(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水性インクプリンタによって印刷された基材上の画像内の熱アーチファクトを減衰させる、改善された媒体輸送ベルト
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241205BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B65H5/02 C
B65H5/02 B
(21)【出願番号】P 2020199832
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-12-01
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】リン・シー.・フーバー
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケイ.・ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ.・マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エム.・ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】シーミット・プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エイ.・ヴァンコウウェンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ.・レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】チュヘング・ルウ
(72)【発明者】
【氏名】サントフ・エス.・バデシャ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ミーニー
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・エス.・ダーレス
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154500(JP,A)
【文献】特開2019-073027(JP,A)
【文献】特開2015-217634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
少なくとも1つの印刷ヘッドであって、前記少なくとも1つの印刷ヘッドを通過する基材上にインクの滴を排出して、前記基材上にインク画像を形成するように構成されている、少なくとも1つの印刷ヘッドと、
加熱器、媒体輸送ベルト冷却器、及び媒体輸送ベルトを有する乾燥器であって、前記媒体輸送ベルトは、前記インク画像が前記基材上に形成された後で、前記基材に前記加熱器を通過させるように構成され、前記媒体輸送ベルト冷却器は、前記媒体輸送ベルトが前記加熱器を通過し、前記基材が前記媒体輸送ベルトから分離された後に、前記媒体輸送ベルトから熱エネルギーを除去するように位置付けられている、乾燥器と、を備え、
前記媒体輸送ベルト冷却器が、
流体アプリケータを更に備え、前記流体アプリケータは、前記媒体輸送ベルトが前記加熱器を通過し、前記基材が前記媒体輸送ベルトから分離された後に、流体源から前記媒体輸送ベルトに液体である流体を適用するように構成されている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記媒体輸送ベルトが、前記加熱器によって生成された熱エネルギーを反射又は透過する材料で構成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記媒体輸送ベルトが、ポリイミド、ポリエチレン、及びポリプロピレンのうちの1つで構成されている、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記媒体輸送ベルトが孔を有し、前記媒体輸送ベルト内のそれぞれの孔は、300μm未満の直径を有する、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記媒体輸送ベルトが200μm未満の厚さを有し、そのため、前記媒体輸送ベルトの熱質量は、前記媒体輸送ベルトと同じ長さ及び同じ幅のシリコーンベルトよりも小さい、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
介在構造なしに前記媒体輸送ベルトに隣接する空気の領域を包囲する、U字型断面を有する構造体を形成する側面及び底面を有するプレナムと、
前記プレナム内の前記空気の領域に動作可能に結合されて、前記媒体輸送ベルト内の前記孔を通して真空を引き込む真空源と、を更に備える、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記媒体輸送ベルトの幅が、クロスプロセス方向における前記プレナムの前記側面間の距離以上の長さである、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記プレナムが、
前記クロスプロセス方向における前記プレナムの前記側面間に延在する少なくとも1つの支持部材を更に備え、前記少なくとも1つの支持部材は、プロセス方向における前記支持部材の幅よりも大きい、前記クロスプロセス方向の長さを有し、前記少なくとも1つの支持部材は、前記媒体輸送ベルトに接触する連続表面を有する、請求項7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記媒体輸送ベルト内の前記孔が、2mm~5mmの範囲の孔から孔へのピッチを有する二次元アレイに配置されている、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
インクジェットプリンタ用の乾燥器であって、
加熱器と、
媒体輸送ベルト冷却器と、
媒体
輸送ベルトと、を備え、前記媒体輸送ベルトは、インク画像が基材上に形成された後に、前記基材に前記加熱器を通過させるように構成され、前記媒体輸送ベルト冷却器は、前記媒体輸送ベルトが前記加熱器を通過し、前記基材が前記媒体輸送ベルトから分離された後に、前記媒体輸送ベルトから熱エネルギーを除去するように位置付けられ、
前記媒体輸送ベルト冷却器が、
流体アプリケータを更に備え、前記流体アプリケータは、前記媒体輸送ベルトが前記加熱器を通過し、前記基材が前記媒体輸送ベルトから分離された後に、流体源から前記媒体輸送ベルトに液体である流体を適用するように構成されている、乾燥器。
【請求項11】
前記媒体輸送ベルトが、前記加熱器によって生成された熱エネルギーを反射又は透過する材料で構成されている、請求項10に記載の乾燥器。
【請求項12】
前記媒体輸送ベルトが、ポリイミド、ポリエチレン、及びポリプロピレンのうちの1つで構成されている、請求項11に記載の乾燥器。
【請求項13】
前記媒体輸送ベルトが孔を有し、前記媒体輸送ベルト内のそれぞれの孔は、300μm未満の直径を有する、請求項12に記載の乾燥器。
【請求項14】
前記媒体輸送ベルトが200μm未満の厚さを有し、そのため、前記媒体輸送ベルト
の熱質量は、前記媒体輸送ベルトと同じ長さ及び同じ幅のシリコーンベルトよりも小さい、請求項13に記載の乾燥器。
【請求項15】
介在構造なしに前記媒体輸送ベルトに隣接する空気の領域を包囲する、U字型断面を有する構造体を形成する側面及び底面を有するプレナムと、
前記プレナム内の前記空気の領域に動作可能に結合されて、前記媒体輸送ベルト内の前記孔を通して真空を引き込む真空源と、を更に備える、請求項14に記載の乾燥器。
【請求項16】
前記媒体輸送ベルトの幅が
、クロスプロセス方向における前記プレナムの前記側面間の距離以上の長さである、請求項15に記載の乾燥器。
【請求項17】
前記プレナムが、
前記クロスプロセス方向における前記プレナムの前記側面間に延在する少なくとも1つの支持部材を更に備え、前記少なくとも1つの支持部材は
、プロセス方向における前記支持部材の幅よりも大きい、前記クロスプロセス方向の長さを有し、前記少なくとも1つの支持部材は、前記媒体輸送ベルトに接触する連続表面を有する、請求項16に記載の乾燥器。
【請求項18】
前記媒体輸送ベルト内の前記孔が、2mm~5mmの範囲の孔間ピッチを有する二次元アレイに配置されている、請求項17に記載の乾燥器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、水性インク印刷システムに関し、より具体的には、そのようなプリンタ内の乾燥器を介して媒体を搬送する媒体輸送ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の水性インク印刷システムは、コーティングされていない基材及びコーティングされた基材上に画像を印刷する。画像が基材上に直接印刷されるか、又は中間転写部材の周りに構成されたブランケットから転写されるかにかかわらず、画像が基材上にあるときは、画像を基材に固定するために、インク中の水及び他の溶媒が実質的に除去されなければならない。乾燥器は、典型的には、水及び溶媒を除去するために、ブランケットからの画像の転写後、又は画像が基材上に印刷された後に位置付けられる。プリンタの比較的高速な動作を可能にするために、乾燥器は、基材及びインクを、基材の表面から液体を効果的に除去するために、典型的には約100℃に達する温度まで加熱する。
【0003】
低多孔性クレイコーティングは、インクの媒体基材へのウィッキングを防止し得るため、コーティングされた基材は、インク画像からの水の除去に関わる課題を悪化させる。加えて、基材が乾燥器(単数又は複数)を通過する際に、基材内に温度勾配が形成され得る。15~20℃を超える温度勾配は、インク中の水及び溶媒を異なる速度で蒸発させ得る。蒸発速度の不均一性は、インクを基材表面上に流動させる場合があり、それにより、温度勾配に沿ってインク中の顔料が濃縮され、固体密度被覆領域にゴースト像が生成される。
【0004】
プリンタ内の乾燥器(単数又は複数)を介して基材を搬送する現在の媒体輸送ベルトは、真空プラテンを覆う穿孔プラテンを通過する。プラテンは、ベルト及びベルト上の基材を支持するのに役立つ。いくつかの既知のベルトは、ベルトが真空プレナムを覆う穿孔プラテンの上を通過するとき、真空が、穿孔プラテン及びベルト内の孔を通って媒体基材を引き込み、印刷及び乾燥のために基材を定位置に保持することができるように、孔を有している。ベルト内の空隙は、ベルト材料として基材の裏側に熱エネルギーを伝達しないため、ベルト内の孔に隣接する基材領域は、ベルト材料に隣接する基材領域よりも低温である。代わりに、真空は空隙を通して空気流を引き込み、空隙の反対側の基材の部分を冷却する。基材内のこれら2種類の領域間に結果として生じる温度差は、
図6に示される画像欠陥を生成する。図に示されるように、矢印が指す暗い円は、媒体輸送ベルトの孔に隣接した領域である。孔の内側の真空力は、真空孔縁部に媒体を引き寄せ、ベルトと媒体裏側との間の熱伝導を高める。この熱伝導の高まりが、媒体表面上の温度差を生成する。水及び溶媒は、これらの領域ではより急速に蒸発し、結果として、より高い濃度のインク顔料及び染料が存在する。画像内の周囲領域からインク顔料及び染料が描かれ、明るい密度境界が生じている。図に示されるように、暗い円内の明るい円は、媒体輸送ベルト内の孔に隣接した領域である。いくつかの媒体輸送ベルトは、真空プレナムを覆う穿孔プラテンを通過する複数のベルトの配置である。複数のベルトが提供されるため、それぞれのベルトは、ベルト配置によってクロスプロセス方向に搬送される媒体の幅よりも狭い。ベルト配置においてベルトの縁部を越えて延在する基材の領域の温度は、ベルトを覆う基材領域の温度よりも低く、そのため、画像欠陥がこの温度差から生じ得る。これらの領域は、
図6の矢印が指す直線である。同様に、プロセス方向の連続する媒体基材間のベルト(単数又は複数)上のドキュメント間ギャップは、基材によって覆われておらず、そのため、これらのドキュメント間ギャップのベルト領域は、ベルトの被覆領域とは異なる温度に加熱される。基材は、媒体輸送ベルトの回転と同期されないため、ベルトの1回転中のベルトのドキュメント間キャップ領域は、ベルトの後続回転中に基材に覆われる。この現象は、クロスプロセス方向に延在し、互いにプロセス方向に追従する、異なる温度の熱帯を生成する。これらの熱帯により、異なるインク蒸発速度及び画像欠陥の可能性が生じる。
【0005】
多孔質布地から作製された媒体輸送ベルトは、真空孔を排除し、基材及び媒体ベルトにおける温度差から生じる画像欠陥に対処するように開発されてきた。残念ながら、これらのベルトの布地に生じる穿刺パターン、縫い目、又はリップルは、ベルトと基材との間に不均一な接触点をもたらす。不均一な接触によって、結果としてベルトと媒体との間の不均一な熱伝導が生じ、特にインク画像内の固体インク被覆領域において、付随する画像欠陥を伴う温度差をもたらす。基材及び基材を搬送するベルト(単数又は複数)内の温度差から生じる画像欠陥を生成することなく、真空システムと協働して、媒体基材を定位置に保持する媒体輸送ベルトは有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
新規のプリンタは、基材内の温度差から生じる画像欠陥を生成することなく、真空システムと協働して、媒体基材をベルトに対して保持する乾燥器を含む。プリンタは、基材上にインク画像を形成するために、少なくとも1つの印刷ヘッドを通って移動する基材上にインクの滴を排出するように構成された少なくとも1つの印刷ヘッドと、加熱器、媒体輸送ベルト冷却器、及び媒体輸送ベルトを有する乾燥器と、を含む。媒体搬送ベルトは、インク画像が基材上に形成された後で、基材に加熱器を通過させるように構成され、媒体輸送ベルト冷却器は、媒体輸送ベルトが加熱器を通過し、基材が媒体輸送ベルトから分離された後に、媒体輸送ベルトから熱エネルギーを除去するように位置付けられる。
【0007】
水性インク印刷システムのための新しい乾燥器は、基材内の温度差から生じる画像欠陥を生成することなく、真空システムと協働して、媒体基材をベルトに対して保持する。乾燥器は、加熱器と、媒体輸送ベルト冷却器と、媒体輸送ベルトと、を含む。媒体搬送ベルトは、インク画像が基材上に形成された後に、基材に加熱器を通過させるように構成され、媒体輸送ベルト冷却器は、媒体輸送ベルトが加熱器を通過し、基材が媒体輸送ベルトから分離された後に、媒体輸送ベルトから熱エネルギーを除去するように位置付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
基材内の温度差から生じる画像欠陥を生成することなく、真空システムと協働して、媒体基材をベルトに対して保持する媒体輸送ベルトの前述の態様及び他の特徴について、添付図面に関連付けて以下に説明する。
【0009】
【
図1】基材内の温度差から生じる画像欠陥を生成することなく、真空システムと協働して、媒体基材をベルトに対して保持する媒体輸送ベルトを有する水性インク印刷システムの概略図である。
【0010】
【0011】
【0012】
【
図4】
図2に示された乾燥器の代替実施形態の側面図である。
【0013】
【
図5】
図4の乾燥器を動作させるためのプロセスのフロー図である。
【0014】
【
図6】基材よりも狭く、真空プレナムプラテン上を摺動する大径の孔を有する輸送ベルトによって支持される、基材上の水性インク画像を乾燥させることによって生成されるアーチファクトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号が、同様の要素を指定するために図面を通じて使用されている。
【0016】
図1は、基材内の温度差から生じる画像欠陥を生成することなく、真空システムと協働して、媒体基材をベルトに対して保持するように構成された新規の媒体輸送ベルトによって搬送される基材上に画像を印刷するように構成された、水性プリンタ100のブロック図を示す。プリンタ100は、媒体供給部104、前処理ユニット120、マーキングユニット140、乾燥ユニット160、及び媒体収容部200を含む。媒体供給部104は、プリンタ100によって印刷するための複数の媒体シート108を記憶する。媒体シート108は、いくつかの実施形態では、クレイコーティングされているか、又は他の種類の処理紙であってもよい。
【0017】
前処理ユニット120は、媒体シート108を媒体供給部104から受け取り、前処理ユニット120を介してプロセス方向112に媒体シート108を輸送する、少なくとも1つの輸送ベルト124を含む。前処理ユニット120は、媒体シート108を調整し、マーキングユニット140に印刷するために媒体シート108を準備する、1つ以上の前処理装置128を含む。前処理ユニット120は、例えば、媒体シート108にコーティングを適用するコーティング装置のうちの1つ以上と、媒体シート108を乾燥させる乾燥装置と、媒体シート108を所定の温度に加熱する加熱装置と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、プリンタ100は前処理ユニット120を含まず、媒体シート108は、媒体供給部104からマーキングユニット140に直接供給される。他の実施形態では、プリンタ100は、2つ以上の前処理ユニットを含んでもよい。
【0018】
マーキングユニット140は、前処理ユニット120又は媒体供給部104から媒体シート108を受け取り、マーキングユニット140を介して媒体シート108を輸送する、少なくとも1つのマーキングユニット輸送ベルト144を含む。マーキングユニット140は、媒体シート108がマーキングユニット140を通って輸送される際に、媒体シート108上に水性インクを排出する、少なくとも1つの印刷ヘッド148を更に含む。図示した実施形態では、マーキングユニット140は、それぞれが媒体シート108上にシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックインクのうちの1つを排出する、4つの印刷ヘッド140を含む。しかしながら、他の実施形態は、より多い又は少ない印刷ヘッド、印刷ヘッドのアレイなどを含み得る他の印刷ヘッド配置を含むことを、読者は理解すべきである。
【0019】
引き続き
図1を参照すると、乾燥器160は、媒体シート108をマーキングユニット140から受け取る媒体輸送ベルト164を含む。乾燥ベルト164は、アイドラーローラー168と、電動モーター174によって駆動される駆動ローラー172との間で張力をかけられる。乾燥器108は、温度差から生じる画像欠陥を生じさせることなく、基材上の水性インク中の水及び溶媒を除去するのに十分な温度を有する熱に、印刷された基材を晒すように構成される。この目的を達成するために、乾燥器160内の媒体輸送ベルト164は、以下により詳細に記載される構造で構成される。加熱器192は、乾燥器160内に位置付けられて、乾燥器108を通過する基材に向かって熱を方向付ける。加熱器192は、赤外線(IR)放射器、マイクロ波放射器、又は対流加熱器などのより従来型の加熱器など、電磁放射線の様々な種類の放射器の1つ以上のアレイであり得る。乾燥器160を通過した後、基材はベルト164によって出力トレイ200に搬送される。前処理ユニット120、マーキングユニット140、及び乾燥器160は、コントローラ130によって操作される。コントローラは、コントローラに動作可能に接続されたメモリに記憶されたプログラム命令で構成され、そのため、コントローラは、コントローラが記憶されたプログラム命令を実行したときに、様々なプリンタ構成要素を動作させることによって機能を実行する。簡潔にするために1つのコントローラのみが
図1に示されているが、複数のコントローラが様々な機能に使用される場合があり、これらのコントローラは、それらが実行する機能を同期させるために互いに通信し得る。
【0020】
図2は、真空プラテンで覆われていない新たな媒体輸送ベルト164及び真空プレナム184で構成された乾燥器160の側面図である。代わりに、真空プレナム184は、側部プレート244及び底部プレート248を有するが、ボックスの上に置かれたプレート内に孔又はスロットを有し、典型的にはその上を媒体輸送ベルトが摺動する上部プラテンのない、5面のボックスである。プレナムは、
図3に示されるように、上面の周囲にフランジ266を有する。フランジは、媒体輸送ベルト164を支持し、真空空気流がベルト孔を通して方向付けられ、プレナム縁部の周囲で失われないように真空プレナムの頂部を封止するために媒体輸送ベルト164の表面を提供する。この構成は、前述したように、温度差の原因であった真空孔を有する金属真空プレナムプレートを除去する。いくつかの実施形態では、真空プラテンのプロセス方向の長さは十分に短く、真空プラテンをクロスプロセス方向に横切る媒体ベルト支持体は必要とされない。すなわち、張力ローラー252は、媒体輸送ベルト164を、アイドラーローラー168と駆動ローラー172との間のプロセス方向に十分にピンと張った状態に維持することができ、ベルトを比較的平坦に維持するために真空プレナム内に他の支持体は必要とされない。本明細書で使用するとき、用語「プロセス方向」は、プリンタにおける媒体輸送ベルトの移動の方向を意味し、用語「クロスプロセス方向」は、媒体輸送ベルトの平面におけるプロセス方向に垂直な軸を意味する。プレナム184及び媒体輸送ベルト164は、プリンタ100によって印刷され得る最も広い媒体の幅よりも、クロスプロセス方向に幅広である。この構成は、前述のように基材内の温度差の原因であり得る、媒体基材がフランジ266の上に延在することを確実に不可能にする。
【0021】
いくつかの実施形態では、真空プレナム184のプロセス方向の長さは、
図3に示されるようにフランジ266の間に延在する1つ以上のベルト支持体264を必要とする。
図3は、ベルトが開放プレナム184の上を移動する際に、媒体輸送ベルト164の方を見下ろす加熱器192の観点からの乾燥器輸送の上面図である。プロセス方向は、文字P及び矢印によって図に示される。温度差を防止するために、ベルト支持体264は連続表面を有し、これは、ベルト164に接触する支持体の表面に孔又は他の空隙がないことを意味する。このように、プロセス方向の温度差の別の原因が除去される。支持体は、静止構造であってもよく、又はベルトが支持体に接触し、その上を移動するときに回転するアイドラーローラーであってもよい。支持体は、ベルト移動に対して垂直であるか又は角度付きであり得る。ベルト支持体264はまた、真空プレナム184の全幅にわたって延在して、連続的な接触を維持し、プレナム内のクロスプロセス方向に媒体輸送ベルト164を有する均一な熱ヒートシンクを提供する。
【0022】
媒体輸送ベルト164は、薄くなるように構成され、加熱器192によって生成される熱エネルギーに対して透過的な又は反射性の材料で構成されている。本明細書で使用するとき、用語「薄い」は、以前より既知の乾燥器で使用されるベルトの厚さより実質的に小さいベルト厚さを意味し、そのため、ベルトの熱質量は、同じ長さ及び幅を有するベルトから低減される。一実施形態では、ベルト厚さは、約50μm~約200μmの範囲である。ベルトを比較的薄く保つことによって、その熱質量は最小化される。最小限の熱質量の重要性について、以下に論じる。加熱器がIR加熱器である一実施形態では、ベルト164は、以前より既知のベルトで使用されるシリコーンではなくポリイミドから作製される。ポリイミド、ポリエチレン、及びポリプロピレンは、IRに対して比較的透過的であるが、これらの物質のいくつかの源は、物質中にIRを吸収し得る多くの添加剤を含む。これらの添加剤は、以下に記載されるように、追加の乾燥器構成の調整を必要とする場合がある。媒体輸送ベルト164はまた、小径を有する真空孔268(
図3)を含む。一実施形態では、孔は直径100~150μmであり、少なくとも直径300μm未満である。この範囲の孔は、媒体基材の表面に温度差を生成することなく、ベルトによって輸送される媒体基材を捕捉及び保持するために真空力を適用するのに十分である。
【0023】
300μmを超える開口部を有する1つ以上のシリコーンベルトを使用する乾燥器を有する既知のプリンタでは、IRラジエータは、基材が乾燥器に到着する23秒前に、それらの電力レベルの75%で活性化される。シリコーンベルトは、その温度が105℃でピークに達した際に、この熱エネルギーを吸収する。基材がIRエネルギーを吸収するため、100枚のブランク基材が乾燥器を通して供給されて、ベルト温度を安定化させる。このように、この既知のベルトは、約75℃~約80℃の範囲で安定化する温度を有する。これらの温度では、温度差が真空孔の周囲のベルト及びベルト縁部に生じ、インク画像のいくつかの色でアーチファクトを生成する。
【0024】
これらの差を低減し、インク画像に対するそれらの影響を減衰させるために、媒体輸送ベルト冷却器270が開発された。媒体輸送ベルト冷却器の一実施形態では、流体源276に動作可能に接続された流体アプリケータ272は、真空プレナム184の下の位置で、水などの流体をベルトに適用する(
図2)。流体アプリケータ272は、ベルトとの接触によって流体を適用するローラー、ベルトに向けてミストを方向付けるスプレーヘッドなどであってもよい。適用された流体は、ベルトがアイドラーローラー168に到達し、基材に接触する前に蒸発する。蒸発プロセスを補助するために、冷却器270は、ベルトからの流体の蒸発及びベルトの冷却を補助するため、ベルトに向かって周囲空気又は冷気を方向付ける、ファン274又はチラーなどの他の空気流源を含む。この組み合わせは、以前から既知のシリコーンベルトの温度を約50℃~約55℃の範囲まで低下させ、この温度範囲内にベルトを保持することで、インク画像における温度差の影響のほとんどを除去する。コントローラ130は、ファン274及び流体アプリケータ272を動作させて、ファンの速度及びベルトに適用される流体の量を調整する。これらの動作は、ユーザインターフェース132を通じてコントローラ130に供給されたデータを使用して実行される。例えば、紙の熱質量、コーティングの有無などを識別する種類の紙は、コントローラによって、いくつかの所定速度のうちの1つでファンを動作させ、ベルトに適用される流体の量を調整するために使用され得る。このように、基材が存在せず、加熱器192に晒されないベルトの部分に沿ってベルト冷却器を付加することは、以前より既知のプリンタ内の既知の乾燥器で乾燥させたインク画像中のアーチファクトを減衰させるのに有効であり得る。IR反射性又は透過性ベルトは、ベルト冷却器によって放散される熱エネルギーをほとんど吸収しないため、上述の媒体輸送ベルト164の熱質量は小さいほど、ベルト冷却器270の効果が更に高まる。具体的には、IR透過性ポリイミドベルト温度は、より厚いシリコーンベルトの場合、105℃ではなく約90℃でピークに達する。適用された流体とファン274からの空気流との結合は、ベルト表面温度を約40℃まで冷却し、これは、シリコーンベルトで達成される温度50℃よりも画像アーチファクトを防止するのに有効である。
【0025】
乾燥器の別の実施形態を
図4に示す。この実施形態では、媒体輸送ベルト冷却器270はファン274を有し、流体アプリケータは、比較的薄く、ヒートシンクを可撓性にするアルミニウムなどの金属から作製された金属ヒートシンク280に置き換えられている。ヒートシンク280は、作動装置134に動作可能に接続される。コントローラ130は、ファン274及び作動装置134を動作させて、ファンの速度及びヒートシンクに接触するベルト領域の量を調整する。これらの動作は、ユーザインターフェース132を通じてコントローラ130に供給されたデータを使用して実行される。例えば、紙の熱質量、コーティングの有無などを識別する種類の紙は、コントローラによって、いくつかの所定速度のうちの1つでファンを動作させ、ベルトに対するヒートシンクの位置を調整して、ヒートシンクに接触するベルト領域の量を増減させるために使用され得る。このように、基材が存在せず、加熱器192に晒されないベルトの部分に沿ってベルト冷却器を付加することは、乾燥器160によって乾燥されたインク画像中のアーチファクトを減衰させるのに有効であり得る。ヒートシンクが媒体輸送ベルトから熱エネルギーを吸収すると、ベルトがアイドラーローラー168に到達し、基材に接触する前に、ベルトの温度が低下する。
図4のヒートシンク構成はまた、以前より既知のシリコーンベルトの温度を約50℃~約55℃の範囲まで低下させ、この温度範囲内にベルトを保持することで、インク画像における温度差の影響のほとんどを除去する。このように、ベルトが加熱器192を通過した後、及び基材が媒体輸送ベルトから分離された後にベルトを冷却するように位置付けられた媒体輸送ベルト冷却器を付加することは、以前より既知のプリンタにおいて既知の乾燥器によって乾燥されたインク画像中のアーチファクトを減衰させるのに有効であり得る。IR反射性又は透過性ベルトは、ベルト冷却器によって放散される熱エネルギーをほとんど吸収しないため、上述の乾燥器160内の媒体輸送ベルト164の熱質量は小さいほど、
図4に示されるベルト冷却器270の効果が更に高まる。具体的には、IR透過性ポリイミドベルト温度は、より厚いシリコーンベルトの場合、105℃ではなく約90℃でピークに達する。冷却器270のヒートシンク280及びファン274は、ベルト表面温度を約40℃まで冷却し、これは、シリコーンベルトのみで達成される温度50℃よりも画像アーチファクトを防止するのに有効である。
【0026】
図2及び
図4の乾燥器を動作させるためのプロセスを
図5に示す。このプロセスは、ベルトからの冷却器構成要素の後退で開始する(ブロック504)。印刷ジョブ用の媒体の種類は、例えば、ユーザインターフェースから印刷ジョブパラメータとしてそれを受け取ることによって識別され、コントローラは、印刷ジョブにベルト冷却が必要かどうかを決定する(ブロック508)。冷却器は、必要でない場合は後退したままである(ブロック512)。印刷される媒体の種類にベルト冷却が必要である場合、媒体の重量が識別され、所定の閾値と比較される(ブロック516)。一実施形態では、プリンタによって印刷され得る異なる種類の媒体の重量はメモリに記憶され、所定の閾値は、1平方メートル当たり150グラムである。媒体の重量が所定の閾値を超える場合、冷却器は後退したままである(ブロック520)。媒体の重量が所定の閾値以下である場合、ファンが起動し、流体がベルトに適用されるか、又はヒートシンクがベルトと係合するように移動されるかのいずれかが行われる(ブロック524)。ベルト温度が、一実施形態では50℃である所定の閾値を下回ったままである限り(ブロック528)、冷却器はベルトと係合したままである(ブロック532)。ベルトの温度が所定の閾値に等しいか又はそれを超えるとき、ファン速度、及び適用される流体の量又はベルトに係合するヒートシンクの領域のいずれかが、これらのパラメータの最大設定点と比較される(ブロック536)。これらの設定点がそれらの最大値にない場合、ファン速度、及び適用される流体の量又はヒートシンク設定点の領域のいずれかが増加し、それに応じて冷却器の動作が調整される(ブロック540)。ベルト温度及び冷却器の動作設定点をチェックするこのループ(ブロック528、536、及び540)は、最大設定点に到達し、冷却器がそれらの設定点で動作するまで継続する。ベルト温度が所定の閾値未満に留まることなく最大設定点に到達した場合、信号がユーザインターフェースに送信されて、可能性のある画像欠陥の発生がユーザに警告される(ブロック544)。印刷ジョブの終了時に、ベルト冷却器が後退し(ブロック548)、ファンは、ヒートシンクの温度が、一実施形態では30℃である所定の閾値を下回るまで(ブロック552)、ヒートシンク実施形態におけるヒートシンクに空気を方向付け続ける。
【0027】
前述のように、低熱質量の薄いポリイミド媒体輸送ベルトは、より厚いシリコーンベルトよりも著しく高い速度で熱エネルギーを増減させる。薄いベルトは、急速に加熱及び冷却され、結果として、基材に覆われたベルト領域よりも多くの熱エネルギーを吸収する、ドキュメント間ギャップ内のベルトの領域間により高い温度差をもたらす。この効果から、ベルトの周囲に複数のクロスプロセス方向の温度差帯が生成される。上述のベルト冷却実施形態は、加熱器192に晒される領域と媒体に覆われる領域との間の温度差を最小化するのに有効である。
【0028】
これらの態様を
図1に示される乾燥器160に組み合わせることで、ベルト164は、真空プレナムを完全にクロスプロセス方向に覆う、比較的薄い熱反射性又は透過性ベルトとなり、約2mm~約5mmの範囲の孔間ピッチを有する二次元アレイに配置された、300μm未満の直径を有する孔を有し、そのため、基材は、孔に適用される真空によってベルトに対して保持される。真空プレナム184は、それを覆うプラテンを有さないが、ベルトに接触する連続表面を有する狭い支持部材264が、ベルト内の孔及び以前より既知の真空プレナムのプラテンで生じる温度差を導入することなく、必要に応じてベルト164の支持を提供するために、クロスプロセス方向に又はクロスプロセス方向に対して角度をなして位置付けられ得る。また、開放プレナムは、プレナム上を通過するベルト内の全ての孔において均一な真空空気流を可能にする。
【0029】
上記で開示した装置及び他の特徴、並びに機能、又はそれらの代替物の変形は、望ましくは多くの他の異なるシステム又は用途に組み込まれ得ることが理解されるであろう。以下の「特許請求の範囲」によって包含されることも意図される、様々な現在予期されない代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によって行われてよい。