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  • 特許-共同住宅とその施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】共同住宅とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/04 20060101AFI20241205BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E04H1/04 A
E04H1/12 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021057708
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154595
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】赤木 寛
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6324106(JP,B2)
【文献】特開2002-147038(JP,A)
【文献】特開平10-153001(JP,A)
【文献】特開2015-145606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0326760(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/04
E04H 1/12
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する二つの住戸、
前記二つの住戸に面する手摺、
前記二つの住戸に繋がり、前記二つの住戸と前記手摺の間の共用廊下、および
前記共用廊下の前記二つの住戸側に配置される設備機器を備え、
前記共用廊下は、前記手摺に沿って設けられる少なくとも二つの側溝を前記手摺側に有し、
前記二つの側溝は、前記共用廊下が延伸する第1の方向に対して垂直な第2の方向において、いずれも前記設備機器と重ならず、前記設備機器を挟むように配置される、共同住宅。
【請求項2】
前記設備機器は、前記二つの住戸内の一方の付帯設備に接続されるメーターを収容するメーターボックスである、請求項1に記載の共同住宅。
【請求項3】
前記メーターボックスは、前記二つの住戸の他方内の付帯設備に接続されるメーターをさらに収容する、請求項2に記載の共同住宅。
【請求項4】
前記二つの側溝の間の距離は、前記設備機器の前記第1の方向における長さ以上である、請求項1に記載の共同住宅。
【請求項5】
呼樋をさらに備え、
前記二つの側溝は、それぞれドレインを有し、
前記呼樋は、前記ドレインの少なくとも一方に接続される、請求項1に記載の共同住宅。
【請求項6】
前記呼樋に接続される竪樋をさらに備える、請求項5に記載の共同住宅。
【請求項7】
前記竪樋は、前記共用廊下を貫通する、請求項6に記載の共同住宅。
【請求項8】
前記竪樋は、前記設備機器を貫通する、請求項6に記載の共同住宅。
【請求項9】
隣接する二つの住戸、前記二つの住戸に面する手摺、前記二つの住戸に繋がり、前記二つの住戸と前記手摺の間の共用廊下、および前記共用廊下の前記二つの住戸側に配置される設備機器を備える共同住宅の施工方法であり、前記施工方法は、前記手摺に沿って少なくとも二つの側溝を前記手摺側に形成することを含み、
前記二つの側溝は、前記共用廊下が延伸する第1の方向に対して垂直な第2の方向において、いずれも前記設備機器と重ならず、前記設備機器を挟むように形成される、施工方法。
【請求項10】
前記設備機器は、前記二つの住戸内の一方の付帯設備に接続されるメーターを収容するメーターボックスである、請求項9に記載の施工方法。
【請求項11】
前記メーターボックスは、前記二つの住戸の他方内の付帯設備に接続されるメーターをさらに収容する、請求項10に記載の施工方法。
【請求項12】
前記二つの側溝は、前記二つの側溝の間の距離が前記設備機器の幅以上となるように形成される、請求項9に記載の施工方法。
【請求項13】
前記二つの側溝の少なくとも一方に接続される呼樋を配置することをさらに含む、請求項9に記載の施工方法。
【請求項14】
前記呼樋に接続されるように竪樋を配置することをさらに含む、請求項13に記載の施工方法。
【請求項15】
前記竪樋は、前記共用廊下を貫通するように配置される、前記請求項14に記載の施工方法。
【請求項16】
前記竪樋は、前記設備機器を貫通するように配置される、前記請求項14に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、共同住宅とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共同住宅は複数の住戸を有する建築物であり、複数の住戸が共用廊下に面するように配置されることで、各住戸へのアクセスが可能となる。共用廊下には、手摺のみならず、各住戸のガスや電気、水道の使用量を測定するためのメーターが収容されるメーターボックス、火災報知機などの各種設備機器が設けられる。共同住宅が2階以上の階層を有する場合、2階より上の共用廊下を安定的に支持するため、梁(片持ち梁)が共用廊下の下に設けられることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6324106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、外部に開放される共用廊下に様々な設備機器が設けられる場合においても、十分な幅が確保された共用廊下を備える共同住宅、およびその施工方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、片持ち梁を用いること無く、十分な幅を有する共用廊下を備える共同住宅、およびその施工方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、外部に開放される共用廊下を備える共同住宅である。この共同住宅は、隣接する二つの住戸、上記二つの住戸に面する手摺、二つの住戸に繋がり二つの住戸と手摺の間に位置する共用廊下、および共用廊下の二つの住戸側に配置される設備機器を備える。共用廊下は、手摺に沿って設けられる少なくとも二つの側溝を手摺側に有する。二つの側溝は、共用廊下が延伸する第1の方向に対して垂直な第2の方向において、いずれも設備機器と重ならず、設備機器を挟むように配置される。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、外部に開放される共用廊下を備える共同住宅の施工方法である。共同住宅は、隣接する二つの住戸、二つの住戸に面する手摺、二つの住戸に繋がり二つの住戸と手摺の間の共用廊下、および共用廊下の二つの住戸側に配置される設備機器を備える。この施工方法は、手摺に沿って少なくとも二つの側溝を手摺側に形成することを含む。二つの側溝は、共用廊下が延伸する第1の方向に対して垂直な第2の方向において、いずれも設備機器と重ならず、設備機器を挟むように形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態の一つにより、共用廊下に様々な設備が設けられる場合においても、十分な幅を有する共用廊下を備える共同住宅を提供することができる。あるいは、本発明の実施形態の一つにより、片持ち梁を用いること無く、十分な幅を有する共用廊下を備える共同住宅を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一つに係る共同住宅の模式的上面図。
図2】本発明の実施形態の一つに係る共同住宅の模式的上面図。
図3】本発明の実施形態の一つに係る共同住宅の模式的端面図。
図4】本発明の実施形態の一つに係る共同住宅の模式的端面図。
図5】本発明の実施形態の一つに係る共同住宅の模式的上面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
以下、本発明の実施形態の一つに係る、共同住宅100とその施工方法について説明する。共同住宅100は、一階建てでもよく、2階以上の階を有してもよい。各階には少なくとも二つの住戸が配置される。
【0012】
図1に共同住宅100の一部の模式的上面図を、図2図5(A)、図5(B)に図1の一部の詳細な構造を示す。図3(A)と(B)は、それぞれ図2の鎖線A-A´とB-B´に沿った模式的端面図であり、図4図2の鎖線C-C´に沿った模式的断面図である。図1では、複数の住戸102が一方向に配置された例が示されているが、住戸102の配置に制約はなく、共同住宅100が施工される土地の形状や共同住宅100のデザインに従って適宜変更することができる。図1に示すように、共同住宅100は複数の柱106、複数の柱106に連結される梁108、および柱106に連結される戸境壁104と外壁110によって基本骨格が形成される。隣接する住戸102は戸境壁104によって仕切られる。したがって、隣接する戸境壁104とその間の外壁110によって形成される空間が各住戸102となる。
【0013】
共同住宅100はさらに、複数の柱106に連結された梁108に接続される共用廊下112を有している。共用廊下112はスラブ113(図3(A)、図3(B)参照)により各住戸102と繋がっており、外壁110に設けられる扉を用いて住戸102と共用廊下112間で人の移動が可能となる。なお、本明細書では、スラブ113は共用廊下112を構成する部材であり、住戸102と手摺116の間におけるスラブ113の上面が共用廊下112として機能するとして説明する。
【0014】
図1から図3(B)に示すように、共用廊下112のスラブ113上には住戸102に面する転落防止用の手摺116が設置される。手摺116の高さは1100mm以上であり、かつ手摺116とスラブ113の間隔Hは、異なる階のスラブ113の間隔Hの1/2以上である(図3(A))。スラブ113の手摺116側には、手摺116に沿う複数の側溝114が設けられる。側溝114は、雨水や空調機からの排水、清掃で使用する水などを共同住宅100外に排出するために設けられる。
【0015】
共同住宅100はさらに、住人の生活の維持や安全の確保に必要な様々な設備機器120が恒常的に設置され、その一部はスラブ113上に配置される。設備機器120としては、例えば火災報知器やメーターボックスなどが挙げられる。設備機器120は、外壁110側に配置することが好ましい。例えば図1に示すように、共用廊下112が延伸する方向(図1におけるX方向)に垂直な方向(Y方向)において、柱106と重なるように配置することができる。この場合、設備機器120は、柱106に隣接するように配置してもよい。あるいは、設備機器120は、隣接する柱106の間に配置してもよい。あるいは、Y方向において、柱106と外壁110に重なるように配置してもよい。以下、設備機器120がメーターボックスであるケースを例として説明を続ける。
【0016】
各住戸102には浴室やトイレ、ガスコンロ、コンセントなどの付帯設備(図示しない)が設けられ、これらの付帯設備で使用する水やガス、電気を供給するための配管や配線が配置される。また、電気やガス、水の使用量をモニターするためのメーターが配管または配線に接続され、メーターボックス120内に収容される。図2に示すように、メーターボックス120は、隣接する二つの住戸102で用いるメーターを収容するように構成、配置してもよい。
【0017】
図2から図3(B)に示すように、複数の側溝114は、共用廊下112の幅方向において、メーターボックス120(あるいは、その他の設備機器)と重ならないように設計、施工される。より具体的には、隣接する住戸102に面する共用廊下112が延伸するX方向に垂直なY方向において、メーターボックス120と重ならないように側溝114が設けられる。また、複数の側溝114は、隣接する側溝114がY方向においてメーターボックス120を挟むように設けられる。隣接する側溝114の間の距離Dは、メーターボックス120の幅(X方向における長さ)Wと同じ、あるいは図2に示すように、幅Wよりも大きい。なお、側溝114の幅(Y方向における長さ)は、好ましくはメーターボックス120奥行き(Y方向における長さ)と同じである。
【0018】
このように側溝114を設けることで、共用廊下112のY方向においてメーターボックス120と重なる部分(重畳部分)には側溝114が存在せず、側溝114に起因する段差114aが存在しないことになる(図3(A)から図4参照)。このため、この重畳部分の上面は重畳部分以外の部分(非重畳部分)の上面から連続し、段差のない床面として利用することができる(図3(A))。一方、非重畳部分には側溝114が設けられる。スラブ113の上面には、側溝114に近づくにつれて低くなるように傾斜が形成される(図3(A)、図3(B)参照)。さらに、図4に示すように、重畳部分の上面も傾斜を有するようにスラブ113を設計・施工することができる。これにより、重畳部分上の水を非重畳部分や側溝114へ移動させることができ、スラブ113上に水が貯まることを防止することができる。
【0019】
共同住宅100の仕様にも依存するが、共用廊下112では、外壁110から手摺116の間は法定で規定される幅(以下、法定幅)が要求され、1200mm以上の間隔をあける必要がある。また、この法定幅には側溝114の幅や手摺116の幅は含まれない。このため、手摺116の設置に必要な幅よりも側溝114の幅が大きい場合には、外壁110から側溝114までの距離W図2図3(B)参照)を法定幅以上にする必要がある。また、メーターボックス120などの設備機器が共用廊下112に設けられる場合には、設備機器によって利用可能な共用廊下112の幅が減少する分、共用廊下112の幅を増大する必要がある。このため、従来の施工方法では、共用廊下112の幅の増大に起因する施工コスト増大を避けるため、メーターボックス120の手摺116側の端部から側溝114までの距離が法定幅になるように共用廊下が設計されてきた。その結果、メーターボックス120が設置されない非重畳部分では共用廊下の幅は法定幅以上となる。
【0020】
これに対し、本発明の共同住宅100では、重畳部分には側溝114が設けられないので、メーターボックス120の手摺116側の端部から手摺116までを床面として利用することができる。その結果、非重畳部分の幅Wが法定幅となるように共用廊下112と側溝114を設計しても、重畳部分も法定幅を確保することができる。特に、側溝114の幅をメーターボックス120の奥行きと同一またはそれ以上にすることで、重畳部分の幅Wを法定幅以上にすることが可能である。その結果、非重畳部分の幅Wを法定幅よりも大きくする必要がなくなるのでスラブ113を支えるためのY方向に延伸する片持ち梁が不要となる。この結果、共同住宅100の施工コストと施工期間の削減に大きく寄与する。さらに、手摺116を部分的に外側に広げなくても法定幅を確保できるため、隣接する住戸102に亘ってX方向に直線的に手摺116を形成することができる。
【0021】
各側溝114には、排水のためのドレイン114bが一つまたは複数設けられる(図3(B))。ドレイン114bには呼樋122が接続され、呼樋122は、鉛直方向に延伸する竪樋124に接続される。これにより、スラブ113の水を共同住宅100の外に排出することができる。竪樋124は、図3(B)に示すように、スラブ113を貫通するように配置してもよい。この場合、図示しないが、さらにメーターボックス120を貫通するように竪樋124を配置してもよい。この配置によって竪樋124を共同廊下に設けることが可能になり、共同住宅100の外に設けなくてもよいため、共同住宅100のデザイン性を高めることができる。あるいは図5(A)に示すように、竪樋124は、手摺116の外側、すなわち、スラブ113に対して手摺116の反対側に配置してもよい。あるいは、共用廊下112の柱106ごとに竪樋124を設けてもよい(図5(B))。なお、メーターボックス120は各住戸102にそれぞれ一つ設けてもよい。
【0022】
上述したように、本発明の実施形態の一つを適用することにより、共用廊下に様々な設備が設けられる場合においても、片持ち梁を用いること無く、十分な幅を有する共用廊下を備える共同住宅を提供することができる。したがって、低コストで共同住宅を施工することが可能となる。
【0023】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0024】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0025】
100:共同住宅、102:住戸、104:戸境壁、106:柱、108:梁、110:外壁、112:共用廊下、113:スラブ、114:側溝、114a:段差、114b:ドレイン、116:手摺、120:設備機器(メーターボックス)、122:呼樋、124:竪樋
図1
図2
図3
図4
図5