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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスのための作動機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20241205BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61M5/20 500
A61M5/20 510
A61M5/315 550P
A61M5/315 550V
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020573011
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046899
(87)【国際公開番号】W WO2020037256
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】62/719,367
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メランダー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ダドマン,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】イグレシアス,ジョーセフ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルズビ・スベンセン,ビャルケ・リッケ
(72)【発明者】
【氏名】マッカロー,アダム・ビー
(72)【発明者】
【氏名】プラムベック,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス,スティーブ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0140783(US,A1)
【文献】特表2017-519581(JP,A)
【文献】特表2007-500530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスであって、
ハウジングであって、近位端と、遠位端と、その前記近位端と前記遠位端との間に延びる縦軸とを有するハウジングと、
前記ハウジング内にその前記近位端において少なくとも部分的に配置され、端点を有する針又はカニューレを含む、注入アセンブリと、
前記ハウジングと摺動可能に連結されているシールドであって、前記シールドの少なくとも近位端が前記ハウジングの前記近位端を越えるある距離だけ延びる伸長位置を有するシールドと、
前記ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、前記注入アセンブリ及び前記シールドと動作可能に連結されている駆動アセンブリと、を含み、前記駆動アセンブリが、
シェル内に配置されている容器と、
前記シェル内に配置され、前記容器に隣接して位置付けられているナットと、
前記シェル内に配置され、前記ナットに動作可能に連結されているトリガーリングと、
前記シェル内に配置され、前記トリガーリングおよび駆動機構に動作可能に連結されているプランジャロッドガイドと、
前記プランジャロッドガイドの開口部内に少なくとも部分的に配置されているプランジャロッドと、を含み、
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって軸方向に所定の距離を動くと、後退プロファイルが開始され、それによって前記駆動アセンブリが前記注入アセンブリを介して薬剤を投与し、針又はカニューレが使用者の皮膚に接触する前にピーク抵抗力が及ぼされ、
ピーク抵抗力が、
前記駆動機構によって生じる、前記プランジャロッドガイドと前記トリガーリングとの間に及ぼされる摩擦力、
前記駆動機構によって生じる、前記トリガーリングと前記ナットとの間に及ぼされる摩擦力、又は、
前記ナットによって生じる前記トリガーリングと前記ナットとの間に及ぼされる力、
のうちの少なくとも1つによって生じる、薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記シールドが軸方向に動く最初の8mm以内で、または前記シールドが軸方向に動く最初の3mm以内で前記ピーク抵抗力が及ぼされる、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記容器が、第1の端部及び第2の端部を有し、前記容器の内容積が使用者に投与される前記薬剤を収容するように適合されており、
前記ナットが、前記容器の前記第2の端部に隣接して配置されており、第1の係合領域と第2の係合領域とを有し、
前記トリガーリングが、前記ナットの前記第1の係合領域を摺動可能に係合する第1の係合領域と、第2の係合領域とを有し、前記トリガーリングが前記シールドとともに軸方向に動くように前記シールドの一部を係合しており、
前記プランジャロッドガイドが、第1の係合領域を有し、前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域が前記トリガーリングの前記第2の係合領域と摺動可能に係合しており、
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって軸方向に動くと、前記トリガーリングの前記第1の係合領域の少なくとも1つが前記ナットの前記第1の係合領域から外れるか、又は前記トリガーリングの前記第2の係合領域が前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域から外れ、それによって前記駆動機構が前記プランジャを前記ハウジングの前記近位端に向かって圧接する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記トリガーリングは、
(a)前記トリガーリングの前記第1の係合領域が前記ナットの前記第1の係合領域を係合する間、前記トリガーリングと前記ナットとの間の相対的な回転が制限されるように、前記ナットに連結される、および
(b)前記トリガーリングの前記第2の係合領域が前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域を係合する間、前記トリガーリングと前記プランジャロッドガイドとの間の相対的な回転が制限されるように、前記プランジャロッドガイドに連結される、
のうちの少なくとも一方である、請求項3に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
注入プロセスが、前記シールドが最初に軸方向に動くときに始まって、前記駆動アセンブリが前記薬剤を十分に投与したときに終了し、前記注入プロセスの持続時間の最初の15%以内で前記ピーク抵抗力が及ぼされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって10mmの最大軸方向移動量を有しており、前記シールドが移動する最初の8mm以内で前記ピーク抵抗力が発生する、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記ナットが、前記ハウジングの前記縦軸に向かって内側に突出し、これにより前記トリガーリングの外側表面と接触している少なくとも1つの偏向フィンガを更に含み、前記少なくとも1つの偏向フィンガが、前記ナットから外れる前に前記ピーク抵抗力を生じさせるのに十分な摩擦力を前記ナットに付与する、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
薬物送達デバイスであって、
ハウジングであって、近位端と、遠位端と、その前記近位端と前記遠位端との間に延びる縦軸とを有するシェルを画定するハウジングと、
前記ハウジング内にその前記近位端において少なくとも部分的に配置され、針又はカニューレを含む、注入アセンブリと、
前記ハウジングに摺動可能に連結されているシールドであって、前記ハウジングの前記近位端を越えるある距離だけ延びるシールドと、
前記ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、前記注入アセンブリ及び前記シールドに動作可能に連結されている駆動アセンブリと、を含み、前記駆動アセンブリが、
シェル内に配置されている容器と、
前記シェル内に配置され、前記容器に隣接して位置付けられているナットと、
前記シェル内に配置され、前記ナットに動作可能に連結されているトリガーリングと、
前記シェル内に配置され、前記トリガーリングおよび駆動機構に動作可能に連結されているプランジャロッドガイドと、
前記プランジャロッドガイドの開口部内に少なくとも部分的に配置されているプランジャロッドと、を含み、
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって軸方向に動くと、前記駆動アセンブリが前記注入アセンブリを介して薬剤を投与する後退プロファイルが開始され、前記針又は前記カニューレが使用者の皮膚に接触する直前に、または接触すると同時にピーク抵抗力が及ぼされ、
ピーク抵抗力が、
前記駆動機構によって生じる、前記プランジャロッドガイドと前記トリガーリングとの間に及ぼされる摩擦力、
前記駆動機構によって生じる、前記トリガーリングと前記ナットとの間に及ぼされる摩擦力、又は、
前記ナットによって生じる前記トリガーリングと前記ナットとの間に及ぼされる力、
のうちの少なくとも1つによって生じる、薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記容器が、第1の端部及び第2の端部を有し、前記容器の内容積が使用者に投与される前記薬剤を収容するように適合されており、
前記ナットが、前記容器の前記第2の端部に隣接して配置されており、第1の係合領域と第2の係合領域とを有し、
前記トリガーリングが、前記ナットの前記第1の係合領域を摺動可能に係合する第1の係合領域と、第2の係合領域とを有し、前記トリガーリングが前記シールドとともに軸方向に動くように前記シールドの一部を係合しており、
前記プランジャロッドガイドが、第1の係合領域を有し、前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域が前記トリガーリングの前記第2の係合領域と摺動可能に係合しており、
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって軸方向に動くと、前記トリガーリングの前記第1の係合領域の少なくとも1つが前記ナットの前記第1の係合領域から外れるか、又は前記トリガーリングの前記第2の係合領域が前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域から外れ、それによって前記駆動機構が前記プランジャを前記ハウジングの前記近位端に向かって圧接する、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記トリガーリングは、
(a)前記トリガーリングの前記第1の係合領域が前記ナットの前記第1の係合領域を係合する間、前記トリガーリングと前記ナットとの間の相対的な回転が制限されるように、前記ナットに連結される、および
(b)前記トリガーリングの前記第2の係合領域が前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域を係合する間、前記トリガーリングと前記プランジャロッドガイドとの間の相対的な回転が制限されるように、前記プランジャロッドガイドに連結される、
のうちの少なくとも一方である、請求項9に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
注入プロセスが、前記シールドが最初に軸方向に動くときに始まって、前記駆動アセンブリが前記薬剤を十分に投与したときに終了し、前記注入プロセスの持続時間の最初の15%以内で前記ピーク抵抗力が及ぼされる、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって10mmの最大軸方向移動量を有しており、前記シールドが移動する最初のmm以内で前記ピーク抵抗力が発生する、請求項8~11のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
前記ナットが、前記ハウジングの前記縦軸に向かって内側に突出し、これにより前記トリガーリングの外側表面と接触している少なくとも1つの偏向フィンガを更に含み、前記少なくとも1つの偏向フィンガが、前記ナットから外れる前に前記ピーク抵抗力を生じさせるのに十分な摩擦力を前記ナットに付与する、請求項8~12のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
薬物送達デバイスであって、
ハウジングであって、近位端と、遠位端と、その前記近位端と前記遠位端との間に延びる縦軸とを有するハウジングと、
前記ハウジング内にその前記近位端において少なくとも部分的に配置され、端点を有する針又はカニューレを含む、注入アセンブリと、
前記ハウジングと摺動可能に連結されているシールドであって、前記シールドの少なくとも近位端が前記ハウジングの前記近位端を越えるある距離だけ延びる伸長位置を有するシールドと、
前記ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、前記注入アセンブリ及び前記シールドと動作可能に連結されている駆動アセンブリと、を含み、前記駆動アセンブリが、
シェル内に配置されている容器と、
前記シェル内に配置され、前記容器に隣接して位置付けられているナットと、
前記シェル内に配置され、前記ナットに動作可能に連結されているトリガーリングと、
前記シェル内に配置され、前記トリガーリングおよび駆動機構に動作可能に連結されているプランジャロッドガイドと、
前記プランジャロッドガイドの開口部内に少なくとも部分的に配置されているプランジャロッドと、を含み、
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって軸方向に所定の距離を動くと、後退プロファイルが開始され、それによって前記駆動アセンブリが前記注入アセンブリを介して薬剤を投与し、針又はカニューレが使用者の皮膚に接触する前にピーク抵抗力が及ぼされ、
ピーク抵抗力が、
前記駆動機構によって生じる、前記プランジャロッドガイドと前記トリガーリングとの間に及ぼされる摩擦力、又は、
前記駆動機構によって生じる、前記トリガーリングと前記ナットとの間に及ぼされる摩擦力、
のうちの少なくとも1つによって生じる、薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記容器が、第1の端部及び第2の端部を有し、前記容器の内容積が使用者に投与される前記薬剤を収容するように適合されており、
前記ナットが、前記容器の前記第2の端部に隣接して配置されており、第1の係合領域と第2の係合領域とを有し、
前記トリガーリングが、前記ナットの前記第1の係合領域を摺動可能に係合する第1の係合領域と第2の係合領域とを有し、前記トリガーリングが前記シールドとともに軸方向に動くように前記シールドの一部を係合しており、
前記プランジャロッドガイドが、第1の係合領域を有し、前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域が前記トリガーリングの前記第2の係合領域と摺動可能に係合しており、
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって軸方向に動くと、前記トリガーリングの前記第1の係合領域の少なくとも1つが前記ナットの前記第1の係合領域から外れるか、又は前記トリガーリングの前記第2の係合領域が前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域から外れ、それによって前記駆動機構が前記プランジャを前記ハウジングの前記近位端に向かって圧接する、請求項14に記載の薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記トリガーリングは、
(a)前記トリガーリングの前記第1の係合領域が前記ナットの前記第1の係合領域を係合する間、前記トリガーリングと前記ナットとの間の相対的な回転が制限されるように、前記ナットに連結される、および
(b)前記トリガーリングの前記第2の係合領域が前記プランジャロッドガイドの前記第1の係合領域を係合する間、前記トリガーリングと前記プランジャロッドガイドとの間の相対的な回転が制限されるように、前記プランジャロッドガイドに連結される、
のうちの少なくとも一方である、請求項15に記載の薬物送達デバイス。
【請求項17】
注入プロセスが、前記シールドが最初に軸方向に動くときに始まって、前記駆動アセンブリが前記薬剤を十分に投与したときに終了し、前記注入プロセスの持続時間の最初の15%以内で前記ピーク抵抗力が及ぼされる、請求項14~16のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項18】
前記シールドが前記ハウジングの前記遠位端に向かって10mmの最大軸方向移動量を有しており、前記シールドが移動する最初の8mm以内で前記ピーク抵抗力が発生する、請求項14~17のいずれか一項に記載の薬物送達デバイス。
【請求項19】
前記針またはカニューレの前記端点と前記シールドの近位端との間の距離が(a)12mm以下、(b)12mm以下かつ3mm以上、または(c)3mm未満のうちのいずれかのときに、前記ピーク抵抗力が及ぼされる、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項20】
前記針またはカニューレの前記端点と前記シールドの近位端との間の距離が(a)12mm以下、(b)12mm以下かつ3mm以上、または(c)3mm未満のうちのいずれかのときに、前記ピーク抵抗力が及ぼされる、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項21】
前記針またはカニューレの前記端点と前記シールドの近位端との間の距離が(a)12mm以下、(b)12mm以下かつ3mm以上、または(c)3mm未満のうちのいずれかのときに、前記ピーク抵抗力が及ぼされる、請求項14に記載の薬物送達デバイス。
【請求項22】
前記ピーク抵抗力は、前記後退プロファイル全体の間での最大力である、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項23】
前記ピーク抵抗力は、前記後退プロファイル全体の間での最大力である、請求項8に記載の薬物送達デバイス。
【請求項24】
前記ピーク抵抗力は、前記後退プロファイル全体の間での最大力である、請求項14に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2018年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/719,367号に付与された優先権が主張される。その内容全体はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に薬物送達デバイスに関し、より詳しくは、薬物送達デバイスの針及び/又はカニューレを挿入又は留置する機構と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インジェクタなどの薬物送達デバイスは、患者に液剤を送達するために使用される。作動されると、薬物送達デバイスは、内部リザーバ内に保管された薬物を、針、カニューレ、又は他の送達部材を通して患者内に排出する。オンボディ型インジェクタなどのいくつかの薬物送達デバイスは、注射針又はそれ以外の手段により長期間にわたって薬物を送達するために患者に一時的に取り付けられ得る。薬物送達デバイスは、患者の腹部、大腿、腕、又は患者の体のそれ以外の部分の組織に粘着的に取り付けられ得る。
【0004】
いくつかのデバイスは欠点を有し得る。具体的には、使用者は露出した注入針を恐れる場合がある又は注入を本質的に実行することができないと感じる場合がある。露出した針に対する嫌悪のみならず、関与し得る健康及び安全性の問題から、使用者が注入を実行するのを補助し、薬剤の信頼性の高い送達を確実にし、患者の安全性を確保するために、使用者から針を隠し、注入作業を自動化するための様々な種類のインジェクタ及び他のデバイスが開発されている。
【0005】
典型的には、皮下シリンジによって患者に薬物を注入するときには以下の3つの作業、即ち、1)患者への針の挿入、2)シリンジから患者への薬物の注入、及び3)注入完了後の針の抜去が実施され得る。各作業において、シリンジにかかる力の大きさ及び方向、並びに力の印加位置は他の作業と異なる場合がある。例えば、針の挿入には、シリンジに対し最小限の力を非常に短時間にわたり印加することを必要とし得る。その一方で、薬剤の注入には、シリンジのプランジャに対しより大きな力を印加することを必要とし得る。この力は、比較的より長時間にわたり印加される必要があり得る。更に、針の抜去には、針の挿入と反対方向に力を印加することを必要とし得る。従って、望ましい作動体験をロバストな作動機構と組み合わせることで、特有の問題が現れる。注入プロセスが自動化される場合には、これら及び他の類似した懸念事項が関連することとなる場合がある。
【0006】
一般に、シールドで作動するデバイスでは、手動による針挿入技術が使用され、それによって使用者は、シールドを残りのデバイスに対して後退させる動作を介して同時に針を挿入して投与を開始する。これらのデバイスでは、デバイスを手動で作動させると針が自動的に挿入され得る。典型的に、ボタンで作動するデバイスでは、自動化された針挿入機構が使用され、それによって針が機械的に挿入されて、正しいデバイス状態が得られるまで投与機構による開放を自動的に遅らせる。これらのデバイスのいずれか又は全てでは、手動及び/又は自動の抜去機構を使用して針を後退させることができる。これらの手法の各々は、使用者の操作及び満足感に影響を与える相対的な利点と欠点とを有する可能性があり、従って、これらの手法の任意の組み合わせもまた、関連する利点と欠点とを有する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、薬物送達デバイスは、シェルを画定しているハウジングと、ハウジング内に少なくとも部分的に配置されている注入アセンブリと、シールドと、ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、注入アセンブリ及びシールドと連結されている駆動アセンブリとを含む。シールドは、その少なくとも近位端がハウジングの近位端を越えるある距離だけ延びる伸長位置を有する。注入アセンブリは、端点を有する針又はカニューレを含む。シールドがハウジングの遠位端に向かって軸方向に所定の距離を動くと後退プロファイルが開始され、それによって駆動アセンブリが注入アセンブリを介して薬剤を投与する。シールドが軸方向に動く最初の約12mm以内でピーク抵抗力が及ぼされる。いくつかの例では、シールドが軸方向に動く最初の約8mm以内でピーク抵抗力が及ぼされる。更に、これらの例のいくつかでは、シールドが軸方向に動く最初の約3mm以内でピーク抵抗力が及ぼされる。
【0008】
いくつかの例では、駆動アセンブリは、シェル内に配置されている容器と、シェル内に配置されており、容器の第2の端部に隣接して配置されているナットと、シェル内に配置されているトリガーリングと、シェル内に配置されているプランジャロッドガイドと、プランジャロッドガイドの開口部内に少なくとも部分的に配置されているプランジャロッドとを含む。容器は、第1の端部と、第2の端部と、使用者に投与される薬剤を収容する内容積とを有する。ナットは、第1の係合領域と、第2の係合領域とを有する。トリガーリングは、ナットの第1の係合領域を摺動可能に係合する第1の係合領域を有し、更に第2の係合領域を有する。トリガーリングはまた、シールドとともに軸方向に動くように、シールドの一部を係合している。プランジャロッドガイドは、第1の係合領域と開口部とを有する。プランジャロッドガイドの第1の係合領域は、トリガーリングの第2の係合領域を摺動可能に係合する。プランジャロッドガイドは更に、いくつかの形態では渦巻きばね又はトルクばねであってもよい駆動機構に動作可能に連結される。シールド、従ってトリガーリングがハウジングの遠位端に向かって軸方向に動くと、トリガーリングの第1の係合領域がナットの第1の係合領域から外れ、及び/又はトリガーリングの第2の係合領域がプランジャロッドガイドの第1の係合領域から外れ、それによって駆動機構がプランジャをハウジングの近位端に向かって圧接する。
【0009】
いくつかの手法では、トリガーリングの第1の係合領域がナットの第1の係合領域を係合する間、トリガーリングとナットとの間の相対的な回転が制限されるように、トリガーリングがナットに連結されていてもよい。トリガーリングもまた、又は別途、トリガーリングの第2の係合領域がプランジャロッドガイドの第1の係合領域を係合する間にトリガーリングとプランジャロッドガイドとの間の相対的な回転が制限されるように、プランジャロッドガイドに連結されていてもよい。他の例では、トリガーリングは、ナットではなくシェルに直接摺動可能に係合していてもよい。
【0010】
例において、シールドが最初に軸方向に動くときに始まり、駆動アセンブリが薬剤を十分に投与したときに終了する注入プロセスの持続時間の最初の約30%以内で、ピーク抵抗力が及ぼされる。シールドは、ハウジングの遠位端に向かって約10mmの最大軸方向移動量を有してもよい。この例では、シールドが移動する最初の約1mm以内でピーク抵抗力が発生し得る。他の例では、ピーク抵抗力は、デバイスが作動するに至るまでの運動の全範囲内における任意の点で発生し得る。
【0011】
いくつかの形態では、ナットは、ハウジングの縦軸に向かって内側に突出し、これによりトリガーリングの外側表面と接触している少なくとも1つの偏向フィンガを更に含む。少なくとも1つの偏向フィンガによって、ナットから外れる前にピーク抵抗力を生じさせるのに十分な、摩擦力と軸方向の反力とが組み合わされた力をナット上に付与することができる。いくつかの例では、ピーク抵抗力は、駆動機構によって生じるプランジャロッドガイドとトリガーリングとの間に及ぼされる摩擦力、駆動機構によって生じるトリガーリングとナットとの間に及ぼされる摩擦力、シールドに連結される圧縮ばねによって及ぼされる軸方向のばね力、又はナットによって及ぼされる偏向力のうち少なくとも1つによって生じてもよい。なお他の形態では、薬物送達デバイスは、ハウジングの近位端に向かう方向にデバイスを動かすと、プランジャロッドの動きを停止させる、投与ロックアウト機構を含んでもよい。
【0012】
第2の態様によれば、薬物送達デバイスの駆動アセンブリは、第1の端部及び第2の端部を有する容器と、容器の第2の端部に隣接して配置されているナットと、トリガーリングと、プランジャロッドガイドと、プランジャロッドとを含む。容器の内容積は、使用者に投与される薬剤を収容するように適合される。ナットは、第1の係合領域と、第2の係合領域とを有する。トリガーリングは、ナットの第1の係合領域を摺動可能に係合する第1の係合領域を有し、更に第2の係合領域を含む。トリガーリングは、第1の位置と第2の位置との間で移動可能である。プランジャロッドガイドは、第1の係合領域と開口部とを有する。プランジャロッドガイドの第1の係合領域は、トリガーリングの第2の係合領域を摺動可能に係合する。プランジャロッドガイドは、駆動機構に動作可能に連結されている。プランジャロッドは、プランジャロッドガイドの開口部内に少なくとも部分的に配置されている。第1の位置から第2の位置に、第1の方向でトリガーリングが動くと、トリガーリングの第1の係合領域の少なくとも1つがナットの第1の係合領域から外れるか、又はトリガーリングの第2の係合領域がプランジャロッドガイドの第1の係合領域から外れる。その結果、駆動機構が第1の方向と反対の方向にプランジャを圧接する。
【0013】
第3の態様によれば、薬物送達デバイスは、シェルを画定しているハウジングと、ハウジング内に少なくとも部分的に配置されている注入アセンブリ(又はプレフィルドシリンジ)と、シールドと、ハウジング内に少なくとも部分的に配置され、注入アセンブリ及びシールドに連結されている駆動アセンブリとを含む。注入アセンブリは、針又はカニューレを含む。シールドがハウジングの遠位端に向かって軸方向に動くと、駆動アセンブリが注入アセンブリを介して薬剤を投与する後退プロファイルが開始される。針又はカニューレが使用者の皮膚に接触する前にピーク抵抗力が及ぼされる。
【0014】
第4の態様によれば、薬物送達デバイスは、ハウジングと、注入アセンブリと、シールドと、駆動アセンブリとを含む。ハウジングは、近位端、遠位端、及び近位端と遠位端との間に延びる縦軸を有する。注入アセンブリは、ハウジング内にその近位端において少なくとも部分的に配置され、端点を有する針又はカニューレを含む。シールドアセンブリはハウジングと連結されており、シールドの少なくとも近位端がハウジングの近位端を越えるある距離だけ延びる伸長位置を有する。駆動アセンブリもまた、ハウジング内に少なくとも部分的に配置されており、注入アセンブリ及びシールドと動作可能に連結されている。シールドがハウジングの遠位端に向かって軸方向に所定の距離を動くと後退プロファイルが開始され、それによって駆動アセンブリが注入アセンブリを介して薬剤を投与する。遠位方向で測定した場合、シールドの近位端から針又はカニューレの端点までの軸方向の距離が約12mm以下であるときに、ピーク抵抗力が及ぼされる。
【0015】
上記ニーズは、特に図面と併せて研究される、以下の詳細な説明に記載される薬物送達デバイスの作動及び安全機構の提供によって少なくとも一部満たされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】様々な実施形態による作動及び安全機構を有する薬物送達デバイスの例示的な構成の概略図を示す。
図2】様々な実施形態による図1の薬物送達デバイスの例示的な駆動アセンブリの斜視図である。
図3】様々な実施形態による図1及び2の薬物送達デバイスの駆動アセンブリの断面図である。
図4】様々な実施形態による負荷のかかった構成における図1~3の薬物送達デバイスの断面図である。
図5】様々な実施形態による負荷のかかった構成における図1~4の薬物送達デバイスの正面図である。
図6】様々な実施形態による作動された構成における図1~5の薬物送達デバイスの断面図である。
図7】様々な実施形態による作動された構成における図1~6の薬物送達デバイスの正面図である。
図8a】様々な実施形態による駆動アセンブリの一部を示す、図1~7の薬物送達デバイスの正面断面図である。
図8b】様々な実施形態による図8aの例示的な駆動アセンブリの正面図である。
図9a】様々な実施形態による駆動機構の作動を示す、図1~8bの薬物送達デバイスの斜視図である。
図9b】様々な実施形態による駆動機構の作動を示す、図1~8bの薬物送達デバイスの斜視図である。
図9c】様々な実施形態による駆動機構の作動を示す、図1~8bの薬物送達デバイスの斜視図である。
図10】様々な実施形態による図1~9cの薬物送達デバイスの例示的な力プロファイルである。
図11】様々な実施形態による代替的な駆動アセンブリを有する、例示的な薬物送達デバイスの斜視図である。
図12】様々な実施形態による図11の薬物送達デバイスの例示的な駆動アセンブリの斜視図である。
図13a】様々な実施形態による図11及び12の薬物送達デバイスの例示的な駆動アセンブリの断面図である。
図13b】様々な実施形態による図13aの例示的な駆動アセンブリの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
当業者であれば、図中の要素は簡略化及び明確化のために描かれているものであり、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことは理解するであろう。例えば、図中の要素のいくつかの寸法及び/又は相対位置は、本発明の様々な実施形態の理解を向上させるために他の要素に対して誇張される場合がある。また、商業的に実現可能な実施形態において有用又は必要な、一般的ではあるが十分に理解されている要素は、これら様々な実施形態の図をあまり妨げないようにするために示されないことが多い。更に、特定の行為及び/又は工程は、特定の発生順序で記載される又は示される場合があることは認識されるであろうが、当業者であれば、順序に関するこのような特定性は実際には必要ないことは理解するであろう。本明細書で使用される用語及び表現は、異なる特定の意味が本明細書で説明されている場合以外は、上述のように、このような用語及び表現に当業者が与えるような通常の技術的な意味を有する。
【0018】
一般的に、これら様々な実施形態に従い、インジェクタは、ハウジングと、使用者に注入される薬剤を収容する容器又はシリンジアセンブリと、ばね(例えば、渦巻きばね又はトルクばね)を使用して使用者に薬剤を注入する回転可能な駆動又は作動アセンブリとを含む。インジェクタは、軸方向の動きによって(即ち、注射部位に対してインジェクタを押圧することによって)作動させることが可能であり、注射部位に対して十分なフィードバック力を提供して、十分な力を印加すると作動するということを使用者が予期することが可能になる。インジェクタを作動させるには、使用者によるたった1回の工程が必要とされるだけでよく、高エネルギー注入機構と組み合わせて使用される場合であっても、投与中のデバイスの作動とその保持の両方に対して、相対的に小さい力が必要とされる。更に、作動要素は、より高粘度で、より高エネルギーのシステムを使用する場合に、ロバストな様式で実行することが困難であり得る、デバイスが落下した場合などの慣性衝撃に起因する予想外の注入の可能性を低減するように構成される。
【0019】
更に詳細に説明するように、記載される力プロファイルもまた、後退期間の間のシールドの遠位及び/又は軸方向の動きに抵抗するピーク抵抗力又は最大力に依存する。これは、後退期間が始まる際に多くの機能を果たす。まず、後退が始まる際にピーク抵抗力が必要とされることにより、使用者がピーク抵抗力と残りの移動距離にわたってシールドを後退させるのに必要とされる力との間の力の差異に起因するピーク抵抗力を克服した時点で、使用者がデバイスを作動してシリンジを完全に挿入する可能性を高めるように機能する。ピーク抵抗力が生じた後、使用者がオートインジェクタ100を取り外すことに気が進まないため、力は急速に低下する。別の言い方をすれば、針の挿入の直前にピーク力が生じるので、使用者は、自身の考えを変えるための限られた時間枠を持つ。更に、後退が始まる際にピーク抵抗力が必要とされることにより、デバイスが作動したという明確な兆候が使用者にもたらされる。
【0020】
図1~3を参照すると、例示的なオートインジェクタ100は、シェルを画定するハウジング102、シールド110、注入アセンブリ120(例えばプレフィルドシリンジ)、駆動アセンブリ又は作動機構150を含む。シールド110、注入アセンブリ120及び駆動アセンブリ150の少なくとも一部分は、ハウジング102内に配置されている。ハウジング102は、近位端102a、遠位端102b、及び近位端102aと遠位端102bとの間に延びる縦軸「L」を有する。シールド110は、近位端110a及び遠位端110bを有する。注入アセンブリ120は、容器又はシリンジバレル122、及び端点124aを有する針又はカニューレ124を含む。いくつかの例では、注入アセンブリ120は、シリンジバレル122、針又はカニューレ124、及びプランジャ184を含む。これらの構成要素の少なくとも一部は、少なくとも部分的にハウジング102内に配置されていてもよい。駆動アセンブリ150は、シールド110及び注入アセンブリ120に動作可能に連結されている。任意の数の更なる構成要素(例えば、シールドばね111、シリンジホルダ、シールドロック、フィルター部材等)を使用して、オートインジェクタ100の動作を補助してもよい。
【0021】
シリンジバレル122は、使用者に注入される薬剤を保管する。図示される例では、シリンジバレル122は、薬剤を保管するための空洞を画定する、基部122a及び側壁122bを含む。更に、シリンジバレル122は、基部122aを通って配置された、薬剤を針又はカニューレ124に送ることを可能にするための少なくとも1つの開口部122cを含んでもよい。シリンジバレル122の端部122dは、プランジャアセンブリ180を収容するために開かれていてもよく、これについては以下で詳述する。シリンジバレル122は、様々な量の薬剤を収容するための任意の所望の形状及び/又はサイズであってもよい。いくつかの例では、シリンジバレル122は環状オレフィンポリマー(「COP」)で作製され得る。他の材料例も可能である。
【0022】
針又はカニューレ124は、任意の種類の連結機構及び/又は連結構造(例えば、針ハブ126)を介して、シリンジバレル122の第2の端部122eに連結されている。針ハブ126は、薬剤が任意の数の開口部を通って針124に入ることを可能にする空洞を画定する。針ハブ126は、シリンジバレル122の基部122aに形成された開口部122cの下方に配置されている。このように構成されることで、薬剤がシリンジバレル122を出る際に針ハブ126が薬剤を受け入れ、続いて薬剤が針又はカニューレ124に入り、使用者に投与される。インジェクタ100は、使用者に薬剤を投与するのを補助するための戻りばね、追加の針シールド及び/又はガード等のような任意の数の付加的な構成要素を含んでもよいことは理解されたい。簡略化のために、これらの付加的な構成要素については特に詳細には説明しない。
【0023】
いくつかの例では、駆動アセンブリ150は、容器又はシリンジバレル122、シリンジバレル122の端部122dに隣接して配置されるナット152、トリガーリング160、プランジャロッドガイド170、プランジャロッドアセンブリ180、及び駆動機構190を含む。ナット152は任意の数の手法を用いてハウジング102に固定連結されてもよい。いくつかの構成では、ナット152はハウジング102と一体形成されてもよい。ナット152は、基部部分152a、及び一般にそこから軸方向に延びる少なくとも1つのタブ153、開口部154を有してもよく、図2及び8に図示されるように、開口部154に向かって内向きに付勢される、少なくとも1つの可撓性及び/又は弾性フィンガ155を場合により含んでもよい。ナット152は、デバイス100内において、摩擦継手又は他の継手を介してハウジング102に拘束及び/又は固定されていてもよい。いくつかの例では、弾性フィンガ155は、シェル102の一部であってもよい。更に他の例では、トリガーリング160は、シェル102に向かって外向きに偏向する、偏向フィンガ(図示されていない)を保持していてもよい。他の例も可能である。
【0024】
少なくとも1つのタブ153は、第1の係合領域153aを画定している。より具体的には、第1の係合領域153aは、少なくとも1つのタブ153の端部又は側面によって画定される。更に、開口部154は、第2のねじ山付きの係合領域154a(図1及び8)を画定してもよく、少なくとも1つのフィンガ155は、その遠位端155bにおいて第3の係合領域155aを画定している。
【0025】
トリガーリング160はまた、ハウジング102のシェル内に配置されており、上部表面又は第1の表面160a、底部表面又は第2の表面160b、それらの間に延びており、内側表面160dと外側表面160eとを画定している本体160cを含む。図2及び3で明らかなように、トリガーリング160の本体160cは、一般に円筒状のリング形状であり、一般に円形の内側表面160d、及びリングの外周の周囲及び/又はその内部に配置される任意の数の出っ張り、突起及び溝を有する。一例として、トリガーリング160は、底部160bの近傍に配置され、第1の係合領域161aを画定する第1の出っ張り161を含んでもよい。トリガーリング160は、第2の係合領域162aを画定する内側表面160dによって形成された任意の数の溝162、並びに第3の係合領域163aを画定する外側表面160eによって形成された任意の数の溝163(図5及び8)を更に含んでもよい。図8aに図示される例では、外周のバンプ又は突起形状のストッパ164が、1つ又は複数の溝163に隣接して配置されている。
【0026】
トリガーリング160は、任意の数の技術によってシールド110に連結されていてもよい。例えば、トリガーリング160の底部表面160bがシールド110の遠位端110bに当接してもよい。他の例では、トリガーリングにシールド110を固定するための固定構成要素を、トリガーリング160が含んでいてもよい。更に、トリガーリング160の第1の係合領域161aは、ナット152の第1の係合領域153aを摺動可能に係合する。
【0027】
プランジャロッドガイド170は、ロッド部分172と、そこに連結された基部部分174とを含む。プランジャロッドガイド170は、少なくとも部分的にロッド部分172を通して延びている開口部175、及び基部部分174を含む。基部部分174は下部表面174aを含んでおり、下部表面には、そこから延びる任意の数の突出部又はタブ176(図2及び3)がある。1つ又は複数の突出部176は、トリガーリング160の第2の係合領域162aを摺動可能に係合する、第1の係合領域176aを画定している。例えば、基部部分174の1つ又は複数の突出部176は、トリガーリングの1つ又は複数の溝162の内部に配置されてもよく、これにより相対的な回転運動を制限する一方で、相対的な軸方向の動きが可能になる。
【0028】
プランジャロッドアセンブリ180は、プランジャロッド182、ワッシャ183、及びデバイス100の縦軸Lに沿って移動可能なプランジャ184を含む。プランジャロッド182は、プランジャロッドガイド170の開口部175と、ナット152のねじ山付き開口部154とに螺合連結され、その内部に配置されるねじ山付き部分182aを有する。ワッシャ183は、回転するプランジャロッド182と回転しないプランジャとの間の摩擦損失を最小化している。いくつかの手法では、ワッシャ183をより厚くするか、又はより細くすることによって、ワッシャ183を使用して薬剤の容量を調整することもできる。従って、ワッシャ183を使用して、同一のデバイスで様々な充填容量の薬剤を収容することができ、それによってワッシャ183の底部とプランジャ184の上部との間の空隙をより良好に制御することができる。プランジャロッドガイド170のロッド部分172は、例えば、プランジャアセンブリ180がプランジャロッドガイド170に対して軸方向に移動することを可能にするスプライン式の接続又は溝付き構成によるものを含む任意の数の手法によりプランジャアセンブリ180に連結されている。従って、プランジャロッドガイド170はプランジャアセンブリ180の回転運動を案内する。プランジャロッド182のねじ山付き部分182a、及び同様にナット152のねじ山付き開口部154は、任意の所望の薬物送達速度、又は駆動機構190によって駆動されるときの力/トルクの組み合わせに好適なねじピッチを有してもよい。プランジャロッド182とナット152との間の相対的な回転により、プランジャロッド182がハウジング102の近位端102aに向かって軸方向に前進する。プランジャ184は、シリンジバレル122の第1端部122dの近傍に配置された上部面184aを有する。
【0029】
図示された例では、駆動機構190は、任意の公知の手法によってプランジャロッドガイド170のロッド部分172に連結されている内側部分190aを有する渦巻きばね又はトルクばね190の形態であり、プランジャロッドガイド170にトルクを及ぼして、軸Lの周りをプランジャロッドガイド170が回転するようにしている。いくつかの例では、トルクばね190は、薬剤をシリンジバレル122から放出するのに必要な適切な回転移動をもたらすように巻数が多くてもよい。しかしながら、材料特性及び任意の適用された熱処理などのばね設計における更なるパラメータが、ばねのトルク出力に影響を及ぼす可能性がある。トルクばね190の予成形もその性能に影響を及ぼす可能性がある。一例として、オートインジェクタでは、プレストレスを導入したばねが好まれる場合がある。なぜなら、プレストレス工程は、一般に、ばねを意図した動作条件の反対方向に最初にコイリングすることによりばねのトルク出力を増加させ、それによりスチールバンドに永久ひずみを生じさせるからである。このひずみにより材料の応力が最大になり、それによりトルクを増加させる。このようなトルクの増加は、デバイスのサイズ及び重量を最小限にするのに有利である。
【0030】
いくつかの例では、トルクばね190は巻回された又は荷重がかけられた構成において約1~約30巻、好ましくは、約12巻を有してもよい。いくつかの例では、ばねの総巻数は、動作範囲の両端のマージン約20%によってより多くなってもよく、これにより、範囲は、約1*1.4=1.4~30*1.4=42となり得る。投与機構の巻数は、ピッチ及び必要とされる移動長さから導き出される。前述のように、必要とするトルク入力及び作動力が低くなるため、より小さなピッチが好ましい。それに応じて、作動力も低下する。高い軸力が必要でない場合はピッチを大きくして必要なばねの巻数を少なくすることができるため、デバイスを小さくすることができる。いくつかの例では、トルクばね190は、有用なトルクを有するようにいくつかの初期巻数又は予荷重巻数を有してもよい。予荷重巻数の後、トルクばね190は更に、機能巻数(working turns)、即ち、注入中にデバイスで使用される巻数が巻回される。非限定的な例として、トルクばね190は、約2.5の予荷重巻数及び約6の機能巻数を有してもよい。従って、組み立て中の総巻数は約8.5である。しかしながら、ばね末端の角位置の公差が潜在的に大きいために、トルクばね190は、密な状態(solid state)に達する前に初期遊びを有してもよく、従って、合計約10巻を有してもよい。異なる薬物量及び粘度を有するデバイスは、同じ投与量が望まれる場合、トルクばね190から異なる平均トルクを生じさせることが必要となる場合がある。平均トルク出力は、トルクばね190に用いられるバンドの幅(例えば、デバイス内に配置されるときのトルクばね190の軸方向長さ)を調整すること、及び同じ数の機能巻数を維持することによって制御することができる。このようにすることで、薬物の量及び/又は粘度を変更することができる一方で、デバイスと同じ構成で異なるばねを使用すること、及び同様の注入回数を有することが可能になり得る。
【0031】
いくつかの例では、針を通して薬物を排出するのに必要なエネルギー(EFLOW)は、薬物量、粘度、針流路寸法、及び目標投与時間の任意の組み合わせによって決定される。トルクばね190が送達するエネルギー(ESPRING)は、機能巻数の数(N)と機能巻数中の平均ばねトルク(T)との任意の組み合わせによって決定されてもよい。ばねにより送達されるエネルギーは、次式:ESPRING=2*π*N*Tを用いて計算され得る。システム内の摩擦損失を除外する場合、次の関係が存在する:EFLOW=ESPRING=2*π*N*T。従って、次の関係が得られる:EFLOW/(2*π)=N*T。換言すると、所与の量の所与の薬物を所与の針を通して所与の時間で排出するための十分なエネルギーをトルクばね190が有するには、積(N*T)は一定のままであるため、トルクが高いほど機能巻数が少なくなり得る。
【0032】
プランジャロッド182とナット152との間のねじ接合により、トルクばね190の入力トルクと出力軸力との間において変換がもたらされる。トルクばね190に高い巻数(turn count)を与えることにより、同等の伝動仕様を有する線形ばね、又は少数の巻数及びより小さいピッチを持つ他のねじりばねと比較して、全体的なトルクが低下するとともに、開始トルクと終了トルクの変化が小さくなる。加えて、プランジャロッド182及びナット152のねじ山は、巻数の増加によってより小さいピッチを有することができる一方で、プランジャアセンブリ180の同様の直線運動をなお達成する。ねじピッチが小さい場合、高ピッチのねじ山及び高トルクばねと同じ出力を提供するためにはより小さな入力トルクが必要である。従って、作動力はプランジャアセンブリ180を駆動するために使用されなければならない入力トルクに直接関係するため、本明細書中に記載される高い巻数(例えば、約1~約30巻)で低トルクのシステムにより、作動力を低減させることができる。加えて、保管中(例えば、使用前)にトルクばね190からのトルクに抵抗するのに必要となる内部構造の力が減少するため、より小型のインジェクタ設計の使用及びより安価な原料の使用を可能にする。加えて、プランジャロッド182とナット152との間のねじ接合により、ねじ山付きプランジャロッド182をシリンジバレル122に保管される異なる量の薬剤を収容するように調整することができる。必要であれば、ねじ山付きプランジャロッド182は、シリンジバレル122内により少量の薬物製品が配置されたインジェクタ100内の下方位置にまず取り付けられてもよい。従って、固有の構成要素の数が減少し、バリエーション管理が簡略化される。ねじ山付きプランジャロッド182はまた、製造及び/又は組み立てプロセス中に必要に応じて様々な深さに調節可能に取り付けられてもよい。
【0033】
図1~5及び8で図示されるように、デバイス100が負荷のかかった構成であるとき(即ち、トルクばね190が巻回された構成であるとき)、トルクばね190は、プランジャロッドガイド170のロッド部分172とトルクばねが連結していることにより回転が制限される。プランジャロッドガイド170は、プランジャロッドガイド170の基部部分174の1つ又は複数の突出部176(従って、第1の係合領域176a)と、トリガーリング160の1つ又は複数の溝162(従って、第2の係合領域162a)との間が係合することによって回転が制限される。更に、トリガーリング160は、トリガーリング160の出っ張り161(従って、第1の係合領域161a)と、回転不能な様式でハウジング102に固定されているナット152の少なくとも1つのタブ153(従って、第1の係合領域154)との間が係合することによって回転可能な動きが制限される。加えて、ナット152の少なくとも1つのフィンガ155は、ナット152の第3の係合領域155aが、トリガーリング160の第3の係合領域163aを係合するように、トリガーリング160の外側表面160eの少なくとも1つの溝163内で少なくとも部分的に保持される。
【0034】
図6及び7に目を転じると、使用者は、薬剤を投与するために自身の皮膚(図6の10)にデバイス100を押しつけることにより、シールド110をハウジング102の遠位端102bに向かって圧接し、後退プロファイルが開始される。シールド110を圧接し続けることにより、シールド110とトリガーリング160との両方がハウジング102の遠位端102bに向かって動く。伸長された構成では、シールド110の少なくとも近位端110aは、ハウジング102の近位端102aを越えた距離を延びている。トリガーリング160の第1の係合領域161aがナット152の第1の係合領域153aを摺動可能に係合し、トリガーリング160の第2の係合領域162aがプランジャロッドガイド170の第1の係合領域176aを摺動可能に係合しているため、トリガーリング160は軸方向に動くか、又はナット152及びプランジャロッドガイド170と相対して摺動する。トリガーリング160は、ナット152及び/又はプランジャロッドガイド170をもはや回転可能に拘束しない点まで軸方向に動く必要がある。軸方向に連続して動くことにより、トリガーリング160の第1の係合領域161aがナット152の第1の係合領域153aから外れ、及び/又はトリガーリング160の第2の係合領域162aがプランジャロッドガイド170の第1の係合領域176aから外れる。本明細書で使用する場合、「後退プロファイル」という用語は、更なる外部入力を伴わずに注入プロセスが開始され、及び/又は進行するようにデバイス100が作動する点のことである。例えば、図6は、後退プロファイルが開始されたような作動状態のデバイス100を示す。より具体的な例としては、上述した動作において、トリガーリング160がナット152及び/又はプランジャロッドガイド170をもはや回転可能に拘束しない点までシールド110が軸方向に動いたときに、後退プロファイルが開始される。他の構成又は例では、異なる条件に基づいて、又は異なる条件に起因して後退プロファイルが開始されてもよい。
【0035】
いくつかの例では、トリガーリング160は、ナット152から外れるのとほぼ同時にプランジャロッドガイド170から外れてもよい。しかしながら、他の例では、トリガーリング160はナット152から外れる前にプランジャロッドガイド170から外れてもよく、その逆もまた同様である。いくつかの例では、トリガーリング160はナット152から外れる必要がなく、意図する通りにデバイス100の動作が継続されてもよい。トリガーリング160がナット152だけから外れる例では、トリガーリング160はプランジャロッドガイド170とともに回転する。トリガーリング160がプランジャロッドガイド170だけから外れる例では、トリガーリング160は、ナット152に引き続き回転可能に係止され得る。
【0036】
加えて、トリガーリング160がハウジング102の遠位端102bに向かって動くにつれて、少なくとも1つのフィンガ155が外向きに偏向し始め、トリガーリング160の少なくとも1つの溝163から外れ始める。少なくとも1つのフィンガ155は、トリガーリング160に配置されたストッパ164の上を動くにつれて、外向きに偏向し続ける。
【0037】
図9a~9cに図示されるように、ナット152及びプランジャロッドガイド170からトリガーリング160が外れると、時計用ばね190の回転が許容され、次にプランジャロッドガイド170を回転させる。この回転は、次にプランジャロッド182を回転させ、プランジャロッド182とナット152との間のねじ接合のため、プランジャロッド182及びプランジャ184をシリンジバレル122の第1の端部122dからシリンジバレル122の第2の端部122eに前進させ、それによって針又はカニューレ124が挿入されて薬剤が投与される。
【0038】
この作動プロセス(即ち、後退プロファイルの始まり)の間、使用者は、構成要素間の機械的相互作用(即ち、抵抗力)に起因する、シールド110を圧接するときに経験する抵抗に寄与する多数の力を克服しなければならない。例えば、注入プロセス間の任意の点において使用者に必要とされる全体的な力の主要な寄与因子には、トルクばね190に由来する静荷重から生じるトリガーリング160とプランジャロッドガイド170との間の摩擦力が含まれる。構成要素が外れ、力が注入プロセスの残りにわたってかなり低い抵抗力になるまで低下する点で投与機構が解放されるまで、この力は後退する間、ほぼ一定であり得る。更に、時計用ばね190に由来する静荷重から生じるトリガーリング160とナット152との間の摩擦力もまた、必要とされる全体の力に寄与する。部品が外れ、力が注入プロセスの残りにわたってかなり低い抵抗力になるまで低下する点で投与機構が解放されるまで、この力も後退する間は一定である。シールドばね111を加圧するのに必要とされる力もまた、必要とされる全体の力に寄与する。この力は、ばねが加圧され続けるにつれて、注入プロセスの全体にわたって段階的に増加する。なお更に、弾性フィンガ155がトリガーリング160の溝163及び/又はストッパ164から外れるときに弾性フィンガ155を偏向させるのに必要とされる力が、必要とされる全体の力に寄与する。この力は、摩擦力及び/又は軸方向の反力の形態であり得る。いくつかの例では、経験する力に対する変動性を低くするために、力プロファイルの主要な寄与因子として反力を使用してもよい。換言すれば、低摩擦材料を使用して、摩擦力を低下させるか又は最小化してもよい。他の例も可能である。偏向フィンガがトリガーリング160の一部である例では、フィンガは、ナット152及び/又はシェル102に対して軸方向の反力及び/又は摩擦力を誘導することができる。他の手法も可能である。
【0039】
図10で図示されるように、力(N)に対して後退変位(mm)をプロットした、例示的なシールドの力プロファイル50が提供される。力プロファイル50は、所望の力及び変位値のほんの一例であり、従ってこれらの値は先述の相互作用の設計に応じて変化し得ることが理解される。それでもなお、図10に示すように、初期の抵抗力はシールド110が移動する最初の約1mm間では相対的に低く、そこで抵抗力が後退期間の開始又は始まり(例えば、シールド110が移動する最初の約1~3mm以内)で示されるピーク抵抗力(図10の「I」によって示される)まで急速に増加し、その後、短距離のうちに(例えば、シールド110が移動する更に約1mm~2mm以内で)低下するため、「クイックトリガー(quick trigger)」効果に類似したものとなる。いくつかの例では、ピーク抵抗力は、シールド110が移動する最初の約30%以内に示される。他の例では、ピーク抵抗力は、デバイス100の作動に至るまでの運動の全範囲内における任意の点で示される。更に他の例では、ピーク抵抗力は、針又はカニューレが使用者の皮膚に接触する前の任意の点で示される。なお他の例では、図4で図示されるように、シールド110の近位端110aから端点124aまでの距離として軸方向距離「d」が定義される。これらの例では、遠位方向で測定されるときの距離「d」が約12mm以下である場合にピーク抵抗力が及ぼされ、好ましくはシールドの軸方向の動きの最初の約8mm以内でピーク抵抗力が及ぼされ、より好ましくはシールドの軸方向の動きの最初の約3mm以内にピーク抵抗力が及ぼされる。図4で図示される距離dは、約3mm超であると理解される。例えば、針124の端点124aが針シールド110を既に通過している図6の構成などの他の構成では、距離dが負数であってもよい(従って、3mmより小さい)ということが更に理解される。ピーク抵抗力の値に到達した後、力プロファイル50は、力が徐々に増加する期間が続く(図10の「II」によって示される)。点「III」では、投与メカニズムの解除の際に力が低下して、力が徐々に増加する最後のより低い力の後退期間が続く。力プロファイル50の終了時では、シールド110がハウジング102の方に更に動くことが制限されるため、力が急激に増加する。
【0040】
図10の例示的な力プロファイル50はまた、記載された駆動アセンブリ150を使用することにより、シールド変位領域を明確に定義することができる方法を示している。これらの領域では、特定の相互作用が発生するが、これらは部品の公差の仕様及び適切な寸法設計によって制御することができる。一例として図10では、投与の開放点が最低限の針の挿入領域を過ぎた後に生じるように規定され、それにより任意の薬剤が放出される前にニードルチップが最低限の深さを越えて確実に挿入されるということを示している。図示された例では、ピーク力の前及び後での両方の力は、使用者が自身の考えを変えようとしないことを確実にするために、可能な限り低いものである。
【0041】
既に述べたように、ピーク抵抗力の値は、任意の数の構成要素の相互作用の組み合わせによって生じ得る。具体的には、トリガーリング160がハウジング102の遠位端102bに向かって動くにつれて、ナット152の少なくとも1つのフィンガ155がトリガーリング160の少なくとも1つの溝163及び/又はバンプ164によって外向きに偏向するように強いられる梁のたわみの原理により、力がピークレベルまで増加する。ピーク抵抗力を生じさせるために梁のたわみの原理を使用することにより、2つの部品の表面摩擦、傾斜角度、並びに梁のたわみを引き起こす2つの幾何構造の間の重なり合いの量、少なくとも1つのフィンガ155の幾何構造及び/又は寸法(例えば、長さ、幅等)、並びに少なくとも1つのフィンガ155の材料剛性に応じた、比較的簡単な計算を使用して、予測されるピーク抵抗力を算出することができる。
【0042】
図8bには、多数の変数を有する例示的なフィンガ155が図示されている。いくつかの例では、ピーク抵抗力は、以下の数理モデルに従って算出することができる:
偏向フィンガのピーク抵抗力の寄与に関するパラメータ
【0043】
【表1】
【0044】
ピーク抵抗力の絶対値に対する要因の他の例としては、シールドばねの力、プランジャロッドガイドに対するトリガーリングからの摺動力、フレーム構成要素(例えば、ナット又はハウジング)に対するトリガーリングからの摺動力が挙げられる。他の例も可能である。更に、ピーク抵抗力を生じさせるためにこのたわみアームの原理を使用することは、トルクばね190の巻回及び係止の間、ナット152が後方及び前方に押されるときに、少なくとも1つのフィンガ155がトリガーリング160を固定して、組み立て中にトリガーリングがナット152とともに動くことを確実にすることを補助するので、組み立て中にも有利であり、且つ、設計のロバスト性を向上させるためにも有利である。少なくとも1つのフィンガ155はまた、デバイス100が使用者によって落下又は探索及び/又は検査される場合は、デバイス100を不用意に作動させることができないようにすることを確実にする。更に、必要に応じて少なくとも1つのフィンガ155を調整して、ピーク力を変更するようにしてもよい。例えば、ピーク力を変更するために、フィンガ155のサイズ、厚さ、剛性、使用する材料、又は他のパラメータを調整してもよい。このような調整は、従来のばね調整と比較すると、より容易に行うことが可能である。
【0045】
図11~13bで図示されるように、代替の薬物送達デバイス200が提供される。薬物送達デバイス200は、薬物送達デバイス100と類似の特徴及び要素を含み、従って、図1図10の薬物送達デバイス100のものと同一の二桁の接尾辞を持つ参照番号を有する。従って、簡略化のために、類似の構成要素については詳細には説明しない。薬物送達デバイス200は、図で示されていない追加の構成要素を含んでもよく、デバイス200に存在する任意の構成要素がデバイス100に組み込まれてもよい。いくつかの例では、使用者が早まって(即ち、全ての薬剤が送達される前に)注入部位からデバイスを取り外した場合、使用者が恩恵を受けていないにもかかわらず投与が続けられるため、薬剤の噴霧が針から出ているのが見えてしまう。
【0046】
デバイス200は、ハウジング202内に凹設された、ばね仕掛けのタブ293の形態の投与ロックアウト機構292を含んでもよい。ばね仕掛けのタブ293は、プランジャロッドガイド270と並んでおり、より具体的には、プランジャロッドガイド270の基部部分274の少なくとも1つの突出部276と並んでいる。ばね仕掛けのタブ293は、トリガーリング260に当接している。トリガーリング260は、シールド210と相互作用するのにばね仕掛けのタブ293を通り越して動くため、ばね仕掛けのタブ293は、挿入段階の間に及ぼされる最小摩擦以外の他の構成要素との干渉がほとんど又は全くない状態で、ハウジング202内に隠されたままとなる。
【0047】
これらの例では、作動した時点でトリガーリング260はシールド210の後を追わず、従ってシールド210がハウジング202の近位端202aに向かって動くにつれて(例えば、注入部位からデバイス200を取り外す間に)シールド210の遠位端210bがばね仕掛けのタブ293を通過して、ばね仕掛けのタブがプランジャロッドガイド270(薬剤の送達が完了するまで回転する)の少なくとも1つの突出部276の経路内に突出することを可能にする。少なくとも1つの突出部276がばね仕掛けのタブ293の経路へと回転した時点で、干渉する幾何構造によってプランジャロッドガイド270の動きが止められる。
【0048】
いくつかの例では、複数のばね仕掛けのタブ293を使用して、デバイス200の取り外しから投与ロックアウトに至るまでの、プランジャロッドガイド270の全体的な移動を減少させてもよい。システムの反応時間にバリエーションをもたらすために、プランジャロッドガイド270上にあるプランジャロッドのねじピッチ及び/又はリブの他の組み合わせを使用してもよい。いくつかの例では、投与ロックアウト機構に対する代替的手法には、シールドばね(図示されていない)の力を増加させること、及び/又は使用者から取り外すとトリガーリング260の再係合が生じるようにトリガーリング260及びシールド210を組み合わせることが含まれていてもよい。
【0049】
場合によっては、投与ロックアウト機構292は、部位から取り外されるのと同時に、又はほぼ同時に送達を停止するのに有利となり得る。このような機構292は、治療が過小送達に関連する高いリスクを伴う緊急のものである場合に有利となり得る。加えて、このような機構292は、容器の残存容量レベルの形でデータを保存することによって患者に送達された投与量を捕捉するなどの、コンパニオン「スマート」デバイス要素の設計を簡素化することができる。このような投与ロックアウト機構292がないと、情報は、例えば挿入の深さ及び送達状態を監視している複数のセンサに対して極めて時間依存的となり、結果として更に速い処理要件を有する、更に複雑なシステムになってしまう。注入後の残存量などの静的情報(且つ、反対の情報である患者に送達された投与量)は、イメージング、マスバランス、又はこのような目的のために設計された他のセンサを装備したシャープス容器などの再使用可能なコンパニオンシステムによって読み込まれてもよい。代替的に、又は追加的に、例えば、スマートフォンアプリを使用して注入後の画像を収集し、これを与えられた投与量の完全性に関して分析することができるが、このことはオートインジェクタが挿入状態に関係なく常に総容量を吐出する場合では不可能であり得る。全ての投与が完了する前に患者がデバイスを誤って取り外してしまう注入エラーが生じた場合、処方した医療専門家は、どれくらいの投与量が失われたのかを、次の行動方針を決定する前に把握したいと思うであろう。投与ロックアウト機構292は、例えば「皮下の深さからの取り外し」、又は「患者からの取り外し」などの特定の状態で送達を停止してもよく、このような機構の関連する機械的係合を、針又は針の深さに関するいくつかの関連する代用物に合わせてもよい。続いて、医療専門家(HCP)に質問された場合、患者はオートインジェクタ(ここでは針の安全のためにロックアウトされている)を観察して、目盛、表示マーク又は使用者に認識できる類似の特徴に基づいて残った容積の量をHCPに引き継ぐことができる。
【0050】
投与ロックアウト機構292のもう一つの潜在的利点としては、作動が完了した時点で第2の耐荷重面を提供することである。注入中にプランジャロッド282がトルクばね290からの力の伝達を支持することが重要である一方で、プラスチック構成要素は長期間にわたって強い力にさらされた場合、クリープ現象を起こし易くなる可能性がある。インジェクタがすぐに廃棄されず、ばねの残留負荷のためにプランジャロッドがクリープ現象を起こす場合、それは窓を通して明らかとなり、意図する通りに機能する場合であっても、使用者に低品質の製品であるとの印象を起こさせる。投与ロックアウト機構を組み込むことによって、注入部位から取り外された後にトルクばね290が回転することができる量が制限される。従って、残留力に対応可能な冗長な支持体を有し、注入後の破損リスクを低減する。
【0051】
上記の記載では、薬物送達デバイスに関連する様々なデバイス、アセンブリ、構成要素、サブシステム、及び使用方法について説明している。デバイス、アセンブリ、構成要素、サブシステム、方法、又は薬物送達デバイスは、以下に特定される薬物、並びにそれらのジェネリック及びバイオシミラー同等品を含むがそれらに限定されない薬物を更に含み得るか又はこれらとともに使用され得る。本明細書で使用する場合、薬物という用語は、他の類似の用語と交換可能に使用することができ、伝統的及び非伝統的な医薬品、栄養補助食品、サプリメント、生物学的製剤、生物学的活性剤及び組成物、大分子、バイオシミラー、生物学的同等物、治療用抗体、ポリペプチド、タンパク質、小分子、及びジェネリック医薬品を含む、任意の種類の薬剤又は治療用材料を指すために使用され得る。非治療的な注入可能材料も包含される。薬物は、液体形態、凍結乾燥形態、又は凍結乾燥形態から再構成されたものであってもよい。以下の例示的な薬物のリストは、網羅的又は限定的であると考えるべきではない。
【0052】
薬物はリザーバ内に収容される。いくつかの場合では、リザーバは、治療のために薬物が充填される又は予め充填される、のいずれかである一次容器である。一次容器は、バイアル、カートリッジ、又はプレフィルドシリンジであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、薬物送達デバイスのリザーバには、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などのコロニー刺激因子が充填されてもよく、又はそれらとともにデバイスを使用することができる。このようなG-CSF製剤には、Neulasta(登録商標)(ペグフィルグラスチム、PEG化フィルグラスチム、PEG化G-CSF、PEG化hu-Met-G-CSF)及びNeupogen(登録商標)(フィルグラスチム、G-CSF、hu-MetG-CSF)が含まれるが、それらに限定されない。
【0054】
他の実施形態では、薬物送達デバイスは、液体又は凍結乾燥形態であり得る赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を収容してもよい又はこれとともに使用してもよい。ESAは、赤血球造血を刺激する任意の分子である。いくつかの実施形態では、ESAは、赤血球造血刺激タンパク質である。本明細書で使用する場合、「赤血球造血刺激タンパク質」とは、例えば、受容体に結合し、受容体の二量化を引き起こすことによってエリスロポエチン受容体の活性化を直接的又は間接的に引き起こす任意のタンパク質を意味する。赤血球造血刺激タンパク質としては、エリスロポエチン受容体に結合し、これを活性化させるエリスロポエチン及びその変異体、類似体、若しくは誘導体、エリスロポエチン受容体に結合し、この受容体を活性化させる抗体、又はエリスロポエチン受容体に結合し、活性化させるペプチドが挙げられる。赤血球造血刺激タンパク質としては、Epogen(登録商標)(エポエチンアルファ)、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Dynepo(登録商標)(エポエチンデルタ)、Mircera(登録商標)(メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ)、Hematide(登録商標)、MRK-2578、INS-22、Retacrit(登録商標)(エポエチンゼータ)、Neorecormon(登録商標)(エポエチンベータ)、Silapo(登録商標)(エポエチンゼータ)、Binocrit(登録商標)(エポエチンアルファ)、エポエチンアルファHexal、Abseamed(登録商標)(エポエチンアルファ)、Ratioepo(登録商標)(エポエチンシータ)、Eporatio(登録商標)(エポエチンシータ)、Biopoin(登録商標)(エポエチンシータ)、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンイオタ、エポエチンオメガ、エポエチンデルタ、エポエチンゼータ、エポエチンシータ、及びエポエチンデルタ、PEG化エリスロポエチン、カルバミル化エリスロポエチン、並びにそれらの分子又は変異体又は類似体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
特定の例示的なタンパク質の中には下記の具体的なタンパク質があり、これにはその融合体、フラグメント、類似体、変異体、又は誘導体が含まれる:完全ヒト化及びヒトOPGL特異抗体、特に、完全ヒト化モノクローナル抗体を含む、(RANKL特異抗体、ペプチボディ等とも称される)OPGL特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;ミオスタチン特異的ペプチボディを含む、ミオスタチン結合タンパク質、ペプチボディ、関連タンパク質等;特に、IL-4及び/又はIL-13の受容体への結合によって媒介される活動を抑制する、IL-4受容体特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;インターロイキン1-受容体1(「IL1-R1」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;Ang2特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;NGF特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;CD22特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等、特に、ヒト-マウスモノクローナルhLL2κ鎖にジスルフィド結合したヒト-マウスモノクローナルhLL2γ鎖の二量体、例えば、エプラツズマブ(CAS登録番号501423-23-0)のヒトCD22特異完全ヒト化抗体などの、ヒトCD22特異IgG抗体を特に含むがそれに限定されない、ヒト化及び完全ヒトモノクローナル抗体を含むがそれに限定されない、ヒト化及び完全ヒト抗体などであるがそれに限定されない、ヒトCD22特異抗体;抗IGF-1R抗体を含むがそれに限定されない、IGF-1受容体特異抗体、ペプチボディ、及び関連タンパク質等;B7RP特異完全ヒトモノクローナルIgG2抗体を含むがそれに限定されない、B7RP-1の最初の免疫グロブリン様ドメインのエピトープと結合する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体を含むがそれに限定されない、B7RP-1と活性化T細胞上のB7RP-1の自然受容体であるICOSとの相互作用を抑制するものを含むがそれに限定されない、B-7関連タンパク質1特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等(「B7RP-1」、B7H2、ICOSL、B7h、及びCD275とも称される);例えば146B7などの、HuMax IL-15抗体及び関連タンパク質を含むがそれらに限定されない、特にヒト化モノクローナル抗体などの、IL-15特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;ヒトIFNγ特異抗体を含むがそれに限定されない、及び完全ヒト抗IFNγ抗体を含むがそれに限定されない、IFNγ特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;TALL-1特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等、並びに他のTALL特異結合タンパク質;副甲状腺ホルモン(「PTH」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;トロンボポエチン受容体(「TPO-R」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;肝細胞増殖因子/細胞分散因子(HGF/SF)を中和する、完全ヒトモノクローナル抗体などの、HGF/SF:cMet軸(HGF/SF:c-Met)を標的にするものを含む、肝細胞増殖因子(「HGF」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;TRAIL-R2特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;アクチビンA特異抗体、ペプチボディ、タンパク質等;TGF-β特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;アミロイドβタンパク質特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;c-Kit及び/又は他の幹細胞因子受容体と結合するタンパク質を含むがそれらに限定されない、c-Kit特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;OX40L及び/又はOX40受容体の他のリガンドと結合するタンパク質を含むがそれに限定されない、OX40L特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;Activase(登録商標)(アルテプラーゼ、tPA)、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Epogen(登録商標)(エポエチンアルファ、又はエリスロポエチン)、GLP-1、Avonex(登録商標)(インターフェロンβ-1a)、Bexxar(登録商標)(トシツモマブ、抗CD22モノクローナル抗体)、Betaseron(登録商標)(インターフェロン-β)、Campath(登録商標)(アレムツズマブ、抗CD52モノクローナル抗体)、Dynepo(登録商標)(エポエチンデルタ)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、MLN0002(抗α4β7 mAb)、MLN1202(抗CCR2ケモカイン受容体mAb)、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト、TNF受容体/Fc融合タンパク質、TNF遮断薬)、Eprex(登録商標)(エポエチンアルファ)、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ、抗EGFR/HER1/c-ErbB-1)、Genotropin(登録商標)(ソマトロピン、ヒト成長ホルモン)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ、抗HER2/neu(erbB2)受容体mAb)、Humatrope(登録商標)(ソマトロピン、ヒト成長ホルモン)、Humira(登録商標)(アダリムマブ)、Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)、Xgeva(登録商標)(デノスマブ)、Prolia(登録商標)(デノスマブ)、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト、TNF受容体/Fc融合タンパク質、TNF遮断薬)、Nplate(登録商標)(ロミプロスチム)、リロツムマブ、ガニツマブ、コナツムマブ、ブロダルマブ、溶液中のインスリン、Infergen(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1)、Natrecor(登録商標)(ネシリチド、遺伝子組換え型ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、Kineret(登録商標)(アナキンラ)、Leukine(登録商標)(サルガモスチム、rhuGM-CSF)、LymphoCide(登録商標)(エプラツズマブ、抗CD22 mAb)、Benlysta(商標)(リンフォスタットB、ベリムマブ、抗BlyS mAb)、Metalyse(登録商標)(テネクテプラーゼ、t-PA類似体)、Mircera(登録商標)(メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ)、Mylotarg(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Raptiva(登録商標)(エファリズマブ)、Cimzia(登録商標)(セルトリズマブペゴル、CDP870)、Soliris(商標)(エクリズマブ)、パキセリズマブ(抗補体C5)、Numax(登録商標)(MEDI-524)、Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)、Panorex(登録商標)(17-1A、エドレコロマブ)、Trabio(登録商標)(レルデリムマブ)、TheraCim hR3(ニモツズマブ)、Omnitarg(ペルツズマブ、2C4)、Osidem(登録商標)(IDM-1)、OvaRex(登録商標)(B43.13)、Nuvion(登録商標)(ビジリズマブ)、カンツズマブメルタンシン(huC242-DM1)、NeoRecormon(登録商標)(エポエチンベータ)、Neumega(登録商標)(オプレルベキン、ヒトインターロイキン-11)、Orthoclone OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3、抗CD3モノクローナル抗体)、Procrit(登録商標)(エポエチンアルファ)、Remicade(登録商標)(インフリキシマブ、抗TNFαモノクローナル抗体)、Reopro(登録商標)(アブシキシマブ、抗GP IIb/IIia受容体モノクローナル抗体)、Actemra(登録商標)(抗IL6受容体mAb)、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)、HuMax-CD4(ザノリムマブ)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ、抗CD20 mAb)、Tarceva(登録商標)(エルロチニブ)、Roferon-A(登録商標)(インターフェロンα-2a)、Simulect(登録商標)(バシリキシマブ)、Prexige(登録商標)(ルミラコキシブ)、Synagis(登録商標)(パリビズマブ)、146B7-CHO(抗IL15抗体、米国特許第7,153,507号明細書を参照)、Tysabri(登録商標)(ナタリズマブ、抗α4インテグリンmAb)、Valortim(登録商標)(MDX-1303、抗炭疽菌防御抗原mAb)、ABthrax(商標)、Xolair(登録商標)(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、IL-1 trap(ヒトIgG1のFc部分及び両IL-1受容体成分(I型受容体及び受容体補助タンパク質)の細胞外ドメイン)、VEGF trap(IgG1のFcと融合したVEGFR1のIgドメイン)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ、抗IL-2Rα mAb)、Zevalin(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、Zetia(登録商標)(エゼチミブ)、Orencia(登録商標)(アタシセプト、TACI-Ig)、抗CD80モノクローナル抗体(ガリキシマブ)、抗CD23 mAb(ルミリキシマブ)、BR2-Fc(huBR3/huFc融合タンパク質、可溶性BAFF拮抗薬)、CNTO148(ゴリムマブ、抗TNFα mAb)、HGS-ETR1(マパツムマブ、ヒト抗TRAIL受容体-1 mAb)、HuMax-CD20(オクレリズマブ、抗CD20ヒトmAb)、HuMax-EGFR(ザルツムマブ)、M200(ボロシキシマブ、抗α5β1インテグリンmAb)、MDX-010(イピリムマブ、抗CTLA-4 mAb、及びVEGFR-1(IMC-18F1)、抗BR3mAb、抗クロストリジウム・ディフィシル毒素A及び毒素B C mAb MDX-066(CDA-1)及びMDX-1388)、抗CD22 dsFv-PE38コンジュゲート(CAT-3888及びCAT-8015)、抗CD25 mAb(HuMax-TAC)、抗CD3 mAb(NI-0401)、アデカツムマブ、抗CD30 mAb(MDX-060)、MDX-1333(抗IFNAR)、抗CD38 mAb(HuMax CD38)、抗CD40L mAb、抗Cripto mAb、抗CTGF特発性肺線維症第1期フィブロゲン(FG-3019)、抗CTLA4 mAb、抗エオタキシン1 mAb(CAT-213)、抗FGF8 mAb、抗ガングリオシドGD2 mAb、抗ガングリオシドGM2 mAb、抗GDF-8ヒトmAb(MYO-029)、抗GM-CSF受容体mAb(CAM-3001)、抗HepC mAb(HuMax HepC)、抗IFNα mAb(MEDI-545、MDX-1103)、抗IGF1R mAb、抗IGF-1R mAb(HuMax-Inflam)、抗IL12 mAb(ABT-874)、抗IL12/IL23 mAb(CNTO1275)、抗IL13 mAb(CAT-354)、抗IL2Ra mAb(HuMax-TAC)、抗IL5受容体mAb、抗インテグリン受容体mAb(MDX-018、CNTO95)、抗IP10潰瘍性大腸炎mAb(MDX-1100)、BMS-66513、抗マンノース受容体/hCGβ mAb(MDX-1307)、抗メソテリンdsFv-PE38コンジュゲート(CAT-5001)、抗PD1mAb(MDX-1106(ONO-4538))、抗PDGFRα抗体(IMC-3G3)、抗TGFβ mAb(GC-1008)、抗TRAIL受容体-2ヒトmAb(HGS-ETR2)、抗TWEAK mAb、抗VEGFR/Flt-1 mAb、及び抗ZP3 mAb(HuMax-ZP3)。
【0056】
いくつかの実施形態では、薬物送達デバイスは、ロモソズマブ、ブロソズマブ、又はBPS804(Novartis)などであるがそれらに限定されないスクレロスチン抗体、他の実施形態では、ヒトプロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合するモノクローナル抗体(IgG)を収容してもよい又はこれらとともに使用してもよい。このようなPCSK9特異抗体としては、Repatha(登録商標)(エボロクマブ)及びPraluent(登録商標)(アリロクマブ)が挙げられるがそれらに限定されない。他の実施形態では、薬物送達デバイスは、リロツムマブ、ビキサロマー、トレバナニブ、ガニツマブ、コナツムマブ、モテサニブ二リン酸塩、ブロダルマブ、ヴィデュピプラント、又はパニツムマブを収容してもよい又はこれらとともに使用してもよい。いくつかの実施形態では、薬物送達デバイスのリザーバには、OncoVEXGALV/CD;OrienX010;G207、1716;NV1020;NV12023;NV1034;及びNV1042を含むがそれらに限定されない、黒色腫又は他の癌の治療用のIMLYGIC(登録商標)(タリモジーンラハーパレプベック)又は別の腫瘍溶解性HSVが充填されてもよい、又はデバイスは、これらとともに使用することができる。いくつかの実施形態では、薬物送達デバイスは、TIMP-3などであるがそれらに限定されない内在性メタロプロテイナーゼ組織阻害剤(TIMP)を収容してもよい又はこれとともに使用してもよい。エレヌマブ、並びにCGRP受容体及び他の頭痛標的を標的とする二重特異性抗体分子などであるがそれらに限定されないヒトカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体のアンタゴニスト抗体もまた、本開示の薬物送達デバイスを用いて送達されてもよい。加えて、BLINCYTO(登録商標)(ブリナツモマブ)などであるがそれらに限定されない二重特異性T細胞誘導(BiTE(登録商標))抗体を、本開示の薬物送達デバイスにおいて又はこれとともに使用することができる。いくつかの実施形態では、薬物送達デバイスは、アペリン又はその類似体などであるがそれらに限定されないAPJ大分子アゴニストを収容してもよい又はこれとともに使用してもよい。いくつかの実施形態では、治療的有効量の抗胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)又はTSLP受容体抗体が本開示の薬物送達デバイスにおいて又はこれとともに使用される。
【0057】
薬物送達デバイス、アセンブリ、構成要素、サブシステム、及び方法を、例示的実施形態の観点から説明してきたが、これらに限定されるものではない。発明を実施するための形態は、単に例として解釈されるべきであり、本開示の考え得る全ての実施形態を説明しているわけではない。現在の技術又は本特許の申請日以降に開発された技術のいずれかを使用して、多くの代替的な実施形態を実施することができるが、このような実施形態はなお、本明細書に開示される本発明を定義する請求項の範囲内に含まれる。
【0058】
本特許出願の最後にある特許請求の範囲は、請求項内に明確に記載される「~ための手段(means for)」又は「~ための工程(step for)」という文言などの従来のミーンズプラスファンクションの文言が明確に記載されない限り、米国特許法第112条(f)の下で解釈されるものではない。本明細書中に記載されるシステム及び方法は、コンピュータの機能性の向上、及び従来のコンピュータの機能を向上させることを対象とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12
図13a
図13b