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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】グローブボックス作業の訓練装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20241205BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20241205BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G09B9/00 A
G09B9/00 Z
G06T19/00 300B
G06F3/01 510
G06F3/01 514
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020197688
(22)【出願日】2020-11-28
(65)【公開番号】P2022085925
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】512118347
【氏名又は名称】株式会社ジェイテック
(73)【特許権者】
【識別番号】390023973
【氏名又は名称】千代田興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518175544
【氏名又は名称】株式会社ポケット・クエリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(72)【発明者】
【氏名】細越 順喜
(72)【発明者】
【氏名】河野 亮
(72)【発明者】
【氏名】山本 光
(72)【発明者】
【氏名】葛西 駿
(72)【発明者】
【氏名】高松 志門
(72)【発明者】
【氏名】西谷 渉
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】武岡 義治
(72)【発明者】
【氏名】白野 元晴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宣彦
(72)【発明者】
【氏名】松野下 剛史
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-537116(JP,A)
【文献】特開2020-166264(JP,A)
【文献】特開2014-122790(JP,A)
【文献】特開2006-072193(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56、17/00-19/26
G06T 19/00
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローブボックス模擬パネル部と、
VR装置部とよりなり、
上記グローブボックス模擬パネル部は、腕が挿入可能な開口部が設けられた板状のパネル体よりなり、
上記VR装置部は、記憶部と、演算部と、カメラ部と、表示部とよりなり、上記演算部により、上記記憶部に記憶された、実機の機器類を模した機器類モデルを上記表示部に表示すると共に、上記カメラ部により、上記腕の動きを検知し、該腕の動きに対応した腕モデルを、上記表示部に表示させることを特徴とするグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項2】
上記腕に装着されるグローブを更に有することを特徴とする請求項1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項3】
グローブボックス模擬パネル部と、
VR装置部とよりなり、
上記グローブボックス模擬パネル部は、腕が挿入可能な開口部が設けられた板状のパネル体と、上記開口部に設けられた、上記腕が挿入されるグローブとよりなり、
上記VR装置部は、記憶部と、演算部と、カメラ部と、表示部とよりなり、上記演算部により、上記記憶部に記憶された、実機の機器類を模した機器類モデルを上記表示部に表示すると共に、上記カメラ部により、上記グローブの動きを検知し、該グローブの動きに対応したグローブモデルを、上記表示部に表示させることを特徴とするグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項4】
上記グローブは、黒よりも、カメラ部の識別性の高い表示のグローブであることを特徴とする請求項2、又は、請求項3に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項5】
上記演算部により、上記記憶部に記憶された、実機のグローブボックスを模したグローブボックスモデルを、更に、上記表示部に表示することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項6】
上記VR装置部に、音声データまたは/及び映像データの送受信装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項7】
上記VR装置部は、訓練員の目に装着されるゴーグル状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項8】
上記ゴーグル状のVR装置部を装着し、上記開口部に腕を挿入した訓練員の上記VR装置部が位置する上記パネル体の部分が、上記VR装置部に当たらないように、上記開口部に対して、訓練員から離間する方向に、設けられていることを特徴とする請求項7に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項9】
上記グローブボックス模擬パネルには、上記カメラ部により検知される、模擬パネル体と、上記表示部に表示されるグローブボックスモデルとの位置関係を特定するための照合マークが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項8いずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項10】
上記演算部には、腕又はグローブが機器類モデルを操作した時の該機器類モデルの動作が、腕又はグローブが実機の機器類を操作した時の該機器類の動作と同様の動作となるように演算する機器類モデル動作演算部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項11】
上記グローブボックス模擬パネル部を複数設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項12】
上記VR装置部が複数設けられ、該各VR装置部の演算部には、共通するグローブボックスモデルと機器類モデルを共有する仮想の共有空間を形成すると共に、各VR装置部の表示部に、該各VR装置部が対応する、上記共有空間の一部を表示されるよう形成する共有演算部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項13】
上記演算部は、各VR装置部に対応する訓練員の各腕又はグローブの動作に応じて、機器類モデルの所望の動作モデルを表示部に表示することを特徴とする請求項12に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項14】
上記各VR装置部には、それぞれ音声データ送受信装置が設けられ、該各音声データ送受信装置間で、各音声データの送受信ができることを特徴とする請求項12、又は、請求項13に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項15】
上記VR装置部のデータを受信できる、画像表示装置を有する演算装置を更に有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【請求項16】
訓練員に所望の通知を通知する通知部と、腕モデル又はグローブモデルや、機器類モデルが所望の動作をした時に、上記通知部により訓練員に所望の通知を通知する通知演算部とよりなるフィードバック手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか1に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グローブボックス(以下、フードも含む)内に設けられた、放射性物質や、危険な化学物質、および病原体等を取り扱う複数の機器類の操作や保守等の作業の模擬訓練に関するものであり、特に、模擬機器とVR(ヴァーチャル・リアリティ)技術とを組み合わせたハイブリッド型のグローブボックス作業の訓練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(1.グローブボックス作業の背景の説明)
【0003】
原子力施設、化学プラント、医療研究機関等において、放射性物質や、危険な化学物質および病原体等を取り扱う金属製の弁やポンプ、容器等の機器や計器、分析装置等(以下、「機器類」と略す)は、当該機器類からの内部物質の漏洩等による作業者や機器類の周辺環境への影響等を防止するために、内部を外部からやや負圧に維持されたグローブボックスと呼ばれる主としてステンレス鋼製の丈夫な角形箱に収納されている。
【0004】
このグローブボックスの構造や閉じ込め機能試験方法などについてはISO10648-2やJIS Z4808放射性物質取扱作業用グローブボックスなどに標準として規定され、国内外の幅広い産業界で多用されている。
【0005】
このグローブボックス内で、上記機器類を操作したり、上下左右に移動したり、部品の交換を含む保守や清掃等の作業をする際には、作業員はそのグローブボックスの前面と背面に設けられた、例えば、縦横約1.0mの金属製のパネル上に設けられた複数の透明素材製の覗き窓と、標準的間隔と寸法で開けられた4個の開口部(孔)に設けられたゴム等の軟質材製のグローブを介して行う。
【0006】
この覗き窓とグローブが取り付けられた上記パネルは標準的な大きさとなって単位パネルを構成し、グローブボックスが大型化する場合には、この標準的な単位パネルを複数枚、水平方向や垂直方向に増やすことによって形成されている。
【0007】
複雑で多数の機器類を内部に設置したグローブボックスにおいて、限られた視野で、固定された開口部(孔)から厚いグローブを介し、作業しにくい姿勢で内部の精密で重要な機器類を安全に取り扱うためには、十分な訓練と経験が必要であり、その作業者の育成には多くの課題があった。
【0008】
さらに産業の技術レベルが高度化するに伴い、グローブボックス内に設置する機器類の構造も複雑で大型化し、また多数の機器を一度にグローブボックス内に収納するために、グローブボックスの大きさも大型化してきており、最大のものは幅約10m、高さは床面から約6mと大型構造となっていて、ここで作業をする人の技能にもより高度なものが求められている。
【0009】
(2.グローブボックス模擬機の説明)
【0010】
このようなグローブボックスの取り扱い作業の技能を強化するために、実規模の全体あるいは一部を模擬したステンレス鋼等の金属製の訓練装置(グローブボックス訓練模擬機)を設置してグローブボックス作業の操作訓練が行われてきた。
【0011】
図7及び図8は、上記模擬機の一例を示し、該訓練装置は、例えば、ステンレス鋼製の直方体状に形成された箱本体1と、該箱本体1を所望の高さに位置するための台2とにより構成される。そして、該箱本体1の前面1aは、例えば、単位パネルとして、縦横約1.0mの金属製パネル体3が設けられ、該パネル体3が、例えば、2個、横方向に並列し、長方形状に形成される。また、上記各パネル体3は、パネル枠3aと、透明体よりなる覗き窓4と、4つの開口部(孔)5とにより構成され、該各開口部5には、それぞれ作業用のグローブ6が固定されている。
【0012】
なお、上記開口部5は、上記金属製パネル体3の覗き窓4に設けられる以外に、上記パネル枠3aの枠形状によっては、該パネル枠3aに設けてもよい。また、上記箱本体1の背面1bも、上記前面1aと同じように形成してもよい。
【0013】
そして、上記箱本体1内には機器類7が設けられ、訓練員が、上記箱本体1の外から、上記グローブ6内に腕を通し、上記箱本体1内に設けられた機器類7を分解、組立、整備等の作業を行うようにしている。
【0014】
上記実規模の金属製グローブボックス訓練模擬機の特長は以下のとおりである。
【0015】
(1)実際と同じ作業環境で視覚的、あるいは聴覚的、および触感的や肉体的な技能経験ができる。
【0016】
(2)訓練講師や他の訓練員も訓練状況に近接して同時に目視で把握でき、情報の共有と適切な指導ができる。
【0017】
しかしながら、上記訓練模擬機の課題としては、以下の通りである。
【0018】
(1)実機グローブボックス等の内部構造の複雑化やグローブボックス自体の大型化により、その訓練模擬機の製作費用や維持費用はますます増加している。
【0019】
(2)さらに機器類の改良等で構造等を変更する場合にはその都度複雑なグローブボックス訓練模擬機を製作して改造することから、費用の増加と改造期間中の長期間の訓練の中断となる。
【0020】
(3)これらの理由により、これを実施できる企業や組織が限定される等、経済的な制約となり幅広い人材の技能向上の足かせとなっている。
【0021】
(3.VR技術を利用した訓練の説明)
【0022】
そこで、これらの課題を解決するための手段として、全ての機器類やグローブボックスをVR技術(仮想現実)で模擬する方式も採用されている例がある。
【0023】
即ち、VRゴーグルを用いて、このゴーグルを目に装着することにより、ゴーグルには、実機のグローブボックスや機器類を、コンピュータ上で模した仮想のグローブボックスモデルや機器類モデルとして表示されると共に、自分の手を、コンピュータ上で模した手モデルとして表示され、そして、自分の手を動かすことにより、ゴーグル内の仮想の手モデルも同様に動き、そして、手モデルの動きに応じて、ゴーグルに表示された機器類モデルも操作でき、仮想的に、グローブボックス作業の訓練が行えるようになる。
【0024】
VRを利用した訓練装置としては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【文献】特開2002-366021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
(4.VR技術を利用した訓練の課題の説明)
【0027】
しかしながら、グローブボックスをVR技術で模擬した方式のものは、小型のグローブボックスを対象として、限られた視野での作業の視覚的な訓練であり、実際の訓練員の肉体に直接作用する作業しにくい姿勢での膨大な内部機器類の取り扱い作業までは模擬できず、課題の抜本的な解決には至っていなかった。
【0028】
また、VRによる作業シミュレーションでは、図9に示すように、物理的な装置等が何もない空間で作業するため、作業者の腕8・手・指を自由に動かせてしまうため、図10に示すように、仮想空間で再現したグローブボックスの箱本体モデルaの前面モデルbに形成された開口部モデルcから、機器類モデルdを作業する手モデルeがすり抜けてしまい、現実のグローブボックス作業とはかけ離れてしまっていた。
【0029】
また、動作に対する感覚がなく、実際のグローブボックス作業とはかけ離れてしまっていた。
【0030】
本発明は、上記VRを使用したグローブボックス作業の操作訓練における課題を簡易な方法によって一気に解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明のグローブボックス作業の訓練装置は、グローブボックス模擬パネル部と、
VR装置部とよりなり、上記グローブボックス模擬パネル部は、腕が挿入可能な開口部が設けられた板状のパネル体よりなり、上記VR装置部は、記憶部と、演算部と、カメラ部と、表示部とよりなり、上記演算部により、上記記憶部に記憶された、実機の機器類を模した機器類モデルを上記表示部に表示すると共に、上記カメラ部により、上記腕の動きを検知し、該腕の動きに対応した腕モデルを、上記表示部に表示させることを特徴とする。
【0032】
また、上記腕に装着されるグローブを更に有することを特徴とする。
【0033】
また、本発明のグローブボックス作業の訓練装置は、グローブボックス模擬パネル部と、VR装置部とよりなり、上記グローブボックス模擬パネル部は、腕が挿入可能な開口部が設けられた板状のパネル体と、上記開口部に設けられた、上記腕が挿入されるグローブとよりなり、上記VR装置部は、記憶部と、演算部と、カメラ部と、表示部とよりなり、上記演算部により、上記記憶部に記憶された、実機の機器類を模した機器類モデルを上記表示部に表示すると共に、上記カメラ部により、上記グローブの動きを検知し、該グローブの動きに対応したグローブモデルを、上記表示部に表示させることを特徴とする。
【0034】
また、上記グローブは、手の部分が、黒よりも識別性の高い表示のグローブであることを特徴とする。
【0035】
また、上記演算部により、上記記憶部に記憶された、実機のグローブボックスを模したグローブボックスモデルを、更に、上記表示部に表示することを特徴とする。
【0036】
また、上記VR装置部に、音声データまたは/及び映像データの送受信装置を設けたことを特徴とする。
【0037】
また、上記VR装置部は、訓練員の目に装着されるゴーグル状に形成されていることを特徴とする。
【0038】
また、上記ゴーグル状のVR装置部を装着し、上記開口部に腕を挿入した訓練員の上記VR装置部が位置する上記パネル体の部分が、上記VR装置部に当たらないように、上記開口部に対して、訓練員から離間する方向に、設けられていることを特徴とする。
【0039】
また、上記グローブボックス模擬パネルには、上記カメラ部により検知される、模擬パネル体と、上記表示部に表示されるグローブボックスモデルとの位置関係を特定するための照合マークが設けられていることを特徴とする。
【0040】
また、上記演算部には、腕又はグローブが機器類モデルを操作した時の該機器類モデルの動作が、腕又はグローブが実機の機器類を操作した時の該機器類の動作と同様の動作となるように演算する機器類モデル動作演算部が設けられていることを特徴とする。
【0041】
また、上記グローブボックス模擬パネル部を複数設けたことを特徴とする。
【0042】
また、上記VR装置部が複数設けられ、該各VR装置部の演算部には、共通するグローブボックスモデルと機器類モデルを共有する仮想の共有空間を形成すると共に、各VR装置部の表示部に、該各VR装置部が対応する、上記共有空間の一部を表示されるよう形成する共有演算部が設けられていることを特徴とする。
【0043】
また、上記演算部は、各VR装置部に対応する訓練員の各腕又はグローブの動作に応じて、機器類モデルの所望の動作モデルを表示部に表示することを特徴とする。
【0044】
また、上記各VR装置部には、それぞれ音声データ送受信装置が設けられ、該各音声データ送受信装置間で、各音声データの送受信ができることを特徴とする請求項11、又は、請求項12に記載のグローブボックス作業の訓練装置。
【0045】
また、上記VR装置部のデータを受信できる、画像表示装置を有する演算装置を更に有することを特徴とする。
【0046】
また、訓練員に所望の通知を通知する通知部と、腕モデル又はグローブモデルや機器類モデルが所望の動作をした時に、上記通知部により訓練員に所望の通知を通知する通知演算部とよりなるフィードバック手段を更に有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明のグローブボックス作業の訓練装置の全体構成図である。
図2】本発明のグローブボックス作業の訓練装置のグローブの他の実施例の説明図である。
図3】本発明のグローブボックス作業の訓練装置のパネル体の他の実施例の説明図である。
図4】本発明のグローブボックス作業の訓練装置の現実空間を示す説明図である。
図5】本発明のグローブボックス作業の訓練装置の仮想空間を示す説明図である。
図6】本発明のグローブボックス作業の訓練装置の説明図である。
図7】従来のグローブボックス模擬機の説明図である。
図8】従来のグローブボックス模擬機の作業状態を示す説明図である。
図9】従来のVR技術を利用した訓練の現実空間を示す説明図である。
図10】従来のVR技術を利用した訓練の仮想空間を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0049】
(5.本発明のグローブボックス作業の訓練装置の構成の説明)
【0050】
本発明のグローブボックス作業の訓練装置は、図1に示すように、グローブボックス模擬パネル部9と、例えば、訓練員10の目に装着される、ゴーグル状のVR装置部(仮想現実表示装置部)11とよりなる。
【0051】
なお、上記VR装置部11は、実機のグローブボックスや、該グローブボックス内に設けられる機器類や訓練員の腕等の現実の物を、コンピュータ上で模して3次元画像(映像)を作成し、グローブボックスモデル、機器類モデル、腕モデル等として、ゴーグル上に表示させたものであって、訓練員に、目の前に、あたかも、それらが現実に存在するかのように見せる装置である。
【0052】
なお、上記機器類には、弁やポンプ、容器等の機器や計器、分析装置等の他、これらを分解・組立する工具や、訓練に使用されるあらゆる物が含まれる。
【0053】
(5.1.グローブボックス模擬パネル部9の説明)
【0054】
上記グローブボックス模擬パネル部9は、例えば、図1に示すように、パネル枠12aと、該パネル枠12aに嵌め込まれた透明板からなる覗き窓13と、該覗き窓13に設けられ、訓練員の腕が挿入可能な、例えば、グローブボックス実機の標準的な間隔と寸法で設けられた4つの開口部(孔)14とよりなる、例えば、縦横約1.0mに形成されたパネル体12と、該パネル体12の各開口部14にそれぞれ設けられた、腕が挿入されるゴム等の軟質材性グローブ15と、上記パネル体12を起立した状態に支持する支持部16とよりなる。
【0055】
なお、上記開口部14は、上記パネル体12の覗き窓13に設けられる以外に、上記パネル枠12aの枠形状によっては、該パネル枠12aに設けてもよい。また、上記パネル体12は、覗き窓13を省略してもよい。
【0056】
また、上記開口部14には、グローブ15を省略してもよい。かかる場合、単に、腕を上記開口部14に挿入して、訓練してもよく、また、グローブを装着した腕を上記開口部14に挿入して、訓練してもよい。なお、このグローブは、手から肘まで覆うグローブの他、手から肩まで覆うグローブや、手のみを覆う手袋状のグローブ等であってもよい。
【0057】
なお、腕との表記には、グローブを意味する場合があり、また、グローブの表記には、腕を意味する場合もある。また、腕モデルの表示には、グローブモデルを意味する場合があり、また、グローブモデルの表記には、腕モデルを意味する場合もある。
【0058】
なお、上記パネル体12のパネル枠12aは、例えば、木材等の安価で容易に加工できる材料で製作する。
【0059】
また、上記グローブボックス模擬パネル部9は、例えば、実機における標準的な大きさに合わせ、最小単位としての縦横約1.0mに形成され、これを単位パネルとし、この複数のグローブボックス模擬パネル部9を、縦、横に並べて連結し、大型のグローブボックス模擬パネル部9として使用するようにしてもよい。
【0060】
また、一般に使用されるグローブは、ゴム製から一般に黒色であり、上記グローブ15も黒でもよいが、VRの識別性を高めるために、例えば、肘より先端側の腕部分15aが、黒よりも、カメラ部による識別性の高い表示としたグローブや、該識別性の高い表示の手袋状のグローブが装着され、手の部分が該識別性の高い表示となる黒色のグローブなど、手の部分が黒色よりも識別性の高い表示のグローブを用いるようにしてもよい。
【0061】
なお、上記黒色よりも識別性の高い表示とは、例えば、色であるなら、黒よりも識別性の高い、例えば、白が好ましい。
【0062】
また、表示としては、例えば、模様や、所望の形状等の表示がある。また、該表示は1または複数であってもよい。
【0063】
また、実機では、図3(a)のように、作業員は、覗き窓に接近して、作業を行うが、訓練員10が、ゴーグル状のVR装置部11を装着した訓練で、実機と同じ平板状のパネル体として作られた模擬パネル部9で訓練を行うと、ゴーグル状のVR装置部11がパネル体12にぶつかるため、訓練員は後に下がって、上記開口部14に、腕が十分に入らない状態で、訓練を行わなければならず、実際の作業と異なってしまう。
【0064】
そこで、例えば、図3(b)に示すように、ゴーグル状のVR装置部11を装着し、上記開口部14に腕8を挿入した訓練員の該VR装置部11が位置する(ぶつかる)上記パネル体12の部分12bを、上記VR装置部11に当たらないように、ゴーグルの状のVR装置部の厚さ(装着者に対し前後方向の厚さ)だけ、上記開口部14に対して、訓練員から離間する方向に、凹状に形成し、これにより、訓練員10がVR装置部11を装着して訓練をしても、該VR装置部11がパネル体12に当たらないようになる。
【0065】
また、訓練員10と上記開口部14と距離が、作業員と実機における開口部との距離と同じ距離になり、腕を開口部に十分に挿入することができ、実機の作業と同じ感覚で、訓練をすることができるようになる。
【0066】
なお、図3(b)に示すように、ゴーグル状のVR装置部11の厚さだけ、上記開口部14を、上記パネル体12に対して、訓練員側に接近するように突出するように形成しても、上記と同様である。
【0067】
また、上記グローブボックス模擬パネル部9の一部に、上記VR装置部11の表示部に表示されるグローブボックスモデルの位置合わせをするための照合マーク(ターゲット)を1または複数設ける。そして、上記カメラ部により、上記照合マークを読み込むことにより、訓練員と上記模擬パネル部9の位置関係が特定され、そして、その位置関係で、表示部にグローブボックスモデルが表示されるようになり、合わせて、機器類モデルの位置関係が特定されるようになる。
【0068】
(5.2.VR装置部11の説明)
【0069】
上記VR装置部11は、例えば、訓練員の目に装着されるゴーグル状の本体と、該本体に設けられた演算部及び記憶部と、上記本体に設けられた、上記演算部により演算された映像を、装着した訓練員が見ることができる表示部と、上記本体に設けられた、訓練員の手やグローブの動きや上記照合マーク等を検知(撮像)するカメラ部とよりなる。
【0070】
なお、上記本体は、訓練員の目に装着されるもの以外に、上記グローブボックス模擬パネル部9に固定したものであってもよく、訓練員が、上記VR装着部を装着せずに、上記本体の表示部を見て、訓練できるようにしてもよい。
【0071】
なお、更に、上記ゴーグル本体には、訓練員の音声を送受信できる、訓練員の口元部分に設けられたマイクロフォンや、耳に装着されるイヤフォンなどの音声データ送受信機部を設けてもよい。
【0072】
また、別途、大型の画像表示装置などを有する演算装置を設け、該演算装置に、上記音声データや、上記VR装置部内の画像(映像)データを送受信できる音声・画像データ送受信装置を設けてもよい。
【0073】
また、上記記憶部には、例えば、予め作成された設計図面に基づき、3次元画像作成ソフトウェアにより製作された、実機のグローブボックスを模した仮想のグローブボックスモデル(グローブボックス画像)や、実機のグローブボックスモデル内に設けられる実機の機器類を模した機器類モデル(機器類画像)や、実機の機器類の動作を模した、各機器類の動作モデル(動作画像)などが記憶され、これらモデルが、訓練員や指導者等の指示や、演算結果により、上記演算部に設けられたモデル表示演算部により、上記表示部に表示されるように形成される。
【0074】
また、例えば、訓練員10が上記グローブ15に腕を入れ、動かした時の実際の腕(グローブ15)の動きを上記カメラ部が検知(撮像)し、上記演算部に設けられたグローブモデル動作演算部により、該検知されたグローブ15を、グローブモデル(グローブ画像)として演算し、該グローブモデルを、上記モデル表示演算部により、上記グローブボックスモデルや機器類モデル等と合成して、上記表示部に表示されるように形成される。
【0075】
なお、腕、又は、グローブ、又は、腕モデル、又は、グローブモデルは、肩から先端部分までの部分を示す以外に、肘から先端部分までの部分や、手の部分のみの部分を含む概念である。
【0076】
そして、上記表示部に表示された映像を、上記ゴーグルを装着した訓練員が、あたかも、それらが現実に存在するかのように見ることができるようになる。
【0077】
(5.2.1.機器類モデルの動作の例の説明)
【0078】
なお、上記演算部には、機器類モデル動作演算部が設けられ、該機器類モデル動作演算部により、グローブが機器類モデルを操作した時の該機器類モデルの動作が、グローブが実機の機器類を操作した時の該機器類の動作と同様の動作がされるように演算し、上記表示部に表示されるように形成される。
【0079】
即ち、上記機器類モデル動作演算部は、例えば、グローブが機器類を掴む動作をした場合には、グローブモデルと機器類モデルが関連付けられ、グローブモデルと機器類モデルとが同じ動きをするように設定し、例えば、グローブが機器類モデルを掴み、グローブを所望の位置まで移動、回転等させた場合には、表示部には、グローブモデルと機器類モデルが所望の位置まで移動、回転等した映像が映し出されるようになる。
【0080】
また、離す動作をした場合には、グローブモデルと機器類モデルとの関連性が解かれ、グローブを移動させても、機器類モデルは、その位置を保ったままになる。
【0081】
なお、機器類モデル動作演算部に、重力を加味させて、床以外の場所で、グローブを離した場合には、機器類モデルを落下させるようにしてもよい。
【0082】
また、グローブが、通常の動作と異なる誤った動作をした場合に、予め記憶した破損した機器類モデルなど所望の形状の機器類モデルを表示させるようにしてもよい。
【0083】
また、上記機器類モデル動作演算部は、例えば、グローブが機器類モデルのスイッチやボタンをオンする動作をした場合には、上記記憶部に記憶された、オン状態の機器類モデルの機器類動作モデルを表示部に表示するようにし、また、グローブがオフする動作をした場合には、上記記憶部に記憶された、オフ状態の機器類モデルの機器類動作モデルを表示部に表示するようにしてもよい。
【0084】
また、上記機器類モデルは、本体モデルと部品モデルなど複数の部品モデルにより構成されるように形成し、それぞれ別々に動作して表示されるようにし、例えば、左グローブで本体モデルを掴み、該本体モデルを移動できないように固定し、右グローブで、部品を掴み、該部品を本体モデルに対して回転等させる動作を表示させるようにしてもよい。
【0085】
なお、上記機器類モデル動作演算部は、例えば、一つの機器類モデルを、左グローブと右グローブとで動作する場合に、左右のグローブが相反する動作(異なる動作)をした場合には、上記機器モデルは動かないように設定するようにしてもよい。
【0086】
(6.訓練の説明)
【0087】
本発明においては、図4に示すように、訓練員は上記グローブボックス模擬パネル部9の開口部14からグローブ15に腕8を通し、実機と同様に肉体的に制約された状態を体感しながら、上記VR装置部11を目に装着して使用してグローブボックス作業の操作訓練を行うことができるようになる。
【0088】
なお、図5は、VR上に表示される仮想表示である。
【0089】
本発明においては、図4に示すように、実際のグローブボックス模擬機モデル部9の開口部14による制約により、図5に示すように、VR上に表示される手モデルe(グローブモデルf)の表示も、開口部モデルcからすり抜けることはない。
【0090】
従って、本発明においては、実際のグローブボックス作業と同じ感覚で、VR上で訓練を行うことができるようになる。
【0091】
なお、上記グローブボックス模擬パネル部9載置する台等を設けることにより、上記パネル部9の高さを代えるようにして、例えば、床面に近い位置のグローブボックス作業や、高い位置にあるグローブボックス作業の訓練ができるようにしてもよい。
【0092】
(7.複数の訓練員の説明)
【0093】
また、上記模擬パネル部9を複数用意し、実機における箱本体の前面に位置する部分に設けると共に、背面に位置する部分にも配置して、また、複数のVR装置部を用意し、そして、上記演算部に設けた共有演算部において、上記各VR装置部が、同じグローブボックスモデルと同じ機器類モデルを共有するように設定し、複数人、例えば、2人の訓練員が両面から、同一または別々の内部機器類モデルの取り扱い作業を行えるようにすることにより、両者が連携した、連携訓練ができるようになる。
【0094】
なお、各VR装置部の演算部の共有演算部が形成する仮想空間は、例えば、共有するグローブボックスモデル全体の空間を形成し、各VR装置部の表示部には、それぞれ各訓練員の視界と同様の視界の範囲で見えるように形成される。
【0095】
なお、同一の機器類モデルの取り扱いとしては、例えば、上記演算部の機器類モデル動作演算部が、異なる訓練員のグローブが、同じ動作をした場合にのみ、例えば、異なる訓練員が一つの機器モデルをそれぞれ掴み、所望の方向に同じように移動した時のみ、該機器類モデルが移動するように設定するようにする。
【0096】
また、上記演算部の機器類モデル動作演算部が、本体モデルと部品モデルなど複数の部品モデルからなる機器類モデルを、それぞれ別々に動作して表示されるように設定され、例えば、1の訓練員が、本体モデルを掴み、該本体モデルを移動できないように固定し、他の訓練員が、部品を掴み、該部品を本体モデルに対して回転等させる動作を表示させるようにしてもよい。
【0097】
また、単位パネルとなる上記模擬パネル部9を左右に複数枚組み合わせ、また、複数のVR装置部11を設け、上記各単位パネルに、それぞれ、各VR装置部を装着した訓練員をそれぞれ配置し、そして、例えば、上記と同様に、演算部の共有演算部により、上記各訓練員のVR装置部は、同じグローブボックスモデルと同じ機器類モデルを共有するようにして、例えば、隣接する者同士間で、一つの機器類モデルの左右の移動受け渡し作業を行えるようにしてもよく、これにより、複数の訓練員の連携訓練ができるようになる。
【0098】
例えば、この左右の受け渡し作業は、例えば、一の訓練員が、機器類モデルを掴み、他の訓練員側まで移動させて、そして、他の訓練員が、上記機器類モデルを掴み、両者が、機器類モデルを掴んだことを確認した後に、一の訓練員が機器類モデルを離し、他の訓練員が、所望の位置まで移動させるように訓練する。
【0099】
また、単位パネルを上下に複数枚組み合わせ、それぞれに訓練員を配置することにより、上記と同様に、単位パネル間で内部機器類モデルの上下の移動受け渡し作業に関する複数の受講生の連携訓練ができる。
【0100】
また、図6に示すように、複数の訓練員が異なる場所で、上記模擬パネル部9を用いて訓練を行うこともできる。
【0101】
また、この際、実際には、別空間にいる訓練員であっても、共有する仮想空間内では、上記のように、訓練員が上下左右、又は、対面の位置関係にあるように想定するようにしてもよい。
【0102】
また、各訓練員のVR装置部の表示部の映像や、共有する仮想空間映像を、外部モニタ17に表示できるようにし、指導者や見学者が見ることができるようにしてもよい。
【0103】
なお、上記単位パネルを配置する態様は、上記のように上下動自在にする他、対面に配置したり、左右に連結して配置したり、上下に連結して配置したり、または、別々の箇所に配置したりするなど、訓練の目的に応じて、これらを組み合わせて配置するようにし、多種多様な構造のグローブボックス作業を模擬できるようにする。
【0104】
また、各訓練員の音声データ送受信装置により、各訓練員間で、音声信号により連携を図るようにしてもよい。
【0105】
また、これらの単数あるいは複数の訓練員が作業し、各訓練員のゴーグル内に表示される画像データや、音声データを、上記演算装置に送信し、上記大型の画像表示装置にリアルタイムで音声とともに表示されるようにすることにより、訓練指導者や他の訓練受講者もその訓練状況を把握でき、また、訓練員に対して、適切な指導を行うことができるようになる。
【0106】
(8.フィードバック手段の説明)
【0107】
本発明の訓練装置においては、更に、訓練員に所望の通知を通知する通知部と、グローブモデルや機器類モデルが所望の動作をした時に、上記通知部により訓練員に所望の通知を通知する通知演算部とよりなるフィードバック手段を有する。
【0108】
上記所望の動作とは、例えば、グローブモデルが、グローブボックスモデルや機器類モデルに触れた時や、機器類モデルを掴んだ時や、持つ動作をした時や、移動や回転等させた時など、所望の動作をした時や、グローブボックスモデルや機器類モデルが接触した時や、機器類モデル同士が接触した時などがある。
【0109】
また、上記通知部は、例えば、訓練員に振動を通知する、グローブやVR装置部や訓練員に装着した振動体や、訓練員に所望の色や光や記号やメッセージを表示する表示部や、訓練員に所望の音やメッセージを通知するイヤフォンなどがある。
【0110】
なお、上記表示部は、例えば、上記VR表示部に設けた表示部であり、また、上記イヤフォンは、上記VR装置部に設けたイヤフォンである。
【0111】
上記フィードバック手段によれば、工具モデルなど機器類モデルを使用した際に、反力などの感覚を、手や腕や視覚や聴覚にフィードバックすることができ、持ったことなどを認識することができ、より実際に近い作業性を再現することができるようになる。
【符号の説明】
【0112】
1 箱本体
1a 前面
1b 背面
2 台
3 パネル体
3a パネル枠
4 覗き窓
5 開口部
6 グローブ
7 機器類
8 腕
9 グローブボックス模擬パネル部
10 訓練員
11 VR装置部
12 パネル体
12a パネル枠
12b 部分
13 覗き窓
14 開口部
15 グローブ
15a 腕部分
16 支持部
17 外部モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10