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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】被覆された電池セパレーター
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/449 20210101AFI20241205BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241205BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/457
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/443 C
H01M50/443 E
H01M50/443 M
H01M50/451
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020563432
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019031690
(87)【国際公開番号】W WO2019217797
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】62/669,531
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/670,048
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,カン,カレン
(72)【発明者】
【氏名】ドン,アレン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,チャンチン,ワン
(72)【発明者】
【氏名】岡田 賢明
(72)【発明者】
【氏名】ステップ,ブライアン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,エリック,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ケメルースキ,キャサリン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-099324(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208537(WO,A1)
【文献】特表2013-527260(JP,A)
【文献】国際公開第2017/083633(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/057037(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/016571(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/017944(WO,A1)
【文献】特開2011-168048(JP,A)
【文献】特表2010-531367(JP,A)
【文献】特開2004-307712(JP,A)
【文献】特開2015-115266(JP,A)
【文献】特開2016-203621(JP,A)
【文献】特開2017-185647(JP,A)
【文献】特表2021-523040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマー又は樹脂及び少なくとも1つの添加剤の添加量1~50質量%から製造される微細多孔性膜であって、
前記添加剤は、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)エラストマーを含み、さらに、無水マレイン酸修飾ポリエチレン、無水マレイン酸修飾ポリプロピレン及びその組み合わせから選択される少なくとも1つを含み、前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面は、ポリアラミドを含むコーティングを備えている、微細多孔性膜。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリマーは、ポリアラミドと混和しない、ポリプロピレン、別のポリマー、及びその組み合わせから選択され、
前記少なくとも1つのポリマーは、ポリプロピレン又はポリプロピレン及び別のポリマーの組み合わせであり、
前記ポリプロピレンは、ホモポリマーポリプロピレン、コポリマーポリプロピレン、ターポリマーポリプロピレン及びその組み合わせのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の微細多孔性膜。
【請求項3】
前記添加剤は、前記膜の総重量に基づいて1~25重量%の量で存在するか、1~15重量%の量で存在するか、又は1~10重量%の量で存在する、請求項1に記載の微細多孔性膜。
【請求項4】
次のうち少なくとも1つを有する微細多孔性膜であって、
前記膜は、単層膜であるか、
二層膜であるか、
前記膜は二層膜であって、前記二層膜の少なくとも1つの層は、前記添加剤を含むか、
前記膜は二層膜であって、前記二層膜の両方の層は、前記添加剤を含むか、
前記膜は二層膜であって、前記二層膜の少なくとも1つの層は、前記層の重量に基づいて50重量%まで、前記層の重量に基づいて40重量%まで、前記層の重量に基づいて30重量%まで、前記層の重量に基づいて25重量%まで、前記層の重量に基づいて20重量%まで、前記層の重量に基づいて15重量%まで、前記層の重量に基づいて10重量%まで又は前記層の重量に基づいて5重量%までの量で前記添加剤を含むか、
前記膜は、多層膜であるか、
前記膜は、多層膜であって、前記多層膜の少なくとも1つの層は、前記添加剤を含むか、
前記膜は、多層膜であって、前記多層膜の少なくとも1つの最外層は、前記添加剤を含むか、
前記膜は、多層膜であって、前記多層膜の少なくとも1つの層は、前記層の重量に基づいて50重量%まで、前記層の重量に基づいて40重量%まで、前記層の重量に基づいて30重量%まで、前記層の重量に基づいて25重量%まで、前記層の重量に基づいて20重量%まで、前記層の重量に基づいて15重量%まで、前記層の重量に基づいて10重量%まで又は前記層の重量に基づいて5重量%までの量で前記添加剤を含むか、
前記膜は、多層膜であって、前記多層膜の少なくとも1つの最外層は、前記層の重量に基づいて20重量%まで、前記層の重量に基づいて15重量%まで、前記層の重量に基づいて10重量%まで又は前記層の重量に基づいて5重量%までの量で前記添加剤を含む、請求項1に記載の微細多孔性膜。
【請求項5】
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力、より均一な細孔径、改良された電解質との濡れ、改良されたイオン捕獲、増強された靱性及びその組み合わせの少なくとも1つを示す、請求項1に記載の微細多孔質膜。
【請求項6】
次のうち少なくとも1つを有する微細多孔性膜であって、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示すか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示し、前記低減したピン除去力を示す前記少なくとも1つの面は、改良された接着強度を示す前記少なくとも1つの面と同一ではないか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示し、前記微細多孔性膜は、少なくとも1つの潤滑剤を含む前記少なくとも1つの添加剤を含むか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示し、前記微細多孔性膜は、少なくとも1つの潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、両親媒性であるか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示し、前記微細多孔性膜は、少なくとも1つの潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、脂肪酸塩であるか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示し、前記微細多孔性膜は、少なくとも1つの潤滑剤を含み、前記脂肪塩は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸カリウムから選択されるか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示し、前記微細多孔性膜は、少なくとも1つの潤滑剤を含み、前記微細多孔性膜は、少なくとも1つの潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、シロキサン又はポリシロキサンを含有する、1つ又は複数のシロキシ官能基を含む化合物であるか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、低減したピン除去力を示し、前記微細多孔性膜は、少なくとも1つの潤滑剤を含み前記潤滑剤は、超高分子量ポリシロキサンであるか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、より均一な細孔径を示し、前記少なくとも1つの添加剤は、微細多孔性膜が製造される前記ポリマー又は樹脂と異なる分子量を有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーを含むか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、改良された電解質との濡れを示すか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、改良されたイオン捕獲を示すか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、増強された靱性を示すか、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面が、前記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較するとき、増強された靱性を示し、前記少なくとも1つの添加剤は、イオノマー樹脂を含む、請求項5に記載の微細多孔性膜。
【請求項7】
次のうち少なくとも1つを有する微細多孔性膜であって、
前記膜は、ポリアラミドを含むコーティングと高い接着強度を示す前記少なくとも1つの面上でポリアラミドを含むコーティングで被覆されるか、
前記膜は、ポリアラミドを含むコーティングと高い接着強度を示す前記少なくとも1つの面上でポリアラミドを含むコーティングで被覆され、前記コーティングは、ポリアラミド及び無機フィラー、有機フィラー又はその組み合わせの少なくとも1つを含むか、
金属面と接着強度を示す前記少なくとも1つの面は、金属面と直接接触しているか、
前記少なくとも1つの面は、コロナ処理によって又はPEラテックスコーティングを提供することによって、接着強度をさらにもっと増強するために被覆又は処理される、請求項1に記載の微細多孔質膜。
【請求項8】
少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの添加剤から製造される微細多孔性膜であって、前記添加剤は、酸コポリマー、イオノマー、及び無水マレイン酸修飾PP又はPEホモポリマー及び/又はコポリマー樹脂から選択され、かつ無水マレイン酸修飾ポリエチレン、無水マレイン酸修飾ポリプロピレン及びその組み合わせから選択される少なくとも1つの機能性ポリマー及びスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)エラストマーを含み、
ポリアラミドを含むコーティング層が前記微細多孔性膜の面上に備えられ、
前記添加剤は、以下の、
前記ポリアラミドを含むコーティング層と前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する、
金属面と前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着力を増強する、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のピン除去力を低減する、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面での電解質との湿潤性を増強する、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のイオン捕獲力を増強する、
前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の靭性又は耐久性を増強する、
穿刺強度を増強する、及び/又は
前記膜にわたるイオン輸送を増強する、
機能の少なくとも1つを実現する、微細多孔性膜。
【請求項9】
前記少なくとも1つの添加剤は、コーティング層と前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着力を増強し、前記コーティング層は、ポリアラミドを含む、請求項8に記載の微細多孔性膜。
【請求項10】
前記少なくとも1つの添加剤は、金属面と前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着力を増強する、請求項8に記載の微細多孔性膜。
【請求項11】
前記少なくとも1つの添加剤は、前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のピン除去力を低減する、微細多孔性膜であって、
前記微細多孔性膜は、潤滑剤を含む前記少なくとも1つの添加剤を含むか、
前記少なくとも1つの添加剤は潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、両親媒性であるか、
前記少なくとも1つの添加剤は潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、脂肪酸塩であるか、
前記少なくとも1つの添加剤は潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸カリウムから選択されるか、
前記少なくとも1つの添加剤は潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、前記潤滑剤は、シロキサン又はポリシロキサンを含有する、1つ又は複数のシロキシ官能基を含む化合物であるか、又は
前記少なくとも1つの添加剤は潤滑剤を含み、前記潤滑剤は、前記潤滑剤は、超高分子量ポリシロキサンである、請求項8に記載の微細多孔性膜。
【請求項12】
前記少なくとも1つの添加剤は、前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の細孔径を均一にする、微細多孔性膜であって、前記少なくとも1つの添加剤は、微細多孔性膜が製造される前記ポリマー又は樹脂と異なる分子量を有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーを含む、請求項8に記載の微細多孔性膜。
【請求項13】
前記少なくとも1つの添加剤は、前記機能のうち少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個全てを実現する、請求項8に記載の微細多孔性膜。
【請求項14】
前記微細多孔性膜は、単層、二層又は多層微細多孔性膜である、微細多孔性膜であって、
前記微細多孔性膜は、単層膜であり、製造される前記樹脂又はポリマーは、ポリエチレンホモポリマー、コポリマーあるいはターポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、コポリマーあるいはターポリマー又はその混合物を含むポリオレフィン樹脂であるか、
前記微細多孔性膜は、二層膜であり、製造される前記樹脂又はポリマーは、ポリエチレンホモポリマー、コポリマーあるいはターポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、コポリマーあるいはターポリマー又はその混合物を含むポリオレフィン樹脂であるか、又は
前記微細多孔性膜は、多層膜であり、製造される前記樹脂又はポリマーは、ポリエチレンホモポリマー、コポリマーあるいはターポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、コポリマーあるいはターポリマー又はその混合物を含むポリオレフィン樹脂である、請求項8に記載の微細多孔性膜。
【請求項15】
前記少なくとも1つの添加剤は、コーティング層と前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着力を増強し、同一又は異なる添加剤によって前記微細多孔性膜の異なる面のピン除去を低減するか、又は
前記少なくとも1つの添加剤は、前記微細多孔性膜の少なくとも1つの面に関して前記機能の少なくとも1つを実現し、同一又は異なる添加剤は前記微細多孔性膜の異なる面に関して少なくとも1つの異なる機能を実現する、請求項8に記載の微細多孔性膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規又は改良された微細多孔性単層、二層、三層又は多層膜、セパレーター膜、セパレーター、又は被覆されたセパレーターが開示される。この膜は、好ましくは少なくとも1つの樹脂又はポリマー及び少なくとも1つの添加剤から製造される。添加剤は、微細多孔性膜のコーティング、好ましくはポリアラミド-含有コーティングへの、又は金属面等の異なる材料への接着を改良する少なくとも1つの材料を含んでもよい。接着の改良は、少なくとも1つの添加剤を含まない類似する微細多孔性膜との比較に基づく。いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの添加剤は、機能性ポリマー又は機能性ポリマー及びエラストマーの組み合わせを含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成ってもよい。いくつかの実施形態において、機能性ポリマーの官能基は、無水マレイン酸(MAH)であってもよい。新規又は改良された微細多孔性膜を含む電池セパレーター又は被覆されたセパレーターも開示されている。電池セパレーターは、ポリアラミド-含有コーティングで被覆された微細多孔性膜を含んでもよい。新規又は改良されたセパレーター、複合材、電池、リチウムイオン二次電池、及び/又はセパレーター、複合材、又は電池を含む車両又はデバイスも開示されている。
【背景技術】
【0002】
電池セパレーターは、Celgard(登録商標)乾式延伸プロセスを含む、乾式製造プロセスによって形成されてもよい。いくつかの乾式電池セパレーターは、国際特許出願第PCT/US17/61277号において記載されるような単層ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPから成る三層薄膜、又は例えば、(PP)(PP)(PP)/(PE)(PE)(PE)/(PP)(PP)(PP)等の多層薄膜のいずれかであってもよい。他の多層構造は、特許文献1(国際特許出願第PCT/US17/61277号)に開示され、その全体を参照により本明細書に援用される。PPは、一般的には、とりわけ、優れたサイクル性能を提供する、その耐酸化性により、電池セパレーターの最外層の材料として使用される。三層及び多層構造においては、PEを、とりわけ、高速シャットダウン能力を提供するために内層(複数含む)に使用することができる。
【0003】
今日の高エネルギーリチウム電池セパレーターの多数は、セラミックコーティングで被覆されており、セラミックコーティングは有機又は無機粒子及び、一般的にはポリマー結合剤である、結合剤を含んでもよい。電池セパレーター用のセラミックコーティングは、その全体を参照により本明細書に援用される、特許文献2(米国特許第6,432,586号)に最初に開示された。
【0004】
セラミックコーティング及び他の種類のコーティングにおける結合剤として一般的に使用されるポリアラミド材料は、上述したように、単層セパレーター及び三層並びに多層電池セパレーターの外層(複数含む)において一般的に使用される材料である、ポリプロピレン(PP)等の、特定のポリオレフィン(PO)とは十分に結合することはできないということが知られている。いくつかの代表的なポリアラミドは、Kevlar(登録商標)、Twaron(登録商標)、New Star(登録商標)、及びTeijin conexである。PP含有層とポリアラミド材料を含むコーティングとの接着を改良する限られた既知の方法があるが、これらの限られた既知の方法を行うには追加の加工ステップが必要となる。例えば、コーティング前に追加の表面処理ステップを実行してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際特許出願第PCT/US17/61277号
【文献】米国特許第6,432,586号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ポリアラミド材料を含むものを含む、コーティングのPP―含有セパレーター又は膜層に対する接着を改良する簡単でより良い方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも選択された実施形態によれば、本開示又は本発明は、先行する問題、必要性若しくは課題に対処してもよく、及び/又は開示される新規又は改良された微細多孔性単層、二層、三層若しくは多層膜、セパレーター膜、セパレーター、被覆されたセパレーターを提供してもよい。膜は、好ましくは少なくとも1つの樹脂又はポリマー及び少なくとも1つの添加剤から製造される。添加剤は、ポリアラミド-含有コーティング、アラミドコーティング、別のポリマーコーティングを含む、コーティング、又は金属面等の異なる材料への微細多孔性膜の接着を改良する少なくとも1つの材料を含んでもよい。接着の改良は、少なくとも1つの添加剤を含まない類似する微細多孔性膜との比較に基づく。いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの添加剤は、機能性ポリマー又は機能性ポリマー及びエラストマーの組み合わせを含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成ってもよい。いくつかの実施形態において、機能性ポリマーの官能基は、無水マレイン酸(MAH)であってもよい。いくつかの実施形態において、添加剤は、微細多孔性膜の他の特性を改良してもよい。これらの実施形態において、添加剤は、オレフィン部及び極性部の両方を有する樹脂であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、添加剤は、酸コポリマー、イオノマー、及び無水マレイン酸修飾PP又はPEホモポリマー及び/又はコポリマー樹脂のうち少なくとも1つであってもよい。また、新規又は改良された微細多孔性膜を含む電池セパレーター又は被覆されたセパレーターも開示される。電池セパレーターは、ポリアラミド-含有コーティング等のコーティングで被覆された微細多孔性膜を含んでもよい。また、新規又は改良されたセパレーター、複合材、電池、リチウムイオン二次電池、及び/又はセパレーター、複合材、又は電池を含む車両又はデバイスも開示される。
【0008】
本明細書において記載される任意の微細多孔性膜は、織物において使用してもよく、又はこれらであってもよい。例えば、繊維製品は、本明細書において記載される任意の微細多孔性膜を含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成ってよい。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される少なくとも1つの微細多孔性膜を含む積層繊維製品が記載される。いくつかの実施形態において、積層は、本明細書において記載される1個以上の微細多孔性膜を含んでもよい。いくつかの実施形態において、積層は、本明細書において記載される1つ又は複数の微細多孔性膜及び別の織布、不織布、ニット、コーティング並びに/又は多孔性若しくは微細多孔性層を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される繊維製品又は積層繊維製品を、ジャケット、ズボン、シャツ、帽子、靴下、下着、手袋、又はショーツ等の衣服に使用してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される繊維製品又は積層繊維製品を、テント、バックパック、又はタープ等のアウトドア用品を形成するために使用してもよい。
【0009】
他の実施形態において、積層若しくは複合膜、材料又はセパレーターは、本明細書において記載される1つ又は複数の微細多孔性膜及び別の織布、不織布、ニット、コーティング並びに/又は多孔性又は微細多孔性層を含んでもよい。
【0010】
いくつかの他の実施形態において、単一の膜若しくはセパレーター又は積層若しくは複合膜、材料若しくはセパレーターは、所望の最終用途、厚さ、デザイン、パターン等に依存して、エンボス加工、カレンダー加工、被覆、処理及び/又はさらに加工してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書において記載されるいくつかの実施形態のために収集したデータを含む表である。
図2図2は、本明細書において記載されるいくつかの実施形態のために収集したデータを含む表である。
図3図3は、本明細書において記載されるいくつかの実施形態のために収集したデータを含む表である。
図4図4は、本明細書において記載されるいくつかの実施形態のために収集したデータを含む表である。
図5図5は、本明細書において記載されるいくつかの実施形態のために収集したデータを含む表である。
図6図6は、本明細書において記載される実施形態のSEM画像である。
図7図7は、本明細書において記載される実施形態のSEM画像である。
図8図8は、本明細書において記載される実施形態のSEM画像である。
図9図9Aは、比較例のSEM画像である。図9Bは、比較例のSEM画像である。
図10図10Aは、本明細書において記載される実施形態のSEM画像である。図10Bは、本明細書において記載される実施形態のSEM画像である。
図11図11Aは、本明細書において記載される実施形態のSEM画像である。図11Bは、本明細書において記載される実施形態のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において記載されるのは、新規又は改良された微細多孔性膜であり、例えば、リチウムイオン電池のための電池セパレーターとして又は電池セパレーターにおいて使用されてもよい。本明細書において記載されるいくつかの微細多孔性膜は、例えば、国際特許出願第PCT/US17/61277号に記載されるような、従前の単層ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPから成る三層薄膜、又は(PP)(PP)(PP)/(PE)(PE)(PE)/(PP)(PP)(PP)などの、多層薄膜(二層以上)と比較してコーティング、金属及び/又はポリアラミド―材料―含有コーティングに対する改良された接着を有する。
【0013】
1つの態様において、少なくとも1つのポリマー又は樹脂及び少なくとも1つの添加剤から製造される微細多孔性膜が本明細書において記載される。上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面は、ポリアラミド(又はポリーアラミド又はアラミド)を含むコーティングを含む、コーティングと、又は金属面と他の微細多孔性膜が上記少なくとも1つの添加剤を含まないことを除いては、その他の点では同一である別の微細多孔性膜よりも高い接着又は接着強度を示す。いくつかの実施形態において、上記微細多孔性膜の両面は、ポリアラミドを含むコーティングを含む、コーティングと、又は金属面と他の微細多孔性膜が上記少なくとも1つの添加剤を含まないことを除いては、その他の点では同一である別の微細多孔性膜よりも高い接着強度を示す。上記少なくとも1つの添加剤を含む上記微細多孔性膜の上記面の高い接着は、接着を増加させるために上記微細多孔性膜の上記面(複数含む)にコーティング、処理又はいかなることがなくても実現される。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記微細多孔性膜において使用される上記少なくとも1つのポリマーは、ポリアラミドと混和しないポリプロピレン又は別のポリマーである。ポリアラミドと混和しない、混和する又は部分的に混和するポリマーを含む、別のポリマーを、ポリアラミドと混和しない上記ポリプロピレン又は別のポリマーに加えて使用してもよい。上記ポリプロピレンは、ホモポリマーポリプロピレン、コポリマーポリプロピレン、ターポリマーポリプロピレン及びその組み合わせのうち少なくとも1つであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記添加剤は、ポリプロピレン及びポリプロピレンと混和しない任意のポリマーのための相溶化剤である。例えば、相溶化剤を、ポリプロピレン及びポリプロピレンと混和しない任意のポリマーとのブレンドを安定化させるために使用することがある。いくつかの実施形態において、上記添加剤は、機能性ポリマーを含む。例えば、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンを使用してもよい。例示的な機能性ポリオレフィンを、無水マレイン酸修飾ポリエチレン、無水マレイン酸修飾ポリプロピレン及びその組み合わせから成る群から選択してもよい。無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの特定の実施例としては、無水マレイン酸修飾高密度ポリエチレン(MA-HDPE)、無水マレイン酸修飾コポリマーポリプロピレン(MA-Co-PP)、及び無水マレイン酸修飾ホモポリマーポリプロピレン(MA-Homo-PP)がある。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記添加剤は、上記膜の総重量に基づいて0.05~20重量%、0.5~15重量%、1~10重量%、又は1~5重量%の量で存在してもよい。いくつかの実施形態において、上記微細多孔性膜は、単層膜、二層膜、三層膜又は多層膜である。いくつかの好ましい実施形態において、上記微細多孔性膜は、PP及び/又はPE膜などの、ポリオレフィン単層膜、二層膜、三層膜又は多層膜である。いくつかの特に好ましい実施形態において、上記微細多孔性膜は、少なくとも1つの接着促進添加剤又はポリマーを有する少なくともPP外層又は外面を有する、ポリオレフィン単層膜、二層膜、三層膜又は多層膜である。
【0017】
二層膜において、二層膜の層のうち1つ又は両方は、上記少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。三層の実施形態において、最外層のうち1つ又は両方は、上記少なくとも1つの添加剤を含んでもよく、いくつかの三層の実施形態において、内層のみ又は最外層のうち1つ又は両方は、上記少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。多層膜において、最外層のうち1つ又は両方は、上記少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。いくつかの多層の実施形態において、少なくとも1つの内層又は少なくとも1つの内層及び1つ又は両方の最外層は、上記少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。いくつかの多層の実施形態において、全ての内層又は全ての内層及び1つ又は両方の最外層は、上記少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、上記添加剤は、存在する層又は複数の層の重量に基づいて30重量%まで、25重量%まで、20重量%まで、15重量%まで、10重量%まで、又は5重量%までの量で存在する。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態において、上記膜の両方の最外層は、改良された接着を示し、上記少なくとも1つの添加剤を含む。他の実施形態において、少なくとも1つの面は、上記少なくとも1つのポリマーから製造されるが、いかなる添加剤も含有しない微細多孔性膜と比較して、以下の、低減したピン除去力、より制御された細孔径、改善された電解質との濡れ、改良されたイオン捕獲、増強された靭性又は耐久性及びその組み合わせのうち少なくとも1つを示す。これらの特性は、改良された接着をもたらす上記少なくとも1つの添加剤又は別の添加剤によって生じてもよい。上記少なくとも1つの面は、ポリアラミド含有コーティングを含む、コーティング又は金属面との改良された接着に加えて又はその代わりに、上述の特性のうち少なくとも1つも示してもよい。いくつかの実施形態において、上記膜の1つの面は、ポリアラミド含有コーティングを含む、コーティング又は金属面との改良された接着を示し、上記膜の別の面は、例えば改良された靭性又は耐久性等である、上述の特性のうち1つ又は複数を示す。いくつかの実施形態において、上記膜の片面又は両面は、ポリアラミド含有コーティングを含む、コーティング又は金属面との改良された接着及び例えば改良された靭性又は耐久性等である、上述の特性のうち1つ又は複数を示す。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記膜の少なくとも1つの面は、少なくとも低減したピン除去力又は少なくとも低減したピン除去力及びポリアラミド含有コーティングを含む、コーティング又は金属面との改良された接着を示す。このような実施形態において、上記微細多孔性膜はまた、低減したピン除去力を提供してよい少なくとも1つの潤滑剤を含む少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。潤滑剤は、両親媒性であってもよい。潤滑剤はまた、脂肪酸塩であってもよい。例示的な脂肪酸塩は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム及びステアリン酸カリウム及びその組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、シロキサン又はポリシロキサンを含有する、1つ又は複数のシロキシ官能基を含む化合物であってもよい。いくつかの実施形態において、潤滑剤は、超高分子量ポリシロキサンであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記膜の少なくとも1つの面は、より制御された細孔径又は少なくともより制御された細孔径及びポリアラミド含有コーティングを含む、コーティング又は金属面との改良された接着を示す。このような実施形態において、上記微細多孔性膜はまた、微細多孔性膜が製造される上記少なくとも1つのポリマー又は樹脂と異なる分子量を有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーを含む少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記膜の少なくとも1つ面は、改良された電解質との濡れ又は少なくとも改良された電解質との濡れ及びポリアラミド含有コーティングを含む、コーティングとの改良された接着を示す。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記膜の少なくとも1つ面は、改良されたイオン捕獲又は少なくとも改良されたイオン捕獲及びポリアラミド含有コーティングを含む、コーティングとの改良された接着を示す。例えば、イオノマー添加剤はイオン捕獲を改良してよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記膜の少なくとも1つ面は、増強された耐久性あるいは靱性又は少なくとも増強された耐久性及びポリアラミド含有コーティングを含む、コーティングとの改良された接着を示す。増強された靱性は、いくつかの実施形態において、増強された引張強度を意味してもよい。このような実施形態において、上記微細多孔性膜はまた、増加した靭性又は増加した引張強度の特性を提供してよいイオノマー樹脂を含む少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。このような実施形態において、上記添加剤は、イオノマーを含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成る。イオノマーは、当業者の一人によって理解されるように、イオン-含有及び非イオン性繰り返し基の両方を含むコポリマーである。場合により、イオン-含有繰り返し基は、イオノマーの25%未満、20%未満、又は15%未満を占めてもよい。いくつかの実施形態において、イオノマーは、Li系、Na系、又はZn系イオノマーであってもよい。市販のイオノマーの例としては、DuPont(商標)によって販売されるSurlyn(登録商標)、SK Global Chemicalから入手可能なPrimacor(商標)、Ineosから入手可能なEltex(登録商標)、Solvayから入手可能なAquavion(登録商標)がある。
【0025】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される微細多孔性膜は、その少なくとも片側でポリアラミド含有コーティングにより被覆される。好ましくは、ポリアラミド含有コーティングは、ポリアラミド含有コーティングに対する改良された接着を示す上記膜の上記面又は両面に被覆される。いくつかの実施形態において、ポリアラミド含有コーティングはまた、有機フィラー、無機フィラー及びその組み合わせの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される微細多孔性膜は、ポリマーコーティングが、例えばアクリルポリマーである、ポリマーを含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成ってよいところの、ポリマーコーティングにより被覆される。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される微細多孔性膜の少なくとも片面は、金属面と直接接触している。好ましくは、金属面に対する改良された接着を示す上記膜の上記面は、金属面と接触している。いくつかの実施形態において、上記膜の両面は金属面と直接接触するか、片面は金属面と接触し、片面はポリアラミド含有コーティングなどのコーティングと接触している。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つの面は、強度をさらにもっと改良するために被覆され、処理され、そうでなければ修飾されてもよい。例えば、少なくとも1つの面は、コロナ処理されてもよく、又はPE及び/又はラテックスコーティングにより被覆されてもよい。
【0028】
別の態様において、少なくとも1つのポリマー又は樹脂及び少なくとも1つの添加剤から製造される微細多孔性膜又は膜層が開示される。上記添加剤は、以下の、(1)コーティング層と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する、(2)金属面と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する、(3)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のピン除去を低減する、(4)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面での電解質との湿潤性を増強する、(5)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のイオン捕獲を増強する、(6)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の靭性又は引張強度を増強する、(7)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の細孔径を制御する、(8)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の静電気を低減する、(9)穿刺強度を増強する、及び(10)上記膜にわたるイオン輸送を増強する、機能の少なくとも1つを実現する。いくつかの実施形態において、1種類の添加剤は、これらの機能のうち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個全てを実行する。いくつかの実施形態において、これらの機能のうち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個全てを実行する異なる添加剤を加える。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記添加剤は、セラミックコーティング又はポリマーコーティング層等のコーティング層と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する。上記コーティング層は、いくつかの好ましい実施形態において、ポリアラミド含有コーティング層である。いくつかのこのような実施形態において、上記添加剤は、コーティング層と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する機能性ポリマーである。例示的な機能性ポリマーとしては、無水物修飾ポリエチレン、無水物修飾ポリプロピレン及びその組み合わせがある。無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの特定の実施例としては、無水マレイン酸修飾高密度ポリエチレン(MA-HDPE)、無水マレイン酸修飾コポリマーポリプロピレン(MA-Co-PP)、及び無水マレイン酸修飾ホモポリマーポリプロピレン(MA-Homo-PP)がある。
【0030】
いくつかの実施形態において、添加剤は、金属面と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する。いくつかの実施形態において、上記金属面は、金属電極である。いくつかのこのような実施形態において、上記添加剤は、コーティング層と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する機能性ポリマーである。例示的な機能性ポリマーとしては、無水物修飾ポリエチレン、無水物修飾ポリプロピレン及びその組み合わせがある。無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの特定の実施例としては、無水マレイン酸修飾高密度ポリエチレン(MA-HDPE)、無水マレイン酸修飾コポリマーポリプロピレン(MA-Co-PP)、及び無水マレイン酸修飾ホモポリマーポリプロピレン(MA-Homo-PP)がある。
【0031】
機能性ポリマーの量は、上記膜の重量に基づいて又は機能性ポリマーが加えられる層の重量に基づいて1~100重量%に及んでもよい。
【0032】
機能性ポリマーの機能化は、変動してもよい。機能化は、所定の重量又は量のポリマーに存在する官能基(例えばMAH基)の量である。機能性ポリマーの機能化におけるこの変動に起因して、官能基の量を考慮するのが重要であり、上記微細多孔性膜を形成するために加えられる、機能性ポリマーの単なる量ではない。好ましい実施形態において、官能基の量は、上記微細多孔性膜の総重量に基づいて又は機能性ポリマー(及びしたがって官能基)が加えられる上記膜の層の総重量に基づいて0.05から5重量%の間である。単層膜においては、官能基の量は、上記微細多孔性膜の総重量に基づいて又は機能性ポリマー(及びしたがって官能基)が加えられる上記膜の層の総重量に基づいて0.05から5重量%の間であり、同一である。いくつかの実施形態において、量は、上記微細多孔性膜の総重量に基づいて又は機能性ポリマー(及びしたがって官能基)が加えられる上記膜の層の総重量に基づいて0.1から5重量%、0.2から5重量%、0.5から5重量%、1から5重量%、1.5から5重量%、2から5重量%、2.5から5重量%、3から5重量%、3.5から5重量%、4から5重量%又は4.5から5重量%である。
【0033】
いくつかの実施形態において、添加剤は、上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のピン除去を低減する。いくつかのこのような実施形態において、添加剤は、潤滑剤を含む。本明細書において記載される潤滑剤又は潤滑油は、あまり限定されない。当業者の一人によって理解されるように、潤滑油は、以下の、ポリマー:ポリマー、ポリマー:金属、ポリマー:有機材料、ポリマー:無機材料を含む、種々の異なる面の間の摩擦力を低減するよう作用する化合物である。本明細書において記載される潤滑剤又は潤滑油の特定の実施例としては、シロキサン及びポリシロキサンを含む、シロキシ官能基を含む化合物及びステアリン酸金属塩を含む、脂肪酸塩がある。
【0034】
いくつかの実施形態において、添加剤は、上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の面摩擦を増加又は減少させてよい表面摩擦修正剤であってもよい。例えば、添加剤は、ブロック剤、抗ブロック剤(シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム又はその組み合わせ)、スリップ剤又は抗スリップ剤であってもよい。
【0035】
2個又はそれ以上、3個又はそれ以上、4個又はそれ以上、5個又はそれ以上、6個又はそれ以上、7個又はそれ以上、8個又はそれ以上、9個又はそれ以上、又は10個又はそれ以上のシロキシ基を含む化合物を、本明細書において記載される潤滑油として使用してもよい。当業者によって理解されるように、シロキサンは、シリコン原子(Si)及び酸素(O)原子を交互にした骨格を有する分子の種類であり、各シリコン原子は、結合する水素(H)又は、例えば-CH3又はC2H5である、飽和した又は不飽和の炭素基を有することができる。ポリシロキサンは、通常分子量の大きい、重合シロキサンである。本明細書において記載されるいくつかの好ましい実施形態において、ポリシロキサンは、高分子量ポリシロキサンであってもよく、さらにより好ましいいくつかの場合において、超高分子量ポリシロキサンであってもよい。いくつかの実施形態において、高分子量及び超高分子量ポリシロキサンは、500,000~1,000,000に及ぶ重量平均分子量を有してもよい。
【0036】
本明細書において記載される脂肪酸塩も、あまり限定されず、潤滑油として作用するいかなる脂肪酸塩であってもよい。脂肪酸塩の脂肪酸は、12~22個の間の炭素原子を有する脂肪酸であってもよい。例えば、脂肪酸金属塩は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸及びアラキジン酸から成る群から選択されてもよい。金属はあまり限定されないが、好ましい実施形態において、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Cs、Ba、Fr及びRa等の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。いくつかの好ましい実施形態において、金属は、Li、Be、Na、Mg、K又はCaである。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、脂肪酸塩は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸リチウム、ステアリン酸カリウム又はオレイン酸カリウムである。
【0038】
本明細書において記載されるいくつかの好ましい実施形態において、本明細書において記載される脂肪酸塩を含む、潤滑油は、200℃又はそれ以上、210℃又はそれ以上、220℃又はそれ以上、230℃又はそれ以上、又は240℃又はそれ以上の融点を有する。ステアリン酸リチウム(融点は220℃)又はステアリン酸ナトリウム(融点は245~255℃)などの脂肪酸塩は、このような融点を有する。ステアリン酸カルシウム(融点は155℃)などの脂肪酸塩はそうではない。本出願の発明者らは、ステアリン酸カルシウムは、プロセスの観点からすれば、融点が高い、ステアリン酸金属塩等の、他の脂肪酸金属塩よりも理想的でないことが分かった。特に、ステアリン酸カルシウムは、熱間押し出しプロセス中にワックスが分離し、所構わず到達する「降雪(snowing)効果」と称されるものを生じずに800ppmを超える量で加えることができないということが分かった。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、熱間押し出し温度より高い融点を有する脂肪酸金属塩を使用すると、この「降雪(snowing)問題」を解決できると考えられる。ステアリン酸カルシウムより融点が高い脂肪酸塩、特に融点が200℃を超えるものを、「降雪(snowing)」を生じることなく、1%又は1,000ppmを超える量で組み込んでもよい。1%以上の量は、改良された湿潤性及びピン除去改良等の望ましい特性を達成するために重要であることが分かった。いくつかの好ましい実施形態において、1~10%、1~9%、1~8%、1~7%、1~6%、1~5%、1~4%、1~3%、又は1~2%の量を用いてもよい。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、ピン除去力を低減するためにPE及び/又はラテックスコーティングをある時点で被覆してもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つの添加剤は、上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面での電解質との湿潤性を増強する。このような実施形態において、添加剤は、本明細書において記載されるように、無水物修飾ポリエチレン、無水物修飾ポリプロピレン及びその組み合わせを含む機能性ポリマーであってもよく、又は含んでもよい。添加剤は、いくつかの実施形態において、イオノマーであってもよく、又は含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つの添加剤は、上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のイオン捕獲を増強する。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つの添加剤は、上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の靱性又は引張強度を増強する。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つの添加剤は、上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の細孔径を制御する。いくつかのこのような実施形態において、上記少なくとも1つの添加剤は、微細多孔性膜が製造される上記ポリマー又は樹脂と異なる分子量を有するホモポリマー、コポリマー又はターポリマーを含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成る。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つの添加剤は、上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の静電気を低減する。
【0045】
いくつかの実施形態において、添加剤は、酸コポリマー(例えばDuPontのNucrel(商標)などの、エチレン(E)及びメタクリル酸(MAA)又はアクリル酸(AA)のコポリマー)、イオノマー(例えばDuPontのSurlyn(商標)、SK Global Chemicalから入手可能なPrimacor(商標)、Ineosから入手可能なEltex(登録商標)、Solvayから入手可能なAquavion(登録商標)、無水マレイン酸修飾PP又はPEホモポリマー及び/又はコポリマー樹脂(複数含む)、潤滑油、及び/又は他の典型的な添加剤又はフィラー、及びその組み合わせから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、微細多孔性膜は、単層、二層、三層又は多層微細多孔性膜である。用語「層」によって表されるものには、0.1~35ミクロンの厚さを有する単押出層が含まれる。当業者によって理解されるように、単押出層は、いずれの他のものも伴わずそれ自体が押し出された層である。また、共押出された二―層、三―層、または多―層膜の層も、それぞれが「層」であると考えられる。共押出された二―層における層の数は2であり、共押出された三―層における層の数は3であり、共押出された多―層薄膜における層の数は2以上、好ましくは3以上、又は4以上である。二―層、三―層、又は多―層共押出薄膜の層の正確な数は、ダイ設計によって定められ、必ずしも、共押出されて共押出薄膜を形成する材料ではない。例えば、共押出の二―、三―又は多―層薄膜は、2、3、又は4以上の層のそれぞれを形成する同じ材料を使用して形成されてよく、これらの層は、それぞれが同じ材料からできていても、依然として別々の層であると考えられる。正確な数は、同様に、ダイ設計によって定められる。
【0047】
単層微細多孔性膜は、単一の単押出層から成ってもよい。二層微細多孔性膜は、2個の共押出層又は共に積層された2個の単押出層から成ってもよい。三層微細多孔性膜は、3個の共押出層、共に積層された3個の単押出層又は2個の共押出層及び1個の単押出層から成ってもよい。多層は、例えば、4個以上の共押出層、別の2個以上の共押出層と積層した2個以上の共押出層、他の2組の2個以上の共押出層と共に積層した2個以上の共押出層又は単押出層に積層した3個の共押出層から成ってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、微細多孔性膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその混合物並びにその組み合わせを含む、ポリオレフィン樹脂から製造される。いくつかの実施形態において、微細多孔性膜は、ポリオレフィン樹脂から製造される単層膜である。例えば、それは、ポリエチレン、ポリプロピレン又はその混合物から製造されてもよい。いくかの好ましい実施形態において、単層膜は、多数のポリプロピレンを含む。いくつかの実施形態において、微細多孔性膜は、一方又は両方の層がポリオレフィンから製造される二層膜である。いくかの好ましい実施形態において、二層の少なくとも1つの層は、多数のポリプロピレンから製造される。いくかの実施形態において、微細多孔性膜は、三層膜であり、複数の層の少なくとも1つはポリオレフィンから製造される。いくかの好ましい実施形態において、三層の少なくとも1つ又は両方の最外層は、多数のポリプロピレンを含む。いくつかの実施形態において、微細多孔性膜は、少なくとも1つの層がポリオレフィンから製造される多層膜である。いくかの好ましい実施形態において、多層実施形態の少なくとも複数の最外層は、多数のポリプロピレンを含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1つの添加剤は、コーティング層又は金属層と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強し、上記微細多孔性膜の異なる面のピン除去を低減する。いくつかの実施形態において、同一の添加剤によって接着を増強し、ピン除去力を低減し、いくつかの実施形態において、異なる添加剤がこれらの異なる特性を提供する。
【0050】
別の対応において、多層微細多孔性膜は、膜の1つ又は両方の最外層に少なくとも1つの添加剤を含むと記載される。添加剤は、以下の、(1)コーティング層と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する、(2)金属面と上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の接着を増強する、(3)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のピン除去を低減する、(4)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面での電解質との湿潤性を増強する、(5)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面のイオン捕獲を増強する、(6)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の靭性又は引張強度を増強する、(7)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の細孔径を制御する、(8)上記微細多孔性膜の少なくとも1つの面の静電気を低減する、(9)穿刺強度を増強する、及び(10)上記膜にわたるイオン輸送を増強する、機能の少なくとも1つを実現する。いくつかの実施形態において、1種類の添加剤は、これらの機能のうち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個全てを実行する。いくつかの実施形態において、これらの機能のうち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個全てを実行する異なる添加剤を加える。
【0051】
両方の最外層が少なくとも1つの添加剤を含むいくつかの実施形態において、添加剤は、同一でも異なってもよい。いくつかの実施形態において、多層膜の複数の内層はまた少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。外層又は最外層の添加剤の蒸発又は分解等によって添加剤が経時的に膜から失われてよいいくつかの実施形態において、内層の添加剤は、複数の外層に移動し、外層又は最外層から失われた添加剤を補充してもよい。
【0052】
いくつかの多層の実施形態において、最外層は、01から20ミクロン、1から15ミクロン、2から10ミクロン、3から5ミクロン、0.1から5ミクロン、0.1から3ミクロン、0.1から2.5ミクロン、0.1から2ミクロンの厚さを有してもよい。
【0053】
多層の実施形態を含む、本明細書において記載される微細多孔性膜は、1~60ミクロン、1~50ミクロン、1~40ミクロン、1~30ミクロン、1~25ミクロン、1~20ミクロン、1~15ミクロン、1~10ミクロン又は1~5ミクロンの厚さを有してもよい。場合により、膜は5ミクロンよりずっと薄くても30ミクロンよりずっと厚くてもよい。しかしながら、リチウムイオン電池における使用の目的のためには、薄い方が一般的に好ましく、特に20ミクロン以下、15ミクロン以下、12ミクロン以下、又は10ミクロン以下である。
【0054】
別の態様において、本明細書において記載される任意の単層、二層、三層又は多層微細多孔性膜を含む電池セパレーターが記載される。いくかの好ましい実施形態において、微細多孔性膜は、ポリアラミドを含むコーティングにより被覆されてもよい。いくつかのさらに好ましい実施形態において、コーティングは、無機粒子、有機粒子又はその組み合わせをさらに含むセラミックポリアラミド含有コーティングであってもよい。
【0055】
別の態様において、本明細書において記載されるような電池セパレーターを含むリチウムイオン二次電池が記載される。
【0056】
別の態様において、リチウムイオン二次電池の少なくとも1つの電極に直接接触している本明細書において記載されるような電池セパレーターを含む複合材が記載される。いくつかの実施形態において、セパレーターは、リチウムイオン二次電池用の2個の電極に直接接触してもよい。他の実施形態において、セパレーターは、電池、リチウム電池、リチウム二次電池、コンデンサ、超コンデンサ、ハイブリッド電池/コンデンサ、セル、電気化学セル、システム、モジュール、パック及び/又は同類のものにおいて使用されてもよい。
【0057】
別の態様において、本明細書において記載される電池セパレーター、リチウムイオン二次電池、コンデンサ又は複合材を含む車両又はデバイスが記載される。
【0058】
また、本明細書において記載される任意の多孔性又は微細多孔性膜は、場合により織物、フィルター、HVACユニット、燃料電池、PEM、湿度制御層、経皮貼布及び/又は同類のものにおいて使用してもよく、又はこれらであってもよい。例えば、繊維製品は、本明細書において記載される任意の微細多孔性膜を含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成ってよい。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される少なくとも1つの微細多孔性膜を含む積層繊維製品が記載される。いくつかの実施形態において、積層は、本明細書において記載される1個以上の微細多孔性膜を含んでもよい。いくつかの実施形態において、積層は、本明細書において記載される1つ又は複数の微細多孔性膜及び別の織布、不織布、ニット、コーティング及び/又は多孔性又は微細多孔性層を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される繊維製品又は積層繊維製品を、ジャケット、ズボン、シャツ、帽子、靴下、下着、手袋、又はショーツ等の衣服に使用してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される繊維製品又は積層繊維製品を、テント、バックパック、又はタープ等のアウトドア用品を形成するために使用してもよい。
【0059】
他の実施形態において、積層あるいは複合膜、材料又はセパレーターは、本明細書において記載される1つ又は複数の微細多孔性膜及び別の織布、不織布、ニット、コーティング及び/又は多孔性又は微細多孔性層を含んでもよい。
【0060】
いくつかの他の実施形態において、単一の膜又はセパレーター又は積層又は複合膜、材料又はセパレーターは、所望の最終用途、厚さ、デザイン、パターン等に依存して、エンボス加工、カレンダー加工、被覆、処理及び/又はさらに加工してもよい。
【実施例
【0061】
MAH機能性ポリマーを加える場合、官能基の含有量(MAHの含有量)が、機能性ポリマーが加えられる層の重量に基づいて0.05から5.0重量%になるように、特定の試料を調製した。
【0062】
実施例1-実施例1を形成するために、ポリプロピレン及び5%無水マレイン酸修飾高密度ポリエチレンを押し出しして(単押し出し)単層薄膜前駆体を形成した。溶媒は使用しなかった。次に押し出した前駆体を伸展して細孔を形成した。実施例1用のデータは、表1に見られる。
【0063】
同一のポリプロピレンが各実施例及び比較例で使用されたことに留意する。変動したのは添加剤(又はその欠如)である。
【0064】
実施例2(a)―実施例2(a)を、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに10%無水マレイン酸修飾ホモ-PPを加えたことを除いて、実施例1と同じような方法で形成した。実施例2(a)用のデータは、以下の表1~4に見られる。実施例2(a)のSEMも以下に示す。これは、実施例2(b)、4、及び6~13に使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0065】
実施例2(b)―実施例2(b)は、異なる延伸条件を使用して、とりわけ、細孔を形成したことを除いて、2(a)と同一である。実施例2(b)用のデータは、以下の表1~4に見られる。これは、実施例2(a)、4、及び6~13において使用したのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0066】
実施例3―実施例3は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに10%無水マレイン酸修飾Co-PPを加えたことを除いて、実施例1と同一である。また、異なる延伸条件を使用した。実施例3用のデータを以下の表1及び2に示す。実施例3のSEMも以下に示す。
【0067】
実施例4―実施例4は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに15%無水マレイン酸修飾ホモ-PPを加えたことを除いて、実施例1と同一である。実施例4用のデータを以下の表2及び4に示す。実施例4のSEMも以下に示す。これは、実施例2(a)及び(b)、及び6~13において使用したのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0068】
実施例5―実施例5は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに5%スチレンーエチレンープロピレンースチレンコポリマーを使用したことを除いて、実施例1と同様である。実施例5用のデータを以下の表3に示す。
【0069】
実施例6―実施例6は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに10%無水マレイン酸修飾ホモ-PP及び5%スチレンーエチレンープロピレンースチレン(SEPS)コポリマーを加えたことを除いて、実施例1と同様である。実施例6用のデータを以下の表3に示す。これは、実施例2(a)、2(b)、4及び7~13において使用されたのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0070】
実施例7―実施例7は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに10%無水マレイン酸修飾ホモ-PPに加えて5%プロピレンーエチレンエラストマーを使用することを除いて、実施例1と同様である。実施例7用のデータを以下の表3に示す。これは、実施例2(a)、2(b)、4、6、及び8~13において使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0071】
実施例8―実施例8は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに20%無水マレイン酸修飾ホモ-PPを使用したことを除いて、実施例1と同様である。実施例8用のデータは以下の表4に見られる。これは、実施例2(a)、2(b)、4、6、7、及び9~13において使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0072】
実施例9―実施例9は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに25%無水マレイン酸修飾ホモ-PPを使用したことを除いて、実施例1と同様である。実施例9用のデータは以下の表4に見られる。これは、実施例2(a)、2(b)、4、6、7、8、及び10~13において使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0073】
実施例10―実施例9は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに30%無水マレイン酸修飾ホモ-PPを使用したことを除いて、実施例1と同様である。これは、実施例2(a)、2(b)、4、6、7、8、9、及び11~13において使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0074】
実施例11―実施例9は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに35%無水マレイン酸修飾ホモ-PPを使用したことを除いて、実施例1と同様である。これは、実施例2(a)、2(b)、4、6、7、8、9、10、及び12~13において使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0075】
実施例12―実施例9は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに40%無水マレイン酸修飾ホモ-PPを使用したことを除いて、実施例1と同様である。これは、実施例2(a)、2(b)、4、6、7、8、9、10、11、及び13において使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0076】
実施例13―実施例13は、5%無水マレイン酸修飾HDPEの代わりに10%無水マレイン酸修飾ホモ-PP及び5%スチレンーエチレンーブチレンースチレン(SEBS)コポリマーを加えたことを除いて、実施例1と同様である。これは、実施例2(a)、2(b)、4及び6~12において使用されるのと同一の修飾ホモ-PPである。
【0077】
実施例14~26 実施例14~26を、2個のPP+添加剤の単層薄膜を1個のPE単層薄膜と積層してPP/PE/PP三層構造を形成することにより作成した。
【0078】
実施例27~29―実施例27~29を、上述したようなPP+添加剤を共押し出しして共押出三層を形成することによって作成した。また、PEを共押し出しして共押出三層を形成した。次に、2個のPP+添加剤共押出三層を1個のPE共押出三層と積層して以下の(PP/PP/PP)/(PE/PE/PE)/(PP/PP/PP)のような構造を形成した。添加剤を、PP+添加剤共押出三層の層のうち1個又は全てに含んでもよい。
【0079】
実施例30―実施例30を、5%無水マレイン酸修飾高密度ポリエチレンの代わりに5%イオノマーを加えたことを除いて、実施例1と同様に調整した。
【0080】
比較例1(a)―比較例1(a)は、添加剤を加えなかったことを除いて実施例1と同様である。また、異なる延伸条件を使用した。比較例1(a)用のデータは以下の表1~3に見られる。比較例1(a)のSEMも以下に見られる。
【0081】
比較例1(b)―比較例1(b)は、添加剤を加えなかったことを除いて実施例1と同様である。また、異なる延伸条件を使用した。比較例1(b)用のデータは以下の表1及び3に見られる。
【0082】
比較例1(c)―比較例1(c)は、添加剤を加えなかったことを除いて実施例1と同様である。比較例1(c)用のデータは以下の表3に見られる。
【0083】
比較例1(d)―比較例1(d)は、添加剤を加えなかったことを除いて実施例1と同様である。また、異なる延伸条件を使用した。比較例1(d)用のデータは以下の表1~3に見られる。比較例1(a)のSEMも以下に見られる。
【0084】
結果
表1~表5の結果を参照する(それぞれ図1~5にある)。
【0085】
図6~8の5,000倍でのSEM画像を参照する。
【0086】
図9~11の20,000倍でのSEM画像を参照する。
【0087】
ピン除去力
ピン除去力を実施例8及び比較例2について測定した。
結果の簡潔な要約
無水マレイン酸(MAH)機能性樹脂のいくつかの利点には、
特にコロナ処理などの処理なしでポリアラミドコーティング、ポリマー被覆セパレーター(PCS)コーティング、及び薄肉セラミックコーティング(1ミクロン未満のナノ分散)で被覆できる能力、
MAHは、5V USABC応用にとって重要である、フリーラジカル捕捉剤として機能してもよい、
電極接着が増強される、
静電気の低減、
ぬれ速度及び接触角の改良を含む、湿潤性、
それのための改良された電極接着、
他の特性
が含まれることが分かった。
20,000倍でのSEM画像から、15%添加剤を含む微細多孔性膜でさえもCelgard(登録商標)乾式プロセスを使用して形成することができることが分かる。20%まで、25%まで、30%まで、又はそれ以上の量でもCelgard乾式加工できるかSEM画像に見られるもののような微細多孔性膜を形成することができるだろうことが予測される。
【0088】
実施例5及び6は、SEPSエラストマーを含むが、SEPSエラストマーを含まない実施例と同等又はより優れた穿刺を示す。
【0089】
実施例7は、PPエラストマーを含むが、低減した穿刺及び低いGurleyを示す。
【0090】
少なくとも選択された実施形態、態様又は目的によれば、本開示又は本発明は、先行する問題、必要性又は課題に対処してもよく、及び/又は新規又は改良された微細多孔性単層、二層、三層又は多層膜、セパレーター膜、セパレーター、又は被覆されたセパレーターを提供してもよい。膜は、好ましくは少なくとも1つの樹脂又はポリマー及び少なくとも1つの添加剤から製造される。添加剤は、微細多孔性膜のコーティング、好ましくはポリアラミド-含有コーティングへの、又は金属面等の異なる材料への接着を改良する少なくとも1つの材料を含んでもよい。接着の改良は、少なくとも1つの添加剤を含まない類似する微細多孔性膜との比較に基づく。いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの添加剤は、機能性ポリマー又は機能性ポリマー及びエラストマーの組み合わせを含むか、これから成るか、またはこれから本質的に成ってもよい。いくつかの実施形態において、機能性ポリマーの官能基は、無水マレイン酸(MAH)であってもよい。新規又は改良された微細多孔性膜を含む電池セパレーター又は被覆されたセパレーターも開示されている。電池セパレーターは、ポリアラミド-含有コーティングで被覆された微細多孔性膜を含んでもよい。新規又は改良されたセパレーター、複合材、電池、リチウムイオン二次電池、及び/又はセパレーター、複合材、又は電池を含む車両又はデバイスも開示されている。
【0091】
接触角試験:
ASTM D5725:自動接触角試験機を使用するシート状材料の表面湿潤性及び吸収性のための標準試験法
【0092】
本試験法では、特定の試験条件下薄膜の平坦な試験試料と接触する試験液の接触角を測定する。自動装置は、平坦な試験試料の上部の液滴の接触角を観察及び測定するために使用される。
【0093】
本発明の各種実施形態は、本発明の各種目的の達成において記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる説明的なものであることが理解されるべきである。多くの変更及び改変が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者に容易に明らかである。
【0094】
本発明は、その精神および本質的な特質から逸脱することなく具現化され得、したがって、本発明の範囲を示すとして、上記の明細書よりもむしろ、添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。開示されている方法及びシステムを実施するのに使用されてもよい構成要素が開示されている。これらおよび他の構成要素は、本明細書に開示されており、これらの構成要素の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが、これらのそれぞれの種々の個別および集合的組み合わせならびに並べ替えが明確に開示されていない場合がありながら、開示されているとき、それぞれが、全ての方法およびシステムについて具体的に企図されて本明細書に記載されていると理解される。このことは、限定されないが、開示されている方法における工程を含めたこの出願の全ての態様に当てはまる。そのため、実施され得る種々のさらなる工程が存在するとき、これらのさらなる工程は、それぞれが、開示されている方法のいずれの具体的な実施形態または実施形態の組み合わせによっても実施され得ることが理解される。
【0095】
構造および方法の上記に記載されている詳細な説明は、説明目的のみで提示されている。例を使用して、最良の形態を含めた例示的な実施形態を開示しており、また、いずれの当業者も、任意のデバイスまたはシステムを作製および使用すること、ならびに任意の組み込まれた方法を実施することを含めた本発明を実施することができるようになる。これらの例は、排他的であること、または本発明を開示されている厳密な工程および/もしくは形態に限定することを意図しておらず、上記の教示に照らして多くの変更および変形が可能である。例えば、本発明又は実施形態は、乾式プロセス膜又は前駆体に特によく適合してもよいが、乾式プロセス共押出、湿式プロセス、湿式プロセス共押出、BNBOPPキャスト薄膜、BNBOPPキャスト薄膜共押出、直列スロット台共押出、積層バージョン、被覆製品、エンボス加工又はカレンダー加工バージョン、及び/又は同類のもの等の、他の膜又は前駆体を同様に含んで、記載してもよい。本明細書に記載されている特徴は、いずれの組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書に記載されている方法の工程は、物理的に可能であるいずれの順序で実施されてもよい。本発明の特許請求可能な範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されており、当業者が思い浮かぶ他の例を含んでいてよい。かかる他の例は、これらが特許請求の範囲の逐語的言葉と異ならない構造的要素を有するとき、または特許請求の範囲の逐語的言葉と実質的に差異がない等価の構造的要素を含むとき、特許請求の範囲内にあると意図される。
【0096】
添付の特許請求の範囲の組成物および方法は、本明細書に記載されている具体的な組成物および方法によって範囲が限定されない。本明細書に示され記載されているものに加えて、組成物および方法の種々の変更が、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。さらに、本明細書に開示されているある代表的な組成物および方法工程のみが具体的に記載されているが、かかる組成物および方法工程の他の組み合わせもまた、具体的に列挙されていなくても、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。そのため、工程、要素、構成要素、または構成成分の組み合わせが本明細書または以下において明確に言及されてもよいが、工程、要素、構成要素、または構成成分の他の組み合わせが、明確に記述されていなくても包含される。
【0097】
明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明らかに示さない限り複数の指示対象を含む。範囲は、「約」もしくは「およそ」1つの特定値から、かつ/または「約」もしくは「およそ」別の特定値までとして本明細書において表されてもよい。このような範囲が表されているとき、別の実施形態には、1つの特定値から、及び/又は他の特定値までが含まれる。同様に、値が先行詞「約」を使用して近似値として表されているとき、特定値が別の実施形態を形成すると理解される。範囲のそれぞれの終点が、両方とも、他の終点に関連して、また、他の終点から独立して有意であることがさらに理解される。「任意選択的な」または「任意選択的に」は、続いて記載されている事象または状況が、起こっても起こらなくてもよいこと、および、記載が、当該事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含んでいることを意味する。
【0098】
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という語および当該語の変形、例えば「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、「含むが限定されない」を意味し、例えば、他の添加剤、構成要素、整数値、または工程を排除することを意図するものではない。「から本質的に成る(consisting essentially of)」および「から成る(consisting of)」という用語は、本発明のより具体的な実施形態を付与するために「含む(comprising)」および「含む(including)」の代わりに使用されてよく、また、開示される。「例示的な(exemplary)」または「例えば(for example)」は、「の例(an example of)」を意味し、好ましいまたは理想的な実施形態を示すものを伝えることを意図するものではない。同様に、「例えば(such as)」は、制限的な意味で使用されるのではなく、説明的または例示的目的で使用される。
【0099】
注記されている以外の、本明細書および特許請求の範囲において使用される幾何学的形状、寸法などを表す全ての数が、少なくとも理解されるべきであり、特許請求の範囲と等価物の原理の適用を制限しようとする試みとしてではなく、有効数字の数および通常の四捨五入のアプローチの観点で解釈されるべきである。
【0100】
別途定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、開示される発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に引用される公開公報および引用される材料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0101】
加えて、本明細書において説明的に開示される発明は、好適には、本明細書において具体的に開示されていないいずれの要素の非存在下であっても実施されてよい。
図1
図2
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図4
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図10
図11