(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】未固化液採取装置および未固化液回収方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20241205BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D1/04
(21)【出願番号】P 2021063280
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000177416
【氏名又は名称】三和機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 和博
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144914(JP,A)
【文献】特開2019-044468(JP,A)
【文献】特開2013-002096(JP,A)
【文献】特開2011-163001(JP,A)
【文献】特開2019-019468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0118082(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未固化液を採取する採取口13を有する採取室11を設けたケース12と、採取口13を開閉するカバー14と、採取口13を開閉させる開閉機構15とにより構成し、前記カバー14とケース12とは互いに相対的に上下動自在に構成し、開閉機構15は、ケース12とカバー14の何れか一方に設けたネジ体16と、何れか他方に設けたネジ溝17とにより構成すると共に、ネジ体16とネジ溝17との何れかを回転させることにより互いに相対的回転させてカバー14またはケース12を相対的に上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置。
【請求項2】
請求項1において、ネジ体16とネジ溝17とはカバー14とケース12との間であって、カバー14により包囲されるように設けた未固化液採取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記開閉機構15は、ケース12の外周にネジ体16を設け、カバー14の内周にネジ溝17を設け、ネジ体16とネジ溝17の何れかを回転させてケース12またはカバー14を上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置。
【請求項4】
請求項3において、カバー14の上部に、掘削軸4の回転伝動部材40を固定状態に取付ける上下案内部34を設け、ケース12の下部に掘削穴底面Tに係合してケース12を回転不能状態に保持する穴底係合部20を設け、ケース12に対してカバー14を正逆回転させて、ケース12に対してカバー14を上下させる構成とした未固化液採取装置。
【請求項5】
請求項4において、ケース12のネジ体16の上部には、ケース12の上下案内部34の回転筒部35が嵌合する軸部25を設けた未固化液採取装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5において、カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側に設けられた、内周面にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する回転筒部35を有する上下案内部34とを有して構成し、閉塞筒部30とネジ溝筒部32と上下案内部34とは別体で互いに着脱自在に構成した未固化液採取装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6において、カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側の内周にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する上下案内部34とを有して構成し、カバー14の閉塞筒部30の内周には、カバー14が採取口13を閉塞する位置にあるときに、採取口13の上下両側に位置するシール部材31を上下一対設けた未固化液採取装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7において、カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側の内周にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する上下案内部34とを有して構成し、上下案内部34の回転筒部35の上部に掘削軸4の回転伝動部材40を取付け、回転伝動部材40と上下案内部34の回転筒部35との間には回り止め機構43を設け、回り止め機構43により回転伝動部材40とカバー14とを一体回転させる構成とした未固化液採取装置。
【請求項9】
請求項1において、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14とケース12の一部を地盤に対して固定状態としつつ、ケース12のネジ体16を回転させることによりカバー14を上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置。
【請求項10】
請求項1において、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14を地盤に対して固定状態とし、ネジ体16を回転させることによりケース12を上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置。
【請求項11】
掘削装置により掘削した施工現場の縦掘削穴に、採取装置10を下降挿入し、採取装置10のケース12の穴底係合部20を掘削穴底面Tに挿入係合させ、回転駆動部3により回転する掘削軸4の回転を採取装置10のカバー14に伝達し、カバー14のネジ溝17の正回転もしくは逆回転によりケース12のネジ体16に対してカバー14を上動させ、これにより、ケース12の採取室11の採取口13を開口させ、採取口13から採取室11内に未固化液を回収し、未固化液を回収すると、回転駆動部3により掘削軸4を逆回転もしくは正回転させ、カバー14の逆回転もしくは正回転によりカバー14のネジ溝17とケース12のネジ体16とによりカバー14をケース12に対して下動させ、カバー14がケース12の採取室11の採取口13を閉塞し、採取装置10を上昇させて未固化液を回収する未固化液回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未固化液採取装置および未固化液回収方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、採取装置の採取室の底に上下方向に開口させた採取口を設け、横板を採取室の縦軸芯を中心に水平回転させて、採取口を開閉する構成は、公知である(特許文献1)。
また、従来、採取装置の採取室の横に採取口を設け、開口させた採取口を上下移動筒の上下で開閉させ、上下移動筒の上下をバネと軸の押し込みを組み合せて採取口を開閉する構成は、公知である(特許文献2)。
また、従来、採取装置の採取室の横に採取口を設け、開口させた採取口を上下移動板の上下で開閉させ、上下移動板の上下を操作ロッドの押し引きで行って、採取口を開閉する構成は、公知である(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-81424号公報
【文献】特開2001-73360号公報
【文献】特開2013-122166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例のうち、特許文献1のものは、回転のみで採取口を開閉する構成であり、水平の回転板を回転させる構成のため、シール部材で回転板の回転摺動面をシールするのが容易でなく、シール性不良の課題がある。
前記公知例のうち、特許文献2のものは、バネで採取口を閉塞しているため、回収位置まで採取装置を下げる途中に土砂等が滞留している場合、意図せずに採取口が開口してしまう虞があるという課題がある。
前記公知例のうち、特許文献3のものは、操作ロッドで採取口を開閉する構成のため、ロッドを同時に掘削孔に挿入する必要があり、手間がかかるという課題がある。
本願は、採取口の開閉機構を工夫し、簡単な操作で未固化液の回収を実現し、確実に回収できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、未固化液を採取する採取口13を有する採取室11を設けたケース12と、採取口13を開閉するカバー14と、採取口13を開閉させる開閉機構15とにより構成し、前記カバー14とケース12とは互いに相対的に上下動自在に構成し、開閉機構15は、ケース12とカバー14の何れか一方に設けたネジ体16と、何れか他方に設けたネジ溝17とにより構成すると共に、ネジ体16とネジ溝17との何れかを回転させることにより互いに相対的回転させてカバー14またはケース12を相対的に上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置としたものである。
請求項2の発明は、ネジ体16とネジ溝17とはカバー14とケース12との間であって、カバー14により包囲されるように設けた未固化液採取装置としたものである。
請求項3の発明は、前記開閉機構15は、ケース12の外周にネジ体16を設け、カバー14の内周にネジ溝17を設け、ネジ体16とネジ溝17の何れかを回転させてケース12またはカバー14を上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置としたものである。
請求項4の発明は、カバー14の上部に、掘削軸4の回転伝動部材40を固定状態に取付ける上下案内部34を設け、ケース12の下部に掘削穴底面Tに係合してケース12を回転不能状態に保持する穴底係合部20を設け、ケース12に対してカバー14を正逆回転させて、ケース12に対してカバー14を上下させる構成とした未固化液採取装置としたものである。
請求項5の発明は、ケース12のネジ体16の上部には、ケース12の上下案内部34の回転筒部35が嵌合する軸部25を設けた未固化液採取装置としたものである。
請求項6の発明は、カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側に設けられた、内周面にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する回転筒部35を有する上下案内部34とを有して構成し、閉塞筒部30とネジ溝筒部32と上下案内部34とは別体で互いに着脱自在に構成した未固化液採取装置としたものである。
請求項7の発明は、カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側の内周にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する上下案内部34とを有して構成し、カバー14の閉塞筒部30の内周には、カバー14が採取口13を閉塞する位置にあるときに、採取口13の上下両側に位置するシール部材31を上下一対設けた未固化液採取装置としたものである。
請求項8の発明は、カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側の内周にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する上下案内部34とを有して構成し、上下案内部34の回転筒部35の上部に掘削軸4の回転伝動部材40を取付け、回転伝動部材40と上下案内部34の回転筒部35との間には回り止め機構43を設け、回り止め機構43により回転伝動部材40とカバー14とを一体回転させる構成とした未固化液採取装置としたものである。
請求項9の発明は、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14とケース12の一部を地盤に対して固定状態としつつ、ケース12のネジ体16を回転させることによりカバー14を上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置としたものである。
請求項10の発明は、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14を地盤に対して固定状態とし、ネジ体16を回転させることによりケース12を上下動させて採取口13を開閉する構成とした未固化液採取装置としたものである。
請求項11の発明は、掘削装置により掘削した施工現場の縦掘削穴に、採取装置10を下降挿入し、採取装置10のケース12の穴底係合部20を掘削穴底面Tに挿入係合させ、回転駆動部3により回転する掘削軸4の回転を採取装置10のカバー14に伝達し、カバー14のネジ溝17の正回転もしくは逆回転によりケース12のネジ体16に対してカバー14を上動させ、これにより、ケース12の採取室11の採取口13を開口させ、採取口13から採取室11内に未固化液を回収し、未固化液を回収すると、回転駆動部3により掘削軸4を逆回転もしくは正回転させ、カバー14の逆回転もしくは正回転によりカバー14のネジ溝17とケース12のネジ体16とによりカバー14をケース12に対して下動させ、カバー14がケース12の採取室11の採取口13を閉塞し、採取装置10を上昇させて未固化液を回収する未固化液回収方法としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、採取室11を設けたケース12に採取口13を開閉するカバー14を取付け、採取口13を開閉させる開閉機構15を、ケース12とカバー14の何れか一方に設けたネジ体16と、何れか他方に設けたネジ溝17とにより構成し、開閉機構15はカバー14とケース12との間であって、カバー14により包囲しているので、開閉機構15は掘削穴内の土砂の影響を受けずに確実に作動し、未固化液の採取を確実にでき、また、開閉機構15はカバー14とケース12との間に設けた機械的要素によりカバー14を上下させる構成なので、簡素に構成でき、安価に未固化液採取装置を提供できる。
請求項2の発明では、ネジ体16とネジ溝17とはカバー14とケース12との間であって、カバー14により包囲されるように設けているので、ネジ体16とネジ溝17はカバー14により包囲されて掘削穴内の土砂の影響を受けずに確実に作動し、未固化液の採取を確実にできる。
請求項3の発明では、開閉機構15は、ケース12の上部外周にネジ体16を設け、カバー14の内周にネジ溝17を設け、ネジ体16とネジ溝17の何れかを回転させてケース12またはカバー14を上下動させて採取口13を開閉する構成としているので、設計の自由度を確保して未固化液採取装置を提供することができる。
請求項4の発明では、カバー14の上部に、掘削軸4の回転伝動部材40を固定状態に取付ける上下案内部34を設け、ケース12の下部に掘削穴底面Tに係合してケース12を回転不能状態に保持する穴底係合部20を設け、ケース12に対してカバー14を正逆回転させて、ケース12に対してカバー14を上下させるので、ケース12に対してカバー14を合理的構成で確実に上下させて、採取口13を開閉させることができ、また、ケース12の下部を掘削穴底面Tに係合させた状態でカバー14のみを上下させる構成としているので、採取装置10全体を上下に伸縮させずに土壌サンプル(未固化液)の回収でき、作業性を良好にできる。
請求項5の発明では、ケース12のネジ体16の上部にはケース12の上下案内部34回転筒部35が嵌合する軸部25を設けているので、カバー14は円滑に回転し、円滑に上下動させることができる。
請求項6の発明では、カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側の内周にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する上下案内部34とを有して構成し、閉塞筒部30とネジ溝筒部32と上下案内部34とは別体で互いに着脱自在に構成しているので、製造・組立・メンテナンスを容易にする。
請求項7の発明では、閉塞筒部30のケース12の採取室11の採取口13に対応する位置の上下両側の内周には上下一対のシール部材31を設けているので、カバー14が採取口13を閉塞したときのシール性能を確保でき、土壌サンプル(未固化液)の回収精度を向上させることができると共に、簡素に構成できる。
請求項8の発明では、回転伝動部材40と上下案内部34の回転筒部35との間には回り止め機構43を設けているので、上下案内部34を回転伝動部材40と一体回転させつつ、かつ、回転伝動部材40に対して上下案内部34の上下移動を許容させることができ、カバー14をケース12に対して回転させることにより上下させて採取口13を開閉させることができる。
請求項9の発明では、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14とケース12の一部を地盤に対して固定状態としつつ、ネジ体16を回転させることによりカバー14を上下動させて採取口13を開閉するので、開閉機構15は掘削穴内の土砂の影響を受けずに確実に作動し、未固化液の採取を確実にできる。
請求項10の発明では、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14を地盤に対して固定状態とし、ネジ体16を回転させることによりケース12を上下動させて採取口13を開閉するので、開閉機構15は掘削穴内の土砂の影響を受けずに確実に作動し、未固化液の採取を確実にできる。
請求項11の発明では、掘削装置により掘削した施工現場の縦掘削穴に、採取装置10を下降挿入し、採取装置10のケース12の穴底係合部20を掘削穴底面Tに挿入係合させ、回転駆動部3により回転する掘削軸4の回転を採取装置10のカバー14に伝達し、カバー14のネジ溝17の正回転もしくは逆回転によりケース12のネジ体16に対してカバー14を上動させ、これにより、ケース12の採取室11の採取口13を開口させ、採取口13から採取室11内に未固化液を回収し、未固化液を回収すると、回転駆動部3により掘削軸4を逆回転もしくは正回転させ、カバー14の逆回転もしくは正回転によりカバー14のネジ溝17とケース12のネジ体16とによりカバー14をケース12に対して下動させ、カバー14がケース12の採取室11の採取口13を閉塞し、採取装置10を上昇させて未固化液を回収するので、採取装置10は掘削穴内の土砂の影響を受けずに確実に作動し、未固化液の採取を確実にでき、また、カバー14とケース12との間に設けた機械的要素によりカバー14を上下させるので、簡素に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】採取装置が掘削穴底に到達した状態の正面図。
【
図7】採取装置の採取室内に未固化液流入状態の正面図。
【
図8】採取装置の採取室内に未固化液が充填されて採取口を閉塞した状態の正面図。
【
図9】採取装置を掘削穴から上昇(引き上げ)させている状態の正面図。
【
図10】(A)採取装置の他の実施形態の分解図。 (B)同採取口の開口状態の一部縦断正面図。 (C)同閉塞状態の一部縦断正面図。
【
図12】(A)同採取口の閉塞状態の一部縦断正面図。 (B)同採取口の開口状態の一部縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図により説明する。1はベースマシン、2はベースマシン1に設けたリーダー、3はリーダー2に昇降自在に取付けた回転駆動部(アースオーガー)であり、回転駆動部3には掘削軸4の上部を取付ける(
図1)。
掘削軸4の外周にはスクリュー5を設けている。
掘削軸4の下部には未固化液(サンプル)を採取する採取装置10を設ける。採取装置10は、図示は省略するが、地盤改良掘削装置により地盤に縦穴を掘削し、掘削した土砂に地盤改良用の地盤改良材(セメントミルク等)を撹拌混合させて、地盤改良した土壌のサンプルを回収するものである。
【0009】
採取装置10は、採取室11を有するケース12と、採取室11の採取口13を開閉するカバー14と、採取口13を開閉させる開閉機構15を有して構成する(
図2)。
開閉機構15は、ケース12とカバー14の何れか一方に設けたネジ体(雄ネジ)16と、何れか他方に設けたネジ溝(雌ネジ・螺子孔)17により構成し、ネジ体16とネジ溝17の作用でケース12に対してカバー14を上下動させて採取口13を開閉する構成とする。
本実施形態では、ケース12の上部外周にネジ体16を設け、カバー14の内周にネジ溝17を設け、ネジ体16とネジ溝17との何れかを回転させてケース12に対してカバー14を相対的に上下動させて採取口13を開閉する構成とする。
【0010】
ケース12の下部には、前記地盤改良掘削装置が掘削した縦穴の掘削穴底面Tに係合する穴底係合部(挿入部)20を設け、穴底係合部20の上方に土壌サンプルを採取する採取室11を設ける(
図2)。採取室11は円筒形状に形成され、採取室11の上部に採取口13を開口させる。採取口13は採取室11の円筒部21に軸心に対して交差方向に貫通させて地盤の縦穴と採取室11とが連通するように、開口させる(
図2、5)。
18は採取室11のサンプル取出口(図示省略)を閉塞する栓であり、地上部にて栓18を外して採取室11内のサンプルを取り出し回収する。
なお、理解を容易にするため、
図2では採取口13を正面に配置し、
図5では正面および側面に開口させているが、開口箇所は任意であり、図の構成に限定されない。
採取室11(円筒部21)の上側には開閉機構15の一部を構成するネジ体16の下部を一体状に設ける(
図4)。ネジ体16は外周にネジ溝を形成したネジ軸形状に形成する。
カバー14は、前記採取口13を閉塞しうる閉塞筒部30を下側に設ける(
図4)。閉塞筒部30は外周を無孔状態とした筒部材により形成し、閉塞筒部30は採取口13を閉塞可能に構成している。閉塞状態のときの閉塞筒部30の採取口13に対応する位置の内周には、閉塞筒部30が閉塞した採取口13に対して上下に位置するよう一対のシール部材(Oリング等)31を設ける(
図3)。
【0011】
閉塞筒部30の上側にはネジ溝17を内周に設けたネジ溝筒部32を設け、ネジ溝筒部32の上部には上下案内部34を設ける。
上下案内部34は固定状態のケース12に対して回転する回転筒部35を有して構成し、回転筒部35はケース12の軸部25に嵌合させる(
図2)。
しかして、ネジ体16とネジ溝17との作用により、ケース12に対してカバー14を上下動させて採取口13を開閉するが、カバー14の上部に掘削軸4の回転を伝達させてカバー14を回転させ、ネジ体16に対してネジ溝17を回転させてカバー14を上下動させる構成とする。
そのため、掘削軸4の回転を利用してカバー14を上下させられるので、構造が簡素になり、また、作動が確実となる。
【0012】
掘削軸4の回転によりカバー14を回転させる構成は任意であるが、一例を示すと、掘削軸4の下部に回転伝動部材40を取付け、回転伝動部材40にカバー14の上下案内部34の回転筒部35を嵌合させる。回転伝動部材40と上下案内部34の回転筒部35との間には、上下案内部34を回転伝動部材40と一体回転させつつ、かつ、回転伝動部材40に対して上下案内部34の上下移動を許容する回り止め機構43を設ける。回り止め機構43は、回転筒部35に取付孔36を形成し、取付孔36内にキー部材24を上下移動自在に嵌合させ、キー部材24は回転伝動部材40に固定状態に取付ける。
そのため、ケース12の下部の穴底係合部20を掘削穴底面Tに係合させ、ケース12を回転不能状態に保持し、ケース12に対してカバー14を正逆回転させて、ケース12に対してカバー14を上下させる構成としている。
【0013】
すなわち、掘削装置により掘削した施工現場の縦掘削穴に、採取装置10を下降挿入し、採取装置10のケース12の穴底係合部20を掘削穴底面Tに挿入係合させ、回転駆動部3により回転する掘削軸4の回転を採取装置10のカバー14に伝達し、カバー14のネジ溝17の回転によりケース12のネジ体16に対してカバー14を上動させ、これにより、ケース12の採取室11の採取口13を開口させ、採取口13から採取室11内に未固化液を回収し、未固化液を回収すると、回転駆動部3により掘削軸4を逆回転させ、カバー14の逆回転によりカバー14のネジ溝17とケース12のネジ体16とによりカバー14をケース12に対して下動させ、カバー14がケース12の採取室11の採取口13を閉塞し、採取装置10を上昇させて未固化液を回収する。
この場合、カバー14の回り止め機構43のキー部材24は、回転伝動部材40の移動溝36A内をカバー14の上下に伴って移動する。
なお、掘削軸4はスクリュー5を設けた外筒と回転伝動部材40に取付ける軸部との二重軸構成としているが、本発明の要件ではなく、図中の符号は回転伝動部材40に取付ける軸部を示している。
【0014】
また、
図10は他の実施形態を示し、未固化液を採取する採取口13を有する採取室11を設けたケース12と、採取口13を開閉するカバー14と、採取口13を開閉させる開閉機構15とにより構成し、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14とケース12の一部を地盤に対して固定状態としつつ、ネジ体16を回転させることによりカバー14を非回転状態でケース12に対して上下動させて採取口13を開閉する構成としている。
具体的構成は任意であるが、一例を示すと、ケース12の採取室11(円筒部21)の下側には開閉機構15の一部を構成するネジ体16を設け、採取室11の上部には掘削軸4の下部をボルト21Aにより固定状態に取付け、ケース12は掘削軸4により正逆回転自在とする。
【0015】
ケース12のネジ体16の下部には軸部25を設け、軸部25は筒状の固定筒部37に回転のみ自在に嵌合させ、固定筒部37の下端に掘削穴底面Tに係合して固定筒部37を回転不能状態に保持する穴底係合部20を設けている。25Aは固定筒部37の上部に設けた軸受(ベアリング)である。カバー14は、前記採取口13を閉塞しうる閉塞筒部30を上側に設け、閉塞筒部30の内周には採取口13を閉塞状態のときの土壌サンプルが漏れるのを防止する一対のシール部材(Oリング等)31を設けている。
閉塞筒部30の下側にはネジ溝17を内周に設けたネジ溝筒部32を設け、ネジ溝筒部32の下部にはケース12の固定筒部37の外周に嵌合するカバー側固定筒部38を設ける。
【0016】
ケース12の固定筒部37とカバー側固定筒部38との間にはカバー14の回転を止める回り止め機構43を設ける。回り止め機構43はカバー側固定筒部38に取付孔36を形成し、取付孔36内にキー部材24を嵌合させ、キー部材24はケース12の固定筒部37の外周に設けた移動溝39(移動溝36Aに相当)に上下動自在に係合させる。
そのため、カバー14に対してケース12を正逆回転させて、カバー14を非回転状態で上下させて下動させて採取口13を開閉する。
また、
図11、12は、他の実施形態を示し、未固化液を採取する採取口13を有する採取室11を設けたケース12と、採取口13を開閉するカバー14と、採取口13を開閉させる開閉機構15とにより構成し、開閉機構15は、ケース12に設けたネジ体16と、カバ-14に設けたネジ溝17とにより構成し、カバー14を地盤に対して固定状態とし、ネジ体16を回転させることによりケース12を上下動させて採取口13を開閉する構成としている。
【0017】
具体的構成は任意であるが、一例を示すと、ケース12の採取室11(円筒部21)の下側には開閉機構15の一部を構成するネジ体16を設け、採取室11の上部には掘削軸4の下部を取付け、ケース12は掘削軸4により正逆回転自在とする。
カバー14は、前記採取口13を閉塞しうる閉塞筒部30を上側に設け、閉塞筒部30の内周には採取口13を閉塞状態のときの土壌サンプルが漏れるのを防止する一対のシール部材(Oリング等)31を設けている。
閉塞筒部30の下側にはネジ溝17を内周に設けたネジ溝筒部32を設け、ネジ溝筒部32の下部にはケース12のネジ体16が上下しうる空間を確保する空間筒部34Aを取付け、空間筒部34Aの下方には掘削穴底面Tに係合してカバー14を回転不能状態に保持する穴底係合部20を設けている。
そのため、穴底係合部20により固定状態のカバー14に対してケース12を正逆回転させて、ケース12をカバー14に対して上下させて採取口13を開閉する。
【0018】
(実施形態の作用)
本発明は上記構成であり、まず、回転駆動部3の掘削軸4に、図示は省略するが、掘削装置を取付け、施工現場に縦の掘削穴を掘削し、掘削した土砂に地盤改良用の地盤改良材(セメントミルク等)を撹拌混合させて地盤改良を行う。
次に、掘削軸4の掘削装置に代えて撹拌混合させた土砂が固化する前の土壌サンプル(未固化液)を採取する採取装置10を取付ける。
この状態で、回転駆動部3を下降させて、採取装置10のケース12の穴底係合部20を掘削穴底面に挿入係合させ、採取装置10のケース12を上下動および回転不能な固定状態に保持させる。
【0019】
次に、回転駆動部3により掘削軸4を回転させると、掘削軸4の回転を回転伝動部材40と回り止め機構43を介してカバー14の上下案内部34に伝達し、カバー14はケース12中心に回転を開始する。
カバー14が回転開始すると、カバー14のネジ溝17とケース12のネジ体16の作用により、カバー14はケース12に対して上動し、ケース12の採取室11の採取口13を閉塞していたカバー14の閉塞筒部30の下端が採取口13より上方に位置すると、採取口13から採取室11内に未固化液が流入し、未固化液の採取(流入)を任意の方法で確認する。
【0020】
未固化液の採取を任意の方法で確認すると、回転駆動部3により掘削軸4を反対に回転させ、カバー14の逆回転を開始させ、カバー14の逆回転により、カバー14のネジ溝17とケース12のネジ体16とを前記と反対に作用させて、カバー14はケース12に対して下動し、ケース12の採取室11の採取口13をカバー14の閉塞筒部30が閉塞し、採取口13を閉塞すると、回転駆動部3を上昇させ、採取装置10を地盤上面より上方に位置させて、ケース12の採取室11の栓18を外して採取室11内から未固化液(サンプル)を回収する。
掘削軸4の下部に設けた採取装置10は、採取室11を有するケース12と、採取室11の採取口13を開閉するカバー14と、採取口13を開閉させる開閉機構15により構成し、前記カバー14はケース12に対して上下自在に構成し、開閉機構15はカバー14とケース12との間であって、カバー14により包囲されて設けているので、開閉機構15は土砂の影響を受けずに確実に作動し、未固化液の採取を確実にする。
【0021】
開閉機構15はカバー14とケース12との間に設けた機械的要素によりカバー14を上下させる構成としているので、簡素に構成でき、安価に未固化液採取装置を提供できる。
開閉機構15は、ケース12とカバー14の何れか一方に設けたネジ体16と、何れか他方に設けたネジ溝17により構成しているので、ネジ体16とネジ溝17の作用でケース12に対してカバー14を上下動させて採取口13を開閉させることができる。
ケース12の上部外周にネジ体16を設け、カバー14の内周にネジ溝17を設け、ネジ体16とネジ溝17の何れかを回転させてケース12に対してカバー14を上下動させて採取口13を開閉する構成としているので、設計の自由度を確保して未固化液採取装置を提供することができる。
【0022】
また、ケース12の下部の穴底係合部20を掘削穴底面Tに係合させた状態でカバー14のみを上下させる構成としているので、採取装置10全体を上下に伸縮させずに土壌サンプル(未固化液)の回収ができ、作業性を良好にできる。
ケース12の上部外周にネジ体16を設け、カバー14の上部に、掘削軸4の回転伝動部材40を固定状態に取付ける上下案内部34を設け、ケース12の下部に掘削穴底面Tに係合してケース12を回転不能状態に保持する穴底係合部(挿入部)20を設け、ケース12に対してカバー14を正逆回転させてカバー14を上下する構成としているので、ケース12に対してカバー14を合理的構成で上下させることができる。
ケース12のネジ体16の上部にはケース12の上下案内部34の回転筒部35が嵌合する軸部25を設けているので、カバー14は円滑に回転し、円滑に上下動する。
【0023】
カバー14は、採取口13を閉塞しうる無孔の閉塞筒部30と、閉塞筒部30の上側の内周にネジ溝17を設けたネジ溝筒部32と、ネジ溝筒部32の上側に設けたケース12の軸部25に嵌合する上下案内部34とを有して構成し、閉塞筒部30とネジ溝筒部32と上下案内部34とは別体で互いに着脱自在に構成しているので、製造・組立・メンテナンスを容易にする。
閉塞筒部30のケース12の採取室11の採取口13に対応する位置の上下両側の内周には上下一対のシール部材31を設けているので、カバー14が採取口13を閉塞したときのシール性を簡素でかつ向上させられる。
【0024】
回転伝動部材40と上下案内部34の回転筒部35との間には回り止め機構43を設け、回り止め機構43は、回転筒部35に取付孔36を形成し、取付孔36内にキー部材24を上下移動自在に嵌合させ、キー部材24は回転伝動部材40側に固定状態に取付けているので、上下案内部34を回転伝動部材40と一体回転させつつ、かつ、回転伝動部材40に対して上下案内部34の上下移動を許容させることができ、カバー14をケース12に対して回転させることにより上下させて採取口13を開閉させることができる。
また、
図10の実施形態では、ケース12の採取室11の上部に掘削軸4の下部を取付け、ケース12のネジ体16の下部に回転自在に取付けた固定筒部37を設け、固定筒部37の下端に掘削穴底面Tに係合して保持する穴底係合部20を設けているので、ケース12の固定筒部37の穴底係合部20を、掘削穴底面Tに係合させて、ケース12の固定筒部37を地盤に対して回転不能状態に保持する。
【0025】
ケース12の固定筒部37にはカバー14の回転を止める回り止め機構43を設けているので、回り止め機構43によりカバー14は固定筒部37と共に地盤に対して固定状態となる。
この状態で掘削軸4を回転させると、ケース12の採取室11(円筒部21)とネジ体16が固定筒部37および地盤に対して回転し、ケース12のネジ体16とカバー14のネジ溝17との作用により、カバー14はケース12に対して下動し、ケース12の採取室11の採取口13を閉塞していたカバー14の閉塞筒部30が採取口13よりも下方に位置し、採取口13から採取室11内に未固化液が流入し、この未固化液の流入を任意の方法で確認する。
【0026】
未固化液の流入採取を任意の方法で確認すると、回転駆動部3により掘削軸4を反対に回転させ、ケース12を逆回転させ、ケース12のネジ体16とカバー14のネジ溝17とが前記と反対に作用して、カバー14はケース12に対して上動し、ケース12の採取室11の採取口13をカバー14の閉塞筒部30が閉塞し、採取口13を閉塞すると、採取装置10全体を上昇させ、採取装置10を地盤上面より上方に位置させて、ケース12の採取室11から未固化液を回収する。
このように、カバー14に対してケース12を、固定状態のネジ溝17に対してケース12のネジ体16を正逆回転させることにより、カバー14を非回転状態で上下させて採取口13を開閉する。
【0027】
この場合、カバー14の上下は、カバー14のカバー側固定筒部38の取付孔36に嵌合させたキー部材24を、ケース12の固定筒部37の外周に設けた移動溝39内を上下動させることにより、許容される。
また、掘削軸4の下部は採取室11の円筒部21の上部にボルト21Aにより固定されているので、掘削軸4と採取室11の円筒部21とネジ体16は一体回転する。
また、ケース12のネジ体16の下部の軸部25は軸受25Aを介して固定筒部37に回転のみ自在に嵌合させているので、穴底係合部20により地盤に固定状態に保持されている固定筒部37によりケース12の軸部25が支持された状態でケース12全体が円滑かつ軸触れなく回転し、カバー14を確実に上下させられる。
図11、12の他の実施形態では、カバー14をケース12に対して上下動させて採取口13を開閉させる構成としているので、カバー14の空間筒部34Aの穴底係合部20を、掘削穴底面Tに係合させて、カバー14を回転不能状態に保持する。
【0028】
この状態で掘削軸4を回転させると、ケース12が回転し、ケース12のネジ体16とカバー14のネジ溝17との作用により、ケース12はカバー14に対して上動し、ケース12の採取室11の採取口13を閉塞していたカバー14の閉塞筒部30の下端より上方に位置すると、採取口13から採取室11内に未固化液が流入し、未固化液の採取を任意の方法で確認する。
未固化液の採取を任意の方法で確認すると、回転駆動部3により掘削軸4を反対に回転させ、ケース12の逆回転を開始させ、ケース12のネジ体16とカバー14のネジ溝17とを前記と反対に作用させて、ケース12をカバー14に対して下動させ、ケース12の採取室11の採取口13をカバー14の閉塞筒部30により閉塞し、採取口13を閉塞すると、回転駆動部3を上昇させ、採取装置10を地盤上面より上方に位置させて、ケース12の採取室11から未固化液を回収する。
【符号の説明】
【0029】
1…ベースマシン、2…リーダー、3…回転駆動部、4…掘削軸、5…スクリュー、10…採取装置、11…採取室、12…ケース、13…採取口、14…カバー、15…開閉機構、16…ネジ体、17…ネジ溝、20…穴底係合部、21…円筒部、24…キー部材、25…軸受部(軸部)、25A…軸受、30…閉塞筒部、31…シール部材、32…ネジ溝筒部、34…上下案内部、35…回転筒部、36…取付孔、36A…移動溝、37…固定筒部、38…カバー側固定筒部、39…移動溝、40…回転伝動部材、43…回り止め機構。