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  • 特許-手指消毒剤用エアゾール製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】手指消毒剤用エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20241205BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20241205BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20241205BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241205BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241205BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20241205BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241205BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241205BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N31/02
A01N33/12 101
A01P1/00
A61L2/18
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/41
A61Q19/10
A61K9/12
A61K31/045
A61K31/14
A61K33/42
A61P17/00 101
A61P31/00
A61L101:22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021027457
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128964
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】得野 克成
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-327750(JP,A)
【文献】特開2012-021035(JP,A)
【文献】特開2008-155525(JP,A)
【文献】特開2002-309241(JP,A)
【文献】特開2016-014082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A61K 8/00
C11D
B65C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1 種の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の外装容器と、
前記外装容器に収容され、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物 塩、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有し、25℃におけpHが3.0~5.0であ 手指消毒剤と、
前記外装容器の内部に前記手指消毒剤とともに充填されている不燃性圧縮気体として窒 素ガスを備えることを特徴とする手指消毒剤用エアゾール製品。
【請求項2】
第四級アンモニウム塩化物塩が、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムの少な くとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の手指消毒剤用エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるための消毒剤を内包するエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるために、有効成分としてエタノールなどを配合した消毒剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、実施例1において、エアゾール耐圧容器に、塩化ベンゼトニウム、99%イソプロピルアルコール、グリセリン、精製水からなる原液を入れ、噴射剤として炭酸ガスを充填したエアゾール製品、実施例2において、エアゾール耐圧容器に、塩化ベンザルコニウム、99%エタノール、精製水からなる原液を入れ、噴射剤として炭酸ガスを充填したエアゾール製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-327750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のエアゾール製品においては、耐圧性を確保するために金属性の容器が使用されているところ、内包される消毒剤に有機塩化物が含有されているため、徐々に有機塩化物から遊離された塩化物イオンが容器の内面を腐食し、長期間保存すると容器の一部に穴が開き、容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがあった。
【0006】
そこで、本件発明では、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する消毒剤を収容するエアゾール製品について、長期保存しても当該消毒剤を収容する容器が腐食して容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがない手指消毒剤用エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、内側表面がポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ 樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層を有する金属性の外装 容器と、前記外装容器に収容され、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウ ム塩化物塩、リン酸及びリン酸三ナトリウムを含有し、25℃におけpHが3.0~5 .0である手指消毒剤と、前記外装容器の内部に前記手指消毒剤とともに充填されてい る不燃性圧縮気体として窒素ガスを備えることを特徴とする手指消毒剤用エアゾール製 品である。
【0008】
〔2〕そして、第四級アンモニウム塩化物塩が、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムの少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕に記載の手指消毒剤用エアゾール製品である。
【発明の効果】
【0010】
本件発明によれば、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する消毒剤を収容するエアゾール製品について、長期保存しても当該消毒剤を収容する容器が腐食して容器内に封入されている圧縮ガスの圧力により破裂するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の手指消毒剤用エアゾール製品における中央断面図である。
図2図1におけるα部拡大である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件発明の手指消毒剤用エアゾール製品に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0013】
外装容器1は、本発明の手指消毒剤用エアゾール製品において、使用者から視認することができる最も外側に位置し、内部に手指消毒剤2及び圧縮ガスを収容する金属性の部材である。外装容器1の内部に不燃性圧縮気体を充填することから、アルミ合金、ステンレスなどの金属性であり、所定の圧力以下では破断しないように耐圧性を有している。本実施形態において、外装容器1は、上部に開口を有する中空の有底円筒状である。その上部の開口は、図1に示すように、マウンティングカップ3によって封止される。
【0014】
外装容器1は、その内側表面、すなわち、手指消毒剤2と接触する表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層11を有している。被覆層11により、外装容器1が、第四級アンモニウム塩化物塩を含有する手指消毒剤2を収容している状態で長期保存しても、塩化物イオンが被覆層11に阻まれて外装容器1の内側表面に到達しないために外装容器1が腐食されない。また、被覆層11の厚みとしては、0.1~100μmが好ましく、0.5~50μmがさらに好ましく、1~30μmが最も好ましい。被覆層11の厚みがこの範囲であると、塗工作業が行い易く、また、手指消毒剤2による外装容器1の腐食を抑制することができる。
【0015】
被覆層11として使用することができるポリアミドイミドは、カルボン酸無水物とジアミンなどを縮合重合させて得られたポリアミド酸を、さらに脱水及び環化反応(イミド化)させて得られる樹脂である。例えば、無水ピロメリットさん(ベンゼン-1,2,4,5,-テトラカルボン酸二無水物)と4,4’-ジアミノジフェルエーテルを等モルで縮合重合させて、ポリアミド酸を得て、次いで、そのポリアミド酸を加熱又は触媒を用いてイミド化を行い、ポリ(4,4’-オキシジフェニレン-ピロメリチミド)というポリアミドイミドが得られる。このようなポリアミドイミドは、薬品耐性が高いため、本発明の手指消毒剤用エアゾール製品の使用が想定される長期間においても、塩化物イオンや酸によって劣化することがない。また、ポリアミドイミドを用いて被覆層11を形成するときには、まず外装容器1の内側表面に前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布し、溶媒を除去してから熱を加えるなどしてイミド化によりポリアミドイミドを合成することが好ましい。
【0016】
また、被覆層11として使用することができるフェノール系エポキシ樹脂は、主剤又は硬化剤の少なくも一方にフェノール類化合物が用いられているエポキシ樹脂である。例えば、主剤でありフェノール類化合物であるビスフェノールAジグリシジルエーテルと硬化剤でありフェノール類化合物であるビスフェノールAを開環重合させて得られる。このようなフェノール系エポキシ樹脂は、薬品耐性が高いため、本発明の手指消毒剤用エアゾール製品の使用が想定される長期間においても、塩化物イオンや酸によって劣化することがない。また、フェノール系エポキシ樹脂を用いて被覆層11を形成するときには、まず外装容器1の内側表面に、主剤となるグリシジルエーテルと、水酸基、アミノ基、有機酸無水物などの硬化剤を配合した混合物を塗布し、熱を加えるなどして開環重合させてフェノール系エポキシ樹脂を合成することが好ましい。
【0017】
次に、外装容器1に内包される手指消毒剤2について説明する。
【0018】
本発明における炭素数1~3の低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの分子中における炭素数が1個から3個のアルコールである。当該低級アルコールを用いることにより、細菌の細胞膜やウイルスのエンベロープの破壊並びに酵素等のたんぱく質の凝固によりウイルスや細菌を死滅させて、それら細菌やウイルスによる病気など人体への害を予防することができる。
【0019】
炭素数1~3の低級アルコールの手指消毒剤2における含有割合としては、20w/v%~65w/v%であることが好ましく、そして25~63w/v%であることがより好ましい。炭素数1~3の低級アルコールの含有割合がこの範囲であると、細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることがき、さらには酸との組み合わせによりウイルスに対してより効果を発揮することができる。なお、濃度の表記については、100mLあたりのグラム数(g)の割合である。
【0020】
本発明における第四級アンモニウム塩化物塩は、一般的に化学式N+RX-(R:アルキル基,X-:塩化物イオン)で表されるように、第四級アンモニウムイオンと塩化物イオンとからなる化合物である。第四級アンモニウム塩化物塩としては、具体的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウムなどが好ましく、特に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが好ましい。これらの第四級アンモニウム塩化物塩を単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。このように、第四級アンモニウム塩化物塩が含まれることによって、細菌の細胞膜が破壊されやすくなり、あるいはコロナウイルス(とりわけCOVID-19)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどのエンベロープを有するRNAウイルスやヘルペスウイルス、天然痘ウイルスなどのエンベロープを有するDNAウイルスに対して、エンベロープが破壊されやすくなり、より不活化することができる。
【0021】
第四級アンモニウム塩化物塩の含有割合は、手指消毒剤2のうち、0.005w/v%~5.0w/v%が好ましく、0.01w/v%~3.0w/v%がさらに好ましく、0.01w/v%~2.0w/v%が最も好ましい。第四級アンモニウム塩化物塩の含有割合がこの範囲にあると、細菌の細胞膜が破壊されやすくなり、エンベロープを有するRNAウイルスやDNAウイルスが、より不活化されやすくなる。
【0022】
本発明の手指消毒剤2において酸を配合することができる。当該酸は、エタノールや第四級アンモニウム塩化物塩等と併存することにより、核酸を保護するカプシドを破壊することで、エタノールや第四級アンモニウム塩化物塩等の細胞への浸透を促進させ、とりわけエンベロープの有無を問わず幅広いRNAウイルス及びDNAウイルスに対しても不活化などの効力を増強させる成分である。
【0023】
酸としては、具体的に、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸などの有機酸や、リン酸、硫酸などの無機酸が好ましい。これらの酸は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0024】
酸の含有割合は、手指消毒剤2のうち、0.1w/v%~3.0w/v%が好ましく、0.2w/v%~2.5w/v%がさらに好ましい。酸の含有割合がこの範囲にあると、ウイルスの不活化、菌の死滅などの効力を奏することができる。
【0025】
本発明の手指消毒剤2において、前記酸の塩を配合することができる。前記酸の塩は、上述した有機酸や無機酸に対応する塩である。具体的には、例えば、酸としてクエン酸を用いているときはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウムなどの塩であり、リンゴ酸を用いているときはリンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウムなどの塩であり、リン酸を用いているときはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムなどの塩である。このように、前記酸に対応する塩が含まれることによって、手指消毒剤2が所定範囲のpHとなるとともに、手指消毒剤2において炭素数1~3の低級アルコールや水が長く使用して少々揮発したとしても、pHの大きな変動が抑制されるため、使用者は所定範囲の液性にて使用することができる。
【0026】
前記酸の塩の含有割合は、手指消毒剤2のうち0.1w/v%~3.0w/v%が好ましく、0.2w/v%~2.5w/v%がさらに好ましい。前記酸の塩の含有割合がこの範囲にあると、手指消毒剤2のpHを所定の範囲に保つことができる。
【0027】
本発明の水は、炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩、酸、前記酸の塩を均一な溶液とするための溶媒である。具体的に、水としては、日本薬局方規格の水が好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱等により精製水を滅菌処理した滅菌精製水などが好ましい。そして、水の配合割合は、本発明に用いられる炭素数1~3の低級アルコール、第四級アンモニウム塩化物塩、酸、前記酸の塩などを除く残余であり、30w/v%~75w/v%であることが好ましく、32w/v%~65w/v%であることが好ましい。
【0028】
手指消毒剤2には、上記した成分の他に、必要に応じて、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビットなどの多価アルコールやヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムなどの多糖類又はその塩である保湿剤、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤、香料、色素などを配合することもできる。例えば、保湿剤を添加することでさらに肌荒れを防止することができる。
【0029】
上述した成分が配合されている手指消毒剤2は、酸性・アルカリ性の程度を示す液性として、25℃におけるpHが3.0~5.0であることが好ましく、3.0~4.0であることがさらに好ましい。手指消毒剤2のpHがこの範囲であると、細菌の死滅や各種ウイルスの不活化に効果を奏する。
【0030】
このようにして配合された手指消毒剤2は、噴霧口71から噴霧されたとき、噴霧口71から20cmにおける平均粒子径が15~150μmであることが好ましく、さらに20~120μmであることがより好ましい。平均粒子径がこの範囲であると、エアゾール製品の噴霧口71から噴霧して使用者の手指に付着したときに、途中で炭素数1~3の低級アルコールが揮発したとしても十分な殺菌消毒性を呈するとともに、過分の炭素数1~3の低級アルコールが含まれていないためもし身近に存在する火気に引火しても火元から燃え広がりにくいようにすることができる。なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって計測されることが好ましい。
【0031】
本発明の不燃性圧縮気体は、手指消毒剤2とともに外装容器1に充填され、通常使用される10~30℃程度の常温において、火気により引火及び燃焼が起きず、外装容器1内にて大気圧より高い圧力の状態である気体である。後述するアクチュエータ7が押されることにより、手指消毒剤2とともに不燃性圧縮気体が外部へ排出されることとなる。具体的に、不燃性圧縮気体は、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。不燃性圧縮気体がこれらの気体であると、使用者の近くに火気が存在していても引火等しないために本発明の手指消毒剤用エアゾール製品を安全に使用することができる。
【0032】
また、手指消毒剤2とともに外装容器1に充填されている不燃性圧縮気体の圧力としては、35℃において0.10MPa以上1.0MPa未満であることが好ましく、0.2MPa以上0.9MPa以下であることが好ましい。不燃性圧縮気体の圧力がこの範囲であると、不燃性圧縮気体とともに手指消毒剤2が円滑に排出される。
【0033】
当該エアゾール製品は、図1に示すように、外装容器1、手指消毒剤2、マウンティングカップ3、ステム4、弾性バネ5、チューブ6、アクチュエータ7などから構成されている。外装容器1に収容されている手指消毒剤2と不燃性圧縮気体は、外装容器1の外部より圧力が高くなっている。このため、アクチュエータ7が押下されると、弾性バネ5が付勢力に抗ってステム4も押下されることにより、ステム孔41が袋体2の内部と連通し、袋体2を介して手指消毒剤2と不燃性圧縮気体が、チューブ6、ステム4を通じてアクチュエータ7の噴霧口71から外部に排出される。
【0034】
また、マウンティングカップ3のうち外装容器1側、すなわち、手指消毒剤2と当接しうる側においては、外装容器1の内側表面と同様に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂により被覆された被覆層11を有することが好ましい。
【実施例
【0035】
以下、本件発明における手指消毒剤2について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<処方1>
20℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、炭素数1~3の低級アルコールとしてエタノールを25g、第四級アンモニウム塩化物塩として塩化ベンザルコニウムとして0.05g、保湿剤としてグリセリンを0.2g、同じく保湿剤としてヒアルロン酸ナトリウム(2)を0.001g、そして、残余として精製水を加え、攪拌し、合計100mlの手指消毒剤を得た。
【0037】
<処方2~11>
処方2~11は、炭素数1~3の低級アルコール及び第四級アンモニウム塩化物塩を必須成分とし、必要に応じて、酸、前記酸に対応する塩を、それぞれ表1に示したように処方し、実施例1と同様にして、合計100mlの手指消毒剤を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
このようにして得られた手指消毒剤及び圧縮ガスとして窒素ガスを内包するエアゾール製品は、以下の評価方法において性能が確認された。なお、処方1から処方11の組成物において、いずれも菌に対する効果はあった。
【0040】
〔安定性試験〕
処方1から処方11の手指消毒剤及び圧縮ガスとして窒素ガスを内包するエアゾール製品において、外装容器1の内側表面に、ポリアミドイミド又はフェノール系エポキシ樹脂により被覆された被覆層11を有するエアゾール製品と、その被覆層11を有さないエアゾール製品を用意し、それぞれ気温40℃の環境下で静置し、1ケ月後、2ケ月後、3ケ月後の状態を目視にて確認した。そして、それぞれのエアゾール製品において、外観上まったく変化がないものを「○」と評価し、外観上被覆層11に軽度の剥離や気泡の発生が見られたものを「△」と評価し、外観上被覆層11が侵食され外装容器1の内側表面が露出したものを「×」と評価した。このとき、「○」と「△」をエアゾール製品として破裂などを起こさないとして優良と、「×」をエアゾール製品として破裂などを起す可能性があるとして不良と判断した。
【0041】
安定性試験に関するこれらの結果を表2及び表3に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
表2及び表3に示すように、処方1から処方11の手指消毒剤及び圧縮ガスとして窒 素ガスを内包するエアゾール製品において、比較例1から比較例11である外装容器1 の内側表面に被覆層11を有さないエアゾール製品では、1ケ月後にはすでに外観上被 覆層11が侵食され外装容器1の内側表面が露出していることから不良であり、実施例 1から実施例である外装容器1の内側表面にポリアミドイミド又はフェノール系エポ キシ樹脂により被覆された被覆層11を有するエアゾール製品では、3ケ月経過しても 依然として外観上変化がないことから良好であり、これらの被覆層11により、顕著な 効果を奏することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0045】
1・・・外装容器
11・・・被覆層
2・・・手指消毒剤
3・・・マウンティングカップ
4・・・ステム
41・・・ステム孔
5・・・弾性バネ
6・・・チューブ
7・・・アクチュエータ
71・・・噴霧口
図1
図2