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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】介護施設用の介護支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20241205BHJP
【FI】
G06Q50/22
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021502072
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006455
(87)【国際公開番号】W WO2020171109
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2024-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019028532
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521341536
【氏名又は名称】社会福祉法人若竹大寿会
(74)【代理人】
【識別番号】100147348
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】竹田 一雄
【合議体】
【審判長】松田 直也
【審判官】下林 義明
【審判官】伏本 正典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142451(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0077956(US,A1)
【文献】国際公開第2017/209094(WO,A1)
【文献】特開2002-052010(JP,A)
【文献】特開2007-074008(JP,A)
【文献】特開2016-197304(JP,A)
【文献】特開2002-282220(JP,A)
【文献】特開2015-057583(JP,A)
【文献】電子カルテを中核に病診連携や大規模災害対策を推進,日経クロステック,日本,2007年04月11日,特に第3頁
【文献】介護職員、7割がハラスメント経験 労組調査,日本経済新聞,オンライン,[2024年3月19日検索],2018年07月03日,p.1-2,インターネット:<URL:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32556180T00C18A7CR8000/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)システム全体を制御する介護支援システム制御部と
b)介護者が携帯することができ、前記介護支援システム制御部と交信可能な介護者用携帯端末と、
c)被介護者の現在地を常時確認するために居室及び共用スペースに設けられ、前記介護支援システム制御部と情報の送受信、及び、前記介護支援システム制御部への信号の送信を行うエッジルータと、
d)被介護者の身体に装着し、生体情報を測定し、前記生体情報を前記エッジルータに送信しうる身体装着型端末と
を有し、
前記身体装着型端末から前記エッジルータ経由で前記介護支援システム制御部に送信される前記生体情報と、前記エッジルータが感知した前記身体装着型端末からの信号の送信を受けて前記介護支援システム制御部が判断する被介護者の現在位置とから、前記介護支援システム制御部が、介護者を支援する情報を前記介護者用携帯端末に送信することを特徴とし、前記介護者を支援する情報のうち、窒息状態という事象、転倒事故という事象、施設外への徘徊という事象を高い優先順位として、発生からの経過時間とともに、前記介護者用携帯端末の画面に複数同時に表示できることを特徴とする介護施設用の介護支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、介護施設において用いられる介護支援のシステムに関し、特に、介護サービスの質の向上及び介護者の負担軽減を目指し介護施設用の介護支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者の増加に伴い、介護施設が多数必要とされている。介護施設においては、提供するサービスの質について、利用者(被介護者)やその家族などから不満を持たれることも多く、日々、その質の向上を求められている。
【0003】
一方、介護施設における介護者については、被介護者やその家族からの多様な要求や要望に対応するために、日夜を問わず懸命に活動している。そのような厳しい環境の下で、介護者の離職率も高くなっており、また、その補充も難しいのが現実である。
【0004】
そのような介護施設におけるサービスの質の向上と介護者の負担軽減を目指す試みはこれまでも多数、考案されてきている。
【0005】
例えば、特許文献1には、介護施設用とは明記されていないが、在宅の介護において、人の健康状態を監視し、通報するシステムが開示されている。
【0006】
この文献によれば、被検者(被介護者)自身がボタン等を操作しなくとも、自動的に被検者の健康状態を監視し、特に、身体の異常が発見された場合に、介護者に通報して、適当な救護措置を取り得るようにした人の健康状態の監視通報を課題としている。
【0007】
その解決手段として、被検者の人体に装着可能なライフセンサ1と、構内に設置されるライフコントローラ2とを備える。ライフセンサ1は、人体の脈拍、動き、音、体温等の生体情報(人体から得られる情報)を測定するセンサと、このセンサからの情報をライフコントローラ2に送る送信手段とを備える。ライフコントローラ2は、ライフセンサ1からの情報を受信する受信手段と、この情報に基づき介護者に通報する通報手段とを備える。ライフセンサ1とライフコントローラ2との少なくとも何れか一方に、生体情報の正常、異常を判断する判定手段が設けられ、異常状態と判定された際にライフコントローラ2の通報手段が監視センターa又は介護者の無線呼出用携帯受信機cに通報を行う。監視センターaでは、直接又は救護センターbを介して必要な措置を取るという技術内容が開示されている。
【0008】
しかしながら、この文献は、多数の被介護者が同一の場所に入居する介護施設を対象としておらず、また、そのような多数の被介護者を対象とした場合に必要とされる検知すべき項目を網羅しておらず、更に、介護者の負担軽減につながる技術が開示されているとは言えない。
【0009】
すなわち、これまでは、多数が入居する介護施設において、介護の質を向上させ、併せて介護者の負担を軽減するようなシステムが実現できていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平10-155749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、介護施設における介護サービスの質の向上、及び介護者の負担軽減を実現することができる介護施設用の介護支援システムを提供することが難しいことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様の介護施設用の介護支援システムは、
a)システム全体を制御する介護支援システム制御部と
b)介護者が携帯することができ、前記介護支援システム制御部と交信可能な介護者用携帯端末と、
c)被介護者の居室及び共用スペースに設けられ、前記介護支援システム制御部と情報の送受信を行うエッジルータと、
d)被介護者の身体に装着し、生体情報を測定し、生体情報を含む情報を前記エッジルータまたは前記介護支援システム制御部に送信しうる身体装着型端末と、
e)被介護者の居住する近傍に設置され、前記エッジルータまたは前記介護支援システム制御部に異常を通報することができる異常通報端末と、
f)被介護者の居室及び共用スペースに設けられ、映像及び/又は音声を収録し、前記エッジルータまたは前記介護支援システム制御部に送信しうる監視機器と
を有し、前記身体装着型端末、前記異常通報端末、前記監視機器のいずれか一つ以上から、前記エッジルータ経由、または前記エッジルータを介さず、前記介護支援システム制御部に送信される情報に基づき、前記介護支援システム制御部が、介護者を支援する情報を提供することを特徴とする。
【0013】
なお、ここで、介護支援システム制御部は、CPU、記憶部、入力部、出力部、表示部、通信インターフェース部などを備えたPC(パソコン)であることが好適であるが、これらの機能を、クラウドコンピューティングとして、遠隔地に分散して設けてもよい。
【0014】
また、介護者用携帯端末は、表示部、入力部、通信インターフェース部などを備えたスマートフォンのようなものが好適であるが、介護施設外との通信機能は必ずしも必要ではない。
【0015】
また、エッジルータは、システムの末端のルータの意味で、上流に向かっては介護支援システム制御部と通信でき、下流に向かっては各端末と通信できる機能を有するものが好適であるが、それに限定せず、更に、追加機能を有していてもよい。
【0016】
例えば、介護支援システム制御部において解析・判断する事象の一部(例えば生体情報の異常)を、エッジルータ内で処理してもよい。そのようにすると、素早い対応が可能となる場合もある。
【0017】
また、身体装着型端末は、被介護者の腕の部分に装着できるブレスレット端末が好適であるが、身体の他の部位(足部、頭部など)に装着できるものであってもよい。
【0018】
また、異常通報端末とは、一般に、ナースコールと呼ばれるようなもので、被介護者がボタンを押下して異常通報端末を通報できるものが好適であるが、それに限定せず、タッチする、音声を発するなどによって、異常を通報ができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0019】
また、監視機器とは、音声収録機能を有する監視カメラが好適であるが、それに限定せず、
マイクやスピーカーホン、携帯電話/スマートホン内蔵カメラなどであってもよい。
【0020】
このようにすると、多数の被介護者の居住する介護施設において、介護に必要な生体情報が被介護者の身体に装着した身体装着型端末から、自動的に収集することができ、更に、被介護者が操作する異常通報端末からの情報や、監視機器からの情報を、介護支援システム制御部が総合的に判断し、適切な介護サービスを介護者などを通して提供することができる。
【0021】
また、本発明の第2の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様のシステムであって、更に、
g)ベッド上に設置され、上に横たわる被介護者の生体情報を測定し、生体情報を含む情報を前記エッジルータまたは前記介護支援システム制御部に送信しうるマット型または帯型のベッドマット端末と、
h)車椅子またはイスの座面に設置され、着座する被介護者の生体情報を測定し、生体情報を含む情報を前記エッジルータまたは前記介護支援システム制御部に送信しうるマット型または帯型の座面端末とのうち、
いずれか1つまたは両方を有することを特徴としてもよい。
【0022】
ここで、ベッドマット端末は、一般にベッドマットセンサと称するものを含んでもよい。また、座面端末は、一般に着座センサーと称するものを含んでもよい。
【0023】
このようにすると、身体装着型端末の装着を拒否する認知症の被介護者であって、例えば、自分が立てないことを認識できず、車椅子または椅子から立ち上がって転倒するなどの事故を防止することに役立つ。
【0024】
また、本発明の第3の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様または第2の態様のシステムであって、前記介護者を支援する情報が、前記介護者用携帯端末に対する介護対応の優先順位の通知であることを特徴としてもよい。
【0025】
ここで、介護対応の優先順位とは、通常、生命にかかわる事態(生体情報の急変など)を優先するが、それ以外については、介護施設ごとに、例えば、被介護者のコール後の待ち時間、被介護者の属性などを勘案して適切な順位を設定できるものとする。
【0026】
このようにすると、緊急度の高いものから処置がなされるとともに、緊急度の低いものでも、適正な待ち時間で対応することができ、被介護者の満足度が高まるとともに、介護者の負担も軽減する。
【0027】
また、本発明の第4の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様のシステムであって、前記介護者を支援する情報が、前記身体装着型端末と前記エッジルータとの交信によって得られる被介護者の位置情報であることを特徴としてもよい。
【0028】
すなわち、介護施設内の居室、あるいは共用場所に多数設けられたエッジルータと被介護者が装着する身体装着型端末との交信の可否、及び信号の強さや方向などから、被介護者の現在地を把握することがでる。
【0029】
このようにすると、介護が必要な状況(生体情報の異常の検知、異常通報端末の作動など)となった場合に、速やかに被介護者のところへ急行することができ、重大事象を未然に防ぐことができる。
【0030】
また、本発明の第5の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第4の態様のシステムであって、前記被介護者の位置情報によって得られた位置が、所定の範囲の外である場合に、警報を発することを特徴としてもよい。
【0031】
このようにすると、認知症の被介護者が、介護施設内(所定の範囲)で検知されなくなった場合や、介護施設の玄関や出入り口付近など離設する可能性が高い場所(所定の範囲外とする)で位置情報が検知された場合などに、警報が発せられれば、極めて有効である。
【0032】
また、本発明の第6の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様のシステムであって、前記身体装着型端末が測定する生体情報に、被介護者の転倒の検知を含むことを特徴としてもよい。
【0033】
このようにすると、重大な事故や病変につながる被介護者の転倒という情報を速やかに取得することができるので、適切な対応が可能となる。
【0034】
また、本発明の第7の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様のシステムであって、前記介護者を支援する情報が、被介護者の異常事態発生時の前後の映像及び/又は音声の記録であることを特徴としてもよい。
【0035】
ここで、異常事態とは、生体情報の急変や異常通報端末の押下など、種々の事態が考えられるが、施設ごとにその範囲を定めてもよい。
【0036】
このようにすると、それを視聴することによって、異常事態への対応の助けになる。更に、後刻、対応が適切であったかどうかの検証が必要となった場合にも、それらの記録は極めて有効である。
【0037】
また、本発明の第8の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様のシステムであって、前記介護者用携帯端末からの指示によって、前記エッジルータが家電製品の操作を実行することを特徴としてもよい。
【0038】
ここで、介護者は、被介護者からの要請により、あるいは、温湿度情報などの把握により、
エアコン、テレビなどの家電機器のオンオフ、温度調整、音量調整などの操作が必要となった場合、被介護者の居室にいなくても、介護者用携帯端末を操作することにより、当該居室などのエッジルータ経由で、家電機器を操作することができる。
【0039】
なお、エッジルータには、家電操作用の手段、例えば、赤外線発信部を内蔵しておくことが好適であり、テレビ、エアコン、扇風機、加湿器、電動カーテンなどの家電機器にもそれらに対応した遠隔操作が可能なものであることが好適である。
【0040】
このようにすると、介護者はそのためだけに被介護者の居室を訪れる必要がなくなり、介護者の負担の軽減に役立つとともに、被介護者にとっても、介護者の来訪を待たずに迅速に家電機器の操作がなされるので、介護サービスの質の向上につながる。
【0041】
また、本発明の第9の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様のシステムであって、介護に関する記録のパターンを前記介護者用携帯端末に表示し、前記介護者用携帯端末をタッチさせることで介護の記録作業を可能としたことを特徴としてもよい。
【0042】
すなわち、介護者用携帯端末に、例えば「食事の介助」などの介護記録のパターンを内蔵しておき、表示された介護作業に関する情報を、介護者用携帯端末をタッチするのみで入力できるようにする。
【0043】
このようにすると、介護者にとって大きな負担となっていた介護の記録の作業が短時間で完了でき、記録漏れや記録の誤りなどの頻度が大きく減少する。
【0044】
そのことにより、介護者の負担軽減とともに、正確で漏れのない記録が残ることから、介護サービスの質の向上にも寄与する。
【0045】
また、本発明の第10の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第9の態様のシステムであって、前記介護者用携帯端末に表示される介護に関する記録のパターンが、外国語対応されていることを特徴としてもよい。
【0046】
このようにすると、日本語が苦手な外国人の介護者にも、介護作業の記録が、正確、かつ、短時間で完了できる。
【0047】
また、本発明の第11の態様に係る介護施設用の介護支援システムは、第1の態様のシステムであって、薬及び/または食事の提供時に、提供を受ける被介護者の前記身体装着型端末40を認識することで、個人を認証することを特徴としてもよい。
【0048】
このようにすると、健康上のリスクや被介護者の不満を生じる恐れのある誤薬・誤配食を、簡便な方法で防止することができるため、介護者の負担軽減及び被介護者へのサービスの質の向上になる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の介護支援システムによれば、システムの有する種々の機能から、介護施設における介護サービスの質の向上、及び介護者の負担軽減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の構成図である。
図2】本発明に係るシステムの一実施形態の介護支援システム制御部の構成図である。
図3】本発明に係るシステムの一実施形態のエッジルータの機能構成図である。
図4】本発明に係るシステムの一実施形態のエッジルータの図面代用写真である。
図5】本発明に係るシステムの一実施形態の介護者用携帯端末の図面代用写真である。
図6】本発明に係るシステムの一実施形態のヘッドセットの図面代用写真である。
図7】本発明に係るシステムの一実施形態の身体装着型端末の図面代用写真である。
図8】本発明に係るシステムの一実施形態の身体装着型端末の図面代用写真である。
図9】本発明に係るシステムの一実施形態の異常通報端末の図面代用写真である。
図10】本発明に係るシステムの一実施形態のベッドマット端末の説明図である。
図11】本発明に係るシステムの一実施形態の座面端末の説明図である。
図12】本発明に係るシステムの一実施形態の介護者用携帯端末の画面の例である。
図13】本発明に係るシステムの一実施形態の介護者用携帯端末の画面の例である。
図14】本発明に係るシステムの一実施形態の介護者用携帯端末の画面の例である。
図15】本発明に係るシステムの一実施形態の介護者用携帯端末の画面の例である。
図16】本発明に係るシステムの一実施形態の介護記録入力の画面の例である。
図17】本発明に係るシステムの一実施形態の介護記録入力の画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する部分は公知技術によるものとする。
【0052】
図1は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の構成図である。
【0053】
本発明の介護施設用の介護支援システム1は、システム全体を制御する介護支援システム制御部10と、介護支援システム制御部10と接続し、送受信を行う無線LAN用のアクセスポイント11と、介護者が携帯し、アクセスポイント11を介して介護支援システム制御部10と交信可能な介護者用携帯端末20と、被介護者の居室及び共用スペースに設けられ、介護支援システム制御部10と接続されるエッジルータ30と、被介護者の身体に装着し、生体情報を測定し、生体情報を含む情報をエッジルータ30に送信しうる身体装着型端末40と、被介護者の居住する近傍に設置され、エッジルータ30に異常を通報することができる異常通報端末50と、被介護者の居室及び共用スペースに設けられ、映像及び/又は音声を収録し、エッジルータ30に送信しうる監視機器60とを有する。
【0054】
更に、ベッド上に設置され、上に横たわる被介護者の生体情報を測定し、生体情報を含む情報をアクセスポイント11を介して介護支援システム制御部10に送信しうるマット型のベッドマット端末70を有していてもよい。
【0055】
また、更に、車椅子または椅子の座面に設置され、着座する被介護者の生体情報を測定し、生体情報を含む情報をアクセスポイント11を介して介護支援システム制御部10に送信しうるマット型の座面端末80を有していてもよい。
【0056】
図では、介護施設内の被介護者の居住する居室aから居室n(その数に制限はない)の各室に、エッジルータ30と、監視機器60とが設けられ、居住する被介護者には身体装着型端末40が装着され、居住する被介護者のベッドにはベッドマット端末70が、居住する被介護者の着座する車椅子などの椅子類には座面端末80が設けられていることを示している。
【0057】
また、共用スペースには、望ましくはその領域を漏れなく通信範囲としてカバーできる多数のエッジルータ30が設けられている。
【0058】
一方、介護者が保持する介護者用携帯端末20は、各介護者が保持した状態で、共用スペースにある状態を図示しているが、介護者が居室に入る場合は、居室内にも存在することになる。
【0059】
図2は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護支援システム制御部10の構成図である。
【0060】
介護支援システム制御部10は、エッジルータ30及びアクセスポイント11と接続されるゲートウェイ101、ゲートウェイ101の上流に接続されるルータ103、ルータ103からインターネット104を介して接続されるクラウドサーバ105、及び、ゲートウェイ101に接続される、PC102より構成される。
【0061】
ここで、ルータ103までは、介護施設内に設置され、クラウドサーバ105は遠隔地に配置されるものとし、クラウドサーバ105としては、AWS(登録商標)などが好適である。
【0062】
また、介護施設内に設置されるPC102は、CPU、メモリー、入力部(キーボード、マウスなど)、表示部(デイスプレイ)などを備えており、更に、スピーカー・マイク・プリンタなどを接続してあるものとする。
【0063】
このような構成であると、大容量のデータの保管や、高速の集計・演算などはクラウドサーバ105によって行われ、施設内での、データ・生体情報・画像の表示、被介護者や介護者との対話などは、PC102によって実施することができ、介護施設側の構成が簡素化されるという利点がある。
【0064】
また、他の介護施設が、同一のクラウドサーバ105に接続することも可能であり、そのようにすると、介護施設間での情報の共有、利用が図れる。
【0065】
なお、介護支援システム制御部10としては、クラウドコンピューティングに限定せず、単一の介護施設内で完結する構成とすることも可能である。その場合には、ルータ103より上流の構成は不要となる。
【0066】
また、この実施形態で説明した構成要素の名称、機能の分担などは、種々の変形例が考えられ、また、構成要素の追加、削除などもありうるが、実質的に、当該介護施設のシステム全般を制御できるものであれば、介護支援システム制御部10に含まれるものとする。
【0067】
図3は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態のエッジルータ30の機能構成図であり、図4は図面代用写真である。
【0068】
本発明のエッジルータ30は、システムの末端のルータの意味で、上流に向かっては介護支援システム制御部10と有線LANなどで通信ができ、下流に向かっては各端末とBluetooth(登録商標)などの近距離通信ができる機能を内蔵している。
【0069】
具体的な構成は、全体の制御を実行するCPU301、情報を記憶する各種メモリーからなる記憶部302、この機器についての電力供給を行う、UPS、バッテリーなどを含む電源部303を含んでいる。
【0070】
更に、通信インターフェースとしては、Ethernetに対応した有線LAN通信部311、Wi-Fi通信などに対応した無線LAN通信部312、近距離のBluetooth通信に対応したBluetooth通信部313、テレメータなどに用いられる特定小電力通信部314、家電などのリモコン操作に用いられる赤外線発光部315を有している。
【0071】
入出力用には、USB対応機器を接続するためのUSBポート321、音声を収集するマイク322、音声を発するスピーカー323を有している。
【0072】
また、表示/操作用としては、赤・緑の2色LEDからなる動作表示ランプ331、機器や操作の異常の際にリセットするためのリセットボタン332が設けられている。
【0073】
また、センサとしては、周辺の温度及び湿度を検知する温湿度センサ341、明るさを検知する照度センサ342、周囲にいる人物の存在を検知する人感センサ343などが内蔵されている。
【0074】
なお、エッジルータ30の使用に関しては、これらの構成要素を全て有していることは必要とせず、使用目的に合う構成要素のみを選択して使用すればよいし、また、これに含まれない構成要素を追加してもよい。
【0075】
更に、これらの構成要素の一部を、エッジルータ30から外部に取り出し、独立させる、あるいは、他の機器の一部とするようにしてもよい。
【0076】
更に、この実施形態では、エッジルータ30内に、監視機器60としての監視カメラ601及び夜間撮影用の外光の監視カメラ用光源602も内蔵されている。但し、これらの監視機器60は、エッジルータ30から独立して外部に置かれてもよい。
【0077】
図5は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護者用携帯端末の図面代用写真である。本発明の介護者用携帯端末20は、表示部201、入力部202、通信インターフェース部203などを備えたスマートフォン様のものであって、表示部201はタッチパネルとなっており、入力機能も備えているものとする。この図のような市販のスマートフォンの転用であってもよい。
【0078】
ただし、この介護者用携帯端末20は、介護施設外との通信機能は必ずしも必要としないため、簡易な構成であってもよい。
【0079】
また、図6は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護者用携帯端末に接続されるヘッドセットの図面代用写真である。介護者用携帯端末20には、ヘッドセット204が無線又は有線で接続されていてもよく、介護者用携帯端末20にトランシーバ機能を持つアプリケーションを内蔵しておけば、インカムと同様の機能を発揮できる。
【0080】
ここで、ヘッドセット204としては骨伝導式の受話器を有するものが、周辺の雑音などの影響を受けづらいため好適である。
【0081】
このようにすれば、両手を空けた状態(ハンズフリー)で、例えば、他の介護者との1対1の会話、あるいは、特定の介護者グループ全員に一斉通報などの機能を実現することができる。
【0082】
図7は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の身体装着型端末40の図面代用写真(表側)であり、図8は同じく図面代用写真(裏側)である。身体装着型端末40は、被介護者の腕の部分に装着できるブレスレット端末であって、表側には情報の表示ができる表示部401、表示のオンオフ及び切り替えが可能なタッチスイッチ402を有する。なお、図面代用写真には日付、時刻が表示されている。身体装着型端末40の裏側(身体接触側)には身体との接触を検知する複数(2個)の接触センサ403、身体の画像情報を取得する受光カメラ404、受光カメラ用404用のLEDの発光部405を有している
【0083】
なお、タッチスイッチ402は、長押しで表示のオンオフを、短押しで表示の切り替えを行うようになっている。
【0084】
また、側面には、身体(指)の接触を検知する指接触センサ406を設けてもよく、これにより、上記の接触センサ403との間で、身体を通過する回路を構成することもできる。
【0085】
また、端末本体部を腕に装着するためのバンド部407、各機能の駆動のためのバッテリー(図示せず)を有する。
【0086】
更に、エッジルータ30に検知状況を通信するBluetoothのような短距離の通信インターフェース(図示せず)を有する。なお、Bluetooth通信は、バッテリー寿命などの点から好適である。
【0087】
身体装着型端末40では、脈拍、心電図、血圧、血中飽和酸素濃度(SpO)、呼吸、体温体動、睡眠、歩数、消費カロリーなどの生体情報が取得できるように構成されている。
【0088】
各々の生体情報を取得するためのセンサは、既に実用化されているものが多数あるので、それらを身体装着型端末40に内蔵すればよい。
【0089】
更に、ストレスの度合いの検知も可能であり、例えば、近赤外線を皮膚表面に当てて反射した光をフォトダイオードなどで受光する光電脈波法により、心拍数、脈波波形などを測定し、それを基にストレス度合いを算出する方法が実用化されている。
【0090】
ほかに、心電図による波形(心電波形)を用いる方法や、それ以外の方法もあり、適宜、状況に応じて選択すればよい。
【0091】
また、6軸センサ、すなわち、移動方向、向き、回転を検出することができ、さらに移動距離や移動速度などを算出できるセンサーを内蔵している。
【0092】
これは、前後、左右、上下の3方向を検出できる加速度センサーと東西南北を検出できる地磁気センサー、または加速度センサーと回転の速さを検出できるジャイロセンサーを組み合わせることによって実現でき、既に実用化されているものがあるので、それを組み込めばよい。
【0093】
なお、身体装着型端末40は、防水機能を有しており、洗面、入浴時なども装着したままでもよい。
【0094】
また、バッテリーは、身体装着型端末40を装着した状態で、脱着が可能なように構成し、脱着のために身体から取り外すことが必要ないようにする。
【0095】
図9は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の異常通報端末50の図面代用写真である。異常通報端末50は、一般に、ナースコールと呼ばれるようなもので、ボタン501を有し、被介護者がボタン501を押下して異常発生を通報できるものであって、被介護者のベッドの近傍に掛けておく。
【0096】
なお、異常通報端末50は、エッジルータ30とBluetooth通信を行う機能を有している。
【0097】
監視機器60は、被介護者の居室及び共用スペースに設けられ、映像及び/又は音声を収録し、エッジルータ30に送信しうるものであればよい。
【0098】
あるいは、エッジルータ30に内蔵された監視カメラ601であってもよく、そのようにすると、構成が簡素となる。なお、この監視カメラ601に音声収集機能を内蔵していてもよい。
【0099】
また、監視カメラ601には、夜間の撮影などを行うための監視カメラ用赤外光源602が接続されており、夜間や暗所でも鮮明な画像が得られる。
【0100】
図10は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態のベッドマット端末70の説明図であり、図10(a)は被介護者が就寝中の平面図、図10(b)は被介護者が上半身を起こした状態の正面図である。
【0101】
ベッドに横たわる被介護者の上半身のあたりに圧力を検知するセンサーパッド701を敷設し、そこからの信号をベッドマット端末本体部702に伝達する。
【0102】
ベッドマット端末本体部702は、エッジルータ30に検知状況を通信する通信インターフェースを内蔵している。
【0103】
センサーパッド701の圧力状態が一定であれば被介護者が熟睡状態である、圧力状態が変動すれば睡眠が浅い、起床近くである、あるいは、咳き込んでいる、圧力を検知しなければ、被介護者が少なくとも上半身を起こした状態であるということが検知できる。
【0104】
図11は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の座面端末80の説明図である。
【0105】
座面端末80は、車椅子などの座面に載置される圧力センサ801と、圧力センサ801からの信号が伝達される座面端末本体部802とを有する。
【0106】
また、座面端末本体部802は、エッジルータ30に検知状況を通信する通信インターフェースを内蔵している。
【0107】
このように、車椅子などに圧力センサ801を載置しておくと、被介護者が着座したこと、及び離席したことなどが検知できる。
【0108】
これらのベッドマット端末70や座面端末80は、特に、身体装着型端末40の装着ができない、あるいは、拒否する被介護者については、重要な情報の取得源となる。
【0109】
更に、被介護者の居室内のテレビ、エアコン、扇風機、加湿器、電動カーテンなどの家電機器90に遠隔操作に対応可能な手段を有している。一方、エッジルータ30には、家電機器操作用の手段、例えば、赤外線発信部315を内蔵しておく。
【0110】
なお、これまで説明した端末について、好適には、介護支援システム制御部10とエッジルータ30経由で通信する端末は、身体装着型端末40、異常通報端末50、監視機器60、家電機器90であり、また、介護支援システム制御部10と、エッジルータ30を介さずに、アクセスポイント11を介して通信する端末は、介護者用携帯端末20、ベッドマット端末70、座面端末80であるが、これらの接続形態は、通信量や内蔵バッテリーの容量などを勘案して、適宜、選択すればよく、アクセスポイント11の代替としてエッジルータ30内の無線LAN通信部312を用いるようにしてもよい。
【0111】
次に、このような構成の介護支援システムの使用例を説明する。
【0112】
<緊急事態対応>
介護施設において、被介護者は、常時、腕部に身体装着型端末40を装着して生活するものとし、身体装着型端末40からは、各種の生体情報が、24時間、エッジルータ30に伝達されている。
【0113】
エッジルータ30からは、個人別、生体情報別、時間別などで編集された、あるいは、編集なしの情報が、介護支援システム制御部10へと伝達され、介護支援システム制御部10において分析がなされる。
【0114】
また、監視機器60からも、上記生体情報に同期した画像及び/または音声情報がエッジルータ30経由で介護支援システム制御部10へと伝達される。
【0115】
その他のベッドマット端末70や座面端末80からも、被介護者に関する情報が介護支援システム制御部10へ伝達される。
【0116】
これらの情報に基づき、介護支援システム制御部10においては、予め定めた判断基準によって自動的に、あるいは、情報を提示して管理者の判断によって、介護対応の要否、及び緊急度などが決定される。
【0117】
緊急であると判断された場合は、その判断結果が介護支援情報として、対応の指示とともに、適切な介護者の介護者用携帯端末20に送られる。
【0118】
例えば、呼吸や心拍数から窒息状態であると判断される場合や、6軸センサの情報から転倒と判断される場合などは、生体情報と画像情報を併せて分析することで、適切な判断ができる。
【0119】
介護者用携帯端末20にて指示を受けた介護者は、速やかに被介護者のもとに向かい、適切な処置を行うこととなる。
【0120】
<被介護者の位置検出>
被介護者の現在位置については、被介護者の身体装着型端末40が単一のエッジルータ30のみに感知されている場合は、そのエッジルータ30の近傍と判断し、複数のエッジルータ30に感知される場合は、信号強度、方向などをもとに、いずれかのエッジルータ30の近傍、あるいは、複数のエッジルータ30の中間位置であると判断する。
【0121】
ここで、位置の判断方法は上述の方法に限定されず、エッジルータ30を用いた異なるアルゴリズムでもよく、あるいは、エッジルータ30とともに、監視機器60からの情報を用いてもよい。
【0122】
なお、被介護者の位置情報によって得られた位置が、所定の範囲の外である場合に、介護支援情報として警報を発するようにする。
【0123】
例えば、認知症の被介護者が、介護施設内(所定の範囲)で検知されなくなった場合や、介護施設の玄関や出入り口付近など離設する可能性が高い場所(所定の範囲外とする)で位置情報が検知された場合などに、警報が発せられ、速やかな介護者などによる対応が可能となり、重大事故を未然に防止することができる。
【0124】
また、被介護者が、トイレなど特定の場所に長時間滞在している場合も、種々の端末やセンサからの情報で把握でき、その場合も異常状態として扱うようにする。
【0125】
なお、便座には、着座スイッチ、あるいは着座センサが内蔵されているものもあり、それらからの情報を収集するようにしてもよい。
【0126】
<被介護者の一覧表示>
図12は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護者用携帯端末20の表示画面の例であり、ある介護者Xが担当している201号室から209号室の被介護者の情報が表示部201に表示されている。これらも介護支援情報の一部である。
【0127】
なお、本図以降の写真において、表示される個人情報(氏名・顔写真)はマスクされているが、実際の使用上は、介護の目的の範囲内で、全ての情報が明示されている。
【0128】
これによると、各々の居室の被介護者につき、顔写真F、氏名N、現在位置P、脈拍M、体温T、血圧Bなどの情報が表示されており、現在位置にいては、居室に在室中か、共有スペースにいるか、トイレを使用中かなどが、常時、把握できている。
【0129】
これらも、介護者にとって、極めて重要な介護支援情報である。
【0130】
<異常通報端末の押下>
図13は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護者用携帯端末20の表示画面の別の例であり、異常通報端末50(この図ではナースコールと表示)のボタン501が押下された場合(E)を示しており、介護者Xの担当であり、音声などによる指示があり、今回も対応することとなったことを示している。
【0131】
ここで、異常通報端末50のボタン501が押下されると、それに連動して、監視機器60からの画像Gも同時に介護者用携帯端末20の表示部201に表示される。
【0132】
更に、異常通報端末50が作動してからの経過時間Eも表示され、対応までの時間も把握することができる。
【0133】
このように、異常通報端末50の作動と併せて被介護者の画像が得られるため、適切な介護サービスを提供することができる。
【0134】
<転倒インシデント発生>
図14は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護者用携帯端末20の表示画面の更に別の例であり、「転倒」というインシデントが発生した場合である。
【0135】
転倒の検知は、先に説明したように、身体装着型端末40に内蔵された6軸センサなどを用いて検知が可能であり、検知された場合に図のような情報が表示される。
【0136】
すなわち、ある被介護者が居室内ではなく、共用スペースの階段部分で転倒したとする。この場合でも、エッジルータ30により、現在位置が判明し、対応する監視機器60による画像Gも取得できる。インシデントの内容の表示(I)とともに、画像Gが表示され、更に、赤字で「対応」との文字が表示される。
【0137】
この場合は、介護者を特定せず、被介護者の担当の介護者のほか、近傍にいる介護者にも情報が流されて、速やかな対応を行わせることができる。
【0138】
なお、ある介護者に介護の要請が重なった場合、それらの優先度をつけられれば、被介護者にとっては、公平で、納得できるサービスが受けられ、介護者にとっては負担の軽減となり得る。
【0139】
<優先順表示>
図15は本発明に係る介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護者用携帯端末20の表示画面の更に別の例であり、介護対応の優先順位を示している。
【0140】
従来のナースコールシステムであると、介護者側には最初に鳴ったもののみが表示され、それを処理しないと次が表示されなかった。
【0141】
本システムにおいては、異常通報端末50からの通報、身体装着型端末40からの生体情報の異常、転倒インシデントなどがあらかじめ定めた優先度順に表示される。
【0142】
図の例であると、アラートメッセージとして、58秒前に発生した転倒インシデントM1が最優先であり、続いて2分41秒前に異常通報端末50からの通報(ナースコールと表示)M2となっている。その下には、対応済みの事象が2件(M3、M4)表示されている。
【0143】
この場合、先のナースコールよりも、後の転倒の方が優先順位が高くなっており、介護者は迷わずに順次対応していくことができる。
【0144】
なお、優先順位の例としては、最優先の事象として、窒息状態、転倒事故、施設外への徘徊などが挙げられ、生体情報の異常については、予め定めた基準を参考にして優先順位が定められる。
【0145】
但し、これらの優先順位は、施設別、時間帯別、介護者の能力別、被介護者の事情などを勘案して、柔軟に決定するようにしてもよい。
【0146】
<監視画像活用>
なお、監視カメラなどの監視機器で収集された画像、特に動画については、被介護者の異常事態が発生した際に、自動的に、あるいは介護者からのトリガーによって、予め定めた異常事態発生前及び発生後の時間(例えば、発生前10分間、発生後30分間など)の画像及び音声データを一定期間(例えば6か月)記録し、保管するようになっており、これらも、重要な介護支援情報である。
【0147】
すなわち、このことにより、どのような事態が発生したのかを客観的に知ることができ、被介護者や被介護者の家族のクレームなどの発生を防止することができ、介護者の精神的な負担(高度のストレスの発生)を小さくすることができる。
【0148】
また、そのような記録された画像・音声から、介護者の介護スキルの向上を図ることもでき、介護の質の向上にもつながる。
【0149】
更に、被介護者、その家族、介護者の相互のハラスメントが発生する場合には、早期発見し、証拠を示すことにより防止するとともに、抑止する効果が得られる。
【0150】
<家電製品の遠隔操作>
エッジルータ30には、家電機器90操作用の手段、例えば、赤外線発信部315を内蔵しておくことが好適であり、テレビ、エアコン、扇風機、加湿器、電動カーテンなどの家電機器90にもそれらに対応した遠隔操作が可能なものであることが好適である。
【0151】
ここで、介護者は、被介護者からの要請により、あるいは、温湿度センサ341の情報などの把握により、エアコン、テレビなどの家電機器のオンオフ、温度調整、音量調整などの操作が必要となった場合、被介護者の居室にいなくても、介護者用携帯端末20を操作することにより、当該居室などのエッジルータ30経由で、家電機器90を操作することができる。
【0152】
このようにすると、介護者はそのためだけに被介護者の居室を訪れる必要がなくなり、介護者の負担の軽減に役立つとともに、被介護者にとっても、介護者の来訪を待たずに迅速に家電機器90の操作がなされるので、介護サービスの質の向上につながる。
【0153】
<夜間巡回の原則廃止>
次に、夜間は、被介護者の睡眠状態の把握が可能である。すなわち、ベッドマット端末70のセンサーパッド701の圧力状態が一定であり、その他の生体情報に異常がなければ、被介護者が熟睡状態であると推測され、巡回を省略することも可能となる。
【0154】
その他にも、これまで説明した種々の方策を実施することにより、被介護者の状態を細かく把握できており、従って、介護者が、夜間、被介護者の各々の居室を巡回することを原則的に廃止することができる。これによって、介護者の負担の大幅な軽減が可能となる。
【0155】
一方、被介護者にとっても、夜間の巡回の際に眠りを妨げられるということが少なくなるため、サービスの向上となる。
【0156】
<記録業務の容易化>
図16は、本発明の介護施設用の介護支援システムの一実施形態の介護者用携帯端末20の介護記録入力の画面の例(日本語)であり、図17は同じく画面の例(外国語)である。
【0157】
介護活動の記録は、介護施設にとって極めて重要であり、そのために介護者は、時間をかけて記録作業を行っている。特に、近年増加している外国人の介護者にとっては、記録作業の負担が大きい。
【0158】
そこで、日本語において、介護者用携帯端末20の画面から、文章を極力書き込まず、表示される介護内容をクリックするようにする。
【0159】
図には、食事の介助の記録を入力する画面を例示してあり、摂取した食事の内容(D)、例えば、主食、副食、水分量、流動食などの量を画面をタッチ(スライドまたはタップ)することで入力できる。
【0160】
更に、介助の内容(K)が、全介助、一部介助、見守り、自立の中から選択できるようになっており、いずれかをタップするだけでよく、介助を提供した場所(L)についても、居室、ホール、ステーションのいずれかを選択してタップすればよい。
【0161】
このように、入力操作を簡単にしたことから、介護記録の作成にかかる時間を大幅に軽減することができる。
【0162】
なお、このような介護のパターンは、食事介助だけでなく、幅広く介護作業についてのパターンを用意しておくことが望ましい。
【0163】
また、同様の内容を多国語(例えばベトナム語BT、タガログ語TG、インドネシア語IDなど)で表示することにより、それらを母国語としている外国人の介護者にとっても、記録時間の軽減と、正確な記録の作成ができるようになる。
【0164】
<ヘッドセット活用>
また、介護者用携帯端末20に接続されるヘッドセット204を用いると、異常状態が発生し、担当の介護者のみでは対応が困難な場合などに、一斉通報機能を用いて、施設内全介護者に、あるいは特定のグループ内の介護者に、支援を求めることもできる。そのようにすると、経験の浅い介護者などの精神的な負担を軽減することができる。
【0165】
<誤薬・誤配食の防止>
また、被介護者の服用すべき薬の誤配や、被介護者に提供すべき食事の誤配食は、被介護者へのサービス低下のみならず、健康悪化の原因ともなるため、発生させてはいけない。
【0166】
そのために、被介護者が装着している身体装着型端末40で個人認証を行うようにする。
【0167】
具体的には、薬や食事の提供時に、介護者の介護者用携帯端末20によって被介護者の身体装着型端末40を認識させ、介護者用携帯端末20の画面上に、被介護者の顔写真・氏名などを表示させるようにする。
【0168】
なお、認識の方法は、介護者用携帯端末20と身体装着型端末40との両方にNFC近距離通信機能を内蔵しておき、それによって、身体装着型端末40の個人情報を取得することができる。
【0169】
そのようにすることで、誤薬・誤配食を防止することができる。また、その際に、認証結果を記録しておくことで、後日の検証などに利用できる。
【0170】
なお、被介護者の身体装着型端末40を認識する方法は、上記の方法に限定せず、例えば、介護者が、被介護者と同様に身体装着型端末40を装着しておき、身体装着型端末40同士で相互に認識し、それを介護者用携帯端末20にて確認するなどの方法も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の介護施設用の介護支援システムは、広く介護施設の業務に利用できることから、大いに産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0172】
1 介護支援システム
10 介護支援システム制御部
20 介護者用携帯端末
30 エッジルータ
40 身体装着型端末
50 異常通報端末
60 監視機器
70 ベッドマット端末
80 座面端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17