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特許7598676骨盤底筋を修復するためのポストバイオティクス製剤及びその製造方法並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】骨盤底筋を修復するためのポストバイオティクス製剤及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241205BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20241205BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241205BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/747
A61P21/00
A23L33/135
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024003821
(22)【出願日】2024-01-15
(65)【公開番号】P2024161318
(43)【公開日】2024-11-18
【審査請求日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】202310502907.7
(32)【優先日】2023-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  M 2023571
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524019313
【氏名又は名称】山東奈思健康科技有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】Shandong Nice Health Technology Co.,LTD.
【住所又は居所原語表記】20-1-102,Huarun Shanda Science and Technology Industrial Park,Xinglong Subdistrict,Shizhong District,Jinan,Shandong 250003,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胥 源
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506475(JP,A)
【文献】特開2020-059694(JP,A)
【文献】特開2023-072623(JP,A)
【文献】特開2020-176094(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116536201(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0113633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
A61K35/00
A23L33/00
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中国典型培養物保蔵センターにブダペスト条約に基づく国際寄託されており、寄託日は2023年04月21日であり、生物寄託番号はCCTCC NO:M 2023571である、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)Nice-02を少なくとも含有する微生物菌剤の製造方法であって、
S1 前記ラクトバチルス・プランタルムNice-02を活性化培地に画線塗抹して純粋な菌株を得る菌種活性化のステップと、
S2 ステップS1で製造されたラクトバチルス・プランタルムNice-02シングルコロニーをピックアップし28~30℃で第1培養液に入れ、12~14時間静置培養して1次シード液を得る1次シード液用意のステップと、
S3 上記1次シード液を0.1~5%の接種量で第2培養液に接種し、30~40℃で10~12時間静置培養して2次シード液を得る2次シード液用意のステップと、
S4 上記で培養した2次シード液を無菌条件下で第3培養液を含有するシードタンクに接種し、接種量が0.5~5%であり、20~50回転/分間で撹拌培養し、温度を30~40℃とし、pHを7.0とし、タンク圧力を0.03~0.06MPaとし、10~12時間培養して3次シード液を得る3次シード液用意のステップと、
S5 上記3次シード液を滅菌培養液の含有する発酵タンクに接種し、接種量が0.5~5%であり、32℃で、40~50r/minで、5~6時間培養するラクトバチルス・プランタルム1次発酵のステップと、
S6 5~6時間後、発酵温度を30℃に下げ、撹拌の回転速度を50~70r/minに上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHが自然のままで3~4時間発酵するラクトバチルス・プランタルム2次発酵のステップと、
S7 8~10時間後、撹拌速度を変えず、発酵温度を35℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHを6.5に維持し、2時間発酵するラクトバチルス・プランタルム3次発酵のステップと、
S8 10~12時間後、撹拌の回転速度を30~40r/minに下げ、発酵温度を40℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHを6.5に維持し、1~2時間発酵するラクトバチルス・プランタルム4次発酵のステップと、
S9 11~14時間後、撹拌速度を変えず、温度を45℃に上げ、発酵液の体積の0.05~0.2%の滅菌リポテイコ酸を発酵タンクに加え、温度を20℃に下げ、30分間維持するラクトバチルス・プランタルム5次発酵のステップと、を含むことを特徴とする、微生物菌剤の製造方法。
【請求項2】
前記ステップS1では、
前記活性化培地の組成は、カゼイン0.05~0.2%、シアル酸0.05~0.2%、ビーフエキス0.3~1.0%、ペプトン0.5~2%、酢酸ナトリウム0.05~0.2%、リン酸二水素カリウム0.05~0.2%、寒天粉末1.5~2.0%であり、pHを7.0に調整することを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記活性化培地の組成は、カゼイン0.1%、シアル酸0.1%、ビーフエキス0.7%、ペプトン1%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%、寒天粉末2.0%であり、pHを7.0に調整することを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップS2では、
前記第1培養液の組成は、カゼイン0.05~0.2%、シアル酸0.05~0.2%、フラクトオリゴ糖1~5%、酵母粉末0.1~1%、酢酸ナトリウム0.05~0.2%、リン酸二水素カリウム0.05~0.2%であり、pHを7.0に調整することを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1培養液の組成は、カゼイン0.1%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖3%、酵母粉末0.5%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%であり、pHを7.0に調整することを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS3では、
前記第2培養液の組成は、カゼイン0.1~1%、シアル酸0.05~0.2%、フラ
クトオリゴ糖1~3%、酵母粉末0.1~1%、トゥイーン80 0.05~0.2%で
あり、pHは自然のままであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2培養液の組成は、カゼイン0.5%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖1.5%、酵母粉末0.5%、トゥイーン80 0.1%であり、pHは自然のままであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS4では、前記第3培養液の組成は、ペプトン0.5~5%、イソマルトオリゴ糖1~5%、リン酸水素二カリウム0.1~0.5%、グリシン0.5~5%、チロシン0.1~1%、トゥイーン80 0.05~0.2%、ポリエーテル消泡剤0.05~0.2%であり、pHは自然のままであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第3培養液の組成は、ペプトン1%、イソマルトオリゴ糖4%、リン酸水素二カリウム0.2%、グリシン1%、チロシン0.5%、トゥイーン80 0.1%、ポリエーテル消泡剤0.1%であり、pH値は自然のままであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
多段発酵プロセスで使用される培養液の組成は、イソマルトオリゴ糖3%、カゼイン0.2%、ペプトン2%、フラクトオリゴ糖5%、水溶性デンプン3%、トゥイーン80 0.1%、グリシン0.5%、チロシン0.5%、ポリエーテル消泡剤0.2%であり、pHは自然のままであることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップS9で製造された発酵液に対して高温不活化及び噴霧乾燥を行うステップをさらに含むことを特徴とする、請求項から10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された微生物菌剤。
【請求項13】
請求項12に記載の微生物菌剤の骨盤底筋修復製品の製造における使用
【請求項14】
請求項11に記載の製造方法によって製造された微生物菌剤。
【請求項15】
請求項14に記載の微生物菌剤の骨盤底筋修復製品の製造における使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物及び生物医薬の技術分野に属し、具体的には、骨盤底筋を修復するためのポストバイオティクス製剤及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
該背景技術部分の情報を開示するのは、本発明の全体的な背景に対する理解を高めることのみを目的としており、必ずしも該情報が当業者に公知の先行技術となっていることを承認又は何らかの形で示唆するとみなすものではない。
【0003】
女性骨盤底筋(PFMs)は骨盤の出口に広がり、骨盤と腹部内臓を支え、尿と糞の制御を助け、性的機能を実現する。ヒトでは、PFMは、恥骨筋と腸骨尾骨筋の内側(恥骨直腸)と外側(恥骨尾骨)部分及び後尾筋から構成される肛門挙筋複合体を含む。PFM機能障害は、骨盤腔器官の脱垂、尿失禁、糞便失禁を含む骨盤底疾患の進行の主要な原因の1つである。加齢、妊娠、経腟分娩などの要因により、骨盤底筋収縮力の低下や構造的損傷が引き起こされる可能性があり、骨盤底支持構造は腹腔圧力に対抗できず、最終的には腹圧性尿失禁と骨盤底器官の脱出につながる。腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence,SUI)は、目に見えない「社交癌」に喩えられ、中高年の女性に多く発生する一般的な病気であり、咳、大笑いなどにより腹圧が増加すると、尿が無意識に漏れてしまうと定義されている。この病気の発病は非常にプライベートなものであり、患者は口に出すのが恥ずかしく、又は助けを求める方法がないため、患者の生活、人間関係、心理的健康に大きなマイナス影響を与えた。
【0004】
現在、骨盤底機能障害性疾患の治療方式は、保守的治療、薬物治療及び外科的治療を含み、保守的治療にはマット、カテーテルまたは小便器の使用、ダイエット、禁煙、行動治療(すなわち膀胱訓練、水分/食事の変更、カフェイン摂取の減少)、理学療法及び骨盤底の電気生理学的刺激などが含まれる。しかし、モチベーションの欠如、継続性の欠如、及び実行中の不一致により、保存的治療の効果は一般的である。抗コリン剤及び/又はβ-3受容体作動薬は混合性尿失禁に最もよく用いられるが、長期に服薬すると、副作用が大きい。手術の選択については、尿道側注射療法、無張力膣帯、恥骨膣或いは尿道中部尿道スリング及びバーチ膣懸垂術などさまざまある。しかし、これらの選択肢は短期的な緩和しか提供できず、長期的には、膀胱や膣の穿孔、排尿や蓄尿の機能障害、慢性骨盤痛、尿道や膣のびらん、又は物質感染などの合併症を引き起こすことが多い。
【0005】
現在、医学的に女性骨盤底筋の問題を迅速かつ効果的に改善するには、上述の3つの方法以外に他の方法はないが、上述の治療方法は高価であり、術後の痛み、感染、炎症などの言い出せないことが起こりやすい。多くの女性は骨盤底筋問題に対して口に出すのが恥ずかしく、自分で問診に行くのを恐れているため、経口調節剤によって骨盤底筋問題の悩みを徐々に改善するのはよい解決方法となる。上記分析によれば、経口ポストバイオティクスによる骨盤底筋修復の優位性は医学的治療よりも明らかに大きい。
【発明の概要】
【0006】
上記従来技術の不足に基づいて、本発明は骨盤底筋を修復するためのポストバイオティクス製剤及びその製造方法並びに使用を提供する。本発明で製造されたポストバイオティクス製剤は、平滑筋の収縮を促進し、骨盤底筋損傷を修復する効果があることが動物及び人体実験によって検証された、それにより従来の治療方法の副作用が大きく、治療効果がよくなく、患者のコンプライアンスがよくないなどの問題を効果的に解決する。上記研究成果を基に、本発明を完成するに至った。
【0007】
上記技術的目的を実現するために、本発明は、以下の技術的解決手段に関する。
【0008】
本発明の一側面では、中国典型培養物保蔵センター(住所:湖北省武漢市武昌珞珈山武漢大学)にブダペスト条約に基づく国際寄託されており、寄託日は2023年04月21日であり、生物寄託番号はCCTCC NO:M 2023571である、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)Nice-02を提供する。
【0009】
本発明の第2側面では、上記ラクトバチルス・プランタルム及び/又はその発酵代謝産物を少なくとも含有する微生物菌剤を提供する。
【0010】
さらに、前記微生物菌剤は、不活性化されたラクトバチルス・プランタルム及びその発酵代謝産物を含み、前記発酵代謝産物は、細胞外多糖類、ポリペプチド及びアミノ酸を含むが、これらに限定されない。この場合、前記微生物菌剤は即ちポストバイオティクス製剤である。
【0011】
このため、本発明の第3側面では、
S1 前記ラクトバチルス・プランタルムLactobacillus plantarum Nice-02を活性化培地に画線塗抹して純粋な菌株を得る菌種活性化のステップと、
S2 ステップS1で製造されたラクトバチルス・プランタルムNice-02シングルコロニーをピックアップし28~30℃で第1培養液に入れ、12~14時間静置培養して1次シード液を得る1次シード液用意のステップと、
S3 上記1次シード液を0.1~5%(好ましくは0.5%、v/v)の接種量で第2培養液に接種し、30~40℃(好ましくは37℃)で10~12時間静置培養して2次シード液を得る2次シード液用意のステップと、
S4 上記で培養した2次シード液を無菌条件下で第3培養液を含有するシードタンクに接種し、接種量が0.5~5%(好ましくは2%)であり、20~50回転/分間(好ましくは30回転/分間)で撹拌培養し、温度を30~40℃(好ましくは37℃)とし、pHを7.0とし、タンク圧力を0.03~0.06MPa(好ましくは0.05Mpa)とし、10~12時間培養して3次シード液を得る3次シード液用意のステップと、
S5 上記3次シード液を滅菌培養液の含有する発酵タンクに接種し、接種量が0.5~5%(好ましくは2%)であり、32℃で、40~50r/min(好ましくは45r/min)で、5~6時間培養するラクトバチルス・プランタルム1次発酵のステップと、
S6 5~6時間後、発酵温度を30℃に下げ、撹拌の回転速度を50~70r/min(好ましくは60r/min)に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHが自然のままで3~4時間発酵するラクトバチルス・プランタルム2次発酵のステップと、
S7 8~10時間後、撹拌速度を変えず、発酵温度を35℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHを6.5に維持し、2時間発酵するラクトバチルス・プランタルム3次発酵のステップと、
S8 10~12時間後、撹拌の回転速度を30~40r/min(好ましくは40r/min)に下げ、発酵温度を40℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHを6.5に維持し、1~2時間発酵するラクトバチルス・プランタルム4次発酵のステップと、
S9 11~14時間後、撹拌速度を変えず、温度を45℃に上げ、発酵液の体積の0.05~0.2%(好ましくは0.1%)の滅菌リポテイコ酸を発酵タンクに加え、温度を20℃に下げ、30分間維持するラクトバチルス・プランタルム5次発酵のステップと、を含む、上記微生物菌剤の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第4側面では、上記ポストバイオティクス製剤の骨盤底筋修復製品の製造における使用を提供する。
【0013】
前記骨盤底筋修復製品は、食品又は医薬品であってもよい。
【0014】
上記1つ又は複数の技術的解決手段の有益な技術的効果は以下のとおりである。
【0015】
上記技術的解決手段は、スクリーニングによりラクトバチルス・プランタルムを獲得し、該菌株を基にしたポストバイオティクス製剤製品の開発に成功した。該ポストバイオティクス製剤は、平滑筋の収縮を促進し、骨盤底筋損傷を修復し、腹圧性尿失禁状況を比較的速く修復できる効果があることが試験で検証された。また、該ポストバイオティクス製剤の製造プロセスの条件パラメータを最適化し、ラクトバチルス・プランタルムに対して階段的発酵を行うことにより、発酵周期が短縮され、代謝産物が全面的で豊富であるという利点を実現し、それにより工業化生産により適し、したがって、良好な実用価値がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明はすべて例示的であり、本発明をさらに説明するためのものであることを指摘すべきである。特に断らない限り、本発明で使用されるすべての技術用語と科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0017】
注意すべきこととして、本明細書で使用される用語は、本発明の出願による例示的な実施形態を限定することを意図するものではなく、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎない。文脈で特に明示的に示されない限り、本明細書で使用される単数形は複数形をも含むことが意図されており、また、更に理解すべきことは、本明細書で「含む」及び/又は「からなる」という用語が使用される場合、特徴、ステップ、操作、デバイス、コンポーネント、及び/又はこれらの組み合わせが存在することが示される点である。
【0018】
本発明の具体的な一実施形態では、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)Nice-02を提供し、それは、中国典型培養物保蔵センター(住所:湖北省武漢市武昌珞珈山武漢大学)にブダペスト条約に基づく国際寄託されており、寄託日は2023年04月21日であり、生物寄託番号はCCTCC NO:M 2023571である。
【0019】
本発明の第2側面では、微生物菌剤を提供し、それは、上記ラクトバチルス・プランタルム及び/又はその発酵代謝産物を少なくとも含有する。
【0020】
さらに、前記微生物菌剤は、不活性化されたラクトバチルス・プランタルム及びその発酵代謝産物を含み、前記発酵代謝産物は、細胞外多糖類、ポリペプチド及びアミノ酸を含むが、これらに限定されない。この場合、前記微生物菌剤は即ちポストバイオティクス製剤である。
【0021】
このため、本発明の第3側面では、上記微生物菌剤の製造方法を提供し、前記製造方法は、次のステップS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9を含む。
【0022】
S1の菌種活性化では、前記ラクトバチルス・プランタルムLactobacillus plantarum Nice-02を活性化培地に画線塗抹して純粋な菌株を得る。
【0023】
ここで、前記活性化培地の組成は、カゼイン0.05~0.2%、シアル酸0.05~0.2%、ビーフエキス0.3~1.0%、ペプトン0.5~2%、酢酸ナトリウム0.05~0.2%、リン酸二水素カリウム0.05~0.2%、寒天粉末1.5~2.0%であり、pHを7.0に調整する。
【0024】
更に具体的には、前記活性化培地の組成は、カゼイン0.1%、シアル酸0.1%、ビーフエキス0.7%、ペプトン1%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%、寒天粉末2.0%であり、pHを7.0に調整する。
【0025】
S2の1次シード液の用意では、ステップS1で製造されたラクトバチルス・プランタルムNice-02シングルコロニーをピックアップし28~30℃で第1培養液に入れ、12~14時間静置培養して1次シード液を得る。
【0026】
前記第1培養液の組成は、カゼイン0.05~0.2%、シアル酸0.05~0.2%、フラクトオリゴ糖1~5%、酵母粉末0.1~1%、酢酸ナトリウム0.05~0.2%、リン酸二水素カリウム0.05~0.2%であり、pHを7.0に調整する。
【0027】
更に具体的には、前記第1培養液の組成は、カゼイン0.1%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖3%、酵母粉末0.5%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%であり、pHを7.0に調整する。
【0028】
S3の2次シード液の用意では、上記1次シード液を0.1~5%(好ましくは0.5%、v/v)の接種量で第2培養液に接種し、30~40℃(好ましくは37℃)で10~12時間静置培養して2次シード液を得る。
【0029】
前記第2培養液の組成は、カゼイン0.1~1%、シアル酸0.05~0.2%、フラクトオリゴ糖1~3%、酵母粉末0.1~1%、トゥイーン80 0.05~0.2%であり、pHは自然のままである。
【0030】
更に具体的には、前記第2培養液の組成は、カゼイン0.5%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖1.5%、酵母粉末0.5%、トゥイーン80 0.1%であり、pHは自然のままである。
【0031】
S4の3次シード液の用意では、上記で培養した2次シード液を無菌条件下で第3培養液を含有するシードタンクに接種し、接種量が0.5~5%(好ましくは2%)であり、20~50回転/分間(好ましくは30回転/分間)で撹拌培養し、温度を30~40℃(好ましくは37℃)とし、pHを7.0とし、タンク圧力を0.03~0.06MPa(好ましくは0.05Mpa)とし、10~12時間培養して3次シード液を得る。
【0032】
前記第3培養液の組成は、ペプトン0.5~5%、イソマルトオリゴ糖1~5%、リン酸水素二カリウム0.1~0.5%、グリシン0.5~5%、チロシン0.1~1%、トゥイーン80 0.05~0.2%、ポリエーテル消泡剤0.05~0.2%であり、pHは自然のままである。
【0033】
具体的には、前記第3培養液の組成は、ペプトン1%、イソマルトオリゴ糖4%、リン酸水素二カリウム0.2%、グリシン1%、チロシン0.5%、トゥイーン80 0.1%、ポリエーテル消泡剤0.1%であり、pH値は自然のままである。
【0034】
S5のラクトバチルス・プランタルムの1次発酵では、上記3次シード液を滅菌培養液の含有する発酵タンクに接種し、接種量が0.5~5%(好ましくは2%)であり、32℃で、40~50r/min(好ましくは45r/min)で、5~6時間培養する。
【0035】
前記培養液の組成は、イソマルトオリゴ糖3%、カゼイン0.2%、ペプトン2%、フラクトオリゴ糖5%、水溶性デンプン3%、トゥイーン80 0.1%、グリシン0.5%、チロシン0.5%、ポリエーテル消泡剤0.2%であり、pHは自然のままである。
【0036】
S6のラクトバチルス・プランタルムの2次発酵では、5~6時間後、発酵温度を30℃に下げ、撹拌の回転速度を50~70r/min(好ましくは60r/min)に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHが自然のままで3~4時間発酵する。
【0037】
S7のラクトバチルス・プランタルムの3次発酵では、8~10時間後、撹拌速度を変えず、発酵温度を35℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHを6.5に維持し、2時間発酵する。
【0038】
S8のラクトバチルス・プランタルムの4次発酵では、10~12時間後、撹拌の回転速度を30~40r/min(好ましくは40r/min)に下げ、発酵温度を40℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pHを6.5に維持し、1~2時間発酵する。
【0039】
S9のラクトバチルス・プランタルムの5次発酵では、11~14時間後、撹拌速度を変えず、温度を45℃に上げ、発酵液の体積の0.05~0.2%(好ましくは0.1%)の滅菌リポテイコ酸を発酵タンクに加え、温度を20℃に下げ、30分間維持する。
【0040】
前記製造方法は、ステップS9で製造された発酵液に対して高温不活化及び噴霧乾燥を行うステップをさらに含む。ここで、前記高温不活化は具体的には75℃で40分間保持して不活化処理を行い、降温後、噴霧乾燥を行うことができる。前記噴霧乾燥は入口空気温度を150~180℃に、出口空気温度を90~100℃に設定して行われ、噴霧乾燥を行ってポストバイオティクス製剤粉末を得る。
【0041】
本発明のさらに別の具体的な実施形態では、上記ポストバイオティクス製剤の骨盤底筋修復製品の製造における使用を提供する。
【0042】
前記骨盤底筋修復製品は、食品又は医薬品であってもよい。
【0043】
更に具体的には、前記医薬品は、他の少なくとも1つの薬物不活性成分を含んでもよい。
【0044】
前記薬物不活性成分は、薬学的によく用いられる担体、賦形剤及び希釈剤等であってもよい。また、通常の方法に従って、粉剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、スプレー剤等の経口剤とすることができる。
【0045】
前記含有されてもよい担体、賦形剤及び希釈剤等の非医薬活性成分は当分野で周知であり、臨床基準に適合するように当業者によって決定され得る。
【0046】
本発明のさらに別の具体的な実施形態では、前記担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アラビアガム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク粉、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などを含むが、これらに限定されない。
【0047】
以下は、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明に対する制限を構成するものではない。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、本発明を説明するためのものに過ぎないことを理解すべきである。実施例では、各培地(液)中の組成成分「%」は質量体積百分率であり、単位はg/mLである。
【0048】
実施例1
骨盤底筋を修復するポストバイオティクスの製造方法であって、それは、以下のステップを含む。
【0049】
無菌操作台で、-80°Cの低温冷蔵庫に保存されたラクトバチルス・プランタルムLactobacillus plantarum Nice-02を培地平板に画線塗抹し、シングルコロニーをスクリーニングし、シングルコロニーを3回繰り返し活性化し、純粋な菌株を得る。
【0050】
前記培地の組成は、培地100ミリリットル当たりカゼイン0.1%、シアル酸0.1%、ビーフエキス0.7%、ペプトン1%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%、寒天粉末2.0%が含有されており、水酸化カリウムでpHを7.0に調整する。
【0051】
シングルコロニーを100mLの液体培地(培地が15*200の試験管に入れられ、液体培地の組成は、培地100ミリリットル当たりカゼイン0.1%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖3%、酵母粉末0.5%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%が含有されており、水酸化カリウムでpHを7.0に調整する)にピックアップし、30℃で12時間静置培養する。
【0052】
以上の培養したシード液を三角フラスコ培地に接種し、接種量は0.5%であり、即ち2次シード培養液(培養液100ミリリットル当たりカゼイン0.5%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖1.5%、酵母粉末0.5%、トゥイーン80 0.1%が含有されており、pHが自然のままである)100mLに、1次シード液0.5mLが接種され、接種終了後、滅菌ガーゼ及びクラフト紙で瓶の口を密封し、手で少し揺動させ、接種された菌種を培養液と均一に混合し、続いて恒温箱に入れて37℃の条件下で12h培養静置し、これを2次シード液と呼ぶ。
【0053】
上記で培養した2次シード液を無菌条件下で3次シード培養液(培地100ミリリットル当たりペプトン1%、イソマルトオリゴ糖4%、リン酸水素二カリウム0.2%、グリシン1%、チロシン0.5%、トゥイーン80 0.1%、ポリエーテル消泡剤0.1%が含有されており、pHが自然のままである)を加えたシードタンクに接種し、接種量が2%(v/v)であり、30回転/分間で撹拌培養し、温度を37℃とし、pHを7.0とし、タンク圧力を0.05MPaとし、12時間培養する。
【0054】
3次シード液を滅菌発酵液(培地100ミリリットル当たりイソマルトオリゴ糖3%、カゼイン0.2%、ペプトン2%、フラクトオリゴ糖5%、水溶性デンプン3%、トゥイーン80 0.1%、グリシン0.5%、チロシン0.5%、ポリエーテル消泡剤0.2%が含有されており、pH値が自然のままである)の含有する発酵タンクに接種し、接種量が2%(v/v)であり、32℃で、45r/minで、5時間培養する。5時間後、発酵温度を30℃に下げ、撹拌の回転速度を60r/minに上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、pH値が自然のままで3時間発酵させる。8時間後、撹拌速度を変えず、発酵温度を35℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、酸・アルカリ自動調整制御システムによってpH値を6.5に維持し、2時間発酵させる。10時間後、撹拌の回転速度を40r/minに下げ、発酵温度を40℃に上げ、タンク圧力を0.05MPaに維持し、酸・アルカリ自動調整制御システムによってpH6.5を維持し、1時間発酵させる。11時間後、撹拌速度を変えず、温度を45℃に上げ、発酵タンクに発酵液の体積の0.1%の滅菌リポテイコ酸を加え、温度を20℃に下げ、30分間維持し、その後75℃に上げて40分間維持し不活化し、その後30℃に下げる。
【0055】
入口空気温度を150~180℃に、出口空気温度を90~100℃に設定し、噴霧乾燥を行ってポストバイオティクス粉末を得る。
【0056】
実施例1で得られたポストバイオティクスは、細胞外多糖類含有量が24%で、ポリペプチド含有量が20.8%で、アミノ酸含有量が38.5%である。
【0057】
実施例2
骨盤底筋を修復するポストバイオティクスの製造方法であって、それは、以下のステップを含む。
【0058】
無菌操作台で、-80°Cの低温冷蔵庫に保存されたラクトバチルス・プランタルムLactobacillus plantarum Nice-02を培地平板に画線塗抹し、シングルコロニーをスクリーニングし、シングルコロニーを3回繰り返し活性化し、純粋な菌株を得る。
【0059】
前記培地の組成は、培地100ミリリットル当たりカゼイン0.1%、シアル酸0.1%、ビーフエキス0.7%、ペプトン1%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%、寒天粉末2.0%が含有されており、水酸化カリウムでpHを7.0に調整する。
【0060】
シングルコロニーを100mLの液体培地(培地が15*200の試験管に入れられ、液体培地の組成は、培地100ミリリットル当たりカゼイン0.1%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖3%、酵母粉末0.5%、酢酸ナトリウム0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%が含有されており、水酸化カリウムでpHを7.0に調整する)にピックアップし、30℃で12時間静置培養する。
【0061】
以上の培養したシード液を三角フラスコ培地に接種し、接種量は0.5%であり、即ち2次シード培養液(培養液100ミリリットル当たりカゼイン0.5%、シアル酸0.1%、フラクトオリゴ糖1.5%、酵母粉末0.5%、トゥイーン80 0.1%が含有されており、pHが自然のままである)100mLに、1次シード液が0.5mL接種され、接種終了後、滅菌ガーゼ及びクラフト紙で瓶の口を密封し、手で少し揺動させ、接種された菌種を培養液と均一に混合し、続いて恒温箱に入れて37℃の条件下で12h培養静置し、これを2次シード液と呼ぶ。
【0062】
上記で培養した2次シード液を無菌条件下で3次シード培養液(培地100ミリリットル当たりペプトン1%、イソマルトオリゴ糖4%、リン酸水素二カリウム0.2%、グリシン1%、チロシン0.5%、トゥイーン80 0.1%、ポリエーテル消泡剤0.1%が含有されており、pHが自然のままである)を加えたシードタンクに接種し、接種量が2%であり、30回転/分間で撹拌培養し、温度を37℃とし、pHを7.0とし、タンク圧力を0.05MPaとし、12時間培養する。
【0063】
3次シード液を滅菌発酵液(培地100ミリリットル当たりイソマルトオリゴ糖3%、カゼイン0.2%、ペプトン2%、フラクトオリゴ糖5%、水溶性デンプン3%、トゥイーン80 0.1%、グリシン0.5%、チロシン0.5%、ポリエーテル消泡剤0.2%が含有されており、pH値が自然のままである)の含有する発酵タンクに接種し、接種量が2%であり、32℃で、45r/minで、46時間培養する。46時間後、撹拌速度を変えず、温度を45℃に上げ、発酵タンクに発酵液の体積の0.1%の滅菌リポテイコ酸を加え、温度を20℃に下げ、30分間維持し、その後75℃に上げて40分間維持し不活化し、その後30℃に下げる。
【0064】
入口空気温度を150~180℃に、出口空気温度を90~100℃に設定し、噴霧乾燥を行ってポストバイオティクス粉末を得る。
【0065】
実施例2で得られたポストバイオティクスは、細胞外多糖類含有量が19%で、ポリペプチド含有量が17.8%で、アミノ酸含有量が34%である。
【0066】
効果検証
1、体外筋肉収縮評価
十二指腸平滑筋を実験対象とし、ポストバイオティクス製品が十二指腸平滑筋の収縮性能に与える影響を観察して測定する。実験方案については、ラットを対照群と実験群に分け、対照群は正常に餌を与え、実験群は餌に0.5%(w/w)、1.0%及び1.5%のポストバイオティクスを加え(いずれも実施例1で製造された製品であり、3群の実験群は順次実験群1~3と命名した)、約2週間餌を与えた後、ラットを麻酔し首を脱臼させて死亡させ、ラットの腹部を切開し、胃幽門と十二指腸の境界を起点として腸管を切取り、それを約1cmの腸段に切り、クレブス液で軽く洗浄し、クレブス液中に放置し、保湿し37℃に定温し、基礎張力を1gに調節し、通気フックで1秒当たり1つ~2つの気泡の速度で混合ガス(950mL・L-1の酸素と50mL・L-1の二酸化炭素)を持続的に入れる。小腸平滑筋収縮活動及び変化信号は、張力変換器によってBL-420生物機能実験のマルチチャネル生理信号収集処理システムに導かれ、収縮曲線を観察した。結果を表1に示す。表1の結果から、ポストバイオティクスは平滑筋の収縮を促進する能力があり、且つ一定の用量依存性を示した。
【0067】
【表1】
【0068】
2、骨盤底筋損傷治療の小規模な臨床実験
40~60歳の女性20人は、自発的に試験に参加し、且つ調査表と記録を完成することができ、骨盤底筋の問題による腹圧性尿失禁に悩まされている人を試験群に入れている。毎朝600mgのポストバイオティクス(実施例1で製造された製品)を空腹時に経口摂取し、3週間服用した。この期間中、毎週縄跳びをして尿漏れの状況をテストした。摂取期間中は元の食習慣を変えず、普通に食事をする。
【0069】
服用周期が終わった後、100%の服用者は、服用前の運動方式はほとんど跳躍せず、数回だけ跳ぶと尿漏れが発生し、服用が終了した後、縄跳びの過程全体を通して尿漏れが全くなく、感じさえもないと述べた。
【0070】
【表2】
【0071】
上記効果検証実験によれば、本発明で製造されたポストバイオティクス製剤は比較的強い骨盤底筋修復機能を有することが明らかになった。
【0072】
最後に説明すべきことは、以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、上述の実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者にとっては、依然として上述の実施例に記載された技術的解決手段を修正したり、その一部を同等に置き換えたりすることができる点である。本発明の主旨と原則を逸脱せずに行った直し、同等な置換、改良等は、全て本発明の保護範囲内に含まれるものとする。以上は、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明の保護範囲に対する制限ではなく、当業者であれば、本発明の技術的解決手段を基に、当業者が創造的な労力を要することなく得られた様々な修正又は変形は依然として本発明の保護範囲内にあることを理解すべきである。