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特許7598737反射型表示体および光拡散制御シートのロール体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】反射型表示体および光拡散制御シートのロール体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G02B5/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020188091
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077297
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
(72)【発明者】
【氏名】荒添 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/178230(WO,A1)
【文献】特開2014-002187(JP,A)
【文献】特開2014-002188(JP,A)
【文献】特開2002-311432(JP,A)
【文献】特開2013-210409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0235184(US,A1)
【文献】特開2007-187781(JP,A)
【文献】特開2014-126749(JP,A)
【文献】特開2021-092763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02F 1/1335
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面における表示内容の上方向が、初期方向と、それと直交する変更後方向との間で変更可能なように構成された反射型表示体であって、
前記反射型表示体は、光拡散制御層と、前記光拡散制御層の片面側に設けられた表示装置と、前記表示装置における前記光拡散制御層とは反対の面側に設けられた反射層とを備え、
前記光拡散制御層は、製造時に紫外線を照射した面と反対の面に対して、当該面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で前記初期方向と平行な方向に光線を傾けながら照射したときに測定されるヘイズ値(%)が90%以上となる拡散角度幅が、5°以上、80°以下であり、
前記2方向のいずれの場合においても、前記光拡散制御層は、製造時に紫外線を照射した面と反対の面に対して垂直な入射光を照射して、他方の面から透過拡散光を生じさせた場合に、前記透過拡散光の重心として特定される光線を前記光拡散制御層の前記他方の面に投影してなる直線と、前記表示内容の前記初期方向および前記変更後方向とのなす鋭角が、10°以上、80°以下であり、
前記光拡散制御層において前記透過拡散光の重心として特定される前記光線は、前記他方の面をXY平面とする極座標系における極角が10°以上、70°以下である
ことを特徴とする反射型表示体。
【請求項2】
前記光拡散制御層は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の反射型表示体。
【請求項3】
前記規則的内部構造は、前記屈折率が相対的に低い領域中に、前記屈折率が相対的に高い複数の柱状物をシート膜厚方向に林立させてなるカラム構造であることを特徴とする請求項2に記載の反射型表示体。
【請求項4】
前記反射型表示体は、前記光拡散制御層における前記表示装置とは反対の面側に設けられたフロントライトを備え、
前記フロントライトは、前記表示面を覆う導光部材と、前記導光部材に接するとともに、前記表示面の周縁部の少なくとも一部に位置する光源とを備え、
前記光源は、前記表示面を平面視した場合に、前記光源の中心と前記表示面の中心とを通る直線が、前記表示内容の上下方向および左右方向のいずれとも平行とならない位置に存在する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の反射型表示体。
【請求項5】
長尺の光拡散制御シートを巻き取ってなるロール体であって、
前記光拡散制御シートにおける製造時に紫外線を照射した面と反対の面に対して、当該面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度でロール体の流れ方向に光線を傾けながら照射したときに測定されるヘイズ値(%)が90%以上となる拡散角度幅は、5°以上、80°以下であり、
前記光拡散制御シートにおける製造時に紫外線を照射した面と反対の面に対して垂直な入射光を照射して、他方の面から透過拡散光を生じさせた場合に、前記透過拡散光の重心として特定される光線を前記光拡散制御シートの前記他方の面に投影してなる直線と、前記光拡散制御シートの長尺方向とのなす鋭角は、10°以上、80°以下であり、
前記光拡散制御シートにおいて前記透過拡散光の重心として特定される前記光線は、前記他方の面をXY平面とする極座標系における極角が10°以上、70°以下であり、
前記光拡散制御シートは、請求項1~4のいずれか一項に記載の反射型表示体における前記光拡散制御層として使用される
ことを特徴とする光拡散制御シートのロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の入射角度範囲内の入射光を、強く、かつ、光損失が低い状態で透過拡散させることができる光拡散制御層を備える反射型表示体および、そのような光学特性を有する光拡散制御シートのロール体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイ、電子ペーパーなどといった表示体には、反射層を備える反射型表示体に分類されるものがある。このような反射型表示体では、一般的に、室内照明や太陽等の光源や、表示体の表示面側に設けられた光源により反射型表示体の表示面を照らし、これらの光源からの光を反射層によって反射させ、その反射光によって表示の良好な視認を可能にする。
【0003】
反射型表示体では、外部の光源を利用することに起因して、通常、光源と視認者との位置関係が一定とはならない。その結果、光源の位置に依っては視認者に十分な光が到達せず、視認性が低下したり、表示体全体を明るく照明できないという問題が生じ易い。このような問題を解決するために、光拡散板を表示体に組み込むことが考えられる。しかし、一般的な光拡散板を単に組み込むだけでは、良好な視認性を得るために必要な拡散性が十分に得られなかったり、高い拡散を実現しようとすると迷光や後方散乱による光損失が生じ、画像鮮明度が損なわれるという問題がある。これらの問題を解消する観点から、反射型表示体においては、所定の入射角度範囲内の入射光を、強く、かつ、光損失が低い状態で透過拡散させることができる光拡散制御層を、視認者側の表面と反射層との間に設けることが検討されている(例えば、特許文献1)。上記光拡散制御層が存在することにより、反射層にて反射された光は適度に拡散されるものとなり、光源の位置に依存した視認性の低下が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6250648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年のスマートフォンやタブレットの多くには、その表示面の上下方向の姿勢に応じて表示内容の上下方向が切り替わる機能が備わっている。すなわち、表示面の短辺を地面と平行にした場合、表示内容の上下方向が表示面の長辺と平行となるように表示され、表示面の長辺を地面と平行にした場合、表示内容の上下方向が表示面の短辺と平行となるように表示される。
【0006】
このような、表示面における表示内容の上下方向が変更可能なように構成された反射型表示体が前述した光拡散制御層を備えるものである場合、表示内容の上下方向が変更されたときに、明るさが大きく変化し、使用者に違和感を与えるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、表示内容の上下方向が変更された場合でも、明るさの変化が小さく視認者に違和感を与えない反射型表示体、および当該反射型表示体の製造に好適に使用できる光拡散制御シートのロール体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、表示面における表示内容の上下方向が変更可能なように構成された反射型表示体であって、前記反射型表示体は、光拡散制御層と、前記光拡散制御層の片面側に設けられた表示装置と、前記表示装置における前記光拡散制御層とは反対の面側に設けられた反射層とを備え、前記光拡散制御層は、その一方の面に対して、当該面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定されるヘイズ値(%)が90%以上となる拡散角度幅が、5°以上、80°以下であり、前記光拡散制御層は、その一方の面に対して垂直な入射光を照射して、他方の面から透過拡散光を生じさせた場合に、前記透過拡散光の重心として特定される光線を前記光拡散制御層の前記他方の面に投影してなる直線と、前記表示内容の上下方向とのなす鋭角が、7°以上、83°以下であることを特徴とする反射型表示体を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係る反射型表示体は、上述した光拡散制御層を備えることにより、表示内容の上下方向が変更された場合に、明るさの変化が小さく視認者に違和感を与えない。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記光拡散制御層は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有していることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記規則的内部構造は、前記屈折率が相対的に低い領域中に、前記屈折率が相対的に高い複数の柱状物をシート膜厚方向に林立させてなるカラム構造であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明)において、前記反射型表示体は、前記光拡散制御層における前記表示装置とは反対の面側に設けられたフロントライトを備え、前記フロントライトは、前記表示面を覆う導光部材と、前記導光部材に接するとともに、前記表示面の周縁部の少なくとも一部に位置する光源とを備え、前記光源は、前記表示面を平面視した場合に、前記光源の中心と前記表示面の中心とを通る直線が、前記表示内容の上下方向および左右方向のいずれとも平行とならない位置に存在することが好ましい(発明4)。
【0013】
第2に本発明は、長尺の光拡散制御シートを巻き取ってなるロール体であって、前記光拡散制御シートの一方の面に対して、当該面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定されるヘイズ値(%)が90%以上となる拡散角度幅は、5°以上、80°以下であり、前記光拡散制御シートの一方の面に対して垂直な入射光を照射して、他方の面から透過拡散光を生じさせた場合に、前記透過拡散光の重心として特定される光線を前記光拡散制御シートの前記他方の面に投影してなる直線と、前記光拡散制御シートの長尺方向とのなす鋭角は、7°以上、83°以下であることを特徴とする光拡散制御シートのロール体を提供する(発明5)。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る反射型表示体は、表示内容の上下方向が変更された場合でも、明るさの変化が小さく視認者に違和感を与えない。また、本発明に係る光拡散制御シートのロール体は、上記反射型表示体を効率的に製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る反射型表示体の一例の断面図である。
図2】本発明の一実施形態における光拡散制御シートから生じる拡散透過光およびその重心となる光線を説明する斜視図である。
図3】本発明の一実施形態における光拡散制御シートの製造方法の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る光拡散制御シートのロール体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔反射型表示体〕
図1には、本発明の一実施形態に係る反射型表示体の一例の断面図が示される。本実施形態に係る反射型表示体1は、表示面における表示内容の上下方向が変更可能なように構成されたものである。
【0017】
図1に示されるように、反射型表示体1は、光拡散制御層11と、当該光拡散制御層11の片面側に設けられた表示装置13と、当該表示装置13における光拡散制御層11とは反対の面側に設けられた反射層12とを備える。
【0018】
本実施形態における光拡散制御層11は、その一方の面に対して垂直な入射光を照射して、他方の面から透過拡散光を生じさせた場合に、当該透過拡散光の重心として特定される光線を光拡散制御層11の上記他方の面に投影してなる直線(以下、「重心の投影線」という場合がある。)と、表示内容の上下方向とのなす鋭角が、7°以上、83°以下である。
【0019】
ここで、上記鋭角について、図2を用いて、より詳細に説明する。図2は、本実施形態における光拡散制御層11から生じる拡散透過光およびその重心となる光線を説明する斜視図である。図2には、光拡散制御層11の一方の面(紙面では下側の面)から垂直な入射光を照射することにより、他方の面(紙面では上側の面)から拡散透過光Aが生じている様子が描かれている。特に、当該拡散透過光Aは、光線が所定の広がりをもって拡散している様子が模式的に描かれている。
【0020】
このような透過拡散光Aについて、散乱測定器を用いて拡散光分布を測定することができる。当該測定によれば、透過拡散光を構成する個々の光線の方向と、当該光線の強度を得ることができる。さらに、これら光線の方向および強度の情報に基づいて、透過拡散光Aの重心となる光線Bを特定することができる。当該光線Bの方向は、以下に説明する通り、極座標系において、方位角φと極角θとで表すことができる。なお、上述した拡散光分布の測定方法、重心となる光線Bの特定方法、および光線Bの方位角φおよび極角θの特定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0021】
図2には、極座標系を表現するためのX軸、Y軸およびZ軸が描かれている。また、図2には、方向3も描かれている。この方向3は、反射型表示体1を構成した場合に、表示内容の上下方向となる方向である。X軸およびY軸は、いずれも光拡散制御層11の表面上に存在しており、X軸は、方向3に対して平行であり、Y軸は、X軸に直交している。Z軸は、X軸およびY軸に直交している。そして、X軸のプラス方向(紙面では右方向)が、方位角φ=0°(極角θ=90°)となっており、これ基準に反時計回りで、方位角φ=90°、180°および270°となっている。さらに、Z軸のプラス方向が、極角θ=0°となっている。
【0022】
そして、前述した鋭角は、図2の極座標系において表される光線Bの方位角φに基づいて決定することができる。すなわち、方位角φが0°以上、90°以下である場合には、方位角φの角度そのものが前述した鋭角となる。方位角φが90°超、180°未満である場合には、180°から方位角φを減じた角度が前述した鋭角となる。方位角φが180°である場合には、0°が前述した鋭角となる。方位角φが180°超、270°未満である場合には、方位角φから180°を減じた角度が前述した鋭角となる。方位角φが270°である場合には、90°が前述した鋭角となる。方位角φが270°超、360°未満である場合には、360°から方位角φを減じた角度が前述した鋭角となる。
【0023】
このように特定される鋭角が7°以上、83°以下であることで、本実施形態に係る反射型表示体1では、光拡散制御層11による光の拡散の方向が上記鋭角の分だけ傾いたものとなる。それにより、本実施形態に係る反射型表示体1は、後述する通り、表示内容の上下方向の切り替えに対し明るさ変化の少ないものとなる。
【0024】
明るさの変化をより少なくする観点から、前述した鋭角は、10°以上、80°以下であることが好ましく、特に15°以上、75°以下であることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態に係る反射型表示体1は、上述のような明るさ変化を視認者に許容な程度に留めながら、表示内容の明るさを優先するよう調整することもできる。この場合には、前述した重心の投影線と表示内容の上下方向とのなす鋭角、および、前述した重心の投影線と表示内容の左右方向とのなす鋭角のうち、より小さい方の鋭角が、7°以上、45°以下であることが好ましく、8°以上、20°以下であることがより好ましく、特に9°以上、15°以下であることが好ましく、さらには10°以上、13°以下であることが好ましい。
【0026】
なお、光線Bの極角θについては、反射型表示体1における表示をより明るくする観点から、0°超、90°未満である必要がある。同様の観点から、光線Bの極角θは、2°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、特に10°以上であることが好ましく、さらには15°以上であることが好ましい。また、同様の観点から、光線Bの極角θは、70°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましく、特に40°以下であることが好ましく、さらには20°以下であることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る反射型表示体1が表示内容の上下方向の切り替えに対し明るさ変化の少ない理由は、以下のように説明される。図2に示されるように、本実施形態に係る反射型表示体1では、透過拡散光Aが、方向3(表示内容の上下方向)に対して平行でも直交でもない方向に傾いたものとなる。特に、表示の初期の上下方向と、上述した透過拡散光Aの傾きの方向とが、所定の角度(7°以上、83°以下)を有するものとなる。
【0028】
このような反射型表示体1では、初期の上下方向で視認した場合に、反射型表示体1に入射した外光を、光拡散制御層11によって反射光を視認者に向かわせることができ、その結果、視認者が一定の明るさで表示を視認することができる。一方、反射型表示体1の上下方向を変更し、当初の左右方向を新たな上下方向とした場合であっても、同様に光拡散制御層11によって反射光を視認者に向かわせることができ、この場合も視認者が一定の明るさで表示を視認することができる。結果として、本実施形態に係る反射型表示体1は、表示の上下方向を変更した場合でも明るさの差が生じにくいものとなる。
【0029】
本実施形態における光拡散制御層11では、ヘイズ値(%)が90%以上となる拡散角度幅が、5°以上、80°以下である。ここで、当該ヘイズ値は、光拡散制御層11の一方の面に対して、当該面の法線方向を0°として、初期の上下方向に沿って-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定されるものである。上記拡散角度幅が5°以上であると、上下方向を変更した場合の明るさの差異を少ないものとし易くなる。このような観点から、上記拡散角度幅は、10°以上であることが好ましく、特に15°以上であることが好ましく、さらには20°以上であることが好ましく、40°以上であることが最も好ましい。また、上記拡散角度幅が80°以下であると上下方向の明るさを大きいものとし易くなる。このような観点から、上記拡散角度幅は、70°以下であることが好ましく、特に60°以下であることが好ましい。なお、上記の拡散角度幅は、変角ヘイズメーターを使用して測定することができ、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0030】
1.光拡散制御層
本実施形態における光拡散制御層11は、前述した角度に関する条件および上述した拡散角度幅を満たすものである限り、その内部構造や組成等は限定されない。しかしながら、これらの所望の物性を満たし易いという観点からは、光拡散制御層11は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い領域を複数備えた規則的内部構造を有していることが好ましい。
【0031】
(1)規則的内部構造
上述した規則的内部構造とは、屈折率が相対的に低い領域中に、複数の屈折率が相対的に高い領域が所定の規則性をもって配置されてなる内部構造をいうものである。例えば、光拡散制御層11の表面と平行な平面で切断した光拡散制御層11の断面をみた場合に、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い領域が、上記断面内の少なくとも1方向に沿って、同程度のピッチをもって繰り返して配置されてなる内部構造を指す。そして、ここにおける規則的内部構造は、屈折率が相対的に高い領域が光拡散制御層11の厚さ方向に延在してなるものである点で、一方の相が他方の相中に明確な規則性なく存在してなる相分離構造や、海成分中にほぼ球状の島成分が存在してなる海島構造とは区別されるものである。
【0032】
上記の規則的内部構造によれば、光拡散制御層11の表面に対して、所定の入射角度範囲内で入射した入射光を、所定の開き角をもって強く拡散しながら出射させることができる。一方、上記入射角度範囲外の入射となる場合、拡散することなく透過させるか、または、入射角度範囲内の入射光の場合よりも弱い拡散にて出射させることができる。
【0033】
上記規則的内部構造では、屈折率が相対的に高い領域が、光拡散制御層11の一方の面側から他方の面側に向けて延在していることが好ましく、その場合、延在方向に平行な直線が、光拡散制御層11の厚さ方向に対して傾斜していることが好ましい。これにより、本実施形態における光拡散制御層11が、所望の物性を満たし易いものとなる。
【0034】
さらに、上記規則的内部構造は、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をシート膜厚方向に林立させてなるカラム構造であることが好ましく、この場合においても、当該柱状物が、光拡散制御層11の厚さ方向に対して傾斜していることが好ましい。これにより、本実施形態における光拡散制御層11が、所望の物性をさらに満たし易いものとなる。なお、上記傾斜の角度と前述した極角θとは、一定の相関を有するものと推定される。
【0035】
また、上記カラム構造によって生じる上記入射角度範囲内の入射光による拡散光は、光拡散制御層11の表面と平行に造影体を配置する場合、いずれの方向にも広がりを有する、円形状もしくは略円形状(楕円形状など)となる。一方、上記入射角度範囲外の入射光による上記弱い拡散の場合は、三日月状の拡散光となる。
【0036】
上記カラム構造においては、屈折率が相対的に高い領域(柱状物)の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域の屈折率との差が、0.01以上であることが好ましく、特に0.1以上であることが好ましい。上記差が0.01以上であることで、効果的な拡散を行うことが可能となる。なお、上記差の上限は特に限定されず、例えば、0.3以下であってもよい。
【0037】
上述した柱状物は、光拡散制御層11の一方の面から他方の面に向かって、直径が増加する構造を有していることが好ましい。このような構造を有する柱状物は、一方の面から他方の面に向かって直径がほぼ変化しない柱状物と比較して、柱状物の延在方向と平行な光の進行方向を変更させ易くなり、これにより、光拡散制御層11が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0038】
また、柱状物を、光拡散制御層11の表面に平行な面で切断したときの断面における直径の最大値は、0.1μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましい。また、当該最大値は、15μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが好ましい。直径の最大値が上記範囲であることで、光拡散制御層11が効果的に光を拡散させることが可能となる。なお、柱状物の上記断面の形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
【0039】
上述したカラム構造においては、隣接する柱状物間の距離が、0.1μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましい。また、上記距離は、15μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが好ましい。隣接する柱状物間の距離が上記範囲であることで、光拡散制御層11が効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0040】
上述したカラム構造においては、柱状物の延在する直線を光拡散制御層11の一方の表面に投影させた場合に、その投影により得られる直線と、反射型表示体1の表示内容の上下方向とが、平行でも直角でもない所定の角度をなすことが好ましい。当該角度は、前述の方位角φと相関を有するものと推定される。
【0041】
なお、以上のカラム構造の規則的内部構造に係る寸法、柱状物の傾きの方向・角度等は、光学デジタル顕微鏡等を用いてカラム構造の断面を観察することにより測定することができる。
【0042】
本実施形態における光拡散制御層11の規則的内部構造は、上述したカラム構造を変形させた構造であってもよい。例えば、光拡散制御層11は、内部構造として、上述したカラム構造における柱状物が、光拡散制御層11の厚さ方向の途中において屈曲してなる構造を有していてもよい。また、光拡散制御層11は、光拡散制御層11の厚さ方向に傾斜角度の異なる柱状物の領域を2つ以上有するカラム構造であってもよい。
【0043】
(2)組成
本実施形態における光拡散制御層11の組成は、上述したような規則的内部構造を形成し易いという観点から、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する光拡散制御層用組成物を硬化させたものであることが好ましい。特に、高屈折率成分および低屈折率成分は、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものであることが好ましい。
【0044】
(2-1)高屈折率成分
上記高屈折率成分の好ましい例としては、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特に複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等が挙げられる。これらの中でも、良好な規則的内部構造を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、具体的には、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0045】
高屈折率成分の(重量平均)分子量は、2500以下であることが好ましく、特に1000以下であることが好ましい。また、高屈折率成分の(重量平均)分子量は、150以上であることが好ましく、特に250以上であることが好ましい。高屈折率成分の(重量平均)分子量が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなる。なお、上記高屈折率成分が、分子構造に基づいて理論分子量を特定可能である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、当該理論分子量(重量平均分子量ではない分子量)を指すものとする。一方、上記高屈折率成分が、例えば高分子成分であることに起因して、上述した理論分子量が特定困難である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値として得られる重量平均分子量をいうものとする。なお、本明細書における重量平均分子量の測定方法は、当該GPC法により測定した標準ポリスチレン換算の値をいうものとする。
【0046】
高屈折率成分の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、特に1.56以上であることが好ましい。また、高屈折率成分の屈折率は、1.70以下であることが好ましく、特に1.65以下であることが好ましく、さらには1.59以下であることが好ましい。高屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなる。なお、本明細書における屈折率とは、光拡散制御層用組成物を硬化する前における所定の成分の屈折率を意味し、また、当該屈折率は、JIS K0062:1992に準じて測定したものである。
【0047】
光拡散制御層用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、25質量部以上であることが好ましく、特に40質量部以上であることが好ましく、さらには50質量部以上であることが好ましい。また、光拡散制御層用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、特に300質量部以下であることが好ましく、さらには200質量部以下であることが好ましい。高屈折率成分の含有量がこれらの範囲であることで、形成される光拡散制御層11の規則的内部構造において、高屈折率成分に由来する領域と低屈折率成分に由来する領域とが所望の割合で存在するものとなる。その結果、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなる。
【0048】
(2-2)低屈折率成分
上記低屈折率成分の好ましい例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0049】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成されるものであることが好ましい。
【0050】
上述した(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物の好ましい例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましく、特にイソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
【0051】
上述した(b)ポリアルキレングリコールの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0052】
なお、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2300以上であることが好ましく、特に3000以上であることが好ましく、さらには4000以上であることが好ましい。また、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、19500以下であることが好ましく、特に14300以下であることが好ましく、さらには12300以下であることが好ましい。
【0053】
上述した(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
上述した(a)~(c)の成分を材料としたウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って行うことができる。このとき(a)~(c)の成分の配合割合は、ウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成する観点から、モル比にて、(a)成分:(b)成分:(c)成分=1~5:1:1~5の割合とすることが好ましく、特に1~3:1:1~3の割合とすることが好ましい。
【0055】
低屈折率成分の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、特に5000以上であることが好ましく、さらには7000以上であることが好ましい。また、低屈折率成分の重量平均分子量は、20000以下であることが好ましく、特に15000以下であることが好ましく、さらには13000以下であることが好ましい。低屈折率成分の重量平均分子量が上記範囲であることにより、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなる。
【0056】
低屈折率成分の屈折率は、1.59以下であることが好ましく、1.50以下であることがより好ましく、特に1.48以下であることが好ましい。また、低屈折率成分の屈折率は、1.30以上であることが好ましく、特に1.40以上であることが好ましく、さらには1.46以上であることが好ましい。低屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなる。
【0057】
(2-3)その他の成分
前述した光拡散制御層用組成物は、高屈折率成分および低屈折率成分以外に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー(重合性官能基を3つ以上有する化合物)、光重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0058】
上述した添加剤の中でも、光拡散制御層用組成物は、光重合開始剤を含有することも好ましい。光拡散制御層用組成物が光重合開始剤を含有することで、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御層11を効率的に形成し易いものとなる。
【0059】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
光重合開始剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中の光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.2質量部以上とすることが好ましく、特に0.5質量部以上とすることが好ましく、さらには1質量部以上とすることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、特に15質量部以下とすることが好ましく、さらには10質量部以下とすることが好ましい。光拡散制御層用組成物中の光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、光拡散制御層11を効率的に形成し易いものとなる。
【0061】
(2-4)光拡散制御層用組成物の調製
光拡散制御層用組成物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分、ならびに、所望により光重合開始剤等のその他の添加剤を均一に混合することで調整することができる。
【0062】
上記混合の際には、40~80℃の温度に加熱しながら撹拌し、均一な光拡散制御層用組成物を得てもよい。また、得られる光拡散制御層用組成物が所望の粘度となるように、希釈溶剤を添加して混合してもよい。
【0063】
(3)厚さ
本実施形態における光拡散制御層11の厚さは、30μm以上であることが好ましく、特に45μm以上であることが好ましく、さらには60μm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、1000μm以下であることが好ましく、特に500μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。光拡散制御層11の厚さがこのような範囲であることで、反射型表示体1が、より明るい表示を実現し易くなるとともに、表示内容の上下方向を変更した際の表示の明るさの差異をより低減することが可能となる。
【0064】
(4)光拡散制御層の製造方法
本実施形態における光拡散制御層11の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を利用することができる。例えば、工程シートの片面に、前述した光拡散制御層用組成物を塗布し、塗膜を形成した後、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、剥離シートの片面(特に剥離面)を貼合する。続いて、工程シートまたは剥離シート越しに、上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、光拡散制御層11を形成することができる。このように、上記塗膜に剥離シートを積層することにより、剥離シートと工程シートとのギャップを保ち、塗膜が押しつぶされることを抑制して、均一な厚さを有する光拡散制御層11を形成し易いものとなる。
【0065】
上述した光拡散制御層11の形成方法においては、工程シートおよび剥離シートとして長尺のものを使用してもよい。この場合、工程シートを長尺方向に移動させながら、光拡散制御層用組成物の塗布、剥離シートの貼合および活性エネルギー線の照射を順次行い、光拡散制御層11を形成することが好ましい。さらに、このように得られた長尺の光拡散制御層11を巻き取ることでロール体を得てもよい。このとき、必要に応じて芯材に巻き取っても良い。なお、光拡散制御層11の形成と、その後の光拡散制御層11の巻き取りとを連続して行ってもよい。すなわち、流れ方向の上流において、前述したような塗膜の形成やその硬化を行うとともに、流れ方向の下流において、形成された光拡散制御層11の巻き取りを行ってもよい。
【0066】
上述した塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散制御シート用組成物は、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0067】
塗膜を硬化する際には、活性エネルギー線の照射条件を制御することで、本実施形態における光拡散制御層11の前述した物性(特に、重心となる光線Bの方位角φ)を所望の範囲に調整することが可能となる。図3(a)および図3(b)には、塗膜に対して活性エネルギー線を照射する様子の一例が模式的に示されている。特に、図3(a)および図3(b)では、長尺の工程シート上に形成した光拡散制御層用組成物の塗膜を所定の方向(図中、流れ方向4)に移動させながら、当該塗膜に対して活性エネルギー線を照射する様子が描かれている。より具体的には、塗膜10’は、コンベア100上にて、流れ方向4に移送されながら、光学ユニット200からの活性エネルギー線の照射を受ける。図3(a)には、そのような状態を上側から見た様子が表されており、図3(b)には、横から見た断面が表されている。
【0068】
図示されるように、光学ユニット200と塗膜10’との間には、光源からの光を所定の方向に導くための照射光平行化部材300を複数設けることが好ましい。特に、複数の照射光平行化部材300はいずれも、流れ方向4に対して所定の角度(図3(a)中、角度θ)で傾斜させて配置することが好ましい。当該角度θは、所望の方位角φを達成する観点から、10°以上であることが好ましく、特に20°以上であることが好ましく、さらには30°以上であることが好ましい。また、上記角度θは、同様の観点から、80°以下であることが好ましく、特に70°以下であることが好ましく、さらには60°以下であることが好ましい。
【0069】
さらに、図示されるように、光学ユニット200を基準に上流側および下流側には、光学ユニット200からの光やその他の外光を遮るための入口側遮光板401および出口側遮光板402をそれぞれ設けることが好ましい。ここで、入口側遮光板401が途切れて塗膜10’が露出する位置から、光学ユニット200(特に線状光源201)の位置までの距離(図中、dで示される距離)を、所望の方位角φを達成する観点から制御することが好ましい。特に、距離dは、10mm以上であることが好ましく、特に20mm以上であることが好ましく、さらには30mm以上であることが好ましい。また、上記距離dは、1000mm以下であることが好ましく、特に750mm以下であることが好ましく、さらには500mm以下であることが好ましい。
【0070】
上記光学ユニット200は、通常、図3(b)に示されるように、主として線状光源201、集光ミラー202および一対の光源遮光板203を備える。ここで、集光ミラー202および光源遮光板203の向きや位置を調整することで、線状光源201からの照射光の照射角度(図中、θで示される角度)を制御することができる。特に、所望の方位角φを達成する観点から、当該照射角度θを制御することが好ましい。この場合、照射角度θは、1°以上であることが好ましく、特に2°以上であることが好ましく、さらには5°以上であることが好ましい。また、上記照射角度θは、80°以下であることが好ましく、特に70°以下であることが好ましく、さらには60°以下であることが好ましい。
【0071】
なお、上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0072】
活性エネルギー線として紫外線を用い、カラム構造を形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~10mW/cmとすることが好ましい。なお、ここでいうピーク照度とは、塗膜表面に照射される活性エネルギー線が最大値を示す部分での測定値を意味する。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~200mJ/cmとすることが好ましい。
【0073】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような平行光や帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(平行光や帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を照射することも好ましい。
【0074】
2.反射層
本実施形態における反射層12は特に限定されず、一般的な反射型表示体の反射層として使用されるものであってよい。反射層12の好ましい例としては、金属を所定の表面に蒸着させて得られた金属蒸着膜が挙げられる。そのような金属の好ましい例としては、アルミニウム、銀、ニッケル等が挙げられる。
【0075】
上述した金属蒸着膜からなる反射層12の厚さは、特に限定されないものの、例えば、1nm以上であることが好ましく、特に10nm以上であることが好ましく、さらには50nm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、3μm以下であることが好ましく、特に2μm以下であることが好ましく、さらには1μm以下であることが好ましい。
【0076】
上述した金属蒸着膜からなる反射層12は、支持体としての樹脂フィルムの表面に設けられていてもよい。このような樹脂フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0077】
また、本実施形態における反射層12は、反射電極であってもよい。当該反射電極は、例えば、表示装置13内に組み込まれるものであってもよい。反射電極は、通常、反射型表示体1の表示面の全面を覆うように設けられてはおらず、電極が未形成の部分も存在する。そのため、反射電極を備える反射型表示体1では、反射電極によって外光を反射させることができる一方、電極が未形成の部分において、表示装置の背面に設けられたバックライト等の光を透過させることができる。本実施形態における反射層12としての反射電極の材料は特に限定されず、一般的な反射電極の材料によって形成することができる。
【0078】
なお、図1に示される反射型表示体1では、反射層12が、表示装置13から独立した構成要素として描かれており、また、反射層12が、横方向の全域(表示装置13における光拡散制御層11とは反対側の面の全域)に存在するように描かれている。しかしながら、本実施形態に係る反射型表示体1は、図1に示されたものに限定されず、反射層12として上述した反射電極を備えるものも包含するものである。
【0079】
本実施形態における反射層12は、その他にも、光を透過する性質と光を反射する性質との両方を示す半透過半反射性を有する反射層であってもよい。
【0080】
3.表示装置
本実施形態における表示装置13は特に限定されず、一般的な反射型表示体に組み込まれる表示装置であってよい。例えば、表示装置13は、液晶ディスプレイ、電子ペーパー、電気泳動ディスプレイ、MEMSディスプレイ、固体結晶ディスプレイ等が挙げられ、また、これらのディスプレイにさらにタッチパネルが積層されたものであってもよい。
【0081】
4.その他の構成要素
本実施形態における反射型表示体1は、上述した光拡散制御層11、反射層12および表示装置13以外の構成部材を備えていてもよい。
【0082】
例えば、光拡散制御層11における表示装置13とは反対の面側(すなわち、反射型表示体1における視認者の面側)には、フロントライトを設けてもよい。当該フロントライトの例としては、特に限定されないものの、光源と導光部材とを備えるものであることが好ましい。上記導光部材は、光拡散制御層11における表示装置13とは反対面側を覆うように設けられることが好ましい。また、上記光源は、表示面の周縁部の少なくとも一部に設けられるとともに、上記導光部材に接するように設けられることが好ましい。
【0083】
上記導光部材は、光源から照射された光を表示面に導くものである。導光部材の構成としては、このような作用を奏する限り限定されず、例えば、内部にプリズムを構成する凹凸が設けられたものであってもよく、あるいは、光を反射する粒子を含む反射材が塗布されたものであってもよい。
【0084】
また、上記光源の位置は、導光部材を介して表示面に光を照射できる限り限定されず、例えば、表示面の周縁部のうち上側(視認者にとっての上側)の位置に設けてもよい。しかしながら、フロントライトの光を効率良く正面方向に拡散させる観点から、光源は、表示面を平面視した場合に、当該光源の中心と表示面の中心とを通る直線が、表示内容の上下方向および左右方向のいずれとも平行とならない位置に設けることが好ましい。これにより、より明るい画像を表示することが可能となる。
【0085】
上記光源の位置に関し、明るさの観点からは、表示面を平面視した場合に、光源の中心と表示面の中心とを通る直線と、表示内容の上下方向と平行な直線とのなす角度が、0°超、90°未満であることが好ましく、5°以上、85°以下であることがより好ましく、特に10°以上、80°以下であることが好ましく、さらには15°以上、75°以下であることが好ましい。
【0086】
また、上記光源の位置に関し、明るさの観点からは、光拡散制御層11を平面視した場合に、光源の中心と表示面の中心とを通る直線と、前述した光線B(拡散透過光の重心となる光線)を表示面に投影して得られる直線とのなす角度の絶対値が、30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましく、特に10°以下であることが好ましく、さらには5°以下であることが好ましい。
【0087】
フロントライト以外の構成部材としては、光拡散制御層11における反射層12とは反対の面側には、表面コート層やカバーパネル等が設けられていてもよい。また、表示装置13における光拡散制御層11とは反対の面側にバックライトが設けられていてもよい。
【0088】
本実施形態に係る反射型表示体1の表示面の形状は特に限定されないものの、典型的には、表示面が矩形の形状を有していることが好ましい。この場合、表示面は、一対の長辺と一対の短辺とからなる長方形であってもよく、また、全ての辺の長さが等しい正方形であってもよい。そして、表示面がこのような矩形の形状となる場合には、表示内容の初期の上下方向が、上記矩形のいずれかの一辺と平行となるように構成されていることが好ましい。その他にも、表示面の形状は、ひし形、台形、平行四辺形等の矩形以外の四角形であってもよく、三角形、五角形等の四角形以外の多角形であってもよく、正円形、楕円形等の円形であってもよく、さらにはこれら以外の不定形な形状であってもよい。
【0089】
5.反射型表示体の物性
本実施形態に係る反射型表示体1は、光拡散制御層11と反射層12とを積層してなるサンプルについて、以下の反射率、明るさおよび明るさの差異を満たすことが好ましい。
【0090】
すなわち、本実施形態に係る反射型表示体1では、上記サンプルにおける光拡散制御層11側の面に対し、表示内容の主要な上下方向の上側から入射角30°で光線を照射し、正面方向に対して反射した光線の反射率(上方位の反射率)が、110%以上であることが好ましく、特に140%以上であることが好ましく、さらには200%以上であることが好ましく、270%以上であることが最も好ましい。なお、上方位の反射率の上限値は特に限定されず、例えば400%以下であってよく、特に300%以下であってよい。
【0091】
また、上記サンプルにおける光拡散制御層11側の面に対し、表示内容の主要な左右方向の右側から入射角30°で光線を照射し、正面方向に対して反射した光線の反射率(右方位の反射率)が、100%以上であることが好ましく、特に110%以上であることが好ましく、さらには120%以上であることが好ましく、130%以上であることが最も好ましい。なお、右方位の反射率の上限値は特に限定されず、例えば200%以下であってよく、特に150%以下であってよい。
【0092】
なお、上記反射率は、反射した光線の量の基準値に対する割合として算出されるものである。ここにいう基準値とは、標準反射板の反射面に対して入射角30°で光線を照射したときの正面方向に反射した光線の量をいう。また、上述した上方位の反射率および右方位の反射率の具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0093】
また、本実施形態に係る反射型表示体1では、上記の通り得られた上方位の反射率と右方位の反射率との平均値として表される明るさが、110%以上であることが好ましく、特に130%以上であることが好ましく、さらには160%以上であることが好ましく、210%以上であることが最も好ましい。なお、上記明るさの上限値は特に限定されず、例えば400%以下であってよく、特に300%以下であってよい。
【0094】
さらに、本実施形態に係る反射型表示体1では、次の式
明るさの差異(%)=(上方位の反射率と右方位の反射率との差の絶対値)/(上方位の反射率と右方位の反射率との和)×100
に基づいて算出される、上方位から照らした場合と右方位から照らした場合との明るさの差異が、40%以下であることが好ましく、特に38%以下であることが好ましく、さらには37%以下であることが好ましい。なお、上記明るさの差異の下限値は特に限定されず、例えば0%以上であってよく、特に5%以上であってよく、さらに30%以上であってよい。
【0095】
本実施形態に係る反射型表示体1は、光拡散制御層11を備えることにより、上述したような優れた反射率および明るさを実現できるとともに、表示内容の上下方向を変更した際の明るさの差異を、上述の通り良好に低減させることができる。
【0096】
6.反射型表示体の製造方法
本実施形態に係る反射型表示体1の製造方法としては特に限定されず、従来の製造方法により製造することができる。例えば、光拡散制御層11、表示装置13および反射層12をそれぞれ製造した後、これらを積層することで反射型表示体1を得ることができる。また、反射層12が組み込まれた表示装置13を作製した後、別途製造した光拡散制御層11と積層することで、反射型表示体1を得ることもできる。
【0097】
〔光拡散制御シートのロール体〕
図4には、本発明の一実施形態に係る光拡散制御シートのロール体の一例の斜視図が示される。本実施形態に係るロール体2は、長尺の光拡散制御シート10を巻き取ってなるものである。
【0098】
本実施形態における光拡散制御シート10は、前述した光拡散制御層11と同様の光学的特性を有する。すなわち、本実施形態に係るロール体2では、光拡散制御シート10の一方の面に対して、当該面の法線方向を0°として、流れ方向(繰り出し方向)に沿って、-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定されるヘイズ値(%)が90%以上となる拡散角度幅は、5°以上、80°以下である。
【0099】
さらに、本実施形態に係るロール体2では、光拡散制御シート10の一方の面に対して垂直な入射光を照射して、他方の面から透過拡散光を生じさせた場合に、当該透過拡散光の重心として特定される光線を光拡散制御シート10の当該他方の面に投影してなる直線と、光拡散制御シート10の長尺方向とのなす鋭角は、7°以上、83°以下である。
【0100】
上述の通り、本実施形態における光拡散制御シート10は、前述した光拡散制御層11と同様の光学的特性を有する。そのため、本実施形態に係るロール体2から、光拡散制御シート10を繰り出して所望のサイズに切り出すことで、前述した光拡散制御層11として使用することができる。特に、本実施形態に係るロール体2では、拡散透過光の発生する方向が、光拡散制御シート10の長尺方向に対して傾斜していることにより、光拡散制御シート10を、ロール体1の流れ方向(光拡散制御シート10の長尺方向)に対して平行(または直交)に切り出して得られる光拡散制御層11を用いて、本実施形態に係る反射型表示体1を製造することができる。そのため、本実施形態に係るロール体2を用いることで、光拡散制御層11の切り出しの処理の煩雑化を回避できるとともに、光拡散制御シート10の端材の発生を最小限に留めながらも、表示内容の上下方向の切り替えに対し明るさ変化の少ない反射型表示体1を製造することが可能となる。
【0101】
本実施形態における光拡散制御シート10における上述した光学的特性の好ましい範囲は、前述した光拡散制御層11と同様である。すなわち、反射型表示体1の表示面の表示内容の上下方向と、ロール体2の繰り出し方向とが一致するものとして、光拡散制御層11にて規定した前述の各種物性をロール体2に適用することができる。また、本実施形態における光拡散制御シート10における内部の構造、組成、厚さおよび製造方法についても、前述した光拡散制御層11と同様である。
【0102】
本実施形態に係るロール体2から得られる光拡散制御シート10は、従来のものと同様に使用することができ、例えば、反射型表示体、液晶表示装置、有機発光デバイス、電子ペーパー等を製造するために使用することができる。とりわけ、本実施形態における光拡散制御シート10は、本実施形態に係る反射型表示体2の製造に使用することが好適である。
【0103】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0104】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0105】
〔製造例1〕
(1)光拡散制御層用組成物の調製
低屈折率成分としての、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて得られた重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、高屈折率成分としての、分子量268のo-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御層用組成物を得た。
【0106】
(2)光拡散制御シートの形成
以下に説明する通り、コンベア上にてシート等の各部材を移動させながら、光拡散制御層用組成物の塗膜の形成、および当該塗膜の硬化等の各処理を連続的に行った。最終的に形成された光拡散制御シート(光拡散制御層)は、コンベアの移動に合わせて巻き取って、光拡散制御シートのロール体とした。
【0107】
コンベアの最初の区画において、工程シートとしての長尺のポリエチレンテレフタレートシートを供給した。続く区画において、当該工程シートの片面に、上記(1)で得られた光拡散制御層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。続いて、当該塗膜における工程シートとは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381130」,厚さ:38μm)の剥離面を積層した。これにより、剥離シートと上記塗膜と工程シートとからなる積層体とした。
【0108】
続く区画において、図3に示すように、上記塗膜に対して、紫外線を照射した。当該区画においては、コンベア100上に載置された塗膜10’を含む積層体に対して、紫外線を照射可能なように光学ユニット200が配置されている。また、光学ユニット200を基準にしてコンベアの流れの上流および下流には、それぞれ入口側遮光板401および出口側遮光板402が、塗膜10’を含む積層体を覆うように設けられている。さらに、塗膜10’を含む積層体と、光学ユニット200との間には、照射光平行化部材300が複数設けられている。
【0109】
上記光学ユニット200としては、線状の高圧水銀ランプ(直径25mm、長さ1.6m、出力20kW)(線状光源201)に集光用のコールドミラー(集光ミラー202)が付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「ECS-4011GX」)を使用した。さらに、光学ユニット200には、一対の光源遮光板203も備え付けた。
【0110】
照射光平行化部材300は、複数の板状部材がそれぞれ平行配置してなるものである。ここで、塗膜10’を平面視した場合に、流れ方向4と板状部材の延在方向とが為す鋭角、すなわち図3(a)におけるθが、45°となるように照射光平行化部材を配置した。
【0111】
そして、集光ミラー202および光源遮光板203の位置や角度を調節して、塗膜10’に対する照射角度(図3(b)中、θで表される角度)が5°となるように設定した。また、入口側遮光板401の下流側の一端の位置(塗膜10’を含む積層体が入口側遮光板401から露出する位置)と、線状光源201の直下の位置との距離(図3(a)および図3(b)中、dで表される距離)が、195mmとなるように、光学ユニット200の位置を調整した。
【0112】
照射条件としては、塗膜表面における最大のピーク照度を2.00mW/cm、表面におけるピーク照度が最大となる位置での積算光量を53.13mJ/cmとした。また、線状光源201から、平行度が2°以下の平行光であって、主ピーク波長365nm、その他254nm、303nm、313nmにピークを有する高圧水銀ランプからの紫外線を照射した。
【0113】
以上の条件にて紫外線を照射することで、塗膜10’を硬化させ、光拡散制御シート(光拡散制御層)とした。当該光拡散制御シートの厚さは、110μmであった。得られた光拡散制御シートは、工程シートと剥離シートとの間に積層された積層体の状態で巻き取り、ロール体とした。
【0114】
なお、形成された光拡散制御シートの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、内部に、厚さ方向全体に複数の柱状物を林立させてなるカラム構造が形成されていることが確認された。また、上述した柱状物は、光拡散制御シートの厚さ方向に対して傾いていることが確認された。
【0115】
また、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。光拡散制御シートの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0116】
〔製造例2〕
入口側遮光板の下流側の一端の位置と線状光源の直下の位置との距離dを95mmに変更した以外は、製造例1と同様にロール体を製造した。
【0117】
〔製造例3〕
入口側遮光板の下流側の一端の位置と線状光源の直下の位置との距離dを145mmに変更した以外は、製造例1と同様にロール体を製造した。
【0118】
〔製造例4〕
入口側遮光板の下流側の一端の位置と線状光源の直下の位置との距離dを245mmに変更した以外は、製造例1と同様にロール体を製造した。
【0119】
〔製造例5〕
入口側遮光板の下流側の一端の位置と線状光源の直下の位置との距離dを295mmに変更した以外は、製造例1と同様にロール体を製造した。
【0120】
〔製造例6〕
塗膜に紫外線を照射する際の照射角度θを10°に変更するとともに、入口側遮光板の下流側の一端の位置と線状光源の直下の位置との距離dを200mmに変更した以外は、製造例1と同様にロール体を製造した。なお、当該例における距離d:200mmという設定は、光源からの紫外線の塗膜照射位置で塗膜が硬化完了するよう入口側遮光板を調整したものである。一方、製造例1~5における各々の距離dの設定は、塗膜における光源からの紫外線照射位置よりも手前(入口側)にて硬化完了するよう入口側遮光板を調整したものとなる。
【0121】
〔実施例1〕
製造例1で得られたロール体から、工程シートと光拡散制御シートと剥離シートとの積層体を所定量引き出し、長辺6cm×短辺5cmの矩形の形状に切り抜いた。この切り抜きの際、ロール体の流れ方向と、上記矩形の形状の長辺とが平行となるように切り抜いた。そして、切り抜いた積層体から、工程シートおよび剥離シートを剥離除去し、光拡散制御シートが切り抜かれてなる光拡散制御層を得た。
【0122】
続いて、上記と同様の平面視形状を有する反射層(厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にアルミニウムを厚さ300nmとなるように蒸着したもの)における反射面に対し、上記の通り得られた光拡散制御層の片面を積層した。これにより、反射型表示体サンプルを得た。
【0123】
なお、得られた反射型表示体サンプルでは、光拡散制御層側の面が表示面として想定されたものとする。さらに、反射型表示体サンプルの長辺方向が表示内容の初期の上下方向と一致し、反射型表示体サンプルの短辺方向が表示内容の初期の左右方向と一致するように想定されたものとする。
【0124】
また、使用した製造例1のロール体は、後述の試験例2の拡散光分布の測定において、重心の光線の座標における方位角φwの絶対値が、表1に示されるように11.2°と測定された。そのため、実施例1に係る反射型表示体サンプルでは、上述した光拡散制御層と反射層との積層方法を考慮すると、重心の光線を光拡散制御シートにおける透過拡散光が射出された側の面に投影してなる直線(重心の投影線)と表示内容の上下方向とのなす鋭角も11.2°となる。
【0125】
〔実施例2〕
製造例2で得られたロール体を使用した以外は、実施例1と同様にして反射型表示体サンプルを得た。この反射型表示体サンプルでは、重心の投影線と表示内容の上下方向とのなす鋭角は、8.9°となる。
【0126】
〔実施例3〕
製造例3で得られたロール体を使用した以外は、実施例1と同様にして反射型表示体サンプルを得た。この反射型表示体サンプルでは、重心の投影線と表示内容の上下方向とのなす鋭角は、8.6°となる。
【0127】
〔実施例4〕
製造例4で得られたロール体を使用した以外は、実施例1と同様にして反射型表示体サンプルを得た。この反射型表示体サンプルでは、重心の投影線と表示内容の上下方向とのなす鋭角は、14.0°となる。
【0128】
〔実施例5〕
製造例5で得られたロール体を使用した以外は、実施例1と同様にして反射型表示体サンプルを得た。この反射型表示体サンプルでは、重心の投影線と表示内容の上下方向とのなす鋭角は、17.2°となる。
【0129】
〔実施例6〕
製造例6で得られたロール体から、工程シートと光拡散制御シートと剥離シートとの積層体を所定量引き出し、長辺6cm×短辺5cmの矩形の形状に切り抜いた。この切り抜きの際、ロール体の流れ方向と、上記矩形の形状の長辺とがなす角度が、15°となるように切り抜いた。当該切り抜きによって得られた光拡散制御層を使用する以外、実施例1と同様にして反射型表示体サンプルを製造した。
【0130】
なお、この反射型表示体サンプルでは、重心の光線の座標における方位角φwの絶対値が表1に示されるように5.9°と測定された光拡散制御層を、さらに15°の角度をつけて切り出して使用しているため、重心の投影線と表示内容の上下方向とのなす鋭角は、これらの値を合算した20.9°となる。
【0131】
〔比較例1〕
製造例6で得られたロール体を使用した以外は、実施例1と同様にして反射型表示体サンプルを得た。この反射型表示体サンプルでは、重心の投影線と表示内容の上下方向とのなす鋭角は、5.9°となる。
【0132】
〔試験例1〕(拡散角度幅の測定)
実施例および比較例で作製した光拡散制御シートについて、変角ヘイズメーター(東洋精機製作所社製,製品名「ヘイズガードプラス、変角ヘイズメーター」)を用いて、ヘイズ値が所定の範囲となる拡散角度幅を測定した。
【0133】
具体的には、実施例および比較例で作製したロール体から、工程シートと光拡散制御シートと剥離シートとの積層体を所定量引き出し、長辺6cm×短辺5cmの矩形の形状に切り抜いた。この切り抜きの際、ロール体の流れ方向と、上記矩形の形状の長辺とが平行となるように切り抜いた。そして、切り抜いた積層体から、工程シートおよび剥離シートを剥離除去し、光拡散制御シートが切り抜かれてなる光拡散制御層を得た。
【0134】
得られた光拡散制御層における、製造時に紫外線を照射した面と反対の面を、無アルカリガラス板(厚さ:1.1mm)の片面に貼付し、積層体を得た。そして、当該積層体を、上記変角ヘイズメーターにおける積分球開口から測定光の到達位置までの距離が62mmとなるよう、かつ、無アルカリガラス側が光源と対向するように設置した。次に、上記到達位置における光拡散制御層の幅方向を回転軸として、光拡散制御層の長辺方向(ロール体の流れ方向)を回転させることにより、ヘイズ値(%)の変化を測定した。すなわち、光拡散制御層の傾き角度のみを変えることで、光拡散制御層に対する測定光の入射角度を変更し、それぞれの入射角度ごとにヘイズ値(%)を測定した。なお、測定光が積層体の法線方向となる入射角度を0°とし、光拡散制御層の長辺方向(ロール体の流れ方向)の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとして、-70°~70°の範囲で測定を行った。測定条件の詳細は、次の通りとした。
光源:C光源
測定径:φ18mm
積分球開口径:φ25.4mm
【0135】
そして、測定されたヘイズ値(%)が90%以上となった入射角度の領域を特定し、当該領域の両端の角度を特定した。さらに、これら両端の角度で挟まれる角度範囲を、拡散角度幅として特定した。得られた両端の角度および拡散角度幅を表1に示す。
【0136】
〔試験例2〕(拡散光分布の測定)
実施例および比較例で作製した光拡散制御シートの一方の面に対して垂直な入射光を照射した際に、他方の面から生じる透過拡散光の分布を、小型簡易散乱測定器(LIGHT TEC社製,製品名「Mini-Diff」)を用いて測定した。なお、当該測定には、光源として、赤色LED(波長630nm)を使用した。
【0137】
具体的には、光拡散制御シートの一方の面の一点(入射点)に対し、0°の入射角度にて光を照射した。ここで、照射する面は、光拡散制御シート作製時において紫外線を照射した面とは反対の面とした。そして、上記照射により、光拡散制御シートの他方の面から生じる透過拡散光を、上述した小型簡易散乱測定器により測定した。当該測定によって、透過拡散光を構成する個々の光線の方向を、極座標系の方位角φおよび極角θとして得るとともに、当該光線の強度を得た。なお、上記極座標系は、光拡散制御シートの製造時の流れの下流方向を方位角φ=0°とし、それを基準に反時計回りに方位角φが増大するものとする。
【0138】
続いて、上記測定結果を使用し、以下の式(1)および式(2)から、透過拡散光の重心となる光線の座標を特定した。
【数1】

【数2】
【0139】
式(1)および式(2)中のθおよびθは、個々の光線について得られた方位角φおよび極角θを、方位角φ=0°のときの極角の成分(θ)および方位角φ=90°のときの極角の成分(θ)に変換することで得られたものである。また、L(x)およびL(y)は、それぞれ以下の式(3)および式(4)を意味する。そして、以下の式(3)および式(4)中のL(θ,θ)は、座標(θ,θ)における光線の強度を意味する。
【数3】

【数4】
【0140】
上記式(1)および式(2)によると、重心の光線の座標は、方位角φ=0°のときの極角の成分(θ)および方位角φ=90°のときの極角の成分(θ)に変換した座標(θxw,θyw)として得られる。得られた当該座標を、θ成分およびθ成分に変換する前の座標(方位角φ,極角θ)に戻した。これにより得られた極角θを、表1に示す。
【0141】
また、上記の通り得られた方位角φから、その絶対値を特定した。これにより得られた方位角φの絶対値を表1に示す。なお、ここにおける方位角φの絶対値とは、方位角φの値に応じた以下の変換を行ったものとする。
・方位角φが0°以上、90°以下である場合:方位角φそのものの角度
・方位角φが90°超、180°未満である場合:180°から方位角φを減じた角度
・方位角φが180°である場合:0°
・方位角φが180°超、270°未満である場合:方位角φを180°を減じた角度
・方位角φが270°である場合:90°
・方位角φが270°超、360°未満である場合:360°から方位角φを減じた角度
【0142】
なお、上記の通り得られた方位角φの絶対値は、重心の光線を、光拡散制御シートにおける透過拡散光が射出された側の面に投影してなる直線(重心の投影線)と、光拡散制御シートの製造時の流れ方向(光拡散制御シートの長尺方向)とのなす鋭角に相当するものとなる。
【0143】
〔試験例3〕(反射率の測定)
実施例および比較例で作製した反射型表示体サンプルについて、変角測色計(スガ試験機社製,製品名「変角測色計VC-2」)を用いて、反射率を測定した。
【0144】
具体的には、まず、変角測色計に付属の標準反射板について、その反射面の法線方向とのなす角度が30°となるようにC光源から光線を照射し、標準反射板の正面方向(反射面に対して垂直な方向)に反射した光線の量を測定し、これを基準値(100%)とした。
【0145】
続いて、反射型表示体サンプルにおける光拡散制御層側の面(表示面として想定される面)に対し、当該面の法線方向とのなす角度が30°となるようにC光源から光線を照射し、反射型表示体サンプルの正面方向(当該面に対して垂直な方向)に対して反射した光線の量を測定した。このとき、反射型表示体サンプルの表示内容の主要な上下方向(前述した通り、当該上下方向は、反射層の長辺方向と平行となる)の上側から光線を照射した場合(上方位)、および右側から光線を照射した場合(右方位)の2通りについて測定を行った。そして、このように測定された上方位および右方位についての反射した光線の量の、上記基準値に対する割合をそれぞれ算出し、これらを反射率(%)とした。その結果を表2に示す。
【0146】
さらに、上記の通り得られた、上方位に係る反射率と右方位に係る反射率との平均値(%)を算出し、これを明るさとした。その結果を表2に示す。また、次の式(5)
明るさの差異(%)=(上方位の反射率と右方位の反射率との差の絶対値)/(上方位の反射率と右方位の反射率との和)×100 …(5)
に基づいて、上方位の場合と右方位の場合との間での明るさの差異(%)を算出した。その結果も表2に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
表2に示されるように、実施例に係る反射型表示体サンプルでは、上方位から光線を照射した場合と右方位から光線を照射した場合との明るさの差異を、比較例に係る反射型表示体サンプルに比べて低く抑えることができた。また、実施例に係る反射型表示体サンプルについては、十分な明るさを有した反射光を反射できることがわかった。
【0150】
また、製造例1~5に係る光拡散制御シートのロール体によれば、光拡散制御層を切り抜く際に、角度をつけて切り抜くことなく、明るさの差異の発生を抑えた反射型表示体を製造できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の反射型表示体は、表示内容の上下方向が変更可能なように構成されたスマートフォンやタブレット等の情報端末の製造に好適に用いられる。また、本発明の光拡散制御シートのロール体は、そのような反射型表示体の製造に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0152】
1…反射型表示体
2…光拡散制御シートのロール体
10…光拡散制御シート
11…光拡散制御層
12…反射層
13…表示装置
3…方向(表示内容の上下方向)
4…流れ方向
100…コンベア
200…光学ユニット
201…線状光源
202…集光ミラー
203…光源遮光板
300…照射光平行化部材
401…入口側遮光板
402…出口側遮光板
A…拡散透過光
B…重心となる光線
図1
図2
図3
図4