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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】手動プリンタを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/28 20060101AFI20241205BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20241205BHJP
   B41J 29/42 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J3/36 Z
B41J29/42 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020570883
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066803
(87)【国際公開番号】W WO2020002317
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】18179483.5
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520494932
【氏名又は名称】コロップ デジタル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】アレックス ブレトン
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-307756(JP,A)
【文献】特開2003-159817(JP,A)
【文献】特開2017-170807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0075512(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0120937(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 3/36
B41J 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動プリンタ(3)を制御する方法であって、
長さと幅とを有する第1のスワス(1)を終了した後に前記手動プリンタ(3)の前記幅の方向への横断移動を検出することと、
前記横断移動によりカバーされる横断距離を、前記第1のスワス(1)と、前記幅の方向に沿って前記第1のスワス(1)とは異なる位置に配置される第2のスワス(2)と、の間の所定の横断距離(11)と比較することと、
前記横断移動によりカバーされる前記横断距離が前記所定の横断距離(11)に達すると、横断停止信号を発することと、を含む方法。
【請求項2】
前記所定の横断距離(11)は、前記第1のスワス(1)と第2のスワス(2)との平均スワス幅よりも、あらかじめ規定された横断パディング(P)だけ大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の横断距離(11)は、前記第1のスワス(1)を印刷する間の前記手動プリンタ(3)の前記長さの方向への縦断移動の経路の関数として決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記横断停止信号は、可聴信号、可視信号、または触覚信号であり、好ましくは可聴信号であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
最後のスワスを除く各スワスの少なくとも1つの終端が、隣り合うスワスの始端と横断方向に位置合わせされることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のスワス(1)を終了した後に縦断停止信号を発することで、スワスの終端を合図することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
現在のスワスの印刷領域と、前記手動プリンタ(3)の移動の縦断方向と、後続のスワスの印刷領域の始端とに応じて、スワスの終端を合図することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記手動プリンタ(3)を印刷モードと平行移動モードとの間で切り替え、
印刷モードにおいて、前記手動プリンタ(3)の縦断移動を検出し、前記検出された前記縦断移動にしたがって、前記手動プリンタ(3)の印刷ヘッド(4)を、現在のスワスの画像コンテンツを印刷するように制御し、
平行移動モードにおいて、前記印刷ヘッド(4)を、待機状態を維持するように制御することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記横断停止信号を発すると同時に、前記手動プリンタ(3)を平行移動モードから印刷モードに切り替えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
印刷モードにおいて、前記第1のスワス(1)を印刷する間に前記縦断移動の方向が判定され、後続のスワス中における前記縦断移動の方向が、前のスワスの前記方向と逆になると想定されることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
手動プリンタ(3)であって、
前記手動プリンタ(3)の底部側(18)に向けて方向付けられたノズル(17)を有するインクジェット印刷ヘッド(4)と、
制御回路(19)と、
モーション検出器(8)と、を備え、
前記制御回路(19)が、前記モーション検出器(8)および前記インクジェット印刷ヘッド(4)に接続されており、前記モーション検出器(8)から受信された示度に応答して前記インクジェット印刷ヘッド(4)を制御するように構成されており、
前記手動プリンタ(3)が、さらに、前記制御回路(19)に接続されたシグナリングユニット(13)を備え、
前記制御回路(19)が、長さと幅とを有する第1のスワス(1)と、前記幅の方向に沿って前記第1のスワス(1)とは異なる位置に配置される第2のスワス(2)と、の間で前記モーション検出器(8)によって検出される前記幅の方向への横断移動をモニタし、前記横断移動によりカバーされる横断距離を前記第1のスワス(1)と前記第2のスワス(2)との間の所定の横断距離(11)と比較し、かつ前記横断移動によりカバーされる前記横断距離が前記所定の横断距離(11)に達すると横断停止信号を発するように前記シグナリングユニット(13)に命令するように構成されていることを特徴とする手動プリンタ(3)。
【請求項12】
前記シグナリングユニット(13)は、スピーカ、光源、または振動モータであることを特徴とする請求項11に記載の手動プリンタ(3)。
【請求項13】
手動プリンタ(3)を用いて複数のスワスを印刷するために手動プリンタ(3)のコンピュータが実行するプログラムであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法の方法ステップを実行するように設計されたプログラム
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を使用して複数のスワスに画像を印刷するよう手動プリンタ(3)を準備するための方法であって、
あらかじめ規定された最小ギャップ幅の平行な直線状ギャップ(23)によって離隔された画像部分(21、22)を識別することと、
隣り合う識別された画像部分(21、22)を相続くスワス(1、2)に割り当てることと、
各スワス(1、2)に関連付けられた画像データとすべてのスワス(1、2)の位置合わせ情報とを手動プリンタ(3)に送信することと、を含む方法。
【請求項15】
手動プリンタ(3)を用いて複数のスワスを印刷するために手動プリンタ(3)のコンピュータが実行するプログラムであって、請求項14に記載の方法の方法ステップを実行するように設計されたプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動プリンタ、手動プリンタを制御する方法、該方法を使用して複数のスワスに画像を印刷するように手動プリンタを準備するための方法、および該方法を実装するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
手動プリンタ(「電子ハンドスタンプ」とも)は、一般に、基材(例えば、スタンプする書類または他の物体)上に印刷によってスタンプマークを生成するための可搬型電子装置である。現行のタイプの手動プリンタは、電子ハンドスタンプの底部側に向けて方向付けられたノズルを有するインクジェット印刷ヘッドと、制御回路と、モーション検出器とを備え、制御回路は、モーション検出器およびインクジェット印刷ヘッドに接続されており、かつモーション検出器から受信された示度に応答してインクジェット印刷ヘッドを制御するように構成されており、これにより、手動プリンタを目標媒体上で、手動で移動させると、印刷画像が生成される。
【0003】
インクジェット印刷ヘッドは、限られた数のノズルを有する。これらのノズルの配列、より具体的にはノズル間の距離は、印刷画像の達成可能な解像度と、印刷ヘッドの片道で印刷できる、目標媒体上のスワスの幅(スワス幅)とを決定する。スワス長は、目標媒体の寸法によって(理論的には、インクカートリッジによって印刷ヘッドにインクを供給する場合には、インクカートリッジのインク内容量によって)のみ制限される。印刷する画像の両方の寸法がスワス幅よりも大きい場合に、同じ印刷ヘッドを用いて相続く異なる位置に2つ以上のスワスを印刷することが知られている。デスクトップインクジェットプリンタはそのようにして動作する。それらの装置にはいくつかの制限があり、すなわち、それらの装置はかさばり、重く、かつ比較的高価であると同時に、それらの装置は、それらプリンタが提供するフィード機構(例えば、用紙フィード)に送ることのできる目標媒体と共にしか使用できない。
【0004】
よりコンパクト、可搬型で、かつ手頃な価格であるプリンタを提供するために、用紙搬送と印刷ヘッドを移動させる仕組みとを不要とし、代わりに手動プリンタ、すなわち印刷しながら手によって目標媒体上で移動させるものを提供することが知られている。このような装置の例が、特許文献1および特許文献2に開示されている。それらの装置は、目標媒体上の両方の方向でのプリンタの相対移動を計測し、新たなスワスをいつ印刷することになるかを認識する。より具体的には、それらの装置は、目標媒体上での印刷ヘッドの検出された移動経路に見合うように印刷ヘッドを制御することによって、並べられる相続くスワスを位置合わせすることに基づいており、ユーザは、目標媒体上でプリンタを自由に移動させることができる。我々の経験からすると、相対移動を検出する利用可能なモーションセンサ(例えば、光学センサ)を用いて達成される精度は、計測誤差、それにしたがう位置合わせ誤差が、印刷ヘッドがカバーする距離にわたって蓄積するため、この方法で許容できる印刷品質を達成するには十分でない。結果として、連続的で部分的に重なり合うスワスの印刷では、大抵の場合、それぞれのスワスの不十分な位置合わせに起因して、不鮮明な印刷画像が生じる。
【0005】
それらの誤差を回避するための公知のアプローチは、相対移動の検出を、印刷された画像を基準とする絶対位置の検出で置き換える、または補完することによって、上述した誤差の蓄積を回避することができるようになるはずであるという認識に基づいている。このアプローチは、印刷済みの画像を走査することと、走査画像に対する画像認識を実行することとにより、印刷する画像内の走査画像の位置を判定し、この情報を位置合わせの補正に使用することを含む。明らかに、このアプローチは、走査および画像認識のための高性能なハードウェアを必要とし、このことは、簡易かつ手頃な価格の装置を提供する意図と相いれない。
【0006】
よりコスト効率の高いアプローチが、特許文献3に開示されている。そのアプローチは、印刷する画像と共に位置合わせマークを印刷することにより、手動の縦/横位置合わせを容易にすることを含む。特に、ユーザは、後続のスワスを印刷する前に、直前のスワスの印刷された位置合わせマークをプリンタ上の基準マーキングに位置合わせする。このアプローチは、印刷された位置合わせマークで印刷画像に不具合が生じるという明らかな欠点を有する。
【0007】
他に公知の装置には、ユーザが印刷画像を完成させるよう印刷ヘッドを移動させるべき未達領域をユーザに知らせるために、グラフィック画面上に印刷プロセスの進捗を表示するものがある。それらの画面の解像度は、相続くスワスの許容できる位置合わせを可能にするには、十分でなく、かつ低すぎる。このような装置の例が、特許文献4および特許文献5に開示されている。
【0008】
異なる目的で、すなわち、印刷する別個の画像の列全体を通してユーザをガイドするために、特許文献6は、現在の画像が完了すると後続の画像の位置をユーザに知らせる可聴音を生成する装置を開示している。後続の画像を印刷するための精度の良い位置合わせに関する、プリンタからの能動的なガイダンスはない。
【0009】
特許文献7は、印刷される表面上で、手動で移動させる手持式プリンタに関する。このプリンタは、水平移動の方向(左から右への、またはその逆の)を検出し、検出される方向となるように調整する。特許文献7の開示は、水平移動の、すなわちスワスに平行な方向における処理に限定されており、したがって、異なるスワスの位置合わせに関するものではない。
【0010】
特許文献8は、印刷ヘッドを取り囲む基本的に円形の光学センサを有する別の(仮説に基づくように思われる)手持式プリンタを示している。一見して、このプリンタは、画像のすべての部分が印刷されるまで、表面上で任意の方向に移動され得る。このプリンタは、印刷の完了を示す、可視インジケータまたは音声インジケータを備える。
【0011】
特許文献9は、水平移動の距離を検出および判定することが可能であるとともに、例えばディスプレイ上にいまだ未印刷である部分を示すことによって、プリンタの移動に関する一般的なユーザガイダンスを提供することが可能な、さらに別の手持式プリンタに関する。相続くスワスを割り当てることについての問題は、具体的に対処されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第5927872号明細書
【文献】米国特許第6773177号明細書
【文献】米国特許第7735951号明細書
【文献】米国特許第6942402号明細書
【文献】米国特許第8107108号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/092325号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/120937号明細書
【文献】米国特許第6357939号明細書
【文献】米国特許第8210758号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、比較的簡易で手頃な価格の装置を用いて、ユーザが相続くスワスの許容できる位置合わせを達成することを支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、手動プリンタを制御する方法であって、第1のスワスを終了した後に手動プリンタの横断移動を検出することと、横断移動によりカバーされる横断距離を、該第1のスワスと第2のスワスとの間の所定の(例えば、あらかじめ規定された)横断距離と比較する(すなわち、継続的にモニタする)ことと、横断移動によりカバーされる横断距離が所定の横断距離に達すると、横断停止信号を発することと、を含む方法を提案する。
【0015】
これに対応して、本発明は、最初に規定された手動プリンタであって、さらに、制御回路に接続されたシグナリングユニットを備え、制御ユニットが、第1のスワスと第2のスワスとの間でモーション検出器によって検出される横断移動をモニタし、かつ横断移動によりカバーされる横断距離を該スワス間の所定の横断距離と比較し、かつ横断移動によりカバーされる横断距離が所定の横断距離に達すると停止信号を発するようにシグナリングユニットに命令するように構成されている、手動プリンタを提案する。モーション検出器は、例えば、1センチメートル当たりまたは1インチ当たりのカウントの示度を与える光学マウスエンコーダであってもよい。
【0016】
つまり、本発明は、第1のスワスが終了した後にプリンタの横断変位を継続的にモニタし、横断変位を停止させて第2のスワスの印刷を開始すべき時点で横断停止信号を用いてユーザに通知することを提案する。横断停止信号は、充足された横断移動または横断変位についての瞬時の通知を与える。横断変位を低速で注意深く行うことによって、ユーザは、印刷画像を不良にする欠点がないにもかかわらず、公知の位置合わせマークによって達成される位置合わせの精度に匹敵するか、またはそれを超える位置合わせの精度を達成することができる。
【0017】
有利には、所定の横断距離は、第1のスワスと第2のスワスとの平均スワス幅よりも、あらかじめ規定された横断パディングだけ大きい。ここで、スワス幅とは、使用される実際のスワスの幅を指し、ノズルパラメータによって決定される可能な最大スワス幅未満であり得る。例えば、いくつかの意図的に幅狭としたスワス(すなわち、可能な最大スワス幅未満のスワス幅を有する)を使用して、行間だけ離隔した行を印刷してもよく、この場合に、最大スワス幅でも2つの行が単一のスワス内に収まらない。第1のスワスと第2のスワスとの平均スワス幅は、2つのスワスの中心線間の距離に対応する。あらかじめ規定された横断パディングは、相続くスワス間の最小距離を適用することによって、位置合わせ誤差および結果として生じる重なり合いに見合ったものとなり得る。最適なあらかじめ規定された横断パディングは、モーションセンサ(複数可)の精度にも依存し、センサ精度が良いほど、横断パディングを小さくすることが可能になる。あらかじめ規定された横断パディングは、0.1~3mm、好ましくは約1mmであってもよい。
【0018】
さらに、所定の横断距離は、第1のスワスを印刷する間の手動プリンタの縦断移動の経路の関数として決定されてもよい。例えば、プリンタは、直線経路からの検出されるオフセットに応じて、スワスに対して画像の位置を整えることによって、体の構造に起因する(肘を中心とした)、ユーザがたどる経路の曲がりを能動的に補うことが可能であり得る。これらの例では、後続のスワス中にも観測されるであろうスワスの長さにわたる横断変位を整えるために、所定の横断距離を増大または減少させることができる。
【0019】
横断停止信号は、可聴信号、可視信号、または触覚信号(例えば、音、雑音、光の明滅、光の色変化、消灯、振動)であり得る。ユーザが目標媒体を注視することになるため、好ましくは、横断停止信号は、可聴信号である。触覚信号を生成する作動器は、比較的高価であり、また、位置ずれを生じさせる影響を与え得る。本発明の範囲内で、横断停止信号は、また、別個の装置(例えば、スマートウォッチまたは外部スピーカ)による、手動プリンタのユーザによって知覚可能な通知に変換される電気信号または無線信号であってもよい。これに対応して、手動プリンタのシグナリングユニットは、好ましくは、スピーカ、光源(例えば、LED)、または振動モータである。
【0020】
印刷中に目標媒体に適用される複数のスワスに関して、最後のスワスを除く各スワスの少なくとも1つの終端が、隣り合うスワスの始端と横断方向に位置合わせされる。好ましくは、複数のスワスは、本質的に平行な、特に、横断方向に並べられるスワスである。ここでは、「終端」および「始端」の用語は、移動の縦断方向に対するものである。プリンタを左から右へ移動させることによって適用されるスワスについては、左側の境界が始端である一方、プリンタを右から左へ移動させることによって適用されるスワスについては、右側の境界が始端である。
【0021】
本方法は、第1のスワスを終了した後に縦断停止信号を発することによってスワスの終端を合図することを含む場合に、有利であることがわかった。縦断停止信号は、生成の時点または発する時点のみにおいて横断停止信号と異なり得る、すなわち、同じ音または雑音が、縦断停止信号と横断停止信号とに使用され得る。特に、複数のスワスの各々における終端において、縦断停止信号を発することができる。オーバーシュート移動、すなわち、現在のスワスに割り当てられている、印刷する画像のセグメントを印刷するのに要する以上の動きは、後続のスワスに相応の縦断パディングを追加することによって補われ得るので、縦断停止信号が必須ではないことは注目に値する。ただし、距離が大きくなることで実効的に増幅されるであろう後続のスワスの位置ずれを低減するために、縦断移動によりカバーされる距離を該セグメントを印刷するのに要する距離まで最小化することは有利である。
【0022】
この状況において、本方法が、現在のスワスの印刷領域と、手動プリンタの移動の縦断方向と、後続のスワスの印刷領域の始端とに応じて、スワスの終端を合図することを含むことは、特に有利である。移動の縦断方向は、現在のスワスのいずれの境界が現在のスワスの終端であるか、および後続のスワスのいずれの境界が後続のスワスの始端であるかを決定する。各スワスと関連付けられた印刷領域(またはより正確には、印刷する領域、もしくは単に「コンテンツ」)は、それぞれのスワスの相対位置および縦延伸(または単に「長さ」)を決定する。縦断停止信号を発する適切な時点は、現在のスワスのコンテンツのみならず、後続のスワスのコンテンツにも依存する。後続のスワスの移動の縦断方向は、多くの場合、現在のスワスの移動の縦断方向と逆であるようになっているため、プリンタは、本質的に、現在のスワスのコンテンツの終了までのみならず、後続のスワスのコンテンツの終了までも、縦断方向に移動される。
【0023】
本方法は、両方の横断方向(例えば、上から下、または下から上)のスワスの並びをサポートし得るため、第1のスワスを終了した後に横断移動の方向を指示することによってユーザをガイドすることは有益であり得る。
【0024】
好ましい実施形態において、本方法は、手動プリンタを印刷モードと平行移動モードとの間で切り替え、印刷モードにおいて、手動プリンタの縦断移動を検出し、検出された縦断移動にしたがって、手動プリンタの印刷ヘッドを、現在のスワスの画像コンテンツを印刷するように制御し、平行移動モードにおいて、印刷ヘッドを、待機状態を維持するように制御することを含む。印刷モードは、本質的に、公知の手動プリンタの動作モードに対応する。それら手動プリンタを、印刷モードと、プリンタが非アクティブである待機モードとの間で、切り替えることができる。本方法は、プリンタが目標媒体上でのプリンタの移動を能動的に追跡し、かつ印刷ヘッドが待機状態を維持する平行移動モードである、第3のモードを含む。具体的には、平行移動モードでは、印刷されるスワスの部分がないようになっている。いかなる印刷も、印刷モードにおいてのみ起こり得る。
【0025】
この状況において、本方法は、好ましくは、横断停止信号を発すると同時に、手動プリンタを平行移動モードから印刷モードに切り替えることを含む。横断停止信号が発せられる時点は、プリンタの横断移動が完了し、かつプリンタが第2のスワスまたは後続のスワスを印刷するための位置に達していることを示す。
【0026】
本方法が縦断停止信号を発することを含む場合に、好ましくは、本方法は、また、縦断停止信号を発すると同時に手動プリンタを印刷モードから平行移動モードに切り替えることを含む。縦断停止信号が発せられる時点は、プリンタの移動に対するロジックが完了し、かつ第2のスワスまたは後続のスワスを印刷するための次の横断位置にプリンタを移動させることができることを示す。
【0027】
有利には、印刷モードにおいて、第1のスワスを印刷する間に縦断移動の方向が判定され、後続のスワス中における縦断移動の方向が、前のスワスの方向と逆になると想定される。相続くスワスは、こうして、入れ替わる縦断方向に、すなわち、スワスを印刷するための縦断方向と、スワスの終端と後続のスワスの始端との間での横断方向とに、交互に手動プリンタを繰り返し移動させることによって、印刷される。これに対応して、手動プリンタの制御回路は、好ましくは、第1のスワスを印刷するための縦断移動の方向を検出するように、かつ後続のスワスについての入れ替わる縦断移動の方向を想定するように構成されている。
【0028】
したがって、本発明は、また、本発明の範囲内で、少なくとも2つの重なり合わない画像セグメントを含む画像を印刷するための方法であって、移動の方向および距離を検出することと、縦断移動および横断移動を追跡することと、第1のスワスを印刷することと、手動プリンタを第1のスワスに対して横断方向に移動させることと、横断移動に対する横断停止信号を発することと、第1のスワスに対して横断方向に並べられる第2のスワスを印刷することとを含む方法を含む。
【0029】
本発明は、さらに、手動プリンタを用いて複数のスワスを印刷するためのコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ上にロードされると、上述した方法、または本発明の好ましい実施形態のうちの1つの方法の方法ステップを実行するように設計されたプログラム部分を備える、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0030】
また、本発明は、上述した方法、または本発明の好ましい実施形態のうちの1つの方法を使用して複数のスワスに画像を印刷するように手動プリンタを準備するための方法であって、あらかじめ規定された最小ギャップ幅の平行な直線状ギャップによって離隔された画像部分を識別することと、隣り合う識別された画像部分を相続くスワスに割り当てることと、各スワスに関連付けられた画像データとすべてのスワスの位置合わせ情報とを手動プリンタに送信することとを含む、方法を提供する。したがって、本方法は、手動プリンタを用いた印刷において印刷する所与の画像を準備する際に、あらかじめ規定された最小ギャップ幅の直線状ギャップによって離隔された画像部分を相続くスワスに割り当てることにより、画像をセグメントに分割し、各セグメントは、印刷するスワスに割り当てられ、後続のスワスのコンテンツが最小ギャップ幅よりも接近することを回避することにより、プリンタ稼働中の位置合わせ誤差を補い、または見えなくする。
【0031】
最後に、本発明は、また、手動プリンタを用いて複数のスワスを印刷するためのコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ上にロードされると、直前に記載した方法の方法ステップを実行するように設計されたプログラム部分を備えるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0032】
ここで図面を参照するが、図面は本発明を例示する目的のものであり、本発明を限定する目的のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、同じ長さおよび幅のスワスを印刷するための本方法の単純な用途を概略的に例示する。
図2図2は、図1による2つのスワスのコンテンツを示す。
図3図3は、本発明による手動プリンタの概略垂直断面を示す。
図4図4は、本発明の用途の第2の例を概略的に例示する。
図5図5は、事前に印刷されたフォームシートに記入する本発明の用途を示す、第3の例を概略的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、手動プリンタ3(図3を参照)の移動によりカバーされる2つのスワス1、2を示す。細い直立の長方形は、印刷手順中の異なる時刻t0、t1、t2、t3における、手動プリンタ3の印刷ヘッド4の異なる位置を示す。印刷手順は、印刷ヘッド4が第1のスワス1の左の境界5に位置する時刻t0で開始する。この位置において、プリンタ3は、印刷モードで開始する。ここから開始して、プリンタは、縦断移動での第1のスワス1の反対側の境界7に向けて縦断方向6に移動し、時刻t1に該反対側の境界7に達する。印刷モードにあるため、プリンタ3は、縦断移動を検出し、検出された縦断移動にしたがって印刷ヘッド4を制御して、現在のスワス1の画像コンテンツを印刷する。より具体的には、手動プリンタ3の光学モーションセンサ8は、手動プリンタ3と、手動プリンタ3が上で印刷を行う目標基材9と、の間の相対変位を検出することによって、縦断移動をモニタする。縦断移動の方向は、第1のスワス1を印刷する間にプリンタ3によって判定される。スワスは互いに対して横断方向に並べられることが知られているため、第2のスワス2中における縦断移動の方向は、第1のスワスの方向と逆(または反対)となるように想定される。
【0035】
時刻t1に第1のスワス1が終了し、印刷手順は、第2のスワス2に続き得る。プリンタ3は、平行移動モードに切り替えられる。このモードにおいて、印刷ヘッドは、待機状態を維持するように制御される。横断移動の方向は、第1のスワス1を終了した後にプリンタ3のLEDによって示される。
【0036】
印刷ヘッド4を適正位置に送るために、横断方向10の横断移動が必要である。光学モーションセンサ8は、上側のスワス1を終了した後に手動プリンタ3の横断移動を検出する。横断移動によりカバーされる横断距離は、上側のスワス1と下側のスワス2との間の所定の横断距離11と比較される。所定の横断距離11は、下側のスワス2の始端および右側の境界12に達するために印刷ヘッドが横断方向10に移動しなければならない距離に対応する。所定の横断距離11は、両方のスワス1、2の同じスワス幅Wに等しい上側のスワス1と下側のスワス2との平均スワス幅よりも、あらかじめ規定された横断パディングPだけ大きい(図2を参照)。なお、2つのスワス1、2の長さlも同じである。上側のスワス1の終端、すなわち、上側のスワス1の右側の境界7は、下側のスワス2の始端、すなわち右側の境界12と横断方向に位置合わせされる。横断移動によりカバーされる横断距離が時刻t2に所定の横断距離11に達すると、手動プリンタ3のシグナリングユニット13によって、ビープ音の形態をなす横断停止信号が発せられる。同時に、手動プリンタ3は、平行移動モードから印刷モードに切り替えられる。ユーザは、時刻t2に横断停止信号に気付き、横断方向10の移動を停止させる。ユーザは、次いで、下側のスワス2の左側の境界15または終端に向けて、縦断方向6と反対である第2の縦断方向14にプリンタ3を移動させることによって、印刷手順を継続する。時刻t3に、印刷ヘッド4は、左側の境界15に達する。
【0037】
時刻t0と時刻t1との間、および時刻t2と時刻t3との間の縦断移動の間に、プリンタ3は、公知の態様で、かつ光学モーションセンサ8の示度に基づいて、それぞれスワス1およびスワス2に割り当てられた画像セグメントを印刷する。時刻t1および時刻t3において、それぞれスワス1、2を終了した後に縦断停止信号を発することによって、各スワス1、2の終端が合図される。時刻t1として、プリンタ3は、印刷モードから平行移動モードに切り替えられる。縦断停止信号は、横断停止信号とは異なる音調のビープ音である。図2に関して認識できるように、図2は、2つのスワス1、2の各々と関連付けられた印刷されたコンテンツ16を示す。
【0038】
図3から明らかであるように、手動プリンタ3は、目標媒体9に面するプリンタ3の底部側18に向けて方向付けられたノズル17を有するインクジェット印刷ヘッド4と、制御回路19と、モーション検出器8と、シグナリングユニット13とを備える。制御回路19は、モーション検出器8、インクジェット印刷ヘッド4、およびシグナリングユニット13に接続されている。制御回路19は、さらに、モーション検出器8から受信された示度に応答してインクジェット印刷ヘッド4を制御するように構成されている。制御回路19は、第1のスワス1と第2のスワス2との間でモーション検出器8によって検出される横断移動をモニタし、横断移動によりカバーされる横断距離を該スワス1、2間の所定の横断距離11と比較し、かつ横断移動によりカバーされる横断距離が所定の横断距離11に達すると横断停止信号を発するようにシグナリングユニット13に命令するように構成されている。制御回路19は、第1のスワス1を印刷するための縦断移動の方向を検出するように、かつスワスの横断方向の並び配置に起因する第2のスワス2についての入れ替わる縦断移動の方向を想定するように構成されている。シグナリングユニット13は、異なる音調のビープ音を生成するためのスピーカである。
【0039】
上記の方法を使用して複数のスワス1、2に画像20を印刷するよう手動プリンタ3を準備するために、あらかじめ規定された最小ギャップ幅(例えば、0.2mm)の直線状ギャップ23によって離隔された、画像20内の画像部分21、22が識別される(図2を参照)。隣り合う識別された画像部分21、22は、相続くスワス1、2に割り当てられる。最後に、割り当てられた画像部分21、22とすべてのスワス1、2の位置合わせ情報とに基づいて各スワス1、2に関連付けられた画像データは、手動プリンタ3に送信される。
【0040】
図4に示された例は、第1のスワス25の終端24、すなわち終端の合図が、現在のスワス25の印刷領域26と、手動プリンタ3の移動の縦断方向27と、第2のスワス29の印刷領域28の始端とに依存することを例示している。本例では、所望の終端位置24に達するために、第1のスワス25のコンテンツに縦断パディング30が付加されている。印刷ヘッド4が終端24に達すると、縦断停止信号が発せられる。そこからは、横断方向31の横断移動が実行されて、第2のスワス29の始端32に達し、その時点で横断停止信号が発せられる。第2のスワス29は、縦断方向27と反対の縦断方向33に移動することによって印刷される。第2のスワス29の終端34において、同じく、縦断停止信号が発せられる。ユーザは、印刷ヘッド4が第3のスワス37の始端36に達してさらなる横断停止信号が発せられるまで、プリンタ3を横断方向35に移動させる。そこから、ユーザは、第3のスワス37の終端39が縦断停止信号によって通知されるまで、プリンタ3を縦断方向38に移動させる。
【0041】
図5は、用紙フォームシート40に記入するための、本方法のより包括的な例を示す。用紙フォームシート40は、あらかじめ印刷されたコンテンツ41を含む。あらかじめ印刷されたコンテンツ41間には、いくつかのフォームフィールド42が配置されている。本手動プリンタのユーザは、印刷された専用のコンテンツ43(「Lorem ipsum dolor ...」との一般的なプレースホルダ文言によって表されている)でフォームフィールド42を埋めることができる。そうするために、印刷された専用のコンテンツ43の画像データは、5つのスワス44~48に好適に割り当てられている。手動プリンタ3は、第1のスワス44の右の境界49に初期配置される。次いで、プリンタ3を、上から下までの一連のスワスを通して18の縦断方向および横断方向に、順次移動させる。注目すべきことに、第2のスワス45と後続の第3のスワス46との縦断移動の方向は同一であり、それぞれのスワスが互いの上に横断方向に並ばずにさらに縦断方向に変位している場合には、縦断移動の方向が入れ替わるとは限らないことを示している。第4のスワス47と第5のスワス48との間の横断移動50によって例示されるように、横断移動50は、また、スワス幅よりも何倍も大きい横断距離をカバーし得る。
図1
図2
図3
図4
図5