(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ポンプを作動させて水性作動液を供給する電動モータを制御する方法
(51)【国際特許分類】
F02M 25/025 20060101AFI20241205BHJP
F02D 19/12 20060101ALI20241205BHJP
F02B 47/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F02M25/025 Z
F02D19/12 A
F02B47/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021032402
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】102020000004474
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】523058504
【氏名又は名称】マレッリ ヨーロッパ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ ヅィート
(72)【発明者】
【氏名】アントーニオ バルブート
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018200690(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311391(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012206822(DE,A1)
【文献】特開2008-271698(JP,A)
【文献】特開2020-165429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/00-47/06、49/00
F02D 13/00-28/00、41/00-41/40
F02M 25/00-25/14
H02P 4/00、25/08-25/098、
29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ(16)を作動させて水性作動液を供給する電動モータ(25)を
、電力変換器(28)に指示を与える制御ユニット(26)によって制御する制御方法であって、前記電動モータ(25)は、3つのステータ巻線(27)と、少なくとも1つの永久磁石(30)を備えるロータ(29)とを備え、
前記制御方法は、
前記電力変換器(28)が、前記制御ユニット(26)からの指示に基づき、前記永久磁石(30)を引っぱって、前記ロータ(29)の回転を引き起こす、回転磁場を発生させるように、水性作動液をポンプする通常作動中に、前記3つのステータ巻線(27)に位相がずれた3つの対応する交流電流(I
1,I
2,I
3)を供給するステップと、
前記電力変換器(28)が、前記制御ユニット(26)の指示に基づき、前記水性作動液をポンプし始める前に前記ポンプ(16)を予熱する予熱手順の間に、
前記3つのステータ巻線(27)に、前記ロータ(29)の動きを決定せず、前記
3つのステータ巻線(27)においてジュール効果を介して熱を発生させるのみの交流電流(I
1,I
2)システム
を提供するステップと、を含み、
前記制御方法は、さらに、
前記制御ユニット(26)が、外部温度に基づき前記ポンプ(16)を予熱する予熱手順が必要か否かを判断するステップと、
前記電力変換器(28)が、前記制御ユニット(26)からの指示に基づき、前記水性作動液をポンプし始める前に前記ポンプ(16)を予熱する予熱手順の間に、互いに同位相であり、互いに加算されて
前記3つのステータ巻線(27)のうちの第3のステータ巻線(27)を介して戻る、2つの対応する交流電流(I
1,I
2)を、
前記3つのステータ巻線(27)
のうちの2つに供給するステップと、
前記電力変換器(28)が、前記制御ユニット(26)の指示に基づき、電動モータ(25)が延長された停止のためにターンオフされたときに、ロータ(29)を、固定された所定のパーク位置に保持するように、互いに同位相であり、互いに加算されて
前記3つのステータ巻線(27)のうちの第3のステータ巻線(27)を介して戻る、
前記2つの対応する交流電流(I
1,I
2)を、
前記3つのステータ巻線(27)
のうちの2つに供給するステップと、を含む、
制御方法。
【請求項2】
前記水性作動液をポンプし始める前に前記ポンプ(16)を予熱する予熱手順の間に、前記
3つのステータ巻線(27)の第1の端子(A)は
前記2つの対応する交流電流(I
1
,I
2
)のうちの第1の交流電流(I
1)を流し、前記
3つのステータ巻線(27)の第2の端子(B)は
前記2つの対応する交流電流(I
1
,I
2
)のうちの第1の交流電流(I
1)と同位相で
前記2つの対応する交流電流(I
1
,I
2
)のうちの第2の交流電流(I
2)を流し、前記
3つのステータ巻線(27)の第3の端子(C)は
前記第1および第2の交流電流(I
1,I
2)の合計(I
1+I
2)を流し、これらは互いに同位相であるので相殺しない、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記水性作動液をポンプし始める前に前記ポンプ(16)を予熱する予熱手順の間に、
前記3つのステータ巻線(27)
のうちの2つに供給される、互いに同位相である、前記2つの
対応する交流電流(I
1,I
2)が、定常磁場を発生させ、これにより、前記ロータ(29)を、固定された所定のパーク位置に保持する、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
互いに同位相である
前記2つの対応する交流電流(I
1,I
2)を、前記
3つのステータ巻線(27)
のうちの2つに供給するステップが、定常磁場を発生させて、該定常磁場が、前記ロータ(29)を前記パーク位置に前記定常磁場と配列させて保持し、必要に応じて、最初に前記ロータ(29)が前記パーク位置以外の位置にある場合は、前記ロータ(29)を前記パーク位置に向かって移動させる、請求項1、2または3に記載の制御方法。
【請求項5】
基準温度を決定するステップと、
前記基準温度が閾値(VL2)よりも小さい場合にのみ、前記水性作動液をポンプし始める前に、前記ポンプ(16)を予熱するために前記予熱手順を作動させるステップと、
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記予熱手順中に供給される前記2つの
対応する交流電流(I
1,I
2)の強度は、前記基準温度と前記閾値(VL2)との間の差に依存する、請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記予熱手順中に供給される前記2つの
対応する交流電流(I
1,I
2)の強度は、前記基準温度と前記閾値(VL2)との差が増大するにつれて増大する、請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記予熱手順中に供給される前記2つの
対応する交流電流(I
1,I
2)が同じ強さを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の制御方法を実行するように構成された、制御ユニット(26)。
【請求項10】
燃焼室を備えた少なくとも1つの気筒(2)であって、燃焼に続いて、排気ガスが生成される、少なくとも1つの気筒(2)と、
前記燃焼室から
の前記排気ガス
が通過する排気ダクト(10)と、
水性作動液供給システム(13)であって、ある量の水性作動液を収容するように設計されたタンク(15)と、前記水性作動液を噴射する少なくとも1つの噴射器(14)と、前記水性作動液を前記噴射器(14)に供給するために、電動モータ(25)によって作動され、前記水性作動液を前記タンク(15)から吸引するポンプ(16)と、を備えた、水性作動液供給システム(13)と、
制御ユニット(26)と、を備え、
前記制御ユニット(26)は、請求項1~8のいずれか1項に記載の制御方法を実行するように構成されている、内燃機関(1)。
【請求項11】
前記
水性作動液供給システム(13)は、少なくとも1つの電気ヒータ(22、23、24)を備え、
前記制御ユニット(26)は、前記内燃機関(1)
を寒冷条件下で始動した後、前記電気ヒータ(22、23、24)をオンにするように構成される、請求項10に記載の内燃機関(1)。
【請求項12】
前記制御ユニット(26)は、基準温度を決定するように構成され、
前記制御ユニット(26)は、前記基準温度が第1の閾値(VL1)よりも小さいときに、前記内燃機関(1)
を寒冷条件下で始動した後、前記電気ヒータ(22,23,24)をオンにするように構成され、
前記制御ユニット(26)は、前記基準温度が前記第1の閾値(VL1)よりも小さい閾値(VL2)よりも小さいときに、前記水性作動液をポンプし始める前に前記ポンプ(16)を予熱するために前記予熱手順を実行するように構成される、請求項11に記載の内燃機関(1)。
【請求項13】
前記制御ユニット(26)は、前記内燃機関(1)がオフにされたとき、前記噴射器(14)及び前記ポンプ(16)から前記水性作動液を空にするように前記ポンプ(16)を制御するように構成される、請求項10、11又は12に記載の内燃機関(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2020年3月3日出願のイタリア特許出願番号102020000004474からの優先権を主張するものであり、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電動モータを制御する方法に関し、ポンプを作動させて水性作動液を供給する。
【0003】
本発明は、内燃機関のための水性作動液の噴射システムにおいて有利な適用を見出したものであり、この適用は、一般性を失うことなく、以下の説明において明示的に参照される。
【背景技術】
【0004】
周知のように、内燃機関を扱う場合、製造業者は、混合気(空気・燃料混合物、air/fuel mixture)を冷却するために、燃料に加えて、水をシリンダ内部に規定された燃焼室に供給することを提案し、従って、ノック現象に対する耐性が高まった。
【0005】
給水システムは、脱塩水が充填され(スケーリングの形成を避けるために)、一般に加熱装置が設けられているタンクから構成され、外部の温度が特に低く、長期間停止した後に内燃機関が冷え始めた場合に、氷を溶かすために使用される。給水システムは、(少なくとも)電磁噴射器をさらに備え、この噴射器は、タンクからそれを引き出すポンプを通してタンクから水を受け取る。
【0006】
水は摂氏0度の温度で凍結する。寒い時や冬の時には室外に駐車している車では、簡単にこの温度に達する。車両が駐車しているときに、噴射器やポンプ内部に残っている可能性がある残留水が凍結し、噴射器やポンプに損傷を与える可能性がある。噴射器内部、給水ダクト内部およびポンプ内部での水の凍結による損傷や障害を回避するために、噴射器の内燃機関を切る際に、給水ダクトおよびポンプは(タンクに再導入される)残留水を空にしなければならない。
【0007】
しかしながら、噴射器、給水ダクト及びポンプが空であっても、内燃機関が切られ、それから摂氏0度を大幅に下回る外部温度で車両を長期間駐車した後に、寒冷条件下で再び内燃機関が始動される場合には、ポンプは、いずれにしても、氷塊の存在によって引き起こされる損傷を受ける可能性がある。
【0008】
特許文献1(独国特許出願公開第102018200690号明細書)及び特許文献2(欧州特許出願公開第3480438号明細書)は、内燃機関用の水性作動液の噴射システムについて説明しており、この噴射システムのポンプを作動させる電動モータは、ポンプのインペラを回転させる、ポンプ作動モードと、を作動させるポンプのインペラを回転させることなく熱を発生させる、加熱作動モードとの両方で制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第102018200690号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3480438号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ポンプを作動させて水性作動液を供給する電動モータを制御する方法であって、前記制御方法は実施が容易かつ経済的であり、上述した欠点に悩まされず、特に、零度を大幅に下回る外部温度で車両が長期間駐車された後に、内燃機関が冷えて始動されたときに、ポンプに損傷が生じないことを保証することである。
【0011】
本発明によれば、添付された請求項に係る、ポンプを動作させて水性作動液を送り込む電動モータを制御する方法が提供される。
【0012】
添付の請求項は、本発明の好ましい実施の形態を記載し、説明と一体化される部分を構成する。
以下、本発明を、その非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の水噴射システムを備えた内燃機関の模式図である。
【
図3】
図3は、
図1の噴射システムのポンプを動作させる電動モータの模式図であり、ポンプの通常動作中に電動モータによって吸収される電流を強調している。
【
図4】
図4は、
図1の噴射システムのポンプを動作させる電動モータの模式図であり、ポンプ予熱手順の実行中に電動モータによって吸収される電流を強調している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、符号1は、全体として、4つのシリンダ2(そのうちの1つのみが添付の図に示されている)を備えた内燃機関を示す。4つのシリンダ2はそれぞれ、2つの吸気弁4(そのうちの1つのみが添付の図に示されている)を介して吸気マニホルド3に接続され、2つの排気弁6(そのうちの1つのみが添付図に示されている)を介して排気マニホルド5に接続されている。
【0015】
吸気マニホルド3の内部には、スロットル弁7によって調整された入口開口部を通して新鮮な空気(すなわち外から来る空気)を受け取り、2つの吸気弁4の領域で終わるそれぞれの吸気ダクト8に至る出口開口部を通して各シリンダ2と連通する吸気チャンバ(いわゆる「プレナムチャンバ」)が画定されている。
【0016】
内燃機関1は、燃焼によって生成された排気ガスを(適切な処理の後)大気中に放出する排気システム9を備え、排気マニホルド5から始まる排気ダクト10を備える。すなわち、燃焼に続いて、シリンダの燃焼室内では、排気ガスが生成され、その後、排気ダクト10を通って大気中に放出される。
【0017】
内燃機関1は、対応する電磁燃料噴射器12によって燃料をシリンダ2内に噴射する燃料噴射システム11を備えている(これらは通常閉じている、すなわち、開放指令がない場合には閉じたままである)。換言すれば、噴射システム11は、それぞれのシリンダ2に直接燃料を噴射し、コモンレールから圧力をかけて燃料を受け取る4つの電磁燃料噴射器12を備える。燃料噴射システム11は、さらに、コモンレールに燃料を供給し、燃料タンク(図示せず)の内側に配置された低圧ポンプ(図示せず)から燃料を受け取る、高圧ポンプ(図示せず)を備える。
【0018】
内燃機関1は、水噴射システム13を備え、これは、対応する電磁水噴射器14(通常閉である、すなわち、開指令がない場合には閉じたままである)によって、水を吸気ダクト8に噴射する。換言すれば、噴射システム13は、それぞれがそれぞれの吸気ダクト8に水を直接噴射する4つの水噴射器14を備える。
【0019】
図2によれば、噴射システム13は、水を入れたタンク15と、
ポンプ16とを備え、これは、加圧された水を給水ダクト18(タンク15から発生し、ポンプ16を通って通るコモンレール17に到達する)を通してコモンレール17に給水するために、タンク15から水を汲み上げる。コモンレール17は、電磁水噴射器14に接続され、これにより、コモンレール17から直接水を受け取る。言い換えれば、コモンレール17は、給水ダクト18の端部であり、これに電磁水噴射器14が接続されている。ポンプ16は、可逆的であること、すなわち、タンク15から水を吸い込み、給水ダクト18を通してコモンレール17に水を供給する方向に作動させることができ、コモンレール17から水を吸い込み、給水ダクト18を通してタンク15に水を供給するように、逆方向に作動させることができることを指摘すべきである。
【0020】
各電磁水噴射器14は、霧化された水を対応する吸気ダクト8に噴射するように設計されており、コモンレール17に固定されている。すなわち、コモンレール17に直接取り付けられている。
【0021】
噴射システム13は、コモンレール17(すなわち、コモンレール17に由来する)に接続され、大気と連通し、機械的フィルタを設けることができる吸気口20にコモンレール17を接続するように設計された、二方向開放弁19(すなわち、両方向に空気を流すことを可能にする弁)をさらに備える。
【0022】
開放弁19は、好ましくは、ソレノイド弁(すなわち、遠隔制御可能な電動アクチュエータを備える)であって、コモンレール17が空気通気口20から(空気圧で)隔離された閉鎖位置と、コモンレール17が空気通気口20に(空気圧で)接続された開放位置との間で移動可能である。
【0023】
噴射システム13は、圧力センサ21を更に備え、この圧力センサは、コモンレール17上に取り付けられ、コモンレール17内部の水圧PH2Oを検知するように設計されている。
【0024】
図2に示す好ましい実施形態によれば、噴射システム13は、コモンレール17に結合され、コモンレール17を加熱するために熱を発生するように設計された電気ヒータ22(したがって、コモンレール17に含まれる可能性のある水)と、給水ダクト18に結合され、給水ダクト18を加熱するために熱を発生するように設計された電気ヒータ23(したがって、給水ダクト18に含まれる可能性のある水)と、タンク15に結合され、タンク15(したがって、タンク15に含まれる水)を加熱するために熱を発生するように設計された電気ヒータ24とを備える。
【0025】
図2によれば、ポンプ16は、ポンプ16と機械的に一体化された(ブラシレス型の)電動モータ25によって作動される。すなわち、電動モータ25は、ポンプ16に非常に近く、ポンプ16と1つの単一アセンブリを形成する。
【0026】
最後に、噴射システム13は、とりわけ、ポンプ16の電動モータ25、電磁水噴射器14、開放弁19および電気ヒータ22、23および24を制御する制御ユニット26を備える。
【0027】
図3及び
図4によれば、電動モータ25は、(少なくとも)電力変換器28(特に、インバータ)によって制御される三相ステータ巻線27を有し、これは、内燃機関1を収容する車両の電気システムによって直流電流が供給される。
【0028】
添付の図に示す実施の形態では、3相のステータ巻線27は、星状の構成で互いに接続されているのに対して、本明細書には示されていない異なる実施の形態によれば、3相のステータ巻線27は、互いに、三角状の構成で接続されている。
【0029】
電動モータ25は、さらに、ロータ29を有し、ロータは、回転方式で取り付けられ、ポンプ16のインペラに機械的に結合され、少なくとも1つの永久磁石30を支持する。ロータ29は、代替的に、内側ロータ(すなわち、ステータの内側に配置される)または外側ロータ(すなわち、ステータの周囲に配置される)であってもよい。
【0030】
内燃機関1がターンオンされると、ポンプ16は、コモンレール17内の水圧P
H2Oを所望の値(エンジン点によって変化し得る)に保つために、タンク15から水を汲み上げ、水をコモンレール17に向かって圧送するように作動される。この点に関して、ポンプ16は、好ましくは、コモンレール17内の水圧P
H2Oの実際の値を検出する圧力センサ21によって提供される測度を使用して、その回転で制御される。結局、内燃機関1がターンオンされると、制御ユニット26は、電動モータ25のロータ29の回転(従って、ポンプ16のインペラの回転)を引き起こすように(必要な場合に)電動モータ25を制御するように、電力変換器28に指示を与える。特に、
図3によれば、電力変換器28は、3つの巻線27に、3つの対応する交流電流I
1,I
2およびI
3を供給する。これらの電流は、(一般に)120°だけ位相がずれているため、回転磁界を発生させ、永久磁石30を引きずり、したがって、ロータ29の回転を引き起こす。
【0031】
結局、内燃機関1がオンになると(すなわち、噴射システム11が燃料をシリンダ2に噴射し、噴射システム13が吸気ダクト8に水を噴射すると)、制御ユニット26は、開放弁19を永久的に閉じたままにし、ポンプ16を制御して、電磁水噴射器14が取り付けられているタンク15からコモンレール17に圧力をかけて水を供給し、エンジン点(すなわち、シリンダ2内部の燃焼の特徴に応じて)に応じて、霧化した水を対応する吸気ダクト8に噴射するために、各電磁水噴射器14を周期的に制御する。
【0032】
内燃機関1がオフになると、制御ユニット26は、電磁水噴射器14、コモンレール17(給水ダクト18の端部を構成する)、給水ダクト18およびポンプ16から水を排出するために、ポンプ16、電磁水噴射器14および開放弁19を公知の方法で制御する(例えば、欧州特許出願第3715614号明細書に記載のように)。
【0033】
一方、内燃機関1が始動されると、給水ダクト18およびコモンレール17は空であり(内燃機関1がオフにされたとき、上述したように水から空にされていたので)、それらを充填する必要がある。結局、内燃機関1の時間時には、制御ユニット26は、タンク15から給水ダクト18を介してコモンレール17に水を供給するようにポンプ16を作動させると同時に、給水ダクト18内およびコモンレール17内に存在する空気を水位の増大に伴って開放弁19を開いて排出する(例えば、欧州特許出願第3715614号明細書に記載のように)。
【0034】
制御ユニット26は、(少なくとも)外部温度センサに接続され、必要に応じて、タンク15内部の水温TH2Oを測定する温度センサ31及び/又は内燃機関1の冷却液の温度を測定する温度センサにも接続される。基準温度(外部温度、内燃機関1の冷却液の温度、またはタンク15内の水温TH2O)が摂氏0度未満になると、制御ユニット26は、水回路内に存在する可能性のある氷を溶かすために電気ヒータ22、23および24をオンにし、必要に応じて予熱手順(後述)を起動してポンプ16の壁を加熱する。
【0035】
好ましい実施形態によれば、基準温度(外部温度、内燃機関1の冷却液の温度又はタンク15内部の水温TH2O)がリミット値VL1よりも小さい場合には、制御ユニット26は、電気ヒータ22,23,24をオン状態にするように構成される。基準温度(外部温度、内燃機関1の冷却液の温度、又はタンク15内部の水温TH2O)が閾値VL2(リミット値VL1よりも小さい)よりも小さい場合、制御ユニット26は、予熱手順を作動させるように構成される。この予熱手順は、ポンプ16の内壁を所定の制限時間内に予熱するのに十分であり、従って、ロータ29(従って、ポンプ16)の回転を引き起こすことなく、ジュール効果(すなわち、熱)による熱動力を発生させるように、電動モータ25を制御することを伴う。
【0036】
基準温度(外部温度、内燃機関1の冷却液の温度又はタンク15内部の水温TH2O)とリミット値VL1並びにリミット値VL2とを比較した結果により、以下の条件が考えられる:
基準温度がリミット値VL1を超えると、電子制御ユニット26は、電気ヒータ22、23および24をオンにせず、ポンプ16の予熱手順を起動しないように構成される;
基準温度がリミット値VL1と閾値VL2との間で構成される場合、電子制御ユニット26は、電気ヒータ22、23および24をオンにするが、ポンプ16の予熱手順を起動しないように構成される。
水温TH2Oが閾値VL2よりも小さい場合、電子制御ユニット26は、電気ヒータ22、23および24をオンにすると共に、ポンプ16の予熱手順を起動するように構成される。
【0037】
ポンプ16の内部に存在する可能性のある氷(関連する大きさを有する)は、ポンプ16の回転部分を破壊する可能性があるため、ポンプ16の完全性にとって極めて危険であり得る。換言すれば、ポンプ16の内部に存在する比較的大きなサイズの氷の破片は、ポンプ16が内部に存在する(大サイズの)氷とともに回転させられる場合、ポンプ16の回転部分を破壊する可能性がある。内燃機関1が始動されると、ポンプ16は、内燃機関1が停止されたときに前もって空にされていた(しかし乾燥されていない)ので、実質的に水が含まれない。ポンプ16内には、残留した水の痕跡(基本的には落下)が存在する可能性があり、これは、たとえ凍結しても、非常に小さな氷片を生成することになり、それゆえ、通常、危険ではない。
【0038】
しかしながら、内燃機関1が始動されると、ポンプ16の壁は実質的に周囲温度にあり、前記周囲温度が摂氏0度を大幅に下回ると、内燃機関1の始動後にタンク15から来る水が初めてポンプ16に流入する際に、前記水がポンプ16の壁に接触して凍結する可能性があり、したがって、比較的大きなサイズの氷片の形成が決定され、ポンプ16が損傷する可能性がある。
【0039】
タンク15から流入する水が、実質的に周囲温度にあるポンプ16の壁に接触して凍結するのを防止するために(明らかに、前記周囲温度が摂氏0度を大幅に下回る場合にのみ)、さらに、ポンプ16の内側に存在する可能な残留氷を融かすために、予熱手順を起動することによってポンプ16の壁を予熱する。この予熱手順は、ポンプ16の内壁を予熱するのに十分なジュール効果(すなわち熱)による熱動力を発生させるように、電動モータ25を制御することを伴う。上述したように、電動モータ25はポンプ16と一体化されており、従って、電動モータ25でジュール効果を介して発生した熱はポンプ16に迅速に伝達される。
【0040】
以下に、電子制御ユニット26によって実施される予熱手法を説明する。この予熱手法は、電動モータ25を非効率的な方法(すなわち、移動がない場合)で制御することを伴い、ジュール効果により、電動モータ25の巻線27に、ポンプ16の内壁を予熱するのに十分な熱電力を発生させる。換言すれば、制御ユニット26は、電動モータ25の巻線27を、ロータ29(したがって、ポンプ16の)の実際の回転を引き起こす回転磁界を発生させずに、ジュール効果を介して熱を発生させる電気抵抗としてのみ使用する。
【0041】
図3にしたがって上述したとおり、電動モータ25のロータ29の回転を生じさせるために、電力変換器28は、永久磁石30を引きずり、従ってロータ29の回転を生じさせる回転磁界を発生させるように、(一般に)120°だけ位相がずれている3つの対応する交流電流I
1,I
2及びI
3を3つのステータ巻線27に供給する。一方、予熱手順は、
図4によると、電力変換器28が、互いに同位相である(すなわち、相互の位相差がない)2つの対応する交流電流I
1およびI
2を2つのステータ巻線27のみに供給し、互いに加算して、第3のステータ巻線27を通して電力変換器28に向かって帰還することを要求する。言い換えれば、交流電流I
1は、ステータ巻線27の末端Aから流入し、交流電流I
1と位相が合った交流電流I
2(また、好ましくは、交流電流I
1と同じ強度も有する)が、ステータ巻線27の末端Bから流入し、交流電流I
1及びI
2の合計I
1+I
2(2つの交流電流は、互いにI
1及びI
2が同位相であり、したがって、互いに相殺されない)が、ステータ巻線27の末端Cから流入する。
【0042】
互いに同位相であり、2つのステータ巻線27に供給される2つの交流電流I1およびI2は、定常磁場(すなわち、完全に静止している)を発生し、これは、固定された所定のパーク位置(すなわち、定常磁場と整列しており、これは、常に、電動モータ25の構造によって決定される同じ向きを有している)に保持し、必要であれば、最初に、固定された所定のパーク位置に向かってロータ29を移動させ、最初に、ロータ29が、パーク位置以外の位置(ロータ29が作る、最悪の場合のシナリオでは、最大回転180°)である場合には、最初に、ロータ29を移動させる。上述したように動作させることにより、ロータ29が常に固定位置および所定位置に留まることが確実である、電動モータ25のステータ巻線27にジュール効果を介して熱を発生させることができる。
【0043】
好ましい実施形態によれば、予熱手順中に供給される2つの交流電流I1およびI2の強度は、必ずしも同じではなく、基準温度と閾値VL2との間の差(絶対値における)に依存する。閾値VL2が基準温度よりも小さいほど、2つの交流電流I1およびI2の強度が大きくなる。すなわち、基準温度と閾値VL2との間の差(絶対値における)が大きくなるにつれて、2つの交流電流I1およびI2の強度が大きくなる。
【0044】
内燃機関1のターンオフ後(すなわち、噴射システム13がパーク状態に切り替わったとき)、および排水の終了時に、電動モータ25は、ロータ29を固定された所定のパーク位置に配置するように、上述した除霜手順に従って(すなわち、
図4のとおり、別のものと同位相である2つのだけの電流I
1およびI
2を有し、循環する)短時間(約0.5~3.0秒間)制御される。このようにして、ロータ29は、固定された所定のパーク位置に置かれ、前述した除霜手順の次の起動(摂氏0度を大幅に下回る外部温度での長期間の駐車後)の場合には、ロータ29は、すでにパーク位置にあるので、動かない。(したがって、ポンプ16のインペラのいかなる動きも-最小のものであっても-回避され、氷の存在による損傷の可能性は完全に排除される。)
【0045】
添付図面に示す実施形態では、水の噴射は間接的であり、電磁水噴射器14は、シリンダ2に水を噴射するのではなく、シリンダ2の上流側にある吸気ダクト8に水を噴射する。本明細書には示されていない代替実施形態によれば、水の噴射は直接的であり、電磁水噴射器14は、シリンダ2に水を噴射する。
【0046】
添付図面に示す実施形態では、燃料の噴射は直接的であり、電磁燃料噴射器12は燃料をシリンダ2に噴射する。本明細書には示されていない代替実施例によれば、燃料の噴射は間接的であり、電磁燃料噴射器12は燃料をシリンダ2の上流の吸気ダクト8に噴射する。
【0047】
添付図面に示す実施形態では、電動モータ25は、3つのステータ巻線27を備える。本明細書には示されていない異なる実施形態によれば、電動モータ25は、6つまたは9つのステータ巻線27を備えており、この場合でも、予熱手順の間、(6つのうちの)4つまたは(9つのうちの)6つのステータ巻線27のみが、互いに位相を合わせてそれぞれの交流電流を供給され、一方、残りのステータ巻線27は、互いに加えられる交流電流の戻りのために使用される。
【0048】
添付図面に示す実施形態では、燃焼の効率を高めるように、および/または発生する動力を増加させるように、噴射システム13は、内燃機関1のシリンダ2で得られた燃焼室に脱塩水(すなわち、水性作動液)を噴射するために使用される。本明細書に示されていない異なる実施形態によれば、同様の噴射システム13は、排気ダクト10に沿って、SCR触媒コンバータの上流に尿素樹脂の水溶液(すなわち、尿素樹脂を含む水性作動液)を噴射するために使用される。
【0049】
直接又は間接燃料噴射は、直接又は間接水噴射と組み合わせることができる。
【0050】
他の実施形態によれば、電動モータ25のステータ巻線27においてジュール効果を介して発生する熱を利用することによってポンプ16の壁にさらされる予熱手順は、(ポンプ16に非常に近接するために、明らかにポンプ16と一体化される)電動モータ25によって作動されるポンプ16が外部温度のために凍結することがあり得る水性作動液(したがって純水または水溶液)をポンプするために使用される全ての状況において、自動車産業以外の産業においても適用することができる。
【0051】
本明細書に記載される実施形態は、この理由のために本発明の保護の範囲を超えることなく、互いに組み合わせることができる。
【0052】
上述の制御方法は、(ハードウェアの変更を必要としないが、単にソフトウェアの統合を必要とするので)実施することが容易で経済的であるため、数多くの利点を有し、特に、車両が摂氏0度を大幅に下回る外部温度で長期間駐車された後に内燃機関1が冷えて始動された場合のポンプ16の損傷を回避する。
【符号の説明】
【0053】
1 内燃機関
2 シリンダ
3 吸気マニホルド
4 吸気弁
5 排気マニホルド
6 排気弁
7 スロットル弁
8 吸気ダクト
9 排気システム
10 排気ダクト
11 噴射システム
12 電磁噴射器
13 噴射システム
14 電磁噴射器
15 タンク
16 ポンプ
17 コモンレール
18 給水ダクト
19 開放弁
20 吸気口
21 圧力センサ
22 電気ヒータ
23 電気ヒータ
24 電気ヒータ
25 電動モータ
26 制御ユニット
27 巻線
28 電力変換器
29 ロータ
30 永久磁石
31 温度センサ
I1 交流
I2 交流
I3 交流
A 端子
B 端子
C 端子