(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ランバーサポートを備えた椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/46 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A47C7/46
(21)【出願番号】P 2021208032
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000114385
【氏名又は名称】株式会社クオリ
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】長坂 典明
(72)【発明者】
【氏名】本田 佳之
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037666(JP,A)
【文献】特開2008-000364(JP,A)
【文献】特開2016-195925(JP,A)
【文献】特開2019-083848(JP,A)
【文献】特開平11-247516(JP,A)
【文献】特開2019-037665(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0137917(KR,A)
【文献】米国特許第06062649(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1679795(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0296945(US,A1)
【文献】中国実用新案第208769216(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
張地を張設した背枠に、ランバーサポートが上下方向に調節可能に取り付けられた椅子において、
該ランバーサポートは、撓ませることが可能な帯状の当板の両端部に該当板が段階的に上下移動可能にランバー取付具を介してアジャスタに水平に組み付けられたもので、該アジャスタは該当板の端部が挿通しかつ上下方向に移動可能な挿入溝と、該ランバー取付具に形成された移動凹凸部に嵌合して段階的に上下移動させるための固定凹凸部と、該背枠に形成された
嵌合溝部へ、背枠の内側から押し込むことによって前方のみ移動可能に嵌着される2つの係止爪を
上端および下端に備え、
該ランバー取付具は、該移動凹凸部と該挿入溝を挿通した該当板の端部を係止する係止部とを
備えており、
前記背枠に、前記ランバー取付具より前方に位置するように張地が張設されていることを特徴とするランバーサポートを備えた椅子。
【請求項2】
前記当板は前記アジャスタへ組み付けた後は、前記当板が挿入溝の奥方向へ移動するのを防止するため、前記当板の端部に三方を切り欠いて折り曲げ、前記挿入溝への挿入時は押し込んで平にし、前記当板を引き戻し該挿入溝から出ると自動的に浮き上がるストッパを設けたことを特徴とする請求項1に記載のランバーサポートを備えた椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張地を張設した背枠に取り付けられる上下調節可能なランバーサポートを備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、背もたれや座にメッシュ地などの張地を張設した通気性が良く軽量でデザインの優れた椅子がオフィスや家庭でも使用されている。張地を張設した椅子は、背圧に応じて形状が変化するので、座り心地は良いが、長時間ディスクワークする人には姿勢が悪くなりやすく、意外と疲れを訴える人が少なくない。
そこで、腰部をサポートして正しい姿勢に保持するためのランバーサポートを付設した椅子が検討され、予め椅子の適切な位置に固設した一体型や、必要になったときに取付けることができる後付型など、種々のものが実用化されている。
しかし、ランバーサポートの必要性については、使用者によってまちまちである。出願人等は、先に、張地が張設された背枠に、使用者がランバーサポートを後付できる椅子(特許文献1)を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のランバーサポートを備えた椅子は、枠状の背フレームと、背フレームの両側に取り付けた取付部材と、取付部材の間に掛け渡されたランバーサポートとを備え、該取付部材は、該ランバーサポートの端部を上方及び下方の少なくとも一方から差し込み可能なレール部を備え、レール部は、上下方向においてランバーサポートの端部が差し込まれる端部を通過可能にしている。
このように構成されているので、ランバーサポートの端部を上方または下方の少なくとも一方から差し込み移動させて取付けることができる。
【0005】
しかしながら、このランバーサポートの構成では、部品点数が多く、複雑で背枠への脱着にはドライバーなど工具を必要とし、椅子の使用者が脱着するのは、どんな人でも簡単とは言い難く、さらに、改善が望まれている。
そこで、本発明は、工具を使用せずに極めて短時間で背枠へ脱着できる部品の少ない簡素なランバーサポートを備えた椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を解決するため、本発明のランバーサポートを備えた椅子は、次のように構成した。すなわち、 張地を張設した背枠に、ランバーサポートが上下方向に調節可能に取り付けられた椅子において、該ランバーサポートは、撓ませることが可能な帯状の当板の両端部に該当板が段階的に上下移動可能にランバー取付具を介してアジャスタに水平に組み付けられたもので、該アジャスタは該当板の端部が挿通しかつ上下方向に移動可能な挿入溝と、該ランバー取付具に形成された移動凹凸部に嵌合して段階的に上下移動させるための固定凹凸部と、該背枠に形成された嵌合溝部へ、背枠の内側から押し込むことによって前方のみ移動可能に嵌着される2つの係止爪を上端および下端に備え、該ランバー取付具は、該移動凹凸部と該挿入溝を挿通した該当板の端部を係止する係止部とを備えており、前記背枠に、前記ランバー取付具より前方に位置するように張地が張設されていることを特徴としている。
【0007】
本発明のランバーサポートを備えた椅子は、背枠に張地が張設された椅子に適用され、座および脚の構成は特に限定しない。また、背枠は、直接支持体に取り付けられたものでもよいし、背支持体を介して取り付けられたものでもよい。
また、張地は、この明細書では、メッシュ地のほか、ナイロン等のプラスチック樹脂、布、合皮生地、皮革からなる布材を主体に構成され伸縮可能(弾性変形可能)なシート状のものをいうものとする。
ランバーサポートは、着座者の着座姿勢を正しく保持するために、着座者の体圧によって変形しないように形成されるのが、一般的であるが、本願発明者等は、種々実験した結果、逆に柔らかくしてある程度撓む方が、座り心地も良くサポート効果も十分あることが解った。
【0008】
ランバーサポートは、帯状の当板と、背枠に形成された嵌合溝部に嵌着されるアジャスタと、該当板を該アジャスタへ取付けるランバー取付具とから構成されている。
当板の撓む程度は、長手方向の直線長さで20~30mm短縮される程度でよい。
アジャスタは当板の端部が挿通しかつ上下方向に移動可能な挿入溝と、ランバー取付具に形成された移動凹凸部に嵌合して段階的に上下移動させるための固定凹凸部と、背枠に形成された嵌合溝部に前方のみ移動可能に嵌着される係止爪を備える。
上下方向の調整範囲は任意であるが、40mmもあれば十分である。
ランバー取付具は、アジャスタの固定凹凸部と嵌合する移動凹凸部を備え、当板の端部に係止されている。
【0009】
このように構成し組み立てられたランバーサポートは、ランバー取付具が内側(当板が縮む方向)へは移動しないが、外方へは移動するので、これを防止する必要がある。
この手段としては、当板にストッパを固設または脱着可能に取り付ければよいが、請求項2のように構成するのが望ましい。
これは、当板の端部に三方を切り欠いて折り曲げ、当板を挿入溝へ挿入するときは押し込んで平にし、当板を引き戻し該挿入溝から出ると、自動的に浮き上がりストッパを形成するものである。
【0010】
ランバーサポートを取付けるときは、背枠の一方の嵌合溝部へアジャスタを嵌合させて押し込めば、係止爪が撓んで嵌合溝部へ嵌着される。そして、他方のアジャスタを取付けるときは、当板の中央部を張地の外側へ撓ませて当板の直線長さを短くして、他方の嵌合溝部へ押込んで嵌着する。
【0011】
係止爪が嵌着すると、前方方向(張地側)以外へは移動できない。張地が張設されているので、ランバーサポートは嵌合溝部から外れることはない。
ランバーサポートを背枠から取り外す場合は、アジャスタの係止爪が嵌合溝部から外れるまで当板を張地へ押し込めばよい。
なお、ランバーサポートが取り付けられていない状態では、背枠の嵌合溝部がむき出しであるので、これを覆う蓋を付設するとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のランバーサポートを備えた椅子は、撓ませることが可能な帯状の当板の両端部にランバー取付具を介してアジャスタに水平に組み付けられ、該アジャスタは該当板の端部が挿通しかつ上下方向に移動可能な挿入溝と、該ランバー取付具に形成された移動凹凸部に嵌合して段階的に上下移動させるための固定凹凸部と、該背枠に形成された嵌合溝部に前方のみ移動可能に嵌着される係止爪を備え、該ランバー取付具は、該移動凹凸部と該挿入溝を挿通した該当板の端部を係止する係止部とを備えたので、構造が簡単で部品が少なく、背枠への取付は、スパナやドライバーなどの工具を必要としない。しかも、短時間に行える。また、不要と思ったときは簡単に取り外すことができる。
【0013】
また、当板がアジャスタの挿入溝へ侵入するのを防止するストッパは、請求項2に記載のように、当板の端部に三方を切り欠いて折り曲げ、アジャスタの挿入溝へ挿入するときは押し込んで平らにし、引き戻したときは自動的に浮き上がりアジャスタに係止する構成とすれば、部品が少なく、簡素に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のランバーサポートを事務用椅子に設置した実施の形態を示す斜視図である。
【
図2】同、ランバーサポートの全体を示す斜視図である。
【
図5】同、アジャスタの拡大図で(a)は左側、(b)は右側の斜視図である。
【
図6】同、ランバー取付具の拡大図で、(a)は左側、(b)は右側の斜視図である。
【
図7】同、ランバーサポートを組み付ける途中の状態を示す斜視図で、(a)は当板の端部をアジャスタの挿入溝へ挿通前の状態、(b)は挿通後の状態、(c)はランバー取付具を取り付けた状態を示す。
【
図8】同、ランバーサポートを背枠へ取付ける途中の状態を示す斜視図で、(a)は嵌着前の状態、(b)は背枠に嵌着された後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のランバーサポートを備えた椅子の実施の形態を、事務用椅子に適用した例で、説明する。
図1は、本発明の椅子の全体を示す斜視図で、
図2は、ランバーサポート全体を示す斜視図、また、
図3は背枠の斜視図である。
図4はランバーサポートの構成部品を示す分解斜視図で、
図5および
図6は、アジャスタおよびランバー取付具の拡大図である。
【0016】
この椅子は、
図1に示すように、支持体(図示されていないが、座の下にある。)に座2と背もたれが設けられ、中央脚柱とキャスター付きの5本足の脚3を備えた昇降かつ回転可能な事務用椅子である。
背もたれは、支持体に固設された背支持体5に取り付けられた背枠1に張地6(ここでは、メッシュ地を使用している)が張設(図示してない)されている。そして、背枠1には、座2から5~10cm高い位置にランバーサポート10が脱着可能に取り付けられている。
【0017】
ランバーサポート10は、
図2に示すように、帯状の当板11と、その両端部に取り付けられたアジャスタ12と、当板11とアジャスタ12を連結するためのランバー取付具13とから構成されている。なお、材質は、ここでは、合成樹脂(ポリプロピレン)を使用している。
【0018】
当板11は、薄板(1~2mm)の帯状であり、両側の端部11aは、幅が狭くアジャスタ12に組み付けるための取付部11b(ここでは、角孔)と、三方を切り欠いて折り曲げたストッパ11cが設けられている。
【0019】
アジャスタ12は、当板11を上下方向に段階的に移動可能に支持するとともに背枠1に嵌着する機能を有し、連続した固定凹凸部12aと、当板11の端部11bが挿通される挿入溝12bと、背枠1の嵌合溝部1aに係止する係止爪12cが設けられている。
また、アジャスタ12には上方から見て直角に形成された直角壁12dが形成され、その一方の面に該挿入溝12bが形成され、他方の面と間隔を設けて該固定凹凸部12aが形成されている。
さらに、アジャスタ12の上端と下端には、背枠1の嵌合溝部1aに係合する係止爪12cが付設されている。この係止爪12cは、嵌合溝部1aに前方(張地6側)のみ移動可能に形成されている。
【0020】
ランバー取付具13は、当板11の取付部11bに係止する係止部13aと、アジャスタ12の固定凹凸部12aと嵌合する移動凹凸部13bと、から構成されている。
【0021】
次に、ランバーサポートを組み立る作業について、
図7に基づいて説明する。
まず、当板11を持って、一方の端部11aをアジャスタ12の挿入溝12bに挿通させる。この場合、端部11aのストッパ11cを抑え込んで平らにしながら挿入し、当板11の先端をアジャスタ12から突出させる(
図7(b)参照)。
続いて、ランバー取付具13の係止部13aを当板11の取付部11bへ係止するとともに移動凹凸部13bをアジャスタ12の固定凹凸部12aに嵌合させる。
そして、当板11の端部11aをアジャスタ12からストッパ11cがアジャスタ12から露出するまで引き戻す。これにより、移動凹凸部13bがアジャスタ12の固定凹凸部12aに完全に嵌合し、ストッパ11cは自動的に浮き上がる(
図7(c)参照)。当板11の他端側も同様に組み付けられる。
【0022】
このランバーサポートを分解する必要性は少ないが、ストッパ11cを押し込んで当板11をアジャスタ12から突出させ、ランバー取付具13を当板11およびアジャスタ12から外すことにより、簡単に分解できる。
【0023】
次に、このように組み付けられたランバーサポート10を背枠1の嵌合溝部1aへ取付ける作業について
図8に基づいて説明する。
ランバーサポート10の一方のアジャスタ12を背枠1の嵌合溝部1aへ背枠1aの内側から嵌合し、係止爪12cが嵌合溝部1aに押し込んで嵌着させる。
続いて、他方側のアジャスタ12を対向する背枠1の嵌合溝部1aへ嵌着させる。この場合、当板11を撓ませて、アジャスタ12が背枠1の内側に位置するようにすると容易に組み付けることができる。
【0024】
ランバーサポート10を取り外す場合は、アジャスタ12を前方(張地6側)へ押し込んで、アジャスタ12の係止爪12cを嵌合溝部1aから外し、当板11を撓ませながら嵌合溝部1aから外せばよい。他方のアジャスタ12も、同様にして外すことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 背枠
1a 嵌合溝部
2 座
3 脚
5 背支持体
6 張地
10 ランバーサポート
11 当板
11a 端部
11b 取付部
11c ストッパ
12 アジャスタ
12a 固定凹凸部
12b 挿入溝
12c 係止爪
12d 直角壁
13 ランバー取付具
13a 係止部
13b 移動凹凸部