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▶ 株式会社湘南合成樹脂製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】管更生工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20241205BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20241205BHJP
   E03F 7/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16L1/00 L
F16L1/00 P
E03F3/04 Z
E03F7/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022563608
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036030
(87)【国際公開番号】W WO2022107457
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020191966
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592057385
【氏名又は名称】株式会社湘南合成樹脂製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100141058
【弁理士】
【氏名又は名称】重村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】神山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-012803(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088168(WO,A1)
【文献】特開平10-068293(JP,A)
【文献】実開平03-062213(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0023504(KR,A)
【文献】特開2009-243531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
E03F 3/04
E03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面板と、該内面板の両側に立設された側板と、側板の内側で内面板の上面に立設された内部板を複数有するセグメントを、周方向と管長方向に連結して既設管内に更生管を敷設する管更生工法であって、
ナットを内部に保持し、前記ナットと螺合する連結ボルトを通過させる中空部を備えたプラスチック製のナット保持部材を、一方のセグメントの側板と該側板に隣接する内部板間に取り付ける工程と、
前記一方のセグメントと、該一方のセグメントと管長方向に連結される他方のセグメントを位置合わせする工程と、
連結ボルトを前記ナットに螺合せ、該一方と他方のセグメントを管長方向に連結する工程と、
を備え、
前記ナット保持部材に、中空部に直交する方向に延びる溝が形成され、前記ナットが該溝に圧入されてナット保持部材に保持されることを特徴とする管更生工法。
【請求項2】
前記ナットが、フランジ部と該フランジ部に固定された6角ナット部とからなるフランジナットであり、前記ナット保持部材にフランジ部が挿入される溝と6角ナット部が挿入される溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載の管更生工法。
【請求項3】
前記ナットのフランジ部が挿入される溝は、ナット保持部材の一端から所定の距離隔てた位置に形成されることを特徴とする請求項2に記載の管更生工法。
【請求項4】
前記ナットの6角ナット部が挿入される溝には、6角ナット部の長さに応じた管長方向長さを有し、6角ナット部の対向する2面の幅に応じた距離離間した壁面が形成され、該6角ナット部は、その対向する2面が壁面間に位置するように、溝に挿入されることを特徴とする請求項2に記載の管更生工法。
【請求項5】
前記6角ナット部が挿入される溝の一方あるいは両方の壁面に突起が形成されており、6角ナット部が該溝に挿入されるとき、該突起が押しつぶされて押しつぶされた突起との摩擦により6角ナット部が溝から抜け落ちるのが防止されることを特徴とする請求項4に記載の管更生工法。
【請求項6】
前記ナット保持部材の側板に向かう面には、管長方向に突出するリング状の突起が形成されており、前記ナット保持部材は、該突起が該側板に形成された連結ボルトを通すことができる挿通穴に嵌合するように、取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の管更生工法。
【請求項7】
前記ナット保持部材の内部板に向かう面には、管長方向に突出するリング状の突起が形成されており、前記ナット保持部材は、該突起が該内部板に形成された連結ボルトを通すことができる挿通穴に嵌合するように、取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の管更生工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面を構成する内面板と、該内面板の周縁に立設された側板並びに端板とをプラスチックによって一体に形成してなるセグメントを、周方向並びに管長方向に連結して既設管内に更生管を敷設する管更生工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、該管路を地中から掘出することなく、その内周面にライニングを施して管路を補修する管ライニング工法が提案され、既に実用に供されている。
【0003】
大口径の管路を更生する場合には、内周面を構成する内面板と、内面板の周縁に立設された側板並びに端板とをプラスチックによって一体に形成してなるセグメントが用いられる。セグメントは周方向に連結されて管ユニットが組み立てられ、該管ユニットが連結ボルトを介して管長方向に連結されて既設管内に更生管が組み立てられる。
【0004】
下記特許文献1には、セグメントの両側板間を管長方向に渡って延びる長い連結ボルトを用い、この連結ボルトをセグメントに固定するとともに、連結ボルトを互いに連結してセグメントを管長方向に連結する構成が記載されている。
【0005】
下記特許文献2には、一方のセグメントにナットを固定し、連結ボルトを他方のセグメントを通して該一方のセグメントに固定されたナットに螺合することにより、両セグメントを管長方向に連結する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-299711号公報
【文献】特開2011-012803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたようなセグメントの連結方法では、連結ボルトが互いに管長方向に連結され、一本に連結された長い棒状の部材となり、各セグメントが管長方向に連結されるので、連結ボルトが存在するセグメント部分は堅固に結合されるが、連結ボルトが存在しない部分では、セグメントを十分な強度をもって管長方向に結合することはできない。
【0008】
一方、特許文献2に記載されたセグメントの連結方法では、ナットを周方向にずらして固定することにより、連結ボルトの配置がジグザグ状になるので、セグメントを十分な強度をもって管長方向に結合することが可能になる。しかし、ナットがセグメントの側板とそれに隣接する内部板に渡って取り付けられる長いナットとなっているので、連結ボルトのネジ部と螺合するネジ部を長いナットの内部全長に渡って形成する必要があり、高価なナットを必要とする、という問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載されたナットは管長方向に長いので、その一端をセグメントの側板に隣接する内部板にボルト締めすることにより固定する必要があり、ナット取り付けにトルク管理された専用ツールが必要となる。さらに、ナット取り付け位置が間違っていた場合には、ボルト締めを緩め、改めて正しい位置に取り付ける必要があり、取り換え作業に時間を要する、という問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、安価にセグメントを管長方向に連結することが可能な管更生工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
内面板と、該内面板の両側に立設された側板と、側板の内側で内面板の上面に立設された内部板を複数有するセグメントを、周方向と管長方向に連結して既設管内に更生管を敷設する管更生工法であって、
ナットを内部に保持し、前記ナットと螺合する連結ボルトを通過させる中空部を備えたプラスチック製のナット保持部材を、一方のセグメントの側板と該側板に隣接する内部板間に取り付ける工程と、
前記一方のセグメントと、該一方のセグメントと管長方向に連結される他方のセグメントを位置合わせする工程と、
連結ボルトを前記ナットに螺合せ、該一方と他方のセグメントを管長方向に連結する工程と、
を備え、
前記ナット保持部材に、中空部に直交する方向に延びる溝が形成され、前記ナットが該溝に圧入されてナット保持部材に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セグメントの一方側の側板と該側板に隣接する内部板間に取り付けられたナット保持部材の内部にナットが保持されるので、ナットの管長方向長さを、側板とその側板に隣接する内部板間の距離より小さくすることができ、小型で安価なナットを使用することができる。また、ナットは、ナット保持部材に形成された溝に圧入されるので、ナットの取り付けが確実で簡単になるとともに、ナット保持部材の着脱が容易になるので、ナットの取り付け位置が間違っていた場合でも、簡単にやり直しができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】更生管の組み立てに使用されるセグメントの構造を示した斜視図である。
図2】セグメントを周方向に連結して管ユニットを組み立てた状態を示す斜視図である。
図3】セグメントを管長方向に連結する状態を示した説明図である。
図4a】セグメントを管長方向に連結するために使用されるナット保持部材の上面図である。
図4b】セグメントを管長方向に連結するために使用されるナット保持部材の正面図である。
図4c】セグメントを管長方向に連結するために使用されるナット保持部材の側面図である。
図5a】セグメントを管長方向に連結するために使用されるナットの正面図である。
図5b】セグメントを管長方向に連結するために使用されるナットの側面図である。
図6a図4bのA-A線に沿った断面図である。
図6b】ナットをナット保持部材に挿入する状態を示した説明図である。
図7a図4cのB-B線に沿った断面図である。
図7b】ナットのフランジ部をナット保持部材に挿入する状態を示した説明図である。
図8a図4cのC-C線に沿った断面図である。
図8b】ナットの6角ナット部をナット保持部材に挿入する状態を示した説明図である。
図9】ナット保持部材をセグメントに取り付ける状態を示した説明図である。
図10図9の矢印Dの方から見たセグメントの正面図である。
図11】連結ボルトとナット保持部材を用いてセグメントを管長方向に連結する状態を示した説明図である。
図12】管ユニットを組み立て更生管を既設管内に敷設する状態を説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を、添付図面に示す実施例に基づいて説明する。本発明は、下水管、上水管、トンネル、あるいは農業用水路などの大口径の既設管を更生あるいは修復するのに適している。実施例では、更生管は、管長方向に直交する断面形状が円形として説明されるが、矩形など円形以外の形状の更生管にも本発明を適用できることは勿論である。更に、断面形状が管として閉じた形状でなく、例えば馬蹄形や半円形、凹字形など片側が開いた形状である場合にも管と見なして本発明を適用することができる。
【0015】
この明細書において、管長方向とは図2で管ユニット10の管の長さ方向に延びる矢印Xで示した方向を、周方向とは管ユニット10の円の周方向をいう。
【0016】
図1には、更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された同じ板厚の側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0017】
内面板101の上面には、セグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板102、103と同じ板厚並びに同様な形状の複数の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。
【0018】
セグメント1は、円周を複数等分する所定角度、例えば6等分する60度の円弧状に湾曲した形状となっているが、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形などにすることもできる。
【0019】
側板102、103には、セグメント1を管長方向に連結するために、連結ボルト11(図3)を通すための円形の挿通穴102a、103aが周方向に等間隔に複数形成される。内部板106にも、連結ボルト11を通すための挿通穴102a、103aより小径の円形の挿通穴106aが等間隔に複数形成され、内部板107には、連結ボルトが挿入でき挿通穴として機能する切り欠き107aが等間隔に複数形成される。これらの挿通穴102a、103a、106a、並びに切り欠き107aは、それぞれ周方向の位置が一致している。
【0020】
端板104、105は、側板102と側板103の間に配置される部材で、端板104、105には、セグメント1を周方向に連結するボルト等の連結ボルトを通すための円形の挿通穴104a、105aが複数形成される。
【0021】
セグメント1はその端板105と他のセグメントの端板104を位置合わせして当接させ、ボルト6とナット7(図3)を挿通穴104a、105aに位置決めして、ボルト6とナット7を螺合させることにより周方向に連結させることができる。
【0022】
セグメントを順次周方向に一周分連結させると、図2に示すような管長方向Xに垂直に所定幅Dを有するリング状の管ユニット10を組み立てることができる。管ユニット10は、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。なお、図2では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107等の補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。
【0023】
このような管ユニット10は、図3に示したように、順次管長方向に連結される。図3において、管ユニットのセグメント1a、1b、1cの側板102と側板102に隣接する内部板106間には、図5a、図5bに図示したようなナット60を保持するプラスチック製のナット保持部材50が複数取り付けられる。各セグメント1a、1b、1cは、連結ボルト11を、セグメントに形成された側板102、103、内部板106に形成された挿通穴102a、103a、106a、内部板107に形成された切り欠き107aに挿通し、ナット保持部材50内に保持されたナット60と螺合することにより管長方向に連結される。
【0024】
ナット保持部材50は、図4a、図4b、図4cに示したように、セグメントの側板102とそれに隣接する内部板106間の距離t1’(図9)に応じた管長方向長さt1を有し、一方端部に中空な円柱部51と、他方端部に中空な円柱部52と、ナット60が圧入される溝55、56が形成された円柱部53、54とを備えている。円柱部51、52は、それぞれ連結ボルト11を通すことができる径r1の中空部51a、52aを同軸に有する。中空部51a、52aは、円柱部53、54の溝55、56を介して連通しており、ナット保持部材50には、連続した中空部が形成される。
【0025】
円柱部51の管長方向長さt2は、セグメントの側板102、103、内部板106、107の板厚とほぼ同じに設定され、円柱部53、54の管長方向長さは、円柱部51の管長方向長さt2とほぼ同一になっている。なお、円柱部51、53は、他の円柱部52、54より径が大きく、ナット保持部材50が側板102と内部板106間に取り付けられたとき、円柱部51、53の底部が内面板101の上部と衝突するので、該底部が切断されて水平な平面51cになっている(図10も参照)。
【0026】
円柱部51の外表面(側板102に向かう面)には、リング状突起51bが形成され、その外径d1は、突起51bが側板102、103に形成された挿通穴102a、103aに嵌合できる大きさになっている。また、円柱部52の外表面(内部板106に向かう面)には、リング状突起52bが形成され、その外径d2は、突起52bが内部板106に形成された挿通穴106aに嵌合できる大きさになっている。
【0027】
突起51b、52bを含めたナット保持部材50の管長方向の長さt3は、ナット保持部材50をセグメントの側板102とそれに隣接する内部板106間に圧入できる長さになっている。ナット保持部材50を、側板102と内部板106間に圧入して取り付けると、突起51b、52bが側板102の挿通穴102aと内部板106の挿通穴106aに嵌合して、ナット保持部材50がセグメントから抜け落ちることが防止される。なお、突起51b、52bは、いずれか一方だけにすることもできる。
【0028】
ナット保持部材50に圧入されるナット60は、図5a、5bに図示したように、径w1の円形なフランジ部60aとこれに固定されるそれぞれ対向する2面間の距離がw2の6角ナット部60bからなるフランジナットとして構成される。フランジ部60aの径w1は、側板102、103の挿通穴102a、103aの径より大きく、ナット60が挿通穴102a、103aから抜け出ないような値になっている。フランジ部60a、6角ナット部60bは、それぞれナットの高さ方向にs1、s2の長さを有し、6角ナット部60b内には、連結ボルト11のネジ部11aと螺合するネジ部60cが形成される。
【0029】
ナット保持部材50の円柱部53には、ナット60のフランジ部60aが圧入され、中空部51a、52aに直交する方向に延びる溝55が形成される。溝55は、図6bに示したように、管長方向(ナット保持部材50が延びる方向)に、フランジ部60aの長さs1に応じた長さs1’を有するとともに、図7aに図示したように、フランジ部60aの円形形状に相当する円弧面55aを上部に有する。溝55の両側は垂直な壁面55b、55cになっていて、開放した下部からフランジ部60aが挿入できるようになっている。溝55は、管長方向に円柱部51に続いて形成されるので、円柱部51の外表面から側板102の厚さt2の距離隔てた位置に形成される。
【0030】
また、ナット保持部材50の円柱部53、54には、6角ナット部60bが圧入され、中空部51a、52aに直交する方向に延びる溝56が溝55に連続して形成される。溝56には、6角ナット部60bの長さs2に応じた管長方向長さs2’を有するとともに、6角ナット部60bの対向する2面の幅w2に応じた距離w2’離間した壁面56b、56c(図8a、図8b)が形成される。、また、溝56には、円弧面56aが上部に形成される。6角ナット部60bは、その対向する2面が両壁面56b、56c間に位置するように、溝56の開放した下部から挿入される。また、壁面56b、56cには、断面が3角形の小さな管長方向に延びる突起56d、56eが壁面56b、56cと一体に形成される。
【0031】
ナット60のフランジ部60aと6角ナット部60bは、図7b、図8bに示したように、溝55、56の開放した下方部から差し込まれ、フランジ部60aが溝55の円弧面55aに当接するまで挿入される。このとき、ナット60、ナット保持部材50の中空部51a、52aは同軸となり、連結ボルト11をナット60に螺合させることができる。6角ナット部60bが挿入される溝56の壁面56b、56cには、突起56d、56eが形成されているので、6角ナット部60bの挿入には、圧入力が必要になるとともに、その圧入により突起56d、56eが押しつぶされて、その摩擦と圧力で6角ナット部60bが溝56から抜け落ちてしまうのを防止することができる。
【0032】
なお、ナット保持部材50は、セグメント1と同じ材質の硬質塩化ビニル(PVC)を用いて射出成型により一体に成形されるが、その材質は、硬質塩化ビニルだけではなく、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ナイロン等、充填材の強アルカリ成分に耐えられる樹脂材料であってもよい。
【0033】
上述したようなナット保持部材50を用いてセグメントを管長方向に連結する場合、予めナット60を、そのフランジ部60aがナット保持部材50の溝55の円弧面55aに当接するまで圧入し、ナット60をナット保持部材50に取り付けておく。ナット60の圧入時、6角ナット部60bが溝56に形成された突起56d、56eを押しつぶすので、その摩擦と圧力でナット60が溝55、56から外れてしまうのを防止することができる。
【0034】
続いて、図9に図示したように、ナット60が圧入されたナット保持部材50を、中空部51a、中空部52aがセグメント1bの側板102の挿通穴102a、内部板106の挿通穴106aと整合するように、側板102と内部板106間に圧入して取り付ける。このとき、図10に示したように、円柱部51の突起51bは、側板102の挿通穴102aと嵌合して挿通穴102a内に入り込み、また、図示はないが、円柱部52の突起52bも、内部板106の挿通穴106aに嵌合するので、ナット保持部材50がセグメント1bから抜け落ちることが防止される。
【0035】
なお、ナット保持部材50は、セグメントを工事現場に搬送する前、例えば工場内で、セグメントの周方向に沿った複数の位置に取り付けられる。このように、ナット保持部材50が取り付けられたセグメントは、図12に示したように、マンホール20内に搬入され、図2に図示したように、周方向に連結されて管ユニット10が組み立てられる。
【0036】
続いて、管ユニット10の各セグメントは、他の管ユニットのセグメントと管長方向に連結される。図9図11は、2つのセグメント1a、1bの管長方向の連結を説明する。
【0037】
図11に示したように、ナット保持部材50が取り付けられたセグメント1bの一方側の側板102と、セグメント1bと管長方向に連結されるセグメント1aの他方側の側板103を位置合わせする。側板102には、位置合わせ用の突起102bが形成されているので、これらの突起102bを対応する側板103の穴103bに嵌入すると、セグメント1a、1bの内面板101の内周面が一致し、また、連結ボルト11が通過できるように、側板102、103の挿通穴102a、103aが整合する。なお、位置合わせ用の突起102b並び穴103bは、図の煩雑さを避けるために、図1図3などには、図示が省略されている。
【0038】
続いて、連結ボルト11を、セグメント1aに形成された側板102の挿通穴102aから内部板106に形成された挿通穴106a、内部板107に形成された切り欠き(挿通穴)107aに挿通し、セグメント1aの側板103の挿通穴103a、セグメント1bの側板102の挿通穴102aに通してナット保持部材50内のナット60と螺合させる。
【0039】
本実施例では、連結ボルト11は長ボルトとして構成されており、連結ボルト11aの頭部11bがセグメント1aの側板102に隣接する最左端の内部板106に当接するまで、連結ボルト11をナット60にねじ込むと、突き合わされた側板102、103に十分な締付力が発生し、両セグメント1a、1bを管長方向に堅固に連結することができる。
【0040】
本実施例では、ナット60のフランジ部70aが挿入される溝55がセグメント1bの側板102から該側板102に隣接する内部板106に向かって所定距離、例えば側板102の厚さt2の距離隔てた位置に形成されるので、セグメントの連結時、強い締付力が発生しても、セグメントは、その締付力に耐えることができる。また、ナット60の6角ナット部60bが挿入される溝56の両側には、6角ナット部60bの対向する2面の幅に応じた距離離間した壁面56b、56cが形成され、6角ナット部60bは、2面が壁面56b、56cに沿って挿入されるので、連結ボルト11が回転しても、ナット60の供回りを防止することができる。
【0041】
図3には、セグメント1cと1bは、連結ボルト11により既に管長方向に連結されており、セグメント1bにセグメント1aを連結する状態が示されている。セグメント1aの下の連結ボルト11は、既にセグメント1bのナット60にねじ込まれており、上の連結ボルト11は、これからセグメント1bのナット60にねじ込まれる状態で、図11に図示した状態に対応する。
【0042】
このようにして、管ユニットのセグメントを、既に連結されている他の管ユニットのセグメントと管長方向に連結することにより、管ユニットを管長方向に任意の長さに連結して、既設管21内に更生管40を敷設することができる。更生管42が所定長さになると、更生管42の外周と既設管21の内壁面との間に充填材が充填され、更生管と既設管が一体化される。
【0043】
本実施例では、ナット保持部材50は隣接するセグメントとは周方向にずらして取り付けられるので、連結ボルト11の配置がジグザグ状になり、セグメントを十分な強度をもって管長方向に結合することが可能になる。また、ナット60は、ナット保持部材50に形成された溝に圧入されるので、ナットの取り付けが確実で簡単になる。またナット保持部材50の取り付け位置が間違っていた場合でも、工具をナット保持部材50の下方に挿入してナット保持部材50を持ち上げることにより簡単に取り外すことができるので、ナット保持部材50を簡単に正しい位置に取り付けることができる。
【0044】
なお、本実施例では、ナット保持部材50は、径の異なる円柱部材を連続させた形状となっているが、断面が矩形で直方体の形状をしていてもよい。また、ナットの種類は、フランジ付きナットとなっているが、フランジなしのナットでもよい。また、ナット保持部材50は、ナット60が挿入される溝55、56の開放端がセグメントの内面板101の上面に向くように、取り付けたが、90度回転した左右方向、つまり内面板101の上面に沿った方向に向くように、取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 セグメント
10 管ユニット
11 連結ボルト
20 マンホール
21 既設管
40 更生管
50 ナット保持部材
51a、52a 中空部
55、56 溝
60 ナット
101 内面板
102、103 側板
104、105 端板
106、107 内部板
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12