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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20241205BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G01C15/00 104Z
G01C15/06 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021035807
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135779
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 将次郎
(72)【発明者】
【氏名】染谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 賢
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健資
(72)【発明者】
【氏名】戸田 善憲
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特許第5048962(JP,B2)
【文献】特開2020-140257(JP,A)
【文献】特開2020-076585(JP,A)
【文献】特開2006-057396(JP,A)
【文献】特開2020-3484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建物に各々付与された、X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、を含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む前記既存建物の点群データを取得する取得部と、
前記マーカが有する通り芯情報と、前記既存建物のBIMモデルが有する対応する通り芯情報とを重ね合わせ、前記既存建物の前記点群データが示す画像と、前記BIMモデルが示す画像とを重ね合わせて表示部に表示する制御を行う制御部と、
を備え
前記点群データは、点毎の色を示す色情報を有し、
前記マーカとして、前記X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、前記Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、で互いに異なる色のものを適用する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記既存建物に付与された、Z軸方向の高さを示す高さ情報を有するマーカを更に含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む前記既存建物の点群データを取得し、
前記制御部は、前記マーカが有する高さ情報と、前記BIMモデルが有する対応する高さ情報とを更に重ね合わせて、前記制御を行う、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記マーカは、各々のエッジが同一の直線を成す複数のマークを有し、
前記取得部は、対応する通り芯に前記直線が一致するように前記マーカが付与された状態で3次元撮影して前記点群データを取得する、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記マーカは、前記既存建物の柱の側面に付与されている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設業での3次元スキャナ(以下、「3Dスキャナ」ともいう。)による3次元撮影は、土木分野と同様に、屋外から建物の躯体及び外装や、設備類を対象として行われている。また、当該3次元撮影は、半屋外(目隠し壁で隠れた屋上、ドライエリア、ピロティ等)や屋内においても、建物の躯体及び内装や、設備類を対象に行われている。
【0003】
この3Dスキャナによる3次元撮影によって取得した点群データは、パーソナルコンピュータ等により、現地及び現況の確認を行う活用方法の他に、BIM(Building Information Modeling)モデルとの重ね合わせを行うことにより、設計図や施工図等を現地の状況に即した精度の高い図面に更新するために活用している。
【0004】
従来は、点群データによる画像とBIMモデルによる画像を重ね合わせるために、点群データによる画像及びBIMモデルによる画像の少なくとも一方を、手動で3次元方向に動かして重ね合わせを行っているため、重ね合わせの精度に、人の技量によってばらつきが生じると共に、再現性が低い、という問題があった。
【0005】
この問題を解決するために適用することのできる技術として、以下の技術があった。
【0006】
特許文献1には、三次元レーザスキャナを用いた建築計画変更方法が開示されている。この建築計画変更方法では、三次元レーザスキャナを用いて建築現場の出来型表面の三次元データを点群データとして立体的に計測し、計測された出来型表面と、建築計画面との距離を比較して、前記出来型表面と前記建築計画面との干渉部分および隙間の少なくとも一方が最小になるように前記建築計画面を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5048962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を、点群データによる画像とBIMモデルによる画像とを重ね合わせる目的に適用する場合、点群データが表す部材等の表面と、当該表面に対応するBIMモデルの部材等の表面とを検出する必要がある。このため、この技術では、点群データによる画像とBIMモデルによる画像との重ね合わせを、必ずしも簡易に行うことができるとは限らない、という問題点があった。
【0009】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、3Dスキャナによって得られた点群データによる画像と、BIMモデルによる画像とを、より簡易に重ね合わせることができる情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置は、既存建物に各々付与された、X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、を含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む前記既存建物の点群データを取得する取得部と、前記マーカが有する通り芯情報と、前記既存建物のBIMモデルが有する対応する通り芯情報とを重ね合わせ、前記既存建物の前記点群データが示す画像と、前記BIMモデルが示す画像とを重ね合わせて表示部に表示する制御を行う制御部と、を備え、前記点群データは、点毎の色を示す色情報を有し、前記マーカとして、前記X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、前記Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、で互いに異なる色のものが適用される。
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、既存建物に各々付与された、X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、を含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む既存建物の点群データを取得し、マーカが有する通り芯情報と、既存建物のBIMモデルが有する対応する通り芯情報とを重ね合わせ、既存建物の点群データが示す画像と、BIMモデルが示す画像とを重ね合わせて表示部に表示する制御を行うと共に、点群データを、点毎の色を示す色情報を有するものとし、マーカとして、X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、で互いに異なる色のものを適用することで、3Dスキャナによって得られた点群データによる画像と、BIMモデルによる画像とを、より簡易に重ね合わせることができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置であって、前記取得部が、前記既存建物に付与された、Z軸方向の高さを示す高さ情報を有するマーカを更に含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む前記既存建物の点群データを取得し、前記制御部が、前記マーカが有する高さ情報と、前記BIMモデルが有する対応する高さ情報とを更に重ね合わせて、前記制御を行うものである。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、既存建物に付与された、Z軸方向の高さを示す高さ情報を有するマーカを更に含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む既存建物の点群データを取得し、マーカが有する高さ情報と、BIMモデルが有する対応する高さ情報とを更に重ね合わせて、上記制御を行うことで、より簡易に、3Dスキャナによって得られた点群データによる画像と、BIMモデルによる画像とを、重ね合わせることができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置であって、前記マーカが、各々のエッジが同一の直線を成す複数のマークを有し、前記取得部が、対応する通り芯に前記直線が一致するように前記マーカが付与された状態で3次元撮影して前記点群データを取得するものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、マーカを、各々のエッジが同一の直線を成す複数のマークを有するものとし、対応する通り芯に上記直線が一致するようにマーカが付与された状態で3次元撮影して点群データを取得することで、より簡易、かつ、高精度に、点群データから通り芯情報を導出することができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置であって、前記マーカが、前記既存建物の柱の側面に付与されているものである。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る情報処理装置によれば、マーカを、既存建物の柱の側面に付与させることで、より容易に、3Dスキャナによる3次元撮影を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、3Dスキャナによって得られた点群データによる画像と、BIMモデルによる画像とを、より簡易に重ね合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る3Dスキャナの構成の一例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係るマーカの構成の例を示す図であり、(A)はX軸方向及びY軸方向の通り芯に対応するマーカの一例を示す正面図であり、(B)はZ軸方向の高さに対応するマーカの一例を示す正面図である。
図5】実施形態に係るスキャン情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図6A】実施形態に係るマーカの付与状態及び3Dスキャナの設置状態の一例を示す斜視図である。
図6B】実施形態に係るX軸方向及びY軸方向の通り芯の状態の一例を示す平面図である。
図7】実施形態に係るマーカの実際の付与状態の一例を示す図である。
図8】実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
図9】従来の重ね合わせ表示画面の一例を示す正面図である。
図10】実施形態に係る重ね合わせ表示画面の一例を示す正面図である。
図11】実施形態に係るマーカの他の構成例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0021】
まず、図1図3を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システム90のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係る3Dスキャナ50の構成の一例を示す斜視図である。更に、図3は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理システム90は、情報処理装置10及び3Dスキャナ50を含んで構成されている。なお、情報処理装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の汎用又は専用の情報処理装置が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0024】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、情報処理プログラム13Aが記憶されている。情報処理プログラム13Aは、情報処理プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの情報処理プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、情報処理プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、情報処理プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0025】
また、記憶部13には、スキャン情報データベース13B及びBIMモデル13Cが記憶される。本実施形態に係る情報処理システム90では、BIMモデル13Cとして従来既知のものを適用している。
【0026】
即ち、建築設計の分野では、BIMの活用が進んでいる。建築設計者は、建築設計を行う際、設計対象の建物の3次元モデルを表すBIMモデルを作成することにより、設計作業を進める。
【0027】
BIMを活用することにより、コンピュータ上の空間内に建物の形状を表すオブジェクトが形成され、そのオブジェクトに対して属性情報が付与される。例えば、属性情報として、物理的特性に関する情報(比重、材質、強度、及び剛性等)又はコストに関する情報(例えば、1mあたりの単価及び施工コスト等)を、オブジェクトに対して紐づけることが可能となる。このため、例えば、BIMモデルと各種解析ツールとを連動させることにより、BIMモデルに応じて、構造解析及び熱負荷解析等を自動的に行うことができる。
【0028】
なお、BIMモデルは従来既知であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。また、スキャン情報データベース13Bについては、詳細を後述する。
【0029】
一方、図1に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52及び記憶部58を含んで構成されている。なお、図示は省略するが、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52により3次元撮影を行う際に当該スキャナ本体52による撮影方向を変化させるためのモータや、当該モータ、スキャナ本体52等の各部の作動を制御する制御部等も含まれている。
【0030】
図2に示すように、本実施形態に係る3Dスキャナ50は、3脚とされた脚部60の上部にスキャナ本体52が設けられており、スキャナ本体52は、脚部60の上部において、上述したモータの駆動により撮影方向が変更可能とされている。なお、脚部60は3脚には限らないことは言うまでもない。
【0031】
本実施形態に係る3Dスキャナ50は、スキャナ本体52からレーザを射出し、対象物に反射して返ってくるまでの時間から距離を算出する一方、スキャナ本体52の移動方向からレーザの射出角度を算出し、これらの算出値を用いて3次元位置を特定する、所謂タイムオブフライト方式のものとされている。但し、3Dスキャナ50による3次元位置の特定方式は、これに限るものではない。例えば、スキャナ本体52から複数に変調させたレーザを射出し、対象物に当たって戻ってきた拡散反射成分の位相差により対象物との距離を求め、当該距離とレーザの射出角度から3次元位置を特定する、所謂フェイズシフト方式のものを、3Dスキャナ50として適用する形態としてもよい。
【0032】
また、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、点群データとして、各点の3次元位置の座標を示す座標情報の他、対応する点の上記レーザの反射強度を示す反射強度情報、及び対応する点の色を示す色情報が取得される。そして、本実施形態に係る3Dスキャナ50では、取得した座標情報、反射強度情報、及び色情報が点群データにおける点毎に関連付けられて記憶される。
【0033】
なお、本実施形態に係る情報処理システム90では、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を有線通信によって情報処理装置10に送信する形態とされているが、これに限るものではない。例えば、無線通信によって、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に送信する形態としてもよい。また、記憶部58を3Dスキャナ50から着脱可能な可搬型の記憶媒体としておき、当該記憶媒体を介して、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に転送する形態としてもよい。更に、3Dスキャナ50の記憶部58に記憶された各種情報を情報処理装置10に直接送信する形態には限らず、例えば、クラウドサーバを経由して情報処理装置10に送信する形態としてもよい。
【0034】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成について説明する。図3に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、取得部11A及び制御部11Bを含む。情報処理装置10のCPU11が情報処理プログラム13Aを実行することで、取得部11A及び制御部11Bとして機能する。
【0035】
本実施形態に係る取得部11Aは、既存建物に各々付与された、X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、Z軸方向の高さを示す高さ情報を有するマーカと、を含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む既存建物の点群データを取得する。
【0036】
また、本実施形態に係る制御部11Bは、マーカが有する通り芯情報及び高さ情報と、既存建物のBIMモデルが有する対応する通り芯情報及び高さ情報とを重ね合わせ、既存建物の点群データが示す画像と、BIMモデルが示す画像とを重ね合わせて表示部15に表示する制御を行う。
【0037】
本実施形態では、上記マーカとして、X軸方向の通り芯及びY軸方向の通り芯の各々に対応して、各々のエッジが同一の直線を成す複数のマークを有するものを用いる。また、本実施形態では、Z軸方向の高さ情報に対応して、単一のマークのみを有するものを用いる。
【0038】
そして、本実施形態に係る取得部11Aは、X軸方向の通り芯及びY軸方向の通り芯の各々に対応するマーカについては、対応する通り芯に上記直線が一致するようにマーカが付与された状態で3次元撮影して点群データを取得する。
【0039】
また、本実施形態では、上記マーカが、既存建物の柱の側面に付与される。但し、マーカを設ける対象は柱の側面に限るものではなく、例えば、X軸方向及びY軸方向の通り芯に関しては、既存建物の床面の各通り芯に対応する位置にマーカを設ける形態としてもよい。
【0040】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るマーカの構成について説明する。なお、図4は、本実施形態に係るマーカの構成の例を示す図であり、(A)はX軸方向及びY軸方向の通り芯に対応するマーカ70Aの一例を示す正面図であり、(B)はZ軸方向の高さに対応するマーカ70Bの一例を示す正面図である。
【0041】
図4(A)に示すように、本実施形態に係るX軸方向の通り芯及びY軸方向の通り芯の各々に対応するマーカ70Aは、各々のエッジが同一の直線を成す2つのマーク70A1及びマーク70A2を有する。なお、図4(A)に示す例では、上記直線が2本存在する場合について例示しているが、当該直線は1本のみでも適用可能である。また、本実施形態では、マーカ70Aとして、X軸方向の通り芯に適用するものと、Y軸方向の通り芯に適用するものと、で互いに異なる色のものを適用する形態としているが、これに限るものではない。例えば、互いに形状及びサイズの少なくとも一方が異なるマーカをマーカ70Aとして適用する形態としてもよい。
【0042】
一方、図4(B)に示すように、本実施形態に係るZ軸方向の高さに対応するマーカ70Bは、正面視矩形状の単一のマーク70B1のみを有する。このように、本実施形態では、マーカ70Bとして単一のマークを有するものを適用しているが、これに限るものではない。例えば、マーカ70Bとしても、マーカ70Aと同様に、各々のエッジが同一の直線を成す複数のマークを有するものを適用する形態としてもよい。マーカ70Bとしてマーカ70Aと同一形状のものを適用する場合、マーカ70Aと区別するために、色やサイズ等が異なるものを適用する形態としてもよい。
【0043】
次に、図5を参照して、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bについて説明する。図5は、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0044】
図5に示すように、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、座標、反射強度、及び色の各情報が関連付けられて記憶される。
【0045】
上記座標は、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた各点の位置の座標を示す、上述した座標情報であり、上記反射強度は、対応する点における、上述した反射強度情報であり、上記色は、対応する点における、上述した色情報である。即ち、本実施形態に係るスキャン情報データベース13Bは、3Dスキャナ50による3次元撮影によって得られた座標情報、反射強度情報、及び色情報の点群データが登録されるものである。
【0046】
次に、図6図10を参照して、本実施形態に係る情報処理システム90の作用を説明する。図6Aは、本実施形態に係るマーカ70A及びマーカ70Bの付与状態及び3Dスキャナ50の設置状態の一例を示す斜視図である。また、図6Bは、本実施形態に係るX軸方向及びY軸方向の通り芯の状態の一例を示す平面図である。また、図7は、本実施形態に係るマーカの実際の付与状態の一例を示す図である。更に、図8は、本実施形態に係る情報処理の一例を示すフローチャートである。
【0047】
一例として図6A及び図6Bに示すように、3次元撮影を行う撮影者は、対象とする建物(以下、「対象建物」という。)80の内部の柱82に墨出しされたX軸方向の通り芯84Aに上記直線が一致するように2つのマーカ70Aを付与する。また、撮影者は、柱82に墨出しされたY軸方向の通り芯84Bに上記直線が一致するように2つのマーカ70Aを付与する。更に、撮影者は、柱82に墨出しされたZ軸方向の通り芯84Cに上辺又は下辺(本実施形態では、下辺)が一致するように2つのマーカ70Bを付与する。
【0048】
なお、本実施形態では、一例として図7に示すように、マーカ70A及びマーカ70Bを、対応するマーカの各マークの形状が刳り抜かれたテンプレート(図示省略。)を柱82の該当箇所に押し当て、アクリルスプレーまたはラッカースプレーによって塗料を吹き付けることにより柱82に付与しているが、これに限るものではない。例えば、透明のアクリル板やガラス板等の板状部材に対して、対応するマーカの各マークを描いたものを、柱82の該当箇所に貼り付けることにより、各マーカを柱82に付与する形態としてもよい。
【0049】
次いで、撮影者は、マーカ70A及びマーカ70Bの各々が撮影範囲内に収まるように、3Dスキャナ50により対象建物80の内部の3次元撮影を行う。この3次元撮影によって、対象建物80の柱82を含む領域における、上述した座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報が得られ、一時的に記憶部58に記憶される。
【0050】
その後、撮影者は、3Dスキャナ50に記憶された座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報を情報処理装置10に送信する操作を行う。
【0051】
上記各情報が3Dスキャナ50から受信されると、情報処理装置10では、受信した各情報が、そのままの形で記憶部13の所定領域に一時的に記憶される。そして、情報処理装置10では、当該各情報における座標情報、反射強度情報、及び色情報の各情報が、対象建物80を示す点群データとして1つの情報に合成されて、スキャン情報データベース13Bに登録される。
【0052】
この状態において、情報処理装置10のユーザは、情報処理プログラム13Aの実行を開始する指示入力を、入力部14を介して行う。この指示入力に応じて、情報処理装置10のCPU11が当該情報処理プログラム13Aを実行することにより、図8に示す情報処理が実行される。なお、錯綜を回避するために、ここでは、X軸方向の通り芯84Aに対応して設けたマーカ70Aの色(以下、「X軸通り芯色」という。)及び形状、Y軸方向の通り芯84Bに対応して設けたマーカ70Aの色(以下、「Y軸通り芯色」という。)及び形状、及びZ軸方向の通り芯84Cに対応して設けたマーカ70Bの形状が予め登録されている場合について説明する。
【0053】
図8のステップ100で、CPU11は、BIMモデル13Cの各情報を記憶部13から読み出す。ステップ102で、CPU11は、スキャン情報データベース13Bから全ての情報(以下、「スキャン情報」という。)を読み出す。
【0054】
ステップ104で、CPU11は、読み出したスキャン情報を用いて、X軸方向の通り芯84Aを示す通り芯情報を以下のように導出する。
【0055】
まず、CPU11は、スキャン情報に含まれる座標情報及び色情報を用いて、X軸通り芯色に該当する色の点群で、かつ、マーカ70Aの形状に対応する形状の点群を抽出する。これにより、X軸方向の通り芯84Aに対して付与された2つのマーカ70Aの各々の領域が特定される。
【0056】
次いで、CPU11は、スキャン情報に含まれる座標情報を用いて、特定した2つのマーカ70Aの領域の中心位置を結ぶ直線(以下、「X軸直線」という。)をX軸方向の通り芯84Aに対応する通り芯情報(以下、「X軸通り芯情報」という。)として導出する。
【0057】
ステップ106で、CPU11は、読み出したスキャン情報を用いて、Y軸方向の通り芯84Bを示す通り芯情報を、X軸方向の通り芯84Aを示す通り芯情報と同様に、以下のように導出する。
【0058】
まず、CPU11は、スキャン情報に含まれる座標情報及び色情報を用いて、Y軸通り芯色に該当する色の点群で、かつ、マーカ70Aの形状に対応する形状の点群を抽出する。これにより、Y軸方向の通り芯84Bに対して付与された2つのマーカ70Aの各々の領域が特定される。
【0059】
次いで、CPU11は、スキャン情報に含まれる座標情報を用いて、特定した2つのマーカ70Aの領域の中心位置を結ぶ直線(以下、「Y軸直線」という。)をY軸方向の通り芯84Bに対応する通り芯情報(以下、「Y軸通り芯情報」という。)として導出する。
【0060】
ステップ108で、CPU11は、読み出したスキャン情報を用いて、Z軸方向の通り芯84Cを示す通り芯情報(高さを示す情報であり、以下、「Z軸高さ情報」という。)を、以下のように導出する。
【0061】
まず、CPU11は、スキャン情報に含まれる座標情報を用いて、マーカ70Bの形状に対応する形状の点群を抽出する。これにより、Z軸方向の通り芯84Cに対して付与された2つのマーカ70Bの各々の領域が特定される。
【0062】
次いで、CPU11は、スキャン情報に含まれる座標情報を用いて、特定した2つのマーカ70Bの領域の中心位置を結ぶ直線(以下、「Z軸直線」という。)をZ軸方向の通り芯84Cに対応するZ軸高さ情報として導出する。
【0063】
ステップ110で、CPU11は、読み出したBIMモデル13CからX軸方向の通り芯84Aに相当する通り芯を特定し、ステップ112で、CPU11は、読み出したBIMモデル13CからY軸方向の通り芯84Bに相当する通り芯を特定する。ステップ114で、CPU11は、読み出したBIMモデル13CからZ軸方向の通り芯84Cに相当する通り芯を特定する。
【0064】
ステップ116で、CPU11は、導出したX軸直線が、特定したBIMモデル13CのX軸の通り芯と重なり、かつ、導出したY軸直線が、特定したBIMモデル13CのY軸の通り芯と重なり、かつ、導出したZ軸直線が、特定したBIMモデル13CのZ軸の通り芯と重なるように、読み出したスキャン情報(点群データ)により示される画像の姿勢を調整する。この画像の姿勢の調整は、例えば、当該画像の回転や、当該画像の移動等によって行われる。そして、CPU11は、当該姿勢の調整後の画像と、BIMモデル13Cが示す画像とを重ね合わせた画像を示す画面(以下、「重ね合わせ表示画面」という。)を表示するように表示部15を制御し、ステップ118で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0065】
図9には、従来の重ね合わせ表示画面の一例を示す正面図が示されている。また、図10には、本実施形態に係る重ね合わせ表示画面の一例を示す正面図が示されている。
【0066】
一例として図9に示すように、従来の重ね合わせ表示画面では、BIMモデルによる画像に対して、点群データが示す画像は位置や角度が一致していない場合が多く、表示された重ね合わせ表示画面に対して、点群データによる画像の姿勢の調整を手動で行う必要があった。この調整には、重ね合わせの精度に、人の技量によってばらつきが生じると共に、再現性が低い、という問題があったのは上述した通りである。
【0067】
これに対し、一例として図10に示すように、本実施形態に係る重ね合わせ表示画面では、点群データによる画像の姿勢の調整が自動的に行われた状態で当該画像が表示されるため、より簡易に最終的な重ね合わせ表示画面を得ることができる。
【0068】
なお、通り芯に対するマーカ70A及びマーカ70Bの付与位置のずれ等に起因して、本実施形態に係る調整が行われた後も、BIMモデルによる画像と点群データが示す画像とにずれが生じる場合もあるが、この場合でも当該ずれ量は少ないため、従来の技術に比較して、より簡易に最終的な重ね合わせ表示画面を得ることができる。
【0069】
一例として図10に示す重ね合わせ表示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示されている重ね合わせ表示画面を確認した後、終了ボタン15Eを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Eが指定されると、ステップ118が肯定判定となって本情報処理が終了する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、既存建物に各々付与された、X軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、Y軸方向の通り芯を示す通り芯情報を有するマーカと、を含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む既存建物の点群データを取得する取得部11Aと、マーカが有する通り芯情報と、既存建物のBIMモデルが有する対応する通り芯情報とを重ね合わせ、既存建物の点群データが示す画像と、BIMモデルが示す画像とを重ね合わせて表示部15に表示する制御を行う制御部11Bと、備えている。従って、3Dスキャナによって得られた点群データによる画像と、BIMモデルによる画像とを、より簡易に重ね合わせることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、既存建物に付与された、Z軸方向の高さを示す高さ情報を有するマーカを含む領域を3次元撮影して、当該マーカを含む既存建物の点群データを取得し、マーカが有する高さ情報と、BIMモデルが有する対応する高さ情報とを更に重ね合わせて、上記制御を行っている。従って、より簡易に、3Dスキャナによって得られた点群データによる画像と、BIMモデルによる画像とを、重ね合わせることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、マーカを、各々のエッジが同一の直線を成す複数のマークを有するものとし、対応する通り芯に上記直線が一致するようにマーカが付与された状態で3次元撮影して点群データを取得している。従って、より簡易、かつ、高精度に、点群データから通り芯情報を導出することができる。
【0073】
更に、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、マーカを、既存建物の柱の側面に付与させている。従って、より容易に、3Dスキャナによる3次元撮影を行うことができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、各通り芯に対応して、各々2つのマーカを付与した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、上記各通り芯に対応して1つ、又は3つ以上の複数のマーカを付与する形態としてもよい。例えば、各通り芯に対応してマーカを1つのみ付与する場合は、当該マーカにおけるマークの直線に、対応する墨出しされた通り芯を一致させるようにマーカを付与し、点群データから当該直線を特定することで、対応する通り芯情報を導出することができる。また、例えば、各通り芯に対応してマーカを3つ以上付与する場合は、各マーカにおける中心位置(マーカがマーカ70Bである場合は、当該マーカの下辺の中心位置)を通る直線を特定することで、対応する通り芯情報を導出することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、本発明のマーカとして図4に示すものを適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、図11に示す各種のマーク形状のマーカ70C~70Fを、本発明のマーカとして適用する形態としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、X軸方向の通り芯、Y軸方向の通り芯、及びZ軸方向の通り芯として、各々1本の通り芯のみを適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、X軸方向の通り芯、Y軸方向の通り芯、及びZ軸方向の通り芯の少なくとも1つの通り芯として、複数本の通り芯を適用する形態としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、X軸方向の通り芯、Y軸方向の通り芯、及びZ軸方向の高さの3つを重ね合わせる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、X軸方向の通り芯及びY軸方向の通り芯のみを重ね合わせる形態としてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、マーカを柱に付与した場合の形態例について説明し、変形例としてマーカを床面に付与してもよい旨を説明したが、これに限定されない。例えば、壁、天井等の既存建物における位置座標を確認することのできる、柱及び床面を除く物体にマーカを付与する形態としてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、図8に示す情報処理として、重ね合わせ表示画面を表示するまでの処理を実行する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、重ね合わせ表示画面において表示されている、上記姿勢の調整後の画像と、BIMモデルが示す画像とにずれが生じている場合、ユーザに対して当該ずれを解消するように手動で調整させる処理を上記情報処理に含める形態としてもよい。また、ユーザによる指示に応じて、CPU11に対し、点群データにより示される画像の姿勢の調整を再度実行させる形態としてもよい。
【0080】
また、以上の実施形態では、点群データによる画像をBIMモデルによる画像と重ね合わせる場合について記載したが、これに限定されない。必ずしも、点群データによる画像をBIMモデルによる画像と重ね合わせる必要はなく、要は、通り芯に基づいて点群データを取得することで、取得した点群データを2次元図面に容易に重ねることができることになる。
【0081】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A及び制御部11Bの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0082】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0083】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0084】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
10 情報処理装置
11 CPU
11A 取得部
11B 制御部
12 メモリ
13 記憶部
13A 情報処理プログラム
13B スキャン情報データベース
13C BIMモデル
14 入力部
15 表示部
15E 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
50 3Dスキャナ
52 スキャナ本体
58 記憶部
60 脚部
70A マーカ
70A1、70A2 マーク
70B マーカ
70B1 マーク
70C~70F マーカ
80 対象建物
82 柱
84A、84B、84C 通り芯
90 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11