(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】空調設計仕様提案方法、空調設計仕様提案システム及び空調設計仕様提案プログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20241205BHJP
【FI】
F24F11/63
(21)【出願番号】P 2020114793
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】澤村 亮一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 真里奈
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-162150(JP,A)
【文献】特開2018-059703(JP,A)
【文献】特開2018-109458(JP,A)
【文献】特開2012-082991(JP,A)
【文献】特開2013-156003(JP,A)
【文献】米国特許第08155900(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅の一住戸全体の空調システムに用いられる空調設計仕様提案方法であって、
前記空調システムは、前記住宅が区切られて構成された複数のゾーンにおける各ゾーンに、前記各ゾーンに配置され前記各ゾーンに暖気又は冷気を供給する給気口を通じて、暖気又は冷気を供給し、
空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を前記各ゾーン毎に算出する空調負荷率算出ステップと、
前記空調負荷率算出ステップにおいて算出された前記空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する提案事項出力ステップと、を含
み、
前記判定ステップにおいて、前記空調負荷率算出ステップにおいて算出された前記空調負荷率の前記各ゾーン間のバラツキであって異なる前記各ゾーン間の同じ時間帯における空調負荷率の差であるバラツキが所定範囲内であるか否かが判定され、
前記提案事項出力ステップにおいて、前記判定ステップにおいて前記空調負荷率の前記各ゾーン間のバラツキであって異なる前記各ゾーン間の同じ時間帯における空調負荷率の差であるバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、前記空調設計仕様の提案事項が出力される空調設計仕様提案方法。
【請求項2】
前記判定ステップにおいて、前記空調負荷率算出ステップにおいて算出された前記各ゾーンの前記空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいか否かが判定され、
前記提案事項出力ステップにおいて、前記判定ステップにおいて前記各ゾーンの前記空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいと判定された場合に、前記空調設計仕様の提案事項が出力される、請求項1に記載の空調設計仕様提案方法。
【請求項3】
前記判定ステップにおいて、前記空調負荷率算出ステップにおいて算出された前記空調負荷率の前記各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かが判定され、
前記提案事項出力ステップにおいて、前記判定ステップにおいて前記空調負荷率の前記各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、前記空調設計仕様の提案事項が出力される、請求項1又は2に記載の空調設計仕様提案方法。
【請求項4】
前記空調設計仕様の提案事項は、断熱仕様の変更、日射遮蔽仕様の変更、開口部仕様の変更、ゾーンの間取りの変更、隣り合うゾーンの間仕切り仕様の変更及び前記空調能力の仕様の変更のうち、少なくともいずれか1以上である、請求項1~
3のいずれかに記載の空調設計仕様提案方法。
【請求項5】
前記各ゾーンにおける前記空調能力は、前記各ゾーンに配置され前記各ゾーンに暖気又は冷気を供給する給気口の数及び1カ所当たりの前記給気口の給気能力に基づいて算出される、請求項1~
4のいずれかに記載の空調設計仕様提案方法。
【請求項6】
前記各ゾーンにおける前記空調負荷は、季節・時間帯に起因する温湿度条件、住宅仕様条件、前記各ゾーンの用途、前記各ゾーンの方位条件、温熱条件及び住宅性能のうち、少なくとも1以上に基づいて算出される、請求項1~
5のいずれかに記載の空調設計仕様提案方法。
【請求項7】
住宅の一住戸全体の空調システムに用いられる空調設計仕様提案システムであって、
前記空調システムは、前記住宅が区切られて構成された複数のゾーンにおける各ゾーンに、前記各ゾーンに配置され前記各ゾーンに暖気又は冷気を供給する給気口を通じて、暖気又は冷気を供給し、
空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を前記各ゾーン毎に算出する空調負荷率算出部と、
前記空調負荷率算出部により算出された前記空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する判定部と、
前記判定部により判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する提案事項出力部と、を備え
、
前記判定部は、前記空調負荷率算出部により算出された前記空調負荷率の前記各ゾーン間のバラツキであって異なる前記各ゾーン間の同じ時間帯における空調負荷率の差であるバラツキが所定範囲内であるか否かを判定し、
前記提案事項出力部は、前記判定部により前記空調負荷率の前記各ゾーン間のバラツキであって異なる前記各ゾーン間の同じ時間帯における空調負荷率の差であるバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、前記空調設計仕様の提案事項を出力する空調設計仕様提案システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記空調負荷率算出部により算出された前記各ゾーンの前記空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいか否かを判定し、
前記提案事項出力部は、前記判定部により前記各ゾーンの前記空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいと判定された場合に、前記空調設計仕様の提案事項を出力する、請求項
7に記載の空調設計仕様提案システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記空調負荷率算出部により算出された前記空調負荷率の前記各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定し、
前記提案事項出力部は、前記判定部により前記空調負荷率の前記各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、前記空調設計仕様の提案事項を出力する、請求項
7又は8に記載の空調設計仕様提案システム。
【請求項10】
前記空調設計仕様の提案事項は、断熱仕様の変更、日射遮蔽仕様の変更、開口部仕様の変更、ゾーンの間取りの変更、隣り合うゾーンの間仕切り仕様の変更及び前記空調能力の仕様の変更のうち、少なくともいずれか1以上である、請求項
7~9のいずれかに記載の空調設計仕様提案システム。
【請求項11】
前記各ゾーンにおける前記空調能力は、前記各ゾーンに配置され前記各ゾーンに暖気又は冷気を供給する給気口の数及び1カ所当たりの前記給気口の給気能力に基づいて算出される、請求項
7~10のいずれかに記載の空調設計仕様提案システム。
【請求項12】
前記各ゾーンにおける前記空調負荷は、季節・時間帯に起因する温湿度条件、住宅仕様条件、前記各ゾーンの用途、前記各ゾーンの方位条件、温熱条件及び住宅性能のうち、少なくとも1以上に基づいて算出される、請求項
7~11のいずれかに記載の空調設計仕様提案システム。
【請求項13】
住宅の一住戸全体の空調システムに用いられる空調設計仕様提案プログラムであって、
前記空調システムは、前記住宅が区切られて構成された複数のゾーンにおける各ゾーンに、前記各ゾーンに配置され前記各ゾーンに暖気又は冷気を供給する給気口を通じて、暖気又は冷気を供給し、
空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を前記各ゾーン毎に算出する空調負荷率算出ステップと、
前記空調負荷率算出ステップにおいて算出された前記空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する提案事項出力ステップと、をコンピュータに実行させるための空調設計仕様提案プログラム
であり、
前記判定ステップにおいて、前記空調負荷率算出ステップにおいて算出された前記空調負荷率の前記各ゾーン間のバラツキであって異なる前記各ゾーン間の同じ時間帯における空調負荷率の差であるバラツキが所定範囲内であるか否かを判定し、
前記提案事項出力ステップにおいて、前記判定ステップにおいて前記空調負荷率の前記各ゾーン間のバラツキであって異なる前記各ゾーン間の同じ時間帯における空調負荷率の差であるバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、前記空調設計仕様の提案事項を出力する空調設計仕様提案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調設計仕様提案方法、空調設計仕様提案システム及び空調設計仕様提案プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用の空調システムにおいて、1台の空調機を備え、各部屋(各ゾーン)の熱負荷を計測して、熱負荷の大きさの順位に応じて、空調機から送られる温風又は冷風を各部屋に導くダクトの各枝部分に設置されたダンパの開度を制御するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、住宅の各ゾーンの最大の空調負荷及び時間毎の空調負荷を把握できていないため、最大空調能力に余裕を持たせた空調システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の空調システムにおいては、各部屋に設けられたダンパの開度を調整する制御が必要となり、システムが複雑になり易く、機器に要するコストが高くなり易い。また、最大空調能力に余裕を持たせた空調システムにおいては、空調能力を大きくするため、機器に要するコストが高くなり易い。ところで、住宅の一住戸の空調システムにおいて、各ゾーンの空調負荷は、例えば、季節・時間帯に起因する温湿度条件、住宅仕様条件、各ゾーンの用途、各ゾーンの方位条件、温熱条件及び住宅性能などが影響する。そのため、これらの影響を考慮して、住宅の空調設計仕様を、各ゾーンの空調負荷を低減できるような空調設計仕様とすることが好ましい。
【0005】
空調負荷を低減できるような空調設計仕様を提案することができれば、特許文献1に記載の空調システムのような各部屋に設けられたダンパの開度を調整するような複雑なシステムとすることなく、簡易な空調システムとすることができる。よって、空調システムを複雑なシステムとすることなく、住宅の一住戸の空調システムの空調設計仕様の提案を効果的に行うことが求められている。
【0006】
本開示は、空調システムを複雑なシステムとすることなく、住宅の一住戸の空調システムの空調設計仕様の提案を効果的に行うことができる空調設計仕様提案方法、空調設計仕様提案システム及び空調設計仕様提案プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、住宅の一住戸の空調システムに用いられる空調設計仕様提案方法であって、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する空調負荷率算出ステップと、前記空調負荷率算出ステップにおいて算出された前記空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する提案事項出力ステップと、を含む空調設計仕様提案方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る空調設計仕様提案システムに用いられる住宅の各ゾーンを示す間取り図である。
【
図2】一実施形態に係る空調設計仕様提案システムの制御ブロック図である。
【
図3】空調設計仕様提案システムのインプット内容を示す図である。
【
図4】一実施形態において、各ゾーンの所定の時期・時間帯における空調負荷率を示す図である。
【
図5】空調負荷率の判定制御を説明するフローチャートである。
【
図6】実施例の空調設計仕様提案システムに用いられる対策前の住宅の各ゾーンを示す間取り図である。
【
図7】実施例の対策前において、各ゾーンの所定の時期・時間帯における空調負荷率を示す図である。
【
図8】実施例の空調設計仕様提案システムに用いられる対策後の住宅の各ゾーンを示す間取り図である。
【
図9】実施例の対策後において、各ゾーンの所定の時間・時間帯における空調負荷率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の空調設計仕様提案システム50の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の空調設計仕様提案システム50は、例えば、
図1に示すような住宅1の一住戸の空調システム30に用いられる。空調設計仕様提案システム50(
図2参照)は、住宅1の一住戸の空調システム30に用いられることで、空調システム30を簡易に構成して、低コストで省電力のシステムを実現できる。
【0010】
本実施形態においては、住宅1の一住戸とは、生活の一単位の空間を意味する。生活の一単位の空間は、例えば、住宅1が一軒家の場合は、住宅の全館を意味する。また、住宅1がマンションのような集合住宅の場合には、集合住宅の一戸一戸を意味する。
【0011】
なお、本実施形態においては、空調設計仕様提案システム50を用いるための空調システム30を2階建ての住宅1に適用する場合を例に説明するが、これに限定されない。空調設計仕様提案システム50を、例えば、1階建ての住宅や3階建て以上の住宅に適用してもよい。空調設計仕様提案システム50を、例えば、マンションの一住戸に適用してもよい。また、空調設計仕様提案システム50を、新築の住宅の一住戸に使用してもよいし、リフォームの住宅の一住戸に使用してもよい。
【0012】
本実施形態の住宅1は、空調設計仕様提案システム50を説明するための一つのモデルであり、これに限定されない。住宅1は、所定の向きに配置され、所定の断熱仕様、所定の日射遮蔽仕様、所定の開口部仕様などにより構成されている。住宅1の空調システムは、所定の空調能力により運転されている。
【0013】
まず、本実施形態の住宅1について説明する。本実施形態の住宅1は、
図1に示すように、上方側が北を向き、下方側が南を向き、右側が東を向き、左側が西を向いている。空調設計仕様提案システム50を利用する場合に、住宅1を複数のゾーンに区切る。住宅1は、
図1に示すように、1階10と2階20とを有して構成され、複数のゾーンに区切られている。複数のゾーンは、例えば、間仕切り壁や建具などで区切られている。本実施形態においては、住宅1は、例えば、1階10において、1階第1ゾーン11と、1階第2ゾーン12と、を有し、2階20において、2階第1ゾーン21と、2階第2ゾーン22と、2階第3ゾーン23と、を有する。
【0014】
ゾーンの区切り方としては、例えば、居室、廊下、ホール等において、給気口を設置する空間毎にゾーンを区切る。また、例えば、間仕切り壁や建具が無い場合には一つのゾーンとすることもでき、1階の所定のゾーンと2階の所定のゾーンとが吹き抜けで上下がつながっている場合には、一体の空間として一つのゾーンとすることもできる。また、例えば、トイレ、洗面室、脱衣室、浴室、収納等(納戸、クローゼット、押し入れ等)は、給気口が設置されていなければ、隣接するゾーンに含めることもできる。また、例えば、機械室・ダクトスペースをゾーンに含めないこともできる。
【0015】
本実施形態においては、1階第1ゾーン11を、例えば、LDK111(Living Dining Kitchen)、洗面室112、トイレ113、浴室114及び脱衣室115などを一体とした空間により構成する。1階第1ゾーン11は、1階10において、住宅1の西側において南北に延びる空間と南側において東西に延びる空間とにより形成される略L字状の空間である。1階第2ゾーン12を、例えば、和室121及び玄関ホール122を一体とした空間により構成する。1階第2ゾーン12は、1階10において、住宅1の北東側の空間である。
【0016】
2階第1ゾーン21を、例えば、寝室211及びクローゼット212の空間により構成する。本実施形態においては、2階第1ゾーン21は、2階20において、住宅1の北西側の空間である。2階第2ゾーン22を、例えば、洋室の空間により構成する。2階第2ゾーン22は、2階20において、住宅1の南東側の空間である。2階第3ゾーン23は、例えば、吹き抜けや階段等で構成されたスキップフロア231及び廊下232により構成される。本実施形態においては、2階第3ゾーン23は、2階20において、住宅1の北東側の空間である。1階10と2階20とにおいて、2階第3ゾーン23と1階第2ゾーン12とは、吹き抜けによりつながっている。
【0017】
以上の住宅1において、各ゾーン11,12,21,22,23には、給気口(図示せず)が設けられている。各ゾーン11,12,21,22,23の適宜箇所には、窓が配置された開口部が設けられ、開口部仕様が設定され、所定の断熱仕様が設定されている。
【0018】
空調システム30は、1台の空調機31と、各ゾーン11,12,21,22,23に向けて配管されるダクト32と、各ゾーンに配置される給気口(図示せず)と、を備える。例えば、空調機31は、1階の1階第1ゾーン11の北東側の角部の機械室116に配置される。ダクト32は、空気が流通する流通路を構成する配管である。ダクト32の各ゾーン11,12,21,22,23側の端部には、給気口(図示せず)が設けられる。住宅の2階20の2階第3ゾーン23の南東の角部には、例えば、ダクト32が配置されるダクト配置スペース233が設けられる。給気口(図示せず)は、各ゾーンの壁面又は天井面に設けられ、各ゾーン11,12,21,22,23に、暖気又は冷気を供給する。
【0019】
空調機31は、住宅1内を暖房する暖房機能と、住宅1内を冷房する冷房機能とを備える。空調機31は、例えば、住宅1内の空気と換気装置により導入された住宅1外の空気とを、暖房機能により暖めて又は冷房機能により冷やして住宅1内に供給してもよい。空調機31は、ダクト32を介して、各給気口により、各ゾーン11,12,21,22,23に、暖房機能により暖めた空気又は冷房機能により冷やした空気を供給してもよい。
【0020】
次に、空調設計仕様提案システム50について説明する。空調設計仕様提案システム50は、住宅1の一住戸の空調システム30に用いられ、
図2に示すように、制御装置51と、入出力装置55と、を備える。制御装置51は、制御部52と、記憶部53と、を有する。制御部52は、空調負荷率算出部521と、第1判定部522と、第2判定部523(判定部)と、提案事項出力部524と、を有する。入出力装置55は、入力部551と、表示部552(出力部)と、を有する。
【0021】
記憶部53は、第1判定部522(後述)や第2判定部523(後述)により判定する場合の判定閾値等を記憶する。また、記憶部53は、空調負荷率算出部521により空調負荷率を算出するための各種の計算式や、各種の重み付けや、各種テーブル等を記憶する。
【0022】
空調負荷率算出部521は、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する。空調負荷には、例えば、暖房負荷、冷房負荷がある。例えば、暖房負荷とは、室内の暖房時に、主に室内から外に逃げる熱量に対して、室内の温度を保とうとする熱負荷を意味する。また、冷房負荷とは、室内の冷房時に、主に外から室内に入ってくる熱量に対して、室内の温度を保とうとする熱負荷を意味する。つまり、空調負荷とは、室内から失われる熱量に対して、その熱量を補う負荷を意味する。
【0023】
各ゾーンにおける空調負荷は、季節・時間帯に起因する温湿度条件、住宅仕様条件、各ゾーンの用途、各ゾーンの方位条件、温熱条件及び住宅性能のうち、少なくとも1以上に基づいて算出される。空調負荷の詳細については後述する。これらの空調負荷は、例えば、使用者が入出力装置55の入力部551から各条件を入力することで、各種の計算式や、各種の重み付けや、各種テーブル等により求められる。使用者が空調負荷の条件を入出力装置55の入力部551に入力することで、空調負荷の値を算出できる。
【0024】
各ゾーンにおける空調能力は、各ゾーンに配置される給気口の数及び1カ所当たりの給気口の給気能力に基づいて算出される。空調能力の詳細については後述する。
【0025】
第1判定部522は、各ゾーンの最大負荷に基づいて、床面積から算出した給気口数以下であるか否か判定したり、給気口の総数が所定の給気口数以下であるか否かを判定する。第2判定部523は、空調負荷率算出部521において算出された空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する。第1判定部522及び第2判定部523の詳細については後述する。
【0026】
提案事項出力部524は、第1判定部522及び第2判定部523により判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する。具体的には、提案事項出力部524は、第1判定部522により給気口の数が各ゾーンの最大負荷に基づいて床面積から算出した給気口数よりも多いと判定された場合や、第1判定部522により給気口の総数が所定の給気口数よりも多いと判定された場合に、空調設計仕様の提案事項を出力する。提案事項出力部524は、第2判定部523により各ゾーンの空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいと判定された場合や、第2判定部523により空調負荷率の前記各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合や、第2判定部523により空調負荷率の各ゾーン間のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、空調設計仕様の提案事項を出力する。
【0027】
空調設計仕様の提案事項としては、例えば、断熱仕様の変更、日射遮蔽仕様の変更、開口部仕様の変更、ゾーンの間取りの変更、隣り合うゾーンの間仕切り仕様の変更及び空調能力の仕様の変更のうち、少なくともいずれか1以上である。断熱仕様の変更としては、例えば、基礎断熱構造を有する壁部の厚さの変更や、断熱箇所の追加などが挙げられる。日射遮蔽仕様の変更としては、例えば、庇・シェードの設置などが挙げられる。開口部仕様の変更としては、例えば、開口部の寸法の変更などが挙げられる。ゾーンの間取りの変更及び隣り合うゾーンの間仕切り仕様の変更としては、例えば、隣接するゾーンに仕切りを設けたり又は仕切りを取り払うことで、ゾーンを広くしたり又はゾーンを狭くすることなどが挙げられる。空調能力の仕様の変更としては、ダクト及び給気口の数や開口径の変更が挙げられる。
【0028】
入出力装置55は、入力部551と、表示部552(出力部)と、を有する。入力部551には、例えば、使用者に操作されることにより、住宅1及び空調システム30に関する種々のデータが入力される。入力部551に入力される項目としては、例えば、
図3に示すように、(A)空調負荷に関係する項目として、例えば、(1)敷地の項目、(2)空調・換気の項目、(3)住宅全体の項目、(4)各ゾーンの項目等が挙げられ、(B)空調能力に関係する項目として、給気口の数や給気口の開口径が挙げられる。
【0029】
表示部552は、例えば、提案事項出力部524から出力される提案事項を表示して外部に出力する。表示部552は、第1判定部522や第2判定部523において判定された判定結果に基づいて、提案事項出力部524からの出力信号により、空調設計仕様の提案事項を表示する。
【0030】
具体的には、入出力装置55の入力部551には、使用者により、空調負荷の値を算出するために、
図3に示すようなインプット内容が入力される。インプット内容としては、(A)空調負荷に関係する項目と、(B)空調能力に関係する項目と、がある。
【0031】
(A)空調負荷に関係する項目しては、
図3に示すように、例えば、(1)敷地の項目、(2)空調・換気の項目、(3)住宅全体の項目、(4)各ゾーンの項目等がある。(1)敷地の項目としては、(1a)地域・日射地域区分、(1b)最低外気温度・最高外気温度などがある。「(1a)地域・日射地域区分」及び「(1b)最低外気温度・最高外気温度」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「温熱条件」に該当する。
【0032】
(1a)地域・日射地域区分として、例えば、住宅の建設予定地について、省エネルギー基準で定められている地域区分や日射地域区分を、使用者が入力できる。(1b)最低外気温度・最高外気温度として、例えば、住宅1の建設地付近の最低・最高外気温度又は湿度を、使用者が入力できる。
【0033】
(2)空調・換気の項目としては、(2a)温湿度設定、(2b)換気設計などがある。「(2a)温湿度設定」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「季節・時間帯に起因する温湿度条件」に該当する。「(2b)換気設計」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「住宅仕様条件」に該当する。
【0034】
(2a)温湿度設定として、例えば、冷房期・暖房期、早朝・朝・昼・夕方の条件に応じて、時期・時間帯の温度及び湿度を、使用者が入力できる。(2b)換気設計として、設計風量が分かる場合には、設計風量を、使用者が入力できる。換気量として、例えば、床面積、平均天井高からの気積・設計風量の目安を算出して、空調負荷の計算に使用してもよい。
【0035】
(3)住宅全体の項目としては、(3a)面積・高さ、(3b)断熱仕様、(3c)気密仕様、(3d)方位などがある。「(3a)面積・高さ」、「(3b)断熱仕様」及び「(3c)気密仕様」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「住宅仕様条件」に該当する。「(3d)方位」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「各ゾーンの方位条件」に該当する。
【0036】
(3a)面積・高さとして、各階の床面積、階の高さ、平均天井高さを、使用者が入力できる。床面積と平均天井高さから、気積を計算できる。(3b)断熱仕様として、天井又は屋根断熱の熱貫流率を、使用者が入力できる。(3c)気密仕様として、当該住宅のC値(相当隙間面積)を、使用者が入力できる。C値が決定していない場合には、狙いのC値を入力する。(3d)方位として、例えば、住宅がどの方位を向いているかを、使用者が入力できる。各ゾーンがどの方位に位置するかの条件である。例えば真北から住宅が何度傾いているかにより、各ゾーンの日射条件を入力できる。
【0037】
(4)各ゾーンの項目としては、(4a)ゾーン用途、(4b)階の選択、(4c)床面積、(4d)在室人数、(4e)発熱量、(4f)外壁の周長、(4g)開口部の寸法・仕様、(4h)日射遮蔽性能、(4i)特殊部位の寸法・仕様、(4j)ゾーンの組み合わせなどがある。
【0038】
「(4a)ゾーン用途」は、ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「各ゾーンの用途」に該当する。「(4b)階の選択」、「(4c)床面積」、「(4d)在室人数」、「(4f)外壁の周長」、「(4g)開口部の寸法・仕様」、「(4i)特殊部位の寸法・仕様」及び「(4j)ゾーンの組み合わせ」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「住宅仕様条件」に該当する。「(4e)発熱量」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「温熱条件」に該当する。「(4h)日射遮蔽性能」は、各ゾーンにおける空調負荷を算出する際の条件のうち、「住宅性能」に該当する。
【0039】
(4a)ゾーン用途として、例えば、LDKであるか、和室であるか、寝室であるか、洋室であるか等を、使用者が入力できる。(4b)階の選択として、例えば、地上階、1階、2階、3階などを、使用者が入力できる。(4c)床面積として、例えば、ゾーン毎の床面積を入力する。吹き抜けが上階の廊下・居室とつながっている場合には、上階の廊下・居室当に吹き抜け部分の面積を含めて入力してもよい。
【0040】
(4d)在室人数として、ゾーン用途毎に時間帯毎の在室人数を、使用者が入力できる。(4e)発熱量として、電化製品の発熱量を、使用者が入力できる。記憶部53は、通常使用する電化製品についての発熱量を予め記憶していてもよい。発熱量が高い機器を使用する場合には、発熱量を入力するように構成してもよい。(4f)外壁の周長として、ゾーンの方位毎に外壁の周長を、使用者が入力できる。開口部がある場合には、開口部の熱貫流率を、使用者が入力できる。
【0041】
(4g)開口部の寸法・仕様として、開口部の寸法、熱貫流率、日射熱取得率を、使用者が入力できる。(4h)日射遮蔽性能として、開口部ごとに日射遮蔽性能を、使用者が入力する。日射遮蔽性能として、例えば、軒、庇、オーバーハング、バルコニーなどの開口部の上部に張り出す部材の寸法を入力できる。日射遮蔽装置の性能としては、日射熱カット率を入力できる。(4i)特殊部位の寸法・仕様として、上部バルコニー、下屋、オーバーハング床、屋根面にトップライトがある場合には、その寸法・仕様を入力できる。(4j)ゾーンの組み合わせとして、一体の空間として判定する場合には、一体とするゾーンを選択して入力できる。例えば、吹き抜け等により上下につながっている場合には、一体の空間として判定できる。
【0042】
本実施形態においては、インプット内容から、最も空調負荷が大きい最大空調負荷を求めて各検証を行っている。暖房期の最大空調負荷として、例えば、暖房期の早朝6時の暖房空調負荷を求め、冷房期の最大空調負荷として、例えば、冷房期の朝9時・昼13時・夕方16時の冷房空調負荷を求める。暖房期においては、室温が低い早朝6時の時間帯に暖房を入れるため、空調負荷が最も高い時間帯として早朝6時を想定している。また、冷房期においては、朝・昼・夕方のいずれの時間帯にも冷房を効かせるため、空調負荷が最も高い時間帯として朝6時・昼13時・夕方16時を想定している。
【0043】
(B)空調能力に関係する項目としては、給気口の数、1カ所当たりの給気口の給気能力がある。各ゾーンにおける空調能力は、各ゾーンに配置される給気口の数及び1カ所当たりの給気口の給気能力に基づいて算出されるためである。具体的には、給気口の数については、給気口の数が多ければ、給気能力が高く、給気口の数が少なければ、給気能力が低い。1カ所当たりの給気口の給気能力については、給気口の開口径の大きさが大きければ、給気能力が高く、開口径の大きさが小さければ、給気能力が低い。本実施形態においては、例えば、太さが、直径75mm、100mmなどのダクトを準備しておき、適宜箇所に設置する。ダクトの端部には、各ゾーンに配置される給気口が設けられており、本実施形態においては、給気口の開口径とダクトの径とは同じである。
【0044】
給気口の数や給気能力は、各ゾーンの床面積や空調負荷に応じて設定されることが好ましい。しかし、ダクトを設置するスペースに制限があったり又はダクトを設置するコストが高い場合などの場合には、ダクトを設置することが難しいこともある。住宅が新築である場合には、空調能力としての給気口の数や給気能力を考慮した住宅設計を予め行っておくことで、各ゾーンの空調負荷率を好ましい値にしておくことで、比較的大掛かりとならない空調設計仕様の提案事項を提案できる。また、リフォームの住宅の場合には、ダクトを新たに設置することが難しい場合も多いため、現状の給気口の数及び給気能力に基づいて、空調設計仕様の提案事項を提案できる。
【0045】
例えば、第1判定部522により、各ゾーンの最大負荷に基づいて、床面積から算出した給気口数以下であるか否か判定したり、給気口の総数が所定の給気口数以下であるか否かを判定することができる。
【0046】
第1判定部522は、各ゾーンの最大負荷に基づいて、床面積から算出した給気口数以下であるか否か判定する場合には、各ゾーンの最大冷暖房負荷を求めて、その負荷を処理できる空調の給気口数を算出し、算出した空調の給気口数と床面積から算出した給気口数とを比較する。算出した空調の給気口数が、床面積から算出した給気口数以下であれば、ダクトの本数もある程度の数に抑えられているため、第1判定部522は、空調システムが簡易な構成であるため、条件を満たすと判定する。例えば、第1判定部522により条件を満たさないと判定された場合には、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。
【0047】
また、第1判定部522は、給気口の総数が所定の給気口数以下であるか否かを判定する場合には、給気口の上限数以下である場合に、条件を満たすと判定する。例えば、第1判定部522により条件を満たさないと判定された場合には、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。
【0048】
例えば、第1判定部522により、暖房期において、床面積から算出した給気口数よりも多いと判定された場合や、給気口の総数が所定の給気口数よりも多いと判定された場合には、外壁、天井/屋根断熱、床/基礎の断熱の性能を向上させるという提案事項や、熱損失量の数値が高い部屋の開口部の熱貫流率を向上させるという提案事項や、南面以外の開口部は、開口部のサイズを小さくするという提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。
【0049】
また、第1判定部522により、冷房期において、床面積から算出した給気口数よりも多いと判定された場合や、給気口の総数が所定の給気口数よりも多いと判定された場合には、日射熱取得量の数値が高い開口部の日射遮蔽性能を向上させるという提案事項や、南面以外の開口部は、開口部のサイズを小さくするという提案事項や、外壁、天井/屋根断熱、床/基礎断熱の断熱性能を向上させるという提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。
【0050】
以上の空調負荷及び空調能力の条件を用いて、空調負荷率算出部521により、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する。空調負荷率算出部521により算出された各ゾーンの空調負荷率を、冷房期の9時、冷房期の13時、冷房期の16時、暖房期の6時において、各ゾーン毎に算出して、
図4に示すグラフに示した。
【0051】
空調負荷率算出部521において算出された空調負荷率は、第2判定部523により、所定条件を満たしているか否かを判定することができる。
【0052】
具体的には、(i)第2判定部523は、空調負荷率算出部521により算出された各ゾーンの空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいか否かを判定する。(ii)第2判定部523は、空調負荷率算出部により算出された空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定する。(iii)第2判定部523は、空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率の各ゾーン間のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定する。
【0053】
(i)第2判定部523により空調負荷率算出部521により算出された各ゾーンの空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいか否かを判定する場合において、例えば、空調負荷率が100%を超えている場合には、空調能力よりも空調負荷が大きく、空調能力が不足しているため、効率的に、ゾーン内を、冷房したり暖房することができない。そのため、例えば、所定の空調負荷率を100%として、第2判定部523は、各ゾーンの空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいか否かを判定する。これにより、各ゾーンの空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいと判定された場合には、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。
【0054】
本実施形態においては、
図4に示すグラフを参照すると、各ゾーン及び各時間帯において、空調負荷率100%を超えていない。そのため、提案事項出力部524は、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させない。仮に、空調負荷率100%を超えたゾーンが存在する場合には、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。これらの提案事項に基づいて、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。
【0055】
(ii)第2判定部523により空調負荷率算出部により算出された空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定する場合において、時間帯が異なることで日射の浸入によって空調負荷が増減する可能性がある。そのため、第2判定部523は、空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定する。これにより、空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合には、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。これらの提案事項に基づいて、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。
【0056】
本実施形態においては、
図4に示すグラフを参照すると、LDK・洗面室(1階第1ゾーン11)において、冷房期の9時における空調負荷率と、冷房期の13時における空調負荷率との差は、表1に示すように、3pt(ポイント)である。また、スキップフロア・2階廊下(2階第3ゾーン23)において、冷房期の9時における空調負荷率と、冷房期の16時における空調負荷率との差は、表1に示すように、21.9ptである。本実施形態においては、判定閾値である所定範囲内は、例えば、30pt以内であるため、判定基準を満たす(判定OK)。そのため、提案事項出力部524は、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させない。なお、本実施形態においては、判定閾値である所定範囲内の値を30pt以内としたが、これに限定されない。判定閾値である所定範囲は、様々な住宅仕様に基づいた住宅を用いた試行試験の結果等により求めることができる。
【0057】
【0058】
なお、
図4に示すように、スキップフロア・2階廊下(2階第3ゾーン223)において、冷房期の9時における空調負荷率と冷房期の16時における空調負荷率との差が21.9ptである。判定閾値である所定範囲30ptの範囲内に入っているが、対策の余地がある。例えば、冷房期において、最も空調負荷率の差が大きいゾーンにおいて、日射遮蔽性能を向上させる対策をしてもよい。日射遮蔽性能を向上させる対策としては、例えば、庇・シェード等を設置したり、南面に庇を設けたり、南面以外は日射熱取得率の低いガラスに変更するなどの対策がある。対策内容は、これに限定されず、住宅の状況などにより適宜選択される。
【0059】
(iii)第2判定部523が空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定する場合において、ゾーン毎に同じ時間帯で空調負荷率のバラツキがあると空調の効きが悪くなったり効きが強くなったりする可能性がある。そのため、第2判定部523は、各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定する。
【0060】
これにより、空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合には、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。これらの提案事項に基づいて、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。
【0061】
本実施形態においては、
図4に示すグラフを参照すると、表2に示すように、冷房期の9時においては、空調負荷率の最大差は17ptであり、冷房期の13時においては、空調負荷率の最大差は22ptであり、冷房期の16時においては、空調負荷率の最大差は33ptである。暖房期の9時においては、空調負荷率の最大差は28pである。
【0062】
【0063】
判定閾値である所定範囲内は、例えば、45pt以内であるため、冷房期の9時、13時、16時、暖房期の6時においては、判定基準を満たす(判定OK)。そのため、提案事項出力部524は、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させない。本実施形態においては、判定閾値である所定範囲を45ptとしたが、これに限定されない。判定閾値である所定範囲は、様々な住宅仕様に基づいた住宅を用いた試行試験の結果等により求めることができる。
【0064】
ここで、冷房期の16時においては、空調負荷率の最大差は33ptである。判定閾値である所定範囲内は、例えば、45pt以内であるため、判定基準を満たしている。しかし、冷房期の16時は、各時間帯において、最もバラツキが大きいため、日射遮蔽装置(シェード)を、1階10の1階第1ゾーン11の南側の開口部に配置したり断熱を強化する等の対策をしてもよい。
【0065】
次に、
図5に示すフローチャートにより、空調設計仕様提案システム50の動作の一例について説明する。まず、事前準備として、住宅1を各ゾーンに区分けする。
【0066】
図5に示すように、ステップS1において、各入力項目を入力する。入力項目としては、例えば、
図3のインプット内容に示すように、(1)敷地の項目、(2)空調・換気の項目、(3)住宅全体の項目、(4)各ゾーンの項目等が挙げられる。
【0067】
ステップS2において、制御部52は、各ゾーン毎の空調負荷を算出する。各ゾーンにおける空調負荷は、季節・時間帯に起因する温湿度条件、住宅仕様条件、各ゾーンの用途、各ゾーンの方位条件、温熱条件及び住宅性能のうち、少なくとも1以上に基づいて算出される。
【0068】
ステップS3において、使用者は、各ゾーンに設置する給気口数を算出する。算出された給気口数を見て、給気口数を変更する場合のみ、手入力で変更する。各ゾーンにおける空調能力は、各ゾーンに配置される給気口の数及び1カ所当たりの給気口の給気能力に基づいて算出される。これにより、各ゾーンにおける空調能力を算出できる。各ゾーンに設置する給気口数は、第1判定部522より判定して求めてもよい。
【0069】
ステップS4において、空調負荷率算出部521は、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する。これにより、
図4に示すように、各ゾーン毎の空調負荷率を算出できる。
【0070】
ステップS5において、第2判定部523は、各ゾーンのいずれかの空調負荷率が100%以下であるか否かを判定する。第2判定部523により、各ゾーンの空調負荷率が100%以下であると判定された場合(判定OK)には、処理は、ステップS7に進む。第2判定部523により、各ゾーンの空調負荷率が100%以下でないと判定された場合(判定NG)には、処理は、ステップS6に進む。
【0071】
ステップS6において、ステップS5において各ゾーンの空調負荷率が100%以下でないと判定されたため、提案事項出力部524は、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させる。空調設計仕様の提案事項を、空調負荷率100%を超えたゾーンに適用することで、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。ステップS6において提案事項を表示した後に、処理は、ステップS5に戻る。
【0072】
ステップS7において、第2判定部523は、各ゾーン間の時間毎の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にあるか否かを判定する。第2判定部523により、各ゾーン間の時間毎の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にあると判定された場合(判定OK)には、処理は、ステップS9に進む。第2判定部523により、各ゾーン間の時間毎の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にないと判定された場合(判定NG)には、処理は、ステップS8に進む。
【0073】
ステップS8において、ステップS7において各ゾーン間の時間毎の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にないと判定されたため、提案事項出力部524は、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させる。空調設計仕様の提案事項を、各ゾーンの時間帯毎のバラツキが大きいゾーンに適用することで、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。ステップS8において提案事項を表示した後に、処理は、ステップS7に戻る。
【0074】
ステップS9において、第2判定部523は、各ゾーン間の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にあるか否かを判定する。第2判定部523により、各ゾーン間の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にあると判定された場合(判定OK)には、処理は終了する。第2判定部523により、各ゾーン間の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にないと判定された場合(判定NG)には、処理は、ステップS10に進む。
【0075】
ステップS10において、ステップS9において各ゾーン間の空調負荷率のバラツキが所定範囲内にないと判定されたため、提案事項出力部524は、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させる。空調設計仕様の提案事項を、空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが大きいゾーンに適用することで、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。ステップS10において提案事項を表示した後に、処理は、ステップS9に戻る。
【0076】
なお、本フローチャートの制御において、第2判定部523は、ステップS5において実行される各ゾーンのいずれかの空調負荷率が100%以下であるか否かを判定する制御と、ステップS7において実行される空調負荷率のゾーン間の時間毎のバラツキが所定範囲内にあるか否かを判定する制御と、ステップS9において実行される空調負荷率の各ゾーン間のバラツキが所定範囲内にあるか否かを判定する制御とを、この順番に実行したが、3つの判定制御の順番は、これに限定されない。また、第2判定部523は、3つの判定制御の全てを実行せずに、1つ又は2つの判定制御を実行してもよい。
【0077】
以上説明した本実施形態の空調設計仕様提案システム50によれば、以下のような効果を奏する。
【0078】
本実施形態の空調設計仕様提案システム50は、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する空調負荷率算出部521と、空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する第2判定部523と、第2判定部523により判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する提案事項出力部524と、を備える。これにより、空調設計仕様の提案事項を参考にして空調設計仕様を変更することにより、空調システムを複雑なシステムとすることなく、住宅1の一住戸の空調システムの空調設計仕様の提案を効果的に行うことができる。よって、空調機の単純な能力制御のみで、一住戸内の全空間での空調の効きを均一化でき、簡易な空調システムを実現できる。
【0079】
本実施形態においては、第2判定部523は、空調負荷率算出部521により算出された各ゾーンの空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいか否かを判定し、提案事項出力部524は、第2判定部523により各ゾーンの空調負荷率が所定の空調負荷率よりも大きいと判定された場合に、空調設計仕様の提案事項を出力する。これにより、空調負荷率が所定の空調負荷率(例えば100%)を超えている場合には、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。よって、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。
【0080】
本実施形態においては、第2判定部523は、空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定し、提案事項出力部524は、第2判定部523により空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、空調設計仕様の提案事項を出力する。これにより、時間帯が異なることで日射の浸入によって負荷が増減する可能性があっても、空調負荷率の各ゾーンの時間帯毎のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。よって、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。
【0081】
本実施形態においては、第2判定部523は、空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率の各ゾーン間のバラツキが所定範囲内であるか否かを判定し、提案事項出力部524は、第2判定部523により空調負荷率の各ゾーン間のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、空調設計仕様の提案事項を出力する。これにより、ゾーン毎に同じ時間帯で負荷率のバラツキがあると空調の効きが悪くなったり効きが強くなったりする可能性があっても、空調負荷率の各ゾーン間のバラツキが所定範囲内でないと判定された場合に、提案事項出力部524により、空調設計仕様の提案事項を、入出力装置55の表示部552に表示させることができる。よって、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。
【0082】
以上、本開示の空調設計仕様提案システムの好ましい一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0083】
例えば、前記実施形態においては、例えば、空調負荷率算出部521において空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出し、第2判定部523(判定部)において空調負荷率算出部521により算出された空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定し、提案事項出力部524において第2判定部523により判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力することで、空調設計仕様提案システム50をシステムとして構成したが、これに限定されない。これらの処理を人が行ってもよい。例えば、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する空調負荷率算出ステップと、空調負荷率算出ステップにおいて算出された空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、判定ステップにおいて判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する提案事項出力ステップと、を含む空調設計仕様提案方法として、各ステップを人が行ってもよい。
【0084】
また、空調設計仕様提案方法をコンピュータに実行させるためのプラグロムとして構成して、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する空調負荷率算出ステップと、空調負荷率算出ステップにおいて算出された空調負荷率に基づいて、所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、判定ステップにおいて判定された判定結果に基づいて、空調設計仕様の提案事項を出力する提案事項出力ステップと、をコンピュータに実行させるための空調設計仕様提案プログラムとしてもよい。
【0085】
また、前記実施形態の空調設計仕様提案システムを、空調最大能力を発揮できる空調システムや空調風量を抑える空調システムなど(例えば、特願2018-212483(特開2020-79666)、特願2018-212484(特開2020-79667)、特願2019-118694に記載の空調システム)と組み合わせることで、より高い効果を得ることができる。
【0086】
次に、空調設計仕様提案システム50の実施例について説明する。まず、実施例に用いられるの住宅1A及び空調システム30Aについて説明する。
【0087】
住宅1Aは、空調設計仕様提案システム50を説明するための一つのモデルであり、これに限定されない。住宅1Aは、
図6に示すように、上方側が北を向き、下方側が南を向き、右側が東を向き、左側が西を向いている。住宅1Aは、所定の断熱仕様、所定の日射遮蔽仕様、所定の開口部仕様などにより構成されている。住宅1Aの空調システムは、所定の空調能力により運転されている。
【0088】
住宅1Aは、
図6に示すように、1階60と2階70とを有して構成され、複数のゾーンに区切られている。本実施例においては、住宅1Aは、例えば、1階60において、1階第1ゾーン61と、1階第2ゾーン62と、1階第3ゾーン63と、を有し、2階において、2階第1ゾーン71と、2階第2ゾーン72と、2階第3ゾーン73と、2階第4ゾーン74と、を有する。
【0089】
本実例においては、1階第1ゾーン61を、例えば、LDK611(Living Dining Kitchen)、小上がり612及び玄関ホール613などを一体とした空間により構成する。1階第1ゾーン61は、1階60において、住宅1Aの東側の大部分を占める空間である。1階第2ゾーン62を、例えば、ユーティリティーの空間により構成する。1階第2ゾーン62は、1階60において、南西側の角部の空間である。1階第3ゾーン63を、例えば、1階洋室により構成する。1階第3ゾーン63は、1階60において、北西側の角部の空間である。
【0090】
2階第1ゾーン71を、例えば、寝室により構成する。2階第1ゾーン71は、2階70において、北側の空間である。2階第2ゾーン72を、例えば、2階洋室により構成する。2階第2ゾーン72は、2階70において、2階第1ゾーン71の西側の空間である。2階第3ゾーン73は、例えば、書斎により構成する。本実施例においては、2階第3ゾーン73は、2階70において、南側の空間である。2階第4ゾーン74は、2階ホールにより構成する。2階第4ゾーン74は、2階第1ゾーン71の南側であって、2階第3ゾーン73の北側に配置される。2階第4ゾーン74と1階第1ゾーン61とは、吹き抜けによりつながっている。
【0091】
以上の住宅1Aの各ゾーン61,62,63,71,72,73,74の適宜箇所には、
図6に示すように、窓が配置された開口部が設けられ、開口部仕様が設定され、所定の断熱仕様が設定されている。
【0092】
具体的には、
図6に示すように、1階60において、1階第1ゾーン61と1階第2ゾーン62との間は、ドア614で閉められることで、ドア614で区切られており、1階第1ゾーン61と1階第2ゾーン62とは、別々のゾーンとして構成される。また、1階第1ゾーン61には、開口部が複数設けられており、開口部には窓が納められている。
【0093】
1階の第1ゾーン61のLDK611の東側の2つの開口部611a、611bのうち、南側の開口部611bには、断熱性能及び遮熱性能を有するハニカムスクリーン81を設置している。1階第1ゾーン61のLDK611の南側の2つの開口部611c,611dのうち、西側の開口部611cには、断熱性能及び遮熱性能を有するハニカムスクリーン81を設置している。1階第1ゾーン61のLDK611の南側の2つの開口部611c,611dのうち、東側の開口部611dには、遮熱性能を有するスクリーン82を設置している。
【0094】
2階70において、2階第1ゾーン71の北側の開口部711及び東側の開口部712には、遮熱性能を有するスクリーン82を設置している。2階第2ゾーン72の南側の開口部721及び西側の開口部722には、遮熱性能を有するスクリーン82を設置している。
【0095】
空調システム30Aは、1台の空調機(図示せず)と、各ゾーン61,62,63,71,72,73,74に向けて配管されるダクト(図示せず)と、各ゾーン61,62,63,71,72,73,74に配置される給気口33と、を有する。
【0096】
1階第1ゾーン61のLDK611(Living Dining Kitchen)には、3つの給気口33が配置されている。1階第2ゾーン62、1階第3ゾーン63、2階第1ゾーン71、2階第2ゾーン72、2階第3ゾーン73及び2階第4ゾーン74には、それぞれ、1つの給気口33が配置される。上記住宅1において、空調システム30により、1台の空調機(図示せず)は、所定の空調能力により運転されている。
【0097】
実施例の空調設計仕様提案システム50(
図2参照)においては、空調負荷率算出部521は、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する。空調負荷は、例えば、
図3に示すインプット内容を入出力装置55の入力部551に入力することで算出される。空調能力は、例えば、給気口の数や開口径を入出力装置55の入力部551に入力することで算出される。空調負荷率算出部521は、算出された空調負荷及び空調能力に基づいて、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する。これにより、
図7に示すグラフのように、対策前において、各ゾーン毎の空調負荷率を算出できる。
【0098】
図7に示す各ゾーンの空調負荷率において、空調負荷率が100%を超えているゾーンとして、吹き抜けでつながって一体化した1階第1ゾーン61及び2階第4ゾーン74が存在する。また、下記表3に示すように、第2判定部523により判定される各ゾーン間の時間毎のバラツキが所定範囲内(例えば判定閾値が30pt以内)にないゾーンとして、吹き抜けつながって一体化した1階第1ゾーン61及び2階第4ゾーン74(空調負荷率の最大差が36pt)が存在する。
【0099】
【0100】
また、下記表4に示すように、第2判定部523により判定される各ゾーン間のバラツキが所定範囲内(例えば判定閾値が45pt以内)にないゾーンとして、冷房9時(76pt)、冷房13時(65pt)、冷房16時(59pt)、暖房6時(75pt)がある。なお、本実施例においては、第2判定部523により各ゾーン間のバラツキが所定範囲内にあるか否かを判定する場合には、1階第2ゾーン62(ユーティリティー)が住宅1Aにおいて居室でないため、1階第2ゾーン62(ユーティリティー)を含めずに、各ゾーン間のバラツキを判定している。
【0101】
【0102】
空調負荷率が所定の条件を満たしていないゾーンが存在するため、入出力装置55の表示部552には、空調設計仕様の提案事項が表示される。本実施形態においては、例えば、入出力装置55の表示部552には、空調設計仕様の提案事項として、
図8に示すように、1階60の1階第1ゾーン61と1階第2ゾーン62との間において、1階第1ゾーン61と2階第4ゾーン74とが吹き抜けでつながっていることに加え、ドア614を開放することで1階第2ゾーン62もつなげて、1階第1ゾーン61と2階第4ゾーン74と1階第2ゾーン62とを一つの空間に変更することや、1階60の1階第1ゾーン61の南側の開口部611cに設けられたハニカムスクリーン81Aを断熱性能を有しかつ高い遮熱性能のものに変更することや、1階60の1階第1ゾーン61の東側の壁部84の基礎断熱の立ち上がり部分の厚さを、50mmから100mmに変更することが表示された。これらの提案事項に基づいて、使用者は住宅の空調に関する事項を改善できる。
【0103】
このように変更した対策後において、再度、空調負荷率算出部521により、空調負荷を空調能力で除算した空調負荷率を各ゾーン毎に算出する。対策後において、
図9に示すグラフのように、各ゾーン毎の空調負荷率を算出できる。
【0104】
図9に示す各時間における各ゾーンの空調負荷率において、空調負荷率が100%を超えているゾーンが存在しなくなった。また、下記表5に示すように、空調負荷率の各ゾーン間の時間毎のバラツキが所定範囲内(例えば判定閾値が30pt以内)にないゾーンが存在しなくなった。
【0105】
【0106】
また、下記表6に示すように、改善後において、各ゾーン間のバラツキが所定範囲内にあるゾーンとして、冷房9時(45pt)、冷房16時(45pt)があり、各ゾーン間のバラツキが所定範囲内にないゾーンとして、冷房13時(47pt)、暖房6時(58pt)がある。そのため、空調負荷率の各ゾーン間のバラツキが所定範囲内(例えば判定閾値45pt以内)にないゾーンは、改善前よりも少なくなり、各ゾーン間のバラツキが低減する方向に改善された。
【0107】
【符号の説明】
【0108】
1,1A 住宅、30,30A 空調システム、50 空調負荷率算出部、523 第2判定部(判定部)、524 提案事項出力部