(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ガス化装置
(51)【国際特許分類】
C10J 3/72 20060101AFI20241205BHJP
C10J 3/00 20060101ALI20241205BHJP
F23G 5/027 20060101ALI20241205BHJP
F27B 7/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C10J3/72 J
C10J3/00 J
F23G5/027 Z
F27B7/04
(21)【出願番号】P 2020151482
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019163618
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 枝里子
(72)【発明者】
【氏名】平間 道郎
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-021067(JP,A)
【文献】特開2013-209527(JP,A)
【文献】特開昭53-031703(JP,A)
【文献】特開2007-303737(JP,A)
【文献】特開2006-169309(JP,A)
【文献】特開2008-111016(JP,A)
【文献】特開2014-058600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/72
C10J 3/00
F23G 5/027
F27B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物をガス化するガス化装置であって、
横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、
前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを
、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部と、
を備え
、
前記中間制限部が、前記回転筒状部の内周面から突出する環状部材であることを特徴とするガス化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化装置であって、
前記改質部が、前記チャーを前記軸方向に送るガイド部を備え、
前記ガイド部が、
前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記供給口側に向かって送る第1ガイド構造と、
前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記排出口側に向かって送る第2ガイド構造と、
を備えることを特徴とするガス化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス化装置であって、
前記排出口の近傍において前記回転筒状部の内周面から突出する排出側環状部をさらに備え
、
前記回転筒状部の下端部において、前記排出側環状部が形成する堰の上端の上下方向における位置が、前記中間制限部が形成する堰の上端の位置以下であることを特徴とするガス化装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載のガス化装置であって、
前記供給口の近傍において前記回転筒状部の内周面から突出する供給側環状部をさらに備え
、
前記回転筒状部の下端部において、前記中間制限部が形成する堰の上端の上下方向における位置が、前記供給側環状部が形成する堰の上端の位置以下であることを特徴とするガス化装置。
【請求項5】
被処理物をガス化するガス化装置であって、
横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、
前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部と、
を備え、
前記中間制限部が、前記回転筒状部の内周面
から突出するとともに、前記内周面上において周方向に部分的に設けられる部材であることを特徴とするガス化装置。
【請求項6】
被処理物をガス化するガス化装置であって、
横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、
前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部と、
を備え、
前記熱分解部が、前記回転筒状部の所定の回転角度範囲において前記チャーを前記改質部側に向かって送るガイド部を備え、
前記中間制限部が、前記ガイド部により送られる前記チャーに衝突するように、前記回転筒状部の内周面
から突出するとともに、前記内周面上において周方向に部分的に設けられる部材であることを特徴とするガス化装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載のガス化装置であって、
前記中間制限部の前記熱分解部側において前記中間制限部に接触または近接して設けられ、前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを掻き上げるリフト部をさらに備えることを特徴とするガス化装置。
【請求項8】
被処理物をガス化するガス化装置であって、
横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、
前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部と、
を備え、
前記熱分解部および前記改質部の少なくとも一方が、
前記チャーを前記軸方向に送るガイド部と、
移動制限部と、
を備え、
前記少なくとも一方が設けられる前記軸方向の範囲において、前記回転筒状部の外周面に対して、前記供給口側から前記排出口側に向かって温度が漸次高くなる加熱が行われており、
前記ガイド部が、
前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記供給口側に向かって送る第1ガイド構造と、
前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記排出口側に向かって送る第2ガイド構造と、
を備え、
前記移動制限部により、前記チャーの前記供給口側への移動、および、前記排出口側への移動が制限されることを特徴とするガス化装置。
【請求項9】
被処理物をガス化するガス化装置であって、
横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、
前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、
前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、
前記軸方向における少なくとも所定の範囲において、前記回転筒状部の外周面に対して、前記供給口側から前記排出口側に向かって温度が漸次高くなる加熱が行われており、
前記チャーを、前記回転筒状部の回転に伴って、前記軸方向における前記所定の範囲にて前記供給口側に向かって送る第1ガイド構造と、
前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記軸方向における前記所定の範囲にて前記排出口側に向かって送る第2ガイド構造と、
前記軸方向における前記所定の範囲内に設けられ、前記チャーの前記供給口側への移動、および、前記排出口側への移動を制限する移動制限部と、
を備え、
前記移動制限部が、前記回転筒状部の内周面から突出する部材であることを特徴とするガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中心軸を中心として回転する回転筒状部(ロータリーキルン)の内部において、バイオマス等の被処理物を加熱することにより、熱分解ガスおよびチャーを生成するガス化装置が用いられている。また、当該回転筒状部の内部において、さらに水蒸気改質を行う手法も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような装置では、改質用の装置を個別に製造する場合に比べて、装置の製造コストの削減、および、エネルギー効率の向上を図ることが可能である。
【0003】
なお、特許文献2では、乾燥ゾーンと熱分解ゾーンとを設けた外熱キルン炉において、熱分解ゾーンの入口側端部の近傍位置の内面に、堰を取り付ける手法が開示されている。当該キルン炉では、乾燥ゾーンでの廃棄物の滞留時間を堰の高さで調整することが可能である。また、特許文献3では、傾斜させた回転円筒体の上方より粉体を注入し、その下方より粉体を取り出す移動床装置において、円筒体内に複数の仕切り板が設けられ、各仕切り板の一端に円弧状の切り欠きが形成される。複数の仕切り板において、切り欠きの位置が交互に互い違いに配置されることにより、粉体の滞留時間が増加し、気体のショートパスが減少される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4547244号公報
【文献】特開2008-249212号公報
【文献】特開平8-80431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転筒状部の内部において、熱分解ガスおよびチャーを生成し、さらに水蒸気改質を行って改質ガスを生成するガス化装置では、改質ガスの生成量を増大することが求められる(改質触媒を用いる場合も同様)。改質ガスの生成量を増大するには、被処理物のガス化率を向上する必要がある。また、ガス化装置では、エネルギー効率を向上することも常に求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、被処理物のガス化率、または、ガス化装置におけるエネルギー効率を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被処理物をガス化するガス化装置であって、横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部とを備え、前記中間制限部が、前記回転筒状部の内周面から突出する環状部材である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガス化装置であって、前記改質部が、前記チャーを前記軸方向に送るガイド部を備え、前記ガイド部が、前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記供給口側に向かって送る第1ガイド構造と、前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記排出口側に向かって送る第2ガイド構造とを備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のガス化装置であって、前記排出口の近傍において前記回転筒状部の内周面から突出する排出側環状部をさらに備え、前記回転筒状部の下端部において、前記排出側環状部が形成する堰の上端の上下方向における位置が、前記中間制限部が形成する堰の上端の位置以下である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のガス化装置であって、前記供給口の近傍において前記回転筒状部の内周面から突出する供給側環状部をさらに備え、前記回転筒状部の下端部において、前記中間制限部が形成する堰の上端の上下方向における位置が、前記供給側環状部が形成する堰の上端の位置以下である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、被処理物をガス化するガス化装置であって、横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部とを備え、前記中間制限部が、前記回転筒状部の内周面から突出するとともに、前記内周面上において周方向に部分的に設けられる部材である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、被処理物をガス化するガス化装置であって、横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部とを備え、前記熱分解部が、前記回転筒状部の所定の回転角度範囲において前記チャーを前記改質部側に向かって送るガイド部を備え、前記中間制限部が、前記ガイド部により送られる前記チャーに衝突するように、前記回転筒状部の内周面から突出するとともに、前記内周面上において周方向に部分的に設けられる部材である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のガス化装置であって、前記中間制限部の前記熱分解部側において前記中間制限部に接触または近接して設けられ、前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを掻き上げるリフト部をさらに備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、被処理物をガス化するガス化装置であって、横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記改質部との間に設けられ、前記熱分解部と前記改質部との間における前記チャーの移動を制限する中間制限部とを備え、前記熱分解部および前記改質部の少なくとも一方が、前記チャーを前記軸方向に送るガイド部と、移動制限部とを備え、前記少なくとも一方が設けられる前記軸方向の範囲において、前記回転筒状部の外周面に対して、前記供給口側から前記排出口側に向かって温度が漸次高くなる加熱が行われており、前記ガイド部が、前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記供給口側に向かって送る第1ガイド構造と、前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記排出口側に向かって送る第2ガイド構造とを備え、前記移動制限部により、前記チャーの前記供給口側への移動、および、前記排出口側への移動が制限される。
【0015】
請求項9に記載の発明は、被処理物をガス化するガス化装置であって、横方向を向く中心軸を中心とする筒状であり、前記中心軸に平行な軸方向における一方側の端部に供給口が設けられ、他方側の端部に排出口が設けられ、前記中心軸を中心として回転する回転筒状部と、前記回転筒状部の内部において前記供給口側に設けられ、前記供給口から供給される被処理物の加熱により、熱分解ガスおよびチャーを生成する熱分解部と、前記回転筒状部の内部において前記熱分解部と前記排出口との間に設けられ、前記熱分解部から送られる前記熱分解ガスおよび前記チャーを、水蒸気または改質触媒により改質することにより、改質ガスを生成する改質部と、前記軸方向における少なくとも所定の範囲において、前記回転筒状部の外周面に対して、前記供給口側から前記排出口側に向かって温度が漸次高くなる加熱が行われており、前記チャーを、前記回転筒状部の回転に伴って、前記軸方向における前記所定の範囲にて前記供給口側に向かって送る第1ガイド構造と、前記回転筒状部の回転に伴って、前記チャーを前記軸方向における前記所定の範囲にて前記排出口側に向かって送る第2ガイド構造と、前記軸方向における前記所定の範囲内に設けられ、前記チャーの前記供給口側への移動、および、前記排出口側への移動を制限する移動制限部とを備え、前記移動制限部が、前記回転筒状部の内周面から突出する部材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理物のガス化率、または、ガス化装置におけるエネルギー効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るガス化装置1の構成を示す図である。
図1では、後述の中心軸J1を含む面におけるガス化装置1の断面を示している。ガス化装置1は、外熱式ロータリーキルン(間接加熱式ロータリーキルン)であり、バイオマス等の被処理物をガス化して、燃料ガスである改質ガスを生成する装置である。改質ガスは、例えば、ガスエンジン等での発電に利用される。被処理物は、例えば、一般廃棄物、産業廃棄物、下水汚泥、木質バイオマス等である。
【0019】
ガス化装置1は、回転筒状部21と、外筒部26と、被処理物供給部31と、ガス導入部32と、熱分解部4と、改質部5と、中間制限部25と、制御部(図示省略)とを備える。制御部は、例えば、CPU等を備えるコンピュータであり、ガス化装置1の全体制御を担う。回転筒状部21は、中心軸J1を中心とする筒状であり、例えば金属または合金等により形成される(回転筒状部21内に設けられる他の構成において同様)。典型的には、中心軸J1に垂直な回転筒状部21の断面形状は、円形である。当該断面形状は、ほぼ円形と捉えられる場合には、多角形等であってもよい。
図1の例では、回転筒状部21の中心軸J1は水平または略水平である。ガス化装置1の設計によっては、中心軸J1が水平方向に対して傾斜してもよい。
【0020】
回転筒状部21において、中心軸J1に平行な方向(以下、「軸方向」という。)における一方側の端部開口は供給口211であり、他方側の端部開口は排出口212である。後述するように、回転筒状部21の内部では、供給口211から排出口212に向かって熱分解部4、中間制限部25および改質部5が順に設けられる。回転筒状部21の内部において供給口211の近傍には、供給側環状部23が設けられる。供給側環状部23は、中心軸J1を中心とする周方向の全周に亘って回転筒状部21の内周面から突出する環状部材である。回転筒状部21の内周面からの供給側環状部23の高さ(回転筒状部21の内周面に垂直な方向における供給側環状部23の内周面の高さ)は、全周に亘ってほぼ一定である。
【0021】
回転筒状部21の内部において排出口212の近傍には、排出側環状部24が設けられる。排出側環状部24は、周方向の全周に亘って回転筒状部21の内周面から突出する環状部材である。回転筒状部21の内周面からの排出側環状部24の高さ(回転筒状部21の内周面に垂直な方向における排出側環状部24の内周面の高さ)は、排出口212に近づくに従って漸次小さくなる。すなわち、排出側環状部24の内周面は、排出口212に近づくに従って直径が大きくなる円錐台面である。後述するチャーは、排出側環状部24の内周面により排出口212へと案内される。軸方向の各位置では、排出側環状部24の高さは全周に亘ってほぼ一定である。
【0022】
回転筒状部21の供給口211側の端部には、フランジ部213が設けられる。フランジ部213は、中心軸J1を中心とする円環状の板部材である。フランジ部213の下方には、一対のローラ221が設けられる。一対のローラ221は、
図1の紙面に垂直な方向に離間する。フランジ部213は、一対のローラ221により回転可能に支持される。
【0023】
また、回転筒状部21の外周面において、排出口212側の端部近傍には、フランジ部214が設けられる。フランジ部213と同様に、フランジ部214も、中心軸J1を中心とする円環状の板部材であり、一対のローラ222により回転可能に支持される。ガス化装置1では、モータおよび減速機を有する回転機構22がローラ221に接続されており、回転機構22がローラ221を回転することにより、回転筒状部21が中心軸J1を中心として連続的に回転する。回転筒状部21の回転速度は、例えば一定である。回転筒状部21を回転する構造は適宜変更されてよい。
【0024】
外筒部26は、中心軸J1を中心とする筒状であり、例えば金属または合金等により形成される。外筒部26は、2個のフランジ部213,214の間において回転筒状部21の周囲を囲み、回転筒状部21の外周面との間に筒状空間260を形成する。中心軸J1を中心とする径方向における、回転筒状部21と外筒部26との間の幅、すなわち筒状空間260の幅は、全長に亘ってほぼ一定である。軸方向における外筒部26の両端部には、環状壁261,262が設けられる。各環状壁261,262は、中心軸J1を中心とする円環状の部材であり、外筒部26から回転筒状部21に向かって突出する。環状壁261,262における回転筒状部21側の端面は、例えば摺動部材を介して回転筒状部21の外周面と接する。これにより、環状壁261,262と回転筒状部21との間に、シール構造が形成される。外筒部26は、回転しない固定体である。
【0025】
外筒部26には、流出口263および流入口264が形成される。流出口263は、供給口211側の環状壁261の近傍に設けられ、筒状空間260に接続する。流入口264は、排出口212側の環状壁262の近傍に設けられ、筒状空間260に接続する。流入口264には、所定の熱源流体が供給される。流入口264における熱源流体の温度は、例えば900~1100℃である。熱源流体は、筒状空間260を流れて、流出口263から排出される。筒状空間260を流れる熱源流体により回転筒状部21の外周面が加熱される。なお、ガス化装置1の設計によっては、環状壁261,262の間に、もう1つの環状壁が設けられ、軸方向において筒状空間260が2つの空間に分割されてもよい。この場合、各空間に流入口および流出口が設けられ、熱源流体が当該空間を流れる。例えば、一方の空間は、熱分解部4に対向し、他方の空間は、改質部5に対向する。これにより、熱分解部4および改質部5を個別に加熱することが可能となる。筒状空間260は、3以上の空間に分割されてもよい。
【0026】
被処理物供給部31は、ホッパ311と、スクリューフィーダ312とを備える。ホッパ311には、被処理物が貯留される。スクリューフィーダ312は、回転機構313と、スクリュー314とを備える。スクリュー314は、ホッパ311の内部から回転筒状部21の供給口211まで中心軸J1に沿って延びる。回転機構313は、モータおよび減速機を有し、スクリュー314を回転する。これにより、ホッパ311内の被処理物が供給口211から回転筒状部21の内部に供給される。被処理物供給部31による回転筒状部21内への被処理物の供給は、連続的であっても、断続的であってもよい。スクリュー314のスクリュー軸315は中空である。スクリュー軸315の中空部には、後述の導入管321が設けられる。導入管321は、中心軸J1に沿って延びる。
【0027】
熱分解部4は、回転筒状部21の内部において供給口211側に設けられる。熱分解部4は、仕切板41と、ガイド部42とを備える。仕切板41は、中心軸J1に平行な板部材であり、中心軸J1上に配置される。中心軸J1に垂直な方向における仕切板41の両端部は、回転筒状部21の内周面に固定される。中心軸J1に沿って見た場合における回転筒状部21の内部空間は、仕切板41により二等分される。仕切板41の板厚(主面間の厚さ)は、比較的大きく、中心軸J1上に貫通孔411が設けられる。貫通孔411内には、既述の導入管321が挿入される。
【0028】
ガイド部42は、複数の線状突起421を備える。一部の線状突起421は、仕切板41の一方の主面から突出し、残りの線状突起421は、仕切板41の他方の主面から突出する。仕切板41の各主面に設けられる線状突起421は、互いに平行である。
図1の例では、全ての線状突起421が、軸方向に対して傾斜した同一方向に延びる。
図1では、実線で示す仕切板41を中心軸J1を中心として180度回転させた場合に、手前側に配置される線状突起421を二点鎖線で示している。二点鎖線の線状突起421の傾斜方向は、実線の線状突起421の傾斜方向と逆向き(中心軸J1に対して反転した方向)となる。
【0029】
仕切板41は、回転筒状部21の回転に伴って、中心軸J1を中心として回転する。仕切板41の回転において、仕切板41の一方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上の被処理物(後述のチャーを含む。)が線状突起421により供給口211側へと送られる。当該被処理物は、回転筒状部21の下端部(軸方向に垂直な断面における下端の部位)において供給側環状部23と衝突し、仕切板41の近傍に留まる。仕切板41の当該主面上の線状突起421は、被処理物を供給口211側に向かって送る第1ガイド構造である。また、仕切板41の他方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上の被処理物が線状突起421により供給口211とは反対側(排出口212側)へと送られる。当該被処理物は、後述の中間制限部25と衝突することにより、仕切板41の近傍に留まりやすくなる。仕切板41の当該主面上の線状突起421は、被処理物を排出口212側に向かって送る第2ガイド構造である。以上のように、ガイド部42では、回転筒状部21の一の回転角度範囲において被処理物が供給口211側に向かって送られ、回転筒状部21の他の回転角度範囲において被処理物が供給口211とは反対側に向かって送られる。その結果、軸方向における仕切板41の両端部近傍の間で被処理物が往復(循環)しつつ、熱分解部4において被処理物が滞留する。
【0030】
既述のように、筒状空間260を流れる熱源流体により回転筒状部21は加熱されている。熱分解部4では、被処理物を、例えば400℃以上の温度(好ましくは、700℃以下)で加熱することにより、熱分解が発生し、熱分解ガスおよびチャーが生成される。図示省略の誘引ファン等により排出口212は減圧されており、熱分解ガスは、排出口212に向かって流れる。熱分解ガスは、タールの蒸気(常温で液体となる。)および粉体のチャー等を含んでもよい。熱分解ガスに含まれないチャー(例えば、上記粉体のチャーよりも大きいチャー)は、熱分解部4にて滞留する。被処理物供給部31から被処理物が供給されることにより、熱分解部4にて滞留するチャーの一部は、後述の中間制限部25を超えて改質部5側(排出口212側)へと押し出される。以下の説明では、単に「チャー」という場合は、熱分解ガスに含まれないチャーを意味するものとする。なお、被処理物に不燃物が含まれる場合には、当該不燃物もチャーと共に移動する。
【0031】
図2は、熱分解部4側から中心軸J1に沿って見た場合における中間制限部25を示す図である。既述のように、中間制限部25は、回転筒状部21の内部において熱分解部4と改質部5との間に設けられる。中間制限部25は、環状部材であり、例えば金属またはセラミックにより形成される。中間制限部25の外周縁は、全周に亘って回転筒状部21の内周面に固定される。中間制限部25は、周方向の全周に亘って回転筒状部21の内周面から突出する。回転筒状部21の内周面からの中間制限部25の高さ(回転筒状部21の内周面に垂直な方向における中間制限部25の内周面の高さ)は、全周に亘ってほぼ一定である。
図1の例では、中間制限部25の高さは、供給側環状部23の高さ以下であり、排出側環状部24の高さ以上である。
【0032】
軸方向における中間制限部25の位置では、回転筒状部21の内部における熱分解ガスおよびチャーの経路が、中間制限部25の内側の円形領域に制限される。換言すると、回転筒状部21の下端部において中間制限部25が堰となることにより、熱分解部4から改質部5へのチャーの移動が制限される。既述のように、回転筒状部21の中心軸J1は水平であっても、傾斜してもよく、いずれの場合であっても、回転筒状部21の下端部において、中間制限部25が形成する堰の上端の上下方向における位置が、供給側環状部23が形成する堰の上端の位置以下であることが好ましい。さらに好ましくは、回転筒状部21の下端部において、中間制限部25が形成する堰の上端の上下方向における位置が、供給側環状部23が形成する堰の上端の位置未満である。これにより、熱分解部4において過度な量のチャーが滞留して、被処理物供給部31による被処理物の供給が阻害されることが抑制される。
【0033】
既述のように、改質部5は、回転筒状部21の内部において中間制限部25と排出口212との間に設けられる。改質部5は、例えば熱分解部4と同様の構造を有し、仕切板51と、ガイド部52とを備える。ガイド部52は、複数の線状突起521を備える。一部の線状突起521は、仕切板51の一方の主面から突出し、残りの線状突起521は、仕切板51の他方の主面から突出する。仕切板51の回転において、仕切板51の一方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上のチャーが線状突起521により熱分解部4側(供給口211側)へと送られる。このとき、回転筒状部21の下端部において中間制限部25が堰となることにより、中間制限部25と改質部5との間の空間においてある程度の量のチャーが滞留する。仕切板51の当該主面上の線状突起521は、チャーを供給口211側に向かって送る第1ガイド構造である。また、仕切板51の他方の主面の向きが上方から下方に切り替わる際に、当該主面上のチャーが線状突起521により熱分解部4とは反対側(排出口212側)へと送られる。このとき、回転筒状部21の下端部において排出側環状部24が堰となることにより、排出側環状部24と改質部5との間の空間においてある程度の量のチャーが滞留する(貯留される)。仕切板51の当該主面上の線状突起521は、チャーを排出口212側に向かって送る第2ガイド構造である。
【0034】
以上のように、ガイド部52では、回転筒状部21の一の回転角度範囲においてチャーが熱分解部4側に向かって送られ、回転筒状部21の他の回転角度範囲においてチャーが熱分解部4とは反対側に向かって送られる。その結果、軸方向における仕切板51の両端部近傍の間でチャーが往復(循環)しつつ、改質部5においてチャーが滞留する。実際には、熱分解部4で生成されたチャーが改質部5に順次供給されるため、余剰のチャーは、排出側環状部24を超えて排出口212から排出される。
【0035】
既述のように、回転筒状部21の中心軸J1は水平であっても、傾斜してもよく、いずれの場合であっても、回転筒状部21の下端部において、排出側環状部24が形成する堰の上端の上下方向における位置が、中間制限部25が形成する堰の上端の位置以下であることが好ましい。さらに好ましくは、回転筒状部21の下端部において、排出側環状部24が形成する堰の上端の上下方向における位置が、中間制限部25が形成する堰の上端の位置未満である。これにより、改質部5において過度な量のチャーが滞留することが抑制される。なお、仕切板51の排出口212側の端部において、回転筒状部21の回転に伴って、チャーを仕切板51の主面上に取り入れる構造が設けられてもよい(仕切板51の熱分解部4側の端部、並びに、仕切板41において同様)。
【0036】
ガス導入部32は、導入管321と、混合ガス供給部326とを備える。既述のように、導入管321は、スクリュー軸315の中空部、および、仕切板41の貫通孔411を貫通する。混合ガス供給部326は、回転筒状部21の外部において導入管321の一端に接続される。回転筒状部21の内部において改質部5の近傍に配置される導入管321の他端には、下方に向かって屈曲する屈曲部が設けられる。屈曲部の先端には、噴出口322が設けられる。例えば、噴出口322は、軸方向に関して中間制限部25と改質部5との間に配置される。好ましいガス化装置1では、噴出口322は、中間制限部25と改質部5との間に滞留するチャー内に位置する。すなわち、導入管321が、中間制限部25と改質部5との間においてチャーに向かって開口する。導入管321では、屈曲部が省略され、噴出口が改質部5に向かって開口してもよい。
【0037】
混合ガス供給部326が、酸素含有ガスおよび水蒸気を含む混合ガスを導入管321に供給することにより、導入管321の噴出口322から混合ガスが噴出される。酸素含有ガスは、例えば空気または酸素富化空気であり、本実施の形態では、予熱された高温の空気である。混合ガスの温度は、例えば200~300℃である。混合ガスは、噴出口322からチャー内に噴出される。改質部5では、排出口212に向かって流れる熱分解ガスと、混合ガスおよびチャーとが混合(攪拌)される。これにより、熱分解ガスに含まれる可燃性のガスや、タールの蒸気が部分燃焼する(すなわち、一部の熱分解ガスが燃焼する。)。また、チャーも部分燃焼する。なお、酸素含有ガスの加熱および水蒸気の生成には、ガス化装置1で生成される改質ガスや、改質ガスを利用するガスエンジンの排ガス等の熱が用いられてよい。
【0038】
熱分解ガスおよびチャーの部分燃焼により、改質部5を流れる熱分解ガス、および、仕切板51の周囲のチャーが高温となっている。また、混合ガスには、水蒸気が含まれる。その結果、熱分解ガスに含まれる炭化水素ガス等が、水蒸気改質反応により、水素(H2)や一酸化炭素(CO)等のガスに転換される(すなわち、水蒸気改質される)。熱分解ガスに含まれるタールおよび粉体のチャー、並びに、仕切板51の周囲のチャーも、水蒸気改質される。なお、仕切板51の周囲に、十分な量のチャーが存在している場合には、改質部5を流れる熱分解ガスの一部のタール、および、粉体のチャーが、仕切板51の周囲のチャーの細孔等に捕集(トラップ)される。
【0039】
以上のように、熱分解部4から熱分解ガスおよびチャーが送られる改質部5では、熱分解ガスの部分燃焼を伴って熱分解ガスおよびチャーを水蒸気改質することにより、改質ガスが生成される。改質部5における熱分解ガスおよびチャーの温度は、例えば700℃以上であり、好ましくは800℃以上であり、より好ましくは900℃以上である。当該温度は、例えば1100℃以下である。改質ガスは、排出口212を介して回転筒状部21から排出される。
【0040】
排出口212には、分離部33が接続される。分離部33は、鉛直方向に延びる管である。分離部33では、改質ガスは上方に向かって流れ、例えば、ボイラ等を通過した後、ガスエンジン等に供給される。また、排出口212から排出された余剰のチャーは、分離部33において下方に向かって落下し、回収される。分離部33の下部は、チャー回収部である。なお、チャー回収部では、不燃物等、チャー以外の物質も回収される。
【0041】
以上に説明したように、ガス化装置1では、回転筒状部21の内部において、供給口211側に熱分解部4が設けられ、熱分解部4と排出口212との間に改質部5が設けられる。また、熱分解部4と改質部5との間に中間制限部25が設けられ、中間制限部25により、熱分解部4と改質部5との間におけるチャーの移動が制限される(すなわち、チャーの移動量が制限される)。これにより、熱分解部4におけるチャーの滞留時間を長くすることができ、被処理物のガス化率(被処理物がガス化される割合)を向上することができる。
【0042】
また、ガス化装置1の改質部5では、軸方向における仕切板51の両端部近傍の間でチャーを往復させつつ、チャーの水蒸気改質が行われる。これにより、ガス化装置1における被処理物のガス化率をさらに向上することが可能となる。
【0043】
ここで、中間制限部25を省略した比較例のガス化装置を想定する。比較例のガス化装置では、ガイド部52により高温のチャーが熱分解部4へと戻されてしまい、熱分解部4および改質部5の温度が均一化される。熱分解部4における熱分解ガスおよびチャーの生成では、水蒸気改質が行われる改質部5ほどの高い温度は必要ではない。したがって、比較例のガス化装置では、熱分解ガスの部分燃焼により生じた熱が熱分解部4の不必要な昇温に用いられ、ガス化装置におけるエネルギー効率が低下してしまう。
【0044】
これに対し、
図1のガス化装置1では、熱分解部4と改質部5との間の中間制限部25により、改質部5における高温のチャーが熱分解部4に戻されることが抑制される。その結果、熱分解部4の温度が不必要に高くなることを防止または抑制して(すなわち、熱分解部4の温度が改質部5に比べて低くなる好ましい温度分布を実現して)、ガス化装置1におけるエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0045】
ガス化装置1では、回転筒状部21の下端部において、排出側環状部24が形成する堰の上端の上下方向における位置が、中間制限部25が形成する堰の上端の位置以下である。これにより、改質部5において過度な量のチャーが滞留することを防止または抑制することができる。また、回転筒状部21の下端部において、中間制限部25が形成する堰の上端の上下方向における位置が、供給側環状部23が形成する堰の上端の位置以下である。これにより、熱分解部4において過度な量のチャーが滞留して、被処理物供給部31による被処理物の供給が阻害されることを抑制することができる。
【0046】
図3および
図4は、ガス化装置1の他の例を示す図である。
図3および
図4のガス化装置1では、
図1および
図2のガス化装置1と比較して、中間制限部25aの形状が相違する。他の構成は、
図1および
図2のガス化装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0047】
図4に示すように、中間制限部25aは、略半円形状の板部材(邪魔板)である。既述のように、
図3の熱分解部4のガイド部42では、回転筒状部21の所定の回転角度範囲においてチャーが改質部5側に向かって送られる。中間制限部25aは、ガイド部42により改質部5側に向かって送られるチャーに衝突するように、回転筒状部21の内周面上において周方向に部分的に設けられる。これにより、熱分解部4から改質部5に向かうチャーの移動がより確実に制限される。好ましくは、中間制限部25aは、改質部5のガイド部52により熱分解部4側に向かって送られるチャーにも衝突する。これにより、改質部5から熱分解部4に向かうチャーの移動がより確実に制限される。回転筒状部21の内周面からの中間制限部25aの最大高さLは、例えば、排出側環状部24の高さ以上である。中間制限部25aの最大高さLは、供給側環状部23の高さ以上であってもよい。
【0048】
ところで、中間制限部25が環状部材である
図1および
図2のガス化装置1では、中間制限部25の熱分解部4側に存在する比較的重い金属灰等が、中間制限部25を超えることができず、長時間に亘って滞留する可能性がある。これに対し、
図3および
図4のガス化装置1では、中間制限部25aが、回転筒状部21の内周面上において周方向に部分的に設けられる。これにより、周方向において中間制限部25aが設けられていない範囲が回転筒状部21の下端部に位置する際に、金属灰等が改質部5へと移動可能となり、中間制限部25aの熱分解部4側において金属灰等が長時間に亘って滞留することを抑制することができる。
【0049】
図5に示すように、中間制限部25bが、周方向に部分的に設けられる複数の部材251であってもよい。当該複数の部材251は、回転筒状部21の内周面上において周方向に隙間を空けて配列される。部材251間の隙間が回転筒状部21の下端部に位置する際に、金属灰等が改質部5へと移動可能となる。
図5の中間制限部25bでは、一部の部材251が、ガイド部42により改質部5側に向かって送られるチャー(並びに、ガイド部52により熱分解部4側に向かって送られるチャー)に衝突する位置に配置される。また、
図1および
図2の中間制限部25において、回転筒状部21の内周面からの高さが他の部位よりも低くなる切欠き部や、中間制限部25を貫通する開口部等を設けることにより、熱分解部4における金属灰等の滞留を抑制することも可能である。
【0050】
図6および
図7は、ガス化装置1の他の例を示す図である。
図6および
図7のガス化装置1では、
図1および
図2のガス化装置1に対して、リフト部29が追加される。他の構成は、
図1および
図2のガス化装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0051】
リフト部29は、中間制限部25の熱分解部4側に設けられる。リフト部29は、複数のリフト部材291を備える。複数のリフト部材291は、例えば、周方向に等角度間隔で配置される。各リフト部材291は板状であり、その主面が軸方向に略平行な姿勢で、回転筒状部21の内周面から中心軸J1に向かって突出する。
図6および
図7の例では、回転筒状部21の内周面からのリフト部材291の高さは、中間制限部25とほぼ同じである。リフト部材291の高さは、中間制限部25よりも高くてもよく、低くてもよい。リフト部材291は、中間制限部25に接触する。リフト部材291と中間制限部25との間に僅かな隙間が設けられた状態、すなわち、リフト部材291が中間制限部25に近接した状態であってもよい。中間制限部25の熱分解部4側に存在するチャーは、回転筒状部21の回転に伴って、リフト部材291により掻き上げられる。
【0052】
既述のように
図1および
図2のガス化装置1では、中間制限部25の熱分解部4側に存在する比較的重い金属灰等が、中間制限部25を超えることができず、長時間に亘って滞留する可能性がある。これに対し、
図6および
図7のガス化装置1では、中間制限部25の熱分解部4側において中間制限部25に接触または近接するリフト部29が設けられ、回転筒状部21の回転に伴って、リフト部29によりチャーが掻き上げられる。これにより、チャーと共に金属灰等が掻き上げられ、金属灰等が中間制限部25を超えて改質部5へと移動しやすくなる。すなわち、中間制限部25の熱分解部4側において金属灰等が長時間に亘って滞留することを抑制することができる。
【0053】
リフト部29におけるリフト部材291の形状は、様々に変更されてよく、例えば、
図8に示すように、スクリュー型であってもよい。リフト部29は、複数のリフト部材291を含むことが好ましいが、リフト部29の設計によっては、1つのリフト部材291のみが設けられてもよい。回転筒状部21の回転に伴ってチャーを掻き上げることが可能であるならば、リフト部材291は板状以外の形状であってもよい。また、
図3および
図4の中間制限部25a、および、
図5の中間制限部25bに対してリフト部29が設けられてもよい。排出側環状部24に対してリフト部29が設けられてもよい。
【0054】
図9は、ガス化装置1の他の例を示す図である。
図9のガス化装置1では、
図1および
図2のガス化装置1に対して、複数の移動制限部27が追加される。他の構成は、
図1および
図2のガス化装置1と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0055】
複数の移動制限部27は、熱分解部4に設けられる。
図9の例では、2個の移動制限部27が設けられており、一方の移動制限部27は、仕切板41の供給口211側の端部に設けられる。他方の移動制限部27は、軸方向における仕切板41の略中央に設けられる。
図9に示す各移動制限部27の形状および材料は、
図2の中間制限部25と略同じである。すなわち、移動制限部27は、環状部材であり、例えば金属またはセラミックにより形成される。移動制限部27の外周縁は、全周に亘って回転筒状部21の内周面に固定される。移動制限部27は、周方向の全周に亘って回転筒状部21の内周面から突出する。回転筒状部21の内周面からの移動制限部27の高さは、全周に亘ってほぼ一定である。
図9の例では、移動制限部27の高さは、中間制限部25と略同じである。
【0056】
既述のように、熱分解部4では、チャーを軸方向に送るガイド部42が設けられる。ガイド部42では、仕切板41の一方の主面に設けられる線状突起421(第1ガイド構造)により、回転筒状部21の回転に伴って、チャーが供給口211側に向かって送られる。また、仕切板41の他方の主面に設けられる線状突起421(第2ガイド構造)により、回転筒状部21の回転に伴って、チャーが排出口212側に向かって送られる。このように、チャーを供給口211側に向かって送る第1ガイド構造、および、チャーを排出口212側に向かって送る第2ガイド構造により、熱分解部4において、チャーを循環させ、チャーの反応時間(滞留時間)を長くすることが可能となる。また、軸方向における移動制限部27の位置では、回転筒状部21の内部における熱分解ガスおよびチャーの経路が、移動制限部27の内側の円形領域に制限される。換言すると、回転筒状部21の下端部において移動制限部27が堰となることにより、チャーの排出口212側への移動、および、供給口211側への移動がある程度制限される。
【0057】
ところで、ガス化装置1において筒状空間260を流れる熱源流体では、チャー等との熱交換により、流入口264から流出口263に向かって温度が漸次低くなる。換言すると、回転筒状部21の外周面に対して供給口211側から排出口212側に向かって温度が漸次高くなる外部加熱が行われている。熱分解部4に移動制限部27が設けられないガス化装置1(
図1参照)では、熱分解部4において、改質部5側(排出口212側)の端部近傍に位置して比較的高温となったチャーと、供給口211側の端部近傍に位置して比較的低温であるチャー(被処理物を含む。)とが過度に混合され、熱分解部4の全体において温度が均一化される場合がある。ガス化装置1においてエネルギー効率のよい熱交換(間接加熱)を実現するには、チャーと熱源流体との間にある程度の温度差があることが好ましいが、熱分解部4における温度が均一化されたガス化装置1では、熱分解部4の一部(例えば供給口211側の端部近傍)において上記温度差が小さくなる。その結果、外部加熱のエネルギーロスが大きくなり、ガス化装置1におけるエネルギー効率が低下する。
【0058】
これに対し、
図9のガス化装置1では、熱分解部4において、チャーの供給口211側への移動、および、排出口212側への移動を制限する移動制限部27が設けられる。熱分解部4では、改質部5側(排出口212側)の端部近傍に位置して比較的高温となったチャーと、供給口211側の端部近傍に位置して比較的低温であるチャーとが過度に混合されることが、移動制限部27により抑制される(すなわち、チャーの過度な循環が抑制される)。これにより、熱分解部4内のチャーにおいて供給口211側から排出口212側に向かって温度が漸次高くなる温度勾配を生じさせることが可能となる。その結果、熱分解部4のほぼ全体において、チャーと熱源流体との間の温度差が大きくなり、ガス化装置1におけるエネルギー効率を向上することができる。
【0059】
熱分解部4における移動制限部27の個数は、1個であってもよく、3個以上であってもよい。また、熱分解部4における移動制限部27の位置は、適宜変更されてよい。好ましくは、少なくとも1つの移動制限部27が、軸方向において熱分解部4の両端部の間、かつ、当該両端部から離れた位置に設けられる。移動制限部27の高さは、
図2の中間制限部25より大きくてもよく、小さくてもよい。また、移動制限部27および中間制限部25の高さが、供給口211側から排出口212側に向かって、漸次高くされてもよく、漸次低くされてもよい。移動制限部27は、仕切板41に固定(例えば、溶接)されて、回転筒状部21内に設けられてもよい。また、移動制限部27が、回転筒状部21の内周面に直接固定されてもよく、この場合、仕切板41において移動制限部27との干渉を避ける切欠き部が設けられる。軸方向において、仕切板41が複数の板部材に分割して設けられ、隣接する2個の板部材間の隙間に移動制限部27が配置されてもよい。
【0060】
移動制限部27の形状は、適宜変更されてもよい。例えば、
図4の中間制限部25aと同様に、移動制限部27が略半円形状の板部材であってもよい。この場合、移動制限部27は、例えば、ガイド部42(の第1ガイド構造)により供給口211側に向かって送られるチャーに衝突するように、回転筒状部21の内周面上において周方向に部分的に設けられる。移動制限部27は、ガイド部42(の第2ガイド構造)により排出口212側に向かって送られるチャーに衝突するように設けられてもよい。周方向における一部の範囲のみに設けられる移動制限部27では、当該範囲以外の範囲が回転筒状部21の下端部に位置する際に、比較的重い金属灰等が排出口212側へと移動可能となり、移動制限部27の供給口211側において金属灰等が長時間に亘って滞留することを抑制することができる。
【0061】
移動制限部27は、
図5の中間制限部25bと同様に、周方向に部分的に設けられる複数の部材の集合であってもよい。この場合も、当該部材間の隙間が回転筒状部21の下端部に位置する際に、金属灰等が排出口212側へと移動可能となる。好ましくは、一部の部材が、ガイド部42により供給口211側に向かって送られるチャーに衝突する位置に配置され、他の一部の部材が、ガイド部42により排出口212側に向かって送られるチャーに衝突する位置に配置される。環状部材である
図9の移動制限部27において、回転筒状部21の内周面からの高さが他の部位よりも低くなる切欠き部や、移動制限部27を貫通する開口部等を設けることにより、金属灰等の滞留を抑制することも可能である。また、
図7および
図8の中間制限部25と同様に、移動制限部27にリフト部29が設けられ、金属灰等の長時間に亘る滞留が抑制されてもよい。
【0062】
図10に示すように、熱分解部4に加えて、改質部5にも移動制限部27が設けられてもよい。
図10の例では、改質部5において、1つの移動制限部27が、軸方向における改質部5の両端部の間、かつ、当該両端部から離れた位置に設けられる。既述のように、改質部5のガイド部52では、仕切板51の一方の主面上の線状突起521(第1ガイド構造)により、回転筒状部21の回転に伴って、チャーが供給口211側に向かって送られる。また、仕切板51の他方の主面上の線状突起521(第2ガイド構造)により、回転筒状部21の回転に伴って、チャーが排出口212側に向かって送られる。このように、チャーを供給口211側に向かって送る第1ガイド構造、および、チャーを排出口212側に向かって送る第2ガイド構造により、改質部5において、チャーを循環させ、チャーの反応時間(滞留時間)を長くすることが可能となる。
【0063】
このとき、上記移動制限部27では、改質部5におけるチャーの供給口211側への移動、および、排出口212側への移動が制限される。これにより、改質部5(例えば、部分燃焼が行われない改質部5)において、排出口212側の端部近傍に位置して比較的高温となったチャーと、熱分解部4側(供給口211側)の端部近傍に位置して比較的低温であるチャーとが過度に混合されることが抑制される。その結果、改質部5内のチャーにおいて供給口211側から排出口212側に向かって温度が漸次高くなる温度勾配を生じさせることが可能となる。したがって、改質部5のほぼ全体において、チャーと熱源流体との間の温度差が大きくなり、ガス化装置1におけるエネルギー効率を向上することができる。
【0064】
また、移動制限部27は、改質部5のみに設けられてもよい。ガス化装置1では、熱分解部4および改質部5の少なくとも一方が、チャーを軸方向に送るガイド部42,52と、移動制限部27とを備えることにより、ガス化装置1におけるエネルギー効率を向上することが可能となる。既述のように、熱分解部4および改質部5は個別に加熱されてよく、上記の場合には、当該少なくとも一方が設けられる軸方向の範囲において、回転筒状部21の外周面に対して、供給口211側から排出口212側に向かって温度が漸次高くなる加熱が行われていればよい。
【0065】
さらに、移動制限部27を利用したガス化装置1では、改質部5が省略され、熱分解部4による熱分解ガスおよびチャーの生成のみが行われてもよい。移動制限部27によりエネルギー効率を向上するガス化装置1を一般化すると、軸方向における少なくとも所定の範囲において、回転筒状部21の外周面に対して、供給口211側から排出口212側に向かって温度が漸次高くなる加熱が行われる。また、回転筒状部21の回転に伴って、軸方向における当該範囲にてチャーを供給口211側に向かって送る第1ガイド構造と、回転筒状部21の回転に伴って、軸方向における当該範囲にてチャーを排出口212側に向かって送る第2ガイド構造とが設けられる。そして、軸方向における当該範囲内に設けられる移動制限部27により、チャーの供給口211側への移動、および、排出口212側への移動が制限される。なお、
図1、
図3および
図6のガス化装置1では、熱分解部4から改質部5に亘る範囲に第1および第2ガイド構造が設けられ、当該範囲内に設けられる中間制限部25が移動制限部としてチャーの供給口211側への移動、および、排出口212側への移動を制限していると捉えることも可能である。
【0066】
上記ガス化装置1では様々な変形が可能である。
【0067】
熱分解部4および改質部5の構造は、適宜変更されてよい。例えば、回転筒状部21の内周面上に複数の攪拌羽根を設ける等、仕切板41,51を用いない構造が採用されてもよい。
図11の例では、熱分解部4において、複数の攪拌羽根422を含むガイド部42aが設けられる。
図12は、回転筒状部21の内周面を示す展開図である。
図12中の左側が供給口211側であり、右側が排出口212側(改質部5側)である。
【0068】
複数の攪拌羽根422は、軸方向(
図12中の横方向)、および、周方向(
図12中の縦方向)に沿って配列される。各攪拌羽根422は、例えば矩形の平板であり、回転筒状部21の内周面に対して略垂直に固定される。また、攪拌羽根422において当該内周面と接する部位の長手方向が、軸方向に対して傾斜する。軸方向の同じ位置にて周方向に並ぶ攪拌羽根422に注目すると、一部の攪拌羽根422が
図12中の右上に傾斜し、残りの攪拌羽根422が
図12中の右下に傾斜する。したがって、ガイド部42aは、回転筒状部21の回転に伴って、チャーを供給口211側に向かって送る第1ガイド構造である攪拌羽根422と、回転筒状部21の回転に伴って、チャーを排出口212側に向かって送る第2ガイド構造である攪拌羽根422とを有する。
図11および
図12のガス化装置1においても、移動制限部27により、熱分解部4におけるチャーの供給口211側への移動、および、排出口212側への移動が制限される。
【0069】
なお、ガイド部42aでは、
図12中の右上に傾斜する攪拌羽根422と、右下に傾斜する攪拌羽根422とが混在して軸方向および周方向に(規則的にまたは不規則に)配列されてもよい。ガス化装置1では、チャーを供給口211側に送る攪拌羽根422と、排出口212側に送る攪拌羽根422とが軸方向に並んでいてもよい。上記ガイド部42aと同様のガイド部が、改質部5に設けられてもよい。中間制限部25により熱分解部4におけるチャーの滞留時間を長くするガス化装置1では、熱分解部4においてガイド部42,42aが省略されてもよい(改質部5において同様)。
【0070】
図13に示すように、ガス導入部32において、排出口212および改質部5を貫通する導入管321aが設けられてもよい。
図13の例では、導入管321aは、中心軸J1上に配置され、導入管321aの先端(噴出口322)が、軸方向において中間制限部25と改質部5との間に配置される。混合ガス供給部326が、混合ガスを導入管321aに供給することにより、噴出口322から混合ガスが噴出される。これにより、改質部5において、熱分解ガスおよびチャーを適切に水蒸気改質することが可能となる。
【0071】
ガス導入部32では、酸素含有ガスと水蒸気とが異なる(別々の)導入管を介して回転筒状部21の内部に導入されてもよい。改質部5において部分燃焼を効率よく生じさせるには、少なくとも酸素含有ガスを噴出する導入管の噴出口が、改質部5、または、改質部5と熱分解部4との間に配置されることが好ましい。
【0072】
上記実施の形態では、熱分解部4および改質部5の双方において、筒状空間260を流れる熱源流体による間接加熱が行われるが、熱分解ガスの部分燃焼の熱を利用する改質部5では、熱源流体による間接加熱が省略されてもよい。間接加熱のみにより改質部5において必要な温度が確保される場合には、改質部5において部分燃焼が省略されてもよい。また、ガス化装置1を含むシステムでは、例えば、分離部33において回収されたチャーを燃焼することにより得られる熱を、熱分解部4(または改質部5)における被処理物の間接加熱に利用することにより、エネルギー効率を高くすることが可能であるが、システムの設計によっては、被処理物またはチャーの加熱が、電気等により行われてもよい。
【0073】
改質部5では、改質触媒(例えば、ニッケル系改質触媒)を設置して、熱分解ガス中のタールを分解する改質を実施してもよい。改質触媒(例えば、ニッケル系改質触媒)を設置する場合、水蒸気を供給しなくてもよい。
【0074】
ガス化装置1により得られる改質ガスは、ガスエンジン以外に、ガスタービン式、または、燃料電池(固体酸化物形燃料電池(SOFC)等)式の発電装置において用いられてもよい。また、改質ガスは、燃料ガスとして様々な用途に用いられてよく、さらに、液体に変換することにより液体燃料として用いられてもよい。
【0075】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ガス化装置
4 熱分解部
5 改質部
21 回転筒状部
23 供給側環状部
24 排出側環状部
25,25a,25b 中間制限部
27 移動制限部
29 リフト部
42,52 ガイド部
211 供給口
212 排出口
251 (中間制限部を構成する)部材
421,521 線状突起
422 攪拌羽根
J1 中心軸