(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】化粧料容器
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A45D33/00 615C
(21)【出願番号】P 2021054792
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】君島 美津志
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-070322(JP,U)
【文献】特開2020-103739(JP,A)
【文献】特開2009-254639(JP,A)
【文献】特表2003-527909(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105193068(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0162565(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に化粧料充填用凹部が形成された中皿と、上面に上記中皿を着脱自在に収容する中皿収容凹部が形成された容器本体と、上記容器本体を蓋する蓋体とを備えた化粧料容器であって、
上記中皿は、樹脂の一体成形品からなり、上記中皿の下面から下向きに、上記容器本体の中皿収容凹部と係合するための係合部材が突出形成されており、
上記係合部材は、上記中皿の下面と平行な方向における外形寸法を拡縮しうるよう変形自在に構成されており、
上記容器本体には、その中皿収容凹部の底面に、容器本体の下面に至る開口が形成されており、上記開口は、中皿収容凹部の底面から所定深さまでの第1の開口縁と、上記第1の開口縁の下端から容器本体の下面に至る第2の開口縁とを有し、上記第1の開口縁が、上記第2の開口縁よりも小さくなるよう開口内壁に段差が設けられており、
上記係合部材が、
互いに所定の距離を保った状態で上記第2の開口縁の内側に収まる一対の係合片と、この一対の係合片を弾力的に支持する弾性片と、上記弾性片を側面から支持し上記中皿の下面から垂立する支持軸とを備え、上記弾性片は、上記中皿の下面に対して隙間を開けた状態で配置されており、
上記弾性片がその外形寸法を縮小しながら上記容器本体側の第1の開口縁を通過し、第2の開口縁に達した状態で元の外形寸法に復帰して
、上記一対の係合片が上記第1の開口縁と係合することにより、上記中皿が容器本体の中皿収容凹部内に固定されるようになっていることを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
上記弾性片が、平面視でV字状、平面視でS字状、円弧状のいずれかである請求項1に記載の化粧料容器。
【請求項3】
上記蓋体を閉じた状態における化粧料容器全体の厚みが9~13mmである請求項1または2記載の化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に中皿を着脱自在に収容することができ、その着脱動作が簡単で、しかも全体がコンパクトで見栄えのよい化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション等の化粧料が充填された中皿を、容器本体に対して着脱自在に収容し、使い切った際には新しい中皿に交換したり、種類の異なる化粧料ごとに用意された複数の中皿を、目的に応じて組み合わせて収容したりすることのできる化粧料容器が多用されている。
【0003】
このような、中皿交換タイプの化粧料容器において、中皿が金属製の金皿の場合は、容器本体の中皿収容用の凹部底面に粘着剤層を設けて金皿を凹部内に粘着固定し、交換時には、凹部底面に設けた貫通孔から細いピンを使って金皿を取り外すことが一般的である。
【0004】
一方、中皿が樹脂皿の場合は、樹脂の可撓性を利用して、中皿の外周面に係合用の凹部を設け、容器本体の中皿収容用の凹部壁面に係合爪等を設けて、両者の係合によって中皿を容器本体に着脱自在に取り付けるようになっているものが多い(特許文献1、2等)。
【0005】
例えば、特許文献1の化粧料容器では、
図10に示すように、容器本体1の中皿収容用の凹部2内の、向かって左側壁に、中皿3との係合用の爪4を設けるとともに、その向かい側の右側壁に、抜け止め用の凸部5を設けて、中皿3の外周面に設けられた溝3aと、上記爪4、凸部5とを係合させることにより、容器本体1の凹部2内に、中皿3を着脱自在に保持できるようになっている。そして、上記中皿3を取り出すには、
図10のX-X’断面図である
図11に示すように、上記容器本体1側に設けられた仕切り壁6の切欠き部7を利用して、矢印で示すように中皿3を、向かって左側に押し付けて、中皿3と凸部5の係合を外して斜め上に引き出すようにする。特許文献2のものも概ね同様の構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3561560号公報
【文献】特開2002-177045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような中皿3の着脱構造では、中皿3と容器本体1の凹部2とがどの位置で係合しているのかわかりにくく、消費者が中皿3を無理に外そうとして係合部を破損するという事態を招きやすいという問題がある。
【0008】
また、化粧料容器自体の問題として、中皿3を係合させるための凹凸を水平方向に凹ませたり突出させたりしているため、中皿3の周壁と容器本体1の凹部2の周囲の厚みを厚くせざるを得ないことや、凹凸を設けるスペースを確保するために、垂直方向にもある程度厚みが必要であることから、容器全体が嵩高いものとなって、薄型でシャープな外観の容器になりにくいという問題がある。特に、複数の中皿3を同時に収容するパレットタイプの容器においては、とりわけ余分なスペースをとりたくないという問題がある。
【0009】
また、従来の構成では、収容された中皿3を取り出すために、中皿3に指をかける切欠部7(
図10を参照)やこれに代わる段差部を設ける必要があることから、容器本体1の上面と中皿の高さを均一の高さに揃えることができず、見栄えが悪いという問題もある。
【0010】
そこで、容器本体の凹部周囲や中皿の周壁を薄肉にするとともに、容器本体の上面に表れる中皿の輪郭部や仕切り壁の高さを全て均一に揃えて見栄えをよくすることが検討されているが、そうすると、中皿を着脱自在に取り付ける構造を確保することが難しいため、そのような化粧料容器は実現されていないのが実情である。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、中皿着脱タイプの化粧料容器でありながら、中皿の周壁と容器本体の凹部周壁を薄肉にすることができ、しかも容器本体の上面の中皿と周囲の仕切り壁等の高さも均一に揃えることができる、優れた化粧料容器の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、上面に化粧料充填用凹部が形成された中皿と、上面に上記中皿を着脱自在に収容する中皿収容凹部が形成された容器本体と、上記容器本体を蓋する蓋体とを備えた化粧料容器であって、上記中皿は、樹脂の一体成形品からなり、上記中皿の下面から下向きに、上記容器本体の中皿収容凹部と係合するための係合部材が突出形成されており、上記係合部材は、上記中皿の下面と平行な方向における外形寸法を拡縮しうるよう変形自在に構成されており、上記容器本体には、その中皿収容凹部の底面に、容器本体の下面に至る開口が形成されており、上記開口は、中皿収容凹部の底面から所定深さまでの第1の開口縁と、上記第1の開口縁の下端から容器本体の下面に至る第2の開口縁とを有し、上記第1の開口縁が、上記第2の開口縁よりも小さくなるよう開口内壁に段差が設けられており、上記係合部材が、その外形寸法を縮小しながら上記容器本体側の第1の開口縁を通過し、第2の開口縁に達した状態で元の外形寸法に復帰して上記第1の開口縁と係合することにより、上記中皿が容器本体の中皿収容凹部内に固定されるようになっている化粧料容器を第1の要旨とする。
【0013】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記係合部材が、互いに所定の距離を保った状態で上記第2の開口縁の内側に収まる一対の係合片と、この一対の係合片を弾力的に支持する弾性片とを備えたものである化粧料容器を第2の要旨とし、それらのなかでも、特に、上記蓋体を閉じた状態における化粧料容器全体の厚みが9~13mmである化粧料容器を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明の化粧料容器は、従来、中皿の外周面と容器本体の凹部の内壁面を利用して係合させていたのに対し、中皿の下面と容器本体の凹部底面とを利用して、中皿を着脱自在に取り付けるようにしたものである。
【0015】
この構成によれば、水平方向に余分なスペースがいらず、厚みも薄くできるため、全体をコンパクトに構成することができる。
【0016】
そして、上記構成において、中皿を容器本体から外す場合は、容器本体の下面の開口内に露出している中皿の係合部材をつまむ等の動作によりその外形寸法を縮小させて上記容器本体の開口から上向きに押し上げれば、中皿を簡単に外せるようになっている。したがって、中皿の着脱方法がわかりやすく、消費者が自分で、中皿の着脱を簡単に行うことができる。しかも、従来のように、中皿と容器本体側の凹部周囲や仕切り壁等に段差や切欠きを設ける必要がなく、中皿の上面と容器本体の上面とを全て同じ高さに揃えることができるため、蓋体を開けたときに端正な印象となって見栄えがよい。
【0017】
なお、本発明のなかでも、特に、上記中皿下面の係合部材が、互いに所定の距離を保った状態で上記第2の開口縁の内側に収まる一対の係合片と、この一対の係合片を弾力的に支持する弾性片とを備えたものであると、上記一対の係合片を互いに接近させるようにつまむ動作を行うだけで簡単に中皿を取り外すことができ、好適である。そして、中皿の着脱を繰り返しても、弾性片の弾力性が保持されている限り、中皿を安定した状態で容器本体に取り付けることができる。
【0018】
また、本発明のなかでも、特に、上記蓋体を閉じた状態における化粧料容器全体の厚みが9~13mmであるものは、化粧料容器全体が薄型になっており、携帯や保管に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】上記実施の形態に用いられる中皿を示す斜視図である。
【
図4】上記中皿の下面側に設けられた係合部材を示す説明図である。
【
図5】(a)は上記中皿の正面図、(b)は(a)の底面図である。
【
図6】上記実施の形態において中皿を取り付けていない状態を示す斜視図である。
【
図7】上記実施の形態において中皿を取り付けていない状態の容器本体を下面側からみた斜視図である。
【
図8】上記実施の形態において中皿を取り付けた状態を下面側からみた斜視図である。
【
図9】(a)~(c)は、いずれも上記実施の形態に用いられる中皿の変形例を示す説明図である。
【
図10】従来の化粧料容器の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の化粧料容器の一実施の形態を示す斜視図であり、
図2は、
図1のA-A’断面図を示している。
【0022】
これらの図に示すように、この化粧料容器は、容器本体10と、この容器本体10の後端部にヒンジ連結される蓋体11とを備えており、上記容器本体10の上面には、その手前側に化粧用具収容凹部12が形成され、同じく奥側に中皿収容凹部13が形成されている。そして、上記蓋体11の内側には、化粧用の鏡14が貼着されている。
【0023】
上記容器本体10の手前側の化粧用具収容凹部12内には、2本の化粧チップ15、16が収容されており、奥側の中皿収容凹部13内には、3個の同形状の中皿20が、横一列に隙間なく嵌入されている。上記各中皿20は、いずれも、その上面に化粧料充填用凹部21が形成されており、各凹部21内に、色の異なる3種類のアイカラーがそれぞれ充填されている。
【0024】
上記中皿20は、
図2に示すように、その下面20a、すなわち、容器本体10の中皿収容凹部13の底面13aに対峙する面に、容器本体10に対して着脱自在に係合するための特殊な係合部材30を備えている。一方、容器本体10の中皿収容凹部13の底面13aには、上記中皿20の係合部材30と着脱自在に嵌合するための、特殊な開口40が設けられている。
【0025】
まず、上記中皿20を詳細に説明する。
【0026】
上記中皿20は、
図3に示すように、その上面に化粧料充填用凹部21が形成された略浅皿状で、全体が樹脂からなる一体成形品で構成されている。なお、中皿20の材質は、特に限定されるものではなく、目的とする形状に賦形できる樹脂材料であればどのようなものであっても差し支えないが、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)等を用いることが、成形性、耐久性、軽量性の点で好ましい。また、その成形方法についても、特に限定するものではないが、例えば、射出成形を用いることが好適である。ちなみに、この例では、ABSの射出成形品が用いられている。
【0027】
そして、上記中皿20の下面20aには、中皿20を垂直に立てて裏側からみた斜視図である
図4に示すように、下面20aから下向き(この図では向かって右側に向かう方向)に、容器本体10側の開口40(
図2、
図6、
図7を参照)と着脱自在に係合するための係合部材30が一体的に突出形成されている。
【0028】
なお、上記中皿20の下面20aには、上記係合部材30を挟む配置で、左右一対のガイド片50が突設されている。上記ガイド片50は、この中皿20の正面図である
図5(a)に示すように、上記係合部材30が下面20aから下向きに突出していても、この中皿20を、安定した形で水平に載置するためのものである。この姿勢で、中皿20の化粧料充填用凹部21内に、上方から化粧料が充填されるようになっている。
【0029】
そして、上記係合部材30は、
図5(a)と、その底面図である
図5(b)に示すように、中皿20の下面20aの中心から垂立する円柱状の支持軸31と、この支持軸31の側面から互いに点対称の配置で、下面20aに対して所定の隙間をあけた状態で2本一対のアーム状の弾性片32とを備えている。上記一対の弾性片32は、ともに、その平面視が略V字状になっており、それぞれの先端部に、上記弾性片32よりも厚肉の係合片33が設けられている。
【0030】
上記各係合片33の、支持軸31を中心として外側に配置される側面部分33aは、平面視が円弧状の湾曲面になっており、この向かい合う湾曲した側面部分33aが、係合部材30の平面視における最も外側に配置されている。したがって、上記係合部材30の外形寸法は、上記係合片33の向かい合う側面部分33aの平面視形状によって規定されるようになっている。なお、上記各係合片33の、互いに向かい合う側面部分33aは、上下方向において、下にいくほど互いの距離が近くなるようテーパが付けられている(
図2を参照)。
【0031】
そして、上記一対の係合片33は、何ら力を受けない状態では、上記係合片33の側面部分33aの配置が、後述する容器本体10の中皿収容凹部13内に設けられた開口40の第1の開口縁43よりも大きくなるように設定されている(
図7を参照)。また、
図5(b)において矢印で示すように、上記係合片33が外側から中心側に押されると、一点鎖線で示すように、これを支持する弾性片32が、それぞれの「V字状」の屈曲部を中心として、この屈曲部を挟む二辺の角度を狭くするように弾性変形して、上記係合片33が互いに接近するようになっている。これにより、上記係合片33の側面部分33aによって規定される係合部材30の外形寸法が小さくなり、上記第1の開口縁43よりも小さくなる。そして、上記係合片33にかかる力が解除されると、上記弾性片32の弾性変形が元に戻り、係合片33の位置も元に戻るようになっている。
【0032】
一方、上記中皿20を収容する容器本体10と蓋体11も、それぞれ樹脂の一体成形品で構成されている。樹脂の種類、成形方法は、適宜選択されるが、この例では、中皿20と同様、ABSの射出成形品が用いられている。
【0033】
そして、上記容器本体10において、中皿収容凹部13の底面13aには、
図6に示すように、上記中皿20の下面20aに設けられた係合部材30を着脱自在に取り付けるための開口40が、収容される中皿20の配置に合わせて、左右に3つ並んだ状態で設けられている。なお、各開口40の左右両側には、上記中皿20の下面20aに設けられたガイド片50(
図4、
図5を参照)を挿通させるためのスリット51が設けられている。
【0034】
上記開口40を詳細に説明する。すなわち、上記開口40は、中皿収容凹部13の底面13aにおいて、一段高く突出形成された環状部41の内側に形成されている。したがって、上記開口40は、容器本体10を斜め下から見上げた斜視図である
図7に示すように、上記突出形成された環状部41の内側に開口する第1の開口部分と、その環状部41の裏側の、凹んだ空間内に開口する第2の開口部分とを備えた、二段構造になっている。
【0035】
そして、当然ながら、上記第1の開口部分における第1の開口縁43が、上記第2の開口部分における第2の開口縁44よりも小さくなっている。なお、上記第1の開口縁43の一部に沿って下向きに突出する当たり片45が、対向するように2カ所設けられている。
【0036】
したがって、上記中皿収容凹部13(
図6を参照)内に、前記中皿20を収容する際には、上記中皿20の下面に設けられたガイド片50を、上記中皿収容凹部13の底面13aに設けられたスリット51に差し込みながら中皿20を下向きに押し込むと、
図5(b)に示すように、上記開口40の第1の開口縁43よりも外形寸法が大きく設定されている中皿20の係合部材30が、その向かい合う係合片33の互いの距離を縮めて外形寸法を小さくしながら、第1の開口縁43を通過する。このとき、上記係合部材30の係合片33は、その外側の側面部分33aが入り勝手のよいようにテーパが付けられているため(
図2を参照)、上記第1の開口縁43に沿って、無理なく通過するようになっている。そして、上記外形寸法が小さくなった状態で上記第1の開口縁43を通過した係合部材30は、径の大きくなった第2の開口縁44の、当たり片45がない位置で、弾性片32の復元力によって、元の外形寸法に戻る。これによって、中皿20が、安定した形で、中皿収容凹部13内に係合保持される。このとき、弾性片32の最外径の部分が、当たり片45に接することにより、係合時の中皿20のガタつきを抑えるため、より安定した状態で中皿20は中皿収容凹部13内に係合保持される。なお、3個の中皿20を全て容器本体10の中皿収容凹部13内に係合保持した容器本体10を、下面側から見上げた斜視図として
図8に示す。
【0037】
また、中皿収容凹部13内に収容された中皿20を取り出す場合は、上記容器本体10の下面側において、第2の開口縁44内に露出している一対の係合片33を、指先でつまんで互いの距離を縮めながら、容器本体10の上面側に押し出すことにより、簡単に、中皿20を取り外すことができる。
【0038】
このように、上記化粧料容器によれば、容器本体10の下面側に露出している係合片33をつまんで容器本体10の上面側に押し出すだけで、簡単に中皿20を取り外すことができるため、従来のように、中皿と容器本体の側面同士を利用した係合とは異なり、消費者にとっても中皿20の着脱がしやすく、使い勝手のよいものとなる。
【0039】
しかも、中皿20と容器本体10との係合を互いの側面に凹凸を付けることなく行っているため、容器の水平方向に余分なスペースが要らず、容器本体10および中皿20の周壁の厚みも薄くできるため、全体をコンパクトに構成することができるという利点を有する。ちなみに、この例では、中皿20の高さ方向の全体の厚みが3mm、係合部材30の高さ方向の厚みが3mm、化粧料容器全体の厚みが11mmであり、全体として薄型でコンパクトにすることができる。
【0040】
そして、従来のように、容器本体10の中皿収容凹部13の周囲や仕切り壁等に、中皿20を取り出すための段差や切欠きを設ける必要がないため、中皿20の上面と容器本体10の上面とを全て同じ高さに揃えることができ、蓋体11を開けたときに端正な印象となって見栄えがよいという利点を有する。
【0041】
なお、上記の例では、中皿20の下面20aに突出形成する係合部材30として、支持軸31と一対の平面視略V字状の弾性片32と一対の係合片33とで構成されたものを用いたが、係合部材30としては、この構成に限らず、中皿20の下面20a側において、平面視における(すなわち中皿20の下面20aと平行な方向における)外形寸法を拡縮自在に変形して、容器本体10側に設けられた開口40の第1の開口縁43を通過した後にその開口縁43と係合する構成であれば、どのような構成であっても差し支えない。
【0042】
例えば、
図9(a)に示すように、係合部材30を構成する弾性片62が、支持軸61を中心として、平面視S字形状に延びたアーム状であり、一対の係合片63が、上記弾性片62の両端に、弾性片62の湾曲形状に沿った形で突出形成されているものであってもよい。この例においても、上記一対の係合片63をつまんで中心側に向かって接近させると、係合部材30全体の外形寸法が縮むことになり、上記の例と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、
図9(b)に示すように、係合部材30の平面視形状は、
図5に示す例と略同一であるが、支持軸64を係合片65の片方の根元部に設けて、アーム状の弾性片66を片持ちで支持するようにしてもよい。この例においても、上記一対の係合片65をつまんで支持軸64側に押すことによって両者を接近させることができ、上記の例と同様の効果を得ることができる。
【0044】
さらに、
図9(c)に示すように、2本の支持軸67からそれぞれ円弧状に延びる弾性片68を延設して、各弾性片68の先端に係合片69を設けるようにしてもよい。この例においても、上記一対の係合片69をつまんで中心側に向かって接近させると、係合部材30全体の外形寸法が縮むことになり、上記の例と同様の効果を得ることができる。
【0045】
そして、上記の各例では、上記中皿20を平面に置く際や化粧料を充填する際に、上記中皿20を水平に安定した状態で載置できるように、上記中皿20の下面20aに左右一対のガイド片50を設けたが、上記ガイド片50は必ずしも必要ない。すなわち、化粧料を充填する際に、例えば中皿20の下面20aの四隅を支受した状態で保持するベース台を用いるような場合、上記ガイド片50は不要である。その場合、容器本体10側にスリット51を設けることも不要となる。ただし、中皿20側にガイド片50を設け、容器本体10側にスリット51を設けておくと、中皿20が正方形であっても、上下と左右の配置をまちがうことがなく、意図した向きに中皿20を収容することができるため、好適である。
【0046】
また、上記の例では、容器本体1側の中皿収容凹部13の底面13aに、環状部41を設けてその中心に開口40を設けたが(
図6を参照)、このような環状部41を設けず、平坦な底面13aとしてもよい。その場合は、底面13aに設ける開口40自身の上部側の開口縁部が小径となり、下部側の開口縁部が大径となるように、開口40の内周壁に段差を設けることが望ましい。
【0047】
さらに、上記の例では、容器本体10の手前側に化粧用具収容凹部12を設け、奥側に中皿収容凹部13を設けて、この中皿収容凹部13内に、中皿20を3個、左右方向に並べた構成としたが(
図1を参照)、収容する中皿20の数や配置は特に限定するものではない。もちろん、化粧用具収容凹部12も必ずしも必要ではなく、中皿20のみを収容するものであっても差し支えない。
【0048】
また、上記の例では、中皿20の平面視形状が正方形のものであり、化粧料容器全体の平面視形状が長方形状のものを用いたが、本発明は、中皿20と容器本体10との着脱構造に特徴を有するものであり、その特徴的な構成があれば、中皿20の形状も、化粧料容器全体の形状も、特に限定されるものではない。ただし、本発明の化粧料容器は、全体を薄型にすることができることが一つの特徴であり、例えば化粧料容器全体の厚みが9~13mmの容器に適用することが好適である。
【0049】
そして、中皿20に充填する化粧料の種類も、アイカラーに限らず、どのような種類のものであってもよいが、中皿20が樹脂の一体成形品であることから、樹脂皿に適した化粧料を充填することが望ましい。
【実施例】
【0050】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
上記実施の形態として
図1に示す構成の化粧料容器を、上記の記載に準じて用意した。中皿は、
図5(a)、(b)に示すものである。
【0052】
〔実施例2~4〕
中皿として、
図9(a)~(c)に示すものを用いた。それ以外は実施例1と同様の化粧料容器を、それぞれ実施例2~4品とした。
【0053】
<評価>
これらの実施例1~4品について、モニター5名に、容器本体の中皿収容凹部内に、中皿を収容し、再度取り外す作業を5回繰り返して行わせた。そして、その着脱作業の容易性について評価させたところ、いずれの実施例品も、中皿の下面に設けた係合部材を傷めたりすることなく、スムーズに着脱することができ、とりわけ、実施例1品が最もスムーズに着脱することができた、との評価を得た。また、中皿収容凹部内に中皿を収容した容器本体の上面は、中皿の周囲と中皿収容凹部周壁との間に隙間がなく、また中皿収容凹部周壁の厚みも薄く設定されているため、非常に端正で美麗な外観である、との評価を得た。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、中皿着脱タイプの化粧料容器でありながら、中皿の周壁と容器本体の凹部周壁を薄肉にすることができ、しかも容器本体の上面の中皿と周囲の仕切り壁等の高さも均一に揃えることができる、優れた化粧料容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 容器本体
13 中皿収容凹部
13a 底面
20 中皿
20a 下面
30 係合部材
40 開口
43 第1の開口縁