易に吸引管を洗浄できる。また、バルブを閉じることによって、洗浄管の開口から吸引管へ異物が入ることを抑制できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の排水処理装置であって、
前記洗浄管の前記開口は、前記開口の水平方向の位置における水面の高さよりも高い位置に配置されている、
排水処理装置。
【0010】
この構成によれば、作業者は、洗浄管の開口から流出する水を容易に観察できる。また、作業者は、洗浄管の開口から流出する水を観察することによって、吸引管の洗浄の状況を容易に確認できる。
【0011】
[適用例3]
適用例2に記載の排水処理装置であって、
前記洗浄管の前記開口は、前記膜処理槽、または、前記1以上の水処理槽のうちの前記膜処理槽よりも上流側の水処理槽に、配置されている、
排水処理装置。
【0012】
この構成によれば、洗浄管の開口から流出する水が、膜処理槽よりも下流側の水処理槽に流入することを抑制できる。
【0013】
[適用例4]
適用例1から3のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記バルブは、手動バルブである、
排水処理装置。
【0014】
この構成によれば、作業者は、手動バルブを操作することによって、容易に、吸引管と洗浄管の開口との連通を開閉できる。
【0015】
[適用例5]
適用例1から4のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記洗浄管の前記開口は、前記吸引管の内部領域のうちの最も高い部分よりも高い位置に配置されている、
排水処理装置。
【0016】
この構成によれば、洗浄管を通じて吸引管内から低密度の固形物を含む水を吸引管の外に容易に移動させることができるので、容易に吸引管を洗浄できる。
【0017】
[適用例6]
適用例1から5のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記洗浄管は、前記吸引管のうち前記吸引管の内部領域の最も高い部分を形成する部分に接続されている、
排水処理装置。
【0018】
この構成によれば、洗浄管を通じて吸引管内から低密度の固形物を含む水を吸引管の外に容易に移動させることができるので、容易に吸引管を洗浄できる。
【0019】
[適用例7]
適用例1から5のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記吸引管は、
前記吸引管の内部領域のうちの最も高い部分を形成する第1部分と、
前記第1部分の前記膜分離装置側とは反対側に接続された部分であって前記第1部分の内部領域の最も高い部分よりも低い位置に配置された内部領域を形成する第2部分と、
を含み、
前記洗浄管は、前記吸引管の前記第2部分に接続されている、
排水処理装置。
【0020】
この構成によれば、第2部分に沈降した固形物を含む水は、洗浄管を通じて吸引管の外に容易に移動することができるので、容易に吸引管を洗浄できる。
【0021】
[適用例8]
適用例1から7のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記膜処理槽内に配置されたN個(Nは2以上の整数)の膜分離装置を備え、
前記吸引管は、
前記N個の膜分離装置にそれぞれ接続されたN個の第1管と、
前記N個の第1管に接続された第2管と、
を含み、
前記洗浄管は、前記第2管に接続されている、
排水処理装置。
【0022】
この構成によれば、N個の膜分離装置が用いられる場合に、適切に吸引管を洗浄できる。
【0023】
[適用例9]
適用例8に記載の排水処理装置であって、
前記第2管の内部領域のうちの最も高い部分の高さは、前記N個の第1管のN個の内部領域のN個の最も高い部分のN個の高さのいずれよりも低い、
排水処理装置。
【0024】
この構成によれば、吸引ポンプと第2管とを管を介して接続する場合に、その管の勾配を小さくせずに、吸引ポンプの位置の自由度を向上できる。
【0025】
[適用例10]
適用例1から9のいずれかに記載の排水処理装置と、
吸引ポンプと、
前記吸引管と前記吸引ポンプとを接続する管である外管と、
を備える排水処理システム。
【0026】
この構成によれば、吸引ポンプによって、吸引管と外管とを通じて膜分離装置から水を吸引でき、さらに、洗浄管を用いて吸引管を洗浄できる。
【0027】
なお、本明細書に開示の技術は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、排水処理方法および排水処理装置、排水処理装置と吸引ポンプとを備える排水処理システム、吸引管の洗浄方法、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施例としての排水処理装置を示す概略図である。
【
図2】下方を向いて見た膜分離槽140の概略図である。
【
図3】ボディ方向Dbを向いて見た膜分離槽140の概略図である。
【
図4】ボディ方向Dbを向いて見た膜分離槽140の一部分の概略図である。
【
図5】排水処理システム1000の例を示す概略図である。
【
図6】吸引管800の洗浄処理の実施例を示すフローチャートである。
【
図7】(A)、(B)は、吸引管800の洗浄処理の別の実施例を示すフローチャートである。
【
図8】排水処理装置の別の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は、一実施例としての排水処理装置を示す概略図である。図中には、横から見た排水処理装置100が示されている。本実施例の排水処理装置100は、一般家庭などからの排水(原水とも呼ばれる)の浄化処理を行う(このような装置は「浄化槽」とも呼ばれる)。排水処理装置100は、排水処理装置100の外面190sを形成する外壁190を備えている。本実施例では、外壁190は、水平な方向Dbに延びる略円筒のボディ190bを形成している(1つの方向に延びるボディ190bは、管体とも呼ばれる)。以下、ボディ190bの延びる方向Dbを、ボディ方向Dbとも呼ぶ。
図1中では、ボディ方向Dbは、左方向である。
【0030】
外壁190は、外壁190によって囲まれる空間である装置空間190dを形成している。装置空間190dは、ボディ190bの内部空間である。装置空間190d内には、上流側(
図1の左側)から順番に、ばっ気型スクリーン110、流量調整槽120、脱窒槽130、膜分離槽140、消毒槽150、放流ポンプ槽160が、設けられている。隣り合う2つの槽の間は、仕切壁によって仕切られている。排水処理装置100に流入した排水は、これらの水処理槽110-160によって、この順に処理される。
【0031】
排水処理装置100へ流入した排水は、ばっ気型スクリーン110へ流入する。ばっ気型スクリーン110は、散気装置を有するスクリーン111を備えており、大きな固形物を取り除く。スクリーン111を通過した水は、流量調整槽120へ流入する。
【0032】
流量調整槽120は、ポンプ121と、計量調整装置122と、を備えている。ポンプ121は、流量調整槽120内の水を計量調整装置122へ移送する。計量調整装置122は、移送された水のうちの計量された一部を、脱窒槽130へ移送する。余剰の水は、流量調整槽120へ戻る。
【0033】
脱窒槽130は、底部に配置された散気装置131を備えている。散気装置131には、図示しないブロワが接続されている。脱窒槽130内には、汚泥が収容される。ブロワは、タイマー制御により、間欠ばっ気を行う。ばっ気(すなわち、送気)が止まっている状態では、汚泥に含まれる嫌気性微生物による嫌気処理が行われる。後述するように、脱窒槽130には、膜分離槽140で好気処理された水(硝酸イオンを含む水(硝化液とも呼ばれる))が、循環ポンプ149によって移送される。嫌気性微生物に含まれる脱窒菌の働きにより、硝酸イオンが還元されて窒素ガスが生成され、生成された窒素ガスが空気中に放出される(いわゆる脱窒)。また、ブロワがばっ気を行うことによって、脱窒槽130内が攪拌される。脱窒槽130で処理された水は、仕切壁の開口139を通じて、膜分離槽140へ流入する。
【0034】
膜分離槽140は、膜分離装置900と、循環ポンプ149と、吸引管800と、洗浄管700と、を備えている。膜分離装置900は、水を濾過する膜モジュール910と、膜モジュール910の下方に配置された散気装置940と、を備えている。以下、膜分離装置900を、膜ユニット900とも呼ぶ。
図1の実施例では、膜分離槽140には、3個の膜ユニット900が配置されている。1個の膜ユニット900は、複数の膜モジュール910を備えている。本実施例では、1個の膜モジュール910は、複数の中空糸膜を用いて構成されている。膜分離槽140内に配置される膜モジュール910の総数は、例えば、膜ユニット900の数を調整することによって、調整される。各膜ユニット900の散気装置940には、図示しないブロワが接続されている。本実施例では、散気装置940には、ブロワによって空気が供給される。また、膜分離槽140内には、活性汚泥が収容される。膜分離槽140内の水(活性汚泥を含む)は、散気装置940からの空気によって、攪拌される。また、活性汚泥に含まれる好気性微生物は、散気装置940からの空気に含まれる酸素を用いて、好気処理を行う。膜分離槽140は、膜を用いる水処理を行う膜処理槽の例である。
【0035】
膜ユニット900には、膜ユニット900によって濾過された水を膜ユニット900から吸引するための吸引管800が接続されている。吸引管800は、3個の膜ユニット900にそれぞれ接続された3個の第1管810と、3個の第1管810に接続された第2管820と、を含んでいる。また、外壁190には、外壁190を貫通して膜分離槽140と排水処理装置100の外部とを連通する第1接続管148が固定されている。第2管820は、第1接続管148に接続されている。また、第2管820には、洗浄管700が接続されている(詳細は、後述)。
【0036】
循環ポンプ149は、膜分離槽140内の水を、脱窒槽130へ移送する。図中の循環ポンプ149から脱窒槽130へ至る点線は、水が循環ポンプ149から脱窒槽130へ流れることを示すものであり、実際の流路を示すものではない。実際の流路は、膜ユニット900などの他の部材を避けるように、配置される。また、図示を省略するが、膜分離槽140内の余剰汚泥は、汚泥移送ポンプによって、汚泥貯留槽へ移送される。
【0037】
排水処理装置100の外では、接続管148と吸引ポンプ600とが、第1外管610によって接続されている。吸引ポンプ600は、装置空間190d内に配置された吸引管800と、第1外管610と、を通じて、複数の膜ユニット900から水を吸引する。また、第1外管610の途中には、給水管611が接続されている(詳細は、後述)。
【0038】
外壁190には、外壁190を貫通して消毒槽150と排水処理装置100の外部とを連通する第2接続管151が固定されている。吸引ポンプ600と第2接続管151とは、第2外管620によって接続されている。吸引ポンプ600は、膜ユニット900から吸引した水を、第2外管620を通じて、消毒槽150へ移送する。
【0039】
消毒槽150は、消毒剤152を備えており、消毒槽150へ流入した水を、消毒剤152を用いて消毒する。消毒された水は、仕切壁の開口159を通じて、放流ポンプ槽160へ流入する。
【0040】
放流ポンプ槽160は、放流ポンプ161を備えている。放流ポンプ161は、放流ポンプ槽160内の水を、排水処理装置100の外へ移送する。
【0041】
なお、外壁190は、外壁190に上部に配置された複数のマンホール開口180を形成している。作業者は、マンホール開口180を通じて、排水処理装置100の内部を点検できる。
【0042】
A2.膜ユニット900と吸引管800と洗浄管700との構成:
図2は、下方を向いて見た膜分離槽140の概略図である。膜分離槽140内には、3個の膜ユニット900が、ボディ方向Dbに並べて配置されている。吸引管800の第2管820は、ボディ方向Dbに延びる直線状の管である直管820aと、直管820aに接続された分岐管820bと、を含んでいる。直管820aは、3個の膜ユニット900の横に配置されている。分岐管820bは、外壁190(
図1、
図3)に固定された第1接続管148に接続されている。
【0043】
図3は、ボディ方向Dbを向いて見た膜分離槽140の概略図である。
図3では、膜ユニット900と吸引管800とが示され、洗浄管700の図示は省略されている。
図2、
図3に示すように、膜ユニット900は、複数の膜モジュール910と、複数の膜モジュール910の下方に配置された散気装置940と、複数の膜モジュール910の上方に配置された集水管920と、集水管920と膜モジュール910とを接続する個別管911と、を備えている。個別管911は、膜モジュール910毎に設けられている。膜ユニット900の集水管920と、吸引管800の第2管820の直管820aとは、第1管810によって接続されている。第1管810(
図2)は、膜ユニット900毎に設けられている。各第1管810の流路上には、バルブ811が設けられている(以下、バルブ811を、ユニットバルブ811とも呼ぶ)。ユニットバルブ811は、例えば、手動バルブである。排水処理装置100の運転時には、ユニットバルブ811の状態は、開状態である。膜モジュール910が破損するなどの膜ユニット900の不具合が発生した場合や、膜ユニット900を排水処理装置100から取り外す場合など、吸引管800の第2管820の内部と膜分離槽140とが直接的に連通し得る場合に、ユニットバルブ811が閉じられる。これにより、吸引管800への異物(例えば、活性汚泥)の流入は、抑制される。
【0044】
図3に示すように、第1管810の高さは、膜ユニット900の集水管920から第2管820に向かって、徐々に低くなる。ここで、管の内部の水が流れ得る領域を、内部領域と呼ぶ。本実施例では、吸引管800の内部領域のうちの最も高い部分800hは、第1管810のうちの集水管920との接続部分の内部領域である。図中の第1高H1は、この部分800hの高さである。この第1高H1は、膜ユニット900の複数の第1管810の間で、共通である。第2高H2は、第2管820の内部領域のうちの最も高い部分820hの高さである(H1>H2)。このように、第2管820が第1管810よりも低い理由については、後述する。なお、
図3では、第2管820の内部領域のうちの最も高い部分820hは、直管820aから選択されている。ただし、本実施例では、直管820aと分岐管820bとの間で、管の高さと内径とが同じである。従って、最も高い部分820hは、分岐管820bから選択されてもよい。
【0045】
図3には、さらに、水位WL1、WL2が示されている。第1水位WL1は、膜分離槽140の最高水位であり、第2水位WL2は、膜分離槽140の最低水位である。排水処理装置100の通常の運転時には、膜分離槽140の水位は、これらの水位WL1、WL2の間で、変動する。
【0046】
図4は、ボディ方向Dbを向いて見た膜分離槽140の一部分の概略図である。
図4では、膜ユニット900と吸引管800の第2管820と洗浄管700とが示され、吸引管800の第1管810の図示は省略されている。図示するように、洗浄管700は、直管820aの横部分に接続されており、直管820aから水平に延び、鉛直上方向に向かって曲がり、鉛直上方向に向かって延びて、開口700oに至る。後述するように、吸引管800の洗浄時には、開口700oから水が排出される(以下、開口700oを、排出開口700oとも呼ぶ)。洗浄管700の流路上には、バルブ710が設けられている(以下、バルブ710を、洗浄バルブ710とも呼ぶ)。本実施例では、洗浄バルブ710は、手動バルブである。
【0047】
排出開口700oは、膜分離槽140内に配置されている。すなわち、排出開口700oの水平方向の位置は、膜分離槽140に含まれる(
図2)。
図4中の第3高H3は、排出開口700oの高さである。排出開口700oが水平面に対して傾斜している場合、第3高H3は、排出開口700oの縁のうちの最も低い位置である。本実施例では、第3高H3は、膜分離槽140の通常の運転状態での水面の高さ(水位が変動する場合には、最も高い水位。本実施例では、第1水位WL1)よりも高い。すなわち、排出開口700oは、空気中に配置されている。また、排出開口700oの第3高H3は、吸引管800の内部領域のうちの最も高い部分800h(
図3)の第1高H1よりも、高い。
【0048】
A3.排水処理装置100と吸引ポンプ600との接続:
図5は、排水処理装置100と吸引ポンプ600とを含む排水処理システム1000の例を示す概略図である。
図5の例では、排水処理装置100は、地面GLの下(すなわち、地中)に埋設されている。マンホール開口180には、マンホール枠510が取り付けられており、マンホール枠510には、蓋520が嵌め込まれている。図中には、排水処理装置100の一部が示されている。排水処理システム1000は、排水処理装置100と、吸引ポンプ600と、排水処理装置100と吸引ポンプ600とを接続する第1外管610と、第1外管610に接続された給水管611と、を備えている。
【0049】
第1接続管148の外側の開口148oには、第1外管610が接続されている。第1外管610は、第1接続管148によって、吸引管800に接続されている。第1外管610は、第1接続管148から上り勾配で吸引ポンプ600の近くまで延びている(図中では、第1外管610の一部が、簡略化して点線で示されている)。
図5の例では、第1外管610は、吸引ポンプ600の近くで鉛直上方向に向かって曲がり、鉛直上方向に向かって延びて、地面GLに至る。そして、第1外管610は、地上に配置された吸引ポンプ600に、接続される。
【0050】
第1外管610の流路上の吸引ポンプ600の近くには、バルブ613が設けられている(ポンプバルブ613とも呼ぶ)。ポンプバルブ613は、例えば、手動バルブである。排水処理装置100の運転時には、ポンプバルブ613の状態は、開状態である。後述する吸引管800の洗浄時に、ポンプバルブ613は閉じられる。
【0051】
第1外管610のうちの地上に配置された部分であってポンプバルブ613よりも排水処理装置100側の部分には、給水管611が接続されている。給水管611は、第1外管610から延びて開口611oへ至る。後述するように、吸引管800の洗浄時、開口611oに水が供給される(以下、開口611oを、給水開口611oとも呼ぶ)。給水管611の流路上には、バルブ612が設けられている(給水バルブ612とも呼ぶ)。本実施例では、給水バルブ612は、手動バルブである。排水処理装置100の運転時には、給水バルブ612の状態は閉状態である。後述する吸引管800の洗浄時に、給水バルブ612は開けられる。
【0052】
A4.吸引管800の洗浄:
図6は、吸引管800(
図5)の洗浄処理の実施例を示すフローチャートである。作業者は、
図6の手順に従って、吸引管800を洗浄する。S110では、作業者は、吸引ポンプ600(
図5)の運転を停止する。例えば、作業者は、吸引ポンプ600の電源スイッチをオフにする。S120では、作業者は、ポンプバルブ613を閉じる。S130では、作業者は、洗浄バルブ710と給水バルブ612とを開ける。作業者は、マンホール開口180(
図1)を通じて、膜分離槽140に設けられた洗浄バルブ710を操作する。S140では、作業者は、給水開口611oに水を供給する。例えば、作業者は、水道水を給水開口611oに供給する。以下、給水開口611oに供給された水を、供給水とも呼ぶ。
【0053】
給水開口611o(
図5)に供給された供給水は、以下の水流を生じさせる。すなわち、第1外管610内の水は、排水処理装置100へ流入する。排水処理装置100へ流入した水は、吸引管800の第2管820に流入する。第2管820(
図3)内の水は、第1管810を通って膜ユニット900の複数の膜モジュール910へ移動し得る。ただし、複数の膜モジュール910は、膜分離槽140内の水中に配置されている。また、膜モジュール910の内部から外部(ここでは、膜分離槽140内)への水の移動には、膜透過圧が作用する。従って、膜モジュール910へ移動する水は、第2管820から流出する水の一部にとどまる。第2管820(
図5)から流出する他の水は、洗浄管700へ移動する。洗浄管700内の水は、排出開口700oから排出される。排出された水は、膜分離槽140に落下する。以下、給水開口611oから排出開口700oへ至る水流を、洗浄水流と呼ぶ。
【0054】
吸引管800内には、種々の原因によって、固形物が存在し得る。例えば、排水処理装置100の製造時に、意図せずに、固形物(例えば、樹脂の破片)が吸引管800に入り得る。膜モジュール910が破損した場合に、膜モジュール910を通り抜けた固形物(例えば、汚泥)が吸引管800に到達し得る。膜モジュール910によって濾過された水に含まれるカルシウムなどの溶質が、吸引管800内で析出し得る。膜モジュール910によって濾過された水に含まれる有機物によって、吸引管800内でバイオフィルムが生成され得る。吸引管800内のこのような固形物が吸引ポンプ600によって吸引される場合、固形物が排水処理装置100から排出される処理水に混入し得る。このような不具合を抑制するために、吸引管800内の固形物を取り除くことが好ましい。
【0055】
本実施例では、給水開口611o(
図5)への水の供給は、継続して行われる。これにより、吸引管800内の固形物は、洗浄水流によって押し流されて、排出開口700oから排出される。
【0056】
また、本実施例では、ユニットバルブ811が開いている状態で、吸引管800が洗浄される。この場合、第1管810を通じて第2管820と膜ユニット900との間で水が移動し得る。従って、ユニットバルブ811よりも膜モジュール910側の固形物も、洗浄水流に巻き込まれ得、そして、排出開口700oから排出され得る。
【0057】
また、吸引管800内には、水の密度よりも低い密度を有する固形物が、存在し得る。例えば、排水処理装置100の製造時に生じた低密度の樹脂の破片が、吸引管800内に存在し得る。また、バイオフィルムとガス(例えば、空気など)とが一体化した固形物が、吸引管800内で生成され得る。このような低密度の固形物は、吸引管800などの管の内部領域の高い部分に移動しやすい。本実施例では、排出開口700o(
図4)の第3高H3は、吸引管800の内部領域のうちの最も高い部分800hの第1高H1よりも高い。従って、吸引管800内の低密度の固形物は、容易に、排出開口700oから排出される。また、吸引管800内には、固形物に加えて、空気などのガスが存在し得る。吸引管800内のガスは、吸引ポンプ600による水の吸引を、妨げ得る。このようなガスも、低密度の固形物と同様に、容易に、排出開口700oから排出される。
【0058】
また、第1外管610(
図5)内にも、固形物が存在し得る。第1外管610内の固形物も、洗浄水流によって押し流されて、排出開口700oから排出される(第1外管610内のガスについても、同様)。
【0059】
S160(
図6)では、作業者は、洗浄を終了するための予め決められた終了条件が満たされるか否かを判断する。終了条件は、排水処理装置100の不具合の可能性が小さいことを示す任意の条件であってよい。例えば、排出開口700oから排出される水の中に目視によって固形物が観察されないという第1条件が、終了条件として用いられてよい。また、排出開口700oからガスが排出されないことが目視によって確認されるという第2条件が、継続条件として用いられてよい。本実施例では、第1条件と第2条件の両方が満たされる場合に、終了条件が満たされることとする。
【0060】
終了条件が満たされない場合(S160:No)、作業者は、終了条件が満たされるまで、S160を繰り返す(すなわち、給水開口611o(
図5)への水の供給が、継続される)。終了条件が満たされる場合(S160:Yes)、S170で、作業者は、洗浄バルブ710(
図5)と給水バルブ612とを閉じる。S180で、作業者は、給水開口611oへの水の供給を停止する。S190で、作業者は、ポンプバルブ613を開ける。S200で、作業者は、吸引ポンプ600の運転を開始する。そして、
図6の処理は終了する。以上により、吸引管800の洗浄処理が終了し、排水処理装置100の運転が始まる。
【0061】
以上のように、本実施例では、排水処理装置100(
図1)は、外壁190と、膜分離槽140を含む複数の水処理槽110-160と、膜分離槽140内に配置された膜分離装置900と、膜分離装置900に接続された吸引管800と、吸引管800に接続された洗浄管700と、洗浄管700の流路上に設けられた洗浄バルブ710と、を備えている。外壁190は、排水処理装置100の外面190sを形成している。また、外壁190は、外壁190によって囲まれる空間である装置空間190dを形成している。複数の水処理槽110-160は、装置空間190d内に設けられている。膜分離装置900は、水を濾過する膜モジュール910を有している。吸引管800は、装置空間190d内に配置された管であり、膜分離装置900によって濾過された水を膜分離装置900から吸引するための管である。洗浄管700は、装置空間190d内に配置された管であり、排出開口700oを備えている。洗浄管700は、吸引管800内の固形物を含む水を吸引管800の外に移動させるための管である。
図5、
図6等を参照して説明したように、この構成によれば、洗浄バルブ710を開けることによって、洗浄管700を通じて吸引管800内から固形物を含む水を吸引管800の外に移動させることができるので、容易に吸引管800を洗浄できる。また、洗浄バルブ710を閉じることによって、洗浄管700の排出開口700oから吸引管800へ異物が入ることを抑制できる。
【0062】
また、
図4で説明したように、洗浄管700の排出開口700oは、排出開口700oの水平方向の位置における水面の高さ(ここでは、膜分離槽140の第1水位WL1)よりも高い位置に配置されている。従って、作業者は、洗浄管700の排出開口700oから流出する水を容易に観察できる。また、作業者は、洗浄管700の排出開口700oから流出する水を観察することによって、吸引管800の洗浄の状況を容易に確認できる。
【0063】
また、
図2、
図4等に示すように、洗浄管700の排出開口700oは、膜分離槽140に、配置されている。従って、洗浄管700の排出開口700oから流出する水が、膜分離槽140よりも下流側の水処理槽に流入することを抑制できる。
【0064】
また、洗浄管700の洗浄バルブ710は、手動バルブである。従って、作業者は、洗浄バルブ710を操作することによって、容易に、吸引管800と洗浄管700の排出開口700oとの連通を開閉できる。また、手動バルブは、複雑な構成を備えるバルブ(例えば、油圧などの駆動源によって開閉されるバルブ)と比べて、構成が単純であり、耐久性が高い。従って、バルブの故障に起因する排出開口700oから吸引管800への異物の流入を、抑制できる。
【0065】
また、本実施例では、
図3、
図4に示すように、洗浄管700の排出開口700oは、吸引管800の内部領域のうちの最も高い部分800hよりも高い位置に配置されている(H3>H1)。従って、吸引管800内に低密度の固形物が存在する場合に、洗浄管700を通じて吸引管800内から低密度の固形物を含む水を吸引管800の外に容易に移動させることができるので、容易に吸引管800を洗浄できる。
【0066】
また、
図3に示すように、吸引管800は、第1管810と第2管820とを含んでいる。第1管810は、吸引管800の内部領域のうちの最も高い部分800hを形成している。第2管820は、第1管810の膜分離装置900側とは反対側に接続された部分である。第2管820の内部領域のうちの最も高い部分820hの第2高H2は、第1管810の内部領域の最も高い部分800hの第1高H1よりも、低い。すなわち、第2管820は、第1管810の内部領域の最も高い部分800hよりも低い位置に配置された内部領域を形成している。吸引管800内には、水の密度よりも高い密度を有する固形物が存在し得る。そのような固形物は、吸引管800の低い第2管820に堆積し得る。そして、
図2、
図4に示すように、洗浄管700は、吸引管800の第2管820に接続されている。この構成によれば、第2管820に堆積した固形物を含む水は、洗浄管700を通じて吸引管800の外に容易に移動することができるので、容易に吸引管を洗浄できる。
【0067】
また、
図2に示すように、排水処理装置100は、膜分離槽140内に配置されたN個(Nは2以上の整数。本実施例では、N=3)の膜分離装置900を備えている。吸引管800は、N個の膜分離装置900にそれぞれ接続されたN個の第1管810と、N個の第1管810に接続された第2管820と、を含んでいる。そして、洗浄管700は、第2管820に接続されている。従って、N個の膜分離装置900が用いられる場合に、適切に吸引管800を洗浄できる。例えば、N個の膜分離装置900に共通の第2管820内の水を洗浄管700の排出開口700oから排出することによって、洗浄の度合いがN個の膜分離装置900の間で偏ることを抑制できる。
【0068】
また、
図5に示すように、本実施例では、吸引ポンプ600と吸引管800の第2管820とは、第1外管610を介して接続される。吸引ポンプ600が排水処理装置100から遠い場合には、排水処理装置100から吸引ポンプ600に向かって延びる第1外管610の勾配を、小さくせざるを得ない。第1外管610の勾配が小さい場合には、空気などのガスが第1外管610内に溜まり易い。本実施例では、
図3に示すように、第2管820の内部領域のうちの最も高い部分820hの第2高H2は、N個の第1管810のN個の内部領域のN個の最も高い部分800hのN個の高さ(本実施例では、共通の第1高H1)のいずれよりも低い。従って、吸引ポンプ600が排水処理装置100から遠い場合であっても、第1外管610の勾配を大きくすることができる。換言すれば、第1外管610の勾配の下限が決められている場合に、排水処理装置100から遠い位置に吸引ポンプ600を配置できる。このように、第1外管610の勾配を小さくせずに、吸引ポンプ600の位置の自由度を向上できる。なお、第1高H1と第2高H2との間の差が大きい場合、第1管810内に低密度の固形物やガスが溜まり易くなる。従って、第1高H1と第2高H2との間の差は、小さいことが好ましい。例えば、第1高H1と第2高H2との間の差は、120mm以下が好ましく、100mm以下が特に好ましく、80mm以下が最も好ましい。
【0069】
B.第2実施例:
図7(A)、
図7(B)は、吸引管800(
図5)の洗浄処理の別の実施例を示すフローチャートである。
図6の実施例との差異は、S120が、S120a(
図7(A))に置換され、S190がS190a(
図7(B))に置換されている点だけである。洗浄処理の他の部分の処理は、
図6の対応する部分の処理と、同じである(同じ部分については、図示と説明を省略する)。
【0070】
S120a(
図7(A))では、作業者は、ポンプバルブ613に加えて、ユニットバルブ811を閉じる。排水処理装置100が複数の膜ユニット900を備えている場合、作業者は、全てのユニットバルブ811を閉じる。
【0071】
S190a(
図7(B))では、作業者は、ポンプバルブ613に加えて、ユニットバルブ811を開ける。排水処理装置100が複数の膜ユニット900を備えている場合、作業者は、全てのユニットバルブ811を開ける。
【0072】
このように、第2実施例では、ユニットバルブ811が閉じている状態で、吸引管800の洗浄が行われる。従って、洗浄水流に起因する圧力が膜ユニット900(例えば、膜モジュール910)に印加されることを抑制できる。この結果、膜ユニット900の破損を抑制できる。
【0073】
C.第3実施例:
図8は、排水処理装置の別の実施例を示す概略図である。図中には、ボディ方向Dbを向いて見た膜分離槽140xの一部分が示されている。吸引管800xと洗浄管700xとに変更が加えられている点を除いて、排水処理装置100xの構成は、
図1-
図4の排水処理装置100の構成と同じである(同じ部分については、図示と説明を省略する)。
【0074】
吸引管800xは、第1管810xと第2管820xとを有している。本実施例の第1管810xと
図3の第1管810との間の差異は、第1管810xが、高さを変えずに水平に延びている点だけである。第1管810xの流路上には、ユニットバルブ811が設けられている。第1高H1xは、第1管810xの内部領域のうちの最も高い部分の高さである。本実施例では、第1管810xの内部領域は水平に延びている。従って、膜ユニット900から第2管820xまで第1管810xを辿る場合に、任意の位置において、内部領域の最も高い部分の高さが第1高H1xである。
【0075】
本実施例の第2管820xと
図3、
図4の第2管820との間の差異は、本実施例の分岐管820xbが、
図2の分岐管820bよりも長い点だけである。本実施例の直管820aの構成は、
図2の直管820aの構成と同じである。第2高H2は、第2管820xの内部領域のうちの最も高い部分820hの高さである(
図8では、最も高い部分820hは、直管820aから選択されている)。本実施例では、第2高H2は、第1高H1xよりも高い。本実施例では、吸引管800xの内部領域のうちの最も高い部分は、第2管820xの内部領域のうちの最も高い部分820hである。第2高H2は、吸引管800xの内部領域のうちの最も高い部分の高さを示している。
【0076】
洗浄管700xは、直管820aの上面(すなわち、最も高い部分)に接続されている。このように、洗浄管700xは、吸引管800xのうち吸引管800xの内部領域の最も高い部分820hを形成する部分に接続されている。そして、洗浄管700xは、直管820aから鉛直上方向に延びて、排出開口700xoに至る。洗浄管700xの流路上には、洗浄バルブ710xが設けられている。
【0077】
本実施例において、吸引管800xの洗浄処理は、
図6、または、
図7の実施例と同じである。ここで、洗浄バルブ710の代わりに洗浄バルブ710xが用いられ、排出開口700oの代わりに排出開口700xoが用いられる。
【0078】
第3高H3x(
図8)は、排出開口700xoの高さである。本実施例においても、排出開口700xoは、膜分離槽140xに、配置されている。そして、第3高H3xは、膜分離槽140xの通常の運転状態での水面の高さ(水位が変動する場合には、最も高い水位。本実施例では、第1水位WL1)よりも高い。すなわち、排出開口700xoは、空気中に配置されている。また、排出開口700xoの第3高H3xは、吸引管800xの内部領域のうちの最も高い部分800hの第2高H2よりも、高い。洗浄バルブ710xは、手動バルブである。また、図示を省略するが、本実施例においても、膜分離槽140xは、3個の膜ユニット900を有している。吸引管800xは、3個の膜分離装置900にそれぞれ接続された3個の第1管810xと、3個の第1管810xに接続された第2管820xと、を含んでいる。そして、洗浄管700xは、第2管820xに接続されている。このように、本実施例の排水処理装置100xは、
図1-
図4の排水処理装置100と共通の種々の特徴を有している。従って、排水処理装置100xは、
図1-
図4の実施例と同様の種々の利点を奏する。
【0079】
上述したように、吸引管800x内には、水の密度よりも低い密度を有する固形物が、存在し得る。このような低密度の固形物は、吸引管800xの内部領域の最も高い部分に集まりやすい。本実施例では、洗浄管700xは、吸引管800xのうち吸引管800xの内部領域の最も高い部分を形成する部分に接続されている。従って、吸引管800x内に低密度の固形物が存在する場合に、供給水を用いる吸引管800xの洗浄(
図6、
図7(A)、
図7(B))は、低密度の固形物を含む水を排出開口700xoから容易に排出できる。このように、容易に吸引管800xを洗浄できる。また、吸引管800x内のガスも、低密度の固形物と同様に、容易に、排出開口700xoから排出される。
【0080】
D.変形例
(1)膜分離装置に接続される吸引管は、上記の吸引管800、800x(
図1-
図5、
図8)の構成に代えて、膜分離装置に接続されるとともに膜分離装置から水を吸引するように構成された種々の管であってよい。例えば、第1管810は、膜ユニット900との接続部分よりも高い位置に配置された部分を含んでよい。第2管820の内部領域は、第1管810の内部領域の最も高い部分よりも高い位置に配置された部分を含んでよい。また、
図2の実施例で、膜分離装置900の総数は、1であってよい。この場合、第1管810の総数は、1であってよい。また、第2管820は、1個の第1管810と第1接続管148とを接続する分岐の無い管であってよい。このように、吸引管は、1個の膜分離装置に接続された分岐の無い1本の管であってよい。この場合、洗浄管は、吸引管の任意の位置に接続されてよい。
【0081】
(2)洗浄管の構成は、上記の洗浄管700、700x(
図2、
図4、
図5、
図8)の構成に代えて、吸引管に接続されるとともに吸引管内の固形物を含む水を吸引管の外に移動させることが可能な任意の構成であってよい。例えば、洗浄管の開口(例えば、排出開口700o、700xo)は、吸引管の内部領域のうちの最も高い部分(例えば、
図4の吸引管800の部分800h)よりも低い位置に配置されてもよい。また、洗浄管の開口は、水面下に配置されてもよい。また、洗浄管は、吸引管から、膜分離槽140、140xよりも上流側の水処理槽(例えば、流量調整槽120)まで延びてよい。そして、洗浄管の開口は、膜分離槽140、140xよりも上流側の水処理槽に配置されてよい。また、洗浄管は第1管810、810xに接続されてもよい。この場合、洗浄管は、第1管810、810x毎に設けられることが好ましい。
【0082】
また、吸引管の洗浄のためには、吸引管に連通する管に水が供給される。
図5の実施例では、第1外管610を介して吸引管800に連通する給水管611の給水開口611oに、水が供給される。ここで、水の供給位置の高さは、種々の高さであり得る。例えば、水の供給は、マンホール開口180以上の種々の高さの位置で行われ得る。ここで、水の供給位置が高いほど、吸引管内の水は、洗浄管の開口(例えば、
図5の排出開口700o)から流出し易い。また、洗浄管の開口の高さが低いほど、吸引管内の水は、洗浄管の開口から流出し易い。洗浄管の開口の高さは、吸引管に連通する管に洗浄のための水が供給される場合に、吸引管内の水が洗浄管の開口から流出するように、予め実験的に決定されてよい。例えば、洗浄管の開口の高さは、マンホール開口の最も高い部分(例えば、
図5のマンホール開口180の最高部分180h)と同じ高さで、吸引管に連通する管に、圧力を付与せずに水が供給される場合に、吸引管内の水が洗浄管の開口から流出するような高さであることが、好ましい。ここで、膜分離装置を有する膜処理槽(例えば、膜分離槽140)の水位は、通常の運転状態における水位(水位が変動する場合には、最低水位。
図3の例では、第2水位WL2)に設定されてよい。洗浄管の開口が膜処理槽の水位より高い場合であっても、膜の圧力損失によって、吸引管内の水は洗浄管の開口から流出し得る。なお、吸引管の洗浄のための水の供給には、吸引管に連通する任意の管が用いられてよい。例えば、吸引管には、給水管611のように水を供給するための管が接続されてよい。
【0083】
いずれの場合も、洗浄管の構成は、固形物が移動し易い単純な構成であることが好ましい。例えば、洗浄管は、分岐のない1本の流路であることが好ましい。
【0084】
(3)洗浄管の流路上に設けられるバルブ(例えば、洗浄バルブ710、710x)の構成は、洗浄管を開閉可能な種々の構成であってよい。例えば、ボールバルブ、グローブバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブ、ニードルバルブ、ダイヤフラムバルブから選択されたバルブが用いられてよい。また、種々の固形物を含む水を、洗浄管を通じて排出するためには、バルブは、固形物が移動し易いように、構成されていることが好ましい。例えば、バルブは、弁体と弁座を備え、外部の力によって弁体を動かすように構成されてよい。バルブは、1本の流路を開閉するバルブであって、分岐流路を備えていないバルブであることが好ましい。バルブは、流路の開閉を行う単機能のバルブであることが好ましい。なお、バルブは、手動バルブに代えて、電気、油圧、空気の圧力、などの動力源によって開閉されるバルブであってよい。例えば、バルブは、電磁弁であってよい。他のバルブ(例えば、給水バルブ612、ポンプバルブ613、ユニットバルブ811など)についても、同様に、種々のバルブを採用可能である。
【0085】
(4)吸引管の洗浄処理は、
図6、
図7(A)、
図7(B)の処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、S160(
図6)の終了条件は、上述した第1条件と第2条件の両方が満たされることに代えて、他の種々の条件であってよい。例えば、給水開口611o(
図5)への水の供給が開始されてからの経過時間が、予め決められた基準時間以上であることが、終了条件であってよい。基準時間は、固形物等を適切に排出できるように、予め実験的に決められてよい。また、S120(S120a)-S140の複数のバルブのそれぞれの操作と水の供給の開始との順番は、任意の順であってよい。また、S170-S190(S190a)の複数のバルブのそれぞれの操作と水の供給の停止との順番は、任意の順であってよい。洗浄処理は、ポンプバルブ613を開けたまま、行われてよい。
【0086】
(5)水処理に用いられる膜は、中空糸膜に限らず、活性汚泥などの固形物を含む水から、固形物と水を分離して、水を濾過する任意の膜であってよい。例えば、膜は、平膜、または、モノリス膜であってよい。また、膜の材料は、合成樹脂やセラミックなど、種々の材料であってよい。
【0087】
(6)膜分離装置の構成は、
図2、
図3の膜分離装置900の構成に代えて、1以上の膜を有する任意の構成であってよい。例えば、散気装置940は、膜分離装置から省略されてよい。この場合、膜分離装置の下方に、別途に、散気装置を配置することが好ましい。また、1個の膜分離装置に含まれる膜の総数は、1であってよい。この場合、集水管(例えば、集水管920(
図3))は、省略されてよい。そして、吸引管(例えば、吸引管800の第1管810)と1個の膜とが直接に接続されてよい。
【0088】
(7)膜処理槽の構成は、
図1-
図4の膜分離槽140の構成に代えて、1以上の膜分離装置を有する種々の構成であってよい。例えば、膜処理槽は、膜分離装置と接触材とを有する接触ばっ気槽であってよい。
【0089】
(8)排水処理装置の構成は、排水処理装置100、100x(
図1-
図4、
図8)の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、水処理に用いられる複数の水処理槽(例えば、水処理槽110-160)は、複数個のボディに分散して設けられてよい。例えば、1個のボディは、膜処理槽のみを収容してよい。この場合も、膜処理槽を有する1個のボディは、膜処理槽を有する排水処理装置を構成している。また、第2外管620(
図1)は、吸引ポンプ600と、消毒槽150を有する排水処理装置と、を接続する。また、排水処理には、
図1等で説明した水処理槽110-160に限らず、膜処理槽を含む1以上の種々の水処理槽が用いられてよい。例えば、脱窒槽130に代えて、攪拌装置を有する嫌気処理槽が用いられてよい。
【0090】
(9)膜分離装置から水を吸引するように構成され、そして、吸引管を洗浄できるように構成された排水処理システムの構成は、
図5の排水処理システム1000の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。一般的には、排水処理システムは、膜処理槽を含む排水処理装置と、吸引ポンプと、排水処理装置の吸引管と吸引ポンプとを接続する管である外管と、を備える種々の構成であってよい。例えば、
図5の実施例で、給水管611は、省略されてよい。吸引管の洗浄処理では、作業者は、第1外管610と吸引ポンプ600との接続を外し、第1外管610の端部に水を供給してよい。また、排水処理装置は、地上に設置されてよい。
【0091】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0092】
100、100x…排水処理装置、110…ばっ気型スクリーン、111…スクリーン、120…流量調整槽、121…ポンプ、122…計量調整装置、130…脱窒槽、131…散気装置、139…開口、140、140x…膜分離槽、148…第1接続管、148o…開口、149…循環ポンプ、150…消毒槽、151…第2接続管、152…消毒剤、159…開口、160…放流ポンプ槽、161…放流ポンプ、180…マンホール開口、190…外壁、190b…ボディ、190d…装置空間、190s…外面、600…吸引ポンプ、610…第1外管、611…給水管、611o…給水開口、612…給水バルブ、613…ポンプバルブ、620…第2外管、700、700x…洗浄管、700o、700xo…排出開口、710、710x…洗浄バルブ、800、800x…吸引管、800h…部分、810、810x…第1管、811…ユニットバルブ、820、820x…第2管、820a…直管、820b、820xb…分岐管、820h…部分、900…膜分離装置(膜ユニット)、910…膜モジュール、911…個別管、920…集水管、930…薬液管、940…散気装置、1000…排水処理システム、H1、H1x…第1高、H2…第2高、H3、H3x…第3高、GL…地面、Db…ボディ方向、WL1…第1水位、WL2…第2水位