(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241205BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241205BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241205BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L29/78 617N
H01L27/146 C
H01L29/78 619B
H01L29/78 618B
G09F9/30 338
(21)【出願番号】P 2020205197
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】堅石 李甫
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0265789(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0172954(US,A1)
【文献】特開2011-108773(JP,A)
【文献】特開2020-115545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0275038(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 27/146
H01L 21/336
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置されるボトム電極と、
前記ボトム電極の上方に配置されるボトム絶縁層と、
前記ボトム絶縁層の上方に配置されるシールド電極と、
前記シールド電極の上方に配置されるシールド絶縁層と、
前記シールド絶縁層の上方に配置され、チャネル領域を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上方に配置されるゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上方に配置されるゲート電極とを備え、
前記シールド電極は、前記ゲート電極及び前記酸化物半導体層と対向する位置に配置され
、
前記シールド電極には、グランド電位が印加されている
半導体装置。
【請求項2】
前記酸化物半導体層は、前記ボトム電極と対向する位置に配置される
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記チャネル領域のチャネル長方向における前記ボトム電極の長さは、前記チャネル長方向における前記シールド電極の長さより長い
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記チャネル領域のチャネル長方向における前記ゲート絶縁層の長さは、前記チャネル長方向における前記ゲート電極の長さより長い
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記チャネル領域のチャネル長方向における前記ゲート絶縁層の長さは、前記チャネル長方向における前記ゲート電極の長さと等しい
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ボトム電極には、正電位が印加される
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体装置は、前記酸化物半導体層と接続されるドレイン電極及びソース電極をさらに備え、
前記シールド電極は、前記ソース電極と同電位である
請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む半導体装置が、様々な分野の電子機器に活用されている。薄膜トランジスタの半導体膜には、例えば、酸化物半導体材料を用いることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された酸化物半導体材料を用いた薄膜トランジスタにおいては、比較的少ない工程数で寄生容量の小さい薄膜トランジスタを製造するために、トップゲートセルフアライン構造が採用されている。特許文献1に記載された半導体装置の製造方法においては、ゲート電極及びゲート絶縁層がドライエッチングによってパターニングされる。この際に、ゲート絶縁層の下に位置する酸化物半導体層のうち、ゲート絶縁層から露出した領域が、例えば、ドライエッチングなどの処理によって低抵抗化される。このように、低抵抗化された酸化物半導体層とソース電極及びドレイン電極とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された半導体装置の製造方法においては、低抵抗領域がゲート電極の下方の領域にまで形成され得る。また、低抵抗領域の形成範囲の制御は容易ではない。このため、特許文献1に記載された半導体装置では、ゲート電極の下方における低抵抗領域の形成範囲の個体差に起因して、特性のばらつきが発生し得る。
【0006】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたものであり、特性のばらつきを低減できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る半導体装置は、基板と、前記基板の上方に配置されるボトム電極と、前記ボトム電極の上方に配置されるボトム絶縁層と、前記ボトム絶縁層の上方に配置されるシールド電極と、前記シールド電極の上方に配置されるシールド絶縁層と、前記シールド絶縁層の上方に配置され、チャネル領域を有する酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上方に配置されるゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上方に配置されるゲート電極とを備え、前記シールド電極は、前記ゲート電極及び前記酸化物半導体層と対向する位置に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、特性のばらつきを低減できる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの要部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの構成を模式的に示す上面図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第一工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第二工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3C】
図3Cは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第三工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3D】
図3Dは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第四工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3E】
図3Eは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第六工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3F】
図3Fは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第七工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3G】
図3Gは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第八工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3H】
図3Hは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第九工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3I】
図3Iは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第十工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図3J】
図3Jは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第十一工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第一工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第二工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4C】
図4Cは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第三工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4D】
図4Dは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第四工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4E】
図4Eは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第五工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4F】
図4Fは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第六工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4G】
図4Gは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第七工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4H】
図4Hは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第八工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4I】
図4Iは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第九工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4J】
図4Jは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第十工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図4K】
図4Kは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法の第十一工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
【
図5】
図5は、比較例の薄膜トランジスタの要部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、比較例の薄膜トランジスタのゲート電圧とドレイン電流との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る薄膜トランジスタのゲート電圧とドレイン電流との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る薄膜トランジスタの要部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、各実施の形態に係る薄膜トランジスタが適用される表示装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、各実施の形態に係る薄膜トランジスタが適用される撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、各実施の形態に係る薄膜トランジスタが適用される電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、並びに、工程の順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
【0013】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る半導体装置について説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例である薄膜トランジスタとその製造方法について説明する。
【0014】
[1-1.構成]
まず、実施の形態に係る薄膜トランジスタの構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10の要部の構成を示す模式的な断面図である。本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10は、後述する本実施の形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を用いて製造される。薄膜トランジスタ10は、トップゲート型の薄膜トランジスタであり、表示装置、撮像装置などの駆動素子に用いられる。薄膜トランジスタ10は、本開示に係る半導体装置の一具体例である。
【0015】
図1に示されるように、薄膜トランジスタ10は、ボトム電極61と、ボトム絶縁層62と、シールド電極12と、シールド絶縁層13と、酸化物半導体層15と、ゲート絶縁層17と、ゲート電極18とを備える。本実施の形態では、薄膜トランジスタ10は、基板11と、層間絶縁膜19及び21と、ソース電極22と、ドレイン電極23とをさらに備える。
【0016】
基板11は、薄膜トランジスタ10の基台となる板状部材である。本実施の形態では、基板11は、例えば、ガラス、石英及びシリコンなどから構成されている。基板11は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂材料から構成されていてもよい。また、基板11は、絶縁材料が成膜されたステンレス鋼(SUS)などの金属板であってもよい。
【0017】
ボトム電極61は、基板11の上方に配置される導電層である。ボトム電極61は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、ネオジム(Nd)、銅(Cu)のうちの1種を含む単体又は合金で構成される。また、ボトム電極61は、上記の少なくとも1種の金属を含む化合物、又は、2種以上の金属を含む積層膜であってもよい。また、ボトム電極61は、例えばITOなどの透明導電膜であってもよい。本実施の形態では、ボトム電極61には、正の電位が印加される。ボトム電極61に印加される電位は、例えば、10V程度である。なお、
図1には、ボトム電極61に電位が印加されることによって発生する電界の一部が、ブロック矢印で示されている。
【0018】
ボトム絶縁層62は、ボトム電極61の上方に配置される絶縁層である。ボトム絶縁層62は、ボトム電極61とシールド電極12とを絶縁する。本実施の形態では、ボトム絶縁層62は、ボトム電極61上に配置され、ボトム電極61の全体を覆う。ボトム絶縁層62の構成は、絶縁層であれば特に限定されない。ボトム絶縁層62として、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸窒化膜(SiON)、酸化アルミニウム膜(AlOx)、酸化ハフニウム(HfOx)のうちの1種よりなる単層膜、又は、それらのうちの2種以上よりなる積層膜を用いることができる。本実施の形態では、ボトム絶縁層62は、シリコン窒化膜(SiNx)である。
【0019】
シールド電極12は、ボトム絶縁層62の上方に配置される所定の形状にパターニングされた導電層である。シールド電極12は、ゲート電極18及び酸化物半導体層15と対向する位置に配置される。言い換えると、シールド電極12は、基板11の主面の上面視において、ゲート電極18及び酸化物半導体層15と重なる位置に配置される。シールド電極12は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、ネオジム(Nd)、銅(Cu)のうちの1種を含む単体又は合金で構成される。また、シールド電極12は、上記の少なくとも1種の金属を含む化合物、又は、2種以上の金属を含む積層膜であってもよい。また、シールド電極12は、例えばITOなどの透明導電膜であってもよい。本実施の形態では、シールド電極12は、ソース電極22と同電位である。シールド電極12は、ソース電極22と電気的に接続されていてもよいし、ソース電極22と同一の電位が印加されていてもよい。また、シールド電極12は、ゲート電極18と同電位であってもよい。シールド電極12は、ゲート電極18と電気的に接続されていてもよいし、ゲート電極18と同一の電位が印加されていてもよい。
【0020】
シールド絶縁層13は、シールド電極12の上方に配置される絶縁層である。シールド絶縁層13は、シールド電極12と酸化物半導体層15とを絶縁するシールド電極絶縁層である。本実施の形態では、シールド絶縁層13は、シールド電極12上と、ボトム絶縁層62上とに配置される。シールド絶縁層13の構成は、絶縁層であれば特に限定されない。シールド絶縁層13として、例えば、ボトム絶縁層62と同様の絶縁膜を用いることができる。本実施の形態では、シールド絶縁層13は、下側絶縁層13aと、上側絶縁層13bとを有する。下側絶縁層13aは、シールド電極12上と、ボトム絶縁層62上とに配置される絶縁層である。本実施の形態では、下側絶縁層13aは、シリコン窒化膜(SiNx)である。上側絶縁層13bは、下側絶縁層13a上に配置される絶縁層である。本実施の形態では、上側絶縁層13bは、シリコン酸化膜(SiOx)である。
【0021】
酸化物半導体層15は、シールド絶縁層13の上方に配置され、チャネル領域15cと、低抵抗領域15nとを有する半導体層である。酸化物半導体層15は、シールド絶縁層13上の所定の領域に配置される。チャネル領域15cは、シールド電極12及びゲート電極18と対向する位置に形成される。言い換えると、チャネル領域15cは、基板11の主面の上面視において、シールド電極12及びゲート電極18と重なる位置に形成される。酸化物半導体層15は、ボトム電極61と対向する位置に配置される。チャネル領域15cのチャネル長方向(つまり、
図1の水平方向)におけるボトム電極61の長さは、チャネル長方向におけるシールド電極12の長さより長い。低抵抗領域15nは、ボトム電極61と対向する酸化物半導体層15の領域のうち、チャネル領域15cの外部の領域に形成される。酸化物半導体層15は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、チタン(Ti)及びニオブ(Nb)のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を主成分として含む酸化物半導体から構成されている。酸化物半導体層15として、例えば、酸化インジウムスズ亜鉛(ITZO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO:InGaZnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムガリウム(IGO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム(InO)などを用いることができる。本実施の形態では、酸化物半導体層15は、酸化インジウムガリウム亜鉛膜である。
【0022】
ゲート絶縁層17は、酸化物半導体層15の上方に配置される絶縁層である。また、ゲート絶縁層17は、ゲート電極18の直下に配置される。ゲート絶縁層17は、酸化物半導体層15のチャネル領域15cのチャネル長方向における長さは、チャネル長方向におけるゲート電極18の長さより長い。例えば、ゲート絶縁層がゲート電極と形状を有する、いわゆるセルフアライン構造においては、ゲート電極と酸化物半導体層との間における電流リークが発生し得る。本実施の形態では、ゲート絶縁層17が上述したような形状を有するため、セルフアライン構造において発生し得る電流リークを抑制できる。ゲート絶縁層17の構成は、絶縁層であれば特に限定されない。ゲート絶縁層17として、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸窒化膜(SiON)、酸化アルミニウム膜(AlOx)、酸化ハフニウム(HfOx)のうちの1種よりなる単層膜、又は、それらのうちの2種以上よりなる積層膜を用いることができる。本実施の形態では、ゲート絶縁層17は、シリコン酸化膜(SiOx)膜である。
【0023】
ゲート電極18は、ゲート絶縁層17の上方に配置される導電層である。ゲート電極18は、ゲート絶縁層17を介して酸化物半導体層15のチャネル領域と対向している。ゲート電極18は、印加されるゲート電圧によってチャネル領域中のキャリア密度を制御すると共に、電位を供給する配線としての機能を有する。ゲート電極18は、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、ネオジム(Nd)及び銅(Cu)のうちの1種を含む単体、又は、合金で構成される。また、ゲート電極18は、上記の少なくとも1種の金属を含む化合物、又は、2種以上の金属を含む積層膜であってもよい。また、ゲート電極18は、例えばITOなどの透明導電膜であってもよい。
【0024】
層間絶縁膜19及び21は、ゲート電極18の上方に配置される絶縁膜である。層間絶縁膜19は、ゲート電極18及びゲート絶縁層17上に配置される。層間絶縁膜19として、例えば、上述したボトム絶縁層62と同様の絶縁膜を用いることができる。本実施の形態では、層間絶縁膜19は、ゲート電極18及びゲート絶縁層17の上方に配置される第一絶縁膜19aと、第一絶縁膜19aの上方に配置される第二絶縁膜19bとを有する。例えば、第一絶縁膜19aは、シリコン酸化膜(SiOx)であり、第二絶縁膜19bは、酸化アルミニウム膜(AlOx)である。層間絶縁膜21は、層間絶縁膜19上に配置される絶縁膜である。層間絶縁膜21として、例えば、感光性を有する樹脂膜を用いることができる。具体的には、層間絶縁膜21として、例えば、ポリイミド樹脂膜、ノボラック樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。本実施の形態では、層間絶縁膜21は、ポリイミド樹脂膜である。
【0025】
ソース電極22及びドレイン電極23は、それぞれ、薄膜トランジスタ10のソース及びドレインとして機能する電極であり、例えば、ゲート電極18の構成材料として列挙したものと同様の金属、透明導電膜などで構成されている。ソース電極22及びドレイン電極23としては、電気伝導性の良い材料が選択されてもよい。ソース電極22及びドレイン電極23は、層間絶縁膜19及び21、並びに、ゲート絶縁層17を貫通する接続孔を介して酸化物半導体層15の低抵抗領域15nに接続されている。
【0026】
[1-2.製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10の製造方法について、
図2~
図4Kを用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10の構成を模式的に示す上面図である。
図2においては、
図1に示される薄膜トランジスタ10の基板11の主面の上面視における構成が示されている。
図3A~
図3Jは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10の製造方法の各工程を示すチャネル長方向に平行な断面図である。
図3A~
図3Jには、
図2のIII-III線における断面が示されている。
図4A~
図4Kは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10の製造方法の各工程を示すチャネル幅方向に平行な断面図である。
図4A~
図4Kには、
図2のIV-IV線における断面が示されている。
【0027】
まず、
図3A及び
図4Aに示されるように、基板11の一方の主面の全面に、ボトム電極61を、例えば、スパッタ法などを用いて形成し、続いて、ボトム電極61の上方の全面に、ボトム絶縁層62を、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成する。
【0028】
続いて、
図3B及び
図4Bに示されるように、シールド電極12及びシールド絶縁層13を形成する。具体的には、ボトム絶縁層62の上方の全面に導電膜を、例えばスパッタ法などを用いて形成する。続いて、当該導電膜を、例えば、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて所定形状にパターニングすることで、所定形状のシールド電極12を形成する。続いて、シールド電極12及びボトム絶縁層62の上方にシールド絶縁層13を形成する。具体的には、シールド電極12及びボトム絶縁層62の上方に、下側絶縁層13a及び上側絶縁層13bを、例えば、プラズマCVD法を用いて形成する。
【0029】
続いて、
図3C及び
図4Cに示されるように、シールド絶縁層13の上方に、酸化物半導体層15を形成する。具体的には、シールド絶縁層13上の全面に、酸化物半導体膜を、例えば、スパッタ法を用いて形成し、続いて、当該酸化物半導体膜を、例えば、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて所定形状にパターニングすることで、シールド電極12に対向する位置に、所定形状の酸化物半導体層15を形成する。
【0030】
続いて、
図3D及び
図4Dに示されるように、シールド絶縁層13及び酸化物半導体層15の上方に、ゲート絶縁層17を、例えば、プラズマCVD法を用いて形成する。
【0031】
続いて、
図4Eに示されるように、コンタクトホール12HA及び61HAを形成する。コンタクトホール12HAは、シールド電極12上のシールド絶縁層13及びゲート絶縁層17に形成され、シールド電極12を露出させる穴である。コンタクトホール61HAは、ボトム電極61上のシールド絶縁層13、ゲート絶縁層17及びボトム絶縁層62に形成され、ボトム電極61を露出させる穴である。コンタクトホール61HAは、シールド電極12が形成されていない領域に形成される。コンタクトホール12HA及び61HAは、例えば、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて形成される。コンタクトホール12HA及び61HAは、同時に形成されてもよいし、別々に形成されてもよい。また、シールド絶縁層13及びゲート絶縁層17をエッチングする工程と、ボトム絶縁層62をエッチングする工程とが別々に行われてもよい。
【0032】
続いて、
図3E及び
図4Fに示されるように、ゲート電極18、コンタクト電極12CA及び61CAを形成する。コンタクト電極12CAは、コンタクトホール12HAに形成される電極であり、シールド電極12と接続される。コンタクト電極61CAは、コンタクトホール61HAに形成される電極であり、ボトム電極61と接続される。具体的には、ゲート絶縁層17及び各コンタクトホールの上方の全面に導電膜を、例えばスパッタ法などを用いて形成する。続いて、当該導電膜を、例えば、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて所定形状にパターニングすることで、所定形状のゲート電極18、コンタクト電極12CA及び61CAを形成する。
【0033】
続いて、
図3F及び
図4Gに示されるように、ゲート絶縁層17、ゲート電極18、コンタクト電極12CA及び61CAの上方に、層間絶縁膜19を、例えばプラズマCVD法を用いて形成する。具体的には、ゲート絶縁層17、ゲート電極18、コンタクト電極12CA及び61CAの上方に、第一絶縁膜19a及び第二絶縁膜19bを、例えば、プラズマCVD法を用いて形成する。
【0034】
続いて、
図3G及び
図4Hに示されるように、層間絶縁膜19の上方に、層間絶縁膜21を形成する。層間絶縁膜21は、例えば、ポリイミド材料などから構成される感光性樹脂を層間絶縁膜19上に塗布し、塗布後、加熱処理(プリベーク)を行うことで形成される。
【0035】
続いて、
図3H及び
図4Iに示されるように、層間絶縁膜21にコンタクトホール22HA、23HA、12HB、18HA、及び61HBを形成する。コンタクトホール22HAは、酸化物半導体層15のチャネル領域15cに対して一方側の低抵抗領域15nが形成される領域の上方に形成される。コンタクトホール23HAは、酸化物半導体層15のチャネル領域15cに対して他方の低抵抗領域15nが形成される領域の上方に形成される。コンタクトホール12HBは、コンタクト電極12CAの上方に形成される。コンタクトホール18HAは、ゲート電極18の上方に形成される。コンタクトホール61HBは、コンタクト電極61CAの上方に形成される。各コンタクトホールは、例えば、層間絶縁膜21に露光及び現像を行うことによって形成される。
【0036】
続いて、
図3I及び
図4Jに示されるように、層間絶縁膜19及びゲート絶縁層17にコンタクトホール22HB、23HB、12HC、18HB、及び61HCを形成する。コンタクトホール22HBは、コンタクトホール22HAの底部に形成される。コンタクトホール23HBは、コンタクトホール23HAの底部に形成される。コンタクトホール12HCは、コンタクトホール12HBの底部に形成される。コンタクトホール18HBは、コンタクトホール18HAの底部に形成される。コンタクトホール61HCは、コンタクトホール61HBの底部に形成される。各コンタクトホールは、例えば、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて形成される。
【0037】
続いて、
図3J及び
図4Kに示されるように、ソース電極22、ドレイン電極23、コンタクト電極12CB、18C、及び61CBを形成する。ソース電極22は、コンタクトホール22HA及び22HBに形成され、酸化物半導体層15の低抵抗領域15nと接続される。ドレイン電極23は、コンタクトホール23HA及び23HBに形成され、酸化物半導体層15の低抵抗領域15nと接続される。コンタクト電極12CBは、コンタクトホール12HB及び12HCに形成される電極であり、コンタクト電極12CAと接続される。コンタクト電極18Cは、コンタクトホール18HA及び18HBに形成される電極であり、ゲート電極18と接続される。コンタクト電極61CBは、コンタクトホール61HB及び61HCに形成される電極であり、コンタクト電極61CAと接続される。
【0038】
以上のように、
図1に示される薄膜トランジスタ10を製造することができる。
【0039】
[1-3.効果]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10の効果について、比較例の薄膜トランジスタと比較しながら
図5~
図7を用いて説明する。
図5は、比較例の薄膜トランジスタ910の要部の構成を示す模式的な断面図である。
【0040】
図5に示される比較例の薄膜トランジスタ910は、基板11と、下部電極912と、下部絶縁層913と、酸化物半導体層915と、金属酸化膜916と、ゲート絶縁層917と、ゲート電極18と、層間絶縁膜19及び21と、ソース電極22と、ドレイン電極23とを備える。比較例の薄膜トランジスタ910は、ボトム電極61、ボトム絶縁層62、シールド電極12、及びシールド絶縁層13を備えない点と、酸化物半導体層915及びゲート絶縁層917の構成と、下部電極912、下部絶縁層913、及び金属酸化膜916を備える点とにおいて、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10と相違し、その他の点において一致する。以下、比較例の薄膜トランジスタ910の、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10との相違点について説明する。
【0041】
下部電極912は、基板11の上方であって、酸化物半導体層915と対向する位置に配置される。下部電極912は、本実施の形態に係るシールド電極12とは、寸法及び形状において相違し、それ以外の構成において一致する。
【0042】
下部絶縁層913は、下側絶縁層913aと、上側絶縁層913bとを有する。下部絶縁層913は、断面形状において本実施の形態に係るシールド絶縁層13と相違し、それ以外の構成において一致する。
【0043】
酸化物半導体層915は、チャネル領域915cと、低抵抗領域915nとを有する。比較例の低抵抗領域915nは、ゲート電極18及びゲート絶縁層917をドライエッチングする際に低抵抗化される。このようにドライエッチングなどを用いて形成された低抵抗領域915nは、
図5に示されるように、ゲート絶縁層917と下部絶縁層913との間の領域にまで延び得る。
図5に示される例では、低抵抗領域915nが、ゲート絶縁層917のチャネル長方向における端部から、ゲート絶縁層917と下部絶縁層913との間の領域に延伸する長さ(以下、「延伸長さ」とも称する)がΔL/2で示されている。言い換えると、比較例のチャネル領域915cのチャネル長は、ゲート電極18(及びゲート絶縁層917)のチャネル長方向の長さよりΔLだけ短い。
【0044】
ゲート絶縁層917は、基板11の上面視において、ゲート電極18と同一の形状を有する。ゲート絶縁層917は、例えば、ゲート電極18と同時にドライエッチング法などによってパターニングされる。このようにゲート絶縁層917をパターニングする際に、酸化物半導体層915の低抵抗領域915nが形成される。
【0045】
金属酸化膜916は、ゲート電極18及び酸化物半導体層915の上方に配置される層である。金属酸化膜916は、酸化物半導体層915の低抵抗領域915n上に配置され、低抵抗領域915nの電気抵抗を安定化させる機能を有する。
【0046】
以上のような構成を有する比較例の薄膜トランジスタ910においては、上述したように、低抵抗領域915nが、ゲート絶縁層917のチャネル長方向における端部からゲート絶縁層917と下部絶縁層913との間の領域に延伸する。このような低抵抗領域915nによる薄膜トランジスタ910の特性への影響について、
図6を用いて説明する。
図6は、比較例の薄膜トランジスタ910のゲート電圧Vgとドレイン電流Idとの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6においては、低抵抗領域915nの延伸長さΔL/2が、0.7μm(実線の曲線)、2.5μm(破線の曲線)、及び3μm(点線の曲線)である場合の各関係が示されている。なお、本シミュレーションにおいては、ゲート電極18のチャネル長方向の長さは6μmであり、チャネル領域915cのチャネル幅は10μmある。また、酸化物半導体層915は膜厚30nmのIGZO膜であり、下側絶縁層913aは膜厚50nmのSiN
x膜であり、上側絶縁層913bは膜厚100nmのSiO
x膜である。また、ゲート絶縁層917は膜厚200nmのSiO
x膜であり、金属酸化膜916は膜厚10nmのAlO
x膜である。層間絶縁膜19の第一絶縁膜19aは膜厚100nmのSiO
x膜であり、第二絶縁膜19bは膜厚50nmのAlO
x膜である。また、ドレイン電圧は10Vである。
【0047】
図6に示されるように、比較例の薄膜トランジスタ910においては、低抵抗領域915nの延伸長さΔL/2に応じて、薄膜トランジスタ910のオン/オフ特性が変動する。また、延伸長さΔL/2が3μmの場合には、
図6の点線の曲線で示されるように、薄膜トランジスタ910においてオフ状態を実現できなくなる。このような問題は、特に、チャネル長が短い(例えば6μm以下程度)の場合に顕著となる。
【0048】
ここで、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10の特性について
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10のゲート電圧Vgとドレイン電流Idとの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7においては、ドレイン電圧Vdが、10V(実線の曲線)及び0.1V(破線の曲線)である場合の各関係が示されている。なお、本シミュレーションにおいては、ゲート電極18のチャネル長方向の長さは6μmであり、チャネル領域15cのチャネル幅は10μmある。また、酸化物半導体層15は膜厚30nmのIGZO膜であり、下側絶縁層13aは膜厚50nmのSiN
x膜であり、上側絶縁層13bは膜厚100nmのSiO
x膜である。また、ゲート絶縁層17は膜厚200nmのSiO
x膜である。層間絶縁膜19の第一絶縁膜19aは膜厚100nmのSiO
x膜であり、第二絶縁膜19bは膜厚50nmのAlO
x膜である。また、ドレイン電圧は10Vであり、ソース電極22及びシールド電極12には、0Vが印加されている(つまり、グランド電位に維持されている)。
【0049】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ10は、
図1を用いて上述したとおり、ボトム電極61と、ボトム電極61の上方に配置されるボトム絶縁層62と、ボトム絶縁層62の上方に配置されるシールド電極12と、シールド電極12の上方に配置されるシールド絶縁層13と、シールド絶縁層13の上方に配置され、チャネル領域15cを有する酸化物半導体層15と、酸化物半導体層15の上方に配置されるゲート絶縁層17と、ゲート絶縁層17の上方に配置されるゲート電極18とを備える。シールド電極12は、ゲート電極18及び酸化物半導体層15と対向する位置に配置される。
【0050】
このような構成を有する薄膜トランジスタ10においては、ボトム電極61に所定の電圧を印加することで発生する電界によって、酸化物半導体層15に低抵抗領域15nを形成できる。例えば、ボトム電極には、正電位(10V程度)が印加される。これにより、ボトム電極61に電圧が印加されることで発生する電界によって、酸化物半導体層15内のキャリアが励起されることで、酸化物半導体層15が低抵抗化される。ここで、ボトム電極61と酸化物半導体層15との間であって、ゲート電極18と対向する位置にシールド電極12が配置されている。このため、酸化物半導体層15のうち、ゲート電極18と対向する領域には、ボトム電極61によって形成される電界が印加されない。したがって、低抵抗領域15nが、ゲート電極18とシールド絶縁層13との間に延伸することを抑制できる。以上のように、電界が酸化物半導体層15に印加される領域をシールド電極12によって制御できるため、低抵抗領域15nが形成される範囲を精度よく制御できる。したがって、薄膜トランジスタ10の特性のばらつきを低減できる。
【0051】
シールド電極12のチャネル長方向における長さは、ゲート電極18のチャネル長方向における長さ以下であってもよい。これにより、酸化物半導体層15のうちゲート電極18と対向する領域にまで低抵抗領域15nを形成することができるため、低抵抗領域15nとチャネル領域15cとを確実に接続することができる。
【0052】
また、シールド電極12のチャネル長方向における長さは、ゲート電極18のチャネル長方向における長さと等しくてもよい。ここで、これらの長さが等しいとの記載が意味する状態には、これらの長さが完全に一致する状態だけでなく、これらの長さが実質的に一致する状態も含まれる。例えば、これらの長さが等しいとの記載が意味する状態には、これらの長さの差が一方の長さの10%未満である状態も含まれる。本明細書における他の「長さが等しい」との記載の意味についても同様である。このようにシールド電極12のチャネル長方向における長さを、ゲート電極18のチャネル長方向における長さと等しくすることで、酸化物半導体層15のうちゲート電極18と対向する領域が低抵抗化されることを抑制でき、酸化物半導体層15のうちゲート電極18と対向する領域にチャネル領域15cを形成することができる。
【0053】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る半導体装置について説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例である薄膜トランジスタについて説明する。本実施の形態に係る薄膜トランジスタは、主に、トップゲートセルフアライン構造を有する点において、実施の形態1に係る薄膜トランジスタ10と相違する。以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタについて、実施の形態1に係る薄膜トランジスタ10との相違点を中心に説明する。
【0054】
[2-1.構成]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタの構成について
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ110の要部の構成を示す模式的な断面図である。
【0055】
図8に示されるように、薄膜トランジスタ110は、ボトム電極61と、ボトム絶縁層62と、シールド電極12と、シールド絶縁層13と、酸化物半導体層15と、ゲート絶縁層117と、ゲート電極18とを備える。本実施の形態では、薄膜トランジスタ110は、基板11と、金属酸化膜116と、層間絶縁膜119及び21と、ソース電極22と、ドレイン電極23とをさらに備える。以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ110の実施の形態1に係る薄膜トランジスタ10との相違点について説明する。
【0056】
上述したとおり、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ110は、トップゲートセルフアライン構造を有する。つまり、ゲート絶縁層117は、ゲート電極18と同時にパターニングされる。これにより、基板11の上面視において、ゲート絶縁層117は、ゲート電極18と実質的に同一の形状を有する。このため、チャネル領域15cのチャネル長方向におけるゲート絶縁層117の長さは、チャネル長方向におけるゲート電極18の長さと等しい。
【0057】
金属酸化膜116は、ゲート電極18及び酸化物半導体層15の上方に配置される層である。金属酸化膜116としては、例えば、酸化アルミニウム膜(AlOx)を用いることができる。なお、金属酸化膜116として、例えば、酸化チタン(TiOx)、酸化タングステン(WOx)、タンタルオキサイド(TaOx)、ジルコニウムオキサイド(ZrOx)、酸化モリブデン(MoOx)などを用いてもよい。
【0058】
層間絶縁膜119は、金属酸化膜116の上方に配置される絶縁膜である。層間絶縁膜119として、例えば、上述した実施の形態1に係るボトム絶縁層62と同様の絶縁膜を用いることができる。本実施の形態では、層間絶縁膜119は、金属酸化膜116の上方に配置される第一絶縁膜119aと、第一絶縁膜119aの上方に配置される第二絶縁膜119bとを有する。第一絶縁膜119aは、シリコン酸化膜(SiOx)であり、第二絶縁膜119bは、酸化アルミニウム膜(AlOx)である。
【0059】
[2-2.製造方法]
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ110の製造方法について説明する。本実施の形態に係る薄膜トランジスタ110の製造方法は、ゲート電極18の形成工程において、ゲート電極18と併せてゲート絶縁層117もパターニングする点と、金属酸化膜116を形成する工程が追加される点とにおいて、実施の形態1に係る薄膜トランジスタ10の製造方法と相違し、その他の点において一致する。以下、当該相違点について説明する。
【0060】
まず、実施の形態1と同様に基板11の上方に、ボトム電極61、ボトム絶縁層62、シールド電極12、シールド絶縁層13、及び酸化物半導体層15を形成する。
【0061】
続いて、酸化物半導体層15及びシールド絶縁層13の上方の全面にゲート絶縁層117の母材となる絶縁膜を形成する。
【0062】
続いて、絶縁膜の上方の全面にゲート電極18の母材となる導電膜を形成する。
【0063】
続いて、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて導電膜及び絶縁膜を所定形状にパターニングすることで、所定形状のゲート電極18及びゲート絶縁層117を形成する。より詳しくは、酸化物半導体層15をエッチングストッパとして用いて、導電膜及び絶縁膜の一部を除去することによってゲート電極18及びゲート絶縁層117を形成する。ここで用いるエッチング材料として、例えば、塩素(Cl2)、四フッ化炭素(CF4)を用いることができる。エッチング材料は、上述した材料に限定されない。例えば、エッチング材料は、上述したような化学反応を用いるエッチング材料でなくてもよく、例えば、Arプラズマなどであってもよい。
【0064】
続いて、ゲート電極18、酸化物半導体層15及びシールド絶縁層13の上方に金属酸化膜116を形成する。
【0065】
続いて、金属酸化膜116の上方に、実施の形態1と同様に、層間絶縁膜119及び21、ソース電極22、ドレイン電極23、各コンタクト電極を形成する。
【0066】
以上のように、
図8に示される薄膜トランジスタ110を製造することができる。
【0067】
[2-3.効果]
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ110は、実施の形態1に係る薄膜トランジスタ10と同様に、ボトム電極61と、ボトム電極61の上方に配置されるボトム絶縁層62と、ボトム絶縁層62の上方に配置されるシールド電極12と、シールド電極12の上方に配置されるシールド絶縁層13と、シールド絶縁層13の上方に配置され、チャネル領域15cを有する酸化物半導体層15と、酸化物半導体層15の上方に配置されるゲート絶縁層117と、ゲート絶縁層117の上方に配置されるゲート電極18とを備える。シールド電極12は、ゲート電極18及び酸化物半導体層15と対向する位置に配置される。
【0068】
これにより、実施の形態1に係る薄膜トランジスタ10と同様に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ110の特性のばらつきを低減できる。
【0069】
(適用例1)
上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタの適用例1について
図9を用いて説明する。
図9及び
図10は、それぞれ、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタが適用される表示装置2A及び撮像装置2Bの機能構成を示すブロック図である。
【0070】
図9に示される表示装置2Aは、外部から入力された映像信号、又は、内部で生成した映像信号を、映像として表示する装置である。表示装置2Aは、例えば、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、液晶ディスプレイなどである。表示装置2Aは、機能的には、例えば、タイミング制御部31と、信号処理部32と、駆動部33と、表示画素部34とを備える。
【0071】
タイミング制御部31は、各種のタイミング信号(つまり、制御信号)を生成するタイミングジェネレータを有しており、これらの各種のタイミング信号を基に、信号処理部32などの駆動制御を行う処理回路である。
【0072】
信号処理部32は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号に対して所定の補正を行い、それにより得られた映像信号を駆動部33に出力する処理回路である。
【0073】
駆動部33は、例えば走査線駆動回路、信号線駆動回路などを含み、各種制御線を介して表示画素部34の各画素を駆動する回路である。
【0074】
表示画素部34は、例えば有機EL素子、液晶表示素子などの表示素子と、表示素子を画素毎に駆動するための画素回路とを含む表示回路である。
【0075】
表示装置2Aの上記各回路のうち、例えば、駆動部33及び表示画素部34の一部を構成する各種回路に、上述の薄膜トランジスタが適用される。
【0076】
図10に示される撮像装置2Bは、例えば、画像を電気信号として取得する固体撮像装置であり、例えばCCD(Charge-Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを備える。撮像装置2Bは、機能的には、例えば、タイミング制御部35と、駆動部36と、撮像画素部37と、信号処理部38とを備える。
【0077】
タイミング制御部35は、各種のタイミング信号(つまり、制御信号)を生成するタイミングジェネレータを有しており、これらの各種のタイミング信号を基に、駆動部36の駆動制御を行う処理回路である。
【0078】
駆動部36は、例えば、行選択回路、AD変換回路、水平転送走査回路などを含み、各種制御線を介して撮像画素部37の各画素から信号を読み出す回路である。
【0079】
撮像画素部37は、例えば、フォトダイオードなどの撮像素子(つまり、光電変換素子)と、信号読み出しのための画素回路とを含む撮像回路である。
【0080】
信号処理部38は、撮像画素部37から得られた信号に対して様々な信号処理を施す処理回路である。
【0081】
撮像装置2Bの上記各回路のうち、例えば、駆動部36及び撮像画素部37の一部を構成する各種回路に、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタが適用される。
【0082】
(適用例2)
上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタの適用例2について
図11を用いて説明する。
図11は、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタが適用される電子機器3の機能構成を示すブロック図である。
【0083】
電子機器3は、上記表示装置2A、撮像装置2Bなどを備える機器である。電子機器3としては、例えばテレビジョン装置、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット型PC、携帯電話機、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどが挙げられる。
【0084】
電子機器3は、例えば上述の表示装置2A(又は撮像装置2B)などを含む画像装置2と、インターフェース部40とを有している。インターフェース部40は、外部から各種の信号、電力などが入力される入力部である。このインターフェース部40は、例えばタッチパネル、キーボード、操作ボタンなどのユーザインターフェースを含んでいてもよい。
【0085】
このように、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタは、電子機器3にも適用される。
【0086】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る半導体装置などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示に係る半導体装置などは、上記実施の形態に限定されるものではない。各実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、各実施の形態に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0087】
例えば、本開示に係る半導体装置は、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタが備えるすべての構成要素を必ずしも備えなくてもよい。例えば、本開示に係る半導体装置は、層間絶縁膜19、21及び119を備えなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、薄膜トランジスタを用いる表示装置、撮像装置などの電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0089】
2 画像装置
2A 表示装置
2B 撮像装置
3 電子機器
10、110、910 薄膜トランジスタ
11 基板
12 シールド電極
12CA、12CB、18C、61CA、61CB コンタクト電極
12HA、12HB、12HC、18HA、18HB、22HA、22HB、23HA、23HB、61HA、61HB、61HC コンタクトホール
13 シールド絶縁層
13a、913a 下側絶縁層
13b、913b 上側絶縁層
15、915 酸化物半導体層
15c、915c チャネル領域
15n、915n 低抵抗領域
17、117、917 ゲート絶縁層
18 ゲート電極
19、21、119 層間絶縁膜
19a、119a 第一絶縁膜
19b、119b 第二絶縁膜
22 ソース電極
23 ドレイン電極
31、35 タイミング制御部
32、38 信号処理部
33、36 駆動部
34 表示画素部
37 撮像画素部
40 インターフェース部
116、916 金属酸化膜
912 下部電極